JP4089022B2 - 自己電子放射型ecrイオンプラズマ源 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンテナによってマイクロ波をチャンバに導入し、ガスを励起しプラズマにする小型のECRイオン源、ラジカル源、プラズマ源などに関する。
プラズマ源、イオン源の励起源はいくつもある。例えば負にバイアスしたフィラメントに電流を流し熱電子を放出しチャンバとの間にアーク放電を起こさせ原料ガスをプラズマ励起するものがある。これをフィラメント励起と呼ぶ。熱陰極から熱電子が放射されるのは、温度が高いので熱運動がさかんになり仕事関数を越えて電子が外部に出るしこれが電界によって引っ張られるからである。フィラメントはタングステンが使われる。これの欠点はフィラメントがスパッタリングされやすく寿命が短いということである。頻繁にフィラメントを交換しなければならない。
【0002】
平行平板電極の間に13.56MHzの高周波を掛けて原料ガスをプラズマにするものもある。高周波励起である。平行平板電極間に直流電圧を掛けてプラズマ励起するものもある。直流電圧励起である。2.45GHzのマイクロ波によるマイクロ波イオン源もある。
マイクロ波イオン源にもいくつもの種類がある。マグネトロンからマイクロ波を同軸管に導きアンテナによってチャンバに導入する比較的小型のものがある。マイクロ波エネルギーが小さいと同軸管によってマイクロ波を搬送できアンテナから放射することができる。軸対称で小型にできるので有用である。或いはマグネトロンからマイクロ波を導波管に導き誘電体窓を通してチャンバに導入する大型のものもある。マイクロ波エネルギーが高い場合は、同軸管では搬送できない。アンテナも使えない。導波管の中を空間伝送するしかない。
【0003】
さらにマイクロ波イオン源といってもECR型とそうでないものがある。ECRはチャンバの外側に電磁石或いは永久磁石を設け縦磁場を発生させてチャンバ内に875ガウスの共鳴磁場を作り電子をサイクロトロン運動させマイクロ波を共鳴吸収させるものである。縦磁場を与えないものもある。それは非ECR型である。ECRは電磁石とその電源或いは永久磁石が必要であるが、マイクロ波を共鳴吸収でき励起密度が高いという利点がある。
これらの多種類のプラズマ励起機構の中で、本発明はECR型マイクロ波励起のイオン源、ラジカル源、プラズマ源に関する。その中でも同軸管とアンテナを使う極めて寸法の小さい高密度のイオン源等に関する。
【0004】
イオン源、ラジカル源、プラズマ源と言う言葉を定義しよう。チャンバの出口に有孔電極を設けこれに電圧を掛けておき、チャンバ内で原料ガスを励起しプラズマに変えてイオンビ−ムとして取り出すものをイオン源という。出口に有孔電極をもたず、内部と外部の圧力の差を利用してプラズマから中性のラジカルを取り出すようにしたものがラジカル源である。窒素をラジカルとして供給する場合などに使われる。チャンバ内に処理すべきウエハを設けチャンバ内でプラズマ処理するようにしたのがプラズマ源である。いずれも原料ガスを何らかの手段によて励起しプラズマとするものである。本発明はこれら3つの装置のいずれにも適用できる。
【0005】
【従来の技術】
同軸管等でマグネトロンからマイクロ波を導きチャンバ内でアンテナからマイクロ波放射しガスを励起しプラズマを発生させるECR装置は小型にできる。小型で円筒対称であるから薄膜生成装置、イオン注入装置、MBE装置などの一部に組み込むのが容易である。それで本発明者は以前より小型アンテナ型マイクロ波プラズマ装置の検討を進めている。夥しい提案創作をしている。以下に紹介する。
▲1▼特開平8−31358「ECRイオンラジカル源」発明者藤田秀樹、禅野由明は一巻したアンテナをセラミックで内張りしたチャンバ内に設ける。アンテナ表面もセラミックで被覆する。アンテナをコイル状にするのは有効な放射面積を増やすためである。チャンバ壁面、アンテナ金属が露呈していると、スパッタリングが起こりやすい。加速された金属粒子が壁面、アンテナに高速で衝突し金属面を削り取る現象がスパッタリングである。スパッタリングが起こるとスパッタ粒子によってチャンバ壁、アンテナが汚染される。それにアンテナが痩せてくる。頻繁にアンテナ交換しなければならない。この発明は、スパッタリングを防ぐためにセラミックをコ−テイングしている。セラミックは絶縁体であり高熱に耐え、スパッタリングに強い。電界によって加速された粒子が衝突しても容易に剥落しない。セラミックとして挙げられているのは、アルミナ、BN,AlN、石英などである。
【0006】
▲2▼特開平9−259780「フィードスルー挿入型高周波導入プラズマ生成機構」発明者藤田秀樹は超高真空の分子線エピタキシャル成長装置のラジカル源を与える。MBE装置は超高真空にしなければならないので、アンテナ保持部分に真空コネクタを設けて漏れのないように工夫している。アンテナは直線になっている。MBEの窒素ラジカルなどを与えることができる。壁面金属は露呈し、アンテナ金属も露呈している。マイクロ波は利用するがECRでない。
▲3▼特開平9−245997「カバーで覆われた内壁とアンテナを持つプラズマ室」発明者藤田秀樹、安立明は、マイクロ波でプラズマを生成する装置において、アンテナを直線にし鞘型のカバーをかぶせ、壁面にも絶縁体カバーを設けたものである。金属地肌がスパッタリングされるのを防ぐために絶縁体カバーで覆うのである。これも超高真空が必要なMBE装置で窒素ラジカルを生成導入するためのものである。プラズマによって壁面、アンテナがスパッタリングされると、分子線エピタキシャル成長装置の超高真空を破るし、ウエハ−を汚染する惧れがある。スパッタリングによって誘電体窓が汚染されマイクロ波が入り難くなる。アンテナが痩せて消耗が激しく短時間で交換しなければならない。そのような難点をふせぐために絶縁体カバーで覆うのである。単にセラミック被覆するのでは薄すぎる。スパッタリングによってセラミック被覆がやがて破られる。そこで別部材のカバーをつくりカバーを差し入れるのである。自立できる別部材のカバーで覆うから、長時間のスパッタリングにも良く耐える。絶縁体としては、PBN、BN,AlN、アルミナ、MgO、ジルコニア、SiO、TiO等が挙げられている。厚みは2mmにも達する。カバーであるから取り外しでき交換は容易である。
【0007】
▲4▼特開平9−245658「永久磁石によるECR共鳴を利用するプラズマ生成機構」発明者藤田秀樹、安立明は永久磁石によって875ガウスの共鳴磁場を作る。アンテナを直線状にしてECR条件がアンテナ上2箇所〜3箇所程度で満足されるように工夫している。コイル状だと875ガウスになる部分にアンテナがつねに存在するとは限らず条件の調整が難しい。軸対称の直線状アンテナの場合は、2箇所でECR条件(マイクロ波周波数=サイクロトロン周波数(つまり875ガウス)を満たすようにできる。アンテナを長くすると3箇所でもECR条件を満足できる。MBEの窒素ラジカル源である。小型の永久磁石磁場をつかうからチャンバ直径を小さくしている。チャンバ壁、アンテナ表面は金属が露呈している。
【0008】
▲5▼特開平9−270233「同軸型ECRプラズマ発生装置」藤田秀樹、安立明は直線アンテナによってマイクロ波をチャンバ内に導きガスをプラズマにする装置である。これまで説明したマイクロ波プラズマ発生装置と同じ技術の延長上にある。これもMBEのラジカル源として開発したものである。ガス導入管とは別に導光管を設けプラズマ発光の状態を分光観察できるようにしたものである。同軸管、ガス導入管、導光管、冷却冷媒管、チャンバ、永久磁石などの全てがセットになっており一つの円盤状のフランジに固定される。フランジによってMBE装置のひとつのポートに着脱される。そのフランジであるが、70mm外径のフランジしか使えない。フランジの外径は70mmであるが、分子線エピタキシャル成長装置のセルに嵌込んだりするからプラズマ装置部分は30mm径に纏めなければならない。そのため、アンテナを偏心させ中心部30mmに全ての管を纏めている。凝縮されたラジカル源である。これもチャンバ内壁金属は露呈し、アンテナ金属も露出している。スパッタリング対策は別段講じられていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
小型のプラズマ発生装置を作製したい。フィラメントによるものはフィラメントの曲げ部分が必要でなかなか小さくできない。平行平板電極のものは電極面積がある程度必要であるから小型に向かない。やはりマイクロ波によるものが小型化に向いている。アンテナによってマイクロ波を導入するので狭い空間にマイクロ波が入りやすい。また永久磁石によってECR共鳴させると高密度のプラズマを発生させやすい。小型のプラズマ発生装置としてマイクロ波励起ECR装置が最適であると考える。
しかし大型のプラズマ発生装置では問題にならないことが、超小型のプラズマ発生装置では新たな問題となる。そのようなことが幾つもある。MBE装置のセルの場合、本体寸法が30mm程度に限定される。プラズマ室には10mm程度しかあてられない。このような超小型のイオン源ではアルゴンや窒素のように分子量がそこそこあるものであればプラズマに励起できる。しかし水素やヘリウムのような軽元素の場合、ガス圧やマイクロ波強度を増やしてもなかなかプラズマにできない。だからイオン源としてイオンビ−ムを取りだそうとすると極極微小の電流しか取り出せない。とても実用的な水準には達しない。
【0010】
マイクロ波として、2.45GHzのものを使う。他の周波数を使う事も原理的には可能であるが、装置として成熟しているのは2.45GHzである。それでこれを例にして説明する。真空中のマイクロ波波長は12cm程度である。すると直径10mm程度の導波管を伝搬できない。アンテナを使い強制的にマイクロ波をプラズマ室に導入する。入る事は入るが、狭すぎて定在波はできない。マイクロ波パワーの多くは金属の壁面に渦電流を発生させ熱となってしまう。一部が電子励起に使われる。それを助長するためECRを使っている。875ガウスの磁場で共鳴させるため、アンテナは長くする。少なくとも2点で875ガウスになり共鳴するように工夫する。
ECR共鳴しても、ヘリウム、水素を励起するにはマイクロ波エネルギーが不足する。マグネトロンのマイクロ波パワーを増やせばいいだろうと思われる。ところがパワーを増やすとアンテナが強熱され溶けてしまう。いかにタングステンWだとしても溶けて蒸発しなくなってしまう。だからマイクロ波パワーを上げるのは限界がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
超小型マイクロ波ECRプラズマ発生装置においてアンテナを、仕事関数の低い絶縁物アルミナ、MgO、チタニア、ステアタイト、フォルステライト、マコール、コージライト、ムライト、Y,LaB、SrO、BaO、CaO、SrB、CaB、Scの何れかよりなるアンテナカバーによって覆う。さらに真空容器内壁もアルミナ、MgO、チタニア、ステアタイト、フォルステライト、マコール、コージライト、ムライト、Y、LaB、SrO、BaO、CaO、SrB、CaB、Scの何れかよりなる内壁カバーで覆う。マイクロ波パワーを高くし、アンテナカバーの温度を上げてアンテナカバーから熱電子放射がおこるようにする。また内壁からの二次電子放出や光電子放出も起こるようにする。マイクロ波だけでは電子密度がたりないがカバー加熱による熱電子によって電子密度が高くなり、また壁からは二次電子放出や光電効果によって電子が供給されるのでマイクロ波共鳴吸収が激しく起こる。狭いプラズマ室であるのに水素やヘリウムのような軽元素の高密度プラズマを作ることができる。水素、ヘリウムのイオンビ−ム電流を大幅に増強できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施例にかかるイオンプラズマ源の断面図である。円筒形の真空容器1は内部でガスをプラズマにする空間を与える。真空容器1の中心軸線上にアンテナ2が設けられる。アンテナ2は高熱に耐える金属である。例えばタングステンW、タンタルTa、モリブデンMoなどである。真空容器1の内壁には絶縁体よりなる内壁カバー3が挿入される。金属壁がスパッタリングされないように保護するカバーである。それ以上の機能もあるが後に説明する。真空容器1の外周には軸方向の磁場を形成するための永久磁石4が設けられる。永久磁石4はアンテナ2の存在する部分に設ける。真空容器1の永久磁石4より前方には冷却管5が巻き付けてある。冷却媒体をこれに通し真空容器1を冷却するためのものである。真空容器1の前端の前フランジは円盤状の出口円板7を有する。出口円板7には出口8が穿孔されここからイオンやラジカルが出るようになっている。真空容器1の前フランジ6はネジ9によってプラズマ処理装置10の開口部フランジに固定される。
【0013】
内壁カバー3は前方で折れ曲がり部があり出口円板7の内壁をも被覆保護している。出口円板カバー11である。アンテナ2の背後には、マイクロ波導入端子12がある。端面に孔13があり、アンテナ2のピン14が差し込まれる。直線状のマイクロ波導入端子12は背後で同軸ケーブル(図示しない)につながり、同軸ケーブルはマグネトロン(図示しない)に続く。同軸ケーブル収容管15のフランジ16は、ネジ17によって真空容器1の後ろフランジ18に固着される。シール部材19がマイクロ波導入端子15を、同軸ケーブル収容管15の中央に保持する。同軸ケーブル側は大気圧にあり、アンテナ側は真空側にある。シール部材19が真空を保持している。シール部材19とフランジ16の内壁部を端壁カバー20によって保護している。真空容器1の内部は全て絶縁体のカバー3、11、20によって被覆されている。
真空容器1にはガス導入管21があってここから原料ガスが内部に導入される。アンテナ2はタングステン、タンタル、モリブデンなどの高融点金属で作るが、その外側にスッポリとアンテナカバー22がかぶせられる。アンテナカバーをかぶせるという事自体は既に述べたように本発明者の先願にあるし新しい事ではない。しかしながらカバーの材質も違うしなによりその作用が異なる。これは熱電子放出の効率を高めるためのものである。
【0014】
アンテナカバーと内壁カバーは、アルミナ、MgO、チタニア、ステアタイト、フォルステライト、マコール、コージライト、ムライト、Y、LaB、SrO、BaO、CaO、SrB、CaB、Scの何れかによって作る。
以上の構成においてその作用を説明する。原料ガス入口21から原料ガスを導入する。マイクロ波をアンテナから真空容器1に導入する。永久磁石4によってアンテナ近傍に875ガウスの共鳴磁場が発生している。マイクロ波によって電子が振動する。永久磁石4が共鳴磁場を生ずるので電子振動と同調すればマイクロ波パワーを強く吸収できる。電子はガス分子に衝突しこれを電離させる或いは中性ラジカルにする。壁に当たった電子は二次電子や光電子を発生させ、これらによっても新たに電子ができるので、これらがマイクロ波で振動し、分子を電離させる。こうして電子が増殖してゆく。
【0015】
マイクロ波パワーを増やすと電子運動が盛んになって、アンテナカバーと内壁カバーに衝突する。これらはセラミックであるからスパッタリングされにくい。損傷をあまり受けないが、衝突によって熱が発生し加熱される。温度が1000℃をこえ、さらに1500℃を越えるとアンテナカバーから熱電子が放射される。
熱電子放射によってあらたな電子の供給源ができたことになる。先ほどの分子の電離によるのではなく、カバーからの電子の供給がなされる。電子の密度が高くなるからマイクロ波吸収媒体が増え、プラズマ密度も高くなる。これまで熱電子放射というのは熱陰極(フィラメント)だけからでるものと思われていたが、本発明は、カバーから熱電子を出すようにする。
そのためには、従来技術として説明したものよりもマイクロ波パワーを上げる必要がある。金属のアンテナが露呈しているとスパッタリングによってアンテナが消耗するが本発明ではカバーで覆っているからそれはない。だから従来よりもマイクロ波パワーを上げることができる。
【0016】
マイクロ波イオン源の限界以上にマイクロ波パワーをアンテナに与えたことによって新天地が開けたということができる。アンテナカバーによって金属のアンテナを覆っているから、外部からの高速粒子(電子、イオン)がアンテナに当たらない。全てカバーのセラミックに当たる。セラミックは抉られて損傷を受ける。しかしセラミックは金属に比べて格段にスパッタリングに強い。伝導電子の凝縮による金属結合よりもセラミックの共有結合がずっと強いからである。だからアンテナ自体はスパッタリングによる損傷から完全に免れる。アンテナがスパッタリングによって痩せるということがない。
【0017】
だからマイクロ波パワーをさらに増強できる。マイクロ波パワーを上げると電子運動が盛んになりますます電子、イオンのアンテナカバー、内壁カバーへの衝突が盛んになる。衝突によって運動エネルギーが、化学エネルギーと熱になる。化学エネルギーは物質の原子分子を解離させる。しかし金属面は全てカバーで保護されている。カバーはスパッタリングによって一部が損傷を受けるが金属に比べればずっと軽微である。すると衝突エネルギーのほとんどが熱になる。熱になるからカバー自体が加熱される。もちろん熱伝導があるからアンテナも加熱される。がカバーより、アンテナの方が低温に保たれる。つまりカバーは物理的にも熱的にもアンテナを保護する作用があるといえる。カバー温度が2000℃を越えるということも可能である。
【0018】
すると、カバー自体から熱電子が大量に発生する。カバーがフィラメントと同じような作用をするようになるのである。絶縁体が熱電子を発生するというようなことは従来思いもよらないことであったが、高熱にすれば絶縁体でも熱電子を発生できるはずである。本発明はそのような絶縁体による熱電子の発生という新規な機構を発見しこれを有効利用する。
そもそも熱電子放射は金属熱陰極からの電子放射として研究され、有名なリチャアードソンの式がある。これは金属、半導体の熱陰極からの電流をI=ATexp(−eφ/kT)によって与えるものである。金属の場合n=2、半導体の場合n=1.2である。A=120Acm−2−2であるが実際にはこの式に乗らない事が多い。一つには仕事関数φが現象量だからである。温度を上げるとTが大きくなるし、expの中も大きくなる。それで熱電子が発生するのである。タングステンの場合、2400℃程度で十分な熱電子電流が流れるようになる。だからタングステンフィラメントはすべてこれ以上の温度になるように加熱される。半導体の場合はφが低く十分な熱電子電流を得る事のできる温度はより低く750℃程度でよい。
【0019】
従来熱陰極に使われるものは金属か半導体であった。そうでないと熱電子が放射されないと思われていたからである。それは金属の場合フェルミ面に高密度の電子があり、フェルミ面と大気電圧の相違が仕事関数φであるからフェルミ面の電子が熱励起されφだけ跳躍すると外部に出ると考えられるからである。半導体の場合はフェルミ面がバンドギャップ中にあってフェルミ面には電子が存在しない。しかし高温であるから伝導帯に大量の電子が励起されこれが外部に放射される。仕事関数はその場合伝導帯と大気電圧の差である。
それが絶縁体の場合はどうか?絶縁体はフェルミ面がバンドギャップにある。それは同じであるが、バンドギャップが広くて伝導帯に電子がない。それで絶縁体は熱電子放射しないものと漠然と考えられていたのであろう。しかし絶縁体の伝導帯に電子が存在しないのは常温での話しである。高熱になると、絶縁体の広いバンドギャップを越えて電子が伝導帯にたたきあげられる。伝導帯に十分な密度の電子が存在する。そのような状態であれば熱電子放射するのは当然である。だから絶縁体からも熱電子放射がおこり本発明はその現象を発見し利用したものということができる。
【0020】
であるから、本発明はマイクロ波による振動励起とフィラメントによる熱電子励起の両方を兼ね備えた装置となる。プラズマ発生効率は高い。熱フィラメントと比較して不利な点は、フィラメントのように負電圧にバイアスされてないということであろう。フィラメントは負電圧なので電子によってスパッタリングされない。アンテナ電位は直流的には壁電位と同じであるから電子がアンテナに衝突する。ところが実はカバーがありカバーがスパッタリングされるだけである。これはセラミックであるから損傷は少ない。衝突によって加熱され温度が上がるから熱電子放射がより盛んになって好都合なぐらいである。
【0021】
【実施例】
超小型のECRイオン源として内径8mmφの真空容器を作成しBNによって内張りした。アンテナはタングステンWである。初めは金属面の露呈したアンテナによって実験した。原料ガスを、アルゴン、窒素、ヘリウムガス、水素にしてこれらをプラズマにする実験である。アルゴンや窒素のように質量数の大きいものはこれでも満足できる密度のプラズマにすることができた。ところが水素ガスやヘリウムガスのように軽い元素については殆どプラズマにすることができなかった。これは真空容器が極めて狭いからである。アンテナを使っても十分にマイクロ波が真空容器の内部に入らないし十分な密度の定在波を形成できない。
【0022】
マグネトロンのマイクロ波パワーを上げれば良いように思えるがそうでない。マイクロ波パワーを上げるとアンテナの電流が増えるしイオンや電子のアンテナへの衝突確率も増える。衝突による損傷(スパッタリング)も増える。ためにタングステンであってもスパッタリングと高熱のため短時間で痩せ細りなくなってしまう。アンテナがなくなってしまってはもはやイオン源としてつかえない。だからタングステンが融けない程度にマイクロ波パワーは制限される。
【0023】
そこで本発明の思想に従って、アンテナをアルミナのカバーによって覆い、水素ガス、ヘリウムガスの励起を試みた。マイクロ波パワーをさらに上げる事が可能になり、軽元素であるヘリウム、水素を高密度のプラズマにすることができた。イオンビ−ム電流でいえば、先ほどの露出Wアンテナに比較し、十倍〜数十倍の電流量になった。狭い真空容器の内部に十分な密度のマイクロ波を導入できたからである。分解して調べるとカバーのアルミナ(融点2050℃)がすこし溶けており、アルミナとアンテナの温度が2000℃近くになったものと思われる。内部のタングステン(融点3400℃)は異常なくスパッタリングによる損傷は見られなかった。
【0024】
【発明の効果】
超小型のECRプラズマ源を作ろうとするとき放電領域が狭くマイクロ波パワーが弱いので軽元素を十分に励起できない。ところが本発明はアンテナに熱電子放射率の高いセラミックのカバーをつけマイクロ波パワーを上げるのでアンテナとアンテナカバーの温度が上がりアンテナカバー自体から熱電子が放射される。つまりアンテナがフィラメントとしての役割を持つようになる。熱電子放射とそれによって壁からの二次電子放出や光電効果による電子増幅などのために自由電子の密度が飛躍的に増える。自由電子はサイクロトロン運動してマイクロ波を共鳴吸収できる。ためにマイクロ波吸収が増える。高速で走行する電子密度が高く水素やヘリウム原子に衝突する確率も増える。衝突によって電子とイオン、あるいはラジカルになる。だからプラズマ密度が高揚する。仕事関数の低い材質をアンテナカバーや内壁に用いる事で、アンテナカバーからは熱電子放出が内壁からは二次電子、光電子放出が盛んになりこれを有効に利用する。
【0025】
フィラメント型のイオン源は負電圧にバイアスした細いフィラメントを加熱し熱電子を放射してガスを励起するものであった。マイクロ波イオン源はマイクロ波によって電子を運動させるもので熱電子を作るものでない。両者は判然と区別される。
ところが本発明はアンテナカバーを高熱に加熱し、フィラメントと同じようにここから熱電子を放射するようにしている。つまり本発明のプラズマ発生機構は、フィラメント+マイクロ波の二重の作用を有効に利用する。本発明の装置は、フィラメント型イオン源とマイクロ波イオン源を合体させたのと同じ効果を奏するものである。フィラメントはまったく使わないのに、フィラメント型イオン源と同じ反応機構が生起する。不思議な事といえる。二重の作用によっているからプラズマ生成効率が高くなる。だから8mm〜10mmの超小型のプラズマ室であっても水素、ヘリウムを高密度励起できる。水素、ヘリウムのイオンビ−ム電流を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかるECRイオンプラズマ源の断面図。
【符号の説明】
1 真空容器
2 アンテナ
3 内壁カバー
4 永久磁石
5 冷却管
6 前フランジ
7 出口円板
8 出口
9 ネジ
10プラズマ処理装置
11出口円板カバー
12マイクロ波導入端子
13穴
14ピン
15同軸ケーブル収容管
16フランジ17ネジ
18後フランジ
19シール部材
20端壁カバー
21原料ガス入口
22アンテナカバー
23熱電子放出領域
24熱電子

Claims (1)

  1. 軸方向に長い真空に引く事のできる金属製真空容器と、真空容器の内部に設けたマイクロ波を導入するための高融点金属よりなるアンテナと、アルミナ、MgO、チタニア、ステアイト、フォルステライト、マコール、コージライト、ムライト、Y 、SrO、BaO、CaO、SrB、CaB、Scのいずれかよりなりアンテナの周りを覆う絶縁体のアンテナカバーと、アルミナ、MgO、チタニア、ステアイト、フォルステライト、マコール、コージライト、ムライト、Y、LaB、SrO、BaO、CaO、SrB、CaB、Scのいずれかよりなり真空容器の内壁を被覆する内壁カバーと、真空容器の周囲に設けられ電子がマイクロ波に共鳴する磁場を生ずる永久磁石と、真空容器の周囲に設けられ冷却媒体を流すための冷却管と、真空容器の内部に原料ガスを導く原料ガス入口とを含み、アンテナよりマイクロ波を真空容器に導入し、アンテナ近傍で電子のサイクロトロン運動がマイクロ波共鳴吸収を起こすようにし、アンテナカバー温度を上げて絶縁体のアンテナカバーを熱電子放射源として利用し、アンテナカバーの熱電子放射とマイクロ波振動励起によって原料ガスからプラズマを生成し維持する事を特徴とする自己電子放射型ECRイオンプラズマ源。
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