JP2014155338A - 交流電動機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】交流電動機の回転数が小さい低回転域において、出力されるトルクの精度を改善可能な交流電動機の制御装置を提供する。
【解決手段】制御部15では、電流指令値id*、iq*、および、フィードバックされる1相の電流検出値iw_snsおよび電気角θeから算出される電流推定値id_est、iq_estに基づき、第1の電圧指令値vd*_1、vq*_1を演算する。また、電流指令ベクトルi*の位相角θiに応じた交流電動機2の実際の挙動に関する実機挙動情報である電圧補正係数Kd、Kqに基づき、第2の電圧指令値vd*_2、vq*_2を演算する。回転数Nが判定閾値A以下である場合、第1の電圧指令値vd*_1、vq*_1に基づく第1の制御モードに替えて、第2の電圧指令値vd*_2、vq*_2に基づく第2の制御モードとする。これにより、交流電動機2から出力されるトルクの変動が抑制され、ドラビリが改善する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、交流電動機の制御装置に関する。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源として交流電動機を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。例えば、ハイブリッド自動車においては、二次電池等からなる直流電源と交流電動機とを、インバータ等で構成された電力変換装置を介して接続し、直流電源の直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流電動機を駆動するようにしたものがある。
このようなハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機の制御装置において、相電流を検出する電流センサを1相に設けることで、電流センサの数を減らし、インバータの3相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御系統のコスト低減を図る技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2008−86139号公報
特許文献1では、1相の電流センサ値に加え、他相はd軸電流指令値およびq軸電流指令値と電気角とで逆dq変換することにより得られる3相交流電流指令値を電流推定値として用いることにより1相制御としている。d軸電流指令値およびq軸電流指令値を逆dq変換した3相交流電流指令値は、実際の交流電動機の電流を正確に反映した情報とはならず、安定した駆動制御ができない虞がある。特に、交流電動機の回転数が小さい場合、電流センサ値のサンプリング間隔あたりの電流センサ値の電流変化量や回転角移動量が小さくなるため、実機情報が更に乏しくなり、制御がより不安定となる虞があり、十分なトルク精度を得ることができない。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、交流電動機の回転数が小さい低回転域において、出力されるトルクの精度を改善可能な交流電動機の制御装置を提供することにある。
本発明の交流電動機の制御装置は、インバータによって印加電圧が制御される3相の交流電動機の駆動を制御するものであって、電流取得手段と、回転角取得手段と、回転数演算手段と、電流推定手段と、第1の電圧指令値演算手段と、第2の電圧指令値演算手段と、制御モード切替手段と、を備える。
電流取得手段は、交流電動機のいずれか1相であるセンサ相に設けられる電流センサから電流検出値を取得する。回転角取得手段は、交流電動機の回転角を検出する回転角センサから回転角検出値を取得する。回転数演算手段は、回転角検出値に基づき、交流電動機の回転数を演算する。
電流推定手段は、電流検出値および回転角検出値に基づき、電流推定値を演算する。なお、電流検出値および回転角検出値に加え、例えば電流指令値に基づいて電流推定値を演算してもよい。第1の電圧指令値演算手段は、交流電動機の駆動に係る電流指令値、および、フィードバックされる電流推定値に基づき、第1の電圧指令値を演算する。
第2の電圧指令値演算手段は、回転角検出値または電流指令ベクトルの位相角と対応づけられた交流電動機の実際の挙動に関する実機挙動情報に基づき、第2の電圧指令値を演算する。
制御モード切替手段は、回転数が所定の判定閾値より大きい場合、第1の電圧指令値に基づいてインバータの駆動に係る駆動信号を生成する第1の制御モードとし、回転数が判定閾値以下である場合、第2の電圧指令値に基づいて駆動信号を生成する第2の制御モードとする。
1相の電流検出値を用いて推定される電流推定値をフィードバックして交流電動機の駆動を制御する1相制御とする場合、交流電動機の回転数が小さい低回転域では、電流検出値のサンプリング間隔あたりの電流検出値の電流変化量や電気角移動量が小さくなり、制御が不安定になる虞があり、十分なトルク精度を得ることができない。
そこで本実施形態では、回転数が判定閾値以下である低回転域において、1相制御に替えて、回転角検出値または電流指令ベクトルの位相角に応じた実機挙動情報を用い、第2の電圧指令値を演算している。具体的には、実機挙動情報は、例えば電動機の理論式(例えば電圧方程式)を用い、電流指令値に基づいて演算される電圧指令基準値を補正する電圧補正値である。また例えば、実機挙動情報は、第2の電圧指令値そのものとしてもよい。これにより、第2の電圧指令値は、実機挙動情報を考慮した値となるので、低回転域において、交流電動機を安定して制御することができる。また、第2の電圧指令値の演算に実機挙動情報を用いることにより、トルク精度が改善され、交流電動機から出力されるトルクの変動が抑制されるので、例えば交流電動機の制御装置を電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に適用した場合、低回転域におけるドライバビリティ(ドラビリ)を改善することができる。
本発明の第1実施形態の交流電動機駆動システムの構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の電動機制御装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態による電流指令ベクトルの位相角について説明する説明図である。 高回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 中回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 低回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 交流電動機の回転数が0[rpm]のときに電圧指令基準値に基づいて制御した場合の交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 交流電動機の回転数が0[rpm]のときに2相制御した場合の交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 本発明の第1実施形態によるデッドタイム補正を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による振幅補正を説明する説明図である。 低回転域において電圧補正係数による補正を行わない場合の電圧変動を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による電圧補正係数を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第1実施形態によるFF制御処理を説明するフローチャートである。 参考例による交流電動機の挙動を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による交流電動機の挙動を説明する説明図である。 本発明の第2実施形態による制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施形態による電圧指令値参照制御処理を説明するフローチャートである。
以下、本発明による交流電動機の制御装置を図面に基づいて説明する。なお、以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による交流電動機2の制御装置としての電動機制御装置10は、電動車両を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、および、電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えるハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、および、エンジン3や駆動輪6から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。
交流電動機2は、例えば変速機等のギア4を介して車軸5に接続される。これにより、交流電動機2の駆動により生じるトルクは、ギア4を介して車軸5を回転させることにより、駆動輪6を駆動する。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている。
車両制御回路9は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。車両制御回路9は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動車両全体を制御する。
車両制御回路9は、いずれも図示しないアクセルセンサからのアクセル信号、ブレーキスイッチからのブレーキ信号、および、シフトスイッチからのシフト信号等の各種センサやスイッチ等から信号を取得可能に構成されている。また、車両制御回路9では、取得されたこれらの信号等に基づいて車両の運転状態を検出し、運転状態に応じたトルク指令値trq*を電動機制御装置10に出力する。また、車両制御回路9は、エンジン3の運転を制御する図示しないエンジン制御回路に対し、指令信号を出力する。
図2に示すように、電動機制御装置10は、インバータ12および制御部15を備える。
インバータ12には、交流電動機2の駆動状態や車両要求等に応じて、直流電源8の直流電圧を図示しない昇圧コンバータにより昇圧したインバータ入力電圧VHが印加される。また、インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。詳細には、スイッチング素子は、高電位側に設けられる上側スイッチング素子(以下、「上SW」という。)、および、低電位側に設けられる下側スイッチング素子(以下、「下SW」という。)からなる。直列に接続される上SWおよび下SWは、交流電動機2の各相に対応して設けられる。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子は、制御部15のPWM信号生成部28(図3参照)から出力されるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてオン/オフが制御される。これにより、インバータ12は、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwを制御する。交流電動機2は、インバータ12により生成された3相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより駆動が制御される。
本実施形態では、上SWがオンであり下SWがオフである状態から上SWがオフであり下SWがオンである状態、または、上SWがオフであり下側スイッチング素子がオンである状態から上SWがオンであり下SWがオフである状態への切り替えに際し、上SWおよび下SWが同時にオンとなることによる上下短絡を防ぐために、上SWおよび下SWの両方がオフとなるデッドタイム期間Tdtが設定されている。デッドタイム期間Tdtは、スイッチング素子設計によって予め設定されるものである。設定されたデッドタイム期間Tdtは、制御部15の図示しない記憶部に格納されている。
電流センサ13は、交流電動機2のいずれか1相に設けられる。本実施形態では、電流センサ13は、W相に設けられており、以下、電流センサ13の設けられるW相を「センサ相」という。電流センサ13は、センサ相であるW相に通電されるW相電流検出値iw_snsを検出し、制御部15に出力する。制御部15では、W相電流検出値iw_snsを取得する。なお、本実施形態では、電流センサ13はW相に設けられているが、どの相に設けてもよい。以下、本実施形態では、センサ相をW相とする構成について説明する。
回転角センサ14は、交流電動機2の図示しないロータ近傍に設けられ、電気角θeを検出し、制御部15に出力する。制御部15では、電気角θeを取得する。本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバである。その他、回転角センサ14は、ロータリエンコーダ等、他種のセンサでもよい。
ここで、交流電動機2の駆動制御について説明する。電動機制御装置10は、回転角センサ14が検出した電気角θeに基づく交流電動機2のロータの回転数N(以下適宜、単に「交流電動機2の回転数N」という。)および車両制御回路9からのトルク指令値trq*に応じて、交流電動機2を「電動機としての力行動作」により電力を消費し、または、「発電機としての回生動作」により電力を生成する。具体的には、回転数Nおよびトルク指令値trq*の正負によって、以下の4つのパターンで動作を切り替える。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*>0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*<0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電源8側から供給される直流電力を交流電力に変換してトルクを出力する(力行動作する)ように、交流電動機2を駆動する。
一方、回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*<0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
次に、制御部15の詳細について、図3に基づいて説明する。図3に示すように、制御部15は、回転数演算部16、電流指令値演算部21、電圧指令基準値演算部22、電圧指令基準値補正部23、電流推定部24、電圧指令値演算部25、切替判定部26、3相電圧指令値演算部27、PWM信号生成部28、3相電流指令値演算部31、デッドタイム補正値演算部32、振幅補正係数演算部40、位相演算部51、および、電圧補正係数演算部52等を有する。
回転数演算部16は、電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nを演算する。
電流指令値演算部21は、車両制御回路9から取得されるトルク指令値trq*に基づき、交流電動機2の回転座標として設定される回転座標系(d−q座標系)におけるd軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*を演算する。本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、予め記憶されているマップを参照することにより演算されるが、数式等から演算するように構成してもよい。
電圧指令基準値演算部22では、電動機の理論式である電圧方程式を用い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを演算する。d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refは、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*から直接的に演算されるものであり、フィードフォワード(以下、「FF」という。)項であると捉えることもできる。
電圧指令基準値補正部23では、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。
電圧指令基準値演算部22におけるd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refの演算方法、および、電圧指令基準値補正部23における第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2の演算方法の詳細については、後述する。
電流推定部24では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。本実施形態では、電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。具体的には、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の逆dq変換により算出されるU相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*を、U相電流推定値iu_estおよびV相電流推定値iv_estとする。そして、U相電流推定値iu_est、V相電流推定値iv_est、および、W相電流検出値iw_snsのdq変換によりd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。
d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算方法は、これに限らず、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づいて算出されていれば、どのようであってもよい。また、U相電流推定値iu_estおよびV相電流推定値iv_estは、どのように演算してもよいし、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算に不要であれば、演算しなくてもよい。
電圧指令値演算部25では、電流推定部24からフィードバックされたd軸電流推定値id_estとd軸電流指令値id*との差であるd軸電流偏差Δidを演算し、d軸電流推定値id_estをd軸電流指令値id*に追従させるべく、d軸電流偏差Δidが0[A]に収束するように、第1のd軸電圧指令値vd*_1をPI演算により演算する。また、電流推定部24からフィードバックされたq軸電流推定値iq_estとq軸電流指令値iq*との差であるq軸電流偏差Δiqを演算し、q軸電流推定値iq_estをq軸電流指令値iq*に追従させるべく、q軸電流偏差Δiqが0[A]に収束するように、第1のq軸電圧指令値vq*_1をPI演算により演算する。
切替判定部26では、インバータ12の駆動に係る駆動信号(後述のPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WL)の演算に用いるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択するか、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択するか、を切り替える。本実施形態では、回転数Nが所定の判定閾値Aより大きい場合、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。また、回転数Nが判定閾値A以下の場合、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する。
以下、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1に基づいてインバータ12の駆動に係る駆動信号を生成し、交流電動機2の駆動を制御することを「推定電流フィードバック制御(以下、フィードバックを適宜「FB」と記載する。)」という。推定電流FB制御は、1相の電流検出値(本実施形態ではW相電流検出値iw_sns)を用いた1相制御と捉えることもできる。また、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいてインバータ12の駆動に係る駆動信号を生成し、交流電動機2の駆動を制御することを「FF電圧指令制御(以下適宜、「FF制御」という。)」という。本実施形態では、「推定電流FB制御モード」が「第1の制御モード」に対応し、「FF電圧指令制御(FF制御)モード」が「第2の制御モード」に対応する。なお、本実施形態では、電流センサが1相に設けられていることを鑑みれば、「推定電流FB制御」および「FF制御」を広義の1相制御と捉えることもできる。
本実施形態では、回転数Nに基づき、推定電流FB制御とFF制御とを切り替えている、すなわち回転数Nに基づいて制御モードを切り替えている、と捉えることもできる。詳細には、回転数Nが判定閾値Aより大きい場合、推定電流FB制御モードとし、回転数Nが判定閾値A以下である場合、FF制御モードとしている、ということである。
3相電圧指令値演算部27では、回転角センサ14から取得される電気角θeに基づく逆dq変換により、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、および、W相電圧指令値vw*に変換する。
PWM信号生成部28では、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフの切り替えに係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを、3相交流の電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、インバータ12に印加される電圧であるインバータ入力電圧VHに基づいて演算する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。なお、3相交流電圧vu、vv、vwが「印加電圧」に対応する。
3相電流指令値演算部31では、電気角θeに基づく逆dq変換により、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を、U相電流指令値iu*、V相電流指令値iv*、および、W相電流指令値iw*に変換する。以下適宜、U相電流指令値iu*、V相電流指令値iv*、および、W相電流指令値iw*を、「3相電流指令値iu*、iv*、iw*」という。
デッドタイム補正値演算部32では、デッドタイム期間Tdtにおいて上SWおよび下SWがオフになることに伴う電圧誤差に相当するd軸デッドタイム補正値vd_dtおよびq軸デッドタイム補正値vq_dtを演算する。
振幅補正係数演算部40では、W相電流検出値iw_snsおよびW相電流指令値iw*に基づき、振幅補正係数Kaを算出する。
d軸デッドタイム補正値vd_dt、q軸デッドタイム補正値vq_dt、および、振幅補正係数Kaの詳細については後述する。
位相演算部51では、電流指令値電流指令ベクトルi*の位相角θiを演算する。
ここで、電流指令値電流指令ベクトルi*の位相角θiについて、図4に基づいて説明する。図4に示すように、本実施形態では、電気角θeは、U相軸を基準として0[°]から反時計回り方向に定義される。また、W相軸は、U相軸に対し、電気角として240[°]ずれている。
また、d−q座標において、d軸成分がd軸電流指令値id*、q軸成分がq軸電流指令値iq*からなる電流指令ベクトルi*の位相φは、q軸から反時計回り方向に定義される。U相軸を基準とする電流指令ベクトルi*の位相角θiは、式(1)のように表される。以下、U相軸を基準とする電流指令ベクトルi*の位相角θiを、適宜単に「位相角θi」という。
θi=θe+φ+90[°] ・・・(1)
また、基準軸の取り方を特定せず、式(1)を一般化すると、式(2)のようになる。
θi=θe+φ+C (ただしCは定数) ・・・(2)
電圧補正係数演算部52では、位相角θiに基づき、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqを演算する。
d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqの演算については後述する。
ここで、推定電流FB制御について、図5〜図7に基づいて説明する。図5は高回転域、図6は中回転域、図7は低回転域の例である。ここでいう「高回転、中回転、低回転」は、相対的な意味でのみ用い、具体的な回転数を意味しない。すなわち、図5での回転数をN1、図6での回転数をN2、図7での回転数をN3とすると、単にN1≧N2≧N3である、ということである。また、図5〜図7において、サンプリング間隔Tsは、同じであるものとする。図5〜図7においては、(a)がd軸電流、(b)がq軸電流、(c)が電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwとサンプリング間隔Tsとの関係を説明する図である。また、(a)、(b)において、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqを実線で示し、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を破線で示した。さらにまた、(a)、(b)において、時間Tcよりも前段は、2相に電流センサを設け、2相の電流検出値に基づく2相制御を行った場合を示し、時間Tcにて1相の電流検出値(本実施形態ではW相電流検出値iw_sns)に基づく推定電流FB制御に切り替えた場合を示している。
図5(a)、(b)に示すように、回転数Nが高回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、2相制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと変動幅に大きな差はない。
これは、図5(c)に示すように、サンプリング間隔Tsが回転数Nによらず同じである場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが比較的大きな値となっており、推定電流FB制御においても実機情報を反映させやすいためである。
一方、図6(a)、(b)に示すように、回転数Nが中回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、2相制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqよりも変動幅が大きく、制御が不安定になる。
これは、図6(c)に示すように、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが、回転数Nが高回転域のときよりも減少し、実機情報が乏しくなることに起因する。
さらに、図7(a)、(b)に示すように、低回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、回転数Nが中回転域の場合よりもさらに変動幅が大きく、制御がさらに不安定になる。
図7(c)に示すように、回転数Nが小さい場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwがゼロに近くなる。本実施形態では、U相電流推定値iu_estとしてU相電流指令値iu*、V相電流推定値iv_estとしてV相電流指令値iv*を用いているため、指令に対して変化する値である電流変化量Δiwが略0[A]となると、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがほとんど変化しなくなるためである。
このように、回転数Nが低回転域である場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが小さくなる。換言すると、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに反映される実機情報が乏しくなる、ということである。そのため、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が低下するため、低回転域にて推定電流FB制御とすると、交流電動機2を安定して駆動できない虞がある。
そこで本実施形態では、回転数Nが所定の判定閾値A以下の場合、推定電流FB制御に替えて、FF項を補正した第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づくFF制御を行っている。
電圧指令基準値演算部22にて演算されるd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refについて説明する。
まず、電動機の電圧方程式は、一般に式(3.1)、(3.2)で表される。
vd=Ra×id+Ld×(d/dt)id−ω×Lq×iq ・・・(3.1)
vq=Ra×iq+Lq×(d/dt)iq+ω×Ld×id+ω×ψ
・・・(3.2)
また、過渡特性を表す時間微分(d/dt)項を無視し、式(3.1)中のvdとしてd軸電圧指令基準値vd_ref、idとしてd軸電圧指令値id*を用い、式(3.2)中の、vqとしてq軸電圧指令基準値vq_ref、iqとしてq軸電圧指令値iq*を用いると、式(3.1)、(3.2)は、式(4.1)、(4.2)のように書き換えられる。
vd_ref=Ra×id*−ω×Lq×iq* ・・・(4.1)
vq_ref=Ra×iq*+ω×Ld×id*+ω×ψ ・・・(4.2)
式中の記号は以下の通りである。
Ra:電機子抵抗
Ld:d軸自己インダクタンス、Lq:q軸自己インダクタンス
ω:電気角速度
ψ:永久磁石の電機子鎖交磁束
交流電動機2の機器定数である電機子抵抗Ra、d軸自己インダクタンスLd、q軸自己インダクタンスLq、および電機子鎖交磁束ψは、固定値としてもよいし、計算にて算出してもよい。また、実際の特性に近い値や実測値をマップ化しておき、トルク指令値trq*(またはd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*)に基づいて演算してもよい。
電気角速度ωは、電圧指令基準値演算部22にて、電気角θeに基づいて演算される。また、電気角速度ωは、回転数Nから演算してもよい。
ここで、回転数Nが0[rpm]の場合、電気角速度ωも0[rad/s]となるので、式(3)、(4)のω項がゼロとなり、電圧指令基準値演算部22にて演算されるd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refは、式(5)、(6)に示すように、抵抗項が残る。
vd_ref=Ra×id* ・・・(5)
vq_ref=Ra×iq* ・・・(6)
式(5)、(6)に示すように、回転数Nが0[rpm]の場合、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refは、電機子抵抗Raに基づく値であって、電機子抵抗Raの値と電流指令値によっては小さい値となる。また、交流電動機2や電動機制御装置10等に関する物理的な要因等により、電圧方程式から算出される理論上の電圧指令基準値と、交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値とが乖離することがある。そのため、電圧方程式から算出されるd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refに基づいて交流電動機2を制御した場合、図8(a)、(b)に示すように、交流電動機2に通電されるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが略0[A]となり、交流電動機2を実際に駆動するのに必要なトルクが発生しないため、交流電動機2を始動することができない。
回転数Nが0[rpm]において、電流センサを2相に設け、2相の電流検出値に基づいてフィードバック制御(2相制御)した場合、図9に示すように、絶対値としてd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refよりも大きいd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*に基づく電圧が印加され、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に相当するd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが通電されている。
なお、図8および図9においては、(a)がd軸電流、(b)がq軸電流、(c)がd軸電圧、(d)がq軸電圧を示している。また、(a)、(b)においては、実線がd軸実電流値idおよびq軸実電流値iq、破線がd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を示している。また、(c)、(d)においては、破線が2相制御した場合に演算されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*、1点鎖線がd軸電圧指令値vd*の平均値vd_meanおよびq軸電圧指令値vq*の平均値vq_mean、2点鎖線がd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを示している。図8において、(c)、(d)は、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを明確にするために、図9よりも縦軸方向に拡大した状態にて示している。
ここで、回転数Nが0[rpm]において、2相制御にて印加されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*について、電圧方程式に当てはめると、以下の式(7)、(8)のように表される。
vd*=Ra×id*+vd_cmp ・・・(7)
vq*=Ra×iq*+vq_cmp ・・・(8)
すなわち、2相制御では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に相当する電流が通電されるまで、フィードバック制御により電圧指令値を高めていく。そのため、d軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpがフィードバック制御により作り出されている、とみなすことができる。このd軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpは、電圧方程式から算出される理論上の電圧指令基準値と、交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値との差分に相当するとみなせる。
ところで、本実施形態では、インバータ12の上SWおよび下SWが同時オンになる上下短絡を防ぐべく、上SWおよび下SWがオフとなるデッドタイム期間Tdtが設定されている。デッドタイム期間Tdtを設けることにより、実際に交流電動機2に印加される電圧は、理論値とは異なる値となる場合がある。このようなデッドタイム期間Tdtに起因する理論値と実値との差による電圧誤差の影響は、低回転、低トルク域ほど大きい。
そこで本実施形態では、上記式(7)、(8)のd軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpをデッドタイム期間Tdtによる電圧誤差によるとみなし、デッドタイム補正値演算部32にてd軸デッドタイム補正値vd_dtおよびq軸デッドタイム補正値vq_dtを算出し、電圧指令基準値補正部23にてd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正している。
ここで、図10に基づき、d軸デッドタイム補正値vd_dtおよびq軸デッドタイム補正値vq_dtの演算について説明する。
図10(a)は、U相に対応する上SWおよび下SWのオン/オフの切り替えを示している。図10(a)に示すように、上SWがオンであり下SWがオフである状態から、上SWがオフであり下SWがオンである状態への切り替えに際し、上SWおよび下SWの両方がオンになることによる上下短絡を防ぐために、上SWおよび下SWの両方がオフとなるデッドタイム期間Tdtが設けられている。デッドタイム期間Tdtは、スイッチング素子設計により、予め所定の値に設定されている。なお、下SWがオンであり上SWがオフである状態から、下SWがオフであり上SWがオンである状態への切り替え、および、U相以外のV相、W相についても同様である。
各相のデッドタイム補正量vu_dta、vw_dta、vv_dtaは、以下の式(9)のように表される。式中のfcは、PWM信号生成に用いる三角波の周波数であり、VHはインバータ入力電圧である。
vu_dta=vv_dta=vw_dta=Tdt×fc×VH ・・・(9)
また、図10(b)に示すように、U相電流iuが正のとき、デッドタイム補正量vu_dtaを加算し、U相電流iuが負のとき、デッドタイム補正量vu_dtaを減算する。V相、W相についても同様である。
本実施形態では、U相およびV相には電流センサが設けられていないため、各相(特にU相およびV相)電流の正負判定ができない。そこで、本実施形態では、3相電流指令値演算部31にて3相電流指令値iu*、iv*、iw*を演算し、3相電流指令値iu*、iv*、iw*に基づき、各相電流の正負判定を行っている。すなわち、「各相電流指令値の正負に基づき、デッドタイム補正値の正負を決定している」ということである。
具体的には、U相電流指令値iu*が正のとき、U相デッドタイム補正値vu_dt=vu_dtaとし、U相電流指令値iu*が負のとき、U相デッドタイム補正値vu_dt=−vu_dtaとする。また、V相電流指令値iv*が正のとき、V相デッドタイム補正値vv_dt=vv_dtaとし、V相電流指令値iv*が負のとき、V相デッドタイム補正値vv_dt=−vv_dtaとする。さらにまた、W相電流指令値iw*が正のとき、W相デッドタイム補正値vw_dt=vw_dtaとし、W相電流指令値iw*が負のとき、W相デッドタイム補正値vw_dt=−vw_dtaとする。
そして、電気角θeに基づくdq変換により、U相デッドタイム補正値vu_dt、V相デッドタイム補正値vv_dt、および、W相デッドタイム補正値vw_dtを、d軸デッドタイム補正値vd_dtおよびq軸デッドタイム補正値vq_dtに変換する。
算出されたd軸デッドタイム補正値vd_dtをd軸電圧指令基準値vd_refに加算し、q軸デッドタイム補正値vq_dtをq軸電圧指令基準値vq_refに加算することにより、始動に必要な電圧を確保することができ、交流電動機2が停止した状態から駆動を開始することができる。同様に、交流電動機2が駆動している状態から駆動を終了して停止させることができる。
ところで、上SWおよび下SWがオフされる実際のデッドタイムは、予め設定されているデッドタイム期間Tdtからばらつく虞がある。また、電圧方程式の演算に用いる機器定数には誤差が含まれる虞がある。そこで本実施形態では、このようなデッドタイムのばらつきや機器定数の誤差等を考慮し、さらなる補正を行っている。
本実施形態では、回転数Nが低回転域、特に0[rpm]であるとき、電圧位相が電流指令位相と略等しいとみなし、W相電流指令値iw*およびW相電流検出値iw_snsに基づき、電圧振幅を補正している。
ここで、図11に基づき、回転数Nが0[rpm]である場合を例に、電圧振幅補正を概念的に説明する。
図11(a)に示すように、ある電流指令ベクトルi*(id*、iq*)に基づく電圧ベクトルv*(vd*、vq*)を印加したとき、実際に通電された電流の電流ベクトルi(id、iq)が電流指令ベクトルi*(id*、iq*)と異なっていたとする。ここで、図11(b)に示すように、電流指令ベクトルi*と実際に通電された電流ベクトルiの振幅の比率を電圧指令ベクトルv*に乗じ、補正電圧ベクトルv’*(vd’*、vq’*)に応じた電圧を印加することにより、実際に通電される電流の電流ベクトルi(id、iq)を電流指令ベクトルi*(id*、iq*)に近づけることができる。
図3に示すように、本実施形態では、振幅補正係数演算部40を設けている。振幅補正係数演算部40では、W相電流指令値iw*とW相電流検出値iw_snsとの比率である振幅補正係数Kaを算出する。振幅補正係数Kaを式(10)に示す。
Ka=iw*/iw_sns ・・・(10)
振幅補正係数Kaの演算に際し、ゼロで乗算する所謂「ゼロ掛け」やゼロで除算する所謂「ゼロ割り」や演算精度悪化を避けるため、W相電流指令値iw*やW相電流検出値iw_snsが0[A]付近、すなわちW相電流指令値iw*やW相電流検出値iw_snsが0[A]を含む所定範囲内である場合、振幅補正係数Kaを補間することが好ましいので、本実施形態では、例えば1に固定する。なお、W相電流指令値iw*やW相電流検出値iw_snsが0[A]を含む所定範囲内と判断した場合には、振幅補正係数Kaを1に固定する以外に、例えば直前の値を引き継いでも良く、その方法は限定しない。加えて、振幅補正係数Kaが例えば1を含む所定範囲となるように、上限値および下限値を設けてもよい。
ここで、d軸デッドタイム補正値vd_dt、q軸デッドタイム補正値vq_dt、および、振幅補正係数Kaを用いてd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正した第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*_2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intを式(11)、(12)に示す。
vd*_2_int=Ka×(vd_ref+vd_dt) ・・・(11)
vq*_2_int=Ka×(vq_ref+vq_dt) ・・・(12)
回転数Nが判定閾値A以下である場合、第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*_2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intに基づいてPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成し、交流電動機2の駆動を制御することにより、回転数Nが0[rpm]である停止状態から、概ね指令に従って交流電動機2を安定して始動可能である。また、回転数Nが判定閾値Aから概ね指令に従って安定して停止可能である。これにより、交流電動機2を適切に始動、駆動、停止させることができる。
ところで、巻線が巻回されるスロットの配置等の構造や、各相デッドタイムの正負切り替えの影響により、第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*_2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intや、2相制御で演算されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*がある程度周期的に変動する場合がある。
例えば、図12は、第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*_2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intを演算しつつも、2相制御で演算されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*にて交流電動機2を制御した例であるが、2点鎖線で示す第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*_2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intが、電流指令ベクトルi*の位相角θi(または電気角θe)の1周期において、6次で変動している。これに対し、破線で示す2相制御で演算されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*もほぼ同様に変動しているものの、両者には僅かながらに差異がある。2相制御でのトルク精度を基準に考えると、第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*_2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intを実際に印加した場合には、この差異によって、実トルク値trqが変動してしまう虞がある。
尚、図12の例に関しては、上述の通り、交流電動機2と駆動輪6とは、ギア4を介して接続しているので(図1参照)、車両前進時、すなわち駆動輪6が正転方向に回転するとき、交流電動機2は逆転方向に回転し、また、車両前進時、すなわち駆動輪6を正転方向に回転させる場合、交流電動機2としては負トルクを出力する。そのため、車両前進時には、トルク、および、q軸電流は、いずれも負の値となる。尚、d軸電流は、トルクや回転数によらず、常に負の値となる。
そこで本実施形態では、トルク指令値trq*に一致するような実トルク値trqが出力されるようにd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正するため、電圧補正係数演算部52にて、位相角θiに応じたd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqを演算している。本実施形態では、図13に示すように、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqと位相角θiとが対応づけられたマップが、制御部15の図示しない記憶部に格納されている。そして、位相演算部51にて演算された位相角θiを引数とし、電圧補正係数演算部52にてマップ演算によりd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqが求められる。本実施形態では、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqが「交流電動機の実際の挙動に関する実機挙動情報」に対応する。
また、電圧指令基準値補正部23では、d軸デッドタイム補正値vd_dt、q軸デッドタイム補正値vq_dtおよび振幅補正係数Kaに加え、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqに基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算している。第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を式(13)、(14)に示す。
vd*_2=Kd×Ka×(vd_ref+vd_dt) ・・・(13)
vq*_2=Kq×Ka×(vq_ref+vq_dt) ・・・(14)
なお、本実施形態のd軸電圧補正係数Kdは、トルク指令値trq*に一致するトルクを出力可能となるように、d軸電圧指令基準値vd_refをd軸デッドタイム補正値vd_dtおよび振幅補正係数Kaにて補正した値である{Ka×(vd_ref+vd_dt)}を補正するための係数である。同様に、q軸電圧補正係数Kqは、トルク指令値trq*に一致するトルクを出力可能となるように、q軸電圧指令基準値vq_refをq軸デッドタイム補正値vq_dtおよび振幅補正係数にて補正した値である{Ka×(vq_ref+vq_dt)}を補正するための係数である。
ここで本実施形態による交流電動機2の駆動制御処理を図14および図15に示すフローチャートに基づいて説明する。図14および図15に示す処理は、制御部15にて実行されるものである。また、図15は、図14中のFF制御処理を説明するサブフローである。
図14に示すように、最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、回転角センサ14から電気角θeを取得し、回転数Nを演算する。また、電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する。
S102では、電流推定部24にて、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。すなわち本実施形態では、回転数Nによらず、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを常時演算している。
S103では、回転数Nが所定の判定閾値A以下か否かを判断する。回転数Nが判定閾値A以下であると判断された場合(S103:YES)、S106へ移行する。回転数Nが判定閾値Aより大きいと判断された場合(S103:NO)、S104へ移行する。
S104では、推定電流FB制御とし、電圧指令値演算部25にて、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。ここで、直前の処理にてS103にて肯定判断されていた場合、すなわち直前までFF制御であった場合、PI演算において、直前のd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*をPI積分項の初期値として設定することが望ましい。これにより、FF項補正処理から推定電流FB制御処理への切り替え時のd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制することができる。
S105では、d軸電圧指令値vd*として第1のd軸電圧指令値vd*_1を選択し、q軸電圧指令値vq*として第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。
回転数Nが判定閾値A以下であると判断された場合(S103:YES)に移行するS106では、推定電流FB制御に替えて、FF制御とする。
ここで、S106におけるFF制御処理を図15に示すフローチャートに基づいて説明する。
S161では、3相電流指令値演算部31にて、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、および、電気角θeに基づき、3相電流指令値iu*、iv*、iw*を演算する。
S162では、デッドタイム補正値演算部32にて、d軸デッドタイム補正値vd_dtおよびq軸デッドタイム補正値vq_dtを演算する。
S163では、振幅補正係数演算部40にて、振幅補正係数Kaを演算する。
S164では、位相演算部51にて、U相軸を基準とする電流指令ベクトルi*の位相角θiを演算する。
S165では、電圧補正係数演算部52にて、位相角θiに基づき、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqを演算する。本実施形態では、位相角θiを引数とするマップ演算によりd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqを演算する。
S166では、電圧指令基準値演算部22にて、電圧方程式を用い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを演算する。
S167では、電圧指令基準値補正部23にて、d軸デッドタイム補正値vd_dt、q軸デッドタイム補正値vq_dt、振幅補正係数Ka、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqに基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する(式(13)、(14)参照)。
図11に戻り、S106に続いて移行するS107では、d軸電圧指令値vd*として第2のd軸電圧指令値vd*_2を選択し、q軸電圧指令値vq*として第2のq軸電圧指令値vq*を選択する。
S108では、3相電圧指令値演算部27にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を電気角θeに基づいて逆dq変換し、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*を演算する。
S109では、PWM信号生成部28にて、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*をインバータ入力電圧VHに基づいてPWM変調してPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出し、インバータ12へ出力する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることにより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力される。
図16は、参考例として、回転数Nが判定閾値A以下である低回転域において、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqによる補正を行わない第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*_2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intによる制御を行った場合の交流電動機2の挙動を示したものである。図17は、低回転域において、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqによる補正を行った本実施形態の第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2による制御を行った場合の交流電動機2の挙動を示したものである。
図16および図17において、(a)はトルク、(b)は回転数、(c)はd軸電流、(d)はq軸電流、(e)はd軸電圧、(f)はq軸電圧を示している。また、(a)、(c)、(d)において、実線は実値、破線が指令値を示している。また、(e)、(f)においては、2点鎖線が第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intを示し、破線が第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を示している。尚、トルクや回転数方向に関しては、図12の例と同様である。
図16に示す参考例のように、第2のd軸電圧指令値(暫定値)vd*2_intおよび第2のq軸電圧指令値(暫定値)vq*_2_intに基づく3相交流電圧vu、vv、vwを交流電動機2に印加することにより、図16(c)、(d)に示すように、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*とd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqとの間に若干の差がある。これに起因し、実トルク値trqは、トルク指令値trq*に概ね沿っているものの、周期的な変動が見られる。
一方、図17に示す本実施形態のように、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqによる補正を行った第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づく3相交流電圧vu、vv、vwを交流電動機2に印加することにより、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*と、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqとの偏差が低減している。これにより、トルク指令値trq*と実トルク値trqとの偏差も低減している。また、実トルク値trqの変動、特にスロットの配置等の物理的あるいは磁気的な構造やデッドタイムの正負切替に起因する位相角θi1周期中での細かい変動が抑えられているので、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両においてドライバビリティ(ドラビリ)が改善する。
以上詳述したように、本実施形態の電動機制御装置10は、インバータ12によって印加電圧vu、vv、vwが制御される3相の交流電動機2の駆動を制御する。
電動機制御装置10の制御部15では、以下の処理が実行される。交流電動機2のいずれか1相(本実施形態ではW相)であるセンサ相に設けられる電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する(図14中のS101)。また、交流電動機2の回転角を検出する回転角センサ14から電気角θeを取得する(S101)。また、回転数演算部16では、電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nを演算する(S101)。
電流推定部24では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する(S102)。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、電圧指令値演算部25では、交流電動機2の駆動に係るd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*、並びに、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する(S104)。
電圧指令基準値補正部23では、電流指令ベクトルi*の位相角θiに応じた交流電動機2の実際の挙動に関する実機挙動情報であるd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqに基づき、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する(図15中のS167)。詳細には、本実施形態における実機挙動情報は、電動機の理論式を用いてd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいて演算されるd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正するd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqである。また、電圧指令基準値補正部23では、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refをd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqにより補正して第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。
また、回転数Nが所定の判定閾値Aより大きい場合(S103:NO)、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1に基づいてインバータ12の駆動に係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成する推定電流FB制御モードとし、回転数Nが判定閾値A以下である場合(S103:YES)、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいてPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成するFF制御モードとする。具体的には、回転数Nが判定閾値Aより大きい場合(S103:NO)、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する(S105)。また、回転数Nが判定閾値A以下である場合(S103:YES)、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する(S107)。
本実施形態では、W相に電流センサ13を設け、U相およびV相の電流センサを省略しており、つまりは電流センサの数を減らすことができる。これにより、インバータ12の3相出力端子近傍の小型化や電動機制御装置10のコストを低減することができる。
1相(本実施形態ではW相)の電流検出値iw_snsを用いて推定されるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックして交流電動機2の駆動を制御する推定電流FB制御とする場合、回転数Nが小さい低回転域では、サンプリング間隔Tsあたりの電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが小さくなり、実機情報が乏しくなるため、制御が不安定になる虞があり、十分なトルク精度が得られない。
そのため、本実施形態では、回転数Nが判定閾値A以下である低回転域において、推定電流FB制御に替えて、電流指令ベクトルi*の位相角θiに応じた実機挙動情報を用い、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算している。具体的には、本実施形態における実機挙動情報は、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正するd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqである。これにより、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2は、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqを考慮した値となるので、低回転域において、交流電動機2を安定して制御することができる。また、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2の演算にd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqを用いることにより、交流電動機2から出力されるトルクである実トルク値trqの変動が抑制され、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両において低回転域におけるドライバビリティ(ドラビリ)を改善することができる。
本実施形態では、制御部15が「電流取得手段」、「回転角取得手段」、「回転数演算手段」、「電流推定手段」、「第1の電圧指令値演算手段」、「電圧指令基準値演算手段」、「第2の電圧指令値演算手段」、「制御モード切替手段」を構成する。より詳細には、電流推定部24が「電流推定手段」を構成し、電圧指令値演算部25が「第1の電圧指令値演算手段」を構成する。また、電圧指令基準値補正部23が「第2の電圧指令値演算手段」を構成し、切替判定部26が「制御モード切替手段」に対応する。
図14中のS101が「電流取得手段」、「回転角取得手段」および「回転数演算手段」の機能としての処理に相当し、S102が「電流推定手段」の機能としての処理に相当し、S104が「第1の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、図15中のS167が「第2の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、図14中のS105およびS107が「制御モード切替手段」の機能としての処理に相当する。
また、W相が「センサ相」に対応し、W相電流検出値iw_snsが「電流検出値」に対応し、電気角θeが「回転角検出値」に対応する。d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが「電流推定値」に対応し、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が「電流指令値」に対応し、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1が「第1の電圧指令値」に対応する。d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refが「電圧指令基準値」に対応し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2が「第2の電圧指令値」に対応する。
また、d軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqが「実機挙動情報」および「電圧補正値」に対応する。さらにまた、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLが「駆動信号」に対応する。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図18〜図20に基づいて説明する。
上記実施形態では、トルク指令値trq*に一致する実トルク値trqが出力されるように、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正するd軸電圧補正係数Kdおよびq軸電圧補正係数Kqが、位相角θiと対応づけられてマップ化されていた。本実施形態では、例えば図12に示すd軸実電圧値vdおよびq軸実電圧値vqが、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2として位相角θiと直接対応づけられたマップが作成され、当該マップが制御部15の図示しない記憶部に格納されている。すなわち、本実施形態では、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2そのものが、「交流電動機の実際の挙動に関する実機挙動情報」に対応する。
本実施形態の制御部15を図18に示す。本実施形態では、第1実施形態における電圧指令基準値演算部22、電圧指令基準値補正部23、3相電流指令値演算部31、デッドタイム補正値演算部32、および、振幅補正係数演算部40が省略されている。
これに替えて、位相演算部51と切替判定部26との間に電圧指令値参照部55が設けられている。
電圧指令値参照部55では、位相角θiに基づき、マップ演算により第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。
本実施形態による駆動制御処理を図19および図20に示す。
図19に示す駆動制御処理は、図14中のS106にて行われるFF制御に替えて、電圧指令値参照制御(S206)を行っている点が異なる。
回転数Nが判定閾値A以下であると判断された場合(S103:YES)に移行するS206では、推定電流FB制御に替えて、電圧指令値参照制御とする。
ここで、S206における電圧指令値参照制御処理を図20に示すフローチャートに基づいて説明する。
S261では、図15中のS164と同様、位相演算部51にて、U相軸を基準とする電流指令ベクトルi*の位相角θiを演算する。
S262では、電圧指令値参照部55にて、位相角θiに基づき、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。本実施形態では、位相角θiを引数とするマップ演算により、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。
図19に戻り、S206に続いて移行するS107では、図14中のS107と同様、d軸電圧指令値vd*として第2のd軸電圧指令値vd*_2を選択し、q軸電圧指令値vq*として第2のq軸電圧指令値vq*を選択する。
本実施形態では、実機挙動情報は、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2そのものであり、電圧指令値参照部55では、電流指令ベクトルi*の位相角θiに基づくマップ演算により第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算している。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、電圧指令値参照部55が「第2の電圧指令値演算手段」を構成する。また、図20中のS262が「第2の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当する。さらに、「電圧指令値参照制御」が「第2の制御モード」に対応する。
(他の実施形態)
(ア)上記第1実施形態では、電圧指令基準値は、電動機の理論式である電圧方程式に基づいて演算された。他の実施形態では、電圧指令基準値は、予め記憶されたマップを参照することによるマップ演算等、電流指令値に基づいてどのように演算してもよい。尚、電圧指令基準値の演算においては、電流指令値の他、電流指令値の基となるトルク指令、回転数等を適宜用いてよい。
(イ)上記第1実施形態では、電動機の理論式から演算される電圧指令基準値について、デッドタイム補正値および振幅補正係数に基づいて電圧指令基準値を補正し、第2の電圧指令値を演算した。他の実施形態では、電圧指令補正値は、低回転域にて交流電動機を安定して駆動可能となるように、理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機の実際の駆動に係る電圧指令値との差分に相当する値であれば、デッドタイム補正値に基づく値に限らず、どのような値であってもよい。すなわち、電圧指令基準値をどのような値に基づいて補正してもよい。
また、デッドタイム補正値は、例えば、d−q座標におけるデッドタイム補正量v_dtをd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の大きさに応じてd軸およびq軸に振り分ける等、上記実施形態にて説明した以外の方法にて演算してもよい。
また上記第1実施形態では、デッドタイム補正値の演算における各相電流の正負判定に3相電流指令値を用いていた。他の実施形態では、センサ相に関しては、電流検出値に基づいて正負判定を行ってもよい。換言すると、「電流指令値または電流検出値の正負に基づき、デッドタイム補正値の正負を決定している」ということである。
また他の実施形態では、各相の電流指令値がゼロまたはゼロを含む所定範囲内では、デッドタイム補正値をゼロとしてもよい。また、各相の電流指令値がゼロクロスする際にデッドタイム補正値が急変するのを抑制すべく、ローパスフィルタ処理等のスムージング処理を適宜行ってもよい。なお、ここでいう「所定範囲」とは、振幅補正係数の補間に係る「所定範囲」とは、同じとしてもよいし、異なる範囲としてもよい。
上記第1実施形態では、電流指令値と電流検出値との比率に基づいて電圧指令基準値を補正していた。他の実施形態では、電流指令値および電流検出値に基づく補正であれば、比率に限らず、どのように補正してもよい。また、電流指令値および電流検出値に基づく補正を行わなくてもよい。さらに、デッドタイム補正値等に基づく補正も行わず、電圧指令基準値を電圧補正値等の実機挙動情報で補正し、第2の電圧指令値としてもよい。
なお、実機挙動情報である電圧補正値は、補正する対象となる電圧指令値(デッドタイム補正等、他の補正がなされた電圧指令基準値を含む)をトルク指令値trq*に一致する実トルク値trqが出力される電圧指令値に補正する値であるため、対象となる電圧指令値に応じた補正値をマップに格納しておく。後述(オ)のように、トルク指令値毎にマップを持たせる場合も同様である。
また、電流検出値がゼロを含む所定範囲内である場合に、振幅補正係数を1以外の値に固定してもよいし、固定しなくてもよいし、例えばフィルタ処理等の演算を継続することより補間してもよい。また、振幅補正係数の上限値および下限値を設けなくてもよい。
(ウ)上記第1実施形態では、電圧補正値としてd軸電圧補正係数およびq軸電圧補正係数を用いた。他の実施形態では、電圧補正値は、電圧指令基準値を補正可能な値であれば、d軸電圧補正係数およびq軸電圧補正係数に限らず、どのような値としてもよい。また、電圧補正値を用いた電圧指令基準値の補正処理は、乗除算に限らず、加減算等、他の演算により補正してもよい。
(エ)上記第1実施形態では、電流指令ベクトルの位相角を引数とするマップ演算により電圧補正値を演算していた。上記第2実施形態では、電流指令ベクトルの位相角を引数とするマップ演算により第2の電圧指令値を演算していた。他の実施形態では、電流指令ベクトルの位相角に替えて、電気角に基づいて電圧補正値または第2の電圧指令値を演算してもよい。なお、上記実施形態のように、デッドタイム補正を行う場合、実際のデッドタイムは、電圧から見て電流位相によっても進遅し電流位相によっても変化するため、位相角に基づいて電圧補正値を演算することが望ましい。
(オ)また、電圧補正値に関するマップ、または、第2の電圧指令値に関するマップは、トルク指令値の大きさ毎に複数記憶させておいてもよい。換言すると、「実機挙動情報は、回転角検出値または電流指令ベクトルの位相角とトルク指令値とに応じた値である」ということである。また、「電圧補正値は、回転角検出値または電流指令ベクトルの位相角とトルク指令値とに基づいて演算してもよい」ということであり、「第2の電圧指令値は、回転角検出値または電流指令ベクトルの位相角とトルク指令値とに基づいて演算してもよい」ということである。
また、実機挙動情報は、電圧指令基準値を補正する電圧補正値または第2の電圧指令値そのもの以外であってもよい。
また、例えば等トルクライン上にて電流指令ベクトルを移動させる等により、電流指令を複数有する場合は、それぞれの指令に対し、実機挙動情報に関する補正マップを設けることが望ましい。
(カ)FF制御処理または電圧指令値参照制御処理と推定電流FB制御処理との切り替えに係る回転数の判定閾値は、推定電流FB制御の演算精度等を考慮し、適宜設定することができる。また、上記実施形態では、1つの判定閾値によりFF項補正処理または電圧指令値参照制御処理と推定電流FB制御処理とを切り替えていた。他の実施形態では、FF項補正処理または電圧指令値参照制御処理と推定電流FB制御処理との切り替えハンチングを避けるため、回転数が上昇する側と下降する側とで回転数の判定閾値と異なる値としてもよい。すなわち、回転数が上昇する側と下降する側とで回転数の判定閾値にヒステリシス(ヒス)を設けてもよい、ということである。この場合、上昇側の判定閾値をAu、下降側の判定閾値をAdとした場合、例えばAu>Adとすることが好ましいが、Au<Adとしてもよい。
(キ)上記実施形態では、電流推定部において、センサ相以外の相については電流指令値を推定値とみなし、d軸電流推定値およびq軸電流推定値を演算していた。
電流推定部における演算方法は、これに限らず、電流検出値および電気角に基づいて演算されていれば、どのような方法であってもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。また、第1の電圧指令値は、電流指令値、および、フィードバックされた電流推定値に基づいて算出されていれば、どのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、d軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値は、回転数によらず、常時演算されていた。他の実施形態では、回転数が判定閾値より大きい場合にd軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値を演算し、回転数が判定閾値以下の場合、d軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値の演算を中止してもよい。
以下、電流推定部にて採用可能な電流推定方法を例示しておく。
(i)電流指令位相を用いた基準角と振幅に基づく演算
例えば、特開2004−159391号公報のように、電流指令位相角と電気角から生成したU相電流基準角(θ’)」で除して電流振幅(Ia)を算出し、この電流振幅を、U相電流基準角から±120[°]ずらした電気角におけるsin値に乗じて他の2相の電流推定値Iv、Iwを算出する(式15.1〜15.3)。
Ia=Iu/[√(1/3)×({−sin(θ’)}] ・・・(15.1)
Iv=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+120[°])}・・・(15.2)
Iw=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+240[°])}・・・(15.3)
以下、(ii)〜(iv)では、センサ相をW相として説明する。
(ii)電流指令値を用いたセンサ相基準位相に基づく演算
U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*の少なくとも一方、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeを用い、センサ相に一致するα軸方向のα軸電流iαおよびセンサ相に直交するβ軸方向のβ軸電流iβを演算し、α軸電流iαおよびβ軸電流iβの逆正接関数(arctan)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。センサ相基準電流位相θxの演算式を式(16)に示す。
θx=tan-1(iβ/iα) ・・・(16)
また、センサ相基準電流位相θxおよびW相電流検出値iw_snsに基づき、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_estを演算し、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_est、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。なお、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_estの演算において、ゼロで除算する「ゼロ割り」やゼロで乗算する「ゼロ掛け」を回避するような補正処理を行ってもよい。
(iii)α軸電流の微分による演算
α軸電流iαとβ軸電流iβが「sin波とcos波」の関係にあり、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]であることに着目し、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算する。ここで、制御部における演算が離散系である場合、α軸電流微分値Δiαは、実際のβ軸電流iβに対し、電気角移動量Δθeの半分だけ遅れる。この点を考慮し、α軸電流iαの前回値と今回値との平均値に電気角移動量Δθeの半分(Δθe/2)を乗じた補正量Hにて補正したβ軸電流推定値iβ_estとすることが好ましい。そして、α軸電流iαおよびβ軸電流推定値iβ_estを用いてセンサ相基準電流位相θxを演算する。以降の演算は(ii)と同様である。
(iv)漸化式による演算
回転座標系であるd−q座標上でW相軸が相対的に回転することを利用し、W相推定誤差Δiw_estを積算してd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近させる。
前回のd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_est、および今回の電気角θeに基づき、センサ相成分であるW相電流基準値iw_bfを演算し、W相電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとの差であるW相推定誤差Δiw_estを算出する。W相推定誤差Δiw_estにフィルタ要素であるゲインKを乗じた補正後誤差KΔiw_estを算出し、Δiu=0、Δiv=0とし、dq変換によりセンサ相方向補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrを演算する。そして算出されたd軸補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrをセンサ相方向の補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算することにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、センサ相に直交する直交方向補正値をさらに演算し、センサ相方向補正値および直交方向補正値の合成ベクトルを補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算するようにしてもよい。
(ク)上記実施形態では、「電流推定値」、「電流指令値」、「第1の電圧指令値」、「第2の電圧指令値」、「電圧指令基準値」、「デッドタイム補正値」、および、「電圧補正値」は、いずれもd−q座標のものについて説明したが、交流電動機の各相に対応する値やその他の軸に基づくものであってもよい。
(ケ)交流電動機の印加電圧を制御するインバータは、どのような方法で制御されてもよい。例えば、正弦波PWM制御モード、および、過変調PWM制御モード等を適宜切り替えて制御されるように構成してもよい。
(コ)上記実施形態では、電流センサがW相に設けられ、W相がセンサ相である例について説明した。他の実施形態では、電流センサがU相に設けられ、U相をセンサ相としてもよい。また、電流センサがV相に設けられ、V相をセンサ相としてもよい。
(サ)上記実施形態では、電流センサが1相に設けられている例について説明した。他の実施形態では、例えば制御に用いる電流を検出する電流センサ(以下、制御用センサ)の異常検出をするための独立した電流センサ(以下:異常検出用センサ)がセンサ相またはセンサ相以外の相に設けられていてもよい。例として、1相に制御用センサと異常検出用センサを設けた1相2チャンネルや、1相に制御用センサを設け、それ以外の相のいずれかに1相に異常検出用センサを設けた2相1チャンネルなどのセンサ構成が挙げられるが、どの相にいくつ設けられてもよい。
(シ)上記実施形態では、回転角センサは電気角θeを検出し、制御部へ出力した。他の実施形態では、回転角センサは機械角θmを検出し、制御部へ出力し、制御部の内部にて電気角θeに換算してもよい。また、電気角θeに替えて、機械角θmを「回転角検出値」としてもよい。さらにまた、回転数Nは、機械角θmに基づいて算出してもよい。
(ス)上記実施形態では、交流電動機は、永久磁石式同期型の三相交流電動機であったが、他の実施形態では、誘導電動機やその他の同期電動機であってもよい。また、上記実施形態の交流電動機は、電動機としての機能および発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであったが、他の実施形態では、発電機としての機能を持たない電動機であってもよい。
交流電動機は、エンジンに対して電動機として動作し、エンジンの始動を行うように構成されていてもよい。また、エンジンを設けなくてもよい。さらに、交流電動機を複数設けてもよいし、複数の交流電動機における動力を分割する動力分割機構等をさらに設けてもよい。
(セ)本発明による交流電動機の制御装置は、上記実施形態のようにインバータと交流電動機を1組設けたシステムに限らず、インバータと交流電動機を2組以上設けたシステムに適用してもよい。また、1台のインバータに複数台の交流電動機を並列接続させた電車等のシステムに適用してもよい。
また、交流電動機の制御装置は、電動車両に適用されていたが、電動車両以外に用いてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
2・・・交流電動機
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)
12・・・インバータ
13・・・電流センサ
14・・・回転角センサ
15・・・制御部(電流取得手段、回転角取得手段、回転数演算手段、電流推定手段、第1の電圧指令値演算手段、第2の電圧指令値演算手段、制御モード切替手段)

Claims (4)

  1. インバータ(12)によって印加電圧が制御される3相の交流電動機(2)の駆動を制御する交流電動機の制御装置(10)であって、
    前記交流電動機のいずれか1相であるセンサ相に設けられる電流センサ(13)から電流検出値を取得する電流取得手段(15)と、
    前記交流電動機の回転角を検出する回転角センサ(14)から回転角検出値を取得する回転角取得手段(15)と、
    前記回転角検出値に基づき、前記交流電動機の回転数を演算する回転数演算手段(16)と、
    前記電流検出値および前記回転角検出値に基づき、電流推定値を演算する電流推定手段(24)と、
    前記交流電動機の駆動に係る電流指令値、および、フィードバックされる前記電流推定値に基づき、第1の電圧指令値を演算する第1の電圧指令値演算手段(25)と、
    前記回転角検出値または電流指令ベクトルの位相角に応じた前記交流電動機の実際の挙動に関する実機挙動情報に基づき、第2の電圧指令値を演算する第2の電圧指令値演算手段(23、55)と、
    前記回転数が所定の判定閾値より大きい場合、前記第1の電圧指令値に基づいて前記インバータの駆動に係る駆動信号を生成する第1の制御モードとし、前記回転数が前記判定閾値以下である場合、前記第2の電圧指令値に基づいて前記駆動信号を生成する第2の制御モードとする制御モード切替手段(26)と、
    を備えることを特徴とする交流電動機の制御装置。
  2. 前記実機挙動情報は、前記電流指令値に基づいて演算される電圧指令基準値を補正する電圧補正値であり、
    前記第2の電圧指令値演算手段は、前記電圧指令基準値を前記電圧補正値により補正して前記第2の電圧指令値を演算することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記実機挙動情報は、前記第2の電圧指令値そのものであり、
    前記第2の電圧指令値演算手段は、前記回転角検出値または前記電流指令ベクトルの位相角に基づくマップ演算により前記第2の電圧指令値を演算することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記実機挙動情報は、前記回転角検出値または前記電流指令ベクトルの位相角に加え、トルク指令値に応じた値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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