以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付して重複する詳細説明を省略する。
また、以下の図面において、可動通路8が、カバー体6と近接する所定位置を初期位置と称する。また、可動通路8がカバー体6との間に所定スペースだけ離間する状態に回動されている位置を回動位置と称する。なお、可動通路8が回動位置にある場合の可動通路8とカバー体6との間の所定スペースとは、カバー体6を開閉可能な程度のスペースをいう。加えて、可動通路8が初期位置と回動位置との間に位置する位置を中間位置と称する。
また、以下において、特に説明なく「上下前後左右方向」という場合は、産業用車両1の運転室に座った運転者から見た「上下前後左右方向」を指し示すものとする。
(第1実施形態)
[構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る産業用車両1の構成例を示す平面図である。図1では、図1の上方向が産業用車両の前方向、図1の下方向が産業用車両の後方向、図1の左方向が産業用車両の左方向、図1の右方向が産業用車両の右方向である。図1の紙面下側が産業用車両の後方向、図1の紙面上側が産業用車両の前方向である。なお、説明の便宜上、図1の左方向を産業用車両の外側と呼ぶことがある。
産業用車両1は、車体2と、カバー体6と、可動通路8と、第1支持機構9と、第2支持機構10と、を備える。
車体2は、産業用車両1の本体(ボディ)である。車体2には、機器室5が設けられる。機器室5にはエンジン、排気ガス浄化装置、油圧機器等の機器50が収容される。機器室5の少なくとも一部は、カバー体6によって、外側から開閉可能に覆われている。カバー体6は、作業者が産業用車両1に関する所定の作業のために上下方向に延びる回転軸Jを中心にして外側に開くことが可能なように構成されている。ここで、カバー体6は、機器室5内の整備又は点検作業時に開放又は可動するサイドカバーや、当該サイドカバーの一部に設けられた開口を開閉可能に覆うメンテナンス用扉を意味する。なお、サイドカバー及びメンテナンス用扉が開閉又は可動する方向は特に限定されず、更にサイドカバー及びメンテナンス用扉の一部が開閉又は可動してもよい。カバー体6の外側には、人が通る可動通路8が配置されている。可動通路8は、運転者、作業者等の人が通る通路であればよい。「通路」には、例えば、プラットホーム、ステップ(階段)、はしご等が含まれる。
可動通路8は、カバー体6に近接する初期位置と所定の回動位置との間で回動可能となるように構成されている。すなわち、初期位置とは、可動通路8が回動されていない状態を意味し、回動位置とは、可動通路8が回動された状態を意味する。
可動通路8が初期位置と所定の回動位置との間、すなわち中間位置を回動する際、可動通路8の両端部は、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、支持されている。具体的に、第1支持機構9は車体2に設けられ、可動通路8の前端部(一方の端部)を上下方向に延びる第1軸線J1の周りに回転自在に支持している。第1軸線J1は上下方向と完全に平行である必要はなく、上下方向に対して僅かに傾いてもよい。また、第2支持機構10は車体2に設けられ、可動通路8が中間位置を回動する際及び可動通路8が回動位置にある場合に、可動通路8の後端部(他方の端部)を支持する。なお、可動通路8が初期位置にある場合において、可動通路8の後端部が支持される形態は任意である。例えば、可動通路8が初期位置にある場合では、可動通路8の後端部が、掛止部材によって車体2に掛止されてもよいし、第2支持機構10に支持されてもよい。
本実施形態において、第2支持機構10は車体2から左方に突出している。第2支持機構10の基端部10aは車体2に連結されている。第2支持機構10の先端部10bは、可動通路8の後端部に連結されていてもよいし連結されていなくてもよい。第2支持機構10は、基端部10aから先端部10bまでの長さである有効長が伸縮自在であれば、どのような構成であってもよい。
例えば、第2支持機構10が直線的に伸縮可能であり、第2支持機構10の基端部10aが車体2に固定されていて、先端部10bが左右方向にのみ移動する場合には、可動通路8が回動するときには第2支持機構10を伸長させた上で可動通路8の後端部をその第2支持機構10上にスライドさせてもよい。この場合、第2支持機構10を動かすために、直動アクチュエータ(例えば、油圧シリンダ等)を用いてもよい。
あるいは、第2支持機構10の基端部10aを車体2に回動自在に連結するとともに、先端部10bを可動通路8の後端部に回動自在に連結して、可動通路8の回動に伴って第2支持機構10が伸縮しながら動くようにしてもよい。この場合、第2支持機構10の車体2に対する向きが変化しても構わない。第2支持機構10としては、直動機構を用いてもよいし、リンク機構を用いてもよい。
[動作]
以上のように構成された本実施形態に係る産業用車両1の可動通路8の動作について、説明する。
まず、可動通路8が初期位置から回動位置まで回動する動作について、説明する。本実施形態では、可動通路8が初期位置にある場合において、可動通路8に水平方向(ここでは左方向)の力が加えられると、可動通路8の前端部が第1軸線J1を中心にして車体2の左方向に回動するとともに、可動通路8の後端部も車体2の左方向へ回動する(図1に示す2点鎖線)。これにより、可動通路8が産業用車両1の左方向に回動する。また、第2支持機構10は、可動通路8の回動に追従して、有効長を伸長するように作動する。可動通路8が左方向へ回動している間、すなわち、可動通路8が中間位置にある場合において、可動通路8の両端部は、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、支持されている。可動通路8にさらに水平方向の力が加えられると、可動通路8は回動位置まで回動する。上述のとおり、可動通路8が回動位置にある場合においても、可動通路8の後端部は第2支持機構10によって支持される。可動通路8が回動位置まで回動した後、カバー体6が回転軸Jを中心にして、左方向に開かれる(図1に示す2点鎖線)。
次に、可動通路8が回動位置から初期位置まで回動する動作について、説明する。カバー体6が元の位置に戻された後、可動通路8が回動位置にある場合において、可動通路8に右方向の力を加えると、可動通路8の前端部が第1軸線J1を中心にして右方向へ回動するとともに、可動通路8の後端部が右方向へ回動する。可動通路8が右方向へ回動している間、可動通路8の両端部は、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、支持されている。可動通路8にさらに右方向の力が加えられると、可動通路8は初期位置まで回動する。上述のとおり、可動通路8が初期位置にある場合においても、可動通路8の後端部は第2支持機構10によって支持されることが好ましい。
以上のように産業用車両1の可動通路8は、第1軸線J1を中心にして水平方向に回動することができる。したがって、カバー体6が外側に開けられる際に、可動通路8が回動位置まで、外側に回動すれば、可動通路8が邪魔にならない。更に、可動通路8が回動する際、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、可動通路8の両端部が支持されている。そのため、回動する際に、可動通路が片持ち梁状態となる従来の構成と比べて、可動通路8が自重によって撓むことを抑制できる。これにより、可動通路8の回動操作をスムーズにすることができる。
また、可動通路8のスムーズな回動操作ができず、作業者に負担となっていた従来の構成において、特に、可動通路8を回動させてから、初期位置に戻す際に、重量の重い可動通路8が自重によって撓むため、作業者の負担となっていた。本実施形態では、可動通路8が回動する間、可動通路8の後端部が第2支持機構10によって、支持されている。したがって、初期位置近くでも可動通路8が自重によって撓まない。よって、作業者が可動通路8を初期位置に戻す際に必要な操作力が小さくて済む。
なお、可動通路8が初期位置にある場合において、可動通路8の後端部は、第2支持機構10の先端部に保持されていることが好ましい。可動通路8が初期位置にある場合では可動通路8が掛止部材等の別の部材によって支持されることも可能であるが、この場合には、可動通路8が回動する際に、別の部材から第2支持機構10へ可動通路8の荷重を移動することが必要になる。これに対し、可動通路8が初期位置にある場合においても、可動通路8の後端部が第2支持機構10の先端部に支持されれば、可動通路8の後端部が支持され続ける。よって、可動通路8の回動をよりスムーズに操作することができる。
なお、可動通路8が回動位置にある場合において、可動通路8の後端部は、第2支持機構10とは異なる別の部材によって支持されていてもよい。ただし、この場合、可動通路8が回動する際に、第2支持機構10から別の部材へ、又は、別の部材から第2支持機構10へ、可動通路8の荷重を移動する必要がある。これを考慮すると、可動通路8が回動位置にある場合においても、可動通路8の後端部は、第2支持機構10によって支持されることが好ましい。
また、可動通路8が初期位置、中間位置、及び回動位置にある場合の全てにおいて、可動通路8の後端部は、第2支持機構10により支持され続けてもよい。これにより、可動通路8がいずれの位置にある場合においても、可動通路8の後端部が第2支持機構10により支持され続けることとなるため、更に可動通路8をスムーズに回動できる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る産業用車両1は、第1実施形態に係る産業用車両1の各構成要素をより具体化したものである。また、以下の実施形態では、産業用車両としてホイールローダを例として説明する。なお、第2実施形態及び後述する第3実施形態において第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付している。
[構成]
<全体構成>
図2は、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1の構成例を示す斜視図である。図2の紙面上側がホイールローダの上方向、図2の紙面下側がホイールローダの下方向である。また、説明の便宜上、紙面左下側をホイールローダの外側と称する場合がある。
ホイールローダ1は、車体2と、車輪3と、運転室4と、機器室5と、カバー体6と、はしご7と、可動通路8と、第1支持機構9と、第2支持機構10と、を備える。車体2は、ホイールローダ1の本体(ボディ)である。車体2の左右には、ホイールローダ1の走行用の車輪3(前輪と後輪を含めて4つ)が装着される。車体2の上部には、運転室4が設けられる。運転室4の後方には、機器室5が設けられる。ここでは、機器室5は、エンジン50を収容するエンジンルームである。エンジンルーム5の少なくとも一部は、カバー体6によって、外側から開閉可能に覆われている。ここでは、カバー体6は、作業者がエンジンルーム5を整備又は点検するために外側に開くサイドカバーである。運転室4の左側方には、はしご7が設けられる。はしご7の上端部には、略水平に延在するはしご用フロア7aが設けられている。はしご7は、ホイールローダ1の運転者が、ホイールローダ1の左側から運転室4へ乗降するために用いられる。はしご7の後方で、サイドカバー6の外側には、人が通る可動通路8が配置される。本実施形態では、可動通路8は、ホイールローダ1の運転者が車体2の後方から運転室4に対して乗降するために、一部が階段状となっている。つまり、可動通路8は、階段状通路となっている。
階段状通路8は、後輪の車輪3の一部を覆い、フェンダ14と一体で構成されている。フェンダ14は、車輪3の前側略半分を覆う固定フェンダ14aと、車輪3の後側略半分を覆う可動フェンダ14bと、を有する。可動フェンダ14bは、階段状通路8の回動と連動して回動する。階段状通路8の後方に、補助ステップ15が設けられている。補助ステップ15は、たとえば、運転者や作業者等が階段状通路8に到達するためや、エンジンルーム5を整備又は点検する際の足場等に用いられる。また、階段状通路8とはしご用フロア7aとの間に、固定フロア9aが設けられている。固定フロア9aの上面は、階段状通路8の前端部と同じ高さで略水平に延在し、その前端部は、はしご用フロア7aの後端部に段差(はしご用フロア7a側が低い)を有して接続されている。固定フロア9aは車体2に固定されていて、後述する第1支持機構9における支持部材を構成している。なお、固定フロア9aの上面は階段状通路8の前端部と同じ高さでなくてもよく、固定フロア9aと階段状通路8は、段差を有して接続されてもよい。また、固定フロア9aは、はしご用フロア7aと段差を有して接続されていなくてもよい。
<階段状通路の構成>
階段状通路8は、手すり11と、フロア12と、階段であるステップ13と、を有する。フロア12は、略水平に延在し、固定フロア9aに接続する。ステップ13には複数の踏板13a、13b、13cが設けられる。ホイールローダ1の運転者は、ステップ13を昇った後、フロア12を歩行し、固定フロア9a及びはしご用フロア7aを経て、運転室4に到達する。
本実施形態では、階段状通路8が初期位置と回動位置にある場合において、階段状通路8の両端部は、車体2に設けられた第1支持機構9及び第2支持機構10によって、支持されている。階段状通路8の前端部(フロア12の前端部)は、第1支持機構9によって、上下方向に延びる第1軸線J1の周りに回転自在に支持されている。なお、第1支持機構9は、車体2の例えばフレームなどの構造体に直接的または他の部材を介して間接的に取り付けされる。
第1支持機構9は、運転室4の後方に配置される。第1支持機構9は、階段状通路8の前端部を支持する固定フロア9aを有する。固定フロア9aは、車体2に固定され、第1支持機構9における支持部材を構成する。第1支持機構9は、さらに、軸支部17を有し、この軸支部17によって、固定フロア9aに対し、フロア12の前端部(本発明の階段状通路の一方の端部に相当)が第1軸線J1の周りに回動可能に取り付けられている。なお、固定フロア9aは車体2に固定されていて、かつ、階段状通路8を回動可能に支持するものであれば、フロア12に接続される必要はなく、その形態は任意である。
第2支持機構10は、車体2の側面から左側に突出する。後述するように、第2支持機構10は、車体2と階段状通路8の他方の端部との間に設けられ、車体2と階段状通路8の他方の端部とを接続する。そして、第2支持機構10によって、ステップ13は車体2に対し、フロア12の回動に伴う水平方向へ円運動が可能なように支持される。本実施形態では、第2支持機構10は、階段状通路8が中間位置を回動する際、階段状通路8の後端部(ステップ13の最下端の踏板13c)を支持する。また、第2支持機構10は、階段状通路8が初期位置と回動位置にある場合において階段状通路8の後端部を支持する。さらに、第2支持機構10は、階段状通路8が初期位置にある場合において、後述するロック機構30によって、階段状通路8に拘束される。なお、第2支持機構10は、車体2の例えばフレームなどの構造体に直接的または他の部材を介して間接的に取り付けされる。
<第2支持機構の構成>
図3は、第2実施形態に係る第2支持機構10の平面図である。第2支持機構10は、第1リンク部材20と、第2リンク部材22と、第3リンク部材24と、を有する。
第1リンク部材20は車体2に対し左側に突出するように設けられる。第1リンク部材20は、階段状通路8が初期位置にある場合において、ステップ13の踏板13c(本発明の階段状通路の他方の端部に相当)の下方に格納されるように設けられる。第1リンク部材20は、例えば、平面視で左右方向に長辺を有する略矩形状に形成される。
具体的に、第1リンク部材20は、例えば、後方が開放されたコの字状の断面を有し、前側において左右方向に延びる側壁部20aと、側壁部20aの上端から後方に延びる上壁部20bと、側壁部20aの下端から後方に延びる底壁部20c(図6(b)参照)と、上壁部20bの左側先端から下方に延びる先端壁部20d(図3参照)と、底壁部20cの後端から下方に延びる後壁部20eと、を有する。このように、第1リンク部材20は、後側が開放された中空空間を含んでいる。第1リンク部材20は、基端部が例えばボルトなどの固定部材40によって車体2に固定されている。
第1リンク部材20の後壁部20eには後方に略水平に延在するように板状の第1ロック部材100が突設されている。第1ロック部材100には、後述するロックピン31が挿通する第1ピン挿通孔100aが形成されている。
第1リンク部材20の先端部の上壁部20b及び底壁部20cには、第1軸支部21を介して第2リンク部材22の基端部(一方の端部)が第1軸線J1に平行な第2軸線J2の周りに回動自在に連結される。第2リンク部材22は、例えば、平面視で後方に少し折れ曲がったくの字状の中空部材で構成され、水平方向に延在する。第2リンク部材22は、階段状通路8が初期位置にある場合において、くの字形状の折れ曲がり部分から基端に至る部分が第1リンク部材20の中空空間に収容される。また、第2リンク部材22の先端部(他方の端部)が第1リンク部材20の後方側に位置するように構成されている。つまり、階段状通路8が初期位置にある場合において、第2リンク部材22は、基端部から先端部に向かう方向が階段状通路8の回動方向(左方向)と反対方向(右方向)を向くように配置される。
第2リンク部材22の先端部には、第2軸支部23を介して第3リンク部材24の基端部(一方の端部)が、第1軸線J1に平行な第4軸線J4の周りに回動自在に連結される。ここでは、第3リンク部材24は、階段状通路8が初期位置にある場合において、第1リンク部材20と略平行に配置されている。また、第3リンク部材24は、階段状通路8が初期位置にある場合において、第2リンク部材22に平行に且つその後方に水平方向に延在するように構成されている。第3リンク部材24は、平面視において延在方向に長い略矩形の筒状部材で構成されている。
また、階段状通路8が初期位置や回動位置にある場合において、第2支持機構10に対する階段状通路8の自重による負担を軽減する観点から、階段状通路8が初期位置や回動位置にある場合において、第1リンク部材20の上に載置される構成としてもよい。具体的には、第1リンク部材20の上壁部20bの位置を、第3リンク部材24の上面の位置よりも高くした上で、ステップ13の踏板13cの下端面と略同一の高さとすればよい。なお、第1リンク部材20の上壁部20bに摺動部材を設け、その摺動部材上に階段状通路8が載置される構成としてもよい。
第3リンク部材24の基端部には適宜な空間が形成されていて、当該空間に第2リンク部材22の先端部が収容されている。第3リンク部材24の基端部(第2リンク部材22側の一方の端部)には、後方へ突出する取っ手26が設けられている。作業者は、階段状通路8を初期位置から回動させようとするとき、車体2近くにある取っ手26に力を作用させることができ、第3リンク部材24の基端部を第1リンク部材20から離れる方向に引っ張る。
第3リンク部材24の先端部(他方の端部)は第3軸支部25を介して、階段状通路8のステップ13の踏板13c(本発明の階段状通路8の他方の端部に相当)に第1軸線J1に平行な第3軸線J3の周りに回動自在に連結されている。第2支持機構10は、車体2と連結する側の一方の端部(ここでは、第2軸線J2)と階段状通路8と連結する側の他方の端部(ここでは、第3軸線J3)とを結ぶ方向における長さである有効長が伸縮自在に構成される。ここでは、第3リンク部材24の先端部は、ステップ13の最下端の踏板13cに連結されている。本実施形態では、第3軸支部25は、踏板13cの略中央に位置している。第2リンク部材22及び第3リンク部材24は、階段状通路8が初期位置にある場合において、この踏板13cの下方に格納されるように設けられる。このため、第2リンク部材22と第3リンク部材24が踏板13cによって保護されるとともに、ホイールローダ1における踏板13cの周囲の外観を良好に維持することができる。
第3リンク部材24の先端部には、先方に突出するように板状の第2ロック部材200が設けられる。第2ロック部材200には、後述するロックピン31が挿通する第2ピン挿通孔200aが形成されている。
このように、第2支持機構10は、リンク機構で構成されるため、油圧シリンダ等のアクチュエータと比べて、安価でシンプルな構成とすることができる。
また、第2支持機構10が1つの固定式のリンク部材と2つの可動式のリンク部材で構成される。第2リンク部材22と第3リンク部材24の相対的な回動中心を第1リンク部材20の基端部側に配置することができるため、第2支持機構10をコンパクトに折り畳むことができる。
また、第1リンク部材20は中空空間を含み、階段状通路8が初期位置にある場合において、第2リンク部材22の一部は当該中空空間に収容される。これにより、階段状通路8が初期位置にある場合において、第2支持機構10をさらにコンパクトに折り畳むことができる。
<ロック機構の構成>
図4(a)は、図2の産業用車両(ホイールローダ)1の階段状通路8が初期位置にある場合のロック機構30の拡大斜視図である。
ホイールローダ1は、ステップ13の踏板13cと第2支持機構10とをロックするロック機構30を備えている。本実施形態では、ロック機構30は棒状のロックピン31を有している。ロックピン31の上端部には径方向に突出する棒状のストッパー31aが設けられている。
図4(a)に示すように、ステップ13の踏板13cの下面には板状の第3ロック部材300が設けられる。第3ロック部材300は、全体が上方に開放されたU字状に形成されていて、下部に、水平に延在する板状の第1係止部301が設けられ、第1係止部301の左壁部に第2係止部302が設けられている。
板状の第1係止部301には、ロックピン31が挿通する第3ピン挿通孔300aが形成されている。
上述のように、第1リンク部材20には板状の第1ロック部材100が設けられ、第3リンク部材24には、板状の第2ロック部材200が設けられている。そして、第1ロック部材100と、第2ロック部材200と、第3ロック部材300における第1係止部301及び第2係止部302と、ロックピン31とがロック機構30を構成している。そして、第3リンク部材24の姿勢は、階段状通路8が初期位置及び回動位置にある場合において、同じになるように構成されている。これは、例えば、第1乃至第3リンク部材20、22、24の長さ及び連結位置を適宜設定(設計)し、且つ、第1リンク部材20を上述のようにくの字状に形成することにより、実現される。
第1乃至第3ロック部材100、200、300は、階段状通路8が初期位置にある場合において、それぞれが上下方向に重なり合うように、設けられている。また、第1乃至第3ピン挿通孔100a、200a、300aも、階段状通路8が初期位置にある場合において、それぞれが上下方向に並ぶように、設けられている。第1乃至第3ピン挿通孔100a、200a、300aのそれぞれには、ロックピン31が挿通される。また、階段状通路8が所定の回動位置にある場合においても、第2ロック部材200及び第3ロック部材300は、それぞれが上下方向に重なり合うように、設けられている。第2ピン挿通孔200a及び第3ピン挿通孔300aも、階段状通路8が回動位置にある場合において、それぞれが上下方向に並ぶように、設けられている。これにより、階段状通路8が初期位置と所定の回動位置にある場合の双方において、1つのロック機構によって、階段状通路8がロックされる。なお、階段状通路8が所定の回動位置にある場合において、第2ピン挿通孔200a及び第3ピン挿通孔300aは、第3軸支部25に対して、左側にオフセットしている。
ロックピン31は、上下方向に並ぶ第1乃至第3ピン挿通孔100a、200a、300aの全てに挿通可能な長さを有している。また、ロックピン31は、第1乃至第3ピン挿通孔100a、200a、300aを挿通した状態でストッパー31aが第1係止部301によって係止されるように構成されている。また、第2係止部302は、第3ロック部材300の左壁部に第1係止部301より高く、且つ、ロックピン31のストッパー31aが係止された状態でロックピン31が第1ピン挿通孔100a及び第2ピン挿通孔200aから抜けた状態になるように設けられている。第2係止部302は適宜な凹部に形成されている。
なお、ロック機構30は、階段状通路8が初期位置にある場合において、階段状通路8、第3リンク部材24、第1リンク部材20を相対的に移動しないようにするものであれば、上述の態様には限定されない。
また、第1乃至第3ロック部材100、200、300の形状は上述の形状に限定されない。また、第1及び第2係止部301、302の形状も上述の形状に限定されない。例えば、第3ロック部材300は、L字状の部材であってもよい。
<ロック機構の動作>
本実施形態におけるロック機構30の動作について、図4(a)、図4(b)、図4(c)を参照して説明する。
図4(b)は、図2の産業用車両(ホイールローダ)1の階段状通路8のロックを解除した際のロック機構30の拡大斜視図である。図4(c)は、図2の産業用車両(ホイールローダ)1の階段状通路8が回動位置にある場合のロック機構30の拡大斜視図である。
図4(a)に示すように、階段状通路8が初期位置にある場合において、ロックピン31が第1乃至第3ピン挿通孔100a、200a、300aに挿通され、ロックピン31のストッパー31aが第1係止部301に係止される。これにより、階段状通路8が初期位置にある場合において、階段状通路8の後端部(ステップ13の踏板13c)と第3リンク部材24と第1リンク部材20とが互いにロックされるので、階段状通路8を車体2に対してロックすることができる。
階段状通路8が初期位置から回動する際、図4(b)に示すように、ロックピン31が第3ピン挿入孔300aのみに挿通される。その際、ロックピン31のストッパー31aは、第2係止部302に係止されている。これにより、階段状通路8が回動自在になる。したがって、ロックピン31の係止位置が変えられるだけで、階段状通路8がロック状態と回動状態とに切り替えられる。なお、階段状通路8が中間位置にある場合においては、ロックピン31は第3ピン挿通孔300aから完全に抜いておいても構わない。
階段状通路8が回動自在になり、所定の回動位置まで回動すると、図4(c)に示すように、ロックピン31は第2ピン挿通孔200a及び第3ピン挿通孔300aに挿通される。その際、ロックピン31のストッパー31aは第1係止部301に係止される。これにより、階段状通路8が回動位置にある場合において、階段状通路8の後端部(ステップ13の踏板13c)と第3リンク部材24とが互いにロックされるので、階段状通路8が車体2に対してロックされる。
<階段状通路の動作>
本実施形態における階段状通路8の動作について、図2、図5A、図5B、及び図6を参照して説明する。
図5Aは、図2の産業用車両(ホイールローダ)1において階段状通路8が中間位置にある場合の斜視図である。図5Bは、図2の産業用車両(ホイールローダ)1において階段状通路8が回動位置にある場合の斜視図である。図6(a)は、図2の産業用車両(ホイールローダ)1の階段状通路8が初期位置にある場合の第2支持機構10の拡大斜視図である。図6(b)は、図2の産業用車両(ホイールローダ)1の階段状通路8が回動中である状態の第2支持機構10の拡大斜視図である。図6(c)は、図2の産業用車両(ホイールローダ)1の階段状通路8が回動位置にある場合の第2支持機構10の拡大斜視図である。
まず、階段状通路8が初期位置から回動位置まで回動する動作について、説明する。図6(a)に示すように、第3リンク部材24は、階段状通路8が初期位置にある場合において、ステップ13の踏板13cの下方に格納されている。
ロック機構30による階段状通路8のロックが解除された後、第3リンク部材24の基端部に設けられた取っ手26は第1リンク部材20から離れる方向(ここでは後方向)に引っ張られる。取っ手26が第1リンク部材20から離れる方向に引っ張られると、階段状通路8の上端部(フロア12)が第1軸線J1を中心にして、車体2の左方向に回動するとともに、階段状通路8のステップ13が車体2の左方向へ円運動する。これにより、階段状通路8がホイールローダ1の左方向に回動する。階段状通路8の回動に追従して、第2支持機構10の有効長が伸長する。
具体的には図6(b)に示すように、階段状通路8が中間位置にある場合において、第2リンク部材22と第3リンク部材24とが、第2支持機構10の有効長が伸長するように、第2軸線J2の周り及び第3軸線J3の周りにそれぞれ回動するとともに第4軸線J4の周りに相対的に回動する。階段状通路8が回動している間においても、ステップ13の両端部は第1支持機構9と第2支持機構10によって、支持され続けている。図6(c)に示すように、取っ手26がさらに第1リンク部材20から離れる方向に引っ張られると、階段状通路8は回動位置まで回動する。階段状通路8が回動位置にある場合において、ステップ13の両端部は、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、支持されている。また、階段状通路8が回動位置にある場合において、ロック機構30によって階段状通路8の後端部と第3リンク部材24とがロックされる。図5Bに示すように、階段状通路8が回動位置まで回動した後、サイドカバー6が左方向に開かれる。
次に階段状通路8が回動位置から初期位置まで回動する動作について説明する。サイドカバー6が元の位置に戻された後、ロック機構30による階段状通路8の後端部と第3リンク部材24とのロックが解除される。その後、取っ手26に第1リンク部材20に近づく方向(ここでは前方向)に押す力が加えられると、階段状通路8の前端部が第1軸線J1を中心にして右方向へ回動するとともに、階段状通路8の後端部が右方向へ回動する。階段状通路8が右方向へ回動している間、第2支持機構10は、階段状通路8の回動に追従して作動する。具体的には、第2支持機構10は、ステップ13の踏板13cを支持し、その有効長を短縮しながら、右方向に回動する。階段状通路8にさらに右方向の力が加えられると、階段状通路8は初期位置まで回動する。階段状通路8が初期位置にある場合において、階段状通路8の両端部は、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、支持される。なお、本実施形態のように第2支持機構10がリンク機構であっても、第1実施形態に記載の通り、階段状通路8が初期位置及び回動位置にある場合において、階段状通路8の後端部(ステップ13の踏板13c)は、第2支持機構10によって支持されていることが好ましいが、それぞれの位置において第2支持機構10とは異なる別の部材によって支持されていてもよい。
以上のように、ホイールローダ1の階段状通路8は、第1軸線J1を中心にして所定方向に回動することができる。したがって、サイドカバー6が外側に開けられる際に、階段状通路8が水平方向に回動すれば、階段状通路8が邪魔にならない。更に、初期位置と回動位置との間、すなわち中間位置を階段状通路8が回動する際に、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、階段状通路8の両端部が支持されている。そのため、階段状通路8が自重によって撓むことを抑制できる。これにより、階段状通路8の回動をスムーズに操作することができる。
また、階段状通路8が中間位置を回動している間も、第2支持機構10によって、ステップ13の踏板13c(本発明の階段状通路8の他方の端部に相当)が支持されている。したがって、階段状通路8が回動している間、階段状通路8の両端部が第1支持機構9と第2支持機構10とによって支持されているので、階段状通路8が自重によって撓まない。よって、作業者が階段状通路8を初期位置に戻す際に必要な操作力が小さくて済む。
また、階段状通路8が初期位置にある場合において、階段状通路8の後端部が、第2支持機構10によって支持されていることによって、階段状通路8の両端部が、第1支持機構9と第2支持機構10とによって、支持されている。これにより、階段状通路8が初期位置から回動する際に、階段状通路8の後端部が第2支持機構10によって支持され続ける。よって、階段状通路8の回動をよりスムーズに操作することができる。
更に、第2リンク部材22は、基端部から先端部に向かう方向が階段状通路8の回動方向(左方向)と反対方向(右方向)を向くように配置されていて、この第2リンク部材22の先端部が、第3リンク部材24の基端部と第4軸線J4の周りに回転自在に連結されている。その結果、階段状通路8が水平方向に回動する際、取っ手26を介して、第2リンク部材22及び第3リンク部材24は階段状通路8の回動に追従して、有効長を伸縮させる。このため、階段状通路8の回動をスムーズに操作することができる。
また、作業者は、階段状通路8を初期位置から回動させようとするときには、車体2近くにある取っ手26に力をかけることができる。これにより、第2支持機構10の有効長を伸長させる際に、第3軸線J3回りに倍力による大きなモーメントを作用させることができ、階段状通路8の回動をスムーズに操作することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係るホイールローダ1は、第2実施形態に係るホイールローダ1の一部を変形したものである。以下では、第3実施形態に係るホイールローダ1において、第2実施形態と異なる点について説明する。
図7(a)は、本発明の第3実施形態に係る産業用車両(ホイールローダ)1の可動通路8が初期位置にある場合の平面図である。図7(b)は、本発明の第3実施形態に係る産業用車両(ホイールローダ)1の可動通路8が回動位置にある場合の平面図である。
図7に示すように、第2支持機構10は、ホイールローダ1の内部に左右方向に進退自在に移動する棒状部材60と、この棒状部材60を左右方向に移動可能に保持する保持部材(図示せず)を有している。可動通路8が初期位置にある場合において、可動通路8の後端部は、支持部材(固定通路)70によって、支持されている。すなわち、本実施形態では、第2支持機構10が初期位置では可動通路8の後端部を支持しない。第2支持機構10は、伸縮可能な直動機構であり、棒状部材60が車体2の下方に格納される格納位置と、棒状部材60が車体2から左側に張り出す張り出し位置との間で伸縮可能に構成されている。可動通路8が回動する際、支持部材70による可動通路8の後端部の支持が解除され、棒状部材60が略水平な所定方向(ここでは、左方向)に伸長する。この後、可動通路8の前端部が第1軸線J1を中心にして車体2の左方向に回動するとともに、可動通路8の後端部が棒状部材60上をスライドする。これにより、可動通路8が回動する。これ以外の点は、第1実施形態と同様である。
例えば、棒状部材60は、油圧シリンダのロッドを利用した構造物であってもよい。あるいは、図略の保持部材は、棒状部材60と嵌合するレール部材であってもよい。
このような第3実施形態においても、可動通路8が中間位置にある場合において、第2支持機構10が可動通路8の後端部を支持するので、上記実施形態と同様の効果が得られる。
(その他の実施形態)
第2支持機構10がリンク機構である場合は、そのリンク機構は第2実施形態に記載された3つのリンク部材を含む構成に限られない。例えば、リンク機構は、2つや4つのリンク部材から構成されてもよい。
第2実施形態において、階段状通路8の後端部が第1支持機構9によって車体2に対して回動自在に支持され、階段状通路8の前端部が第2支持機構10によって当該回動に伴う円運動が可能なように支持されてもよい。
また、可動通路8は、踏板を含むステップ13を有する階段状通路以外の通路であってもよく、作業者や運転者等の人が通る通路であれば、その形態は任意である。
カバー体6は、上述の実施形態に記載された位置に限定されない。例えば、カバー体6は車体2の右側に設けられてもよいし、車体2の両側に設けられてもよい。
可動通路8は、上述の実施形態に記載された位置に限定されない。例えば、可動通路8は車体2の右側に設けられてもよいし、車体2の両側に設けられてもよい。