JP6123999B2 - 液体噴射装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の製造方法に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録装置の製造方法に関する。
液体噴射装置としては、例えば、液体としてインクをインク滴として吐出するインクジェット式記録ヘッドを具備し、インクジェット式記録ヘッドのノズル開口から吐出されたインク滴を記録用紙等の被噴射媒体に着弾させてドットを形成することで画像等の記録を行うインクジェット式記録装置が挙げられる。
インクジェット式記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッドは、複数のノズル開口が並設されたノズル列を有し、駆動信号を圧電アクチュエーター等の圧力発生素子に印加してこれを駆動することにより流路内のインクに圧力変化を生じさせ、この圧力変化を利用してノズル開口からインク滴を吐出させる。
そして、インクジェット式記録ヘッドの各ノズル開口からインク滴を選択的に吐出させながら、インクジェット式記録ヘッドを被噴射媒体に対して相対的に移動させることで、被噴射媒体に所望の画像等を形成することができる(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−221567号公報
しかしながら、複数のノズル開口から同時にインク滴を吐出させた際に、以前にインク滴を吐出させたノズル開口から吐出させた際のインク滴の飛翔速度と、以前に非吐出だったノズル開口から吐出させた際のインク滴の飛翔速度とにばらつきが生じ、インク滴が相対移動方向に互いにずれた位置に着弾して、着弾位置ずれによる画像等の画質の低下が発生するという問題がある。
特にこのような問題は、被噴射媒体に対して高速印刷、例えば、1000〜1500cps(キャラクター/秒)程度の印刷速度で高速印刷を行った場合に、連続吐出時の残留振動の影響から発生し易い。
なお、このような問題はインクを吐出するインクジェット式記録装置だけでなく、インク以外の液体を吐出する液体噴射装置においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、液滴の飛翔速度のばらつきを抑制して液滴の被噴射媒体への着弾位置ずれを抑制した印刷を行うことができる液体噴射装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体に圧力変化を生じさせる圧力発生素子と、所定の時間間隔を記憶するメモリーと、前記圧力発生素子に液滴を吐出させる駆動を行わせる第1駆動信号と、前記圧力発生素子に液滴を吐出させない駆動を行わせる第2駆動信号と、を少なくとも第2駆動信号を供給したのち前記メモリーの記憶する前記時間間隔を空けて前記第1駆動信号を供給する動作を実行する制御手段と、を具備する液体噴射装置の製造方法であって、連続して液滴を吐出させた際の液滴の飛翔速度を測定し、前記第2駆動信号を供給してから前記第1駆動信号を供給した際の液滴の飛翔速度が、連続して液滴を吐出させた際の液滴の飛翔速度に近づくように、前記第2駆動信号と前記第1駆動信号との時間を選定し、当該時間を前記時間間隔として前記メモリーに格納することを特徴とする液体噴射装置の製造方法にある。
かかる態様では、連続して吐出させた液滴の飛翔速度と、非吐出の状態から吐出させた液滴の飛翔速度との差を低減することができるため、被噴射媒体への液滴の着弾位置ずれを抑制した液体噴射装置を製造することができる。また、記録周期を短くしても着弾位置ずれが抑制されることから、液体噴射ヘッドに対して被噴射媒体を高速で相対移動させることができる液体噴射装置を実現できる。
ここで、前記圧力発生素子に前記第2駆動信号を供給するタイミングは、当該第2駆動信号により前記圧力発生素子を駆動した際の液体の残留振動波形の極小領域で前記第1駆動信号が供給されるタイミングであることが好ましい。これによれば、残留振動波形が極小となる領域とすることで、液体噴射ヘッドと被噴射媒体との相対移動速度にばらつきが生じても、飛翔速度のばらつきが増大するのを抑制することができる。
また、前記圧力発生素子に前記第2駆動信号を供給するタイミングは、当該第2駆動信号により前記圧力発生素子を駆動した際の液体の残留振動波形の極大領域で前記第1駆動信号が供給されるタイミングであることが好ましい。これによれば、残留振動波形が極大となる領域とすることで、液体噴射ヘッドと被噴射媒体との相対移動速度にばらつきが生じても、飛翔速度のばらつきが増大するのを抑制することができる。
また、前記制御手段は、液滴を吐出しない前記圧力発生素子には、前記第2駆動信号を連続して供給することが好ましい。これによれば、第2駆動信号によって液滴を吐出するノズル開口近傍の液体が撹拌されて、液体の乾燥による増粘や成分の沈降を抑制して、液滴の吐出不良を抑制することができる。
また、液体に圧力変化を生じさせる圧力発生素子と、前記圧力発生素子に液滴を吐出させる駆動を行わせる第1駆動信号と、前記圧力発生素子に液滴を吐出させない駆動を行わせる第2駆動信号と、を供給する制御手段と、を具備し、当該制御手段は、第1駆動信号により液滴を吐出させたのちの液体の残留圧力変動がある場合の液滴の飛翔速度に近づけるタイミングで前記第2駆動信号を前記圧力発生素子に供給した後に前記第1駆動信号を前記圧力発生素子に供給する処理を実行することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、第1駆動信号を連続して供給することで連続して吐出させた液滴の飛翔速度と、第1駆動信号を連続して供給せずに非吐出の状態から吐出させた液滴の飛翔速度との差を低減することができる。したがって、被噴射媒体への液滴の着弾位置ずれを抑制することができる。また、記録周期を短くしても着弾位置ずれが抑制されることから、液体噴射ヘッドに対して被噴射媒体を高速で相対移動させることができる。
ここで、前記圧力発生素子に前記第2駆動信号を供給するタイミングは、当該第2駆動信号により前記圧力発生素子を駆動した際の液体の残留振動波形の極小領域で前記第1駆動信号が供給されるタイミングであることが好ましい。これによれば、残留振動波形が極小となる領域とすることで、液体噴射ヘッドと被噴射媒体との相対移動速度にばらつきが生じても、飛翔速度のばらつきが増大するのを抑制することができる。
また、前記圧力発生素子に前記第2駆動信号を供給するタイミングは、当該第2駆動信号により前記圧力発生素子を駆動した際の液体の残留振動波形の極大領域で前記第1駆動信号が供給されるタイミングであることが好ましい。これによれば、残留振動波形が極大となる領域とすることで、液体噴射ヘッドと被噴射媒体との相対移動速度にばらつきが生じても、飛翔速度のばらつきが増大するのを抑制することができる。
また、前記制御手段は、液滴を吐出しない前記圧力発生素子には、前記第2駆動信号を連続して供給することが好ましい。これによれば、第2駆動信号によって液滴を吐出するノズル開口近傍の液体が撹拌されて、液体の乾燥による増粘や成分の沈降を抑制して、液滴の吐出不良を抑制することができる。
さらに、本発明の他の態様は、液体に圧力変化を生じさせる圧力発生素子と、所定の時間間隔を記憶するメモリーと、前記圧力発生素子に液滴を吐出させる駆動を行わせる第1駆動信号と、前記圧力発生素子に液滴を吐出させない駆動を行わせる第2駆動信号と、を少なくとも第2駆動信号を供給したのち前記メモリーの記憶する前記時間間隔を空けて前記第1駆動信号を供給する動作を実行する制御手段と、を具備する液体噴射装置の製造方法であって、連続して液滴を吐出させた際の液滴の飛翔速度を測定し、前記第2駆動信号を供給してから前記第1駆動信号を供給した際の液滴の飛翔速度が、連続して液滴を吐出させた際の液滴の飛翔速度に近づくように、前記第2駆動信号と前記第1駆動信号との時間を選定し、当該時間を前記時間間隔としてメモリーに格納することを特徴とする液体噴射装置の製造方法にある。
かかる態様では、連続して吐出させた液滴の飛翔速度と、非吐出の状態から吐出させた液滴の飛翔速度との差を低減することができるため、被噴射媒体への液滴の着弾位置ずれを抑制した液体噴射装置を製造することができる。また、記録周期を短くしても着弾位置ずれが抑制されることから、液体噴射ヘッドに対して被噴射媒体を高速で相対移動させることができる液体噴射装置を実現できる。
実施形態1に係る記録装置を示す概略斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。 実施形態1に係る記録装置の制御系を示すブロック図である。 実施形態1に係る駆動波形の一例を示す波形図である。 実施形態1に係る記録周期と飛翔速度との関係を示すグラフである。 実施形態1に係るインク滴の飛翔状態と印刷物とを示す説明図である。 実施形態1に係る駆動波形の一例を示す波形図である。 実施形態1に係る残留振動を示す波形図である。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、インクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、ヘッドユニット1とも言う)が固定されて、被噴射媒体である紙などの記録シートSを搬送することで印刷を行う、所謂ライン式記録装置である。具体的には、インクジェット式記録装置Iは、装置本体8と、複数のインクジェット式記録ヘッド2(以下、記録ヘッド2とも言う)を具備すると共に装置本体8に固定されたヘッドユニット1と、記録シートSを搬送する搬送手段5と、ヘッドユニット1の相対向する記録シートSの印刷面とは反対の裏面側を支持するプラテン4と、を具備する。
ヘッドユニット1は、複数(本実施形態では、8個)の記録ヘッド2と、複数の記録ヘッド2を保持するベースプレート3と、を具備する。
記録ヘッド2は、ベースプレート3に千鳥状に配置されている。具体的には、記録ヘッド2は、ノズル開口13(図2参照)の並設方向である第1の方向Xに向かって並設されている。また、第1の方向Xに並設された複数の記録ヘッド2で構成される列は、第1の方向Xとは交差する第2の方向Yに並んで2列設けられている。これら第2の方向Yに並設された記録ヘッド2の2列は、互いに第2の方向Yに向かって記録ヘッド2の並設された間隔(1ピッチ)の半分の間隔(半ピッチ)ずれた位置に配置されている。そして、これら2列の記録ヘッド2で構成されるヘッド群では、第2の方向Yで互いに隣り合う記録ヘッド2は、一方の記録ヘッド2のノズル列の端部のノズル開口13と、他方の記録ヘッドのノズル列の端部のノズル開口13とが、ノズル開口13の並設方向(第1の方向X)で同一位置となるように設けられている。これにより、複数の記録ヘッド2によって第1の方向Xに沿ってノズル列を連続させることができ、連続するノズル列の幅で広い面積に亘って印刷を行うことができる。なお、記録ヘッド2のノズル開口13の並設方向は、記録シートSの搬送方向と交差する方向となるようにヘッドユニット1は装置本体8に固定されている。また、2列の記録ヘッド2で構成されるヘッド群は、本実施形態では、第2の方向Yに2つ配置されている。
搬送手段5は、ヘッドユニット1に対して記録シートSの搬送方向の両側に設けられた第1の搬送手段6と、第2の搬送手段7とを具備する。
第1の搬送手段6は、駆動ローラー6aと、従動ローラー6bと、これら駆動ローラー6a及び従動ローラー6bに巻回された搬送ベルト6cとで構成されている。また、第2の搬送手段7は、第1の搬送手段6と同様に駆動ローラー7a、従動ローラー7b及び搬送ベルト7cで構成されている。
これらの第1の搬送手段6及び第2の搬送手段7のそれぞれの駆動ローラー6a、7aには、図示しない駆動モーター等の駆動手段が接続されており、駆動手段の駆動力によって搬送ベルト6c、7cが回転駆動することで、記録シートSをヘッドユニット1の上流側及び下流側で搬送する。
なお、本形態では、駆動ローラー6a、7a、従動ローラー6b、7b及び搬送ベルト6c、7cで構成される第1の搬送手段6及び第2の搬送手段7を例示したが、記録シートSを搬送ベルト6c、7c上に保持させる保持手段をさらに設けてもよい。保持手段としては、例えば、記録シートSの外周面を帯電させる帯電手段を設け、この帯電手段によって帯電した記録シートSを誘電分極の作用により搬送ベルト6c、7c上に吸着させるようにしてもよい。また、保持手段として、搬送ベルト6c、7c上に押えローラーを設け、押えローラーと搬送ベルト6c、7cとの間で記録シートSを挟持させるようにしてもよい。
プラテン4は、第1の搬送手段6と第2の搬送手段7との間に、ヘッドユニット1に相対向して設けられた断面が矩形状を有する金属又は樹脂等からなる。プラテン4は、第1の搬送手段6及び第2の搬送手段7によって搬送された記録シートSを、ヘッドユニット1に相対向する位置で支持する。
なお、プラテン4には、搬送された記録シートSをプラテン4上で吸着する吸着手段が設けられていてもよい。吸着手段としては、例えば、記録シートSを吸引することで吸引吸着するものや、静電気力で記録シートSを静電吸着するもの等が挙げられる。
また、ヘッドユニット1の各記録ヘッド2には、図示していないが、インクが貯留されたインクタンクやインクカートリッジなどのインク貯留手段がインクを供給可能に接続されている。インク貯留手段は、例えば、ヘッドユニット1上に保持されていても、また、装置本体8内のヘッドユニット1とは異なる位置に保持されていてもよい。さらに、貯留手段は、インクジェット式記録装置Iの外部に設けられていてもよい。
このようなインクジェット式記録装置Iでは、搬送手段5によって記録シートSが搬送され、ヘッドユニット1によってプラテン4上で支持された記録シートSに印刷が実行される。印刷された記録シートSは、搬送手段5によって搬送される。
なお、本実施形態では、複数の記録ヘッド2を有するヘッドユニット1をインクジェット式記録装置Iに搭載するようにしたが、特にこれに限定されず、単数又は複数の記録ヘッド2を直接インクジェット式記録装置Iに搭載してもよい。また、インクジェット式記録装置Iに複数のヘッドユニット1を搭載してもよい。
ここで、このようなインクジェット式記録装置Iに搭載される記録ヘッド2の一例について図2を参照して詳細に説明する。なお、図2は、液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図である。
図2に示すように、記録ヘッド2を構成する流路基板11には、複数の圧力発生室12が並設され、流路基板11の両側は、各圧力発生室12に対応してノズル開口13を有するノズルプレート14と、振動板15とにより封止されている。また、流路基板11には、各圧力発生室12毎にそれぞれインク供給口16を介して連通されて複数の圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド17が形成されており、マニホールド17には、液体貯留部が接続される。
一方、振動板15の圧力発生室12とは反対側には、各圧力発生室12に対応する領域にそれぞれ圧電アクチュエーター18の先端が当接されて設けられている。これらの圧電アクチュエーター18は、圧電材料19と、電極形成材料20及び21とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層され、振動に寄与しない不活性領域が固定基板22に固着されている。なお、固定基板22と、振動板15、流路基板11及びノズルプレート14とは、ヘッドケース23を介して一体的に固定されている。また、圧電アクチュエーター18には、圧電アクチュエーター18に駆動信号等を供給するための配線基板25が接続されている。
また、ヘッドケース23には、図示しない貯留手段に接続されると共にマニホールド17に接続された液体供給路24が設けられている。液体貯留手段からのインクは、液体供給路24を介してマニホールド17に供給され、インク供給口16を介して各圧力発生室12に分配される。実際には、圧電アクチュエーター18に電圧を印加することにより圧電アクチュエーター18を収縮させる。これにより、振動板15が圧電アクチュエーター18と共に変形されて(図中上方向に引き上げられて)圧力発生室12の容積が広げられ、圧力発生室12内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口13に至るまで内部をインクで満たした後、配線基板25を介して供給された駆動回路からの記録信号に従い、圧電アクチュエーター18の電極形成材料20及び21に印加していた電圧を解除すると、圧電アクチュエーター18が伸張されて元の状態に戻る。これにより、振動板15も変位して元の状態に戻るため圧力発生室12が収縮され、内部圧力が高まりノズル開口13からインク滴が吐出される。すなわち、本実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生素子として積層方向に直交する方向に伸縮可能な縦振動型の圧電アクチュエーター18が設けられている。
ここで、本実施形態のインクジェット式記録装置Iを制御する制御回路について図3を参照して詳細に説明する。なお、図3は本実施形態に係るインクジェット式記録装置の制御系を示すブロック図である。
図3に示すように、インクジェット式記録装置Iは、プリンターコントローラー100(本発明における制御手段の一種)とプリントエンジン120とで概略構成されている。プリンターコントローラー100は、ホストコンピューター等の外部装置からの印刷データ等が入力される外部インターフェース(外部I/F)101と、各種データ等を一時的に記憶するRAM102と、制御プログラム等を記憶したROM103と、CPU等を含んで構成した制御部104と、クロック信号を発生する発振回路105と、記録ヘッド2へ供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路106と、駆動信号や印刷データに基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等をプリントエンジン120に送信するインターフェース(内部I/F)107と、を備えている。
外部I/F101は、例えば、キャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成される印刷データを、図示しないホストコンピューター等から受信する。また、この外部I/F101を通じてビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、ホストコンピューター等に対して出力される。RAM102は、受信バッファー108、中間バッファー109、出力バッファー110、及び、図示しないワークメモリーとして機能する。そして、受信バッファー108は外部I/F101によって受信された印刷データを一時的に記憶し、中間バッファー109は制御部104が変換した中間コードデータを記憶し、出力バッファー110はドットパターンデータを記憶する。なお、このドットパターンデータは、階調データをデコード(翻訳)することにより得られる印字データによって構成してある。
また、ROM103には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数等を記憶させてある。制御部104は、受信バッファー108内の印刷データを読み出すと共に、この印刷データを変換して得た中間コードデータを中間バッファー109に記憶させる。また、中間バッファー109から読み出した中間コードデータを解析し、ROM103に記憶させているフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して、中間コードデータをドットパターンデータに展開する。そして、制御部104は、必要な装飾処理を施した後に、この展開したドットパターンデータを出力バッファー110に記憶させる。
そして、ヘッドユニット1の1行分に相当するドットパターンデータが得られたならば、この1行分のドットパターンデータは、内部I/F107を通じてヘッドユニット1の各記録ヘッド2に出力される。また、出力バッファー110から1行分のドットパターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータは中間バッファー109から消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われる。
また、駆動信号発生回路106は、詳しくは後述するが、本実施形態では、2つの駆動信号、すなわち、第1駆動信号(COM1)と第2駆動信号(COM2)とを生成する。
プリントエンジン120は、ヘッドユニット1(記録ヘッド2)と、搬送手段5とを含んで構成してある。搬送手段5は、上述のように、第1の搬送手段6と、第2の搬送手段7とで構成されており、被噴射媒体である記録シートSをヘッドユニット1(記録ヘッド2)の記録動作に連動させて順次送り出す。
記録ヘッド2は、副走査方向に沿って多数のノズル開口13を有し、ドットパターンデータ等によって規定されるタイミングで各ノズル開口13から液滴を吐出する。そして、このような記録ヘッド2の圧電アクチュエーター18には、配線基板25(図2参照)を介して電気信号、例えば、後述する駆動信号(COM1及びCOM2)や印字データ(SI)等が供給される。なお、このように構成されるプリンターコントローラー100及びプリントエンジン120では、プリンターコントローラー100と、駆動信号発生回路106から出力された所定の駆動波形を有する駆動信号を選択的に圧電アクチュエーター18に入力するシフトレジスター130、ラッチ131、レベルシフター132及びスイッチ133等を有する駆動回路とが圧電アクチュエーター18に所定の駆動信号を印加する駆動手段となる。
なお、これらのシフトレジスター130、ラッチ131、レベルシフター132、スイッチ133及び圧電アクチュエーター18は、それぞれ、記録ヘッド2の各ノズル開口13毎に設けられており、これらのシフトレジスター130、ラッチ131、レベルシフター132及びスイッチ133は、駆動信号発生回路106が発生した吐出駆動信号や微振動駆動信号から駆動パルスを生成する。ここで、駆動パルスとは実際に圧電アクチュエーター18に印加される印加パルスのことである。
このような記録ヘッド2では、最初に発振回路105からのクロック信号(CK)に同期して、ドットパターンデータを構成する印字データ(SI)が出力バッファー110からシフトレジスター130へシリアル伝送され、順次セットされる。この場合、まず、全ノズル開口13の印字データにおける最上位ビットのデータがシリアル伝送され、この最上位ビットのデータシリアル伝送が終了したならば、上位から2番目のビットのデータがシリアル伝送される。以下同様に、下位ビットのデータが順次シリアル伝送される。
そして、当該ビットの印字データが全ノズル分が各シフトレジスター130にセットされたならば、制御部104は、所定のタイミングでラッチ131へラッチ信号(LAT)を出力させる。このラッチ信号により、ラッチ131は、シフトレジスター130にセットされた印字データをラッチする。このラッチ131がラッチした印字データ(LATout)は、電圧増幅器であるレベルシフター132に印加される。このレベルシフター132は、印字データが例えば「1」の場合に、スイッチ133が駆動可能な電圧値、例えば、数十ボルトまでこの印字データを昇圧する。そして、この昇圧された印字データは各スイッチ133に印加され、各スイッチ133は、当該印字データにより接続状態になる。
そして、各スイッチ133には、駆動信号発生回路106が発生した駆動信号(COM1、COM2)も印加されており、スイッチ133が選択的に接続状態になると、このスイッチ133に接続された圧電アクチュエーター18に選択的に駆動信号が印加される。このように、例示した記録ヘッド2では、印字データによって圧電アクチュエーター18に吐出駆動信号を印加するか否かを制御することができる。例えば、印字データが「1」の期間においてはラッチ信号(LAT)によりスイッチ133が接続状態となるので、駆動信号(COMout)を圧電アクチュエーター18に供給することができ、この供給された駆動信号(COMout)により圧電アクチュエーター18が変位(変形)する。また、印字データが「0」の期間においてはスイッチ133が非接続状態となるので、圧電アクチュエーター18への駆動信号の供給は遮断される。なお、この印字データが「0」の期間において、各圧電アクチュエーター18は直前の電位を保持するので、直前の変位状態が維持される。なお、本実施形態では、詳しくは後述するが、スイッチ133が詳しくは後述するが、本実施形態では、印字データが「1」の期間においては、インク滴を吐出させる吐出用の駆動信号である第1駆動信号が圧電アクチュエーター18に供給され、印字データが「0」の期間においては、圧電アクチュエーター18が吐出しない程度に駆動される微振動駆動用の駆動信号である第2駆動信号が圧電アクチュエーター18に供給される。
ここで、圧電アクチュエーター18に入力される本実施形態の駆動信号(COM)を表す駆動波形について説明する。なお、図4は、本実施形態の駆動信号を示す駆動波形である。
本実施形態では、ノズル開口13からインク滴を吐出する際に圧電アクチュエーター18に印加される第1駆動信号200と、ノズル開口13からインク滴が吐出されない程度に圧電アクチュエーター18を駆動する、いわゆる微振動駆動である第2駆動信号210とが制御部104によって圧電アクチュエーター18に供給される。
これら第1駆動信号200及び第2駆動信号210は、図4に示すようなパルス波形である。具体的には、図4(a)に示すように、第1駆動信号200は、1記録周期Tで発生する吐出パルス201を具備する。この第1駆動信号200の吐出パルス201は、基準電位Vaから第1電位Vbまで上昇させて圧力発生室12を膨張させる第1膨張要素P01と、第1電位V1を一定時間維持する第1ホールド要素P02と、第1電位V1から基準電位Vaまで降下させて圧力発生室12を収縮させる第1収縮要素P03と、を具備する。
このような第1駆動信号200の吐出パルス201が圧電アクチュエーター18に供給されると、第1膨張要素P01によって、圧電アクチュエーター18が圧力発生室12の容積を膨張させる方向に変形して、ノズル開口13内のメニスカスが圧力発生室12側に引き込まれると共に、圧力発生室12にはマニホールド17側からインクが供給される。そして、圧力発生室12の膨張状態は、第1ホールド要素P02で維持される。次に、第1収縮要素P03が供給されて圧電アクチュエーター18が伸長する。これにより、圧力発生室12は膨張容積から基準電位Vaに対応する容積まで急激に収縮され、圧力発生室12内のインクが加圧されてノズル開口13からインク滴が吐出される。なお、このような第1膨張要素P01、第1ホールド要素P02及び第1収縮要素P03からなる吐出パルスが、1記録周期Tで繰り返し発生され、所定のタイミングで圧電アクチュエーター18に選択的に印加される。
一方、第2駆動信号210は、本実施形態では、圧電アクチュエーター18をノズル開口13からインク滴が吐出されない程度に駆動させるものであり、1記録周期Tで発生する微振動パルス211を具備する。この第2駆動信号210の微振動パルス211は、基準電位Vaから第2電位Vcまで上昇させて圧力発生室12を膨張させる第2膨張要素P11と、第2電位Vcを一定時間維持する第2ホールド要素P12と、第2電位Vcから基準電位Vaまで降下させて圧力発生室12を収縮させる第2収縮要素P13と、を具備する。
このような第2駆動信号210の微振動パルス211が圧電アクチュエーター18に供給されると、第2膨張要素P11によって圧電アクチュエーター18が圧力発生室12の容積を膨張させる方向に変形して、ノズル開口13内のメニスカスが圧力発生室12側に引き込まれると共に、圧力発生室12にはマニホールド17側からインクが供給される。そして、圧力発生室12の膨張状態は、第2ホールド要素P12で維持される。次に、第2収縮要素P13が供給されて圧電アクチュエーター18が伸長する。これにより、圧力発生室12は膨張容積から基準電位Vaに対応する容積まで収縮され、圧力発生室12内のインクが加圧されてノズル開口13内のメニスカスが圧力発生室12とは反対側に凸となるように変形する。このとき、第2電位Vcは、吐出パルスの第1電位Vaよりも低い電位であるため、圧電アクチュエーター18の変形によってノズル開口13からインクがインク滴として吐出されないようにメニスカスが振動する。このような微振動パルス211によってノズル開口13のメニスカスが振動(微振動)されることで、ノズル開口13近傍のインクが撹拌され、インクの乾燥による吐出不良等を抑制することができる。なお、このような第2膨張要素P11、第2ホールド要素P12及び第2収縮要素P13からなる微振動パルス211が1記録周期Tで繰り返し発生され、所定のタイミングで圧電アクチュエーター18に選択的に印加される。なお、微振動パルス211を印加するタイミングについては、詳しくは後述する。
ここで、このようなインクジェット式記録装置Iを用いた記録シートSへのインク滴の着弾位置ずれについて説明する。なお、図5は、第1駆動信号を供給する周期と、その周期で第1駆動信号を繰り返し供給した場合に吐出されるインク滴の飛翔速度との関係を説明するグラフであり、実際には波形は減衰しながら多数繰り返されるが、ここでは説明を簡単にするために、2回目にV1となったところで波が減衰して終了しているように表現している。また、図6は、着弾位置ずれを説明するインク滴の飛翔状態を示す図及び印刷物を示す図である。
図5に示すように、連続してインク滴を吐出した際に、例えば、図4(a)に示す第1駆動信号200の吐出パルス201が比較的長い周期(例えば、周期t1)で繰り返される場合には、一定の飛翔速度V1となる。これは、1つ前のインク滴を吐出した際の応力変動である残留振動が減衰してから次のインク滴が吐出されるため、前のインク滴を吐出した残留振動の影響を受けずに次のインク滴が吐出されるからである。
これに対して、連続してインク滴を吐出した際に、第1駆動信号200の吐出パルス201が周期t1よりも短い周期t2で繰り返される場合には、インク滴は周期t1の飛翔速度V1よりも遅い飛翔速度V2となる。また、吐出パルス201が周期t2よりも更に短い周期t3で繰り返される場合には、インク滴は周期t1の飛翔速度V1よりも速い飛翔速度V3となる。これは1つ目のインク滴を吐出した後の残留振動は圧力発生室12の共振周波数Tc(ヘルムホルツ振動周期Tc)となっているため、残留振動と同じ位相となるタイミングで次の吐出パルスを印加した場合と、残留振動とは逆の位相となるタイミングで次の吐出パルスを印加した場合とで、圧力発生室12内の圧力変化量が異なってしまうためである。なお、連続して吐出するとは、1つのノズル開口13から第1駆動信号200の吐出パルス201が繰り返される1記録周期Tでインク滴の吐出を行う場合のことである。そして、残留振動による影響は、上述のようにインク滴の1記録周期(吐出周期)を短くして、高速印刷を行う際に顕著に現れる。なお、本実施形態の高速印刷とは、ヘッドユニット1に対して記録シートSの相対的な搬送速度を速くすることであり、例えば、記録シートSに対して1000〜1500cps(キャラクター/秒)程度のことを言う。
このように、第1駆動信号200の吐出パルス201の1記録周期Tが短いと、1つのノズル開口13からインク滴を連続吐出させた場合(以降、連続吐出とも言う)のインク滴の飛翔速度と、連続吐出と同じタイミング(1記録周期T)において1つのノズル開口13からインク適を吐出させない状態から次の記録周期Tでインク滴を吐出させた場合(以降、単発吐出とも言う)のインク滴の飛翔速度とにばらつきが生じてしまう。
具体的には、吐出パルス201の周期Tが短く(例えば、周期t3)、残留振動と同じ位相となるタイミングで次の吐出パルスが圧電アクチュエーター18(第1圧電アクチュエーター)に印加された場合、図6(a)に示すように、連続吐出のインク滴D1の飛翔速度は、単発吐出のインク滴D2の飛翔速度よりも速くなる。このため、連続吐出したインク滴D1は、単発吐出したインク滴D2よりも先に記録シートSに着弾する。すなわち、図6(a)に示すような「造」という文字を図中の矢印方向に記録シートSを搬送して印字する場合、連続吐出によって吐出したインク滴D1によって形成したラインL1(記録シートSの搬送方向:第2の方向Yに形成されたライン)と、同じ記録周期T内で同時に吐出したインク滴D1、D2によって形成したラインL2(ノズル開口13の並設方向:第1の方向Xに形成されたライン)と、が交わる領域Aには、凹部が形成されてしまう。
同様に、吐出パルスの周期Tが短く(例えば、周期t2)、残留振動と逆の位相となるタイミングで次の吐出パルス201が印加された場合、図6(b)に示すように、連続吐出のインク滴D1の飛翔速度は、単発吐出のインク滴D2の飛翔速度よりも遅くなる。このため、連続吐出したインク滴D1は、単発吐出したインク滴D2よりも後に記録シートSに着弾する。すなわち、図6(b)に示すような「造」という文字を図中の矢印方向に記録シートSを搬送して印字する場合、連続吐出によって吐出したインク滴D1によって形成したラインL1(記録シートSの搬送方向:第2の方向Yに形成されたライン)と、同じ記録周期T内で同時に吐出したインク滴D1、D2によって形成したラインL2(ノズル開口13の並設方向:第1の方向Xに形成されたライン)と、が交わる領域Aには、
凸部が形成されてしまう。
そこで、本実施形態では、図6(c)に示すように、吐出パルス201の周期Tを短くしても、連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度と、単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度とのばらつきを抑制して、インク滴D1、D2が同じタイミングで記録シートSに着弾して、ラインL1とラインL2との領域Aが直線状になるように、単発吐出を行うノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18(第2圧電アクチュエーター)に、吐出パルス201を印加する前に、微振動パルス211を印加するようにした。すなわち、単発吐出を行わせるノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18に、吐出パルス201が供給される以前の記録周期T(同一の記録周期Tであってもよい)に微振動パルス211を供給してから吐出パルスを供給することで、微振動パルス211の残留振動による影響で吐出パルス201によって吐出されるインク滴の飛翔速度を、連続してインク滴を吐出した際の前の吐出パルス201の残留振動による影響を受けて吐出パルス201によって吐出されるインク滴の飛翔速度に近づけるようにした。つまり、第1駆動信号200(吐出パルス201)によりインク滴を吐出させたのちのインクの残留圧力変動がある場合のインク滴の飛翔速度に近づけるタイミングで第2駆動信号210(微振動パルス211)を圧電アクチュエーター18に供給した後に第1駆動信号200(吐出パルス201)を圧電アクチュエーター18に供給する処理を実行する。
ここで、インク滴を連続吐出させるノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18に印加する駆動信号と、単発吐出させるノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18に印加する駆動信号と、について図7を参照して説明する。なお、図7は、駆動信号の一例を示す波形図及びインク滴の吐出状態を示す図である。
インク滴を連続吐出させるノズル開口に対応する圧電アクチュエーター18には、図7(a)に示すように、吐出パルス201を1記録周期Tで連続して印加する。これにより、図7(b)に示すように、連続してインク滴D1が吐出される。
これに対して、単発吐出を行わせるノズル開口に対応する圧電アクチュエーター18には、図7(c)に示すように、微振動パルス211を印加してから吐出パルス201を印加してインク滴を吐出させる。このときの微振動パルス211と吐出パルス201との間隔(時間)をSで示す。これにより、図7(d)に示すように、図7(a)の駆動信号でインク滴を吐出した周期T1ではインク滴が吐出されず、その後の周期T2でインク滴が吐出される。
またここで、微振動パルス211による圧力発生室12内の残留振動について図8を参照して説明する。なお、図8は、微振動パルスによる残留振動を示す波形図である。
図8(a)に示すように、微振動パルス211を印加すると、残留振動波形は時間tの経過とともにその振幅が減衰する。このため、本実施形態では、吐出パルス201の前に微振動パルス211を印加するタイミング(時間S:時間間隔)を微振動パルス211による残留振動波形の振幅が極大領域B又は極小領域C(図中太線で示す領域B、C)となるように時間Sを設定する。このように、微振動パルス211による残留振動波形の振幅が極大領域B又は極小領域Cとなるタイミングで吐出パルス201が印加されるように微振動パルス211を印加する時間Sを設定することで、記録シートSの搬送速度などが原因して微振動パルス211を印加するタイミングにばらつきが生じたとしても、連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度と単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度との差が大きくなるのを抑制することができる。ちなみに、記録シートSの搬送速度は、約3%程度の誤差が生じることがある。このため、残留振動波形の極大領域B又は極小領域C以外の部分で吐出パルス201が印加されるように時間Sを調整すると、記録シートSの搬送速度のばらつきによって、微振動パルス211の残留振動波形の振幅に大きな差が生じ、連続吐出されたインク滴D1の飛翔速度と、単発吐出されたインク滴D2の飛翔速度との差が大きくなってしまう。つまり、図8(a)に示すように、残留振動波形220は、極大領域B及び極小領域C以外では、傾きが大きいため、印加するタイミングの微小な誤差によってその圧力状態が大きく変化してしまう。そのため、残留振動波形の傾きが大きい部分で吐出パルス201を印加すると、吐出パルス201によって吐出されるインク滴の飛翔速度に大きな影響を与えてしまう。本実施形態では、残留振動波形の傾きの小さな極大領域B及び極小領域Cで吐出パルス201を印加することで、印加するタイミングに微小な誤差が生じても略同じ影響を吐出パルス201に与えることができ、インク滴の飛翔速度の抑制を確実に行うことができる。なお、極大領域B及び極小領域Cは、それぞれ極大値及び極小値を含み、且つ極大値及び極小値を中心として搬送速度の誤差による印加タイミングの誤差を含む領域のことである。
なお、上述のように、例えば、連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度が、単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度よりも速い場合、単発吐出させる圧電アクチュエーター18には、微振動パルス211の残留振動波形の振幅が極大領域Bとなるタイミングで吐出パルス201が印加される。このときの単発吐出のインク滴D2の飛翔速度が、連続吐出させるインク滴D1の飛翔速度よりも速くなってしまった場合には、図8(b)に示すように、微振動パルス211として印加する電圧、すなわち、上述した図6(b)に示す第2電位Vcを図8(a)の残留振動波形220が発生する第2電位Vcに比べて小さくする。これにより、図8(a)に示す微振動パルス211による残留振動波形220に比べて、図8(b)に示す微振動パルス211による残留振動波形221の振幅は小さくなり、微振動パルス211の残留振動波形221の振幅が極大領域Bとなるタイミングで吐出パルス201を印加した際に吐出されるインク滴D2の飛翔速度は、図8(a)の残留振動波形220の振幅が極大領域Bとなるタイミングで吐出パルス201を印加した場合に比べて遅くなる。
逆に、上述のように微振動パルス211を印加して単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度が、連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度に達しない場合には、図8(a)に示す微振動パルス211よりも微振動パルス211の第2電位Vcをインク滴が吐出されない程度に高くすればよい。
同様に、例えば、連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度が、単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度よりも遅い場合、単発吐出させるノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18には、微振動パルス211の残留振動波形が極小領域Cとなるタイミングで吐出パルス201が印加される。このとき単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度が、連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度よりも遅くなりすぎてしまった場合には、図8(b)に示すように、微振動パルス211として印加する電圧、すなわち、上述した図6(b)に示す第2電位Vcを図8(a)に示す微振動パルス211による残留振動波形220に比べて小さくする。これにより、図8(a)に示す微振動パルス211の残留振動波形220に比べて、図8(b)に示す微振動パルス211による残留振動波形221の振幅は小さくなり、微振動パルス211の残留振動波形が極小領域Cとなるタイミングで吐出パルス201を印加した際に吐出されるインク滴D2の飛翔速度は、図8(a)の残留振動波形220の振幅が極小領域Cとなるタイミングで吐出パルス201を印加した場合に比べて速くなる。
このように単発吐出の吐出パルス201が圧電アクチュエーター18に供給される1周期前に微振動パルス211を供給するタイミング(時間S)は、圧電アクチュエーター18の特性や圧力発生室12等の流路形状などを含む記録ヘッド2の構成や、第1駆動信号200の1記録周期Tなどに基づいて連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度と、単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度との差が低減されるように適宜決定される。
具体的には、まず、微振動パルス211を印加するタイミング(時間S)を設定したい記録ヘッド2から連続吐出を行わせた際のインク滴の飛翔速度と、微振動パルス211を供給せずに単発吐出を行わせた際のインク滴の飛翔速度とを測定する。
そして、単発吐出させるノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18に吐出パルス201を供給する前に、微振動パルス211を供給する。このとき連続吐出させた際のインク滴D1の飛翔速度と、単発吐出させた際のインク滴D2の飛翔速度との差が低減されるように時間Sを調整する。なお、時間Sは、連続吐出されたインク滴の飛翔速度と単発吐出されたインク滴の飛翔速度とを比較し、圧力発生室12の共振周波数Tc(ヘルムホルツ振動周期Tc)に基づいて設定した後、実際に吐出されたインク滴の飛翔速度に基づいて選定すればよい。また、本実施形態では、図8に示すように、時間Sは、残留振動波形220、221の振幅が極大領域又は極小領域となるように設定されるため、さらに連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度と、単発吐出させたインク滴D2の飛翔速度との差が減少するように、第2電位Vcを微調整する。なお、本実施形態では、第2電位Vcのみを説明したが、例えば、第2ホールド要素P12の時間を調整するようにしても、残留振動波形の振幅は調整することができる。
このように設定された時間S及び第2電位Vcの情報は、例えば、プリンターコントローラー100のメモリーであるROM103に格納され、ROM103に格納された情報を制御部104が参照することで、制御部104は最適な時間S及び第2電位Vcで記録ヘッド2を駆動させる制御を行う。このような方法によって本実施形態のインクジェット式記録装置Iが製造される。なお、本実施形態では、ROM103には時間S及び第2電位Vcが格納される構成としたが、もちろんこれに限定されず、時間SのみがROM103に格納されてもよい。すなわち、時間Sのみを参照して第2駆動信号210(微振動パルス211)を供給するタイミングを設定しても、飛翔速度の差を低減することができる。
なお、本実施形態では、記録ヘッド2について特に言及していないが、例えば、同じ構成を有する記録ヘッド2を同じ製造工程によって複数製造した場合には、例えば、複数の記録ヘッド2から連続吐出させたインク滴の飛翔速度と、単発吐出させたインク滴の飛翔速度とをサンプリングして平均値を求め、平均値に基づいて時間Sや第2電位Vc等を選定してもよい。これにより、各記録ヘッド毎にインク滴の飛翔速度の測定や調整を行う必要がなく、製造工程を簡略化することができる。また、このように複数の記録ヘッドからサンプリングすることで選定した時間Sや第2電位Vcは、複数のメモリーに格納され、サンプリングした記録ヘッド2と同じ構成を有する記録ヘッド2が搭載されるインクジェット式記録ヘッド2にメモリーを搭載してもよい。なお、複数の記録ヘッド2が同じ構成を有し、同じ製造方法で製造された場合、複数の記録ヘッド2では共振周波数Tc(ヘルムホルツ振動周期Tc)が略同じとなる。したがって、実際に測定しない記録ヘッド2を、測定した記録ヘッド2によって選定した時間Sや第2電位Vcで駆動しても、測定した記録ヘッド2と略同じ効果を奏することができる。
このように、本実施形態では、インク滴を単発吐出させる前に微振動パルス211を印加してから吐出パルス201を印加することで、連続吐出させたインク滴D1の飛翔速度と、単発吐出させたインク滴の飛翔速度との差を低減することができる。これにより、着弾位置ずれによる印刷品質の低下を抑制することができる。また、微振動パルス211を供給するタイミングを、残留振動波形の振幅が極大領域B又は極小領域Cで吐出パルス201が供給されるようにすることで、記録ヘッド2と記録シートSとの相対速度(本実施形態では、搬送速度)にばらつきが生じても、連続吐出させたインク滴の飛翔速度と単発吐出させたインク滴の飛翔速度との差が増大するのを抑制することができる。
なお、本実施形態では、インク滴を単発吐出させるノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18(第2圧電アクチュエーター)に、吐出パルス201を供給する1記録周期T前に微振動パルス211を供給するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、他のノズル開口13からインク滴が吐出されている際に、インク滴を吐出しないノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18に上述の微振動パルス211を供給してもよい。これにより、インク滴を吐出しないノズル開口13近傍のインクが微振動パルス211によって振動して撹拌し、インクの乾燥による増粘や成分の沈降を抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述したものや、下記のものを組み合わせるようにしてもよい。
例えば、上述した実施形態1では、第1駆動信号200として1つの吐出パルス201が1記録周期Tで繰り返されるものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、第1駆動信号は、1記録周期T内にインク重量の異なるインク滴を吐出する複数の吐出パルスを含むものであってもよい。
また、上述した実施形態1では、第2駆動信号210として微振動パルス211が1記録周期Tで繰り返されるものを例示したが、特にこれに限定されず、印刷待機時等に印加する微振動駆動波形として、第2駆動信号210とは異なる微振動駆動信号を入力するようにしてもよく、また、インク滴の吐出途中(印刷途中)に休止しているノズル開口13に対応する圧電アクチュエーター18に、第2駆動信号210とは異なる微振動駆動信号を入力するようにしてもよい。もちろん、印刷待機時や印刷中に入力する微振動パルスとして、第2駆動信号210を用いてもよい。
さらに、上述した実施形態1では、圧力発生素子として、縦振動型の圧電アクチュエーター18を用いるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、第1電極と圧電体層と第2電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子を用いるようにしてもよい。さらに、圧力発生素子として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口27から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。
また、記録ヘッド2(ヘッドユニット1)内に駆動信号発生回路106を搭載するなど構成要素の位置を適宜変更してもよい。
また、上述した記録装置Iでは、記録ヘッド2(ヘッドユニット1)が固定されて、記録シートS等の記録メディアをノズル列方向に直交する方向に移動させて印刷を行う、いわゆるライン式のものとしたが、記録ヘッドがキャリッジに搭載されて主走査方向に移動する、いわゆるシリアル方式の記録装置にも本発明を適用することは勿論可能である。
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に適用できる。
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 2 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 11 ノズル開口、 12 圧力発生室、 18 圧電アクチュエーター、 100 プリンターコントローラー、 104 制御部、 120 プリントエンジン、 S 記録シート

Claims (4)

  1. 液体に圧力変化を生じさせる圧力発生素子と、
    所定の時間間隔を記憶するメモリーと、
    前記圧力発生素子に液滴を吐出させる駆動を行わせる第1駆動信号と、前記圧力発生素子に液滴を吐出させない駆動を行わせる第2駆動信号と、を少なくとも第2駆動信号を供給したのち前記メモリーの記憶する前記時間間隔を空けて前記第1駆動信号を供給する動作を実行する制御手段と、
    を具備する液体噴射装置の製造方法であって、
    連続して液滴を吐出させた際の液滴の飛翔速度を測定し、
    前記第2駆動信号を供給してから前記第1駆動信号を供給した際の液滴の飛翔速度が、連続して液滴を吐出させた際の液滴の飛翔速度に近づくように、前記第2駆動信号と前記第1駆動信号との時間を選定し、
    当該時間を前記時間間隔として前記メモリーに格納することを特徴とする液体噴射装置の製造方法。
  2. 前記圧力発生素子に前記第2駆動信号を供給するタイミングは、当該第2駆動信号により前記圧力発生素子を駆動した際の液体の残留振動波形の極小領域で前記第1駆動信号が供給されるタイミングであることを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置の製造方法
  3. 前記圧力発生素子に前記第2駆動信号を供給するタイミングは、当該第2駆動信号により前記圧力発生素子を駆動した際の液体の残留振動波形の極大領域で前記第1駆動信号が供給されるタイミングであることを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置の製造方法
  4. 前記制御手段は、液滴を吐出しない前記圧力発生素子には、前記第2駆動信号を連続して供給することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液体噴射装置の製造方法
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