JP2010088240A - 交流電動機の制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】交流電動機に印加される矩形波電圧の位相を設定するフィードフォワード制御を、記憶すべきデータ容量および演算処理負荷の両方を抑制して実現する。
【解決手段】現在のモータ変数ω,VHを代入したトルク演算式に従って、現在の電圧位相θcrに基づく初期位相θ(0)に対応する初期トルク値T(0)が算出され、かつ、トルク指令値Tqcomとの高低が判定される。電圧位相は、この判定結果に従って、トルクがトルク指令値に近づく方向に段階的に変化される。電圧位相が変化される毎に、上記トルク演算式に従って対応のトルク値が算出される。トルク値およびトルク指令値Tqcomとの高低関係が初期トルク値の場合から反転されると、その際のトルク値T(4)および電圧位相θ(4)ならびに、前回のトルク値T(3)および電圧位相θ(3)の線形補間により、トルク指令値Tqcomに対応する電圧指令θffが設定される。
【選択図】図8

Description

この発明は、交流電動機の制御システムに関し、より特定的には、直流電圧をインバータにより矩形波交流電圧に変換して交流電動機へ印加するモータ制御に関する。
直流電力をインバータによって交流電力に変換することによって、交流電動機を駆動制御するモータ制御システムが一般的に用いられている。このようなモータ制御システムでは、一般的には、交流電動機を高効率で駆動するために、ベクトル制御に基づく正弦波パルス幅変調(PWM)制御に従ってモータ電流が制御される。
しかしながら、正弦波PWM制御ではインバータの出力電圧の基本波成分を十分に高めることができず電圧利用率に限界があるため、高速領域で高出力を得ることが難しいという問題点がある。この点を考慮して、正弦波PWM制御よりも基本波成分が大きい制御方式として、矩形波電圧を交流電動機に印加してモータ制御を実行する制御構成が、たとえば、特開2000−50689号公報(特許文献1)、特開2004−289927号公報(特許文献2)および特開2006−54995号公報(特許文献3)に記載されている。
このような矩形波電圧制御では、交流電動機の印加電圧の振幅については制御することができず、その電圧位相のみを制御することになる。したがって、矩形波電圧制御については、安定性および/または応答性を高めるための制御構成が検討される。たとえば上記特許文献1には、トルク指令値とトルク実績値との偏差に基づくトルクフィードバック制御において、電圧位相の制御範囲を所定の位相範囲(たとえば、非突極型の交流電動機において±90°以内)に制限することによって、制御安定性を高めることが記載されている。
また特許文献2には、三相同期モータの回転速度、交流電力および変換効率に基づいて推定されたモータトルクとトルク指令値との偏差が0になるようにPI制御またはPID制御を行なってd軸電圧指令値を求めるとともに、d軸電圧指令値および直流電源の電圧に基づいて矩形波電圧の電圧位相を演算する制御構成が記載されている。
さらに、特許文献3には、特許文献1,2と同様のトルクフィードバック制御において、交流電動機の電圧・電流を用いた電力演算によるトルク検出値とトルク指令値との偏差に基づくフィードバック制御と、交流電動機の印加電圧指令値と電動機モデルとを用いて推定したトルク値とトルク指令値との偏差に基づくフィードバック制御を重み付け加算して、トルク制御を実行することが記載されている。
また、位相制御の一環として、ブラシレスDCモータに対して、最大効率制御を達成すべく電流位相を制御して電流位相を目標電流位相にする制御方式が、特開2001−119978号公報(特許文献4)に記載されている。
特開2000−50689号公報 特開2004−289927号公報 特開2006−54995号公報 特開2001−119978号公報
一般的に、矩形波電圧制御では、モータ電流が歪むために電流フィルタ処理が必要になること等に起因して、フィードバック制御の応答性を高めることが困難である。このため、交流電動機の動作指令値やモータ定数等に従って、矩形波電圧の位相をフィードフォワード制御することが行なわれる。
しかしながら、このようなフィードフォワード制御において、設定された動作指令値に対して適切な電圧位相を求めるには、交流電動機のモータ定数のみならず、交流電動機の運転状態を示す変数(回転速度等)とトルクとの対応関係に従って電圧位相を設定する必要がある。したがって、変数およびトルク指令値を引数として電圧位相を求めるマップを予め構成すると、フィードフォワード制御の精度を確保するためには、マップ点数の増大によって当該マップの記憶容量が大きくなることが懸念される。
特に、フィードバック制御およびフィードフォワード制御を組合せたり、矩形波電圧制御とPWM制御とを交流電動機の状態に応じて使い分けるような制御を採用する場合には、モータ制御全体で必要となる記憶容量の増大に伴い、フィードフォワード制御による記憶容量を抑制することが求められる。
その一方で、記憶容量を抑制するためにマップを用いずにフィードフォワード制御による電圧位相を演算する場合には、当該演算処理のためのCPU(Central Processing Unit)の負荷が増大しないように考慮することが必要となる。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、交流電動機の運転状態を示す変数および動作指令値に応じて、交流電動機に印加される矩形波電圧の位相を設定するフィードフォワード制御を、予め記憶すべきデータ容量および演算処理負荷を抑制した上で実現することである。
この発明による交流電動機の制御装置は、直流電圧を交流電動機を駆動するための交流電圧に変換するインバータと、インバータへ入力される直流電圧を電圧指令値に従って可変制御するコンバータと、第1のモータ制御部とを備える。第1のモータ制御部は、交流電動機がトルク指令値に従ったトルクを出力するように、交流電動機の運転状態に関連する少なくとも1つのモータ変数と、トルク指令値とに基づいて、インバータから交流電動機へ印加される矩形波電圧の電圧位相を設定するように構成される。第1のモータ制御部は、第1の判定部と、演算部と、第2の判定部と、抽出部と、位相算出部とを含む。第1の判定部は、モータ変数および電圧位相を変数とするトルク演算式に従って算出された、現在の電圧位相に基づく初期位相に対応する初期トルク値とトルク指令値との高低を判定するように構成される。演算部は、第1の判定部による判定結果に従って、対応するトルク値がトルク指令値へ近づく方向へ電圧位相を段階的に変化させるとともに、電圧位相を変化させる毎に上記トルク演算式に従って当該電圧位相におけるトルク値を算出するように構成される。第2の判定部は、演算部によってトルク値が算出される毎に、算出されたトルク値とトルク指令値との高低が第1の判定部による判定結果から反転されたか否かを判定するように構成される。抽出部は、第2の判定部によってトルク指令値に対する高低が反転したと判定されたときのトルク値である第1のトルク値と、当該第1のトルク値に対応する電圧位相である第1の位相と、初期位相および初期位相から段階的に変化された電圧位相のうちの、第1の電圧位相に最も近い電圧位相である第2の位相と、第2の位相に対応するトルク値である第2のトルク値とを抽出するように構成される。位相算出部は、抽出された第1および第2のトルク値の差分と第1および第2の位相の差分との比率と、第1および第2の位相の一方とに基づいて、トルク指令値に対応する電圧位相を算出するように構成される。
好ましくは、演算部は、第2の判定部によってトルク指令値に対する高低が反転したと判定されるまでの間、電圧位相を段階的に変化させる。
上記交流電動機の制御システムによれば、交流電動機の運転状態に関連するモータ変数とトルク指令値とを引数とするマップの参照を行なうことなく、上記モータ変数の現在値を代入したトルク演算式に従う演算に基づいて、トルク指令値を挟んだ第1および第2のトルク値とそれぞれに対応する第1および第2の位相の線形補間によって、トルク指令値に対応する電圧位相を設定することができる。特に、トルク演算式に従って、トルク指令値を挟んだ第1および第2のトルク値および対応する第1および第2の位相を得るための、トルク演算式に従った演算処理回数を抑制できる。したがって、トルク演算式に従った、トルク指令値に対応する電圧位相(フィードフォワード項)を求めるための演算処理負荷を高めることなく、かつ、複数の引数による多次元マップを記憶することなく、交流電動機の運転状態を把握した上でトルク指令値に対応した電圧位相を設定するフィードフォワード制御を実現することができる。
さらに好ましくは、演算部は、電圧位相を段階的に変化させる際に、所定位相ずつ電圧位相を変化させる。
このようにすると、簡易な制御構成によって、上記フィードフォワード制御を実現できる。
また、さらに好ましくは、演算部は、トルク演算式に従って算出されたトルク値とトルク指令値との差分に応じて可変に設定された位相変化量に従って、電圧位相を段階的に変化させる。
このようにすると、トルク指令値を挟んだ第1および第2のトルク値に対応する電圧位相を得るまでの、電圧位相の段階的な変化およびトルク演算式に従った対応のトルク値算出の演算処理の回数を低減できる。この結果、上記フィードフォワード制御の演算処理負荷をさらに軽減できる。
あるいは好ましくは、交流電動機の制御システムは、第2のモータ制御部をさらに備える。第2のモータ制御部は、交流電動機がトルク指令値に従ったトルクを出力するように、交流電動機のトルク指令値に対するトルク偏差に基づいて矩形波電圧の電圧位相を制御するように構成される。そして、第1および第2のモータ制御部のそれぞれによる設定値の和に従って、電圧位相の指令値は設定される。
このようにすると、トルク偏差に基づくフィードバック制御と、交流電動機の運転状態に関連する変数を反映したトルク演算式に基づくフィードフォワード制御との組合せにより矩形波電圧制御を高精度化できるとともに、両制御を併用しても、予め記憶すべきデータ量の増大を軽減することができる。
また好ましくは、交流電動機は、電動車両に搭載されて当該電動車両の車両駆動力を発生するように構成される。
上記電動車両によれば、交流電動機の高速領域の出力向上に寄与する矩形波電圧制御を、電子制御ユニット(ECU)の記憶領域を過度に占有することなく、かつ、演算処理負荷を過度に高めることなく実現することができる。
この発明によると、交流電動機の運転状態を示す変数および動作指令値に応じて、交流電動機に印加される矩形波電圧の位相を設定するフィードフォワード制御を、予め記憶すべきデータ容量および演算処理負荷を抑制した上で実現することできる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
(システム構成)
図1は、本発明の実施の形態に従う交流電動機の制御システムの全体構成図である。
図1を参照して、モータ制御システム100は、直流電圧発生部10♯と、平滑コンデンサC0と、インバータ14と、制御装置30と、交流電動機M1とを備える。
交流電動機M1は、たとえば、ハイブリッド自動車または電気自動車等の電動車両の駆動輪を駆動するためのトルクを発生する駆動用電動機である。すなわち、本実施の形態では、電動車両は、エンジンを搭載しない電気自動車を含め、車輪駆動力発生用の電動機を搭載する車両全般を含むものである。なお、交流電動機M1は、一般的には、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成される。また、この交流電動機M1は、ハイブリッド自動車では、エンジンにて駆動される発電機の機能を持つように構成されてもよい。さらに、交流電動機M1は、エンジンに対して電動機として動作し、たとえば、エンジン始動を行ない得るようなものとしてハイブリッド自動車に組み込まれるようにしてもよい。
直流電圧発生部10♯は、直流電源Bと、システムリレーSR1,SR2と、平滑コンデンサC1と、昇降圧コンバータ12とを含む。
直流電源Bは、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池、燃料電池や電気二重層キャパシタ、あるいは、これらの組合せから成る。直流電源Bが出力する直流電圧Vbは、電圧センサ10によって検知される。電圧センサ10は、検出した直流電圧Vbを制御装置30へ出力する。
システムリレーSR1は、直流電源Bの正極端子および電力線6との間に接続され、システムリレーSR2は、直流電源Bの負極端子およびアース線5の間に接続される。システムリレーSR1,SR2は、制御装置30からの信号SEによりオン/オフされる。平滑コンデンサC1は、電力線6およびアース線5の間に接続される。
昇降圧コンバータ12は、リアクトルL1と、電力用半導体スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。
電力用スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線7およびアース線5の間に直列に接続される。電力用スイッチング素子Q1およびQ2のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S1およびS2によって制御される。
この発明の実施の形態において、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、
電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。
リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと電力線6の間に接続される。また、平滑コンデンサC0は、電力線7およびアース線5の間に接続される。
インバータ14は、電力線7およびアース線5の間に並列に設けられる、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とから成る。各相アームは、電力線7およびアース線5の間に直列接続されたスイッチング素子から構成される。たとえば、U相アーム15は、スイッチング素子Q3,Q4から成り、V相アーム16は、スイッチング素子Q5,Q6から成り、W相アーム17は、スイッチング素子Q7,Q8から成る。また、スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3〜Q8のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8によって制御される。
各相アームの中間点は、交流電動機M1の各相コイルの各相端に接続されている。代表的には、交流電動機M1は、3相の永久磁石モータであり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中点に共通接続されて構成される。さらに、各相コイルの他端は、各相アーム15〜17のスイッチング素子の中間点と接続されている。
昇降圧コンバータ12は、昇圧動作時には、直流電源Bから供給された直流電圧Vbを昇圧した直流電圧(インバータ14への入力電圧に相当するこの直流電圧を、以下「システム電圧」とも称する)VHをインバータ14へ供給する。また、昇降圧コンバータ12は、降圧動作時には、平滑コンデンサC0を介してインバータ14から供給された直流電圧(システム電圧)を降圧して直流電源Bを充電する。昇圧動作時および降圧動作時において、スイッチング素子Q1,Q2のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S1,S2にそれぞれ応答して制御される。なお、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ固定すれば、VH=Vb(電圧比=1.0)とすることもできる。
平滑コンデンサC0は、昇降圧コンバータ12からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をインバータ14へ供給する。電圧センサ13は、平滑コンデンサC0の両端の電圧、すなわちシステム電圧VHを検出し、検出した電圧を制御装置30へ出力する。
インバータ14は、交流電動機M1のトルク指令値が正(Tqcom>0)の場合には、平滑コンデンサC0から直流電圧が供給されると制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8に応答した、スイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作により直流電圧を適切なモータ印加電圧(交流電圧)に変換して正のトルクを出力するように交流電動機M1を駆動する。また、インバータ14は、交流電動機M1のトルク指令値が零の場合(Tqcom=0)には、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、直流電圧を適切なモータ印加電圧(交流電圧)に変換してトルクが零になるように交流電動機M1を駆動する。これにより、交流電動機M1は、トルク指令値Tqcomによって指定された零または正のトルクを発生するように駆動される。
さらに、モータ制御システム100が搭載された電動車両の回生制動時には、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomは負に設定される(Tqcom<0)。この場合には、インバータ14は、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、交流電動機M1が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧(システム電圧)を平滑コンデンサC0を介して昇降圧コンバータ12へ供給する。なお、ここで言う回生制動とは、電動車両を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
電流センサ24は、交流電動機M1に流れるモータ電流を検出し、その検出したモータ電流を制御装置30へ出力する。なお、三相電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように電流センサ24は2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように配置すれば足りる。
回転角センサ(レゾルバ)25は、交流電動機M1のロータ回転角ANGを検出し、その検出した回転角ANGを制御装置30へ送出する。制御装置30では、回転角ANGに基づき交流電動機M1の回転速度(単位時間当たりの回転数(代表的にはrpm)によって示されるものとする)および角速度ω(rad/s)を算出できる。なお、回転角センサ25については、回転角ANGを制御装置30にてモータ電圧や電流から直接演算することによって、配置を省略してもよい。
制御装置30は、図示しないCPUおよびメモリを内蔵した電子制御ユニット(ECU)により構成され、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサによる検出値を用いた演算処理を行なう。制御装置30は、このような演算処理により、交流電動機M1が上位ECUからの動作指令に従って運転されるように、モータ制御システム100の動作を制御する。なお、制御装置30の一部については、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
具体的には、制御装置30は、トルク指令値Tqcom、電圧センサ10によって検出されたバッテリ電圧Vb、電圧センサ13によって検出されたシステム電圧VHおよび電流センサ24からのモータ電流iv,iw、回転角センサ25からの回転角ANGに基づいて、後述する方法により交流電動機M1がトルク指令値Tqcomに従ったトルクを出力するように、昇降圧コンバータ12およびインバータ14の動作を制御する。すなわち、昇降圧コンバータ12およびインバータ14を上記のように制御するためのスイッチング制御信号S1〜S8を生成して、昇降圧コンバータ12およびインバータ14へ出力する。
昇降圧コンバータ12の昇圧動作時には、制御装置30は、平滑コンデンサC0の出力電圧VHをフィードバック制御し、出力電圧VHが電圧指令値となるようにスイッチング制御信号S1,S2を生成する。
また、制御装置30は、電動車両が回生制動モードに入ったことを示す信号RGEを上位ECUから受けると、交流電動機M1で発電された交流電圧を直流電圧に変換するようにスイッチング制御信号S3〜S8を生成してインバータ14へ出力する。これにより、インバータ14は、交流電動機M1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇降圧コンバータ12へ供給する。
さらに、制御装置30は、電動車両が回生制動モードに入ったことを示す信号RGEを外部ECUから受けると、インバータ14から供給された直流電圧を降圧するようにスイッチング制御信号S1,S2を生成し、昇降圧コンバータ12へ出力する。これにより、交流電動機M1が発電した交流電圧は、直流電圧に変換され、降圧されて直流電源Bに供給される。さらに、制御装置30は、システムリレーSR1,SR2をオン/オフするための信号SEを生成してシステムリレーSR1,SR2へ出力する。
(制御構成)
次に、制御装置30によって制御される、インバータ14における電力変換について詳細に説明する。
図2に示すように、本発明の実施の形態によるモータ制御システム100では、インバータ14における電力変換について3つの制御モードを切換えて使用する。
正弦波PWM制御は、一般的なPWM制御として用いられるものであり、各相アームにおけるスイッチング素子のオン・オフを、正弦波状の電圧指令値と搬送波(代表的には三角波)との電圧比較に従って制御する。この結果、上アーム素子のオン期間に対応するハイレベル期間と、下アーム素子のオン期間に対応するローレベル期間との集合について、一定期間内でその基本波成分が正弦波となるようにデューティ比が制御される。周知のように、正弦波PWM制御では、この基本波成分(実効値)をインバータ入力電圧の0.61倍程度までしか高めることができない。以下、本明細書では、インバータ14の直流リンク電圧(すなわち、システム電圧VH)に対する交流電動機M1への印加電圧(以下、単に「モータ印加電圧」とも称する)の基本波成分の比を「変調率」と称することとする。
一方、矩形波電圧制御では、上記一定期間内で、ハイレベル期間およびローレベル期間の比が1:1の矩形波1パルス分を交流電動機印加する。これにより、変調率は0.78まで高められる。
過変調PWM制御は、電圧指令の振幅が搬送波振幅より大きい範囲で上記正弦波PWM制御と同様のPWM制御を行なうものである。特に、電圧指令を本来の正弦波波形から歪ませることによって基本波成分を高めることができ、変調率を正弦波PWM制御モードでの最高変調率から0.78の範囲まで高めることができる。
交流電動機M1では、回転数や出力トルクが増加すると誘起電圧が高くなるため、必要となる駆動電圧(モータ必要電圧)が高くなる。コンバータ12による昇圧電圧すなわち、システム電圧VHはこのモータ必要電圧よりも高く設定する必要がある。その一方で、コンバータ12による昇圧電圧すなわち、システム電圧VHには限界値(VH最大電圧)が存在する。
したがって、モータ電流のフィードバックによってモータ印加電圧(交流)の振幅および位相を制御する、正弦波PWM制御または過変調PWM制御によるPWM制御モード、および、矩形波電圧制御モードのいずれかが、選交流電動機M1の動作状態に応じて択的に適用される。なお、矩形波電圧制御では、モータ印加電圧の振幅が固定されるため、トルク実績値とトルク指令値との偏差に基づく、矩形波電圧パルスの位相制御によってトルク制御が実行される。
図3には、交流電動機M1の動作状態と上述の制御モードとの対応関係が示される。
図3を参照して、概略的には、低速度域A1ではトルク変動を小さくするために正弦波PWM制御が用いられ、中速度域A2では過変調PWM制御、高速度域A3では、矩形波電圧制御が適用される。特に、過変調PWM制御および矩形波電圧制御の適用により、交流電動機M1の出力向上が実現される。このように、図2に示した制御モードのいずれを用いるかについては、基本的には、実現可能な変調率の範囲内で決定される。
次に、PWM制御および矩形波電圧制御の詳細について説明する。
図4は、制御装置30によって実行される、正弦波PWM制御および過変調PWM制御における制御ブロック図である。なお、図4中の各ブロックは、制御装置30によって実行される所定プログラムおよび/または制御装置30内の電子回路による制御演算処理によって実現される。
図4を参照して、PWM制御部200は、電流指令生成部210と、座標変換部220,250と、PI演算部240と、PWM信号生成部260とを含む。
電流指令生成部210は、予め作成されたテーブル等に従って、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomに対応した、d軸電流指令値Idcomおよびq軸電流指令値Iqcomを生成する。
座標変換部220は、回転角センサ25によって検出される交流電動機M1の回転角ANGを用いた座標変換(3相→2相)により、電流センサ24によって検出されたv相電流ivおよびW相電流ivを基に、d軸電流Idおよびq軸電流Iqを算出する。
PI演算部240には、d軸電流の指令値に対する偏差ΔId(ΔId=Idcom−Id)およびq軸電流の指令値に対する偏差ΔIq(ΔIq=Iqcom−Iq)が入力される。PI演算部240は、d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqのそれぞれについて、所定ゲインによるPI演算を行なって制御偏差を求め、この制御偏差に応じたd軸電圧指令値Vd♯およびq軸電圧指令値Vq♯を生成する。
座標変換部250は、交流電動機M1の回転角ANGを用いた座標変換(2相→3相)によって、d軸電圧指令値Vd♯およびq軸電圧指令値Vq♯をU相、V相、W相の各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換する。なお、d軸,q軸電圧指令値Vd♯,Vq♯から各相電圧指令値Vu,Vv,Vwへの変換には、システム電圧VHも反映される。
PWM信号生成部260は、各相における電圧指令値Vu,Vv,Vwと所定の搬送波との比較に基づいて、図1に示したスイッチング制御信号S3〜S8を生成する。インバータ14が、PWM制御部200によって生成されたスイッチング制御信号S3〜S8に従ってスイッチング制御されることにより、交流電動機M1に対してトルク指令値Tqcomに従ったトルクを出力するための交流電圧が印加される。
なお、過変調PWM制御時には、モータ印加電圧の基本波成分に相当する交流電圧指令、すなわち電圧指令値Vd♯,Vq♯を2相−3相変換した各相電圧指令の振幅が、インバータ入力電圧(システム電圧VH)よりも大きい状態となる。しかしながら、インバータ14から交流電動機M1に対してはシステム電圧VHを超えた電圧が印加できないため、本来の電圧指令値Vd♯,Vq♯に従ったPWM制御によっては、電圧指令値Vd♯,Vq♯に対応する本来の変調率が確保できなくなる。
このため、過変調PWM制御時には、電圧指令値Vd♯,Vq♯による交流電圧指令に対して、電圧印加区間が増大するように電圧振幅を拡大(×k倍,k>1)する振幅補正処理を行うことによって、電圧指令値Vd♯,Vq♯による本来の変調率が確保できるようになる。図4の構成例では、座標変換部250によって、過変調PWM制御適用時における振幅補正処理が併せて実行されるものとする。
さらに、制御モード判定部300と、VH指令値生成部310とが設けられる。制御モード判定部300は、システム電圧VH、d軸電圧指令値Vd♯およびq軸電圧指令値Vq♯を用いて変調率を算出し、算出した変調率に従って、正弦波PWM制御および過変調PWM制御の一方を選択する。たとえば、変調率FMの演算は下記(a)式により実行できる。
FM=(Vd♯2+Vq♯21/2/VH ・・・(a)
VH指令値生成部310は、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomおよび回転速度Nmに応じて、システム電圧VHの制御指令値VH♯(以下、電圧指令値VH♯とも称する)を生成する。
PWM信号生成部350は、電圧センサ10によって検出されたバッテリ電圧Vb、現在のシステム電圧VHに基づき、昇降圧コンバータ12の出力電圧が電圧指令値VH♯となるように、所定のPWM制御に従って、スイッチング制御信号S1,S2を生成する。
以上のような構成とすることにより、PWM制御時には、交流電動機M1の出力トルクがトルク指令値Tqcomと一致するように、モータ電流(Id,Iq)のフィードバック制御が行なわれる。
(本実施の形態による矩形波電圧制御)
次に、図5〜図10を用いて、本発明の実施の形態による矩形波電圧制御での制御動作を説明する。なお、以下の説明で明らかになるように、本実施の形態による交流電動機の制御システムは、矩形波電圧制御、特にフィードフォワード制御の制御構成に特徴点を有するものである。すなわち、矩形波電圧制御のフィードフォワード制御以外の部分については、周知の制御構成を任意に適用可能であることを確認的に記載する。
図5を参照して、矩形波電圧制御部400は、電力演算部410と、トルク演算部420およびPI演算部430と、フィードフォワード制御部440と、加算部450と、矩形波発生器460と、信号発生部470とを含む。
フィードフォワード制御部440は、電圧位相点設定部441と、位相トルク特性演算部444と、トルク判定部445と、抽出部446と、FF位相算出部448とを含む。
なお、図5中の各ブロックについても、制御装置30によって実行される所定プログラムおよび/または制御装置30内の電子回路(ハードウェア)による制御演算処理によって実現されるものとする。
電力演算部410は、電流センサ24によるV相電流ivおよびW相電流iwから求められる各相電流と、各相(U相,V相、W相)電圧Vu,Vv,Vwとにより、下記(1)式に従ってモータへの供給電力(モータ電力)Pmtを算出する。
Pmt=iu・Vu+iv・Vv+iw・Vw …(1)
トルク演算部420は、電力演算部410によって求められたモータ電力Pmtおよび回転角センサ25によって検出される交流電動機M1の回転角ANGから算出される角速度ωを用いて、下記(2)式に従ってトルク推定値Tqを算出する。
Tq=Pmt/ω …(2)
なお、トルク推定値Tqについては、上記電力演算部410およびトルク演算部420による推定方式に限定されるものではなく、任意の手法によって求めることが可能である点を確認的に記載する。あるいは、電力演算部410およびトルク演算部420に代えてトルクセンサを配置することによって、トルク推定値Tqを求めてもよい。
PI演算部430へは、トルク指令値Tqcomに対するトルク偏差ΔTq(ΔTq=Tqcom−Tq)が入力される。PI演算部430は、トルク偏差ΔTqについて所定ゲインによるPI演算を行なって制御偏差を求め、求められた制御偏差に応じて電圧位相θfbを算出する。
具体的には、図6にも示されるように、正トルク発生(Tqcom>0)時には、トルク不足時には電圧位相θvを進める一方で、トルク過剰時には電圧位相θvを遅らせるとともに、負トルク発生(Tqcom<0)時には、トルク不足時には電圧位相θvを遅らせる一方で、トルク過剰時には電圧位相θvを進めるように、PI演算部430は、トルク偏差ΔTqに基づいて、フィードバック制御による電圧位相θfbを算出する。
このようにして、トルク偏差に基づくフィードバック制御により設定される矩形波電圧位相が求められる。すなわち、電力演算部410、トルク演算部420およびPI演算部430により、トルク偏差に基づくフィードバック制御が実行される。すなわち、電力演算部410、トルク演算部420およびPI演算部430により、フィードバック制御のための「第2のモータ制御部」が構成される。
ただし、矩形波電圧制御ではモータ印加電圧の操作量が位相のみとなるので、モータ印加電圧の振幅および位相を操作量とできるPWM制御と比較して、その制御応答性は相対的に低下する。さらに、電力演算部410における電力演算(式(1))の際には、検出されたモータ電流値からノイズ等を除去するためのフィルタ処理が不可避であるので、この点からもフィードバック制御のみで十分な制御応答性を確保することが困難となる。
フィードフォワード制御部440は、交流電動機M1の運転状態に関連した変数(以下、モータ変数とも称する)としてのモータ回転速度Nmおよびシステム電圧VHと、トルク指令値Tqcomとに応じて、フィードフォワード制御による電圧位相θffを設定する。すなわちフィードフォワード制御部440は、「第1のモータ制御部」に対応する。
なお、回転速度Nmは、回転角センサ25によって検出される交流電動機M1の回転角ANGから算出できる。また、システム電圧VHについては、電圧センサ13による検出電圧に代えて、その電圧指令値VH♯を用いてもよい。
加算部450は、PI演算部430により設定されたフィードバック制御による電圧位相φfbと、フィードフォワード制御部440によって設定された電圧位相φffとの加算に従って、矩形波電圧の位相指令に相当する電圧位相φvを設定する。
矩形波発生器460は、加算部450において設定された電圧位相φvに従って各相電圧指令値(矩形波パルス)Vu,Vv,Vwを発生する。信号発生部470は、各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに従ってスイッチング制御信号S3〜S8を発生する。インバータ14がスイッチング制御信号S3〜S8に従ったスイッチング動作を行なうことにより、電圧位相φvに従った矩形波電圧が、モータの各相電圧として印加される。
このように構成すると、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組合せによって、上述したフィードバック制御の制御応答性をカバーし、かつ、フィードバック制御によってオフセット的な定常偏差を解消するように、交流電動機M1のトルクを制御することができる。
フィードフォワード制御では、電圧位相−トルクの特性関係を予め把握した上で、トルク指令値Tqcomに対応させて電圧位相φffを決定する必要がある。しかしながら、図7に示すように、電圧位相−トルクの特性関係は、交流電動機の運転状態に応じて変化することが知られている。
図7を参照して、交流電動機M1の出力トルクは、電圧位相φv、モータ回転速度Nmおよびシステム電圧VH(すなわち矩形波電圧の振幅)の組合せによって変化する。
たとえば、図7(a)には、回転速度Nm=N1であるときの、電圧位相φvおよびシステム電圧VHの変化に対応した出力トルクの特性が示される。同様に、図7(b)には、それよりも高速である回転速度Nm=N2のときの、電圧位相φvおよびシステム電圧VHに対応する出力トルクの特性が示される。
概略的には、同一の電圧位相に対して、システム電圧VH(矩形波電圧振幅)の上昇に従って出力トルクが増加する一方で、回転速度の上昇に従って出力トルクが減少する特性を示す。なお、図7(a),(b)には、図6での力行領域の特性が示されているが、図示しない回生領域においても同様に、同一の電圧位相に対して、システム電圧の上昇に従って出力トルクの絶対値が増加する一方で、回転速度の上昇に従って出力トルクの絶対値が減少する特性を示す。
すなわち、フィードフォワード制御の精度を確保するためには、運転状態を示すモータ変数(代表的には、上記のNm,VH)の現在値を反映した電圧位相−トルク特性に従って、電圧位相θffを設定する必要がある。モータ変数の反映については、種々の運転条件下での電圧位相−トルク特性の測定実験結果に基づいて、モータ変数を引数に含むマップを作成することにより実現できる。しかしながら、このマップは、トルク指令値とモータ変数とを引数とするため、必然的に多次元マップとなる。そして、制御精度を向上するためにはマップ点数を増やす必要があるため、マップデータが膨大なものとなってECUの記憶領域を過度に占有することが懸念される。
特に、本実施の形態のように、矩形波電圧制御でのフィードバック制御との組合せ、あるいは、さらにPWM制御との組合せを行なう制御構成では、他制御が必要とするデータ、プログラム等の記憶容量との兼ね合いで上記懸念が増加することになる。
したがって、本実施の形態では、フィードフォワード制御部440を以下のように構成することにより、膨大なマップデータを記憶することなく、モータの電圧方程式(d−q軸)に従ったトルク演算式の演算に基づいて、フィードフォワード制御による電圧位相θffを算出することとする。
まず、フィードフォワード制御に用いる、電圧位相−トルクの特性関係を示すトルク演算式の導出を説明する。一般に知られているように、永久磁石型同期電動機におけるd軸およびq軸上での電圧方程式およびトルク式は、下記(3)〜(5)式で示される。
Figure 2010088240
(3),(4)式において、Raは電気子巻線抵抗を示し、Ψは永久磁石の電機子鎖交磁束数を示し、Pは交流電動機M1の極対数を示す。また、ωは交流電動機M1の電気角速度を示している。電気角速度ωは、モータ回転速度Nm(rpm)を用いて、ω=2π・(Nm/60)・P)で求めることができる。
なお、巻線抵抗に依存する電圧成分はごく低速領域で寄与し、回転速度上昇に従いそれ以外の成分が支配的になる。このため、矩形波電圧制御が高速度域で適用される(図2)ことを考慮すると、(3),(4)式での巻線抵抗成分は無視できる。このため、上記(4),(5)式は、矩形波電圧制御適用時には、下記(6),(7)式で示される。
Figure 2010088240
さらに、矩形波電圧制御時には、d軸電圧およびq軸電圧で示されるモータ印加電圧の基本波成分振幅が、システム電圧VHの0.78倍となることを考慮すると、(6)式,(7)式を、上記(3)式に適用することによって、矩形波電圧の電圧位相θと交流電動機M1の出力トルクTとの間の関係を示すトルク演算式(8)を得ることができる。
Figure 2010088240
(8)式から理解されるように、モータ変数VH,ω(Nm)をトルク演算式に代入することにより、現在の運転状態における、電圧位相θとトルクTとの関係が、マップ参照することなく、演算により求められることになる。なお、(8)式中において、ψは交流電動機M1の逆起電圧係数を示す。また、定数項Ka,Kbは、予め固定されるので、上記(8)式は、下記(9)式のように変形できる。すなわち、(8),(9)式は、モータ変数VH,ωおよび電圧位相θを変数とするトルク演算式となっている。
Figure 2010088240
(9)式中の定数Ka,Kbの各々については、1つの定数として予め求めることができるので、制御装置30(ECU)内に記憶することができる。
次に、トルク演算式(8)に従った、フィードフォワード制御部440による電圧位相θffの設定方法について説明する。
図8(a)には、現在よりもトルクを低下させるトルク指令値Tqcomが生成された場合におけるフィードフォワード項θffの設定が示される。
図8(a)を参照して、まず、電圧位相点設定部441(図5)は、現在の電圧位相θcrに基づく初期位相θ(0)を設定する。初期位相θ(0)は、現在の電圧位相θcrと同一でもよく、所定位相だけ変化させたものでもよい。そして、位相トルク特性演算部444(図5)は、初期位相θ(0)と、現在のモータ運転状態における電気角速度ωおよびシステム電圧VHとを上記(8)式に代入することにより、初期トルク値T(0)を算出する。そして、トルク判定部445(図5)は、初期トルク値T(0)とトルク指令値Tqcomとの高低を判定して、フラグTFLを、T(0)>Tqcomを示す値(たとえば、“0”)に設定する。
そして、電圧位相点設定部441は、フラグTFLがT(0)>Tqcomを示すことから、トルクが低下する方向(電圧位相を遅らせる方向)に段階的に電圧位相を変化させる。具体的には、電圧位相点設定部441は、位相変化量dθずつ、初期位相θ(0)を段階的に変化させたθ(1),θ(2),・・・を設定する。図8(a)の例では、dθは所定値であり、電圧位相点設定部441は、電圧位相を等間隔で段階的に変化させる。すなわち、|θ(0)−θ(1)|=|θ(1)−θ(2)|=…=一定値である。
位相トルク特性演算部444は、電圧位相点設定部441によって電圧位相が設定される毎に、上記(8)式に従った初期トルク値T(0)の演算時から、電圧位相をθ(1),θ(2),・・・に変化させたトルク値T(1),T(2),・・・を算出する。そして、トルク判定部445は、位相トルク特性演算部444によってトルク値が算出される毎に、算出されたトルク値とトルク指令値Tqcomとの高低を判定する。そして、トルク値がTqcomよりも低くなると、フラグTFLの値を変更する(たとえば、“1”)。
電圧位相点設定部441は、フラグTFLの値が変更されると、以降の電圧位相の設定を停止する。これに伴い、以降の位相トルク特性演算部444およびトルク判定部445の処理も停止される。図8(a)の例では、トルク指令値Tqcomに対する高低が初期トルク値T(0)と反転するまで、すなわち、T(4)<Tqcomとなる電圧位相θ(4)まで設定される。
抽出部446は、フラグTFLの値が変更されることに応答して、そのときに設定されている電圧位相θ(n)および対応するトルク値T(n)と、前回設定されていた電圧位相θ(n−1)および対応するトルク値T(n−1)を抽出する(n:自然数)。すなわち、電圧位相θ(n−1)は、初期位相θ(0)から電圧位相点設定部441によって段階的に変化されてきた電圧位相のうちの、電圧位相θ(n)と最も近い電圧位相に相当する。
図8(a)の例からも理解されるように、抽出されたトルク値T(3)およびT(4)がトルク指令値Tqcomを挟むため、トルク指令値Tqcomに対する電圧位相θffについても、電圧位相θ(3)およびθ(4)の間に存在することになる。
FF位相算出部448は、抽出部446によって抽出されたトルク値T(n),T(n−1)および電圧位相θ(n),θ(n−1)を用いた線形補間によって、トルク指令値Tqcomに対応する電圧位相θffを算出する。図8(a)の例では、トルク値T(3)およびT(4)、ならびに、電圧位相θ(3)およびθ(4)を用いた線形補間によって、トルク指令値Tqcomに対応する電圧位相θffが算出される。
図8(b)には、図8(a)とは反対に、現在よりもトルクを上昇させるトルク指令値Tqcomが生成された場合におけるフィードフォワード項θffの設定が示される。
図8(b)を参照して、図8(a)と同様に、電圧位相点設定部441によって初期位相θ(0)が設定されるとともに、位相トルク特性演算部444によって初期トルク値T(0)が算出される。この際に、トルク判定部445による判定は、T(0)<Tqcomであるため、図8(a)の場合とは反対となり、フラグTFLは、たとえば“1”に設定される。
このため、電圧位相点設定部441による電圧位相の変化方向は、図8(a)の場合とは反対に、トルク増加方向、すなわち、電圧位相を進める方向となる。すなわち、電圧位相点設定部441は、位相変化量dθずつ、初期位相θ(0)を段階的に進めたθ(1),θ(2),・・・を設定する。
図8(a)の場合と同様に、電圧位相点設定部441によって電圧位相が設定される毎に、位相トルク特性演算部444は上記(8)式に従って対応するトルク値を算出し、トルク判定部445は、算出されたトルク値とトルク指令値Tqcomとの高低を判定する。
そして、トルク判定部445は、トルク値がTqcomよりも高くなると、フラグTFLの値を変更する(たとえば、“0”)。図8(b)の場合にも、フラグTFLの値が変更されると、電圧位相点設定部441による以降の電圧位相の設定が停止されて、以降の位相トルク特性演算部444およびトルク判定部445の処理も停止される。図8(b)の例でも、トルク指令値Tqcomに対する高低が初期トルク値T(0)と反転する、すなわち、T(4)>Tqcomとなる電圧位相θ(4)まで設定される。
図8(b)のケースにおいても、フラグTFLの値が変更されることに応答して、抽出部446は、そのときに設定されている電圧位相θ(n)および対応するトルク値T(n)と、前回設定されていた電圧位相θ(n−1)および対応するトルク値T(n−1)を抽出する。
FF位相算出部448は、抽出部446によって抽出されたトルク値T(n),T(n−1)および電圧位相θ(n),θ(n−1)を用いた線形補間によって、トルク指令値Tqcomに対応する電圧位相θffを算出することができる。図8(b)の例では、トルク値T(3)およびT(4)、ならびに、電圧位相θ(3)およびθ(4)を用いた線形補間によって、トルク指令値Tqcomに対応する電圧位相θffが算出される。
次に、図9および図10により、本発明の実施の形態による交流電動機の制御システムにおける矩形波電圧制御の処理手順を説明する。図9,10に示したフローチャートに従う処理手順を実行するためのプログラムは、制御装置30内に予め格納されており、矩形波電圧制御の適用時に、制御装置内のCPUにより所定周期で実行される。
図10を参照して、矩形波電圧制御の適用時に、制御装置30は、ステップS100により、トルク偏差に基づくフィードバック制御により電圧位相θfb(フィードフォワード項)を演算する。ステップS100による処理は、図5に示した電力演算部410、トルク演算部420およびPI演算部430の機能に相当する。
さらに、制御装置30は、ステップS120により、モータ変数(VH,ω)およびトルク指令値Tqcomに基づくフィードフォワード制御により電圧位相θff(フィードフォワード項)を演算する。ステップS120による処理は、図5に示したフィードフォワード制御部440の機能に相当する。
制御装置30は、さらにステップS150により、フィードフォワード項θffおよびフィードバック項θfbの和に従って矩形波電圧の電圧位相φvを演算する。ステップS150による処理は、図5に示した加算部450の機能に相当する。
図10は、図9のステップS120によるフィードフォワード制御での処理手順を詳細に説明するフローチャートである。
図10を参照して、制御装置30は、ステップS125により、現在の電圧位相に基づく初期位相θ(0)に対する初期トルク値T(0)をトルク演算式((8)式)に従って求めるとともに、ステップS127により、変数n=1に設定する。その上で、制御装置30は、ステップS128により、ステップS125で求めた初期トルク値T(0)とトルク指令値Tqcomとの高低を比較する。
制御装置30は、T(0)>Tqcomのとき(S128がYES判定)には、図8(a)で説明したように、ステップS130〜S136の処理によって、トルク指令値Tqcomを挟むトルク値T(n),T(n−1)および対応の電圧位相θ(n),θ(n−1)を抽出する。
具体的には、制御装置30は、ステップS130により、前回の電圧位相θ(n−1)からdθ変化させた電圧位相θ(n)を設定する。ステップS130では、T(0)>Tqcomに鑑み、dθはトルク減少方向の所定値(図8において負値)に設定される。n=1の初回演算時には、初期位相θ(0)に対してdθだけトルク減少方向に電圧位相を印加させた電圧位相θ(1)が、ステップS130により設定される。
さらに、制御装置30は、ステップS132により、ステップS130で設定された電圧位相θ(n)に対応するトルク値T(n)を(8)式に従って演算するとともに、ステップS134により、ステップS132で演算したトルク値T(n)とトルク指令値Tqcomとを比較する。特に、ステップS134では、トルク値T(n)とトルク指令値Tqcomとの高低関係が、ステップS128における初期トルク値T(0)およびトルク指令値Tqcomの高低関係と比較して、反転されたか否かが判定される。
制御装置30は、T(n)>Tqcomのままでありトルク指令値Tqcomに対する高低関係が反転しない間(S134がNO判定のとき)は、ステップS136により変数nを1増加させた上で、ステップS130〜S134の処理を繰返し実行する。
一方、制御装置30は、T(n)<Tqcomとなってトルク指令値Tqcomに対する高低関係が反転されたとき(ステップS134のYES判定時)には、ステップS147により、現在設定されているトルク値T(n),電圧位相θ(n)と、前回のトルク値T(n−1)および電圧位相θ(n−1)を抽出して、ステップS148に処理を進める。
一方で、制御装置30は、T(0)<Tqcomのとき(S128がNO判定)には、図8(b)で説明したように、ステップS140〜S146の処理によって、トルク指令値Tqcomを挟むトルク値T(n),T(n−1)および対応の電圧位相θ(n),θ(n−1)を抽出する。
具体的には、制御装置30は、ステップS140により、前回の電圧位相θ(n−1)からdθ変化させた、電圧位相θ(n)を設定する。ステップS140では、T(0)<Tqcomに鑑み、dθはトルク増加方向の所定値(図8において正値)に設定される。
さらに、制御装置30は、ステップS142では、ステップS140で設定された電圧位相θ(n)に対応するトルク値T(n)を(8)式に従って演算するとともに、ステップS144により、ステップS142で演算したトルク値T(n)とトルク指令値Tqcomとの高低関係が、ステップS128における初期トルク値T(0)およびトルク指令値Tqcomの高低関係と比較して、反転されたか否かを判定する。
制御装置30は、T(n)<Tqcomのままでありトルク指令値Tqcomに対する高低関係が反転しない間(S144がNO判定のとき)は、ステップS146により変数nを1増加させた上で、ステップS140〜S144の処理を繰返し実行する。
一方、制御装置30は、T(n)>Tqcomとなってトルク指令値Tqcomに対する高低関係が反転されたとき(ステップS144のYES判定時)には、ステップS147により、現在設定されているトルク値T(n),電圧位相θ(n)と、前回のトルク値T(n−1)および電圧位相θ(n−1)を抽出して、ステップS148に処理を進める。
このようにして、T(0)>Tqcomの場合およびT(0)<Tqcomの場合のいずれについても、トルク指令値Tqcomを挟むトルク値T(n),T(n−1)およびそれぞれに対応する電圧位相θ(n),θ(n−1)が抽出されることになる。
そして、制御装置30は、ステップS148により、抽出したトルク値T(n),T(n−1)および電圧位相θ(n),θ(n−1)の間での傾きΔθ/ΔT、すなわち、傾き:(θ(n)−θ(n−1))/(T(n)−T(n−1))を算出する。
そして、制御装置30は、ステップS149により、電圧位相θ(n)およびθ(n−1)のいずれか一方と、傾きΔθ/ΔTを用いることにより、電圧位相θffを算出する。たとえば、電圧位相θ(k)を用いて、θff=θ(n−1)+{Tqcom−T(n−1)}・(Δθ/ΔT)の算出式を適用することができる。
すなわち、図10のフローチャートにおいて、ステップS125,S132,S142による処理は、図5の位相トルク特性演算部444の機能に対応し、ステップS130,S140による処理は、図5の電圧位相点設定部441の機能に対応する。また、ステップS128,S134,S144による処理は、図5のトルク判定部445に対応し、ステップS147による処理は、図5の抽出部446の機能に対応する。さらに、ステップS148,S1497による処理は、FF位相算出部448の機能に対応する。
なお、図示は省略しているが、ステップS134またはS144において、T(n)およびTqcomの差がほぼ零であり、両者がほぼ一致したと判断できる場合には、ステップS147〜S149の処理を省略して、そのときの電圧位相θ(n)をそのまま電圧位相(フィードフォワード項)θffに設定してもよい。
このように、本実施の形態による交流電動機の制御システムでの矩形波電圧制御によれば、交流電動機の運転状態に関連するモータ変数とトルク指令値とを引数とするマップの参照を行なうことなく、モータ変数の現在値を代入したトルク演算式((8)式)に従う演算に基づいて、トルク指令値Tqcomに対応する電圧位相θff(フィードフォワード項)を設定できる。すなわち、複数の引数による多次元マップを記憶することなく、交流電動機の運転状態を反映した上でトルク指令値に対応した電圧位相を設定するフィードフォワード制御を実現することができる。
特に、トルク指令値Tqcomを挟んだトルク値T(n),T(n−1)および対応する電圧位相θ(n),θ(n−1)を得るためのトルク演算式((8)式)による演算処理について、電圧位相の全域に亘って実行することなく、現在の電圧位相との間でトルク指令値Tqcomに対するトルクの高低関係が反転するまでの範囲に限定して実行するので、トルク演算式による演算処理回数を抑制できる。この結果、演算処理負荷を高めることなく上記フィードフォワード制御を実現することができる。
なお、図5のブロック図において、電圧位相点設定部441および位相トルク特性演算部444によって、本発明での「演算部」が実現され、トルク判定部445によって、本発明での「第1の判定部」および「第2の判定部」が実現される。また、抽出部446およびFF位相算出部448によって、本発明の「抽出部」および「位相算出部」がそれぞれ実現される。
(変形例)
図8(a),(b)に示した例では、電圧位相を段階的に変化させる際の位相変化量dθを一定値として説明した。実施の形態の変形例では、この際の位相変化量を可変にすることによって、トルク指令値Tqcomを挟んだトルク値T(n),T(n−1)および対応する電圧位相θ(n),θ(n−1)が得られるまでの演算処理負荷、具体的には、図10でのステップS130〜S136またはS140〜S146の繰返し回数の低減を図るための制御構成について説明する。
図11は、本実施の形態の変形例による矩形波電圧制御の制御構成を示すブロック図である。
図11を図5と比較して、本実施の形態の変形例による矩形波電圧制御部400では、フィードフォワード制御部440は、図5の構成に加えて、位相変化量設定部442をさらに含む。
位相変化量設定部442は、トルク指令値Tqcomと、位相トルク特性演算部444によって演算されたトルク値T(n)とに基づいて、電圧位相点設定部441が電圧位相を変化させる際の変化量dθを可変に設定する。
図12は、本実施の形態の変形例による矩形波電圧制御のフィードフォワード制御による電圧位相の設定手法を説明する概念図である。
図12を参照して、位相変化量設定部442は、トルク値T(n−1)に対応する電圧位相θ(n−1)から、次回の電圧位相θ(n)へ変化させる際に、その位相変化量dθを、トルク指令値Tqcomとトルク値T(n−1)との差分ΔT(ΔT=|T(n−1)−Tqcom|)に応じて可変に設定するようにする。
たとえば、図12に示すように、電圧位相θ(0)からθ(1)に変化させる際には、トルク指令値Tqcomに対する差分ΔT(|T(0)−Tqcom|)が比較的大きいことから、位相変化量dθは相対的に大きい値に設定される。そして、電圧位相θ(1)からθ(2)に変化させる際には、ΔT(|T(1)−Tqcom|)が前回よりも小さくなっていることから、位相変化量dθは前回よりも小さい値(中程度)に設定される。
さらに、電圧位相θ(2)からθ(3)に変化させる際には、ΔT(|T(2)−Tqcom|)が前回よりも小さくなっていることから、位相変化量dθは前回よりもさらに小さい値に設定される。
このようにすると、トルク指令値Tqcomを挟むトルク値T(n),T(n−1)が得られるまでの、電圧位相θ(n)の設定回数(n回)、すなわち、トルク演算式((8)式)の演算回数を低減させることが期待できる。
図13は、図12に示すような位相変化量dθの設定のための制御処理手順を示すフローチャートである。たとえば、図13に示す制御処理手順は、図10のステップS130またはS140の処理時に、サブルーチンとして呼出されて実行されるものとする。
図13を参照して、制御装置30は、電圧位相θ(n)の設定に際して、ステップS160により、前回の電圧位相θ(n−1)に対応するトルク値T(n−1)と、Tqcomとの差の絶対値で示される差分ΔTを演算する。そして、制御装置30は、ステップS162により、差分ΔTをしきい値α1と比較する。ΔT≦α1のとき(S162のYES判定時)には、制御装置30は、ステップS163をさらに実行して、差分ΔTをしきい値α2(α2<α1)と比較する。
ステップS162,S163により、差分ΔTが、ΔT>α1(S162のNO判定時)、α2<ΔT≦α1(S163のNO判定時)、および、ΔT≦α2(S163のYES判定時)のいずれであるかが判定される。
そして、制御装置30は、差分ΔTが比較的大きいとき(S162のNO判定時)には、ステップS164により、位相変化量|dθ|=θ3に設定する一方で、差分ΔTが中程度のとき(S163のNO判定時)には、ステップS165により、位相変化量|dθ|=θ2(θ3>θ2)に設定する。また、差分ΔTが比較的小さいとき(S163のYES判定時)には、ステップS166により、位相変化量|dθ|=θ1(θ3>θ2>θ1)に設定する。なお、上述のように、dθの極性(正負)については、初期トルク値T(0)とトルク指令値Tqcomとの高低関係に従って設定される。
このようにすると、トルク指令値Tqcomに対する差分ΔTが大きいほど、位相変化量dθの絶対値を相対的に大きく設定すること、すなわち、位相変化量設定部442の機能が実現できる。
なお、図13に示したような段階的(図13では3段階を例示したが、段階数は限定されないこと確認的に記載する)な設定ではなく、トルク差分ΔTに応じてより連続的に、たとえばマップ参照等により位相変化量の絶対値|dθ|を設定するように、位相変化量設定部442を構成することも可能である。
本実施の形態の変形例による矩形波電圧制御によれば、上述の本実施の形態による矩形波電圧制御のフィードフォワード制御での演算処理負荷をさらに軽減することができる。
なお、本実施の形態では、好ましい構成例として、インバータ14への入力電圧(システム電圧VH)を可変制御可能なように、モータ制御システムの直流電圧発生部10♯が昇降圧コンバータ12を含む構成を示したが、インバータ14への入力電圧を可変制御可能であれば、直流電圧発生部10♯は本実施の形態に例示した構成には限定されない。また、インバータ入力電圧が可変であることは必ずしも不可欠ではなく、直流電源Bの出力電圧がそのままインバータ14へ入力される構成(たとえば、昇降圧コンバータ12の配置を省略した構成)に対しても本発明を適用可能である。さらに、トルク演算式に反映するモータ変数についても、上述の説明(NmおよびVH)に限定されるものではない。
さらに、モータ制御システムの負荷となる交流電動機についても、本実施の形態では、電動車両(ハイブリッド自動車、電気自動車等)に車両駆動用として搭載された永久磁石モータを想定したが、それ以外の機器に用いられる任意の交流電動機を負荷とする構成についても、本願発明を適用可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に従う交流電動機の制御システムの全体構成図である。 図1に示したモータ制御システムでのインバータにおける電力変換に用いられる制御方式を説明する概念図である。 交流電動機の運転状態と制御モードとの概略的な関係を示す概念図である。 正弦波PWM制御および過変調PWM制御の制御ブロック図である。 本実施の形態による矩形波電圧制御の制御構成を示すブロック図である。 矩形波電圧制御における電圧位相とトルクとの対応関係を示す概念図である。 交流電動機の運転状態に対する電圧位相−トルク特性の変化を説明する外延図である。 本実施の形態による矩形波電圧制御のフィードフォワード制御による電圧位相の設定手法を説明する概念図である。 本実施の形態による矩形波電圧制御の処理手順を説明するフローチャートである。 本実施の形態による矩形波電圧制御のフィードフォワード制御の処理手順を説明するフローチャートである。 本実施の形態の変形例による矩形波電圧制御の制御構成を示すブロック図である。 本実施の形態の変形例による矩形波電圧制御のフィードフォワード制御による電圧位相の設定手法を説明する概念図である。 図12に示すような位相変化量の設定のための制御処理手順を示すフローチャートである。
符号の説明
5 アース線、6,7 電力線、10,13 電圧センサ、10♯ 直流電圧発生部、12 昇降圧コンバータ、14 インバータ、15〜17 各相アーム(U,V,W相)、24 電流センサ、25 回転角センサ、30 制御装置(ECU)、100 モータ制御システム、200 PWM制御部、210 電流指令生成部、220,250 座標変換部、240 PI演算部、260,350 PWM信号生成部、300 制御モード判定部、310 指令値生成部、400 矩形波電圧制御部、410 電力演算部、420 トルク演算部、430 PI演算部、440 フィードフォワード制御部、441 電圧位相点設定部、442 位相変化量設定部、444 位相トルク特性演算部、445 トルク判定部、446 抽出部、448 FF位相算出部、450 加算部、460 矩形波発生器、470 信号発生部、ANG ロータ回転角、B 直流電源、C0,C1 平滑コンデンサ、D1〜D8 逆並列ダイオード、dθ 位相変化量、Id,Iq モータ電流(d軸,q軸)、Idcom,Iqcom 電流指令値(d軸,q軸)、iu,iv,iw モータ電流(各相電流)、L1 リアクトル、M1 交流電動機、Nm モータ回転速度、Pmt モータ電力、Q1〜Q8 電力用スイッチング素子、S1〜S8 スイッチング制御信号、SR1,SR2 システムリレー、T(1)〜T(n) トルク値、TFL フラグ、Tloss トルク損失、Tq トルク推定値、Tqcom トルク指令値、T(0) 初期トルク値、T(1),T(2),T(3),T(4),T(n),T(n−1) トルク値、Vb 直流電圧(バッテリ電圧)、Vd♯ d軸電圧指令値、VH 直流電圧(システム電圧)、VH♯ 電圧指令値、Vq♯ q軸電圧指令値、Vu,Vv,Vw 各相電圧指令値、ΔId,ΔIq 電流偏差(d軸,q軸)、ΔTq トルク偏差、θ(1)〜θ(n) 電圧位相、θff 電圧位相(フィードフォワード項)、θv 電圧位相(矩形波電圧)、φfb 電圧位相(フィードバック項)、θ(0) 初期位相、θ(0),θ(1),θ(2),θ(3),θ(4),θ(n),θ(n−1) 電圧位相、ω 電気角速度。

Claims (6)

  1. 直流電圧を、交流電動機を駆動するための交流電圧に変換するインバータと、
    前記インバータへ入力される前記直流電圧を電圧指令値に従って可変制御するコンバータと、
    前記交流電動機がトルク指令値に従ったトルクを出力するように、前記交流電動機の運転状態に関連する少なくとも1つのモータ変数と、前記トルク指令値とに基づいて、前記インバータから前記交流電動機へ印加される矩形波電圧の電圧位相を設定するように構成された第1のモータ制御部とを備え、
    前記第1のモータ制御部は、
    前記モータ変数および前記電圧位相を変数とするトルク演算式に従って算出された、現在の電圧位相に基づく初期位相に対応する初期トルク値と前記トルク指令値との高低を判定するように構成された第1の判定部と、
    前記第1の判定部による判定結果に従って、対応するトルク値が前記トルク指令値へ近づく方向へ電圧位相を段階的に変化させるとともに、前記電圧位相を変化させる毎に前記トルク演算式に従って当該電圧位相におけるトルク値を算出するように構成された演算部と、
    前記演算部によって前記トルク値が算出される毎に、前記算出されたトルク値と前記トルク指令値との高低が前記第1の判定部による判定結果から反転されたか否かを判定するように構成された第2の判定部と、
    前記第2の判定部によって前記トルク指令値に対する高低が反転したと判定されたときの前記トルク値である第1のトルク値と、当該第1のトルク値に対応する前記電圧位相である第1の位相と、前記初期位相および前記初期位相から段階的に変化された電圧位相のうちの、前記第1の電圧位相に最も近い電圧位相である第2の位相と、前記第2の位相に対応する前記トルク値である第2のトルク値とを抽出する抽出部と、
    抽出された前記第1および第2のトルク値の差分と前記第1および第2の位相の差分との比率と、前記第1および第2の位相の一方とに基づいて、前記トルク指令値に対応する前記電圧位相を算出するように構成された位相算出部とを含む、交流電動機の制御システム。
  2. 前記演算部は、前記第2の判定部によって前記トルク指令値に対する高低が反転したと判定されるまでの間、前記電圧位相を段階的に変化させる、請求項1記載の交流電動機の制御システム。
  3. 前記演算部は、前記電圧位相を段階的に変化させる際に、所定位相ずつ前記電圧位相を変化させる、請求項1または2記載の交流電動機の制御システム。
  4. 前記演算部は、前記トルク演算式に従って算出されたトルク値と前記トルク指令値との差分に応じて可変に設定された位相変化量に従って、前記電圧位相を段階的に変化させる、請求項1または2記載の交流電動機の制御システム。
  5. 前記交流電動機が前記トルク指令値に従ったトルクを出力するように、前記交流電動機の前記トルク指令値に対するトルク偏差に基づいて前記矩形波電圧の電圧位相を制御するように構成された第2のモータ制御部をさらに備え、
    前記第1および前記第2のモータ制御部のそれぞれによる設定値を組合わせることによって、前記電圧位相の指令値は設定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の交流電動機の制御システム。
  6. 前記交流電動機は、電動車両に搭載されて当該電動車両の車両駆動力を発生するように構成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の交流電動機の制御システム。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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