JP2017147123A - マイクロ波イオン源およびイオン生成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマ室から引き出されるイオンの引出態様を制御する技術を提供する。
【解決手段】マイクロ波イオン源10は、プラズマ室12内にマイクロ波を軸方向に導入するためのマイクロ波導入部26と、マイクロ波導入部26と軸方向に対向する位置に設けられるイオン引出部22と、マイクロ波導入部26とイオン引出部22の間を接続する側壁部20と、を有するプラズマ室12と、プラズマ室12外に設けられ、プラズマ室12内に軸方向磁場を発生させる軸方向磁場発生器16と、プラズマ室12外に設けられ、プラズマ室12内にカスプ磁場を発生させるカスプ磁場発生器50と、を備える。カスプ磁場発生器50は、プラズマ室12内のカスプ磁場強度の切り替えが可能となるように構成される。
【選択図】図1
【解決手段】マイクロ波イオン源10は、プラズマ室12内にマイクロ波を軸方向に導入するためのマイクロ波導入部26と、マイクロ波導入部26と軸方向に対向する位置に設けられるイオン引出部22と、マイクロ波導入部26とイオン引出部22の間を接続する側壁部20と、を有するプラズマ室12と、プラズマ室12外に設けられ、プラズマ室12内に軸方向磁場を発生させる軸方向磁場発生器16と、プラズマ室12外に設けられ、プラズマ室12内にカスプ磁場を発生させるカスプ磁場発生器50と、を備える。カスプ磁場発生器50は、プラズマ室12内のカスプ磁場強度の切り替えが可能となるように構成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、マイクロ波イオン源およびイオン生成方法に関する。
マイクロ波をプラズマ生成に用いるイオン源が知られている。真空のプラズマ室にマイクロ波が軸方向に導入され、軸方向に磁場が印加される。プラズマ室に供給された原料ガスがマイクロ波および磁場によって励起されプラズマが生成される。生成されたプラズマからイオンが引き出される。
プラズマ室内では、価数の異なるイオンが生成され、原料ガスの種類によっては分子構造の異なるイオンが生成されうる。例えば、原料ガスとして三フッ化ホウ素(BF3)を用いる場合、B+、B2+、BF2 +などのイオンが生成されうる。プラズマ室からは、使用目的に合った価数、種類のイオンが引き出されることが望ましい。
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、プラズマ室から引き出されるイオンの引出態様を制御する技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のマイクロ波イオン源は、プラズマ室内にマイクロ波を軸方向に導入するためのマイクロ波導入部と、マイクロ波導入部と軸方向に対向する位置に設けられるイオン引出部と、マイクロ波導入部とイオン引出部の間を接続する側壁部と、を有するプラズマ室と、プラズマ室外に設けられ、プラズマ室内に軸方向磁場を発生させる軸方向磁場発生器と、プラズマ室外に設けられ、プラズマ室内にカスプ磁場を発生させるカスプ磁場発生器と、を備える。カスプ磁場発生器は、プラズマ室内のカスプ磁場強度の切り替えが可能となるように構成される。
本発明の別の態様は、イオン生成方法である。この方法は、イオン引出部を有するプラズマ室と、プラズマ室外に設けられ、プラズマ室内に磁場を発生させる磁石装置と、プラズマ室と磁石装置の間に配置可能に構成される磁性体と、を備えるイオン源を用いたイオン生成方法であって、磁性体の配置を変えることによりイオン引出部から引き出されるイオンの引出態様を制御する。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、プラズマ室から引き出されるイオンの引出態様を制御できる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
図1は、実施の形態に係るマイクロ波イオン源10の構成を模式的に示し、図2は、図1のA−A線断面を示す。マイクロ波イオン源10は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)条件を満たす磁場またはそれよりも高い磁場を印加したプラズマ室12にマイクロ波電力Cを入力し、高密度プラズマを生成してイオンを引き出すイオン源である。マイクロ波イオン源10は、磁場とマイクロ波との相互作用によって原料ガスのプラズマを生成し、そのプラズマからプラズマ室12の外部へイオンを引き出すように構成されている。
マイクロ波イオン源10は、例えばイオン注入装置又は粒子線治療装置のためのイオン源に使用される。マイクロ波イオン源10は、例えば一価イオン源として使用される。またマイクロ波イオン源10は、プロトン加速器のためのイオン源、またはX線源としても使用されうる。
よく知られるように、ECR条件を満たす磁場の強さは使用されるマイクロ波の周波数に対し一意に定まり、マイクロ波周波数が2.45GHzの場合には87.5mT(875ガウス)の磁場が必要である。以下では説明の便宜上、ECR条件を満たす磁場を、共鳴磁場と呼ぶことがある。
マイクロ波イオン源10は、プラズマ室12と、軸方向磁場発生器16と、カスプ磁場発生器50とを備える。プラズマ室12は、その内部空間にプラズマを生成し維持するよう構成されている真空チャンバである。プラズマ室12の内部空間を以下では、プラズマ生成空間14と呼ぶことがある。
プラズマ室12は、両端をもつ筒状の形状を有する。プラズマ室12の一端から他端に向かう方向を以下では便宜上、軸方向と呼ぶことがある。また、軸方向に直交する方向を径方向と呼び、軸方向を包囲する方向を周方向と呼ぶことがある。しかしこれらは、プラズマ室12が回転対称性を有する形状であることを必ずしも意味するものではない。また、プラズマ室12の軸方向長さは、プラズマ室12の端部の径方向長さより長くてもよいし短くてもよい。
プラズマ室12は、イオン引出部22と、マイクロ波導入部26と、を備える。イオン引出部22とマイクロ波導入部26とは、プラズマ生成空間14を挟んで対向している。プラズマ室12は、イオン引出部22とマイクロ波導入部26とを接続し、プラズマ生成空間14を囲む側壁部20を備える。側壁部20は、イオン引出部22およびマイクロ波導入部26それぞれの外周部分に固定されている。側壁部20は、例えばステンレス鋼またはアルミニウムのような非磁性金属材料で形成される。
側壁部20は、側壁部20を冷却するための冷却部を備えてもよい。この冷却部は側壁部20に内蔵されていてもよいし、側壁部20の外側に付設されていてもよい。また、プラズマ室12の側壁部20をプラズマから保護するために、側壁部20の内面を被覆する(例えば窒化ホウ素の)ライナが設けられていてもよい。
マイクロ波導入部26、イオン引出部22、及び側壁部20によってプラズマ室12の中にプラズマ生成空間14が画定されている。なおプラズマ室12は、マイクロ波導入部26、イオン引出部22、及び側壁部20が一体にプラズマ生成空間14を囲むよう構成されているから、イオン引出部22に接続される側壁部20の末端はイオン引出部22の一部であるとみなすこともできる。同様に、マイクロ波導入部26に接続される側壁部20の末端はマイクロ波導入部26の一部であるとみなすこともできる。
プラズマ室12は例えば円筒形状を有する。この場合、マイクロ波導入部26及びイオン引出部22は概ね円板形状であり、側壁部20は概ね円筒である。なおプラズマ室12は、プラズマを適切に収容し得る限り、いかなる形状であってもよい。
マイクロ波導入部26は、真空窓32を備える。真空窓32はプラズマ室12の内部を真空に封じる。真空窓32の一方の側がプラズマ生成空間14に面しており、真空窓32の他方の側がマイクロ波供給系または導波管30に向けられている。マイクロ波の伝搬方向Cは真空窓32に垂直である。本実施の形態では真空窓32はマイクロ波導入部26の全体を占めているが、真空窓32はマイクロ波導入部26の一部(例えば中心部)に形成されていてもよい。
プラズマ室12へのマイクロ波の入射電力は例えば、約100Wより大きい。あるいは、プラズマ室12へのマイクロ波の入射電力は、約500W以上または約1kW以上でもよい。このような高電力のマイクロ波の供給には、同軸線のような他の供給手段に比べて、導波管30及び真空窓32が適する。
真空窓32は、例えばアルミナ(Al2O3)または窒化ホウ素(BN)などの誘電体で形成されている。なお、真空窓32はアルミナ層と窒化ホウ素層からなる二層構造を有していてもよい。例えば、アルミナからなる真空窓32のうち、プラズマ生成空間14に接する面に窒化ホウ素層を設ける。これにより、真空窓32を被覆する窒化ホウ素層は、プラズマ室12の外から引出開口24を通じてプラズマ室12に逆流する電子から真空窓32を保護する。
一方、イオン引出部22には少なくとも一つの引出開口24が形成されている。引出開口24は例えば、紙面に垂直な方向に細長いスリットである。引出開口24はイオン引出部22の中心部分に形成されている。引出開口24は、プラズマ生成空間14を挟んで真空窓32に対向する位置に形成されている。真空窓32、プラズマ生成空間14、及び引出開口24は、プラズマ室12の中心軸に沿って配列されている。
プラズマ室12は、正の高電圧を印加するための電源(不図示)に接続される。プラズマ室12に高電圧が印加されるとき、その一部であるイオン引出部22にも同じ高電圧が印加されるので、イオン引出部22はプラズマ電極と呼ばれることもある。
引出開口24の軸方向外側には、イオンをプラズマ室12の外に引き出すための少なくとも一つの引出電極40を有する引出電極系が設けられる。引出電極40は、イオン引出部22との間に軸方向に引出ギャップ42を有して対向する。引出電極40は、例えば環状に形成されており、プラズマ室12から引き出されたイオンを通すための開口部44をその中心部分に有する。また引出電極系は、引出電極40に電位を印加するための引出電源(図示せず)を備える。
軸方向磁場発生器16は、プラズマ室12の側壁部20を囲むように配設されている。軸方向磁場発生器16は、プラズマ室12の中心軸上において軸方向に向けられた磁場を発生させる。その磁力線方向を図1に矢印B1で示す。軸方向磁場発生器16による磁力線方向B1は、マイクロ波の伝搬方向Cと同一の方向である。この磁場B1は、プラズマ室12の中心軸上の少なくとも一部分において共鳴磁場またはそれよりも高強度である。なお、軸方向磁場発生器16は、プラズマ室12の軸線上の少なくとも一部分に共鳴磁場よりも低い磁場を発生させることも可能である。
軸方向磁場発生器16は、環状に形成される複数のコイル16a,16bを有する。複数のコイル16a、16bは、プラズマ室12の周方向に導線が巻かれており、軸方向に異なる位置に配置される。例えば、第1コイル16aがイオン引出部22の近くに配置され、第2コイル16bがマイクロ波導入部26の近くに配置される。複数のコイル16a,16bは協働してプラズマ室12の内部に軸方向の磁場を発生させる。軸方向磁場発生器16は、コイルに電流を流すためのコイル電源(図示せず)を有する。なお、軸方向磁場発生器16は、一つのコイルで構成されてもよいし、コイルの代わりに永久磁石を備えてもよい。
カスプ磁場発生器50は、プラズマ室12の側壁部20を囲むように配設されており、軸方向磁場発生器16よりも径方向内側の位置に配設される。カスプ磁場発生器50は、後述する図4に示すように、軸方向と直交する平面内において円弧状に描かれるカスプ磁場B2(多重極磁場)を発生させる。カスプ磁場B2は、プラズマ室12の内部で生成されるプラズマをプラズマ生成空間14の中心軸付近に閉じ込めることによりプラズマの密度を高め、プラズマに含まれるイオンの衝突頻度が高くなるようにする。
カスプ磁場発生器50は、磁石装置52と、磁場増強体54と、磁場遮蔽体56と、切替装置58とを含む。カスプ磁場発生器50は、プラズマ室12の内部に生じさせるカスプ磁場強度の切り替えが可能となるように構成される。
磁石装置52は、カスプ磁場を発生させるための複数の磁極を有し、各磁極が側壁部20の外周を囲むように周方向に並んで配置される。磁石装置52は、各磁極に対応する複数の磁石52a,52b,52c,52d,52e,52fにより構成される。複数の磁石52a〜52fのそれぞれは永久磁石であり、隣接する磁石の磁極の向きが交互となるように配置される。複数の磁石52a〜52fは、例えば、プラズマ室12の軸方向に延在する棒状磁石である。図示する例では、6本の棒状磁石により磁石装置52を構成しているが、変形例においては、異なる本数の棒磁石により磁石装置52を構成してもよい。つまり、カスプ磁場の極数は6極に限られず、4極であってもよいし、8極、10極または12極以上であってもよい。
磁石装置52は、イオン引出部22の近傍に配置され、例えば、図示されるようにイオン引出部22の近傍の軸方向に限定された長さL1の範囲に配置される。磁石装置52は、プラズマ生成空間14のうちイオン引出部22の近傍位置において強度の高いカスプ磁場が発生するようにする。磁石装置52の軸方向の長さL1は、例えば、プラズマ室12の軸方向の長さL0の1/3以上、1/2以下である。なお変形例においては、磁石装置52の軸方向の長さがプラズマ室12の長さの1/2以上であってもよいし、プラズマ室12の長さの全体にわたって設けられてもよい。
磁場増強体54は、磁石装置52が発生させるカスプ磁場を増強するための磁性体構造である。磁場増強体54は、側壁部20の外周を囲むように配置され、側壁部20と磁石装置52の間に配置可能となるように構成される。磁場増強体54は、プラズマ室12の外周に沿って軸方向に移動可能となるように配置され、側壁部20と磁石装置52の間に挿入された状態と、側壁部20と磁石装置52の間から引き出された状態との間で配置が切り替えできるように構成される。磁場増強体54は、例えば軸方向に配設されるボールねじ(不図示)に取り付けられ、ボールねじの回転により軸方向に移動可能となる。
磁場増強体54は、複数の鉄芯54a,54b,54c,54d,54e,54fを有する(図2参照)。複数の鉄芯54a〜54fは、磁石装置52の各磁極、つまり、各磁石52a〜52fと対応するように周方向に間隔をあけて配置される。複数の鉄芯54a〜54fは、各磁石52a〜52fと同様に軸方向に延在する棒状の磁性体であり、例えばフェライトなどの鉄を含む強磁性体で構成される。複数の鉄芯54a〜54fは、各磁石52a〜52fの径方向内側の位置に配置されることにより各磁石52a〜52fがプラズマ室12内に発生させる磁場強度を高める。
磁場遮蔽体56は、磁石装置52が発生させるカスプ磁場を遮蔽するための磁性体構造である。磁場遮蔽体56は、側壁部20の外周を囲むように配置され、側壁部20と磁石装置52の間に配置可能となるように構成される。磁場遮蔽体56は、磁場増強体54と同様にプラズマ室12の軸方向に移動可能となるように配置され、側壁部20と磁石装置52の間に配置された状態と、側壁部20と磁石装置52の間から引き出された状態との間で配置が切り替えできるように構成される。磁場遮蔽体56は、例えば軸方向に配設されるボールねじ(不図示)に取り付けられ、ボールねじの回転により軸方向に移動可能となる。
磁場遮蔽体56は、筒状の磁性体で構成され、側壁部20の外周形状に対応した筒形状を有する。側壁部20が円筒形状である場合、磁場遮蔽体56も同様に円筒形状を有する。磁場遮蔽体56は、例えば、フェライトなどの鉄を含む強磁性体で構成される。磁場遮蔽体56は、側壁部20と磁石装置52の間に配置された場合に磁石装置52からの磁力線の多くが通る磁路となり、磁場遮蔽体56の内側、つまり、プラズマ室12の内部にカスプ磁場が発生しないようにする。
磁場増強体54と磁場遮蔽体56は、図2に示されるような二重構造を形成している。図示する例では、磁場遮蔽体56が径方向内側に配置され、磁場増強体54が径方向外側に配置されている。変形例においては、磁場増強体54と磁場遮蔽体56の配置が逆であってもよく、磁場増強体54が径方向内側に配置され、磁場遮蔽体56が径方向外側に配置されてもよい。
磁場増強体54および磁場遮蔽体56の表面には、非磁性材料の摺動層が設けられる。仮に、磁場増強体54および磁場遮蔽体56を構成する磁性体がそのまま露出していると、磁石装置52の磁力によって隣接する磁性体同士がくっついてしまい、軸方向の移動に支障が生じたり、強力な磁力によって磁石装置52、磁場増強体54および磁場遮蔽体56が損傷したりするおそれがあるためである。磁性体の表面に非磁性材料の層を設けることで、磁性体間に作用する磁力を緩和して軸方向の移動をスムーズにすることができる。摺動層に用いる非磁性材料として、例えば、ステンレス鋼やアルミニウムなどの非磁性金属材料、アルミナ、窒化ボロンなどのセラミック材料、フッ素樹脂などの樹脂材料を用いることができる。これら磁性体の摺動面に対して黒鉛(C)や二硫化モリブデン(MoS2)などの固体潤滑剤を組み合わせて用いてもよい。
切替装置58は、磁場増強体54および磁場遮蔽体56の配置を変えてプラズマ室12のカスプ磁場強度を切り替える。切替装置58は、磁場増強体54および磁場遮蔽体56を移動させるためのモータなどを有し、外部からの制御信号に基づいてモータを駆動させて磁場増強体54および磁場遮蔽体56を移動させる。切替装置58は、磁場増強体54および磁場遮蔽体56をそれぞれ独立に移動できるように構成される。切替装置58は、磁場増強体54および磁場遮蔽体56の配置を変更した後、磁場増強体54および磁場遮蔽体56を固定してその配置が維持できるように構成される。
なお、切替装置58の構成は特に限られず、磁場増強体54および磁場遮蔽体56の配置を変更することのできる任意の機構を用いてもよい。また、切替装置58が設けられる位置は特に限定されず、側壁部20の外周に設けられてもよいし、別の位置に設けられてもよい。図示する例において、切替装置58は側壁部20の外周を囲うようにマイクロ波導入部26の近傍に配置され、磁場増強体54および磁場遮蔽体56をイオン引出部22の近傍の位置からマイクロ波導入部26側へ軸方向に移動できるように構成される。
マイクロ波イオン源10は、プラズマの原料ガスをプラズマ室内に供給するためのガス供給系(不図示)を備える。ガス供給系は、生成すべきイオン種に応じて適切な原料ガスをプラズマ室内に供給する。原料ガスとして、例えば、三フッ化ホウ素(BF3)、ジボラン(B2H6)、アルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)などを用いる。ガス供給系は、原料ガスとしてヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)などの希ガスをプラズマ生成空間14に供給してもよい。
つづいて、カスプ磁場発生器50の動作について説明する。図1および図2は、磁場増強体54および磁場遮蔽体56が側壁部20と磁石装置52の間に配置された第1状態を示しており、磁場遮蔽体56によりカスプ磁場が遮蔽された状態を示す。第1状態では、プラズマ室12と磁石装置52の間に筒状の磁場遮蔽体56が配置されているため、磁石装置52が発生するカスプ磁場はプラズマ室12の内部に入り込めないか、入り込んだとしてもプラズマ室12の内部のカスプ磁場強度が弱められる。
図3は、プラズマ室12内にカスプ磁場を印加する場合の磁性体の配置を模式的に示す。図4は、図3のプラズマ室12内に印加されるカスプ磁場B2を模式的に示すB−B線断面図である。図3および図4は、磁場増強体54および磁場遮蔽体56が側壁部20と磁石装置52の間から軸方向に引き出された第2状態を示している。切替装置58は、磁場増強体54および磁場遮蔽体56を軸方向に移動させ、磁石装置52が配置される軸方向の長さL0の範囲の外側に移動させている。側壁部20と磁石装置52の間から磁性体を退避させることで、プラズマ室12内に磁石装置52によるカスプ磁場を印加することができる。
図5は、プラズマ室12内に印加するカスプ磁場を増強する場合の磁性体の配置を模式的に示す。図6は、図5のプラズマ室12内に印加されるカスプ磁場B2を模式的に示すC−C線断面図である。図5および図6は、磁場増強体54が側壁部20と磁石装置52の間に挿入される一方、磁場遮蔽体56が側壁部20と磁石装置52の間から引き出された第3状態を示している。第3状態では、磁場遮蔽体56が側壁部20と磁石装置52の間から退避されているため、プラズマ室12内にカスプ磁場B2を発生させることができる。また、磁場増強体54が側壁部20と磁石装置52の間に配置されているため、磁石装置52の磁力が増強され、図4に示す第2状態と比べて高強度のカスプ磁場B2をプラズマ室12内に印加することができる。
つづいて、本実施の形態に係るマイクロ波イオン源10が奏する効果について説明する。プラズマ室12に印加されるカスプ磁場は、プラズマ室12の内部で生成されるプラズマをプラズマ室12の中心軸付近に閉じ込め、カスプ磁場がない場合よりもプラズマの密度を高めてプラズマ中の粒子の衝突頻度を高める働きがある。プラズマの密度が高く粒子の衝突頻度が高い場合、原料ガスが十分に分解されやすく、価数の高いイオン(例えば、2価、3価など)が生成されやすい傾向となる。一方で、プラズマの密度が低く粒子の衝突頻度が低い場合、原料ガスの分解が進まずにガス分子のままイオン化されやすく、価数の低いイオン(例えば、1価)が生成されやすい傾向となる。
マイクロ波イオン源10のプラズマ室12からは、使用目的に合った価数、種類のイオンが引き出されることが望ましい。例えば、原料ガスとして三フッ化ホウ素(BF3)を用いる場合、B+、B2+、BF2 +などのイオンが生成されるが、使用目的によっては、1価のB+イオンを用いる場合もあれば、2価のB2+イオンが必要となる場合がある。また原料ガスとしてジボラン(B2H6)を用いる場合、三フッ化ホウ素を用いる場合と原料ガスの分解に必要なエネルギーが異なるため、同じ磁場分布を実現したとしても得られるイオンの種類および価数が異なりうる。同じ1価のB+イオンの引き出そうとする場合であっても、原料ガスが異なれば最適な磁場強度分布が異なりうる。その結果、特定の原料ガスを用いて特定の価数、種類のイオンを引き出すように最適されたイオン源の場合、カスプ磁場の切り替えができなければ、異なる原料ガスを用いたり、異なる価数、種類のイオンを引き出したりすることが難しい。仮に、カスプ磁場の切り替えをするためにイオン源の運転を停止してプラズマ室の外周に配設されるカスプ磁場発生器を着脱しなければならないとすると、大きな労力がかかる。
一方、本実施の形態に係るマイクロ波イオン源10によれば、カスプ磁場発生器50の磁性体の配置を第1状態、第2状態および第3状態の間で切り替えることにより、プラズマ室12内のカスプ磁場強度を切り替えることができる。これにより、プラズマ室12から引き出されるイオンの引出態様が適切となるようにプラズマ室12のカスプ磁場強度を調整することができる。特に、マイクロ波イオン源10の外部からの制御信号によりカスプ磁場発生器50の磁性体の配置を切り替えできるため、プラズマ室12を真空状態に維持したままプラズマ室12内のカスプ磁場強度を調整することができる。
また本実施の形態によれば、カスプ磁場発生器50がプラズマ室12のイオン引出部22の近傍に配置されるため、イオン引出部22の近傍におけるカスプ磁場強度を切り替えることができる。そのため、イオン引出部22の近傍位置で生成されるプラズマの状態を適切に制御し、イオン引出部22から引き出されるイオンの引出態様を好適に制御することができる。
また本実施の形態によれば、軸方向磁場発生器16が複数のコイル16a,16bを有するため、各コイルに流す電流量を個別に制御することで、軸方向の磁場強度分布を調整することができる。カスプ磁場発生器50により発生するカスプ磁場強度と軸方向磁場発生器16による軸方向磁場強度分布の双方を適切に制御することにより、イオン引出部22から引き出されるイオンの引出態様をより精密に制御することができる。
(変形例)
図7(a)および図7(b)は、変形例に係るカスプ磁場発生器150の構成を模式的に示す断面図である。本変形例では、磁場増強体154が筒状に形成されており、磁場増強体154を周方向(R方向)に回転させることによってカスプ磁場強度の切り替えを実現する点で上述の実施の形態と相違する。以下、カスプ磁場発生器150について、上述の実施の形態に係るカスプ磁場発生器50との相違点を中心に説明する。
図7(a)および図7(b)は、変形例に係るカスプ磁場発生器150の構成を模式的に示す断面図である。本変形例では、磁場増強体154が筒状に形成されており、磁場増強体154を周方向(R方向)に回転させることによってカスプ磁場強度の切り替えを実現する点で上述の実施の形態と相違する。以下、カスプ磁場発生器150について、上述の実施の形態に係るカスプ磁場発生器50との相違点を中心に説明する。
カスプ磁場発生器150は、磁石装置52と、磁場増強体154と、磁場遮蔽体56と、切替装置58とを含む。磁石装置52、磁場遮蔽体56および切替装置58は、上述の実施の形態と同様に構成される。磁場増強体154は、複数の鉄芯154a,154b,154c,154d,154e,154fと、非磁性体154gとを有する。複数の鉄芯154a〜154fは、上述の実施の形態と同様に周方向に間隔をあけて配置され、軸方向に延在している。非磁性体154gは、略円筒形状を有し、各鉄芯154a〜154fを取り付けるための凹部または切り欠き部を有する。非磁性体154gは、各鉄芯154a〜154fの隙間を埋めるように設けられ、各鉄芯154a〜154fの間隔が維持されるようにして複数の鉄芯154a〜154fを構造的に支持する。
磁場増強体154は、側壁部20と磁石装置52の間において周方向に回転可能となるように構成される。磁場増強体154は、図7(a)に示すように、磁石装置52の各磁極と複数の鉄芯154a〜154fの周方向の位置が一致する状態と、図7(b)に示すように、磁石装置52の各磁極と複数の鉄芯154a〜154fの周方向の位置がずれた状態との間で回転可能となるように構成される。
切替装置58は、磁場増強体154を回転させることにより複数の鉄芯154a〜154fを切り替える。切替装置58は、磁場増強体154を図7(a)のように配置することで、プラズマ室12内のカスプ磁場B2が増強されるようにする。また切替装置58は、磁場増強体154を図7(b)のように配置することで、プラズマ室12内のカスプ磁場B2が増強されないようにする。
本変形例においても、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
上述の実施の形態および変形例においては、カスプ磁場発生器に磁場増強体と磁場遮蔽体の双方を設ける構成について説明した。さらなる変形例においては、磁場増強体と磁場遮蔽体のいずれか一方のみを設けてもよい。
上述の実施の形態および変形例においては、カスプ磁場を発生させる磁石装置とプラズマ室の間の磁性体の配置を切り替えることによりプラズマ室内のカスプ磁場強度を切り替える構成について説明した。さらなる変形例においては、カスプ磁場発生器の磁石装置を複数のコイルにより構成し、各コイルに流す電流量を変化させたり、各コイルの電流を遮断したりすることによりプラズマ室内のカスプ磁場強度を切り替えてもよい。
上述の実施の形態および変形例においては、カスプ磁場発生器の磁石装置がイオン引出部の近傍に配置され、磁場増強体と磁場遮蔽体がプラズマ室に沿ってマイクロ波導入部側に移動するように構成される場合を説明した。さらなる変形例においては、カスプ磁場発生器の磁石装置がプラズマ室の軸方向の長さの全体にわたって設けられてもよい。この場合、磁場増強体および磁場遮蔽体はプラズマ室の外周部から導波管の外周部に向けて軸方向に移動できるように構成されてもよい。
上述の実施の形態および変形例においては、磁場増強体や磁場遮蔽体の全体をプラズマ室と磁石装置の間に挿入する場合や、プラズマ室と磁石装置の間から完全に退避させる場合の配置について説明した。さらなる変形例においては、磁場増強体や磁場遮蔽体を部分的にプラズマ室と磁石装置の間に挿入してカスプ磁場強度を調整してもよい。例えば、磁石装置の軸方向の長さに対して半分程度の位置まで磁性体を挿入することにより、上述の第1状態と第2状態の中間のような配置を実現してもよい。磁性体の配置を段階的に調整できるようにすることで、より精密にカスプ磁場強度を制御することができる。
10…マイクロ波イオン源、12…プラズマ室、16…軸方向磁場発生器、20…側壁部、22…イオン引出部、26…マイクロ波導入部、52…磁石装置、54…磁場増強体、56…磁場遮蔽体、58…切替装置。
Claims (8)
- プラズマ室内にマイクロ波を軸方向に導入するためのマイクロ波導入部と、前記マイクロ波導入部と前記軸方向に対向する位置に設けられるイオン引出部と、前記マイクロ波導入部と前記イオン引出部の間を接続する側壁部と、を有するプラズマ室と、
前記プラズマ室外に設けられ、前記プラズマ室内に軸方向磁場を発生させる軸方向軸方向磁場発生器と、
前記プラズマ室外に設けられ、前記プラズマ室内にカスプ磁場を発生させるカスプ軸方向磁場発生器と、を備え、
前記カスプ軸方向磁場発生器は、前記プラズマ室内のカスプ磁場強度の切り替えが可能となるように構成されることを特徴とするマイクロ波イオン源。 - 前記カスプ軸方向磁場発生器は、前記カスプ磁場を発生させるための複数の磁極を有する磁石装置と、前記側壁部と前記磁石装置の間に配置可能な一以上の磁性体と、前記一以上の磁性体の配置を変えて前記プラズマ室内のカスプ磁場強度を切り替える切替装置と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波イオン源。
- 前記一以上の磁性体は、前記側壁部の外周を囲むように配置される筒状の磁場遮蔽体を含み、
前記切替装置は、前記磁場遮蔽体を前記軸方向に移動させて前記プラズマ室内のカスプ磁場強度を切り替えることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波イオン源。 - 前記磁石装置の各磁極は、前記側壁部の外周を囲むように周方向に並んで配置され、前記軸方向に延在しており、
前記一以上の磁性体は、前記側壁部と前記磁石装置の間に設けられ、前記磁石装置の各磁極と対応するように周方向に間隔をあけて配置される複数の鉄芯を含み、
前記切替装置は、前記複数の鉄芯を前記軸方向または前記周方向に移動させて前記プラズマ室内のカスプ磁場強度を切り替えることを特徴とする請求項2または3に記載のマイクロ波イオン源。 - 前記磁石装置は、前記イオン引出部の近傍の前記軸方向に限定された範囲に配置され、
前記切替装置は、前記磁性体の少なくとも一つを前記イオン引出部の近傍から前記マイクロ波導入部側へ前記軸方向に移動させて前記プラズマ室内のカスプ磁場強度を切り替えることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のマイクロ波イオン源。 - 前記磁性体の表面に非磁性材料の摺動層が設けられることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のマイクロ波イオン源。
- 前記軸方向磁場発生器は、前記軸方向に異なる位置に配置される複数のコイルを有し、前記複数のコイルの動作を制御して前記プラズマ室内の軸方向磁場の強度分布を切り替えることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のマイクロ波イオン源。
- イオン引出部を有するプラズマ室と、前記プラズマ室外に設けられ、前記プラズマ室内に磁場を発生させる磁石装置と、前記プラズマ室と前記磁石装置の間に配置可能に構成される磁性体と、を備えるイオン源を用いたイオン生成方法であって、
前記磁性体の配置を変えることにより前記イオン引出部から引き出されるイオンの引出態様を制御することを特徴とするイオン生成方法。
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