JP6123145B2 - 粘着剤および粘着シート - Google Patents
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Description
また、保護用の粘着シートは、光学部材に貼着した状態で、粘着シート越しに部品の状態を検査する工程があるため、光学部品と粘着シートとの界面に異物はもとより空気を巻き込まない性質(濡れ性)および透明性が求められていた。また、ウレタン粘着剤はアクリル粘着剤よりも濡れ性が良いことが知られている。
また、特許文献3では、末端に第1級の水酸基を有するポリウレタン系樹脂、多官能イソシアネート化合物、ならびにポリアルキレングリコール系化合物、エポキシ系化合物およびリン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する粘着剤が開示されている。
また、特許文献2の粘着剤は、レベリング剤や脂肪酸エステルを含むため、ある程度の濡れ性と再剥離性が得られた。しかし、粘着剤層と被着体(例えばガラス板)を貼り合わせて高温高湿試験をかけると、被着体にレベリング剤や脂肪酸エステルの汚染が移る問題(被着体汚染)があった。この被着体汚染がディスプレイ上に存在すると後日洗浄を行う必要があり、品質上問題になる。また、レベリング剤や脂肪酸エステルは分子量が低いため、粘着シートを剥離した後、被着体を汚染しやすい。
また、特許文献3の粘着剤は、ポリアルキレングリコール系化合物、エポキシ系化合物およびリン酸エステル系化合物の低分子量化合物を含むため、特許文献2の粘着剤と同様に被着体汚染の問題があった。
前記ポリウレタン系樹脂(A)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」とも表記する。)測定での溶出曲線において、
分子量8000を境界として、分子量8000以上に極大値を有する高分子量成分(H)と、分子量2000〜6000に極大値を有する低分子量成分(L)とを有し、
前記分子量8000を境界として、前記高分子量成分(H)と前記低分子量成分(L)との溶出曲線の面積比が、H/L=80/20〜97/3であり、
ポリウレタン系樹脂(A)全体の重量平均分子量が3万〜50万である。
分子量8000を境界として、分子量8000以上に極大値を有する高分子量成分(H)と、分子量2000〜6000に極大値を有する低分子量成分(L)とを有し、前記分子量8000を境界として、高分子量成分(H)と低分子量成分(L)との溶出曲線の面積比が、H/L=80/20〜97/3であり、ポリウレタン系樹脂(A)全体の重量平均分子量が3万〜50万である。なお重量平均分子量は、ポリスチレン換算で得た数値である。
ポリプロピレングリコールは、プロピレンオキシドを付加重合させることで得られるが、大部分のプロピレンオキシドがβ開裂して末端がイソシアネートと反応性の低い2級水酸基になる。そこで、ポリイソシアネート化合物(B)との反応性を上げるため、エチレンオキシドを付加重合する方法や、プロピレンオキシドを特定の触媒によってα開裂する方法で、末端1級水酸基のポリプロピレングリコールを得る公知の方法がある。
ポリエーテルポリオールの分子量は、特に制限無く使用できるところ、数平均分子量500〜5,000が好ましい。数平均分子量500〜5,000を使用すると適度な反応性が得られ、凝集力が良好な樹脂が得易い。ポリオール(a)を2種類以上使用する場合、ポリエーテルポリオールは、ポリオール(a)100モル%中の10〜100モル%が好ましく、20〜90モル%がより好ましい。
また、3つ以上の水酸基を有するポリオールは、数平均分子量1,000〜5,000が好ましく、1,500〜4,000がより好ましい。数平均分子量を適切な範囲にすることでより凝集力が高くなることで再剥離性がより向上する。
さらにポリウレタン系樹脂(A)は、分子量8000を境界として、高分子量成分(H)と低分子量成分(L)との溶出曲線の面積比が、H/L=80/20〜97/3である。
またポリウレタン系樹脂(A)全体の重量平均分子量は、3万〜50万であり、5万〜40万が好ましく、10万〜30万がより好ましい。
前記3官能イソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族系ポリイソシアネートからなる群より選択される1種以上が好ましい。
2価以上のアルコールは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はソルビタン等が挙げられる。脂肪酸エステルは、例えばパルミチン酸イソプロピルやミリスチン酸イロプロピル等が挙げられる。
常温液状物質は、単独または2種類以上を併用できる。
硬化促進剤は、既にポリウレタン系樹脂(A)の合成で説明した触媒を使用できる。硬化促進剤は、単独または2種類以上を併用できる。
硬化促進剤は、ポリウレタン系樹脂(A)およびポリイソシアネート化合物(B)の合計量100重量部に対して、0.0005〜0.1重量部使用するのが好ましく、0.001〜0.05重量部がより好ましく、0.003〜0.03重量部がさらに好ましく、0.005〜0.01重量部が特に好ましい。
硬化遅延剤は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エステル等が挙げられる。
ラジカル連鎖禁止剤は、フェノール系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。また過酸化物分解剤は、硫黄系化合物、リン系化合物等が挙げられる。
モノフェノール系化合物は、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリン−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
チリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
希釈溶剤は、単独または2種類以上を併用できる。
ポリオール(a)
(a−1):Kuraray Polyol P−510(ポリエステルポリオール、数平均分子量Mn500、水酸基:2、水酸基価:224、クラレ社製)
(a−2):Kuraray Polyol P−1010(ポリエステルポリオール、数平均分子量Mn1000、水酸基:2、水酸基価:112、クラレ社製)
(a−3):Kuraray Polyol P−2010(ポリエステルポリオール、数平均分子量Mn2000、水酸基:2、水酸基価:56、クラレ社製)
(a−4):サンニックス PP−600(ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn600、水酸基:2、水酸基価:180、三洋化成工業社製)
(a−5):サンニックス PP−1000(ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn1000、水酸基:2、水酸基価:112、三洋化成工業社製)
(a−6):サンニックス PP−2000(ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn2000、水酸基:2、水酸基価:56、三洋化成工業社製)
(a−7):サンニックス GP−1500(ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn1500、水酸基:3、水酸基価:112、三洋化成工業社製)
(a−8):サンニックス GP−3000(ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn3000、水酸基:3、水酸基価:56、三洋化成工業社製)
ポリイソシアネート(b)
(b−1):ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー株式会社製)
(b−2):タケネート 500(三井化学株式会社製)、キシリレンジイソシアネート
ポリウレタン系樹脂の溶出曲線および重量平均分子量(Mw)はGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)測定により、標準ポリスチレン換算で得た数値であり、測定条件は以下のとおりである。尚、高分子量成分(H)と低分子量成分(L)の比率は、分子量8000となる保持時間を境界として両成分をそれぞれ積分した数値を用いて比率(面積比)を算出した。
装置:SHIMADZU Prominence(島津製作所社製)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHXL(東ソー社製)を3本直列に接続
検出器:示差屈折率検出器
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5mL/分
溶媒温度:40℃
試料濃度:0.1%
試料注入量:100μL
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコにポリエステルポリオール(a−2)100重量部、ポリエーテルポリオール(a−8)800重量部、ポリイソシアネート(b−1)をNCO/OH比がモル比で0.5になる量を仕込み、トルエン650重量部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1重量部、2−エチルヘキサン酸錫0.25重量部を加えて、90℃まで徐々に昇温し2時間反応を行った。IRで残存イソシアネート基の消滅を確認した上で冷却し反応を終了することでポリウレタン系樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン系樹脂溶液の性状は、不揮発分:60%、重量平均分子量(Mw):89,000、水酸基価27mgKOH/g(不揮発分換算値)であった。
合成例1の原料を表1に記載された種類・量に置き換えた以外は、合成例1と同様の方法で行うことで、それぞれ合成例2〜15のポリウレタン系樹脂溶液を得た。
<ポリオール(a)>
(a−9):サンニックス PP−4000(ポリエーテルポリオール、数平均分子量Mn4000、水酸基数:2、三洋化成工業社製)
(B−1):コロネート HL(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 東ソー社製)
(B−2):スミジュール N−3300(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体 住化バイエルウレタン社製)
(B−3):コロネート L(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 東ソー株式会社製)
NIKKOL IPP:パルミチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ社製)、
NIKKOL IPM−100:ミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ社製)、
ペグノール 24−O:ジオレイン酸ポリエチレングリコール(東邦化学工業社製)、
(実施例1)
合成例1で得られたポリウレタン系樹脂97重量部、合成例10で得られたポリウレタン系樹脂3重量部を混合し、GPCを使用して重量平均分子量および溶出曲線を測定した。得られた数値は、表2に記載する。
上記混合ポリウレタン系樹脂100重量部と、ポリイソシアネート化合物(B−1)8重量部、酸化防止剤IRGANOX L 135(BASF社製)0.3重量部、紫外線吸収剤TINUVIN 571(BASF社製)0.3重量部、光安定剤TINUVIN 765(BASF社製)0.3重量部、溶剤として酢酸エチルを適量配合し、ディスパーで攪拌することで粘着剤を得た。得られた粘着剤を、基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(ルミラーT−60 東レ社製)に乾燥後の厚みが20μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥し、厚さ38μmの剥離ライナーを貼り合わせた。次いで室温で1週間放置し、粘着シートを得た。
原料を表2に記載された種類・量に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法で行うことで、それぞれ実施例2〜15ならびに比較例1〜5の粘着シートを得た。得られた粘着シートを用いて、以下の物性評価を行い、結果を表2および表3に記載した。
サンニックス PP−4000を64重量部、サンニックス GP−1500を36重量部、コロネート Lを44重量部、触媒としてナーセム第2鉄(日本化学産業社製)を0.04重量部、希釈溶剤として酢酸エチルを266重量部配合し、ディスパーで撹拌し、粘着剤を得た。得られた粘着剤を、基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(ルミラーT−60 東レ社製)に乾燥後の厚みが20μmになるように塗工し、130℃で2分間乾燥シートし、厚さ38μmの剥離ライナーを貼り合わせた。次いで室温で1週間放置し、粘着シートを得た。実施例1と同様に物性評価を行い、結果を表3に記載した。
<被着体汚染>
得られた粘着シートを、幅100mm・長さ100mmの大きさに準備し測定試料とした。次いで23℃・50%RH雰囲気下、30分間放置した後、測定試料から剥離ライナーを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した。その後、ガラス板に貼着した試料を60℃・90%RHの環境下に72時間放置し、次いで23℃・50%RHの雰囲気下で30分間放置した後、ガラス板から粘着シートを剥がし、被着体を下記基準で目視評価した。
○:ガラス板に汚染が確認できない。良好
△:ガラス板にわずかな汚染が確認できる。実用上問題なし
×:ガラス板に明確な汚染が確認できる。実用不可
得られた粘着シートを、幅50mm・長さ100mmの大きさに準備し測定試料とした。次いで23℃・50%RH雰囲気下、30分間放置した後、測定試料から剥離ライナーを剥がし、粘着シートの両端を手で持ちながら露出した粘着剤層の中心部をガラス板に接触させた後、手を離した。そして前記粘着シートの自重で粘着剤層全体がガラス板に密着するまでの時間を測定することでガラスに対する密着性を評価した。ガラス板と密着するまでの時間が短いほどガラスに対する親和性が良好であるため、ガラス部材を使用した製造工程でガラスを保護し易くなる。評価基準は以下の通りである。
○:密着まで3秒未満。良好
△:密着まで3秒以上、5秒未満。実用上問題なし
×:密着まで5秒以上。実用不可
得られた粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備し測定試料とした。次いで23℃・50%RHの雰囲気下、剥離ライナーを剥がして、露出した粘着剤層をステンレス板(SUS304)に貼着し、2kgロールで圧着した後、24時間放置した。その後、JISZ0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。評価基準は以下の通りである。
○:粘着力が10mN/25mm以上、50mN/25mm未満。良好
△:粘着力が50mN/25mm以上、200mN/25mm未満。実用上問題なし
×:粘着力が200mN/25mm以上。実用不可
得られた粘着剤を乾燥厚さが20μmになるようにコンマコーターを使用して塗工速度30m/minで剥離ライナー上に塗工することで粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の表面を下記基準で目視観察して評価した。
○:表面が鏡面状、かつ平滑な塗工面が得られた。良好
△:表面にわずかなロールスジが発生した。実用上問題なし
×:表面にロールスジが多く見られ、粘着剤層端部にハジキが発生した。実用不可
Claims (5)
- ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応物である、水酸基を有するポリウレタン系樹脂(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)とを含み、
前記ポリウレタン系樹脂(A)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定での溶出曲線において、
分子量8000を境界として、分子量8000以上に極大値を有する高分子量成分(H)と、分子量2000〜6000に極大値を有する低分子量成分(L)とを有し、
前記分子量8000を境界として、前記高分子量成分(H)と前記低分子量成分(L)との溶出曲線の面積比が、H/L=80/20〜97/3であり、
ポリウレタン系樹脂(A)全体の重量平均分子量が3万〜50万である、粘着剤。 - 前記ポリウレタン系樹脂(A)の水酸基価が1〜30mgKOH/gである、請求項1記載の粘着剤。
- 前記ポリオール(a)100重量%中に、3つ以上の水酸基を有するポリオールを50〜95重量%含む、請求項1または2記載の粘着剤。
- 前記ポリイソシアネート化合物(B)が脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族系ポリイソシアネートからなる群より選択される1種以上である、請求項1〜3いずれか1項に記載の粘着剤。
- 基材と、請求項1〜4いずれか1項に記載の粘着剤の硬化物である粘着剤層とを備えた粘着シート。
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