JP6124715B2 - マイクロ波イオン源及びイオン引出部 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロ波イオン源、及びマイクロ波イオン源に適するイオン引出部に関する。
マイクロ波をプラズマ生成に用いるイオン源が知られている。真空のプラズマ室にマイクロ波が導入される。プラズマ室に供給された原料ガスがマイクロ波によって励起され、プラズマが生成される。プラズマからイオンが引き出される。こうしてイオン源から引き出されたイオンは例えばイオン注入処理のために使用される。また、プラズマ室に電子サイクロトロン共鳴を引き起こすための磁場を印加して、プラズマを効率的に生成する方式も知られている。
特開平6−36696号公報 特開2005−251743号公報
磁場が印加されている場合、生成されたプラズマ中の荷電粒子は磁場に沿ってらせん運動をする。一部の粒子はプラズマ室の壁面に到達してプラズマから失われうる。より多くのイオンを外に引き出して利用するためには、そうしたプラズマの損失を抑制することが望まれる。
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、マイクロ波イオン源のプラズマ室におけるプラズマ密度を向上することにある。
本発明のある態様のマイクロ波イオン源は、マイクロ波導入部とイオン引出部とを備えるプラズマ室と、マイクロ波の進行方向に向けられた磁場を前記プラズマ室に発生させる磁場発生器と、を備える。前記イオン引出部は、前記磁場に交差する内壁面と、前記内壁面の少なくとも一部を形成する二次電子放出材料層と、前記二次電子放出材料層の背後に設けられている磁性体と、を備える。
この態様によると、磁場が磁性体に集まるので、磁場に沿って運動するプラズマ中の荷電粒子を磁性体手前の二次電子放出材料層に誘導することができる。二次電子放出材料層に荷電粒子が当たるとプラズマ室に二次電子が放出される。二次電子放出材料層がイオン引出部に設けられているためイオン引出部での電子密度が高められ、それにより電気的平衡状態に近づくようにイオン引出部に向けて陽イオンが流入する。したがって、プラズマ室の、とりわけイオン引出部のプラズマ密度を向上することができる。よって、イオン源から引き出されるイオンの量を増やすことができる。
前記内壁面にはイオン引出開口が設けられており、前記二次電子放出材料層は該イオン引出開口に隣接するように形成されていてもよい。
このようにすれば、イオン引出開口の近傍に二次電子を供給することができるので、プラズマ密度を向上し引き出されるイオンの量を増やすうえで特に有効である。
前記磁性体は、前記二次電子放出材料層により被覆され、前記イオン引出部に収められていてもよい。
このようにすれば、二次電子放出材料層により磁性体を保護することができる。プラズマによる磁性体の損傷を防ぐとともに、磁性体の成分のプラズマへの混入を防ぐことができる。
本発明の別の態様は、プラズマ室からイオンを引き出すためのイオン引出部である。前記プラズマ室には磁場が印加されている。このイオン引出部は、前記磁場に交差する内壁面と、前記内壁面の少なくとも一部を形成する二次電子放出材料層と、前記二次電子放出材料層の背後に設けられている磁性体と、を備える。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、マイクロ波イオン源のプラズマ室におけるプラズマ密度を向上することができる。
本発明のある実施形態に係るマイクロ波イオン源を概略的に示す断面図である。 図1に示すイオン引出部の分解図である。 本発明のある実施形態に係るマイクロ波イオン源において磁場発生器によりプラズマ室に生じる磁場を例示する図である。 比較例に係るマイクロ波イオン源において磁場発生器によりプラズマ室に生じる磁場を例示する図である。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
図1は、本発明のある実施形態に係るマイクロ波イオン源10を概略的に示す断面図である。マイクロ波イオン源10は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)条件を満たす磁場またはそれよりも高い磁場を印加したプラズマ室12内へ、磁力線方向にマイクロ波電力を入力して高密度プラズマを生成しイオンを引き出すイオン源である。マイクロ波イオン源10は、磁場とマイクロ波との相互作用によって原料ガスのプラズマを生成し、そのプラズマからプラズマ室12の外部へイオンを引き出すように構成されている。
よく知られるように、ECR条件を満たす磁場の強さは使用されるマイクロ波の周波数に対し一意に定まり、マイクロ波周波数が2.45GHzの場合には87.5mT(875ガウス)の磁場が必要である。以下では説明の便宜上、ECR条件を満たす磁場を、共鳴磁場と呼ぶことがある。
マイクロ波イオン源10は、例えばイオン注入装置又は粒子線治療装置のためのイオン源に使用される。マイクロ波イオン源10は例えば、一価イオン源として使用される。また、マイクロ波イオン源10は、プロトン加速器のためのイオン源、またはX線源としても使用され得る。
プラズマ室12は、その内部空間にプラズマを生成し維持するよう構成されている真空チャンバである。プラズマ室12の内部空間を以下では、プラズマ生成空間14と呼ぶことがある。
プラズマ室12は、両端をもつ筒状の形状を有する。プラズマ室12の一端から他端に向かう方向を以下では便宜上、軸方向と呼ぶことがある。また、軸方向に直交する方向を径方向と呼び、軸方向を包囲する方向を周方向と呼ぶことがある。しかしこれらは、プラズマ室12が回転対称性を有する形状であることを必ずしも意味するものではない。また、プラズマ室12の軸方向長さは、プラズマ室12の端部の径方向長さより長くてもよいし短くてもよい。
プラズマ室12は、マイクロ波導入部16と、イオン引出部18と、を備える。マイクロ波導入部16とイオン引出部18とはプラズマ生成空間14を挟んで対向している。
また、プラズマ室12は、マイクロ波導入部16とイオン引出部18とを接続し、プラズマ生成空間14を囲む側壁部20を備える。マイクロ波導入部16及びイオン引出部18それぞれの外周部分に側壁部20が固定されている。側壁部20は例えばステンレス鋼またはアルミニウムのような非磁性金属材料で形成されている。
なお側壁部20は、側壁部20を冷却するための冷却部を備えてもよい。この冷却部は側壁部20に内蔵されていてもよいし、側壁部20の外側に付設されていてもよい。また、プラズマ室12の側壁部20をプラズマから保護するために、側壁部20の内面を被覆する(例えば窒化ホウ素の)ライナが設けられていてもよい。
マイクロ波導入部16、イオン引出部18、及び側壁部20によってプラズマ室12の中にプラズマ生成空間14が画定されている。なお、プラズマ室12は、マイクロ波導入部16、イオン引出部18、及び側壁部20が一体にプラズマ生成空間14を囲むよう構成されているから、イオン引出部18に接続される側壁部20の末端はイオン引出部18の一部であるとみなすこともできる。同様に、マイクロ波導入部16に接続される側壁部20の末端はマイクロ波導入部16の一部であるとみなすこともできる。
プラズマ室12は例えば円筒形状を有する。この場合、マイクロ波導入部16及びイオン引出部18は概ね円板形状であり、側壁部20は概ね円筒である。なおプラズマ室12は、プラズマを適切に収容し得る限り、いかなる形状であってもよい。
マイクロ波導入部16は、真空窓22と、真空窓22を支持する真空窓支持部24と、を備える。真空窓22はプラズマ室12の内部を真空に封じる。真空窓22の一方の側がプラズマ生成空間14に面しており、真空窓22の他方の側がマイクロ波供給系または導波管26に向けられている。マイクロ波の伝搬方向Pは真空窓22に垂直である。本実施形態では真空窓22はマイクロ波導入部16の全体を占めているが、真空窓22はマイクロ波導入部16の一部(例えば中心部)に形成されていてもよい。
真空窓22は例えばアルミナまたは窒化ホウ素のような誘電体で形成されている。本実施形態では真空窓22は二層構造を有し、例えば窒化ホウ素の窓内層28がプラズマ生成空間14に面しており、その窓内層28に例えばアルミナの窓外層30が隣接する。窓内層28は、プラズマ室12の外からイオン引出開口32を通じてプラズマ室12に逆流する電子から窓外層30を保護するために窓外層30を被覆する。真空窓支持部24は例えばステンレス鋼またはアルミニウムのような非磁性金属材料で形成されている。
一方、イオン引出部18には少なくとも1つのイオン引出開口32が形成されている。イオン引出開口32は例えば、紙面に垂直な方向に細長いスリットである。イオン引出開口32はイオン引出部18の中心部分に形成されている。イオン引出開口32は、プラズマ生成空間14を挟んで真空窓22に対向する位置に形成されている。真空窓22、プラズマ生成空間14、及びイオン引出開口32は、プラズマ室12の中心軸に沿って配列されている。
詳しくは後述するように、イオン引出部18は、外側部分48と、磁性体50と、二次電子放出材料層である被覆部52と、を備える。なお本書においては、イオン引出部18の内壁面のうち、マイクロ波導入部16に対向する部分を、イオンビーム引出面34と称することがある。
イオン引出開口32の軸方向外側には、イオンをプラズマ室12の外に引き出すための少なくとも1つの引出電極36を備える引出電極系が設けられている。引出電極36は、イオン引出部18との間に軸方向に引出ギャップ38を有して対向する。引出電極36は、それぞれ例えば環状に形成されており、プラズマ室12から引き出されたイオンを通すための開口部分を中心部に有する。
図1に示されるように、マイクロ波イオン源10は、プラズマ室12に磁場を発生させるための磁場発生器40を備える。磁場発生器40は、プラズマ室12の中心軸上において軸方向に向けられた磁場を発生させるために、プラズマ室12の側壁部20を囲むように配設されている。その磁力線方向を図1に矢印Mで示す。磁場発生器40による磁力線方向Mは、マイクロ波の伝搬方向Pと同一の方向である。また、この磁場Mは、プラズマ室12の中心軸上の少なくとも一部分において共鳴磁場またはそれよりも高強度である。しかし、磁場発生器40は、プラズマ室12の軸線上の少なくとも一部分に共鳴磁場よりも低い磁場を発生させることも可能である。
磁場発生器40は、プラズマ室12を囲むドーナツ型のコイル42と、コイル42に装着されたヨーク44と、を備える。コイル42は環状に形成され、プラズマ室12の周方向に導線が巻かれている。ヨーク44は、コイル42の外周及び軸方向両端に隣接して設けられている。また、磁場発生器40は、コイル42に電流を流すためのコイル電源(図示せず)を備える。
なお磁場発生器40は、図示されるように1つのコイル42を備える代わりに、プラズマ室12の軸方向に沿って配列された複数のコイルを備えてもよい。また、磁場発生器40は、これら1つ又は複数のコイルとともに、または1つ又は複数のコイルに代えて、永久磁石を備えてもよい。
磁場発生器40は、プラズマ室12に対して磁場発生器40を支持するための磁石支持部(図示せず)を備えてもよい。この場合、磁場発生器40は、その磁石支持部によってプラズマ室12を囲むように配置される。本実施形態においては、磁場発生器40は、プラズマ室12と磁場発生器40との間に径方向隙間46が形成されるように支持されている。このように磁場発生器40とプラズマ室12とが離れている場合には、磁場発生器40とプラズマ室12とに異なる電位が与えられてもよい。そのためにマイクロ波イオン源10は、プラズマ室12及び磁場発生器40のそれぞれに電位を与えるための高電圧電源(図示せず)を備えてもよい。なお磁場発生器40はプラズマ室12の外表面に直に取り付けられていてもよい。
図2は、図1に示すイオン引出部18の分解図である。図1及び図2に示されるように、イオン引出部18は、外側部分48、磁性体50、及び被覆部52を備える。また、図3は、本実施形態に係るマイクロ波イオン源10において磁場発生器40によりプラズマ室12に生じる磁場を例示する図である。
外側部分48はイオン引出部18の外形を定める。また、外側部分48には、その中心部にイオン引出開口32が形成されており、外側部分48はイオン引出開口32の形状を定めている。外側部分48は、例えばステンレス鋼またはアルミニウムのような非磁性金属材料で形成されている。外側部分48は、例えばタングステンのような高融点金属またはグラファイトのような高融点の半金属導体であってもよい。プラズマ室12に高電圧が印加されるとき、その一部である外側部分48にも同じ高電圧が印加されるので、外側部分48はプラズマ電極と呼ばれることもある。
磁性体50は軸方向に関して外側部分48と被覆部52との間にあり、外側部分48と被覆部52とに挟まれている。磁性体50は、イオン引出開口32を囲むように軸対称に配置されている。磁性体50は鉄材などの軟磁性体である。磁性体50は、径方向に関してイオン引出開口32と磁場発生器40との間に位置する。こうして、プラズマ室12に生成される軸方向磁場をイオン引出開口32から磁性体50を介して磁場発生器40へと帰還させる磁気回路が構成される。よって、この磁気回路において磁性体50は被覆部52の背後に設けられている。
磁性体50を経由する磁場を図3に例示する。比較のために、磁性体50が設けられておらずイオン引出部18が非磁性材料である場合の磁場を図4に例示する。これら磁場の対比については後述する。
被覆部52は、上述のイオンビーム引出面34を形成する。また、被覆部52は、プラズマから磁性体50を保護するために磁性体50の表面を覆う保護層でもある。
本実施形態においては、被覆部52は、二次電子放出材料で、例えばアルミナ、酸化マグネシウム、または窒化ホウ素のような二次電子放出係数の高い材料で、形成されている。ここで、二次電子放出係数の高い材料とは、本用途においてイオンに要求されるエネルギーレベル(例えば数eV〜数10eV、または約10eV)において当該材料にイオンが入射したとき少なくとも1個の電子を放出する材料をいう。こうして被覆部52は、プラズマ室12の側壁部20の内面またはマイクロ波導入部16の内面を形成する材料に比べて高い二次電子放出能力を有する材料で形成されている。
二次電子放出材料は、少なくとも二種のアルカリ土類金属元素を含むアルカリ土類金属酸化物であってもよい。こうしたアルカリ土類金属酸化物は、高い二次電子放出能力を持ちうる。そのために、アルカリ土類金属元素は、電子数の多い元素であることが望ましい。そこで、少なくとも二種のアルカリ土類金属元素のうち第1の元素は、ストロンチウム又はバリウムであってもよい。また、少なくとも二種のアルカリ土類金属元素のうち第2の元素は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなるグループから選択され、第1の元素と異なる元素であってもよい。あるいは、少なくとも二種のアルカリ土類金属元素は、ストロンチウムと、マグネシウム、カルシウム、及びバリウムからなるグループから選択される元素と、を含んでもよい。アルカリ土類金属酸化物は、酸化ストロンチウムカルシウムまたは酸化ストロンチウムマグネシウムであってもよい。
また、図2に示されるように、外側部分48には磁性体50及び被覆部52を収容するための凹部54が形成されている。凹部54は、外側部分48の外周部及びイオン引出開口32の周囲を残すようにプラズマ生成空間14側から掘り下げられている。
磁性体50及び被覆部52は外側部分48の凹部54に嵌め込まれるように寸法が定められている。そのため磁性体50及び被覆部52はそれぞれ、外側部分48の外周部に一致する外形を有し、かつ中心部にイオン引出開口32に対応する開口を有するプレートである。凹部54の底面56に磁性体50の表面の一方が当接し、その反対側の磁性体50の表面は被覆部52に当接している。被覆部52は磁性体50の全体を覆っており、磁性体50はプラズマ生成空間14に露出されていない。こうして被覆部52はプラズマから磁性体50を遮蔽する。
被覆部52は外側部分48の外周部及びイオン引出開口32の周囲と同一平面を形成し、外側部分48が側壁部20に取り付けられたとき被覆部52及び磁性体50の外周部は、側壁部20と外側部分48とに挟持される。なお外側部分48は例えばタイロッドなどの適切な取付手段(図示せず)によって側壁部20に取り付けられる。
本実施形態に係るマイクロ波イオン源10の動作を説明する。マイクロ波が真空窓22を通じてプラズマ室12に導入される。マイクロ波によって原料ガスが励起され、プラズマ室12にプラズマが生成される。イオン引出開口32を通じてプラズマ室12の外へとイオンが引き出される。
ところで、図4に例示するように、マイクロ波イオン源は一般に、プラズマ室60の外に設置されたソレノイドコイルが発生させる概ね軸方向を向く磁場62によりプラズマを生成し閉じ込めている。この磁場62は非磁性金属材料で形成されたイオンビーム引出面64を横切っている。プラズマ中の荷電粒子は磁場62に沿って(例えば、磁場62に巻き付くように)移動する。そして、一部の荷電粒子は引出面64に当たり、引出面64を加熱する。そうした荷電粒子は引出面64に捕捉されプラズマから失われるので、プラズマ室60のプラズマ密度は高くなりにくい。
これに対して、本実施形態においては、上述のように、二次電子放出係数が高い部材である被覆部52によりイオンビーム引出面34が形成されている。したがって、被覆部52に荷電粒子が衝突するときプラズマ生成空間14に二次電子が放出される。プラズマ生成空間14のうちイオン引出部18に隣接する領域における電子密度が高まり、それにより電気的平衡状態に近づくように当該領域にイオンが流入する。こうして、イオン引出部18のプラズマ密度を向上し、マイクロ波イオン源10から引き出されるイオンの量(つまり引出可能なイオンビーム電流量)を増やすことができる。
また、本実施形態においては、二次電子放出源である被覆部52の背後に磁性体50が設けられている。そのため、図3に例示するように、磁性体50に磁場Mを引き寄せることができる。例えば、イオン引出部18が非磁性材料であった場合には側壁部20を経由してプラズマ室12の外へ抜けていた磁力線や、プラズマ室12の外側を通っていた磁力線を、イオンビーム引出面34へと集めることができる。あるいは、イオン引出開口32を通っていた磁力線をイオンビーム引出面34に向けることができる。磁力線に沿って荷電粒子が被覆部52に誘導され被覆部52から多量の二次電子が放出される。電気的平衡状態を実現するように多量のイオンがイオン引出部18に向けて引き寄せられる。したがって、磁性体50を設けることにより、イオン引出部18でのプラズマ密度増強効果をさらに高めることができる。
本実施形態によると、被覆部52はイオン引出開口32に隣接するように形成されている。具体的には、被覆部52はイオン引出開口32を囲むように軸対称に形成されている。イオン引出開口32の近傍に二次電子が直接供給され、イオン引出開口32におけるプラズマ密度を向上することができる。よって、こうした被覆部52の配置は、マイクロ波イオン源10から引出可能なイオンビーム電流量を増やすうえで特に有効である。
また、本実施形態によると、磁性体50は被覆部52によってプラズマから保護されている。そのため、磁性体50はプラズマによるスパッタリングから保護され、磁性体50の材料によるプラズマの汚染、ひいてはイオンビームの汚染を防止することができる。なお、こうした汚染問題が重要でない用途においては、磁性体50の表面がプラズマ生成空間14に露出されていてもよい。
本実施形態によると、磁性体50は外側部分48の中に収められており、引出ギャップ78の寸法は磁性体50の装着の前後で変わらない。一般に引出ギャップ78はイオンの引出のために最適に調整されている。したがって、本実施形態においては、磁性体50の装着後にそうした調整を再び行うことを要しないという利点もある。
本実施形態によると、図3からわかるように、磁性体50により、プラズマ室12の軸方向磁場Mを径方向に逃がして引出ギャップ38への軸方向磁場Mの漏れを軽減または防止することができる。このようにして、磁性体50はプラズマ室12から引出ギャップ38への漏れ磁場を遮蔽する磁気シールドとしても機能する。本発明者の知見によると、引出ギャップ38における軸方向の漏れ磁場が大きいとき、外側部分48(プラズマ電極)と引出電極36との間で放電が生じやすくなる。それは、引出ギャップ38において漏れ磁場に巻き付くように運動する電子が、2つの電極間の放電の主たる要因の1つであるからと考えられる。よって、本実施形態によると、磁気シールドとしての磁性体50を設けることにより、引出ギャップ38での放電を抑制することができる。これは、マイクロ波イオン源10を安定的に運転することに役立つ。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
上述の実施形態においては、外側部分48、磁性体50、及び被覆部52はそれぞれ別体の部材であり必要に応じて個別に交換可能である。しかし、外側部分48、磁性体50、及び被覆部52のうち互いに隣接する2つの部材または全部が、例えば異材接合により一体化されていてもよい。隣接部材間の微視的な間隙をなくすことができるので、こうした一体化は、磁性体50をプラズマから保護するうえで(または、プラズマの汚染を防止するうえで)有効である。
上述の実施形態においては、外側部分48、磁性体50、及び被覆部52はそれぞれ単一の部材であるが、複数の部片で構成されていてもよい。例えば、磁性体50及び/または被覆部52が、イオン引出開口32を囲む中心部分とその外周部分との2つの部片に分割されていてもよい。このようにすれば、損耗を受けやすい中心部分のみを必要に応じて交換することができる。
磁性体50及び/または被覆部52は、イオンビーム引出面34の全体に設けられていなくてもよく、径方向または周方向に部分的に設けられていてもよい。例えば、磁性体50は、径方向に互いに間隔を有して同心円状に配列された複数の環状磁性体でもよいし、周方向に互いに間隔を有して放射状に配列された複数の磁性体片でもよい。同様に、被覆部52は、径方向に互いに間隔を有して同心円状に配列された複数の二次電子放出部でもよいし、周方向に互いに間隔を有して放射状に配列された複数の二次電子放出部でもよい。
また、被覆部52は、イオン引出部18に接続される側壁部20の末端の内壁面の少なくとも一部を形成していてもよい。こうした被覆部52の背後に磁性体50が設けられていてもよい。磁性体50は、イオン引出部18の径方向外側でイオン引出部18と磁場発生器40との間に配置されていてもよい。あるいは、磁性体50は、イオン引出部18の軸方向外側に配置されていてもよく、例えば、外側部分48の外側に隣接して設けられていてもよい。
上述の実施形態においては、マイクロ波放電によりプラズマ室12にプラズマが生成されている。しかし、本発明を適用することができるイオン源のプラズマ生成手段はマイクロ波に限られない。本発明は、イオン引出部の内壁面に交差する磁場が生成される任意のイオン源に適用することができる。
10 マイクロ波イオン源、 12 プラズマ室、 14 プラズマ生成空間、 16 マイクロ波導入部、 18 イオン引出部、 32 イオン引出開口、 34 イオンビーム引出面、 40 磁場発生器、 48 外側部分、 50 磁性体、 52 被覆部。

Claims (4)

  1. マイクロ波導入部とイオン引出部とを備えるプラズマ室と、
    マイクロ波の進行方向に向けられた磁場を前記プラズマ室に発生させる磁場発生器と、を備え、
    前記イオン引出部は、前記磁場に交差する内壁面と、前記内壁面の少なくとも一部を形成する二次電子放出材料層と、非磁性金属材料で形成された外側部分と、前記二次電子放出材料層の背後に設けられ、前記外側部分に収められている磁性体と、を備え
    前記磁性体は、前記二次電子放出材料層と前記外側部分とに挟まれて前記磁性体の全体が覆われていることを特徴とするマイクロ波イオン源。
  2. 前記内壁面にはイオン引出開口が設けられており、前記二次電子放出材料層は該イオン引出開口に隣接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波イオン源。
  3. 前記磁性体は、前記二次電子放出材料層により被覆され、
    前記イオン引出部の前記外側部分には、前記外側部分の外周部及びイオン引出開口の周囲を残すように凹部が形成され、
    前記磁性体及び前記二次電子放出材料層は、前記凹部に嵌め込まれるように寸法が定められ、
    前記凹部の底面に前記磁性体の一面が当接し、前記二次電子放出材料層に前記磁性体の反対側の面が当接して、前記磁性体及び前記二次電子放出材料層が前記凹部に収容されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波イオン源。
  4. プラズマ室からイオンを引き出すためのイオン引出部であって、前記プラズマ室には磁場が印加されており、
    前記磁場に交差する内壁面と、
    前記内壁面の少なくとも一部を形成する二次電子放出材料層と、
    非磁性金属材料で形成された外側部分と、
    前記二次電子放出材料層の背後に設けられ、前記外側部分に収められている磁性体と、を備え
    前記磁性体は、前記二次電子放出材料層と前記外側部分とに挟まれて前記磁性体の全体が覆われていることを特徴とするイオン引出部。
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