この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1は栽培施設の一例を示すものであり、この栽培施設は、暖房機や加湿機等により温度及び湿度等の室内環境が管理される温室である栽培室1と、該栽培室1に隣接する出荷室2とを備えている。前記栽培室1内の中央には作業者又は作業移動車(作業台車)3あるいは防除作業車等が通過できるメイン通路4を設けており、このメイン通路4は、路面がコンクリートで構成されたコンクリート通路である。メイン通路4の両側の側方位置には、栽培ユニットとなる栽培ベッド5を多数列配置した作物を栽培するための栽培スペース6を構成している。尚、前記栽培ベッド5はロックウールで形成された栽培床部であり、出荷室2内の養液供給装置7から各栽培ベッド5へ養液が供給される構成となっている。また、メイン通路4の両端には開閉扉を備える栽培室1への出入り口8を設け、一方の出入り口8を介して隣接する出荷室2へ行き来できる構成となっている。尚、他方の出入り口8は、栽培施設の屋外から出入りできる構成となっている。そして、作業移動車をメイン通路4から各々の栽培ユニット(栽培ベッド5)の間のサブ通路9に移動させ、該サブ通路9で栽培ユニット(栽培ベッド5)に沿って作業移動車3を移動させながら栽培する植物に対する各種作業を行うことができる。サブ通路9は、各々の栽培ユニット(栽培ベッド5)の左右間で前後方向に形成される通路となる。尚、作業移動車3は、サブ通路9上に敷設された温室全体を暖房する左右の暖房用管37を走行用のレールとして走行する。
前記出荷室2内には、前述した養液供給装置7と、収穫されたトマト等の収穫物(果実)を重量や大きさあるいは等級別に選別する選別装置10とを備えている。尚、該選別装置10が、栽培された作物を出荷前に処理する前処理装置となる。選別装置10は、収穫物を搬送して選別する選別コンベア11と、該選別コンベア11の両側の側方に設けられた各階級毎の収穫物収容部12とを備えて構成され、選別コンベア11から各収穫物収容部12へ収穫物を供給して各階級に選別する構成となっている。尚、前記選別コンベア11は、平面視でL字状に屈曲した構成となっている。また、各々の収穫物収容部12には収穫物を収容する収容箱を設けて、この収容箱ごとに収穫物を出荷すればよい。
栽培ユニット(栽培ベッド5)の上側には、該栽培条に沿う誘引ワイヤ80を各栽培ユニットごとに左右に2本設けている。そして、栽培ユニットで栽培される植物の複数の栽培株は、左右の誘引ワイヤ80により交互に振り分けて誘引される構成となっており、誘引ワイヤ80から誘引フック93を介して垂れ下がる誘引紐81により誘引される。尚、誘引フック93は、誘引ワイヤ80に吊り下げられる構成であり、巻き付けた誘引紐81を適宜繰り出して下方に垂れ下がらせる周知の構成となっている。また、植物が所定の高さ(誘引フック80の近く)まで成長した以降は、誘引フック93から誘引紐81を繰り出しながら、順次誘引紐81を前記複数の栽培株の配列方向(栽培ベッド5の長手方向)にずらせて植物の高さを低下させ、植物を継続的に栽培する。従って、例えばトマトを栽培する場合、トマトの茎が栽培ベッド5から誘引紐81を伝って伸長することになる。よって、栽培ユニット(栽培ベッド5)において、2条の栽培条すなわち左右一対の栽培条が形成されることになる。尚、各栽培植物(栽培株)が効率良く受光するためには各栽培植物(栽培株)の間隔が栽培室1内全体にわたって略同等となるのが理想であり、そのために、誘引ワイヤ80はサブ通路9の上方に位置しており、栽培植物がサブ通路9上にはみ出るようにしている。
また、誘引ワイヤ80よりも下方位置で植物の上部の上方及び側方を覆う被覆部材(被覆フィルム)103を設けている。栽培室1の天井部から下方の振り分け栽培される左右の植物の間まで延びる被覆部材支持フレーム104を設け、該被覆部材支持フレーム104の左右に左右各々の被覆部材103を支持した構成となっている。被覆部材103は、植物の上方に位置する上面部105と、該上面部105から下方に垂れ下がり植物の左右側方に位置する側面部106とを備えている。また、上面部105には誘引紐81を上下方向に通過させる通過部となる切り溝107を設けており、切り溝107は、誘引ワイヤ80に沿って誘引紐81を移動可能とするべく誘引ワイヤ80に沿って設けられている。また、被覆部材103の被覆部材支持フレーム104とは反対側には、栽培室1の天井部から被覆部材103の側面部106の下端よりも下側にまで垂れ下がるシート108を設けている。従って、被覆部材103と栽培ベッド5の左右に設けたシート108とにより囲まれる空間部109には植物の生長点が位置するため、前記空間部109により生長点を局所的に冷房又は暖房することができる。尚、空間部109内には、該空間部109内を局所的に冷房又は暖房する局所冷房装置又は局所暖房装置を設けた周知の構成となっている。尚、上述では被覆部材103の切り溝107に誘引紐81を通す構成について説明したが、誘引紐81の左右に別々の被覆部材を設け、左右の被覆部材の間を誘引紐81を上下方向に通過させる通過部としてもよい。このときは、電動シリンダ等のアクチュエータにより左右の被覆部材の各々の左右幅を調節できる構成とし、必要に応じて被覆部材を折りたたむ構成とすればよい。
サブ通路9上において、作業移動車3は作業者が作業の進捗状況に応じて走行操作を行って適宜移動させる構成であるが、防除作業車は自動走行しながら自動的に防除する構成である。防除作業車は、サブ通路9を往復走行することになるが、防除する栽培条の防除の必要量に応じて、往復走行における片道走行時にのみ防除作業を行う片道防除状態と、往復走行で防除作業を行う往復防除状態と、同じサブ通路9を2回往復走行させてその2回の往復走行で防除作業を行う2往復防除状態とに切替できる構成となっている。これにより、必要以上の防除による栽培植物への悪影響を防止すると共に、病害虫の発生度合の高い栽培条において防除効果の向上を図ることができる。
作業移動車(作業台車)3は、前後左右計4個の走行車輪106と、作業者が搭乗する昇降可能な昇降台107と、走行車輪106及び昇降台107を駆動する駆動源となる電動モータを備え、作業者が昇降台107に搭乗し、走行車輪106により走行させて所望の位置に移動し、昇降台107を所望の高さに昇降させながら、栽培植物の葉欠き、芽欠き及び収穫等の作業を行う周知の構成となっている。走行車輪106は、機体の左右方向外側に配置される大径部と機体の左右方向内側に配置される小径部が一体に形成され、大径部と小径部との段差で走行用のレールとなる暖房用管37に案内される。昇降台107上の発進操作具となるフットスイッチ108を足で踏み込んで操作することにより、前記電動モータを駆動して発進し走行する構成となっている。そして、フットスイッチ108を操作した累計回数をカウントして作業移動車3に備える作業移動車制御部(制御コントローラ)109に記憶し、前記累計回数が設定回数を超えたら作業移動車制御部109からの出力により警告手段となる警告ランプ110を点灯させる。これにより、発進で走行車輪106への伝動系(特に走行車輪106の車軸)に強い負荷がかかった回数に基づいて伝動系(走行車輪106の車軸)の疲労に伴う点検を適切な時期に促すことができ、伝動部材(特に走行車輪106の車軸)について適切な時期に交換等のメンテナンスが行える。
また、作業移動車3又は防除作業車には、サブ通路9から栽培植物を撮影するカメラ94を設けることができる。カメラ94により、作業移動車3又は防除作業車を走行させながら、各々の栽培株で成熟した果実を自動的に検出する。カメラ94が撮影した画像データが無線により制御部(コントローラ)26に送信され、制御部(コントローラ)26内の果実判別装置により成熟した果実を検出する。例えば、果実がトマトである場合、果実が成熟すれば赤くなるので、果実判別装置がカメラ94により撮影した画像を処理して色彩判別することにより成熟した果実を検出する構成となっている。尚、色彩判別以外に、形状や大きさ等により成熟した果実を判別する構成としてもよい。また、画像データと共に作業移動車3又は防除作業車の位置情報が無線により制御部(コントローラ)26に送信され、栽培室1内のどの栽培株の画像であるかを認識する構成となっている。位置情報は、作業移動車3又は防除作業車に設けたGPS発信機により得ることができる。これにより、各々の栽培株ごとの成熟果実の個数をカウントする。そして、制御部26は、栽培株ごとの成熟果実の個数から各々の栽培条ごとの成熟果実の総数及び栽培室1内全体の成熟果実の総数を演算し、これらの成熟果実の総数から成熟果実を収穫する作業者を設定する。この作業者の設定について詳細に説明すると、複数の作業者の各々の作業能力(作業速度、作業能率:例えば単位時間当たりの成熟果実の収穫個数等)を予め制御部26に入力しておき、栽培室1内全体の成熟果実の総数から前記作業能力に応じて各作業者の仮収穫個数を演算する。そして、演算した仮収穫個数に基づいて、栽培室1の端の栽培条から順に作業者を割り振り、各作業者の作業領域を設定する。このとき、同一の栽培条に複数の作業者の作業領域がまたがらないよう、栽培条ごとに作業者を設定する。
また、作業移動車3に放射能測定器を設ければ、例えば無人で作業移動車3を走行させながら、栽培室1内の各所での放射能による汚染状態(放射線濃度)を検出することができる。また、通常の作業等で使用頻度の高い作業移動車3により、前記汚染状態を即座に認識することができ、作物の出荷停止や作業者による作業の中止等の処置を即座に行え、放射能による被害を抑えることができる。
尚、作業移動車3に、自動で葉欠き作業を行う自動葉欠き作業機や、自動で果実の収穫作業を行う自動収穫作業機等の作業機を装着して、葉欠き作業や収穫作業等の作業が行える構成としてもよい。尚、作業移動車3に搭乗する作業者が植物の葉や果実の位置を視認して前記作業機を操作して作業を行う構成とすることができるが、カメラ94により植物の葉や果実を認識して、作業機が葉欠き作業や収穫作業を行う構成としてもよい。これにより、作業移動車3に装着する作業機を各種に切り替えることで、作業移動車3を共用して栽培に関する各種の作業を行うことが可能となる。また、作業能率を考慮して、作業機装着時(作業時)には作業移動車3の走行速度を通常の管理作業時よりも高速に設定できる構成とすればよい。
また、作業移動車3に、植物の成育状態を診断する植物診断装置と、植物へ光を照射する補光装置や植物へ向けて温風を供給する補助暖房装置等の栽培補助装置とを設けることもできる。そして、例えば、作業者による栽培管理作業を行わない夜間に、作業移動車3を自動的に走行させながら、植物診断装置の診断による植物の栽培むら(成育状態が悪い箇所)の発見に対応して、栽培補助装置を自動的に作動させて栽培の補助を行うことができる。このとき、夜間の長時間の運転に対応するべく、施設内の電源から作業移動車3へ電力を供給する電気配線を接続することが望ましい。以上により、作業移動車3を、昼間の栽培管理作業用と夜間の植物診断及び栽培補助作業用とで兼用できるので、栽培管理作業用とは格別に植物診断及び栽培補助作業用の作業移動車を準備するのと比較して、施設内での作業移動車3の台数を低減することができ、コストダウンが図れる。
植物診断装置の一例として、カメラ94により、植物の側方から撮影される該植物の大小を計測する植物計測装置を構成している。この植物計測装置による植物の大小の計測方法としては、撮影画像の色の判別から撮影画像内における植物部分に基づき計測する方法がある。一例としては、クロロフィル蛍光画像により植物部分を計測する方法がある。また、GPS装置等により、栽培室1内の作業移動車3の位置を認識する位置認識装置を設けている。そして、夜間に作業移動車3を自動走行させながら、栽培室1内の予め設定した複数の撮影位置でカメラ94により撮影して植物の大小の計測データを取得する。一晩に全ての撮影位置において撮影し、各撮影位置での計測データを毎日取得し記録することになる。尚、カメラ94による撮影領域は、予め設定した一定の高さ領域であり、栽培株の配列方向(栽培ベッド5の長手方向)における幅を栽培株の株間と同一(又は略同一としてもよい。)に設定している。
そして、制御部26により、各撮影位置において、前日の計測データ値よりも当日の計測データ値が増加したとき又は同一であるときは、この計測データ値の増加量に基づいて植物の成長量を判定する。一方、前日の計測データ値よりも当日の計測データ値が減少したときは、減少した計測データ値の減少量に基づいて植物の成長量を判定せず、前記当日の計測データ値よりも翌日の計測データ値が増加したとき又は同一であるときは、この計測データ値の増加量に基づいて植物の成長量を判定する。従って、制御部26内には、植物の成長量を判定する制御を実行する成長量判定装置を設けている。
つまり、植物の成長に伴って誘引紐を引き下げて植物の位置を低下させることにより、計測領域内の植物の量が少なくなり、前日の計測データ値よりも当日の計測データ値が減少したときは、当日は植物の成長量を判定せずに前記計測データ値を基準値として更新し、この基準値に基づいて翌日以降に植物の成長量を判定する構成としている。また、誘引ワイヤ80近くまで複数の栽培株における各々の植物が生長するが、複数の植物の間隔が株間と同一になるようにし、採光性や通気性を所望に維持して良好な栽培を行うようにするべく、誘引紐を引き下げると共に栽培株の配列方向(栽培ベッド5の長手方向)に移動させることにより、配列される栽培株毎の複数の植物が同じ方向(栽培ベッド5の長手方向)に略同じ距離移動することになるので、計測領域内に少なくとも一つの植物が入り、一つの植物が部分的に計測領域内に入る状態でも、それに対応して隣接する植物が部分的に計測領域内に入り、結果的に計測領域内に一つ分の植物が入る。従って、誘引紐の引き下げに伴う植物の栽培株の配列方向(栽培ベッド5の長手方向)の移動に拘らず、一つの栽培株分の植物について計測することができる。
そして、例えば、制御部26により、植物の成長量が所望の成長量よりも高いときは、養液供給装置7により供給する養液量を少なくしたり、養液供給装置7により供給する養液の肥料濃度を高くしたり、栽培室1内の湿度を低くしたりして、水ストレスを与えることができる。また、後述する温度調節装置101や温室全体を暖房する暖房用管37により植物付近の温度や栽培室1全体の温度を低めにして、植物の成長を抑えることができる。このように、植物の徒長を抑えて所望の成長量に制御すると共に、栽培果実の糖度を高めることができる。一方、植物の成長量が所望の成長量よりも低いときは、養液供給装置7により供給する養液量を多くしたり、養液供給装置7により供給する養液の肥料濃度を高い設定濃度から低下させたりして、水ストレスを低減することができる。また、後述する温度調節装置101や温室全体を暖房する暖房用管37により植物付近の温度や栽培室1全体の温度を高めにして、植物の成長を促すことができる。このように、所望の成長量に制御すると共に、栽培果実の収穫量の増大を図ることができる。従って、判定した植物の成長量を、養液供給制御や環境制御(温度制御、湿度制御等)に適用することができる。尚、誘引紐を引き下げたときは植物の成長量を判定しないことになるが、誘引紐を引き下げる作業は一般的に1週間に1回程度であるので、栽培制御においてさほど大きな影響を与えないと考えられる。
カメラ94により植物の葉の裏の気孔を撮影し、制御部26により気孔の大きさを判断する構成とすることができる。一方、栽培室1内へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段となる二酸化炭素供給装置113を設け、制御部26により、カメラからの撮影画像が気孔が大きいと判断されるときは、栽培室1内の二酸化炭素の濃度に拘らず後述する二酸化炭素供給装置113から二酸化炭素を吐出する。これにより、気孔が大きく開いて光合成が活発なときに、的確に二酸化炭素を供給でき、従来の二酸化炭素濃度に基づく二酸化炭素供給制御と比較して二酸化炭素の無駄な供給を低減できる。
また、栽培室1の天井部には、下方の植物の葉の温度を測定する放射温度計からなる葉温測定手段となる葉温測定装置114と、下方の指標体となる水分を含ませたガーゼ115の温度を測定する放射温度計からなる指標体温度測定手段となる指標体温度測定装置116と、下方の高温指標体となる緑色板117の温度を測定する放射温度計からなる高温指標体温度測定手段となる高温指標体温度測定装置118とを設けている。尚、緑色板117は、日射光を受けることにより高温状態で且つ気孔も閉じている植物の葉温と同等の温度となり得る素材で形成されている。また、栽培室1内には、栽培室1内の温度(室温)を測定する室温センサと、栽培室1内を加湿する加湿装置119とを設けている。尚、加湿装置119として、細霧を噴出させる細霧冷房装置を使用することができる。通常は、葉温測定装置114により測定される葉温は、指標体温度測定装置116により測定される指標体温度(ガーゼ115の温度)よりも高く、高温指標体温度測定装置118により測定される高温指標体温度(緑色板117の温度)よりも低くなるが、葉の気孔が開いて葉の蒸散が活発であると低下して指標体温度に近づき、逆に植物が保有する水分が少なく葉の蒸散を抑えるべく葉の気孔が閉じていると上昇して高温指標体温度に近づく。従って、葉温により、葉の気孔の状態を判断することができる。そして、制御部26により、葉温が高く、葉温と指標体温度と差が大きければ葉の気孔が閉じ傾向にあると判断して、二酸化炭素供給装置113による二酸化炭素の供給を停止するか又は供給量を抑制する制御を行う。逆に、葉温が低く、葉温と指標体温度と差が小さければ葉の気孔が開き傾向にあると判断して、二酸化炭素供給装置113による二酸化炭素の供給を開始するか又は供給量を増加する制御を行う。これにより、気孔が大きく開いて光合成が活発なときに、的確に二酸化炭素を供給でき、従来の二酸化炭素濃度に基づく二酸化炭素供給制御と比較して二酸化炭素の無駄な供給を低減できる。
次に説明する別の制御例にて制御してもよい。すなわち、葉温が高く、葉温と高温指標体温度と差が小さければ葉の気孔が閉じ傾向にあると判断し、且つ室温センサで測定される室温と指標体温度(ガーゼ115の温度)との差が所定以上あれば、気孔を開かせるべく加湿装置119を作動させ、二酸化炭素供給装置113による二酸化炭素の供給は維持する。葉温と高温指標体温度と差が小さく、且つ室温と指標体温度との差が所定未満で極めて小さい状態であれば、栽培室1内の湿度は高い状態であるので加湿装置119を停止し、また気孔は閉じ傾向にあると判断されるので、二酸化炭素の供給を停止するか又は供給量を抑制する制御を行う。逆に、葉温が低く、葉温と高温指標体温度と差が大きければ葉の気孔が開き傾向にあると判断して、二酸化炭素供給装置113による二酸化炭素の供給を開始するか又は供給量を増加する制御を行う。このとき、室温と指標体温度との差に基づき、加湿装置119を制御してもよい。
尚、上述では葉温測定装置114、指標体温度測定装置116及び高温指標体温度測定装置118を放射温度計で構成した例について説明したが、葉温測定装置114、指標体温度測定装置116及び高温指標体温度測定装置118を、熱量を計測可能な共通の熱画像撮影カメラ120により構成することもできる。また、放射温度計又は熱画像撮影カメラ120を作業移動車3に搭載し、作業移動車3を移動させながら栽培室1内の各所の植物について計測する構成としてもよい。また、測定される葉温に基づいて植物の水ストレスの度合を診断してもよい。つまり、上述の如く気孔が閉じ傾向にある状況であれば、水ストレスが高いと判断できる。このとき、指標体温度又は高温指標体温度に基づき、水ストレスの度合を正確に診断することができる。
また、栽培果実の温度を検出する果実温度センサを設け、栽培室1内の室温に基づき、果実が結露する温度まで低下しているときは、制御部26により栽培室1内の暖房を実行する結露防止制御を行う。これにより、栽培室1内の相対湿度を低下させて、果実表面に結露が発生することにより果実の品質が劣化することを防止する。特に、冬期の早朝に日の出と共に栽培室1内の室温が急激に上昇するようなとき、果実表面の結露を的確に防止できる。尚、上述の暖房を実行する制御に代えて、天窓を開いたり換気扇を運転したりして栽培室1内の換気を行う結露防止制御により、果実表面の結露を防止する構成としてもよい。また、室温センサにより測定される室温に代えて、葉温測定装置114により測定される葉温に基づき、室温を推測して結露防止制御を行ってもよく、指標体温度測定装置116や湿度センサ等の測定による栽培室1内の湿度に基づいて結露防止制御を行うか又は結露防止制御を補正してもよい。
更に、栽培室1内の室温を低下させる制御を行うとき、制御部26により、植物の樹勢を高める必要があるときには徐々に室温を低下させることにより、葉温と果実温度との差が小さくなるので養分を葉に転流させることができる。逆に、急激に室温を低下させることにより、葉温よりも果実温度が高くなり葉温と果実温度との差が大きくなるので、養分を果実に転流させることができる。従って、室温をリアルタイムで測定しながら、所望の低下速度とするべく室温を低下させる制御を行うのである。尚、栽培室1内の室温を低下させる手段としては、天窓の開放、換気扇の運転又は冷房装置の運転等がある。また、室温の測定に代えて、葉温と果実温度との測定に基づき、葉温と果実温度との差が所望となるよう制御してもよい。また、これらの転流を目的とする制御は、室温が低下しやすい夜間に意図的に行うことができる。また、暖房装置において温風を吹き出す温風吐出口や温水を流して周囲を加温する温水管等の加温部を移動可能に設け、通常は加温部を植物の生長点に近付けて該生長点を暖房するが、果実に転流させるときは加温部を果実の近くに移動させて果実温度の上昇を図ることができる。尚、前記加温部を果実の近くに移動させることにより、果実温度を上昇させて果実表面の結露を防止する結露防止制御を行うこともできる。
また、栽培室1内には、植物の茎径を計測する茎径計測装置121を設けている。茎径計測装置121は、栽培ベッド5の長手方向に向けて設けた栽培室1内の天井部の自走用レールに沿って自走する構成であり、基部フレーム122から下方に延びる一対のセンサ取付フレーム123と、一方のセンサ取付フレーム123の下端に設けられた投光器124と、他方のセンサ取付フレーム123の下端に設けられた受光器125とを備えている。投光器124は、受光器125へ向けて水平方向又は略水平方向にレーザ光を照射する。受光器125は、投光器124との間に障害物がないときは前記レーザ光を受光するが、投光器124との間に障害物があると該障害物によりレーザ光が遮断されるので該レーザ光を受光しない。これにより、投光器124と受光器125との間にある植物の茎を検出する構成となっている。従って、茎径計測装置121を自走させながら植物の茎でレーザ光が遮断されることによる受光器125が受光しない時間間隔を測定し、茎径計測装置121の自走速度(例えば1m/s)と受光器125が受光しない時間間隔(例えば0.01秒)とから植物の茎径(例えば10mm)を演算する構成となっている。これにより、各栽培株の植物の茎径を計測できるので、各栽培株の植物の茎径のばらつきを判定することもできる。また、受光器125が受光しない回数に基づいて植物の数を認識できるので、植物の数と茎径計測装置121の自走速度と受光器125が受光しない時間間隔の総計とから、複数の植物の茎径の平均値を演算することもできる。茎径計測装置121は、自走しながら植物の茎径を計測するので、作業移動車3を各栽培株の植物ごとに走行停止させてカメラ94による植物の撮影画像に基づいて茎径を計測することと比較して、茎径を能率良く計測できる。尚、基部フレーム122と一対のセンサ取付フレーム123からなる茎径計測装置121のフレーム構造は、下側へ凹状となっており、茎径計測装置121の自走で植物、誘引ワイヤ80、誘引紐81及び誘引フック93に干渉しない構造となっている。尚、植物の葉を検出しないように、一対のセンサ取付フレーム123の上下長さを調節可能な構成にする等して、投光器124及び受光器125の高さを調節できる構成とすることが望ましい。また、誤って植物の葉を計測したときは、その計測値から明らかに判断できるから、当該計測値を無視するようにすればよい。
ところで、養液供給装置7は、養液を貯留する第一タンク41並びに第二タンク42、硝酸を貯留する酸タンク43及び原水を貯留する原水タンク44を備え、これらのタンク41,42,43,44内に貯留する液が各主開閉バルブ45,46,47,48を介して混合装置49に供給され、該混合装置49で混合される構成となっている。尚、前記第一タンク41と第二タンク42とは、互いに肥料成分の異なる養液を貯留している。第一タンク41、第二タンク42並びに酸タンク43から混合装置49への供給経路(供給パイプ50,51,52)において、前記各主開閉バルブ45,46,47の供給上手側には、各々混合前のフィルター53,54,55を設けている。更に、該混合前フィルター53,54,55の供給上手側には、各々副開閉バルブ56,57,58を設けている。混合装置49で混合された養液は、養液ポンプ59及び混合後のフィルター60を介して給液パイプ61により栽培室1内の各栽培ベッド5へ供給される。
そして、酸タンク43からの供給経路(供給パイプ52)において、副開閉バルブ58及び混合前フィルター55より供給下手側で主開閉バルブ47より供給上手側には、分岐パイプ62(分岐経路)を接続している。この分岐パイプ62(分岐経路)は、第一タンク41及び第二タンク42からの供給経路(供給パイプ50,51)における副開閉バルブ56,57及び混合前フィルター53,54より供給下手側で主開閉バルブ45,46より供給上手側の各々の位置に接続され、酸タンク43内の硝酸を第一タンク41及び第二タンク42からの供給経路(供給パイプ50,51)へ供給可能に構成している。尚、前記分岐パイプ62の中途部には、電磁式の分岐用の開閉バルブ63を設けている。第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51において、分岐パイプ62の接続部より供給下手側で主開閉バルブ45,46より供給上手側には、供給パイプ50,51内の流量を検出する流量センサ64,65を各々設けている。また、養液ポンプ59及び混合後のフィルター60より供給下手側には栽培室1内の各栽培ベッド5すなわち給液パイプ61へ液を供給せずに排出するための排出パイプ66を接続しており、該排出パイプ66に設けた電磁式の排出用の開閉バルブ67により、養液ポンプ59から吐出する液を給液パイプ61へ供給する給液状態と排出パイプ66を介して外部に排出する排出状態に切替可能に構成している。
従って、栽培室1内の各栽培ベッド5へ養液を供給する通常状態では、分岐用開閉バルブ63及び排出用開閉バルブ67を閉じ、混合装置49で混合された養液を給液パイプ61へ供給する。この養液供給時に、各々の流量センサ64,65により第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51内の流量を逐次検出する。そして、養液供給時の供給パイプ50,51内の流量が所定値以下になった場合は、栽培室1内の各栽培ベッド5への養液供給を停止しているときに、制御装置により自動的に分岐用開閉バルブ63及び排出用開閉バルブ67を開いて養液ポンプ59を駆動し、酸タンク43内の硝酸を分岐パイプ62を介して第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51へ供給し、該硝酸を排出パイプ66を介して外部に排出する。このとき、第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51において各々の副開閉バルブ56,57を自動的に閉じ、前記供給パイプ50,51に供給される硝酸が該供給パイプ50,51を逆流して第一タンク41及び第二タンク42へ供給されないようにしている。よって、第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51において、養液中の不溶解物や不純物が詰まるおそれがあるが、流量センサ64,65により供給パイプ50,51内の詰まりを検出すると自動的に該供給パイプ50,51内へ洗浄液となる硝酸を注入して該供給パイプ50,51を自動洗浄することができ、従来のように供給パイプを分解して該パイプ内を洗浄するようなメンテナンスの手間が省けて作業能率が向上する。また、洗浄液(硝酸)は、排出パイプ66を介して外部に排出され、栽培ベッド5に直接供給されないので、上記の洗浄により植物の成育を阻害することがない。
また、養液ポンプ59の供給下手側で混合後のフィルター60の供給上手側には、養液ポンプ59から吐出される養液を分岐して養液ポンプ59の供給上手側で混合装置49の供給下手側に戻す循環経路(循環パイプ68)を接続している。この循環経路(循環パイプ68)には電磁式の戻り用の開閉バルブ69を設けており、混合後フィルター60の供給下手側に設けた圧力センサ70により給液パイプ61への養液供給における圧力変動が大きいことを検出すると、制御装置により自動的に前記戻り用の開閉バルブ69を開いて養液を循環経路(循環パイプ68)を介して循環させ、給液パイプ61内の圧力を安定させる構成となっている。これにより、養液ポンプ59起動時やエアがみ等によるウォーターハンマー現象を防止すると共に、養液ポンプ59供給下手側の配管(給液パイプ61)の破損を防止できる。また、前記循環経路(循環パイプ68)には循環される養液の温度を検出する温度センサ71を設けており、該温度センサ71により養液の温度が所定値以上に上昇したことを検出すると、制御装置により強制的に養液ポンプ59を停止させて循環パイプ68で養液を循環させないようにして養液の温度低下を促すように構成している。これにより、養液の熱で配管内のバルブやパッキン等の構造物が溶解して破損するようなことを防止できる。従来、給液パイプ内の養液の圧力調整のために、栽培室内の各栽培ベッドへ養液を供給する給液パイプを介する長い循環経路を設けて該循環経路の養液の戻り経路部分に圧力調整バルブを設けたものがあるが、循環により養液の温度が上昇すると、養液の熱で配管内のバルブやパッキン等の構造物が溶解して破損したり養液の熱で栽培作物に悪影響を与えたりするおそれがある。
また、栽培ベッド5からの排液は、原水タンク44に回収され、栽培ベッド5への給液に再利用される。栽培室1内には原水タンク44を通る通風管27を設け、ファン28の駆動により通風管27内に通風する。これにより、栽培室1内の空気が積極的に温度の低い原水タンク44に当たって結露し、栽培室1内の空気を簡易的に除湿できると共に、後述する暖房設備により暖房された栽培室1内の空気で原水タンク44内の原水及び養液を昇温させることができる。尚、結露した水は、通風管27に設けた排水口29を介して栽培室1外へ排出される。よって、天窓制御における天窓が開く頻度又は天窓の開度を低く抑えることができるので、栽培室1内の室温低下を抑えることができ、暖房設備の暖房の負荷を抑えて省エネルギー化が図れる。
原水タンク44には、養液の肥料濃度を検出するECセンサ86と、養液のペーハー値を検出するPHセンサ87とを備えている。このECセンサ86及びPHセンサ87の検出値に基づき、混合装置49で混合される養液が所望の肥料濃度及びペーハー値となるよう、制御装置のメインの養液供給コントローラ88により各主開閉バルブ45,46,47,48を制御する構成となっている。しかしながら、メインの養液供給コントローラ88が故障すると、各主開閉バルブ45,46,47,48を作動させることができなくなり、養液を各栽培ベッド5へ供給できなくなり、栽培に悪影響を与えることになってしまう。そこで、制御装置には予備制御盤89を設けており、メインの養液供給コントローラ88が故障したときには、各主開閉バルブ45,46,47,48の制御を前記予備制御盤89により行える構成とし、該予備制御盤89の制御に切り替えると、各主開閉バルブ45,46,47,48を予め設定した時間のみ開いて養液を作成し、養液を各栽培ベッド5へ簡易的に供給できる。これにより、供給する養液の肥料濃度やペーハー値の制御精度は低下するが、栽培ベッド5へ養液が供給できなくなるのを一時的に回避でき、植物が枯れるような大きな被害を回避することができる。予備制御盤89により養液供給制御を行っている間にメインの養液供給コントローラ88を修理し、メインの養液供給コントローラ88が正常に復帰すれば、メインの養液供給コントローラ88による養液供給制御に切り替えればよい。尚、予備制御盤89により養液供給制御において、予め設定される各主開閉バルブ45,46,47,48の開時間のパターンを複数備え、ECセンサ及びPHセンサの検出値に応じて前記パターンを切り替える構成としてもよい。
また、栽培ベッド5からの排液の肥料成分(例えば、窒素成分、カリ成分、カルシウム成分、リン酸成分等)を分析する成分分析計を設け、制御装置により成分分析計で測定した排液の肥料成分と栽培用に予め設定した設定肥料成分を比較して、養液タンクである第一タンク41及び第二タンク42から排液で不足する肥料成分が多く供給され、排液で余剰する肥料成分が少なく供給されるべく、主開閉バルブ45,46の開く時間又は開度を制御し、排液に養液タンクから養液を混合した新たな養液を作成する。これにより、排液を使用するにも拘らず、所望の肥料成分で高精度に安定させた養液を栽培ベッド5へ供給できる。尚、排液で不足する肥料成分は植物が多く吸収していることから植物が多量に要求していると判断し、排液で余剰する肥料成分は植物の吸収量が少ないことから植物の要求度が低いと判断し、植物の要求に合わせて設定肥料成分を補正してもよい。これにより、更に栽培状況に応じた高精度な養液供給制御が行えると共に、肥料の無駄を防止でき、肥料濃度の高い排液を最終的に廃棄することによる環境負荷を低減できる。
養液供給コントローラ88による養液供給制御における養液供給は、タイマにより所定時刻に養液を供給する構成となっている。また、栽培ベッド5からの排液の受ける排液受け容器110を設け、排液受け容器110内の排液の液位を検出するフロート式の液位センサ111を設け、排液受け容器110からの排液の排出口には電磁式の排出弁112を設けている。尚、排出弁112は、通常は開状態となっており、栽培ベッド5からの排液を排出する。そして、タイマによる養液供給時とこの養液供給終了から所定時間の間には養液供給コントローラ88により排出弁112を閉状態にし、栽培ベッド5からの排液を排液受け容器110に溜め、液位センサ111により排液が所定の液位に満たないことを検出すると、排出弁112を開状態に戻す。一方、液位センサ111により排液が所定の液位に到達したことを検出すると、排出弁112を開状態に戻して排液を排出すると共に予め設定した特別養液供給時間だけ特別に養液供給を行う。これにより、栽培ベッド5上の植物に養液の水分や養分が十分に供給されていないと判断されるとき、特別に養液供給を行って水分や養分を補充することができる。尚、通常の良好な栽培の下では、供給した養液の約30%が排液となるので、液位センサ111により検出する液位を、タイマによる養液供給の1回当たりの養液供給量の約30%に相当する液位に設定している。尚、1回当たりの養液供給量を変更するとき、これに基づいて養液供給量の所定の割合(約30%)に相当する液位とするべく前記所定の液位を変更する構成としてもよい。また、前記特別養液供給時間は、作業者が任意に変更できる構成としてもよい。
また、上述のタイマによる養液供給に代えて、養液供給を開始してから栽培ベッド5が排液を排出するまでの時間に基づき、次回の養液供給開始時刻を設定する構成とすることもできる。上述の構成と異なる構成についてのみ説明すると、養液供給コントローラ88により、養液供給開始時に排出弁112を閉状態にし、養液供給開始時刻と栽培ベッド5からの排液が排液受け容器110に排出されたことを液位センサ111により検出した時刻とのタイムラグに基づき、このタイムラグが短ければ次回の養液供給開始時刻を遅めに設定し、前記タイムラグが長ければ次回の養液供給開始時刻を早めに設定する。例えば、当回の養液供給開始時刻を8時で次回の養液供給開始時刻を9時に設定しているとき、前記タイムラグが5分と短いときは次回の養液供給開始時刻を30分遅らせて9時30分に補正し、前記タイムラグが30分と長いときは次回の養液供給開始時刻を30分早めて8時30分に補正する。これにより、栽培ベッド5内の水分量を所望に維持することができる。
ところで、給液パイプ61から供給される養液は、栽培ベッド5の直ぐ下方で該栽培ベッド5に沿う主パイプ91へ供給される。主パイプ91は、栽培室1内の栽培ベッド5毎に設けられ、栽培ベッド5の一端部から栽培ベッド5の長手方向に延びる往経路91aと、往経路91aから栽培ベッド5の他端部で折り返して前記一端部へ戻る戻り経路91bとを備えている。従って、給液パイプ61から主パイプ91の往経路91aの始端に養液が供給される構成となっている。主パイプ91の戻り経路91bから分岐する複数の支流パイプ92を、戻り経路91bの方向(栽培ベッド5の長手方向)の所定間隔おきに設けている。複数の支流パイプ92の先端を栽培ベッド5の上面の栽培株の近くに配置し、各々の支流パイプ92の先端には給液ノズル95を設けている。従って、給液ノズル95から吐出される養液が栽培株近くの栽培ベッド5(栽培床部)へ上側から供給される。尚、給液ノズル95は、吐出口が細く養液の吐出において抵抗を生じさせ、主パイプ91内の養液の圧力が所定値以上になると養液を吐出し、主パイプ91内の養液の圧力が所定値未満であれば養液を吐出させない構成となっている。
主パイプ91の戻り経路91bの終端には回収流路となる回収パイプ96を連結している。回収パイプ96は、主パイプ91から原水タンク44へ養液を供給して回収する構成となっている。回収パイプ96の中途部には開閉弁となる回収弁97を設けており、回収弁97を開くことにより主パイプ91からの養液を原水タンク44に回収する。通常の養液供給時には、回収弁97を閉じることにより、主パイプ91内の養液の圧力が所定値以上に上昇させ、給液ノズル95から養液を吐出させる。
また、液体を貯留するタンクとなる原水タンク44に接続される温度調節用循環流路98と、該温度調節用循環流路98に設けたヒートポンプで構成される加温装置99及び冷却装置100とを備えて構成される温度調節装置101を設けており、温度調節装置101により温度調節用循環流路98で原水を循環させながら原水タンク44内の原水を加温又は冷却して温度調節する構成となっている。尚、温度調節用循環流路98上には、該温度調節用循環流路98で原水を循環させるべく循環用ポンプ102を設けている。従って、温度調節装置101で温度調節された原水を給液パイプ61を介して主パイプ91へ供給することにより、栽培ベッド5を冷房又は暖房する。主パイプ91内へ温度調節された原水は、回収弁97を開くことにより原水タンク44内に回収される。よって、温度調節された原水を主パイプ91を備える循環経路で循環させながら栽培ベッド5を冷房又は暖房できる構成となっている。尚、冷房にあたっては、低温の地下水を原水として原水タンク44へ汲み上げて使用しているので、冷却装置100を運転せずに単に原水を主パイプ91へ供給してもよい。
よって、栽培ベッド5への養液供給と冷房又は暖房とを同時に行う必要があるときには、温度調節装置101により原水の温度を調節しながら養液供給装置7により養液の肥料濃度を調節し、養液を栽培ベッド5へ供給することができる。このとき、回収弁97は閉じた状態で行う。
以上により、原水タンク44、液体を供給するポンプとなる養液ポンプ59、給液パイプ61及び主パイプ91等を養液供給装置7と温度調節装置101とで共用するので、装置の共用化によりコストダウンが図れる。共用した装置により養液供給と冷房又は暖房とを同時に行うことができるので、養液供給装置7と温度調節装置101の運転におけるランニングコストも低減できる。
尚、上述では、栽培ベッド5の冷房又は暖房にあたり、回収パイプ96を使用して原水を循環経路で循環させる構成について説明したが、回収パイプ96を設けずに原水を給液ノズル95から吐出させて栽培ベッド5を冷房又は暖房する構成とすることもできる。
また、養液供給装置7と温度調節装置101とで主パイプ91を個別に設ける構成とすることもできる。このときは、各々の装置の主パイプ91の戻り経路91bを設けず、各々の装置の主パイプ91を栽培ベッド5の一端部から他端部へ延びる一方向への流路構成として互いに並行させて設け、給液パイプ61から切替弁を介して各々の主パイプ91へ選択的に液体(原水又は養液)を供給できる構成とし、温度調節装置101の主パイプ91の終端にのみ回収パイプ96を接続する構成となる。尚、養液供給装置7の主パイプ91からは複数の支流パイプ92が分岐し、回収弁97を設けない構成となる。尚、前記切替弁を設けず、養液ポンプ59の吐出量を養液供給時よりも冷房時又は暖房時に少なくして冷房時又は暖房時の液体の供給圧力を低下させることにより、冷房時又は暖房時には主パイプ91内の液体の圧力が所定値未満になるようにして給液ノズル95から液体が吐出しない構成としてもよい。また、前記切替弁を設けず、回収弁97の開閉により、養液供給時は回収弁97を閉じて主パイプ91内の液体の圧力が所定値以上になるようにして給液ノズル95から養液を吐出させ、冷房時又は暖房時は回収弁97を開いて主パイプ91内の液体の圧力が所定値未満になるようにして給液ノズル95から液体を吐出させずに回収パイプ96を介して回収する構成としてもよい。
また、栽培室1内の天井部にはカーテン開閉用モータにより開閉可能な周知の保温カーテンを設けており、この保温カーテンにより、特に夜間等に栽培室1内の温度が極端に低下しないようにすると共に、栽培室1内の暖房運転によるランニングコストの低減を図っている。尚、栽培室1内には栽培室1内の温度(室温)を測定する室温センサを設けているが、栽培室1外には外気温を測定する外気温センサを設けている。そして、制御部26により、外気温センサが測定する外気温が所定の設定外気温(例えば摂氏10度)以下で、且つ室温センサが測定する室温が所定の設定室温(例えば摂氏17度)以下になると、保温カーテンを閉じる制御を実行する。また、前記外気温が前記設定外気温を超過し、且つ前記室温が前記設定室温を超過すると、保温カーテンを開く制御を実行する。従って、室温と外気温とに基づいて保温カーテンを開閉制御するので、例えば室温が高くても外気温が低いときに保温カーテンを開くことにより急激に室温が低下する事態を抑えることができ、室温の急激な変動を抑えて栽培に悪影響を与えることを防止すると共に、暖房コストの低減も図れる。また、上述の開閉制御に基づき保温カーテンを開く外気温及び室温の条件でなくても、日の出時刻から所定時間後(例えば1時間後)には自動的に保温カーテンを開く構成となっている。尚、保温カーテンを閉じた状態が長時間(例えば10時間以上)維持されているときには自動的に保温カーテンを開く構成としてもよい。従って、保温カーテンの開条件(室温と外気温とが共に設定値を超過していない状態)でなくても、時刻又は保温カーテンの閉時間に基づき、保温カーテンを強制的に開く制御を実行している。尚、保温カーテンを強制的に開く制御を、時刻又は保温カーテンの閉時間と室温又は外気温との関係から実行する構成としてもよい。例えば、設定時刻に室温が所定以上であれば外気温に拘らず保温カーテンを強制的に開いたり、保温カーテンの閉時間と室温又は外気温(室温及び外気温)との関係から演算式等で得られる判定値に基づき保温カーテンを強制的に開く構成とすることができる。これにより、例えば日の出後にも拘らず保温カーテンを閉じたままにしていることで、保温カーテンが太陽光を遮断してかえって太陽光による栽培室1内の室温の上昇を阻害することを抑えるので、太陽光による植物の光合成を促進する共に暖房コストの低減が図れる。尚、上述する保温カーテンの開閉制御を日没後の夜間にのみ行う構成とし、日の出から所定時間後(例えば1時間後)から日没までは常時保温カーテンを開く構成としてもよい。尚、上述において保温カーテンを強制的に開く制御について説明したが、保温カーテンを強制的に閉じる制御を構成してもよく、例えば、保温カーテンを閉じる外気温及び室温の条件でなくても、別途設定する判断条件に基づき保温カーテンを強制的に閉じる制御をしてもよい。
以上により、前述で説明した栽培装置は、植物に養液を供給する養液供給装置(7)の一部を共用して、温度調節した液体により栽培床部を冷房又は暖房する温度調節装置(101)を構成している。
よって、養液供給装置7の一部を共用して温度調節装置101を構成したので、装置の共用化によりコストダウンが図れる。
また、養液供給装置(7)は、栽培床部(5)に沿う主パイプ(91)と、主パイプ(91)からの液体を栽培床部へ供給する給液ノズル(95)とを備え、温度調節装置(101)は、主パイプ(91)へ温度調節した液体を供給して該主パイプ(91)を養液供給装置(7)と共用する構成としている。
よって、栽培床部5に沿う主パイプ91を養液供給装置7と温度調節装置101とで共用する構成としたので、栽培床部5周辺の構成を簡潔にでき、作業者が栽培植物に対する作業(例えば、誘引作業、芽欠き作業、葉欠き作業等)を容易に行える。また、栽培施設内に張り巡らされる栽培床部5に対応する主パイプ91を共用するので、コストダウン効果が高まる。
また、養液供給装置(7)は、主パイプ(91)からの液体を回収するための回収流路(96)を備え、回収流路(96)を開閉する開閉弁(97)を設けている。
よって、養液を栽培床部5へ供給するときは、開閉弁97を閉じて給液ノズルから養液を吐出させることができる。主パイプ91で温度調節した液体を流して冷房又は暖房するときには、開閉弁97を開いて回収流路96により温度調節された液体を回収することができる。
また、養液供給装置(7)は、液体を貯留するタンク(44)と、栽培床部(5)に沿う主パイプ(91)と、主パイプ(91)からの液体を栽培床部(5)へ供給する給液ノズル(95)とを備え、温度調節装置(101)は、タンク(44)内の液体の温度を調節して該タンク(44)を養液供給装置(7)と共用する構成としている。
よって、液体を貯留するタンク44を養液供給装置7と温度調節装置101とで共用する構成としたので、温度調節された養液をタンク101内に貯留し、該養液により冷房又は暖房を行うことができる。また、前記養液を栽培床部5に供給することにより、養液供給と冷房又は暖房とを同時に行うことができる。
尚、図2では、架台により栽培ベッド5を地面から支持した構成を表しているが、吊下支持部材により栽培ベッド5を上方から吊り下げて支持する構成としてもよい。
また、誘引紐(81)により植物を誘引する構成とし、所定の高さ領域内での植物の大小を計測する植物計測装置(94)を設け、植物計測装置(94)が計測データを経時的に記録し、経時的に記録される計測データの値が増加したときは、計測データ値の増加量に基づいて植物の成長量を判定すると共に、経時的に記録される計測データの値が減少したときは、減少した計測データ値の減少量に基づいて植物の成長量を判定せずに、以降の計測データ値の増加量を前記減少した計測データ値を基準に演算して植物の成長量を判定する制御を実行する成長量判定装置を設けている。
よって、植物の成長に伴って誘引紐81を引き下げて植物の位置を低下させることにより、植物計測装置94の所定の計測領域における計測データ値が減少したときには、減少した計測データ値の減少量に基づいて植物の成長量を判定せずに、以降の計測データ値の増加量を前記減少した計測データ値を基準に演算して植物の成長量を判定するので、誘引紐81の引き下げに伴う植物の位置の低下に拘らず、植物の成長量を適正に判定することができ、判定した植物の成長量を養液供給制御や環境制御(温度制御、湿度制御等)に適用することができる。
また、所定の株間で配列される複数の栽培株を有し、栽培株の配列方向における前記領域の幅を株間の整数倍と同一又は略同一に設定している。
よって、植物の成長に伴って誘引紐81を引き下げると共に栽培株の配列方向に移動させるとき、配列される栽培株毎の複数の植物を同じ方向に略同じ距離だけ移動させ、複数の植物の間隔が株間と同一になるようにし、採光性や通気性を所望に維持して良好な栽培を行うようにしているが、前記複数の植物の間隔を株間と同一になるようにしているので、計測領域内に領域の幅と対応する株間の倍数分の数の植物が入り、一つの植物が部分的に計測領域の一端部に入る状態でも、それに対応して計測領域の他端部に別の植物が部分的に入り、結果的に計測領域内に前記した所定の数分の植物が入る。従って、誘引紐81の引き下げに伴う植物の栽培株の配列方向の移動に拘らず、植物の成長量を適正に判定することができ、判定した植物の成長量を養液供給制御や環境制御(温度制御、湿度制御等)に適用することができる。
また、植物の葉温を測定する葉温測定手段(114)と、植物へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段(113)と、葉温測定手段(114)で測定した葉温に基づいて二酸化炭素供給手段(113)を制御する制御手段(26)とを設けている。
よって、葉の気孔が閉鎖して葉温が高いときは、二酸化炭素の供給量を抑えるか又は供給を停止させることにより、葉の気孔が閉鎖して光合成が活発に行えない状態で二酸化炭素を無駄に供給することを防止でき、植物の栽培におけるランニングコストの低減が図れる。
また、含有する水分が気化し得る指標体(115)と、指標体(115)の温度を測定する指標体温度測定手段(116)とを設け、制御手段(26)は、指標体温度測定手段(116)で測定した指標体(115)の温度に基づいて二酸化炭素供給手段(113)の制御を補正する構成としている。
よって、葉の蒸散状態ひいては葉の気孔の開閉状態を精度良く判断することができ、より的確な二酸化炭素の供給制御が行え、良好な栽培を維持しながら植物の栽培におけるランニングコストの低減が図れる。
また、前記指標体(115)とは別の高温状態の植物の葉温と同等の温度となり得る素材で形成した高温指標体(117)と、高温指標体(117)の温度を測定する高温指標体温度測定手段(118)と、植物の栽培領域を加湿する加湿手段(119)とを設け、制御手段(26)は、高温指標体温度測定手段(118)で測定した高温指標体(117)の温度に基づいて二酸化炭素供給手段(113)の制御を補正すると共に、指標体温度測定手段(116)で測定した指標体(115)の温度に基づいて加湿手段(119)を制御する構成としている。
よって、葉の気孔の開閉状態を精度良く判断することができると共に、栽培領域の湿度も適正に維持でき、より良好な栽培を維持しながら植物の栽培におけるランニングコストの低減が図れる。
また、植物を誘引する誘引紐(81)と、誘引紐(81)を吊り下げて支持する誘引ワイヤ(80)と、植物の上部の上方及び側方を覆う被覆部材(103)とを設け、被覆部材(103)は、誘引ワイヤ(80)よりも下方に配置され、誘引紐(81)を上下方向に通過させる通過部(107)を形成し得る構成としている。
よって、被覆部材103を誘引ワイヤ80よりも下位に配置できるので、被覆部材103で覆われる領域を小さくでき、この領域での冷房又は暖房に要するエネルギーコストを抑えることができ、植物の栽培におけるランニングコストの低減が図れる。
また、測定される栽培果実の温度に基づいて、栽培果実の温度が低いときには栽培果実の表面に結露が発生することを防止する結露防止制御を行う構成としている。よって、栽培果実の表面に結露が発生することを的確に防止でき、栽培果実の品質が劣化することを防止できる。
また、測定される植物の葉温と栽培果実の温度とに基づいて、葉温よりも栽培果実の温度が高くなるよう栽培室内の温度を低下させる低下速度を制御する構成としている。よって、養分を果実に転流させることができる。
尚、図2では、架台により栽培ベッド5を地面から支持した構成を表しているが、吊下支持部材により栽培ベッド5を上方から吊り下げて支持する構成としてもよい。