JP6127555B2 - 複合活物質及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主にリチウム電池に使用されることにより従来よりも内部抵抗を低減できる複合活物質及びその製造方法、並びに当該複合活物質を含むリチウム電池に関する。
二次電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換し、放電を行うことができる他に、放電時と逆方向に電流を流すことにより、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄積(充電)することが可能な電池である。二次電池の中でも、リチウム二次電池に代表される二次電池は、エネルギー密度が高いため、ノート型のパーソナルコンピューターや、携帯電話機等の携帯機器の電源として幅広く応用されている。
リチウム二次電池においては、負極活物質としてグラファイト(Cと表現する)を用いた場合、放電時において、負極では下記式(I)の反応が進行する。
Li→6C+xLi+xe (I)
(上記式(I)中、0<x<1である。)
上記式(I)の反応で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、正極に到達する。そして、上記式(I)の反応で生じたリチウムイオン(Li)は、負極と正極に挟持された電解質内を、負極側から正極側に電気浸透により移動する。
また、正極活物質としてコバルト酸リチウム(Li1−xCoO)を用いた場合、放電時において、正極では下記式(II)の反応が進行する。
Li1−xCoO+xLi+xe→LiCoO (II)
(上記式(II)中、0<x<1である。)
充電時においては、負極及び正極において、それぞれ上記式(I)及び式(II)の逆反応が進行し、負極においてはグラファイトインターカレーションによりリチウムが入り込んだグラファイト(Li)が、正極においてはコバルト酸リチウム(Li1−xCoO)が再生するため、再放電が可能となる。
リチウム電池に使用される電極は、電池の充放電特性を決める重要な部材であり、これまでにも様々な研究が行われている。例えば、特許文献1には、ニオブ酸リチウムを含有する被覆層が表面の少なくとも一部に形成されているコバルト酸リチウムを含む正極活物質と、固体の硫化物を含む固体電解質と、を有する電極体が開示されている。
特開2010−073539号公報
特許文献1には、LiCoOの表面にLiNbOの層を備える正極活物質と、Li11(硫化物系固体電解質)とを、質量比で、正極活物質:固体電解質=7:3となるように混合し、正極を形成した旨が記載されている(特許文献1の明細書の段落[0038])。しかし、本発明者らが検討した結果、特許文献1に開示されたような電極体においては、硫化物固体電解質と直接接していない正極活物質が多いため、内部抵抗が高いことが明らかとなった。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、主にリチウム電池に使用されることにより従来よりも内部抵抗を低減できる複合活物質及びその製造方法、並びに当該複合活物質を含むリチウム電池を提供することを目的とする。
本発明の複合活物質の製造方法は、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoMnO、LiNiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiPO、LiMnPO、及びLiNiTiOからなる群より選ばれる少なくとも一種の活物質粒子、並びに、当該活物質粒子表面の全部又は一部を被覆する酸化物系固体電解質を含有する複合粒子を準備する準備工程と、
乾式混練装置を用いて、前記複合粒子及び硫化物系固体電解質を、混合物の温度が50℃以上80℃以下となるように調節しつつ、ブレード−壁間隔が0.1〜8mm、回転数が500〜5,000rpmの条件下で、10分間以上混合することにより、前記複合粒子の表面を硫化物系固体電解質により被覆する被覆工程と、を有し、
前記被覆工程において、前記複合粒子100質量部に対し、前記硫化物系固体電解質を8〜22質量部添加し、
前記準備工程後、且つ、前記被覆工程前に前記複合粒子及び前記硫化物系固体電解質のうち少なくともいずれか一方と、アルキル基含有化合物とを湿式混合する、前処理工程を行わないことを特徴とする。
本発明によれば、複合活物質のBET比表面積を2.82 /g未満と小さくすることにより、従来の複合活物質よりも、リチウム電池に使用された際の内部抵抗を低く抑えることができる。
本発明の複合活物質の各実施形態の断面模式図である。 本発明のリチウム電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 実施例7の複合活物質の断面SEM画像である。 実施例3の複合活物質の表面SEM画像である。 実施例7の複合活物質の表面SEM画像である。 実施例9の複合活物質の表面SEM画像である。 参考例10の複合活物質の表面SEM画像である。 参考例11の複合活物質の表面SEM画像である。 参考例12の複合活物質の表面SEM画像である。 実施例13の分級前の複合活物質1つの表面SEM画像である。 実施例13の分級前の複数の複合活物質の表面SEM画像、及びSマッピングである。 実施例13の分級後の複合活物質1つの表面SEM画像である。 実施例13の分級後の複数の複合活物質の表面SEM画像、及びSマッピングである。 参考例1〜参考例2、実施例3〜実施例9、及び比較例1の複合活物質のBET表面積と、被覆工程における混練処理時間との関係を示すグラフである。 実施例9、参考例10〜参考例12、及び比較例1の複合活物質のBET比表面積と、当該複合活物質を用いたリチウム電池の内部抵抗との関係を示すグラフである。 比較例1の複合活物質の表面SEM画像である。
1.複合活物質
本発明の複合活物質は、コバルト元素、ニッケル元素、及びマンガン元素のうち少なくともいずれか1つを含み且つリチウム元素及び酸素元素をさらに含む活物質粒子、並びに当該活物質粒子表面の全部又は一部を被覆する酸化物系固体電解質を含有する複合粒子と、前記複合粒子表面の全部又は一部をさらに被覆する硫化物系固体電解質と、を備え、BET比表面積が2.82 /g未満であることを特徴とする。
活物質含有粒子の表面に硫化物系固体電解質を被覆する従来の方法としては、例えば、パルスレーザーデポジション(Pulsed Laser Deposition;以下、PLDと称する場合がある。)法等の気相法によるものが挙げられる。しかし、PLD法は一般的に製膜速度が遅いため、生産性が著しく低く、実用的ではない。また、PLD法においては、硫化物系固体電解質のターゲットをレーザー照射によりプラズマ化するが、その際、硫化物系固体電解質の組成が変化してしまい、固体のときの組成が維持されないおそれがある。
活物質含有粒子の表面に硫化物系固体電解質を被覆する他の方法としては、例えば、遊星ボールミル等のメディアを用いた混練法によるものが挙げられる。しかし、このようなメディアを用いた混練法においては、メディアとの衝突により機械的ダメージが与えられる結果、活物質含有粒子の表面が損傷するおそれがある。したがって、このような機械的ダメージを避けるため、メディアを用いない混練法が求められている。
本発明者らは、活物質粒子の表面を酸化物系固体電解質により被覆した複合粒子に対し、さらに硫化物系固体電解質を被覆する場合において、硫化物系固体電解質の組成を変質させることのない条件について研究を重ねた。本発明者らは、鋭意努力の結果、複合粒子に対し硫化物系固体電解質を被覆させる場合において、混合物の温度及び混合時のエネルギーをある特定の範囲内とすることにより、硫化物系固体電解質が塑性変形する結果、従来の複合活物質よりも小さいBET比表面積を有する複合活物質が得られることを見出した。また、本発明者らは、当該複合活物質を使用したリチウム電池の内部抵抗が、複合活物質のBET比表面積に依存しており、BET比表面積が特定の値未満である複合活物質は、従来の複合活物質と比較して、リチウム電池に使用された際の内部抵抗を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の複合活物質は、芯となる複合粒子、及び当該複合粒子表面を被覆する硫化物系固体電解質を含有する。以下、これら複合粒子及び硫化物系固体電解質について順に説明する。
1−1.複合粒子
本発明における複合粒子は、活物質粒子と、当該活物質粒子表面の全部又は一部を被覆する酸化物系固体電解質とを含む。
本発明における活物質粒子は、コバルト元素(Co)、ニッケル元素(Ni)、及びマンガン元素(Mn)のうち少なくともいずれかひとつを含み、さらにリチウム元素(Li)及び酸素元素(O)を含む化合物粒子である。活物質粒子は、電極活物質として働くもの、具体的には、リチウムイオン等のイオンを吸蔵及び/又は放出できるものであれば、特に限定されない。本発明における活物質粒子としては、例えば、下記組成式(A)により表されるものが挙げられる。
LiNi1−x−yCoMn 組成式(A)
(上記組成式(A)中、Mはリン元素(P)、チタン元素(Ti)、タングステン元素(W)、ジルコニウム元素(Zr)、及びアルミニウム元素(Al)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、mは0<m≦2を満たす実数であり、x及びyは0≦x≦1且つ0≦y≦1を満たす実数であり、zは0<z≦2を満たす実数であり、nは0<n≦4を満たす実数である。)
本発明における活物質粒子として、具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoMnO、LiNiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiPO、LiMnPO、及びLiNiTiOが挙げられる。これら活物質粒子の中でも、特に、LiNi1/3Co1/3Mn1/3を用いることが好ましい。
本発明における活物質粒子は、活物質の単結晶粒子であってもよいし、複数の活物質単結晶が結晶面レベルで結合した多結晶の活物質粒子であってもよい。
本発明における活物質粒子の平均粒径は、目的とする複合活物質の平均粒径未満であれば、特に限定されない。活物質粒子の平均粒径は、0.1〜30μmであることが好ましい。なお、活物質粒子が、複数の活物質結晶が結合した多結晶の活物質粒子である場合には、活物質粒子の平均粒径とは、多結晶の活物質粒子の平均粒径のことを指すものとする。
本発明における粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、適切な倍率(例えば、5万〜100万倍)の透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;以下、TEMと称する。)画像又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;以下、SEMと称する。)画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察又はSEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
本発明における酸化物系固体電解質は、酸素元素(O)を含有し、且つ、活物質粒子表面の全部又は一部を被覆できる程度に、活物質粒子と化学的親和性があるものであれば、特に限定されない。本発明における酸化物系固体電解質として、具体的には、LiNbO、LiPON(リン酸リチウムオキシナイトライド)、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、La0.51Li0.34TiO2.94、LiPO、LiSiO、及びLiSiOが挙げられる。これら酸化物系固体電解質の中でも、特に、LiNbOを用いることが好ましい。
複合粒子の調製方法については、後述する「2.複合活物質の製造方法」の項において説明する。
酸化物系固体電解質層の厚さは、1nm〜100nmであることが好ましい。酸化物系固体電解質層の厚さが厚すぎる場合には、抵抗が大きくなるおそれがあるため、可能な限り薄く、且つ活物質粒子表面に対する酸化物系固体電解質層の被覆率が高いことが好ましい。一方、酸化物系固体電解質層の厚さが薄すぎる場合には、活物質粒子表面に対して酸化物系固体電解質層が被覆されていない部分が存在するおそれがあり、その結果活物質粒子と硫化物系固体電解質が接触して反応劣化するため、抵抗が大きくなるおそれがある。
本発明における固体電解質層(酸化物系固体電解質層及び硫化物系固体電解質層)の平均厚さは、常法により算出される。固体電解質層の平均厚さの算出方法の例は以下の通りである。まず、適切な倍率(例えば、5万〜100万倍)のTEM画像又はSEM画像において、ある1つの粒子(複合粒子又は複合活物質)について、固体電解質層の厚さを5〜10か所測定する。このようなTEM観察又はSEM観察による厚さの測定を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子において測定した全ての厚さの平均を平均厚さとする。
本発明においては、活物質粒子と硫化物系固体電解質との間に酸化物系固体電解質を介在させることにより、活物質粒子と硫化物系固体電解質との接触による反応劣化を抑制することができる。
1−2.硫化物系固体電解質
本発明における硫化物系固体電解質は、上述した複合粒子表面をさらに被覆する。本発明においては、複合粒子表面に対する硫化物系固体電解質の被覆状態の定量的な指標として、BET比表面積を採用した。複合活物質のBET比表面積が小さいほど硫化物系固体電解質の塑性変形が進んでおり、硫化物系固体電解質が複合粒子表面に対しより均一に被覆されていると考えられる。
本発明の複合活物質のBET比表面積は2.82 /g未満である。BET比表面積が2.82 /g以上である場合には、複合粒子表面に対して硫化物系固体電解質が均一に被覆されていないため、後述する比較例1の複合活物質のように、電池に用いられた際に高い内部抵抗を示す。
複合活物質のBET比表面積は、2.50 /g以下であることが好ましく、2.11 /g以下であることがより好ましい。
BET比表面積は、公知の方法により測定できる。なお、水分を十分除いた環境下(例えば、不活性雰囲気下のグローブボックス中等)でサンプル調製を行い、当該環境下でサンプルを秤量し、適宜容器に入れて密閉した後、当該環境の外でBET比表面積を測定することが好ましい。
BET比表面積の測定条件としては、例えば、自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル製、製品番号BELSORP−miniII)等を用いて、10〜35℃の温度環境下測定する条件が挙げられる。
本発明における硫化物系固体電解質の被覆状態は、SEM等によって定性的にも確認することができる。例えば、複合粒子表面についてのSEMの反射電子像において、コントラストが小さいほど当該表面における元素分布の差が小さいことが示され、硫化物系固体電解質によって複合粒子表面が高い被覆率で均質に被覆されていることが分かる。また、特に硫化物系固体電解質の粒子を用いて複合粒子表面が被覆された複合活物質の場合には、複合粒子表面についてのSEMの二次電子像において、凹凸が少ないほど、当該表面に存在する硫化物系固体電解質粒子の粒界が消え、複合粒子表面に硫化物系固体電解質が均一に被覆されていることが分かる。
SEMの反射電子像及び二次電子像の測定条件としては、例えば、SEM(日立ハイテク製、製品番号SU8030)等を用いて、加速電圧:0.5〜5kV、エミッション電流:1〜100μAの条件下、1,000〜50,000倍の倍率で測定する条件が挙げられる。
本発明における硫化物系固体電解質は、硫黄元素(S)を含有し、且つ、上述した複合粒子表面を被覆できる程度に、複合粒子(特に酸化物系固体電解質)と化学的親和性があるものであれば、特に限定されない。本発明における硫化物系固体電解質として、具体的には、LiS−P、LiS−P、LiS−P−P、LiS−SiS、LiS−SiS、LiS−B、LiS−GeS、LiS−P−LiI、LiS−P−LiO−LiI、LiI−LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、LiPS−LiGeS、Li3.40.6Si0.4、Li3.250.75Ge0.25、Li4−xGe1−xが挙げられる。これら硫化物系固体電解質の中でも、特に、LiS−Pをその組成中に含むものであることが好ましく、LiS−P−LiO−LiIがより好ましい。
複合粒子の平均粒径に対する硫化物系固体電解質層の平均厚さは、(複合粒子の平均粒径):(硫化物系固体電解質層の平均厚さ)=30:1〜95:1であることが好ましい。複合粒子の平均粒径よりも硫化物系固体電解質層が厚すぎる場合には、当該複合活物質を例えば電池の電極中に配合した場合、電極材料である導電助剤と活物質粒子とが接触しにくくなり、電子伝導パスが途切れる結果、抵抗が大きくなるおそれがある。一方、複合粒子の平均粒径よりも酸化物系固体電解質層が薄すぎる場合には、リチウムイオンパス等のイオンパスが途切れ、抵抗が大きくなるおそれがある。
本発明においては、(複合粒子の平均粒径):(硫化物系固体電解質層の平均厚さ)=38:1〜63:1であることがより好ましい。
本発明に係る複合活物質の平均粒径は、用途にもよるが、例えば、0.1〜35μmとすることができる。
図1(a)〜(d)は、本発明の複合活物質の各実施形態の断面模式図である。なお、図1(a)〜(d)は、あくまである実施形態における各材料の被覆の態様を定性的に説明するための図であり、実際の各固体電解質の粒径や固体電解質の被覆状態、各固体電解質層の厚さ等を必ずしも定量的に反映した図ではない。
図1(a)〜(d)に示すように、複合活物質100a〜100dは、活物質粒子1の表面の全部又は一部を酸化物系固体電解質2により被覆してなる複合粒子3、及び当該複合粒子3の表面の全部又は一部をさらに被覆する硫化物系固体電解質4を含有する。図1(a)〜(d)中の破線は、多結晶である活物質粒子1中の各単結晶粒子の粒界を示し、活物質粒子1と酸化物系固体電解質2の層との境界を示す実線は、これら単結晶粒子が互いに結合してなる多結晶活物質粒子の外縁を示す。
図1(a)は、活物質粒子1の全表面を酸化物系固体電解質2により被覆してなる複合粒子3、及び当該複合粒子3の全表面をさらに被覆する硫化物系固体電解質4を含有する複合活物質100aの断面模式図である。また、図1(b)は、活物質粒子1の表面の一部を酸化物系固体電解質2により被覆してなる複合粒子3、及び当該複合粒子3の全表面をさらに被覆する硫化物系固体電解質4を含有する複合活物質100bの断面模式図である。また、図1(c)は、活物質粒子1の全表面を酸化物系固体電解質2により被覆してなる複合粒子3、及び当該複合粒子3の表面の一部をさらに被覆する硫化物系固体電解質4を含有する複合活物質100cの断面模式図である。また、図1(d)は、活物質粒子1の表面の一部を酸化物系固体電解質2により被覆してなる複合粒子3、及び当該複合粒子3の表面の一部をさらに被覆する硫化物系固体電解質4を含有する複合活物質100dの断面模式図である。
本発明の複合活物質は、以上の複合活物質100a〜100dをいずれも含む。また、一定量の複合活物質を量産する場合には、同じロットが複合活物質100a〜100dのいずれか1つからなるものであってもよいし、同じロットに複合活物質100a〜100dのうち2つ以上が混在していてもよい。
なお、実験により実際に得られた複合活物質の断面SEM画像を図3に示す。
以上のように、本発明の複合活物質においては、BET比表面積を小さく抑えることにより、当該複合活物質を使用した電池の内部抵抗を、従来の電池の内部抵抗よりも減らすことができる。
2.複合活物質の製造方法
本発明の複合活物質の製造方法は、コバルト元素、ニッケル元素、及びマンガン元素のうち少なくともいずれか1つを含み且つリチウム元素及び酸素元素をさらに含む活物質粒子、並びに、当該活物質粒子表面の全部又は一部を被覆する酸化物系固体電解質を含有する複合粒子を準備する準備工程と、前記複合粒子及び硫化物系固体電解質を、混合物の温度が100℃以下となるように調節しつつ、当該硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーを加えながら10分間以上混合することにより、前記複合粒子の表面を硫化物系固体電解質により被覆する被覆工程と、を有することを特徴とする。
本発明は、(1)複合粒子を準備する準備工程、及び(2)複合粒子の表面を硫化物系固体電解質により被覆する被覆工程を有する。本発明は、必ずしも上記2工程のみに限定されることはなく、上記2工程以外にも、例えば、後述するような前処理工程等を有していてもよい。
以下、上記工程(1)〜(2)並びにその他の工程について、順に説明する。
2−1.準備工程
本工程は、上述した複合粒子を準備する工程である。複合粒子の原料となる活物質粒子及び酸化物系固体電解質については、「1−1.複合粒子」の項において説明した通りである。
本発明においては、複合粒子は市販のものを用いてもよいし、適宜調製したものを用いてもよい。複合粒子の調製方法としては、例えば、上記特許文献1(特開2010−073539号公報)に記載されたようなスプレーコートを用いた調製法や、転動流動コーティング法、スプレー法、浸漬法、スプレードライヤーを用いる方法等が挙げられる。
被覆工程前において、複合粒子及び硫化物系固体電解質のうち少なくともいずれか一方と、アルキル基を有する化合物とを混合する前処理工程をさらに有していてもよい。このような前処理工程を行うことにより、複合粒子表面及び/又は硫化物系固体電解質表面にアルキル基を有する化合物を付着させることができる。
前処理工程に使用されるアルキル基を有する化合物は、複合粒子及び/又は硫化物系固体電解質の界面における付着性を下げるアルキル基含有化合物、すなわち、これらの材料における表面自由エネルギーを下げるアルキル基含有化合物であれば、特に限定されない。
当該アルキル基を有する化合物の例としては、トリメチルアミン((CHN)、トリエチルアミン((CN)、トリプロピルアミン((CN)、トリブチルアミン((CN)等のアルキルアミン;エチルエーテル((CO)、プロピルエーテル((CO)、ブチルエーテル((CO)等のエーテル化合物;ブチルニトリル(CCN)、ペンチルニトリル(C11CN)、イソプロピルニトリル(i−CCN)等のニトリル化合物;酢酸ブチル(CCO)、酪酸ブチル(CCO)、酪酸エチル(CCO)等のエステル化合物;ベンゼン(C)、キシレン(C10)、トルエン(C)等の芳香族化合物;等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、前処理工程においては、アルキルアミンを用いることがより好ましい。
前処理工程における混合方法は、複合粒子表面及び/又は硫化物系固体電解質表面に対してアルキル基を有する化合物を均一に付着させる観点から、分散媒を用いた湿式混合であることがより好ましい。湿式混合に使用できる分散媒としては、例えば、n−ヘキサン(C14)、n−ヘプタン(C16)、n−オクタン(C18)等のアルカン;エチルエーテル((CO)、プロピルエーテル((CO)、ブチルエーテル((CO)等のエーテル化合物;ブチルニトリル(CCN)、ペンチルニトリル(C11CN)、イソプロピルニトリル(i−CCN)等のニトリル化合物;酢酸ブチル(CCO)、酪酸ブチル(CCO)、酪酸エチル(CCO)等のエステル化合物;ベンゼン(C)、キシレン(C10)、トルエン(C)等の芳香族化合物;等が挙げられる。これらの分散媒は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
湿式混合を行った場合には、湿式混合後の混合物を適宜加熱して分散媒を除去し、乾燥させてもよい。
以下、前処理工程の例について説明する。まず、複合粒子、硫化物系固体電解質、アルキル基を有する化合物、及び適宜分散媒を混合する。このとき、混合物に超音波を照射し、分散媒中に材料を高分散させてもよい。次に、得られた混合物を、80〜120℃の温度条件下1〜5時間加熱して乾燥させる。乾燥した当該混合物を、以下の被覆工程に用いる。
2−2.被覆工程
本工程は、複合粒子及び硫化物系固体電解質を、混合物の温度が100℃以下となるように調節しつつ、当該硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーを加えながら10分間以上混合することにより、複合粒子の表面を硫化物系固体電解質により被覆する工程である。
本工程に使用される硫化物系固体電解質については、「1−2.硫化物系固体電解質」の項において説明した通りである。
後述する図14に示すように、複合活物質のBET比表面積は、被覆工程における混練処理時間を長くするほど小さくできるが、混練処理の初期(0〜10分間)においてはBET比表面積の減りが大きいのに対し、10分間以上混合するとBET比表面積の変化が小さくなり、ほぼ一定の値に収束する。したがって、10分間以上混合することにより、得られる複合活物質のBET比表面積の変化が小さくなり、狙ったBET比表面積を有する複合活物質を製造することができる。
本工程においては、硫化物系固体電解質として、活物質粒子よりも平均粒径の大きい硫化物系固体電解質粒子を用いることが好ましい。
後述する図10〜図13から分かるように、活物質粒子よりも平均粒径の大きい硫化物系固体電解質粒子を用いて製造した実施例13の複合活物質においては、硫化物系固体電解質粒子の粒界がほとんど見られず、粒子表面の元素分布も均一である。活物質粒子の平均粒径以下の平均粒径を有する硫化物系固体電解質粒子を用いる場合には、複合粒子の表面を多くの細かい硫化物系固体電解質粒子により隙間なく埋め尽くすことができるが、得られる複合活物質の表面に硫化物系固体電解質粒子に由来する凹凸が多く発生したり、隣り合う硫化物系固体電解質粒子間の粒界も多いため内部抵抗が高くなったりする。一方、活物質粒子よりも平均粒径の大きい硫化物系固体電解質粒子を用いる場合には、1つの複合粒子の被覆に使用される硫化物系固体電解質粒子の数を減らすことができるため、被覆条件を調節することで得られる複合活物質の表面の凹凸を減らすことができ、さらに粒界が少ないため内部抵抗を低く抑えることができる。
本発明に使用される硫化物系固体電解質粒子の平均粒径は、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、当該平均粒径は、50μm以下であることが好ましい。
なお、このように活物質粒子よりも平均粒径の大きい硫化物系固体電解質粒子を用いた場合には、被覆工程後に適宜分級し、未反応の粗大な硫化物系固体電解質粒子を除去することが好ましい。
複合粒子に対する硫化物系固体電解質の添加量は、「1−2.硫化物系固体電解質」の項において説明した硫化物系固体電解質層の平均厚さが得られるような添加量が好ましい。具体的には、複合粒子100質量部に対し、硫化物系固体電解質を5〜25質量部添加することが好ましく、8〜22質量部添加することがより好ましい。
本工程においては、混合物の温度が100℃以下となるように調節しつつ、複合粒子及び硫化物系固体電解質を混合する。混合物の温度が100℃を超える場合には、硫化物系固体電解質が熱により変質してしまうため、所望の複合活物質が得られない。混合時温度を100℃以下に抑えることにより、製造時の熱的ダメージを回避することができる。
被覆工程における混合物の温度は、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
また、本工程においては、硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーを加えながら、複合粒子及び硫化物系固体電解質を混合する。
本発明における硫化物系固体電解質の塑性変形とは、硫化物系固体電解質が、被覆工程初期における元の形状を保持できずに不可逆的に流動することである。このとき、硫化物系固体電解質を構成する原子間の化学結合が切断されることはないし、硫化物系固体電解質の組成が変質することもない。特に、原料として硫化物系固体電解質の粒子を用いる場合、本発明における塑性変形とは、硫化物系固体電解質粒子の形状が崩れる結果、隣接する硫化物系固体電解質粒子同士が互いに混ざりあい、当該粒子間の粒界の全部又は一部が消えることである。
硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーの例としては、硫化物系固体電解質が降伏するように硫化物系固体電解質に対し与えられるエネルギー、硫化物系固体電解質を破壊するまで硫化物系固体電解質に加えられる破壊エネルギー、及び硫化物系固体電解質の形状が歪むまで硫化物系固体電解質内に蓄えられる(物理的)ひずみエネルギー等が挙げられる。
以下、降伏の観点から硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーについてさらに説明する。硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーの例としては、硫化物系固体電解質について、縦軸に応力σ(N/mm)、横軸にひずみ(%)をとるいわゆる応力−ひずみ線図をプロットした場合、降伏中の最大の応力である上降伏点に達するエネルギーが挙げられる。なお、上降伏点が明確に認められない応力−ひずみ線図における、硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーの例としては、硫化物系固体電解質に耐力(すなわち、除荷した後に残る塑性ひずみが0.2%となるときの応力)を与えるエネルギーが例示できる。
なお、硫化物系固体電解質の応力−ひずみ線図は、JIS K 7181に準ずる方法、特に、当該規格の「5 装置」及び「6 試験片」を用いて、少なくとも当該規格の「9 手順」により測定した「10.1 圧縮応力」及び「10.2 圧縮ひずみ」をプロットすることにより得られる。
被覆工程においては、上記のような塑性変形するエネルギーを与えるように、複合粒子及び硫化物系固体電解質の混合物に対しせん断力を加えることが好ましい。塑性変形するエネルギーを付与するようにせん断力を加える方法の例としては、回転するロータと壁面の間において、混合物に対し乾式で摩擦・せん断エネルギーを与える機械的混練方法が挙げられる。このような機械的混練方法を達成できる装置の例としては、メディアを用いない乾式混練装置が挙げられる。本発明に使用できる乾式混練装置は、一般的に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、ノビルタ(商品名:ホソカワミクロン社製)、メカノフュージョン、ハイブリダイゼーション、COMPOSI(商品名:日本コークス工業製)等が挙げられる。メディアを用いないこれら乾式混練装置を採用することにより、遊星ボールミル等のメディアを用いた混練装置を用いる場合と比較して、活物質粒子に対する機械的ダメージを減らすことができる。
乾式混練装置により塑性変形するエネルギーを付与する具体的な条件としては、例えば、ブレード−壁間隔を0.1〜8mm、回転数を500〜5,000rpmとする条件が挙げられる。
乾式混練装置は、一般的に、比較的硬い材料同士を混合する用途に使用されている。本発明においては、比較的柔らかい材料である硫化物系固体電解質を使用するため、乾式混練装置において、比較的小さい回転数を採用しても、硫化物系固体電解質を塑性変形させるのに十分なエネルギーを付与できる。
以下、被覆工程の一例であって、乾式混合を行う例について説明する。まず、複合粒子及び硫化物系固体電解質を、乾式混練装置に投入する。次に、混合物の温度が100℃以下となるように調節しつつ、ブレード−壁間隔が0.1〜8mm、回転数が500〜5,000rpmの条件下で、30秒間〜3時間混練処理を行うことにより、本発明の複合活物質が得られる。
後述する実施例において説明するように、このような(前処理工程を行わない)乾式混合は、湿式混合よりも、BET比表面積のより小さい複合活物質を製造できる。また、このような乾式混合は、分散媒等を必要としないため低コスト化が図れる利点がある。
以下、被覆工程の一例であって、前処理工程後に被覆工程を行う例について説明する。まず、前処理工程後の前駆体粉末を、乾式混練装置に投入する。次に、混合物の温度が100℃以下となるように調節しつつ、ブレード−壁間隔が0.1〜8mm、回転数が500〜5,000rpmの条件下で、30秒間〜3時間混練処理を行うことにより、本発明の複合活物質が得られる。
本発明の製造方法により、硫化物系固体電解質に熱的ダメージを与えることなく、硫化物系固体電解質を塑性変形させることができるため、従来技術により製造される複合活物質よりも、BET比表面積のより小さい複合活物質を製造することができる。
3.リチウム電池
本発明のリチウム電池は、正極、負極、並びに、当該正極及び当該負極の間に介在する電解質層を備えるリチウム電池であって、前記正極及び負極のうち少なくともいずれか一方は、上記複合活物質、及び上記製造方法により製造された複合活物質の少なくともいずれか1つを含有することを特徴とする。
従来のリチウム電池においては、電極材料を分散混合し、加圧プレスすることにより内部抵抗の低減が図られていた。しかし、固体電解質等の固体電極材料同士の接触は、加圧プレスによる物理的な処理では十分に確保できず、そのため、内部抵抗の低減には限界があった。本発明のリチウム電池は、BET比表面積が2.82 /g未満である上記複合活物質を含有することにより、従来のリチウム電池よりも内部抵抗を極めて低く抑えることができる。
なお、本発明において、内部抵抗とは、直流抵抗、反応抵抗、及び拡散抵抗等のその他の抵抗の和を意味する。本発明のリチウム電池の内部抵抗は、例えば、5s−DCIR法により測定することができる。
図2は、本発明に係るリチウム電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。なお、本発明に係るリチウム電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
リチウム電池200は、正極活物質層12及び正極集電体14を備える正極16と、負極活物質層13及び負極集電体15を備える負極17と、正極16及び負極17に挟持される電解質層11を備える。
以下、本発明に係るリチウム電池に使用される、正極、負極、及び電解質層、並びに本発明に係るリチウム電池に好適に使用されるセパレータ及び電池ケースについて、詳細に説明する。
本発明に使用される正極は、好ましくは上述した複合活物質を含む正極活物質層を備えるものであり、通常、これに加えて、正極集電体、及び当該正極集電体に接続された正極リードを備える。
正極活物質としては、上述した本発明に係る複合活物質のみを単独で用いてもよいし、当該複合活物質と、1種又は2種以上の他の正極活物質とを組み合わせて用いてもよい。
他の正極活物質としては、具体的には、LiCoO、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNiPO、LiMnPO、LiNiO、LiMn、LiCoMnO、LiNiMn、LiFe(PO及びLi(PO等を挙げることができる。正極活物質からなる微粒子の表面にLiNbO等を被覆してもよい。
正極活物質層における正極活物質の総含有割合は、通常、50〜90質量%の範囲内である。
本発明に使用される正極活物質層の厚さは、目的とするリチウム電池の用途等により異なるものであるが、10〜250μmの範囲内であるのが好ましく、20〜200μmの範囲内であるのが特に好ましく、特に30〜150μmの範囲内であることが最も好ましい。
正極活物質層は、必要に応じて導電性材料及び結着剤等を含有していても良い。
本発明に使用される導電性材料としては、正極活物質層の導電性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等を挙げることができる。また、正極活物質層における導電性材料の含有割合は、導電性材料の種類によって異なるものであるが、通常1〜30質量%の範囲内である。
本発明に使用される結着剤としては、例えばポリビニリデンフロライド(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。また、正極活物質層における結着剤の含有量は、正極活物質等を固定化できる程度の量であれば良く、より少ないことが好ましい。結着剤の含有割合は、通常1〜10質量%の範囲内である。
また、正極活物質の調製には、N−メチル−2−ピロリドンやアセトン等の分散媒を用いてもよい。
本発明に使用される正極集電体は、上記正極活物質層の集電を行う機能を有するものである。上記正極集電体の材料としては、例えばアルミニウム、SUS、ニッケル、鉄及びチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウム及びSUSが好ましい。また、正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができ、中でも箔状が好ましい。
本発明に使用される正極を製造する方法は、上記の正極を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。なお、正極活物質層を形成した後、電極密度を向上させるために、正極活物質層をプレスしても良い。
本発明に使用される負極は、好ましくは上述した複合活物質を含む負極活物質層を備えるものであり、通常、これに加えて、負極集電体、及び当該負極集電体に接続された負極リードを備える。
負極活物質としては、上述した本発明に係る複合活物質のみを単独で用いてもよいし、当該複合活物質と、1種又は2種以上の他の負極活物質とを組み合わせて用いてもよい。
他の負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び/又は放出可能なものであれば特に限定されないが、例えば、リチウム金属、リチウム合金、リチウム元素を含有する金属酸化物、リチウム元素を含有する金属硫化物、リチウム元素を含有する金属窒化物、及びグラファイト等の炭素材料等を挙げることができる。また、負極活物質は、粉末状であっても良く、薄膜状であっても良い。
リチウム合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。また、負極活物質としては、固体電解質をコートしたリチウムを用いることもできる。
上記負極活物質層は、負極活物質のみを含有するものであっても良く、負極活物質の他に、導電性材料及び結着剤の少なくとも一方を含有するものであっても良い。例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極活物質層とすることができる。一方、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質及び結着剤を有する負極活物質層とすることができる。なお、導電性材料及び結着剤については、上述した正極活物質層に含まれる導電性材料又は結着剤と同様であるので、ここでの説明は省略する。
負極活物質層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、例えば10〜100μmの範囲内、中でも10〜50μmの範囲内であることが好ましい。
上記正極及び上記負極のうち少なくとも一方の電極の電極活物質層が、少なくとも電極活物質及び電極用電解質を含有するという構成をとることもできる。この場合、電極用電解質としては、後述するような固体酸化物電解質、固体硫化物電解質等の固体電解質、ゲル電解質等を用いることができる。
負極集電体の材料としては、上述した正極集電体の材料と同様のものを用いることができる。また、負極集電体の形状としては、上述した正極集電体の形状と同様のものを採用することができる。
本発明に使用される負極を製造する方法は、上記負極を得ることができる方法であれば特に限定されない。なお、負極活物質層を形成した後、電極密度を向上させるために、負極活物質層をプレスしても良い。
本発明に使用される電解質層は、正極及び負極の間に保持され、正極と負極との間でリチウムイオンを交換する働きを有する。
電解質層には、電解液、ゲル電解質、及び固体電解質等を用いることができる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電解液としては、非水系電解液及び水系電解液を用いることができる。
非水系電解液としては、通常、リチウム塩及び非水溶媒を含有したものを用いる。上記リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO及びLiAsF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(SOCF(Li−TFSA)、LiN(SO及びLiC(SOCF等の有機リチウム塩等を挙げることができる。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル(AcN)、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの混合物等を挙げることができる。非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5〜3mol/kgである。
本発明においては、非水系電解液又は非水溶媒として、例えば、イオン性液体等を用いてもよい。イオン性液体としては、例えば、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P13TFSA)、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P14TFSA)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEMETFSA)、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(TMPATFSA)等が挙げられる。
水系電解液としては、通常、リチウム塩及び水を含有したものを用いる。上記リチウム塩としては、例えばLiOH、LiCl、LiNO、CHCOLi等のリチウム塩等を挙げることができる。
本発明に使用されるゲル電解質は、通常、非水系電解液にポリマーを添加してゲル化したものである。非水ゲル電解質は、例えば、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリウレタン、ポリアクリレート、及び/又はセルロース等のポリマーを添加し、ゲル化することにより得られる。本発明においては、LiTFSA(LiN(CFSO)−PEO系の非水ゲル電解質が好ましい。
固体電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、及びポリマー電解質等を用いることができる。このうち、酸化物系固体電解質の具体例については「1−1.複合粒子」の項において説明した通りであり、硫化物系固体電解質の具体例については「1−2.硫化物系固体電解質」の項において説明した通りである。
ポリマー電解質は、通常、リチウム塩及びポリマーを含有する。リチウム塩としては、上述した無機リチウム塩及び有機リチウム塩の少なくともいずれか1つを使用できる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
本発明に係るリチウム電池は、正極及び負極の間に、電解液を含浸させたセパレータを備えていてもよい。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜;及び樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
本発明に係るリチウム電池は、通常、上記正極、負極、及び電解質層等を収納する電池ケースを備える。電池ケースの形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
1.複合活物質の製造
参考例1]
まず、LiNi1/3Co1/3Mn1/3粒子(活物質粒子)を、LiNbO(酸化物系固体電解質)により被覆した複合粒子を準備した(準備工程)。複合粒子の平均粒径は4.5μmであった。
次に、複合粒子50g、及び48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子(硫化物系固体電解質、平均粒径:0.8μm)10.8gを、乾式混練装置(ホソカワミクロン社製、商品名:NOB−MINI)に投入し、混合物の温度が50℃となるように調節しつつ、ブレード−壁間隔が1mm、回転数が3,000rpmの条件下で、4分間混練処理を行い(被覆工程)、参考例1の複合活物質を製造した。
参考例2]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から8分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、参考例2の複合活物質を製造した。
[実施例3]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から10分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、実施例3の複合活物質を製造した。
[実施例4]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から12分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、実施例4の複合活物質を製造した。
[実施例5]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から16分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、実施例5の複合活物質を製造した。
[実施例6]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から20分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、実施例6の複合活物質を製造した。
[実施例7]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から30分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、実施例7の複合活物質を製造した。
[実施例8]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から40分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、実施例8の複合活物質を製造した。
[実施例9]
参考例1において、被覆工程における混練処理時間を4分間から60分間に変更したこと以外は、参考例1と同様に、実施例9の複合活物質を製造した。
参考例10]
まず、LiNi1/3Co1/3Mn1/3粒子(活物質粒子)を、LiNbO(酸化物系固体電解質)により被覆した複合粒子を準備した(準備工程)。複合粒子の平均粒径は4.5μmであった。
次に、複合粒子50g、48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子(硫化物系固体電解質、平均粒径:1.5μm)10.8g、アルキル基を有する化合物としてトリブチルアミン((CN)9g、及び分散媒としてヘプタン(C16)75gを湿式混合し、さらに超音波分散に供した。超音波分散後のスラリーを、100℃の温度条件下2時間加熱して、前駆体粉末を得た(前処理工程)。
続いて、前駆体粉末を乾式混練装置(ホソカワミクロン社製、商品名:NOB−MINI)に投入し、混合物の温度が50℃となるように調節しつつ、ブレード−壁間隔が1mm、回転数が3,000rpmの条件下で、2分間混練処理を行い(被覆工程)、参考例10の複合活物質を製造した。
参考例11]
参考例10において、被覆工程における混練処理時間を2分間から8分間に変更したこと以外は、参考例10と同様に、参考例11の複合活物質を製造した。
参考例12]
参考例10において、被覆工程における混練処理時間を2分間から30分間に変更したこと以外は、参考例10と同様に、参考例12の複合活物質を製造した。
[実施例13]
まず、LiNi1/3Co1/3Mn1/3粒子(活物質粒子)を、LiNbO(酸化物系固体電解質)により被覆した複合粒子を準備した(準備工程)。複合粒子の平均粒径は4.5μmであった。
次に、複合粒子50g、及び48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子(硫化物系固体電解質、平均粒径:20μm)10.8gを、乾式混練装置(ホソカワミクロン社製、商品名:NOB−MINI)に投入し、混合物の温度が50℃となるように調節しつつ、ブレード−壁間隔が1mm、回転数が4,000rpmの条件下で、30分間混練処理を行った(被覆工程)。被覆工程後の混合物を、目開き20μmの篩にかけて分級処理を行い、篩を通った20μm以下の粒子を実施例13の複合活物質とした。
[比較例1]
まず、LiNi1/3Co1/3Mn1/3粒子(活物質粒子)を、LiNbO(酸化物系固体電解質)により被覆した複合粒子を準備した(準備工程)。複合粒子の平均粒径は4.5μmであった。
次に、複合粒子50g、48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子(硫化物系固体電解質、平均粒径:1.5μm)10.8g、アルキル基を有する化合物としてトリブチルアミン((CN)9g、及び分散媒としてヘプタン(C16)75gを湿式混合し、さらに超音波分散を行い、比較例1の複合活物質を製造した。すなわち、比較例1においては、超音波分散後の加熱、及び本発明における被覆工程を行わなかった。
2.複合活物質の形態観察
2−1.SEMによる断面形態観察
実施例7の複合活物質についてCP(Cross Section Polisher)加工を施し、SEMを用いて当該複合活物質の断面形態を観察した。測定の詳細は以下の通りである。
SEM:日立ハイテク製、製品番号SU8030
加速電圧:1kV
エミッション電流:10μA
倍率:20,000倍
図3は、実施例7の複合活物質の断面SEM画像である。図3から分かるように、実施例7の複合活物質の内部には、活物質粒子であるLiNi1/3Co1/3Mn1/3粒子が互いに結合し、多結晶の活物質粒子21を形成している。また、図3から分かるように、そのような多結晶の活物質粒子21を、平均厚さ10nmの酸化物系固体電解質層22が覆い、さらにその表面を、平均厚さ200nmの硫化物系固体電解質層23が覆っている。このように、実施例7の複合活物質は、複合活物質の粒径と比較して極めて薄い酸化物系固体電解質層及び硫化物系固体電解質層を備えていることが分かる。
2−2.SEMによる表面形態観察
実施例3、実施例7、実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13、及び比較例1の複合活物質について、粉末散布したサンプルをSEM観察した。実施例13の複合活物質については、分級前と分級後について、それぞれSEM観察した。得られた2次電子像から複合活物質の形態を、反射電子像のコントラスト差から複合活物質における硫化物系固体電解質の被覆状態を、それぞれ評価した。また、実施例13の複合活物質については、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X−ray spectrometry:EDX)を行い、得られた硫黄元素(S)の元素マッピング像から、硫化物系固体電解質の粗大粒子の有無を調べた。表面形態観察の測定条件は、上記断面形態観察の測定条件と同様である。ただし、Sマッピング時の加速電圧は10kVとした。
図4〜図13及び図16は、実施例3、実施例7、実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13、及び比較例1の複合活物質の表面SEM画像である。各図には、2次電子像(各図(a))及び反射電子像又はSマッピング(各図(b))を並べて示している。
図16(a)より、比較例1の複合活物質の表面においては、硫化物系固体電解質粒子の粒界が独立してはっきりと確認できる。このことから、比較例1の製造方法においては、硫化物系固体電解質粒子が塑性変形するほどに十分なエネルギーが与えられていないことが分かる。また、図16(b)においては、色の明るい部分(ニオブ元素等)と色の暗い部分(リン元素、硫黄元素等)がはっきりと分かれている。このことから、比較例1の複合活物質においては、ニオブ元素を含む酸化物系固体電解質が、リン元素等を含む硫化物系固体電解質により十分に覆われておらず、酸化物系固体電解質が複合活物質表面に現れていることが分かる。
一方、図4(a)〜図13(a)から明らかなように、実施例3、実施例7、及び実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13の複合活物質の表面においては、硫化物系固体電解質粒子同士が結合しあっており、その粒界は定かではない。このことから、少なくとも実施例3、実施例7、及び実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13の製造方法においては、硫化物系固体電解質粒子が塑性変形するほど十分なエネルギーが与えられたことが分かる。また、図4(b)〜図13(b)においては、色の明るい部分(ニオブ元素等)と色の暗い部分(リン元素、硫黄元素等)が混ざりあい、図16(b)よりも元素分布が均一になっている。このことから、少なくとも実施例3、実施例7、及び実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13の複合活物質においては、ニオブ元素を含む酸化物系固体電解質が、リン元素等を含む硫化物系固体電解質により十分に覆われていることが分かる。
これらの実施例の中でも、特に参考例10〜参考例12(図7〜図9)について検討すると、被覆工程における混練処理時間が2分間(参考例10)、8分間(参考例11)、30分間(参考例12)と増えるにつれて、硫化物系固体電解質粒子間の粒界がより消失し、元素分布が均一となることが分かる。
また、実施例3、実施例7、及び実施例9(図4〜図6)について検討すると、被覆工程における混練処理時間が10分間(実施例3)、30分間(実施例7)、60分間(実施例9)と増えるにつれて、硫化物系固体電解質粒子間の粒界がより消失し、元素分布が均一となることが分かる。参考例10〜参考例12の反射電子像(図7(b)〜図9(b))を、実施例3、実施例7、及び実施例9の反射電子像(図4(b)〜図6(b))と比較すると、実施例3、実施例7、及び実施例9の反射電子像の方が全体的に暗く、色の明るい部分(ニオブ元素等)が色の暗い部分(リン元素、硫黄元素等)により埋め尽くされていると考えられる。
したがって、前処理工程を行わない実施例3、実施例7、及び実施例9の乾式混合条件の方が、前処理工程を行った参考例10〜参考例12の条件よりも、硫化物系固体電解質が塑性変形するエネルギーを効率よく付与できることが分かる。
さらに、実施例13(図10〜図13)について検討する。図10は、実施例13の分級前の複合活物質粒子1つの2次電子像(図10(a))及び反射電子像(図10(b))である。また、図11は、実施例13の分級前の複数の複合活物質の2次電子像(図11(a))及びSマッピング(図11(b))である。図10(a)及び図10(b)から分かるように、実施例13の複合活物質は、実施例3、実施例7、実施例9、参考例10〜参考例12、の複合活物質と比較して、硫化物系固体電解質粒子の粒界がほぼ完全に消失しており、また、複合活物質における元素分布がより均一である。しかし、図11(a)から分かるように、実施例13の複合活物質には、長径が約50μmの粗大粒子が混在しており、図11(b)より、硫黄元素の分布が当該粗大粒子に集中していることから、当該粗大粒子が硫化物系固体電解質であることが分かる。したがって、実施例13の条件においては、原料として用いた硫化物系固体電解質が未反応のまま複合活物質と混在していることが分かる。
図12は、実施例13の分級後の複合活物質粒子1つの2次電子像(図12(a))及び反射電子像(図12(b))である。また、図13は、実施例13の分級後の複数の複合活物質の2次電子像(図13(a))及びSマッピング(図13(b))である。図12(a)及び図12(b)と図10(a)及び図10(b)とを比較すると分かるように、実施例13の複合活物質における表面形態や元素分布は、分級前後で変化しない。また、図13(a)及び図13(b)から分かるように、分級後の実施例13の複合活物質からは、粗大な硫化物系固体電解質が除かれている。
以上より、平均粒径が20μmの硫化物系固体電解質粒子を原料とする実施例13の複合活物質は、他の実施例よりも硫化物系固体電解質粒子の粒界が見られず、さらに粒子表面の元素分布が均一であることが分かる。また、分級することにより、複合活物質を特に変質させることなく、粗大な硫化物系固体電解質粒子を除去できることも分かる。
3.複合活物質のBET比表面積の測定
参考例1〜参考例2、実施例3〜実施例9、参考例10〜参考例12及び比較例1の複合活物質について、N吸着BET法により比表面積を測定した。測定方法の詳細は以下の通りである。
測定装置:日本ベル製、BELSORP−miniII(商品名)
温度:25℃
露点:−80℃DP以下
図14は、参考例1〜参考例2、実施例3〜実施例9、及び比較例1の複合活物質のBET比表面積と、被覆工程における混練処理時間との関係を示すグラフである。
図14に示すように、被覆工程を行った参考例1〜参考例2、実施例3〜実施例9の複合活物質は、被覆工程を行わなかった比較例1よりもいずれもBET比表面積が小さい。また、図14より、被覆工程における混練処理時間が長いほどBET比表面積が小さくなるが、混練処理の初期(0〜10分間)においてはBET比表面積の減りが大きいのに対し、10分間以上混合するとBET比表面積の変化が小さくなり、ほぼ一定の値(約1.7m/g)に収束する。
以上より、参考例1〜参考例2、実施例3〜実施例9の製造条件においては、被覆工程において特に10分間以上混合することにより、硫化物系固体電解質が十分に塑性変形し、BET比表面積が約1.7m/gにまで低減できることが分かる。このことは、48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子(硫化物系固体電解質粒子)のBET比表面積が12m/gと大きいことを鑑みると、本発明の製造方法により、硫化物系固体電解質の14%程度のBET比表面積を有する複合活物質が製造できることを意味している。また、LiNi1/3Co1/3Mn1/3粒子(活物質粒子)のBET比表面積が約1.4m/gであるため、本発明の製造方法により、活物質粒子の凹凸にほぼ沿って硫化物系固体電解質を均一に被覆できることも分かる。
参考例10〜参考例12の複合活物質のBET表面積については、後述するリチウム電池の内部抵抗との関係について説明することとする。
4.リチウム電池の製造
以下、上記参考例1〜参考例2、実施例3〜実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13及び比較例1の各複合活物質をそれぞれ用いて、リチウム電池を製造した。
正極活物質として上記複合活物質を、硫化物系固体電解質として48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子を、導電性材料として気相成長炭素繊維(VGCF)を、結着剤としてPVdFを、それぞれ準備した。これら正極活物質、硫化物系固体電解質、導電性材料、及び結着剤を、正極活物質:硫化物系固体電解質:導電性材料:結着剤=79.3質量%:17.1質量%:2.4質量%:1.2質量%となるように混合し、正極合剤を調製した。
セパレータ層(固体電解質層)の原料として、硫化物系固体電解質である48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子を準備した。
負極活物質として天然黒鉛を、硫化物系固体電解質として48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子を、結着剤としてPVdFを、それぞれ準備した。これら負極活物質、硫化物系固体電解質、及び結着剤を、負極活物質:硫化物系固体電解質:結着剤=57.0質量%:41.6質量%:1.4質量%となるように混合し、負極合剤を調製した。
まず、48.5LiS−17.5P−4LiO−30LiI粒子の圧粉体を形成した。次に、当該圧粉体の一方の面に正極合剤を、他方の面に負極合剤を、それぞれ配置し、プレス圧6ton/cm、プレス時間1分間で平面プレスし、積層体を得た。このとき得られた積層体において、正極合剤層及び負極合剤層の厚さはいずれも130μmであり、セパレータ層の厚さは20μmであった。当該積層体を、積層方向に0.2Nの圧力で拘束することにより、リチウム電池を製造した。
以下、参考例1〜参考例2、実施例実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13及び比較例1の各複合活物質を原料とするリチウム電池を、それぞれ参考例1〜参考例2、実施例実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13及び比較例1のリチウム電池と称する。
5.リチウム電池の内部抵抗測定
実施例9、参考例10〜参考例12、及び比較例1のリチウム電池について、5s−DCIR法により内部抵抗を測定した。測定方法の詳細は以下の通りである。
OCV電位 3.52V
電流密度 19.2mA/cm
放電5秒後の過電圧と電流値から、オームの法則により内部抵抗を算出した。
参考例1〜参考例2、実施例実施例9、参考例10〜参考例12、実施例13、及び比較例1の複合活物質の各種製造条件、複合活物質のBET比表面積、及びリチウム電池の内部抵抗を表1に示す。
図15は、実施例9、参考例10〜参考例12、及び比較例1の複合活物質のBET比表面積と、当該複合活物質を用いたリチウム電池の内部抵抗との関係を示すグラフである。
図15に示すように、実施例9、参考例10〜参考例12のリチウム電池は、比較例1のリチウム電池よりもいずれも内部抵抗が小さい。したがって、被覆工程を経て得られた本発明の複合活物質は、従来の複合活物質よりもリチウム電池の内部抵抗を下げる働きがあることが分かる。
また、図15に示すように、前処理工程を行い製造された複合活物質を用いた参考例10〜参考例12のリチウム電池の内部抵抗は90Ω・cmを超えたのに対し、前処理工程を行わずに製造された複合活物質を用いた実施例9のリチウム電池の内部抵抗は60Ω・cm未満であった。このように、乾式混合処理により得られた複合活物質を用いたリチウム電池は、湿式の前処理工程を経て得られた複合活物質を用いたリチウム電池よりも、内部抵抗を60%以下に抑えることができる。
1 活物質粒子
2 酸化物系固体電解質
3 複合粒子
4 硫化物系固体電解質
11 電解質層
12 正極活物質層
13 負極活物質層
14 正極集電体
15 負極集電体
16 正極
17 負極
21 多結晶の活物質粒子
22 酸化物系固体電解質層
23 硫化物系固体電解質層
100a,100b,100c,100d 複合活物質
200 リチウム電池

Claims (1)

  1. LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoMnO、LiNiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiPO、LiMnPO、及びLiNiTiOからなる群より選ばれる少なくとも一種の活物質粒子、並びに、当該活物質粒子表面の全部又は一部を被覆する酸化物系固体電解質を含有する複合粒子を準備する準備工程と、
    乾式混練装置を用いて、前記複合粒子及び硫化物系固体電解質を、混合物の温度が50℃以上80℃以下となるように調節しつつ、ブレード−壁間隔が0.1〜8mm、回転数が500〜5,000rpmの条件下で、10分間以上混合することにより、前記複合粒子の表面を硫化物系固体電解質により被覆する被覆工程と、を有し、
    前記被覆工程において、前記複合粒子100質量部に対し、前記硫化物系固体電解質を8〜22質量部添加し、
    前記準備工程後、且つ、前記被覆工程前に前記複合粒子及び前記硫化物系固体電解質のうち少なくともいずれか一方と、アルキル基含有化合物とを湿式混合する、前処理工程を行わないことを特徴とする、複合活物質の製造方法。
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