移動棚を複数集合離散可能に並べた移動棚装置の平均的な1日の稼働回数は10回程度である。電動式移動棚装置の場合、いつ移動指令信号が入力されても指令信号に従って移動できるように、制御回路に電源が供給されていわばスタンバイの状態になっていて、待機電力が消費される。電動式移動棚装置全体で消費される全電力のうち電動式移動棚の駆動で消費される電力は10パーセント以下であるのに対し、待機時の消費電力は90パーセント以上に達している。したがって、電動式移動棚装置において省電力化を図るには待機電力を削減することが効果的である。
電動式移動棚装置の待機電力を削減するには、移動棚を移動させようとする場合にのみメイン電源スイッチをオンし、移動棚の駆動が終了するとメイン電源スイッチをオフすればよい。しかし、電動式移動棚装置を稼働させようとする場合にその都度メイン電源スイッチをオンすることは面倒である。特に、メイン電源スイッチが、形成しようとする通路の位置から遠い場合、利用者の動線が長くなり、使い勝手が悪い、あるいは作業効率が悪い、といった問題が生じる。また、移動棚を稼働させて物品の出し入れ作業を行った後、メイン電源スイッチをオフにすることを忘れることがあり、省電力に役立たないことがある。
電動式移動棚装置において、メイン電源スイッチの手動によるオンオフ操作によることなく、一定の条件が成立すると自動的にメイン電源スイッチをオフするように構成したものが知られている。特許文献1記載の発明はその一つで、メイン制御盤の制御系回路およびサブ制御盤の制御系回路のスイッチやキーボードのいずれも操作されない状態が所定時間継続すると、オートパワーオフ機能が働いて電源供給を遮断するものである。
また、移動棚の状態に変化がなく第1所定時間が経過すると第1タイマの動作によって照明灯への通電を遮断し、さらに第2所定時間が経過すると第2タイマの動作によって移動棚への電源を遮断して待機電源をカットするように構成した棚設備も知られている(特許文献2参照)。
特許文献1および特許文献2に記載されているもののほか、従来の電動式移動棚装置においては、
1.インターロックがかかっていない状態が一定時間継続した場合
2.通路侵入センサが動作していない状態すなわち移動棚が使用されていない状態が一定時間継続した場合
3.インターロックがかかっていても、通路侵入センサが動作していない状態が一定時間継続した場合
自動的にメイン電源スイッチをオフするようにしたものがある。上記「一定時間」は設計者の思想によってまちまちで、10分〜8時間というように広い範囲で選択されて設定される。
以上のように、従来の電動式移動棚装置における省電力対策は、タイマを動作させてメイン電源を自動的にオフするというものであり、必要な場合に自動的に、あるいは特別な操作を意識することなくメイン電源をオンするという技術思想はない。したがって、メイン電源を自動的にオフする従来の電動式移動棚装置を稼働させようとするときは、メイン電源を手動操作によって復帰させる必要があり、操作が面倒であり、また、操作の迅速性が損なわれる、といった難点がある。
なお、人が近づくことによってこれを検知する例えば赤外センサなどを利用して電動式移動棚装置のメイン電源をオンにするように構成することが考えられる。しかし、移動棚装置に人が近づいたとしても、移動棚装置を稼働させるために近づいたものとは限らないから、移動棚装置を稼働させるものではないにもかかわらずメイン電源をオンにして、待機電力を無駄に浪費する難点がある。
電動式移動棚装置に限らず、手動式移動棚装置においても電源を必要とするものがある。例えば、手動式移動棚を移動不能にロックする機構を電気的な制御でロック態様とロック解除態様に切り替えるようにした移動棚装置、感震装置によって一定の震度以上の地震を検知したとき上記ロック機構によるロックを解除するようにした移動棚装置などがある。かかる電気的制御装置を備えた移動棚装置においても、上記電気的制御装置をいつでも作動させることができるように待機電源を供給する必要があることから、待機電源供給による電力の浪費が問題になる。
なお、本明細書において、「稼働」とは、移動棚装置本来の動作を行うこと、すなわち、少なくとも1台の移動棚が移動している状態をいうものとする。また、「使用」とは、移動棚に対して物品の出し入れ作業をすること、この出し入れ作業にまつわる諸々の操作および動作をすることをいうものとする。したがって、「使用」には、通路形成のための操作を行うことも、作業通路に入っている作業者の安全を図るための動作が行われている状態も含む。
以下、本発明に係る移動棚装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1において、符号1は電動式移動棚装置を示している。電動式移動棚装置1は、互いに離間して対向配置された一対の固定棚3と、一対の固定棚3の間に配置された複数の電動式移動棚2で構成されている。図示の例では、図面の錯綜を避けるために、2台の電動式移動棚2のみが描かれているが、電動式移動棚2の数は任意である。各電動式移動棚2は、底部に設けられている走行車輪6が図示されないモータで回転駆動されることにより、間口面すなわち物品の出し入れ面に直交する方向に、図示されないレールに沿って移動可能に構成されている。したがって、一対の固定棚3の任意の一方と各電動式移動棚2とを収束させることができ、また、任意の電動式移動棚2間または任意の固定棚3とこれに隣り合う電動式移動棚2との間に作業通路を形成することができる。
各電動式移動棚2と各固定棚3は、間口方向から見た高さ寸法および横幅寸法は同じであって、図1において正面に見える各棚2,3の側パネルは同一面内にある。各電動式移動棚2の側パネルには、標準的な体格の人間が立ち姿勢で操作するのに適した高さ位置に操作パネル71が取り付けられている。各電動式移動棚2の操作パネル71は上記側パネルと同一面内にあり、よって、各操作パネル71も同一面内にある。操作パネル71には電動式移動棚2を移動させるための操作部材として操作スイッチ7が設けられている。図1に示す電動式移動棚2の例では、各操作パネル71の左右両側に操作スイッチ7が設けられている。左側の操作スイッチ7を右に向かって押すと電動式移動棚2が右に向かって移動し、右側の操作スイッチ7を左に向かって押すと電動式移動棚2が左に向かって移動するように駆動回路が構成されている。
一対の固定棚3のうちの一方には投光部4が、他方の固定棚3には受光部5が取り付けられている。投光部4と受光部5は投受光型光電センサを構成している。投光部4と受光部5は、投光部4から投光される光ビーム11を受光部5が受光することができるように、同じ高さ位置に配置されている。また、投光部4は、光ビーム11を各電動式移動棚2の操作部材7と同じ高さ位置で操作部材7の前方を通るように、投光面が各電動式移動棚2の操作パネル71の面から突出している。このようにして、光ビーム11は全ての電動式移動棚2にまたがって投光され、全ての電動式移動棚2の操作部材の前方を通った光ビーム11が受光部5で受光される。したがって、受光部5の受光面も各電動式移動棚2の操作パネル71の面から突出している。投光部4の光源としては、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)などを用いるとよい。
図1において、右端の固定棚3とこれに隣り合う電動式移動棚2との間には、電動式移動棚装置が使用中であることを検知するための進入センサ12が取り付けられている。進入センサ12は、例えば、互いに対向する発光素子と受光素子で構成され、棚間に作業者が入っているときは発光素子から受光素子に向かう光ビームが作業者で遮蔽され、受光素子の出力信号から使用中であることを検知することができる。図1に示す進入センサ12は、作業通路への出入り口に、作業通路への進入方向前後に設置された2つのセンサからなり、2つのセンサの検知タイミングによって、作業通路への進入かまたは退出かを後述の使用検知部で検知できるように構成されている。もっとも、進入センサ12による検出方式は任意で、作業通路内に作業者などが入っているか否かを検知する方式であってもよい。進入センサ12は、互いに隣り合う移動棚間および移動棚と固定棚間に設けられているが、図1では一つの使用中検知センサのみが描かれている。一対の固定棚3のうち図1において右側の固定棚3には、電動式移動棚装置1の待機電源をオンオフ制御する電源管理部9が設けられている。
次に、本発明に係る電動式移動棚装置に適用可能な待機電源の制御系統の例について図2を参照しながら説明する。図2では、電源ラインを実線で、信号ラインを鎖線で示している。図2において、一次側電源20は、電動式移動棚装置の大本の電源であって、一般的には100Vの商用交流電源である。一次側電源20は大本の電源スイッチ21を経て電動式移動棚装置に取り込まれる。電源スイッチ21は、手動操作によってオンまたはオフに切り替えられる。電源スイッチ21はまた、感震装置22が一定の震度以上の地震を感知するとオフに切り替えられるようになっている。
電動式移動棚装置に取り込まれる交流電源は、待機電源スイッチとして機能するパワーリレー23を経て電動式移動棚2に取り込まれる。また、上記交流電源は、AC/DCコンバータ24で直流の例えば24Vに変換され、前記光電センサを構成する投光部4および受光部5の電源として、また、電源管理部9の電源として供される。
電源管理部9は、センサ信号受部42、センサ信号判断部43、タイマ計測部44、設定操作スイッチ信号判断部45、使用検知部46、電源制御部47を有してなる。センサ信号受部42は、受光部5の検知信号を受け入れる。センサ信号判断部43は、センサ信号受部42で受けられる信号から光電センサの検知動作を判断する。
設定操作スイッチ信号判断部45は、電源管理部9の外に設けられている設定操作スイッチ41によって設定されている各種動作条件を判断する。設定操作スイッチ41で設定される動作条件の例として、いわゆるオートパワーオフ機能が有効なのか無効なのか、オートパワーオフ機能が有効な場合に、オートパワーオフとするまでの時間の設定がある。オートパワーオフとするまでの設定時間の例として、1分、10分、1時間などがある。タイマ計測部44は、使用検知部46からの信号によってタイマ動作を開始するようになっている。タイマ計測部44は、設定操作スイッチ信号判断部45で判断された動作時間が経過することにより電源制御部47を動作させ、電源制御部47はパワーリレー23をオフするようになっている。
各電動式移動棚2は、駆動源としてのモータ27、その駆動回路26、AC/DCコンバータ25、距離センサ28、上記モータ27の制御部30を備えている。各電動式移動棚2はまた、既に説明した操作部材としての操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14、照明灯16を備えている。非常停止センサ14は、電動式移動棚2の間口面に設けられていて、移動棚の稼働中に作業員や異物が接触することによって作動し、この作動によって全ての電動式移動棚の移動を停止させるためのものである。照明灯16は、移動棚装置の使用中に、形成されている作業通路を照明するためのものである。
制御部30は、照明制御部31、前記電源管理部9に対する信号送信部32、距離検知部33、モータ制御部34、隣接棚信号送受信部35、操作スイッチ検知部36、進入センサ検知部37、非常停止センサ信号受部38を有してなる。これら制御部30内の構成部分は互いに信号線で結ばれている。照明制御部31は、形成される作業通路に対応した照明灯16を点灯させる。信号送信部32は、電源管理部9に対し必要に応じて信号を送信する。距離検知部33は、距離センサ28からの信号によって隣り合う棚との距離を検知する。隣接棚信号送受信部35は、隣接する棚にこちら側の棚の各種情報信号を送信し、また、隣接する棚からの各種情報信号を受信する。操作スイッチ検知部36は、操作スイッチ7が操作されたときこれを検知する。進入センサ検知部37は、進入センサ12の動作から作業通路に作業員などが進入したことを検知する。非常停止センサ信号受部38は、非常停止センサ14の動作を検知する。モータ制御部34は、これら各部の動作に基づいて駆動回路26を制御し、駆動回路26を介してモータ27の正逆回転、停止を制御する。
前記パワーリレー23がオンすることによって電動式移動棚2に導入される100Vの交流電源は、照明灯16に供給されるとともに、AC/DCコンバータ25で例えば24Vの直流に変換される。この直流電源は、制御部30に供給されるとともに、操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14にも供給される。モータ27は直流モータであって、上記24Vの直流電源はモータ27の電源としても供給される。
制御部30、操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14に供給される上記24Vの直流電源は、電動式移動棚が稼働せず、かつ、作業通路に作業員などが入っていない不使用の状態では待機電源であって、不要な電源である。したがって、電動式移動棚の不使用時には、上記24Vの直流電源の供給を停止することが、省電力の見地から望ましい。しかし、操作スイッチ7の操作によって直ちに所期の位置に作業通路を形成する動作を開始できるように、操作スイッチ7が操作される前に上記24Vの直流電源が待機電源として供給されていることが望ましい。
そこで本実施例では、待機中はできるだけ待機電源の消費を抑制し、電動式移動棚2を稼働させようとするときは、特別な待機電源復活操作をすることなく待機電源が復活するように、前記光電センサと、電源管理部9を設けている。上記光電センサは、電動式移動棚2のいずれかの操作スイッチ7を操作しようとするとき投光部4から投光された光ビームが作業者の手または指で遮蔽されることにより受光部5が信号を出力する。電源管理部9は、上記光電センサの受光部5の出力信号により待機電源スイッチであるパワーリレー23をオンに切り替え、AC/DCコンバータ25を介して電動式移動棚2に待機電源として24Vの直流電源を供給する。
操作スイッチ7の操作に基づく電動式移動棚の動作は、従来知られている電動式移動棚の動作と同じであり、その制御回路の構成も従来知られている電動式移動棚の制御回路の構成と変わりがないから、詳細な説明は省略する。
次に、図3を参照しながら、上記実施例の待機電源のオンオフ動作を説明する。各動作ステップをS1,S2,・・・のように表す。まず、ステップS1において、主電源スイッチがオンされるのを待つ。主電源スイッチとは、図2に示す大本の電源スイッチ21のことである。従来の電動式移動棚装置は、上記主電源スイッチのみを有していて、待機電源を自動的にオンオフするパワーリレー23と、このパワーリレー23のオンオフを制御する光電センサ、電源管理部9は備えていない。
主電源スイッチがオンすると、次に設定操作スイッチ41(図2参照)の設定を読み込み、オフタイマをセットする(S2)。設定操作スイッチ41による設定は、前述のとおり、オートパワーオフを有効にするかまたは無効にするかと、オートパワーオフを有効とする場合の時間設定である。次に、オフタイマを「0」にセットして計時動作を開始する(S3)。
次に、オートパワーオフが「有効」に設定されているか、「無効」に設定されているかを判断する(S4)。オートパワーオフが有効になっていれば(S4のNo)、電源復帰センサすなわち前記光電センサが所定の検知動作をしたか否かの検知ステップ(S5)に進む。前述のように、いずれかの電動式移動棚を稼働させようとして操作スイッチ7を操作しようとすると、上記光電センサの光ビーム11(図1参照)が操作者の手指で遮蔽されて光電センサが検知動作する(S5のYes)。この検知動作でオフタイマが設定時間「0」にクリアされ(S7)、時間経過ステップ(S8)に進む。上記オフタイマのクリアによってオフタイマは「0」にクリアされて計時を開始し、ステップS8で上記オフタイマがタイムアップに至っていなければ、すなわちT<Toffであれば、オートパワーオンとする(S9)。オートパワーオンとは、前記電源制御部47(図2参照)がパワーリレー23をオンさせることであって、これにより電動式移動棚2に待機電源が供給されることになり、動作を終了する。
何れの電動式移動棚2の操作スイッチ7も操作されず、ステップS5で電源復帰センサすなわち光電センサが検知動作をしなければ、ステップS6に進む。ステップS6では、図2で説明した使用検知部46が、操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14、照明灯16の何れかが動作したか否かによって移動棚装置が使用中であるか否かを判断する。操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14、照明灯16の何れかが動作することにより使用検知部46が使用状態であると判断した場合(S6のYes)は、前記ステップS7に進んでオフタイマを「0」にクリアする。使用状態が継続している限り、オフタイマは「0」のままである。なお、ステップS4でオートパワーオフが無効に設定されている場合もステップS7でオフタイマが「0」にクリアされたままである。
電動式移動棚装置が不使用状態になると(S6のNo)、上記オフタイマは計時を開始し、ステップS8でオフタイマがタイムアップすると(S8のNo)、オートパワーオフ(S10)、すなわちパワーリレー23をオフにして、待機電源の供給を停止する。オートパワーをオフとした後はステップS5に返る。
以上説明したように、図1乃至図3に示す実施例によれば、電動式移動棚装置の不使用状態が一定時間継続すると待機電源がオフされるため、待機時の電力の浪費を解消することができる。これに加えて、電動式移動棚装置を稼働させるためにいずれかの電動式移動棚2の操作スイッチ7を操作しようとすると、操作スイッチ7が操作される前に光電センサが検知動作して待機電源が供給されるため、使用者が意識しなくても、必要な場合に自動的に待機電源が供給される。
移動棚装置が使用状態にあるか否かは、操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14、照明灯16の何れかが動作したか否かで判断される。図1乃至図3に示す実施例では、操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14、照明灯16の何れかが動作したか否かを、使用検知部46が検知する。操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14、照明灯16の何れかが動作している状態は、移動棚装置が使用されている状態において生じることである。したがって、使用検知部46は、操作スイッチ7、進入センサ12、非常停止センサ14、照明灯16の何れかが動作していると、移動棚装置が使用状態であることを示す信号を出力する。この使用検知部46からの信号を電源制御部47が受けてパワーリレー23を動作させ、電動式移動棚2への電源の供給を維持する。
手動操作によるメイン電源スイッチのオンオフで待機電源をオンオフする従来の電動式移動棚によれば、メイン電源スイッチの位置と電動式移動棚を稼働させるための操作スイッチ7の位置が異なっているため、待機電源の浪費を解消するためにメイン電源スイッチをオフにする操作が面倒になり、メイン電源スイッチがオフにされることなく待機電源が供給されたままになることが多い。その点、本発明の前記実施例によれば、待機電源が不要な場合は自動的に待機電源がオフになり、待機電源が必要な場合は自動的に待機電源がオンになるため、利便性の向上と省電力化の両立を図ることができる。
次に、本発明に係る移動棚装置の各種変形例について説明する。図4乃至図6に示す例は、投光部4と受光部5で構成される光電センサが2対配置されている例である。一つの投光部4と一つの受光部5で1対の光電センサが、もう一つの投光部4ともう一つの受光部5でもう1対の光電センサが構成されている。1対の投光部4と受光部5の配置位置と他の1対の投光部4と受光部5の配置位置が互いに反対になっている。より具体的には、一方の固定棚3の投光部4から投光された光ビームが他方の固定棚3の受光部5で受光され、他方の固定棚3の投光部4から投光された光ビームが一方の固定棚3の受光部5で受光されるように構成されている。このように、投光部4と受光部5を対とする2対の投受光型光電センサを、投光部4と受光部5の位置を互いに反対にして配置することにより、低コストで光電センサの検知精度を高めることができる。
2対の光電センサは、前記第1の実施例と同様に、電動式移動棚の操作スイッチ7と同じ高さ位置で操作スイッチ7の前方を光ビームが通るように、固定棚3に取り付けられている。各投光部4から投光される光ビームは、図5、図6に示すように、緩やかな発散光になっている。図4、図5に示す例では、各固定棚3に配置される投光部4と受光部5が長手方向を上下に重ねて配置されているが、図6に示す例では、投光部4と受光部5が厚さ方向を上下に重ねて配置されている。何れの例にせよ、動作に大きな相違はない。
図7に示す例は、光電センサが電動式移動棚2に取り付けられ、また、光電センサとして投受光型光電センサと反射型光電センサが併用されている例である。図7において、二つの電動式移動棚2の操作パネル71には、投受光型光電センサを構成する投光部4と受光部5が対向させて配置されている。投受光型光電センサは2対の投光部4と受光部5からなる2対の光電センサであって、2対の投光部4と受光部5は図4、図5に示す例と同様に配置されている。対向する2台の電動式移動棚2間には、通常別の電動式移動棚2が配置されるが、別の電動式移動棚2の描写は省略されている。
各電動式移動棚2の操作パネル71の左右両側には横向きのV字状の凹陥部72が形成され、これらの凹陥部72に操作スイッチ7が取り付けられている。各電動式移動棚2の左側の操作スイッチ7は、これを右方に向けて押すことにより電動式移動棚2を右方に移動させるスイッチであり、右側の操作スイッチ7は、これを左方に向けて押すことにより電動式移動棚2を左方に移動させるスイッチである。
左側の電動式移動棚2の投光部4と受光部5は、上記左側の電動式移動棚2の操作パネル71の右側に取り付けられている操作スイッチ7に近接しかつこの操作スイッチ7よりも左側に取り付けられている。また、右側の電動式移動棚2の投光部4と受光部5は、上記右側の電動式移動棚2の操作パネル71の左側に取り付けられている操作スイッチ7に近接しかつこの操作スイッチ7よりも右側に取り付けられている。さらに、上記各投光部4から投光される光ビームは操作スイッチ7の前方を通り、この光ビームを受光部5が受光することができるように、投光面と受光面が操作パネル71の前面より前方に突出している。このようにして構成された2対の光電センサにより、操作スイッチ7を操作しようとして手を伸ばすと、操作スイッチ7に手が触れる前に光電センサが手を検知し、前述のように待機電源スイッチである前記パワーリレー23がオンして待機電源が供給される。
前記反射型光電センサは、図7において符号8で示されていて、左側の電動式移動棚2の操作パネル71の左側と、右側の電動式移動棚2の操作パネル71の右側に配置されている。既に説明した通り、図7では2つの電動式移動棚2のみしか描かれていないが、図示の2つの電動式移動棚2間には別の電動式移動棚2が配置され、1群の電動式移動棚のうち図示の2つの電動式移動棚2がそれぞれ左端と右端の電動式移動棚である。左端の電動式移動棚2には、操作パネル71の左側の操作スイッチ7に近接しかつこの操作スイッチ7の右側に反射型光電センサ8が投光面と受光面を左に向けて取り付けられている。右端の電動式移動棚2には、操作パネル71の右側の操作スイッチ7に近接しかつこの操作スイッチ7の左側に反射型光電センサ8が投光面と受光面を右に向けて取り付けられている。
上記2つの反射型光電センサ8の投光面と受光面は操作スイッチ7よりも前方に突出していて、反射型光電センサ8の投光面から投光される光ビームは操作スイッチ7の前方を通り、上記光ビームが何らかの反射面で反射されると、この反射光の一部が操作スイッチ7の前方を通って受光面に入射するようになっている。図7において左端の電動式移動棚2を右に向かって移動させようとして左端の操作スイッチ7に手を伸ばすと、操作スイッチ7に手が触れる前に上記光ビームが手で反射され、反射光が光電センサ8の受光部で検知される。同様に、図7において右端の電動式移動棚2を左に向かって移動させようとして右端の操作スイッチ7に手を伸ばすと、操作スイッチ7に手が触れる前に上記光ビームが手で反射され、反射光が光電センサ8の受光部で検知される。この反射型光電センサ8の検知信号により待機電源スイッチである前記パワーリレー23がオンして待機電源が供給される。
図13は、図7に示す実施例において、左端の電動式移動棚2を右に向かって移動させようとして左端の操作スイッチ7に手を伸ばした状態を示す。左端の操作スイッチ7に向かって手を伸ばすと、光電センサ8の投光面から投光される光ビームが上記手で反射され、反射光の一部が光電センサ8の受光部に入射し、受光部で検知される。
図7に示す例のように投受光型光電センサと反射型光電センサを併用すれば、固定棚を用いることなく複数の電動式移動棚のみで移動棚装置を構成した場合にも、待機電源スイッチを自動的にオンに切り替えるオートパワーオン装置を組み込むことができる。なぜなら、投受光型光電センサの投光部と受光部は、電動式移動棚2の操作パネル71の側端から見て操作スイッチ7よりも奥側に設けざるを得ず、一群の電動式移動棚2のうち左右端にある電動式移動棚2における外側の操作スイッチ7を操作しようとするときは、これを投受光型光電センサで検知することはできない。その点、図7に示す例のように、上記左右端にある電動式移動棚2における外側の操作スイッチ7に隣接して反射型光電センサ8を設けておけば、上記外側の操作スイッチ7を操作しようとするときこれを検知することができる。
図8、図9に示す例は、投受光型光電センサを用いた例において、投光部4の光出射面と受光部5の光入射面にそれぞれ反射部材としての直角プリズム18を配置し、これらの直角プリズム18を経て光ビームを投光しまた入射するように構成したものである。投受光型光電センサは、図4乃至図6に示す例と同様に2対使用し、1対の投受光型光電センサと他の1対の投受光型光電センサの投光部4と受光部5の配置位置を互いに逆にしたものである。また、この実施例でも、図8、図9に示すように、光ビームは緩やかな拡散光になっている。2対の光電センサを、投光部4と受光部5の配置位置を互いに逆に配置することで、光ビームが緩やかな発散光であっても、低コストで光電センサの検知精度を高めることができる。
図11、図12にも示すように、上記各直角プリズム18の光入出射部181のみが前記操作パネル71の面から突出し、各直角プリズム18の他の部分および投光部本体および受光部本体は操作パネル71の面から後退している。投光部4からは光ビームが操作パネル面に直交する方向に出て直角プリズム18の45度に傾斜した反射面で直角に曲げられて受光部5に向かう。受光部5では、上記直角プリズム18で反射された光ビームが直角プリズム18の光入出射部181に入り、直角プリズム18の45度に傾斜した反射面で操作パネル面に直交する方向に反射され、受光部5で受光される。いずれかの電動式移動棚において操作スイッチを操作しようとすると、光ビームが遮蔽され、受光部5の検知信号が変化する。この受光部5の検知信号の変化で前記待機電源スイッチをオンに切り替える。
以上述べたような構成にすれば、光電センサの操作パネル71の面からの突出量を少なくすることができる。さらに、図8に示すように、操作パネルから突出している直角プリズム18の鋭角的な先端縁部を切除すれば、光電センサの操作パネル面からの突出量をさらに少なくすることができる。直角プリズム18の鋭角的な先端縁部を切除しても、光の入出射面の一部が操作パネルの面から突出していれば、投光部4から操作パネルの前方を通る光ビームを投光し、この光ビームを受光部5で受光することができる。また、直角プリズム18の鋭角的な先端縁部を切除することにより、上記光ビーム以外の不要な光の入射を回避することができ、誤動作が少なく、検知精度が高くなる効果がある。
図10に示す例は、投受光型光電センサを構成する一対の投光部4と受光部5を一つの電動式移動棚2に取り付け、他の一つの電動式移動棚2には、上記投光部4から投光される光ビームを上記受光部5に向かって折り返す直角プリズム19を取り付けたものである。直角プリズム19は互いに直角をなす2面が反射面191,192になっていて、2つの反射面191,192に対して45度の角度をもった1つの面が入出射面193となっている。投光部4と受光部5は上下に重ねて配置されている。
一対の投光部4と受光部5は、左側の電動式移動棚2の操作パネル71の右側の操作スイッチ7に近接し、かつこの操作スイッチ7の左側に、投光面と受光面を右に向けて取り付けられている。直角プリズム19は、右側の電動式移動棚2の操作パネル71の左側の操作スイッチ7に近接し、かつこの操作スイッチ7の右側に、入出射面193を左に向けて取り付けられている。
投光部4の投光面と受光部5の受光面、直角プリズム19の入出射面193は操作スイッチ7よりも前方に突出していて、投光部4の電動式移動棚2の投光面から投光される光ビームは操作スイッチ7の前方を通り、右側の電動式移動棚2の操作スイッチ7の前方を通ってプリズム19に入射するようになっている。右側の電動式移動棚2から左側の電動式移動棚2に向かう光ビームと左側の電動式移動棚2から右側の電動式移動棚2に向かう光ビームの何れかが遮蔽されると、これを受光部5が検知する。
図10に示す左右の電動式移動棚2の間には少なくとも1台の電動式移動棚が配置されていて、図10に示す左右の電動式移動棚2は1群の電動式移動棚の外側端に位置する移動棚である。したがって、図10に示す左右の電動式移動棚2の操作スイッチ7および他の電動式移動棚の操作スイッチの何れかを操作しようとすると、上記光ビームが遮蔽されて受光部が検知信号を出力する。この検知信号によって待機電源をオンする。
図10に示す例のように、一対の投光部4と受光部5とプリズム19で構成した光電センサを電動式移動棚2に取り付けると、左端の電動式移動棚2の左側の操作スイッチを操作しようとする場合、および右端の電動式移動棚2の右側の操作スイッチを操作しようとする場合に、これを光電センサで検知することができない。そこで、図7に示す例のように、左端の電動式移動棚2の左端の操作スイッチ7に近接して前述の反射型光電センサを取り付け、また、右端の電動式移動棚2の右端の操作スイッチ7に近接して反射型光電センサを取り付けるとよい。
2つの固定棚間に複数の電動式移動棚を配置し、図10に示す一対の投光部4と受光部5を一方の固定棚に取り付け、プリズム19を他方の固定棚に取り付けてもよい。かかる構成の場合、反射型光電センサは不要である。なお、複数の電動式移動棚の一方側に固定棚を配置し、複数の電動式移動棚の他方側には固定棚を配置しない構成でもよい。その場合、一端側の上記固定棚または他端側の電動式移動棚との間で光電センサを構成するように、一対の投光部4と受光部5、プリズム19を配置する。そして、一対の投光部4と受光部5、またはプリズム19が配置される電動式移動棚には、外側の操作スイッチに近接して、図7で説明したような反射型光電センサ8を配置する。
反射型光電センサを用い、かつ、光束が発散光束である場合、プリズム内での反射光束が受光部に入射することが考えられる。かかる現象が生じると、操作スイッチを操作しなくても、操作スイッチを操作したかのような誤動作の原因になるので、プリズム内での反射光束が受光部に入射することを避けるための対策を講じておくことが望ましい。図14、図15は上記対策を講じた例で、光電センサとプリズム18との間に、緩衝材を兼ねたスリット板50を介在させている。スリット板50は、光束の入出射を中心部のみに制限するためのスリット51を持ったマスク板の働きをするとともに、弾性体で形成されることにより緩衝材の働きをする。
光電センサとプリズム18との間に緩衝材を兼ねたスリット板50を介在させることにより、以下のような効果を得ることができる。
1.プリズム内で反射されるいわゆる外乱光の入射を阻止して、誤動作を解消することができる。
2.スリットの大きさを調節することにより光量を調節することができる。
3.光電センサおよびプリズムに加わる衝撃力を緩衝し、光電センサおよびプリズムが受けるダメージを回避することができる。
4.プリズムを通して外部から光電センサを見ることができる範囲を制限することができる。
以上説明した例においても、いずれかの電動式移動棚2を移動させるべく操作スイッチ7に手を伸ばすと、操作スイッチ7に手が触れる前に光ビームが手で遮蔽または反射され、光電センサの受光部の検知信号の変化によって、電動式移動棚装置が稼働状態になることが検知される。この検知信号により待機電源スイッチである前記パワーリレー23(図2参照)がオンして待機電源が供給される。
なお、移動棚装置が使用状態にあるのか不使用状態にあるのかを、図2について説明した照明灯16の点灯、消灯で検知するようにしてもよい。操作スイッチ7の操作によって所望の位置に作業通路が形成されると、上記作業通路の照明灯16が点灯する。その後、インターロックが解除されたこと、あるいは通路への進入センサ12の非検知状態が所定時間経過したことなど、移動棚装置が不使用であると判断される状況になると、照明灯16が消灯するように構成されているものがある。かかる構成の移動棚装置の場合、照明灯16が消灯すれば、移動棚装置が不使用であるとみなされるため、照明灯16の消灯に伴って待機電源スイッチであるパワーリレー23をオフするように構成してもよい。
移動棚装置が使用状態にあるのか不使用状態にあるのかを照明灯16の点灯、消灯で検知するように構成することにより、移動棚装置の安全性を高めることができる。すなわち、図2に示す進入センサ12、非常停止センサ14、安全バーなどが故障して断線したときは、進入信号、非常停止信号などが入力され続けているため、照明の信号が入力され続け、オートパワーはオン状態のままとなる。これにより、作業通路中に人がいて上記進入センサなどが断線したとしても電源が入り続け、ロック状態となるため、安全面もより高くなるように考慮されている。
また、本発明の主要部である光電センサや電源管理部9、パワーリレー23などを含む構成部分、すなわち、図2においてブロック100で示す構成部分はこれをユニット化することができる。このユニット部分以外は既存の電動式移動棚装置の構成と同じであるから、既存の電動式移動棚装置に上記ユニット化した部分を付加することにより、省電力効果の高い電動式移動棚装置に生まれ変わらせることができる。また、上記ユニットは、前に述べた電気的制御装置などを有する手動式移動棚装置のように、電源を必要とする手動式移動棚装置に組み込むことができる。こうすることにより、手動式移動棚装置における待機時の電力消費を軽減することができる。
移動棚装置は、複数の移動棚と、必要に応じて固定棚が用いられ、複数の移動棚と場合によっては固定棚とでブロックが構成され、この移動棚ブロックが一つまたは複数形成される。移動棚のブロックは、ユーザーが求める仕様、設置場所の条件などによって、以下のような設置態様がある。
1.全ての棚が移動棚である。
2.複数の移動棚が2つの固定棚の間に挟まれて配置されている。
3.複数の移動棚の片方の端部にのみ固定棚が配置されている。
4.複数の移動棚の片方の端部に建物の壁があり、反対側の端部に固定棚が配置されている。
以上のような各種態様に応じた適切な態様で、前記投受光型光電センサまたは反射型光電センサを取り付けるとよい。