JP6124324B2 - イオン伝導媒体、蓄電デバイス及びイオン伝導媒体の製造方法 - Google Patents

イオン伝導媒体、蓄電デバイス及びイオン伝導媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、イオン伝導媒体、蓄電デバイス、イオン伝導媒体の製造方法及び有機ホウ素系高分子に関する。
従来、蓄電デバイスのイオン伝導媒体としては、例えば、おもにアルキレンオキシドを単位構造とする高分子に電解質塩が少なくとも部分的に配位することによってイオン解離し、高分子鎖のセグメント運動によってリチウムイオンが輸送される高分子固体電解質が提案されている。この高分子固体電解質では、電解液を含有しないため、漏液、凍結、蒸発のない電池を提供することができる。しかしながら、イオン解離性のリチウム塩を溶解している高分子固体電解質は、リチウムイオン輸率が極めて低いことが、電気的特性を制限するひとつの要因となっていた。即ち、高分子固体電解質に用いる高分子中に含まれるエーテル酸素は、リチウムイオンに対して強い配位性を示すため、リチウム塩の解離を促進する一方、エーテル酸素のリチウムイオンに対する配位性が、対アニオンに対する配位性よりも強いため、リチウムイオンがエーテル酸素によって移動を拘束されることがあった。このため、リチウムイオンの移動度は小さく、対アニオンの移動度は大きい。即ち、リチウムイオン輸率が低い。このため、この高分子固体電解質を、例えば電池のように、直流成分の多い用途に用いる電気化学デバイスの電解質として用いると、アノード側(放電時における負極側または充電時における正極側)の塩濃度が上昇し、しかも拡散効果による塩濃度の緩和が充分に期待できないことから、電気化学デバイスの分極が大きくなることがあった。
そこで、ルイス酸性の高いホウ素原子を主鎖に有する高分子とリチウム塩とを併用することにより、リチウム塩の対アニオンをホウ素原子に配位させ、リチウム塩の解離性を高めると共に、対アニオンの移動を拘束することにより、リチウムイオン輸率を上昇させるものが提案されている(例えば、特許文献1、及び非特許文献1参照)。また、イオン液体中でのセルロースとヒドロボランとの脱水素カップリング反応により、セルロースをはじめとする多糖類のホウ素化による3級ホウ素を有する有機ホウ素系イオンゲルが提案されている(例えば、非特許文献2参照)。この多糖類のホウ素化反応では、グルコースユニットの6位の1級水酸基を保護してからホウ素化反応を行っている(例えば、非特許文献3参照)。
特開2007−182580号公報
Macromolecules,Vol.36,2003,2321 Polym.J.,2009,41,437 機能材料(シーエムシー出版)Vol.30,No.10,P42−48(2010)
しかしながら、上述の特許文献1,非特許文献1のイオン伝導媒体では、イオン伝導度を高めてはいるものの、導入したホウ素が高分子の主鎖にあり、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果によって、イオン伝導性が阻害されイオン伝導度が10-7〜10-5Scm-1と低かった。また、上述の非特許文献2のイオン伝導媒体では、構造単位当たりに含まれるホウ素含有割合が低く、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果が薄かった。更に、ホウ素化をするためには予め1級水酸基を保護する必要があり、容易にカチオン輸率を高めることができないことがあった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、カチオン輸率をより確実に高めることができるイオン伝導媒体、蓄電デバイス、イオン伝導媒体の製造方法及び有機ホウ素系高分子を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、ホウ素化合物を側鎖に有し、主鎖を直鎖の炭素鎖とすると、カチオン輸率をより確実に高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のイオン伝導媒体は、直鎖の炭素鎖を主鎖とし、該主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した構造を有する有機ホウ素系高分子を含むものである。
本発明の蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介在しイオンを伝導する上記イオン伝導媒体と、を備えたものである。
本発明のイオン伝導媒体の製造方法は、直鎖の炭素鎖を主鎖としヒドロキシル基を有する高分子化合物と、ホウ素化合物とをイオン液体中で縮合反応させ、有機ホウ素系高分子と前記イオン液体とを含むイオン伝導媒体を作製する反応工程を含むものである。
本発明の有機ホウ素系高分子は、直鎖の炭素鎖を主鎖とし、該主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した構造を有するものである。
本発明では、カチオン輸率をより確実に高めることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、ホウ素が有機ホウ素系高分子の側鎖にあることにより、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果を高め、イオン伝導を阻害しにくいものと推察される。また、直鎖の炭素鎖を主鎖とするため、構造単位当たりのホウ素含有割合をより高めることができ、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果を高めることにより、カチオン輸率をより確実に高めることができるものと推察される。
本発明のリチウム二次電池20の一例を示す模式図。 実験例1〜3のイオン伝導度の温度依存性の測定結果。 実験例1,4のイオン伝導度の温度依存性の結果。 実験例4,5のイオン伝導度の温度依存性の結果。 実験例5,6のイオン伝導度の温度依存性の結果。
本発明のイオン伝導媒体は、直鎖の炭素鎖を主鎖とし、この主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した構造を有する有機ホウ素系高分子を含んでいる。有機ホウ素系高分子は、その主鎖が直鎖であるものとし、できるだけ主鎖に環状構造を有さないものが好ましい。構造単位当たりに含まれるホウ素の含有割合を高められるからである。また、有機ホウ素系高分子は、側鎖を有するものとしてもよいが、できるだけ側鎖を有さないものが好ましい。構造単位当たりに含まれるホウ素の含有割合を高められるからである。この有機ホウ素系高分子は、直鎖の炭素鎖を主鎖としヒドロキシル基を有する高分子化合物と、ホウ素化合物とを縮合反応させて得るものとしてもよい。高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコールとすることが好ましい。具体的には、例えば、有機ホウ素系高分子は、次式(1)〜(4)で表される構造を有するものとしてもよい。式中、R1〜R8は、1価の基、M1 +,M2 +はカチオン、nは正の整数を示す。また、式中、R1〜R8はそれぞれ同じ基としてもよいし異なる基としてもよいし、M1 +,M2 +は同じカチオンとしてもよいし異なるカチオンとしてもよい。式(1)〜(4)に示すように、ホウ素化合物は、主鎖に結合した2つの酸素と1つの基と結合するものや、主鎖に結合した2つの酸素と2つの基の酸素と結合するもの、2つの酸素と2つの基と結合するもの、1つの酸素と2つの基と結合するものなどが挙げられる。
Figure 0006124324
1価の基(R1〜R8)としては、例えば、鎖状(直鎖でもよいし分岐鎖を有していてもよい)または環状の炭化水素基や、ハロゲン、ヒドロキシル基などが挙げられる。炭化水素基としては、脂肪族鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。脂肪族鎖式炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。この炭化水素基は、他の炭化水素基やハロゲン、ヒドロキシル基などの置換基を有していてもよい。
カチオン(M1 +,M2 +)は、ホウ素の電荷とバランスをとるものとすれば特に限定されないが、1価以上のカチオンとしてもよく、Li,Na,Kなどのアルカリ金属イオンが好ましい。
本発明のイオン伝導媒体は、有機ホウ素系高分子に加え、更にイオン液体を含むものとしてもよい。こうすれば、蓄電デバイスのイオン伝導媒体としてそのまま利用することができる。イオン液体としては、例えば、ピリジニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、アンモニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンなどを含むものが挙げられる。またアニオンとして、例えば、N(CF3SO2-、BF4 -、PF6 -、B(CN)4 -、[(C253PF3-、[(CN)2N]-、CF3SO3 -、CF3CO2 -、N(FSO22 -を含むイオン液体などが挙げられ、特にイミダゾリウムTFSA系、イミダゾリウムPF6系、イミダゾリウムBF4系を採用することがイオン伝導性や熱安定性上の理由で望ましい。イオン液体をポリビニルアルコールの溶解剤としても利用する場合には、イミダゾリウムハライド系イオン液体、イミダゾリウムホルメート型イオン液体、イミダゾリウムホスフェイト型イオン液体を採用することができる。このうち、本発明のイオン伝導媒体は、ホウ酸誘導体である有機ホウ素系高分子と、アリルイミダゾリウム型のイオン液体を含むことがより好ましい。こうすれば、カチオン輸率を更に高めることができる。
本発明のイオン伝導媒体には、非水系電解液を含むものとしてもよい。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。
本発明のイオン伝導媒体には、支持塩としてアルカリ金属塩を含むことが好ましい。アルカリ金属塩として、Li塩を含む場合、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。なお、上記Liの代わりにNaを含むNa塩、Kを含むK塩などとしてもよい。また、アルカリ金属塩にはイオン液体であるものも含まれる。
次に、イオン伝導媒体の製造方法について説明する。本発明のイオン伝導媒体の製造方法は、直鎖の炭素鎖を主鎖としヒドロキシル基を有する高分子化合物と、ホウ素化合物とをイオン液体中で縮合反応させ、有機ホウ素系高分子とイオン液体とを含むイオン伝導媒体を作製する反応工程を含むものとしてもよい。この反応工程では、ポリビニルアルコールを高分子化合物として用いることが好ましい。ポリビニルアルコールは、直鎖の炭素鎖を主鎖としヒドロキシル基を有するため、利用しやすい。ポリビニルアルコールは、重量平均分子量Mwが100以上10000以下のものを用いることが好ましい。また、ホウ素化合物としては、1〜3官能性の化合物が好ましい。3官能性のホウ素化合物としては、例えば、ボラン、ジボランなどが挙げられる。ボランは安定性を高めるために、以下に示すようにルイス塩基と錯体を形成することができる。ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ピリジン錯体、ボラン・tert−ブチルアミン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・アンモニア錯体、ボラン・トリメチルアミン錯体、ボラン・トリエチルアミン錯体、ボラン・ジメチルアミン錯体、ボラン・ジエチルアミン錯体、ボラン・ジイソプロピルアミン錯体、ボラン・エチルジイソプロピルアミン錯体、ボラン・ピペリジン錯体、ボラン・モルホリン錯体、ボラン・4−メチルモルホリン錯体、ボラン・4−エチルモルホリン錯体、ボラン・ジエチルアニリン錯体、ボラン・オキサチアン錯体、ボラン・トリフェニルホスリン錯体、ボラン・トリブチルホスリン錯体、ボラン・ルチジン錯体などが挙げられる。2官能性のホウ素化合物としては、例えば、ピロリルボラン、メシチルボラン、トリピルボラン、テキシルボラン、イソピノカンフェイルボラン、及びそれらの各種錯体が挙げられる。1官能性のホウ素化合物としては、9−ボラビシクロノナン、ジシアミルボラン、ジシクロヘキシルボラン、ジメシチルボラン、カテコールボラン、ジイソピノカンフェイルボラン、及びそれらの各種錯体が挙げられる。アルコキシボランとしては、例えば、メシチルジメトキシボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリプロポキシボラン、トリイソプロポキシボラン、トリブトキシボラン、トリtert−ブトキシボランが例示できる。ボロン酸誘導体としては、例えば、ボロン酸、フェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、p-メチルフェニルボロン酸などが挙げられる。
高分子化合物とホウ素化合物とを縮合反応させるイオン液体としては、上述したイオン液体を用いることができる。また、ポリビニルアルコールを高分子化合物として用いる場合は、イミダゾリウムハライド系イオン液体、イミダゾリウムホルメート型イオン液体、イミダゾリウムホスフェイト型イオン液体がより好ましい。
反応工程では、高分子化合物の質量をaとし、イオン液体の質量をbとしたとき、イオン液体の質量bに対する高分子化合物の質量aの割合a/bが、2/100以上30/100以下の範囲で前記縮合反応させることが好ましい。この範囲では、よりイオン伝導度を向上させることができる。この割合a/bは、3/100以上がより好ましく、5/100以上であることが更に好ましい。また、割合a/bは、20/100以下であることがより好ましく、10/100以下であることが更に好ましい。このように、イオン液体中で高分子化合物とホウ素化合物とを縮合反応させると、有機ホウ素系高分子とイオン液体とを含むイオン伝導媒体をそのまま電解質として利用することができ、作製工程などの簡素化をより図ることができる。また、直鎖の高分子化合物とホウ素化合物とを縮合反応させるため、例えば多糖類を主鎖として用いる場合のようにグルコースユニットの1級水酸基を保護してからホウ素化反応を行う必要が無く、作製工程などの簡素化をより図ることができる。縮合反応は、例えば、50℃以上200℃以下の温度範囲で攪拌することにより行うことができる。
本発明の蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しイオンを伝導する上述したイオン伝導媒体と、を備えている。この蓄電デバイスは、直鎖の炭素鎖を主鎖としこの主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した構造を有する有機ホウ素系高分子を含むイオン伝導媒体を備えるものとすれば、正極及び負極の構成は特に限定されず、アルカリ金属一次電池、アルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池、燃料電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、アルカリ金属イオンキャパシタとして構成してもよい。以下では、説明の便宜のため、リチウム二次電池を一例として、本発明の蓄電デバイスを説明する。
本発明のリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。
本発明のリチウム二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、Li(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)、Li(1-x)Mn24などのリチウムマンガン複合酸化物、Li(1-x)CoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li(1-x)NiO2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物、V25などの遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本発明のリチウム二次電池の負極は、負極活物質としてリチウム金属、リチウム合金などを備えるものとしてもよい。また、本発明のリチウム二次電池の負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマーなどが挙げられるが、このうち炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。この炭素質材料は、特に限定されるものではないが、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり電解質塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時おける不可逆容量を少なくできるため、好ましい。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
本発明のリチウム二次電池は、上述したイオン伝導媒体を備えている。このイオン伝導媒体は、直鎖の炭素鎖を主鎖とし、この主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した構造を有する有機ホウ素系高分子を含んでいる。イオン伝導媒体は、有機ホウ素系高分子が上述した式(1)〜(4)で表される構造を有するものとしてもよいし、更にイオン液体や非水電解液を含むものとしてもよい。
本発明のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明のリチウム二次電池20の一例を示す模式図である。このリチウム二次電池20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。このリチウム二次電池20は、正極22と負極23との間の空間にリチウム塩を溶解したイオン伝導媒体27を備えている。このイオン伝導媒体27は、直鎖の炭素鎖を主鎖とし、この主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した構造を有する有機ホウ素系高分子を含んでいる。
以上詳述した本発明のイオン伝導媒体では、カチオン輸率をより確実に高めることができる。これは、例えば、ホウ素が有機ホウ素系高分子の側鎖にあることにより、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果を高め、イオン伝導を阻害しにくくすることができるためである。また、直鎖の炭素鎖を主鎖とすることにより、構造単位当たりのホウ素含有割合をより高めることができ、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果を高めることができるためである。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば上述した実施形態では、イオン伝導媒体の製造方法において、直鎖の炭素鎖を主鎖としヒドロキシル基を有する高分子化合物と、ホウ素化合物とをイオン液体中で縮合反応させ、この有機ホウ素系高分子とイオン液体とを含むイオン伝導媒体を作製するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、高分子化合物を溶解する有機溶媒中で高分子化合物のホウ素化を行い、この有機溶媒を除去する工程を経てイオン伝導媒体を作製するものとしてもよい。また、有機溶媒を除去したイオン伝導媒体にイオン液体を加えるものとしてもよいし、高分子化合物のホウ素化を有機溶媒及びイオン液体の混合溶液中で行うものとしてもよい。こうしても、有機ホウ素系高分子の構造により、カチオン輸率をより確実に高めることができる。
上述した実施形態では、有機ホウ素系高分子を含むイオン伝導媒体として説明したが、特にこれに限定されず、例えば、直鎖の炭素鎖を主鎖としこの主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した構造を有する有機ホウ素系高分子としてもよい。こうしても、カチオン輸率をより確実に高めることができる。
以下には、本発明のイオン伝導媒体を具体的に作製した例を実験例として説明する。ホウ素化する前の高分子化合物及びイオン液体を含むイオン伝導媒体のイオン伝導性を実験例1〜3として検討し、ホウ素化した高分子化合物及びイオン液体を含むイオン伝導媒体のイオン伝導性を実験例4〜6として検討した。
[実験例1]
(PVA/BMIMCl系混合イオン伝導媒体の作製)
(高分子化合物aとイオン液体bの質量割合a/b=5/100)
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIMCl;1g)に対してポリビニルアルコール(PVA,Mw1000,50mg)、塩化リチウム(16.1mg)を溶解させ80℃で終夜攪拌させることにより、実験例1の有機イオンゲルを得た。
[実験例2]
(PVA/BMIMCl系混合イオン伝導媒体の作製)
(高分子化合物aとイオン液体bの質量割合a/b=10/100)
加えたポリビニルアルコールを100mg、塩化リチウム(32.1mg)とした以外は実験例1と同様に作製し、実験例2の有機イオンゲルを得た。
[実験例3]
(PVA/BMIMCl系混合イオン伝導媒体の作製)
(高分子化合物aとイオン液体bの質量割合a/b=1/100)
加えたポリビニルアルコールを10mg、塩化リチウム(3.2mg)とした以外は実験例1と同様に作製し、実験例3の有機イオンゲルを得た。
[実験例4]
(PVA/BMIMCl/B(OH)3系混合イオン伝導媒体の合成)
(高分子化合物aとイオン液体bの質量割合a/b=5/100)
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIMCl;1g)に対してポリビニルアルコール(50mg)、塩化リチウム(16.1mg)、B(OH)3(22.4mg)を溶解させ、80℃で終夜反応させることにより、実験例4の有機ホウ素系イオンゲルを得た。
[実験例5]
(PVA/AMIMCl/B(OH)3系混合イオン伝導媒体の合成)
(高分子化合物aとイオン液体bの質量割合a/b=5/100)
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIMCl)の代わりに1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(AMIMCl)を用いた以外は実験例4と同様に合成し、実験例5の有機ホウ素系イオンゲルを得た。
[実験例6]
(PVA/AMIMCl/PFPB系混合イオン伝導媒体の合成)
(高分子化合物aとイオン液体bの質量割合a/b=5/100)
B(OH)3(22.4mg)の代わりに、ペンタフルオロフェニルボロン酸(PFPB;72.3mg)を用いた以外は実験例5と同様に合成し、実験例6の有機ホウ素系イオンゲルを得た。
(イオン伝導度の測定)
ステンレス製の一対の電極を用意し、得られた合成により得られた有機ホウ素系イオンゲルを電解質として用いて二極式評価セルを作製した。この二極式評価セルを用い、交流分極法によりイオン伝導度を測定した。
(結果と考察)
図2は実験例1〜3のイオン伝導度の温度依存性の測定結果である。また、表1に実験例1〜6の測定結果をまとめて示す。ポリビニルアルコールとイオン液体の質量割合a/bが5/100〜10/100である実験例1,2の場合、質量割合a/bが1/100である実験例3に比べ、イオン伝導度が著しく向上しており、電気化学デバイス用電解質として十分なイオン伝導度を有していることが確認された。同時に、これらを用いた電気化学デバイスは分極が抑えられていることが上述した測定によって実証された。
Figure 0006124324
図3は実験例1,4のイオン伝導度の温度依存性の結果である。実験例4により得られた、有機ホウ素系イオンゲルは、51℃(324K)において3.4×10-4Scm-1のイオン伝導度を示した。実験例4は、実験例1と比較するとイオン伝導度は低下しているが、これは、OH基の消失によりプロトン伝導の寄与がなくなったこと、ホウ素によるアニオントラップにより系内のキャリアーイオン数が減少したこと、が要因と考えられる。しかしながら、非特許文献1で示されるホウ素含有高分子のイオン伝導度の10-7〜10-5Scm-1に比して大きな値を示した。一方、構造単位当たりのホウ素含有割合を多く含み導入したホウ素が側鎖にあることで、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果によって、カチオン輸率が向上していることが見込まれる。同時に、これらを用いた電気化学デバイスは分極が抑えられていることが上述した測定によって実証された。
図4は実験例4,5のイオン伝導度の温度依存性の結果である。イオン液体として低粘度のイオン液体である1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(AMIMCl)を利用した実験例5の場合には、イオン伝導度は大幅に向上し、51℃(324K)で1.5×10-3Scm-1を示すことが分かった。同時に、これらを用いた電気化学デバイスは分極が抑えられていることが上述した測定によって実証された。この結果より、ホウ酸誘導体である有機ホウ素系高分子と、アリルイミダゾリウム型のイオン液体を含むことがより好ましいことがわかった。
図5は実験例5,6のイオン伝導度の温度依存性の結果である。ボロン酸誘導体としてペンタフルオロフェニルボロン酸を用いた実験例6の場合にも、有機ホウ素系イオンゲルを作製することができた。イオン伝導度は実験例5よりも若干低下したが(5.8×10-4Scm-1at51℃)、ホウ素ユニットのルイス酸性の向上に伴い、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果の向上により、カチオン輸率が向上していることが見込まれた。また、非特許文献2で示される多糖類のホウ素化による有機ホウ素系イオンゲルのイオン伝導度(9.6×10-4Scm-1at30℃)に比べて、構造単位当たりのホウ素含有割合を多く含み、ホウ素原子と対アニオンとの配位による拘束効果の向上が期待できるが、ほぼ同等のイオン伝導度であった。同時に、これらを用いた電気化学デバイスは分極が抑えられていることが上述した測定によって実証された。
以上の結果より、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン電池、燃料電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスの電解質として本発明に係る電解質を用いると、漏液がなく形状自由度の高い電気化学デバイスを提供できるだけでなく、放電等直流成分の多い用途に用いた場合の分極を小さくできるので、放電性能、繰り返し充放電サイクル性能等電気的特性に優れた高い電気化学デバイスを提供することができることがわかった。
20 リチウム二次電池、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。

Claims (5)

  1. 直鎖の炭素鎖を主鎖とし、該主鎖に酸素を介してホウ素化合物が結合した次式(1)〜(4)で表される構造を有する有機ホウ素系高分子と、イオン液体とを含む、イオン伝導媒体。
    Figure 0006124324
  2. 正極活物質を有する正極と、
    負極活物質を有する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在しイオンを伝導する、請求項1に記載のイオン伝導媒体と、
    を備えた蓄電デバイス。
  3. 直鎖の炭素鎖を主鎖としヒドロキシル基を有する高分子化合物と、ホウ素化合物とをイオン液体中で縮合反応させ、有機ホウ素系高分子と前記イオン液体とを含むイオン伝導媒体を作製する反応工程を含む、イオン伝導媒体の製造方法。
  4. 前記反応工程では、前記高分子化合物の質量をaとし、前記イオン液体の質量をbとしたとき、前記イオン液体の質量bに対する前記高分子化合物の質量aの割合a/bが、2/100以上30/100以下の範囲で前記縮合反応させる、請求項に記載のイオン伝導媒体の製造方法。
  5. 前記反応工程では、ポリビニルアルコールを前記高分子化合物として用いる、請求項又はに記載のイオン伝導媒体の製造方法。
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