実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る水処理装置について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す斜視図であり、図1において、処理槽1は内部を透視して示すために便宜上透明に図示している。また、図2は、本実施の形態1に係る水処理装置における放電の形態を模式的に説明する図であり、図1に示すX−Z面における断面を示している。また、図3は、本実施の形態1に係る水処理装置の変形例を概念的に示す断面図である。なお、各図において、同一または相当する機能を有する要素には同一符号を付している。
また、各図において、Wで示す矢印及びこれと同じ矢印は、被処理水6(及び処理後の水)の流れを示し、Gで示す矢印は、ガス供給口2から処理槽1内に供給される酸素ガスを示し、G´で示す矢印は、処理槽1内からガス排出口3を通じて排出される排ガスを示している。また、Aで示す白い矢印及びこれと同じ太さの白い矢印は、処理槽1内の気流を示し、特に、送風装置14等の送風手段によって意図的に形成された気流(以下、これを気流Aと記す)を示している。
図1に示すように、箱状に形成された筐体である処理槽1の上面には、ガス供給口2とガス排出口3が備えられている。また、処理槽1の上面には、被処理水6を導入するための水供給口4が備えられ、処理槽1の底面には処理後の水を処理槽1の外部に排出する水排出口5が設けられている。
接地電極7は、その表面を被処理水6が水膜10を作って平らに流れるように、平面状に形成された流水部7aを有している。流水部7aは、架台9によって水平面に対して接地電極7の奥行方向(図1のY方向)に低くなるように傾斜を有し、かつ接地電極7の幅方向(図1のX方向)に水平となるように処理槽1内に固定されている。接地電極7の幅方向の縁部には、被処理水6が流水部7aの両側から漏れるのを規制する側壁8a、8bがそれぞれ設けられている。
なお、処理槽1は、気体が外部との間を自由に流通できないように、水供給口4及び水排出口5に例えば水封構造を備えている。また、被処理水6を水供給口4から接地電極7の流水部7a上に流下させるときに水が飛び散らないように、飛散防止構造を備えている。それらの構造は、何れも周知技術から適宜選択することができるため、図示を省略している。
側壁8a、8bには、それぞれ複数の(図1では各4個の)第一絶縁保持体12と、第二絶縁保持体13が、いずれもY方向に所定の間隔で、かつ側壁8a、8bからZ方向の上方に伸長するように設けられている。第一絶縁保持体12の先端部と第二絶縁保持体13の先端部との間には、ワイヤー状の高圧電極11が吊架されている。
複数(図1では4本)の高圧電極11は何れも、接地電極7の流水部7aからZ方向の上方に離間された位置において、流水部7aと平行に、かつ被処理水6の通流方向と交差する方向、即ち接地電極7の幅方向に延在するように設けられている。また、複数の高圧電極11の各々は、所定の間隔を介して互いに平行に設けられている。なお、以下の説明では、接地電極7の幅方向と同じ方向(図1ではX方向)を、高圧電極11の延在方向と呼ぶ。また、複数の高圧電極11は、それぞれがパルス電源(図示省略)の出力に対して電気的に並列接続されており、接地電極7は電気的に接地されている。
処理槽1内の水排出口5側(図1では右側)の端部近傍には、送風手段である送風装置14が備えられている。送風装置14には、複数(図1では3基)の送風ファン15がX方向に並設されている。また、図1では、水供給口4は、接地電極7の左側端部に対向する処理槽1の上面に設けられ、水排出口5は、接地電極7の右側端部に対向する処理槽1の底面に設けられている。
ガス供給口2から供給されるガス種としては、接地電極7と高圧電極11との間に発生する放電によって、オゾン(O3)、過酸化水素(H2O2)、及びオゾンよりも活性の高いヒドロキシルラジカル(OH)の少なくとも1つを生成し得る酸素ガス(O2)が用いられる。ただし、処理槽1の内部に供給されるガス種は、酸素ガスに限定されるものではなく、酸素を含むガスであれば良い。例えば、酸素に対して窒素または希ガスを任意の割合で混合させることができる。特に、希ガスを用いることにより、比較的低い電圧においても放電を安定的に形成することが可能となり、空気を用いた場合には、ガスコストを大幅に削減することができる。
なお、本実施の形態1では放電形成にパルス電源を用いる場合について説明するが、安定して放電が形成できれば、必ずしもパルス電源に限定されるものではなく、例えば交流電源または直流電源であってもよい。また、パルス電源から出力される電圧の極性、電圧波高値、繰り返し周波数、パルス幅等は、電極構造及びガス種等の諸条件に応じて、適宜決定することができる。一般的には、電圧波高値は、1kVから50kVの範囲が望ましい。これは、電圧波高値が1kV未満の場合、安定した放電が形成されず、また、50kV超とする場合、電源の大型化及び電気絶縁の困難化によりコストの著しい増加を伴うためである。
さらに、パルス電源における繰り返し周波数は、10pps(pulse−per−second)以上、100kpps以下とすることが望ましい。これは、繰り返し周波数が10pps未満の場合、十分な放電電力を投入するために非常に高い電圧が必要となり、100kppsよりも大きい場合、水処理の効率が低下するためである。また、被処理水6の流量及び処理対象物質の水質のいずれか一方または両方に応じて、電圧、パルス幅、パルス繰り返し周波数を調整するようにしてもよい。
また、接地電極7及び高圧電極11には、ステンレス鋼またはチタン等、耐腐食性に優れた金属材料を用いることが望ましい。ただし、これ以外の導電性材料を用いることもできる。さらに、接地電極7または高圧電極11の表面を、ガラスまたはセラミック等の誘電体で被覆してもよい。また、放電電極である高圧電極11は必ずしもワイヤー状である必要はなく、例えば、ロッド、ネジ、箔等を用いてもよい。
また、ワイヤー状の高圧電極11の設置数は、被処理水6の水質または処理流量、装置のサイズ等に応じて、適宜増減することが可能である。さらに、高圧電極11と接地電極7の間の距離は任意に決めることができる。ただし、接地電極7に対する高圧電極11の高さは、1mm以上、50mm以下とするのが好適である。接地電極7に対する高圧電極11の高さが1mm未満の場合、正確な高さを規定するのが困難であり、50mmよりも大きい場合、放電形成に非常に高い電圧が必要となる。
さらに、処理槽1内の気体の圧力は、被処理水6の供給及び排水が容易となるように、大気圧またはその近傍とすることが望ましい。ただし、必要に応じて、陽圧または陰圧にすることもできる。処理槽1内を陽圧にした場合、外部からの空気の混入が抑制され、処理槽1内の雰囲気を管理し易くなる。また、処理槽1内を陰圧にした場合、比較的低い電圧で放電18が形成されるようになり、電源の小型化及び簡素化が可能となる。さらに、圧力が低いほど放電18が広がり易いため、広い領域で放電18と被処理水6が接するようになり、水処理の速度が向上する。
次に、本実施の形態1に係る水処理装置における水処理方法について、図1を用いて説明する。酸素ガスは、ガス供給源(図示省略)からガス供給口2を通って処理槽1内に供給される。また、処理槽1内のガスは、供給される酸素ガスと同じ流量で、ガス排出口3から排気される。これにより、一定時間経過後、処理槽1内は高酸素濃度の雰囲気が形成される。
被処理水6は、水供給口4から処理槽1内に供給され、接地電極7の左側端部近傍に落下する。その後、被処理水6は、接地電極7の流水部7a上に水膜10を形成しながら、流水部7aの傾斜に従って側壁8a、8bの間を通流する。このとき、水膜10の膜厚は、被処理水6が高圧電極11に接することがないように調節される。即ち、接地電極7と高圧電極11は、水膜10と気体層を介して対向しており、この気体層が放電領域となる。
被処理水6は、接地電極7の右側端部から下方に落下し、水排出口5を通って処理槽1の外部に排出される。被処理水6が処理槽1の中を通流する過程では、被処理水6の一部が水蒸気として蒸発するため、処理槽1の内部は水蒸気を含む高酸素濃度の雰囲気が形成される。このとき、パルス電源を駆動させ、高圧電極11にパルス状の高電圧を印加することで、高圧電極11から流水部7a上の水膜10に向けて放電18が発生する。
さらに、送風装置14を作動させ、3基の送風ファン15を駆動させる。送風ファン15は、処理槽1内のガスを動かし、図1において左方向に向かう気流Aを誘起する。気流Aは、放電領域を、高圧電極11の延在方向の全領域にわたって高圧電極11と接しながら、流水部7aに沿って被処理水6の通流方向と逆方向に流れる。即ち、気流Aの風向きは、放電18が進展する方向(Z方向)と、高圧電極11の延在方向(X方向)の双方と交差する方向となっている。
このように、放電18の発生時に送風装置14により気流Aを形成することにより、高圧電極11に水滴が付着するのを抑制することができ、また、高圧電極11に水滴が付着した場合においても、気流Aの風圧によって水滴が吹き飛ばされ、スパーク放電が抑制される。これにより、高圧電極11に沿って均一な放電18が形成され、放電18は被処理水6と広い面積で接触し、被処理水6中の有機物を分解除去する。
なお、気流Aの風速は、水処理の条件に応じて適宜決定することができる。高圧電極11に付着した水滴を風圧によって吹き飛ばすためには、風速を数メートル毎秒から数十メートル毎秒とすることが望ましい。また、送風装置14による送風量は一定である必要はなく、処理条件や被処理水6の組成、あるいは高圧電極11に対する水滴の付着状況等に応じて変化させるようにしてもよい。これについては、後述の実施の形態9で詳細に説明する。
次に、本実施の形態1に係る水処理方法における水処理の原理について説明する。被処理水6が接地電極7の流水部7aを通流する際に放電18と触れることにより、被処理水6中の難分解性物質を含む有機物が分解される。なお、ここでは、有機物の分解を例に挙げて説明するが、放電で生じるオゾンやヒドロキシルラジカルが、除菌、脱色、及び脱臭にも有効であることは、周知の事実である。
放電18により、処理槽1内の酸素分子(O2)、水分子(H2O)が高エネルギーの電子と衝突し、式(1)、式(2)の解離反応が生じる。なお、以下の式において、eは電子、Oは原子状酸素、Hは原子状水素、OHはヒドロキシルラジカルである。
式(1)で発生した原子状酸素の多くは、次の式(3)の反応により、オゾンとなる。なお、式(3)において、Mは反応の第三体であり、気中のあらゆる分子や原子を表す。また、式(2)で生じたヒドロキシルラジカルの一部は、次の式(4)の反応により、過酸化水素となる。
上記の式(1)から式(4)の反応で生成された酸化性粒子(O、OH、O3、H2O2)は、次の式(5)により、接地電極7の流水部7a上を通流する被処理水6の水面近傍の有機物を、二酸化炭素(CO2)と水に酸化分解する。なお、式(5)において、Rは処理対象となる有機物である。
式(5)において有機物と反応しなかった原子状酸素とヒドロキシルラジカルは、式(3)及び式(4)により、比較的長寿命のオゾンと過酸化水素になり、その一部は次の式(6)及び式(7)により被処理水6に溶解する。なお、各式において、(liq.)は液相を意味している。
式(6)及び式(7)で得られた液相のオゾン及び過酸化水素は、次の式(8)の水中反応により、ヒドロキシルラジカルを生成する。さらに、式(6)から式(8)で生成された液相のオゾン、過酸化水素、及びヒドロキシルラジカルは、次の式(9)に示す水中反応により有機物を分解する。
本実施の形態1では、被処理水6が放電18と直接接する領域では、式(5)と式(9)の双方の反応によって、被処理水6中の有機物が分解される。一方、放電18と直接接しない領域では、式(9)の反応によって被処理水6中の有機物が分解される。
本実施の形態1に係る水処理装置において、高速かつ効率的な水処理を行える理由について、図2を用いて説明する。図2(a)は、高圧電極に水滴が付着していない場合、図2(b)は、高圧電極に水滴が付着した場合をそれぞれ示している。一般に、被処理水に対して放電を直接触れさせる水処理装置においては、被処理水の跳ね上がりや結露により、電極に水滴が付着することがある。本実施の形態1に係る水処理装置においては、接地電極7の上面に被処理水6が水膜10として存在し、水膜10の上方に放電領域となる気体層を介して高圧電極11が設けられている。
図2(a)に示すように、高圧電極11に水滴が付着していない場合、高圧電極11と水膜10の間の距離は、高圧電極11の延在方向にわたって略均一であり、高圧電極11と水膜10の間には均一な電界が形成される。これにより、高圧電極11と水膜10との間には、高圧電極11の延在方向全域にわたって均一な放電18が、各々の高圧電極11毎に、言わばシート状に形成される。このときの放電18は、一般にストリーマ状の放電であり、電子温度は数万度(℃)に達するが、中性ガス粒子の温度は室温程度に留まる。
一方、図2(b)に示すように、高圧電極11に水滴40が付着した場合、水滴40は重力によって水膜10の方向に垂れ下がり、水滴40の先端部と接地電極7の距離が短くなる。この状態で高圧電極11に電圧が印加されると、水滴40の先端部の電界強度が局所的に高くなり、水滴40の先端で局所的な強い放電、即ちスパーク放電41が生じる。スパーク放電41は、中性ガス粒子の温度が千度以上にも達する。一度スパーク放電41が生じると、その近傍のガス温度が上昇するため、さらに強い放電が生じ易くなり、スパーク放電41が持続的に生じる。その結果、水滴40の先端部以外の領域で放電しなくなったり、放電が不均一化したりするため、放電が局在化する。
水処理において、図2(a)のストリーマ状の放電18は好ましく、図2(b)のスパーク放電41は好ましくない放電形態である。前述のように、水処理は、(5)式及び(9)式によって進行する。(5)式を効率的に生じさせるためには、放電と被処理水6の接触面積を広くすることが重要である。ストリーマ状の放電18は、高圧電極11全体にわたって均一に形成されるため、水膜10と広い面積で接触するが、スパーク放電41は局在化するため、水膜10との接触面積が小さくなる。
また、(9)式を生じさせるには(6)式及び(7)式によりオゾンと過酸化水素を被処理水6に溶解させる必要がある。しかし、スパーク放電41が生じると、ガスの温度が千度以上にも上昇し、気相のオゾンと過酸化水素が熱分解されてしまう。このため、被処理水6に溶解するオゾンと過酸化水素が減少し、(9)式の反応が生じ難くなる。これら2つの理由、即ち放電と被処理水の接触面積が減少することと、オゾンと過酸化水素が熱分解されることにより、水処理を行う上でスパーク放電41は好ましくなく、ストリーマ状の放電18を均一に形成することが重要である。
次に、水処理における気流の効果について説明する。送風装置14によって誘起される気流Aには、高圧電極11に付着した水滴40を除去する以外に、水処理の速度と効率を向上させる効果もある。一般に、高速な水処理を行うためには高い電力を放電に投入する必要があり、1回目のパルス放電で形成されたオゾンや過酸化水素の一部が、続いて生じるパルス放電の電子衝突や加熱により分解され、オゾンや過酸化水素の一部が消滅し無効になる。即ち、水処理速度を向上させるために放電電力を増加させると、酸化性粒子の無効消滅が増大し、水処理の効率が低下するという矛盾が生じる。
これに対して、送風装置14は、放電18が進展する方向と、高圧電極11の延在方向のそれぞれと交差する気流Aを形成するため、1回目のパルス放電で生じたオゾンや過酸化水素は、次のパルス放電が生じる前に気流Aによって放電領域の外に輸送され、オゾンや過酸化水素の無効消滅が抑制される。その結果、気流Aがない場合と比較して、水処理の速度と効率が向上する。
また、一般に、前述の(6)式と(7)式の反応で被処理水6に溶解したオゾンと過酸化水素の多くは、水中での拡散が遅いため、水膜10の表面付近に留まり、水膜10の深部における水処理が進まないという課題がある。これに対して、本実施の形態1では、気流Aが水膜10の上面に沿って被処理水6の通流方向と逆方向に流れるため、風圧により水膜10の表面が波立つ。これにより、流水部7a上の被処理水6が撹拌され、表層付近に偏って存在していた溶存オゾンと過酸化水素が水膜10の深部に拡散するため、送風装置14を用いない場合と比較して水処理の速度と効率が向上する。
次に、本実施の形態1に係る水処理装置において、高圧電極11の破損が抑制される理由について説明する。水滴40を起点としてスパーク放電41が一度形成されると、その近傍の加熱や電子密度の増加により、さらにスパーク放電41が生じ易くなる。スパーク放電41が持続し、高圧電極11に大きな電流が流れると、高圧電極11が熱により溶融し破壊されることがある。これに対し、本実施の形態1に係る水処理装置によれば、送風装置14によって気流Aを誘起し、水滴40の発生を抑制しているため、スパーク放電41が抑制され、高圧電極11の破損も抑制される。
次に、本実施の形態1に係る水処理装置の変形例について、図3を用いて説明する。この変形例では、複数(図3では4基)の処理槽1A、1B、1C、1D(総称して処理槽1と記す)を上下方向に積層し、被処理水6が複数の処理槽1を並列して流下するようにしている。各処理槽1の上流側には、水供給口4が設けられている。各々の水供給口4には、被処理水6を供給する給水配管50A、50B、50C、50D(総称して給水配管50と記す)が接続されており、各給水配管50には被処理水6の流量を調整可能なバルブ51A、51B、51C、51D(総称してバルブ51と記す)が設けられている。
また、各処理槽1内には送風装置14A、14B、14C、14D(総称して送風装置14と記す)が設けられ、これらの送風装置14は、高圧電極11A、11B、11C、11D(総称して高圧電極11と記す)の延在方向全域にわたって高圧電極11と接しながら、接地電極7A、7B、7C、7D(総称して接地電極7と記す)の上面に沿って被処理水6の通流方向と逆方向に流れる気流Aを誘起する。
この変形例において、各処理槽1で時間当たり処理できる被処理水6の流量をQとする。まず、被処理水6が4Qの流量で供給された場合、各バルブ51を全開にし、各処理槽1に被処理水6を通流させる。さらに、パルス電源を動作させ、高圧電極11にパルス電圧を印加する。これにより、高圧電極11から接地電極7の上面の被処理水6に向けてそれぞれ放電が形成され、被処理水6が放電と触れることで難分解性物質を含む有機物が分解除去され、4Qの流量で水処理が行われる。
また、被処理水6が2Qの流量で供給された場合には、バルブ51A、51Bを全開にして処理槽1A、1Bに被処理水6を通流させると共に、バルブ51C、51Dを全閉にして処理槽1C、1Dには被処理水6を通流させない。あるいは、被処理水6が高濃度に難分解性物質を含む場合は、全てのバルブ51を半開にして、各処理槽1に被処理水6を0.5Qの流量で通流させるようにしても良い。
なお、この変形例では、複数の処理槽1を積層して構成したが、一つの処理槽1の内部に、接地電極7A、7B、7C、7Dおよび高圧電極11A、11B、11C、11D、送風装置14A、14B、14C、14Dを設けることもできる。即ち、接地電極7及び高圧電極11を含むユニットを、1つの処理槽1の中に鉛直方向に複数収容し、各ユニットに対応する送風手段を設けるようにしても良い。その場合、処理槽1には、少なくとも各ユニットに対応した複数の水供給口4が設けられる。
以上のように、本実施の形態1に係る水処理装置によれば、処理槽1の内部に気流を誘起させる送風装置14を備え、高圧電極11の延在方向の全領域にわたって高圧電極11と接しながら、接地電極7の流水部7aに沿って被処理水6の通流方向と逆方向に流れる気流Aを形成するようにしたので、高圧電極11に水滴40が付着するのを抑制することができ、高圧電極11に水滴40が付着した場合でも、気流Aの風圧により吹き飛ばすことができることから、スパーク放電41が抑制される。これにより、高圧電極11の延在方向の全領域にわたって均一なストリーマ状の放電18が安定的に継続され、被処理水6の広い面積に対して放電18を接触させることが可能となり、高速な水処理を行うことができる。
また、スパーク放電41を抑制することにより、気相のオゾンと過酸化水素の熱分解反応が抑制されるため、高速かつ効率的な水処理が行われると共に、高圧電極11の破損が抑制される。さらに、被処理水6の通流方向と気流Aの方向を逆方向とすることにより、放電18で生成されたオゾンや過酸化水素を含む気相から液相への物質輸送が促進され、高速かつ効率的な水処理が実現される。
また、接地電極7の流水部7aを傾斜させることにより、同じ処理槽1内で接地電極7を傾斜させない場合よりも被処理水6と放電18の接触面積を大きくすることができ、水処理の速度と効率が向上する。また、送風ファン15を処理槽1内に設け、処理槽1内のガスを動かして気流Aを形成するようにしたので、処理槽1の外部に風路を形成するための配管類を設備する必要がなく、簡易な構成である。
さらに、本実施の形態1の変形例によれば、被処理水6の水質または流量に応じて動作する処理槽1を切り替えることができるため、被処理水6の水質及び流量によらず最適な投入電力で水処理を行うことが可能である。また、処理槽1を上下方向に複数積層することで、処理槽1の設置面積を増大することなく、処理可能な被処理水6の流量を増やすことができる。
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。本実施の形態2に係る水処理装置は、金属製の処理槽1の内部に、複数(図4では4基)のユニット20A、20B、20C、20D(総称してユニット20と記す)を所定の間隔で鉛直方向に収容したものである。
各ユニット20は、接地電極と高圧電極により構成されている。最上段のユニット20Aは、金属製の平板状の接地電極7Aと、ワイヤー状の複数(図4では5本)の高圧電極11Aを有している。接地電極7Aの流水部7aは、被処理水6が水膜10を作って流れるように平面状に形成され、流水部7aは水平に設置されている。高圧電極11Aは、接地電極7A及び処理槽1に対して絶縁材(図示省略)を介して支持されている。高圧電極11Aは、パルス電源に接続されており、処理槽1は電気的に接地されている。
複数の高圧電極11Aは何れも、接地電極7Aの流水部7aから離間された位置において、流水部7aと平行に、かつ被処理水6の通流方向と交差する方向に延在するように設けられている。また、複数の高圧電極11Aの各々は、所定の間隔を介して互いに平行に設けられている。その他のユニット20B、20C、20Dの構成は、ユニット20Aと同様であるので説明を省略する。なお、ユニット20の数及び各ユニット20の高圧電極11の数等は、処理槽1の寸法または必要とされる水処理能力等に応じて、適宜設定することができる。
処理槽1は、その上面に水供給口4が設けられると共に、側面の最下部に水排出口5が設けられている。また、処理槽1の側面上部にはガス供給口2が設けられている。各ユニット20は、上段側に配設されたユニット20における被処理水6の通流方向と、そのユニット20に隣り合う下段側のユニット20における被処理水6の通流方向とが逆方向になるように配置されている。即ち、上下方向に隣り合うユニット20の被処理水6の通流方向は逆方向である。
図4に示すように、ユニット20Aとユニット20Cは、それぞれの接地電極7A、7Cの左側端部が処理槽1の左側面に固定され、接地電極7A、7Cの右側端部が処理槽1の右側面から所定寸法離間されている。接地電極7A、7Cの流水部7aを通った被処理水6は、接地電極7A、7Cと右側面の離間された部分から流下され、処理槽1内部の気体も同じ部分を通流する。
一方、ユニット20Bとユニット20Dは、それぞれの接地電極7B、7Dの右側端部が処理槽1の右側面に固定され、接地電極7B、7Dの左側端部が処理槽1の左側面から所定寸法離間されている。接地電極7B、7Dの流水部7aを通った被処理水6は、接地電極7B、7Dと左側面の離間された部分から流下され、処理槽1内部の気体も同じ部分を通流する。これにより、水供給口4から供給された被処理水6は、図4に示すように各ユニット20の接地電極7A、7B、7C、7D(総称して接地電極7と記す)のそれぞれの流水部7aに沿って、ジグザグ状に流下する。
また、図4に示すように、各ユニット20に対応して、送風手段であるプロペラユニット21A、21B、21C、21D(総称してプロペラユニット21と記す)が設けられている。各プロペラユニット21は、処理槽1を貫通するように設けられたベアリング21bと、ベアリング21bを介して処理槽1の外部に備えられたモータ21aと、モータ21aによって回転されるフィン21cを備えている。フィン21cは、接地電極7が離間されている側の処理槽1の側面に、高圧電極11の鉛直方向の設置位置とほぼ同じ高さに配設される。
各プロペラユニット21は、対向する高圧電極11に向けて、被処理水6の通流方向と逆方向の気流Aを誘起するように取り付けられている。また、各プロペラユニット21は、各高圧電極11A、11B、11C、11D(総称して高圧電極11と記す)の延在方向の全域にわたって気流Aを作用させられるように、複数のフィン21cを備えている。その他の構成については、上記実施の形態1と同様である。
本実施の形態2に係る水処理装置の動作について説明する。酸素ガスは、ガス供給源からガス供給口2を通って所定の流量で処理槽1内に供給される。なお、本実施の形態2では、処理槽1はガス排出口を備えていないため、処理槽1内のガスは、供給された酸素ガスの流量と同等の流量で、水排出口5から被処理水6と共に排出される。これにより、処理槽1内の空気は徐々に外に排出され、所定時間経過後に処理槽1内に高酸素濃度の雰囲気が形成される。
水供給口4から処理槽1内に供給された被処理水6は、接地電極7Aの流水部7aを、水膜10を形成して流れ、接地電極7Aの右側端部から接地電極7Bの上面に落下する。以下同様に、被処理水6は、接地電極7B、接地電極7C、接地電極7Dの順にそれぞれの流水部7aを流れ、最終的に処理槽1の底部に落下し、水排出口5から排出される。その過程で、被処理水6の一部が水蒸気として蒸発するため、処理槽1の内部は水蒸気を含む高酸素濃度の雰囲気が形成される。また、高圧電極11と水膜10との間に気体層が形成されるように、水膜10の厚さが調節されている。水膜10の厚さは、供給される被処理水6の流量または接地電極7の上面の表面粗さによって調整される。
次に、プロペラユニット21を動作させ、処理槽1内に気流Aを誘起する。各プロペラユニット21は、処理槽1内のガスを動かすことで、高圧電極11の延在方向と、放電が進展する方向の双方と交差し、かつ被処理水6の通流方向と逆方向の気流Aを形成する。さらに、パルス電源を動作させ、各高圧電極11にパルス電圧を印加する。これにより、各ユニット20において、高圧電極11から流水部7a上の被処理水6に向けて放電が形成され、被処理水6が流水部7aを通流する過程で放電と触れることにより、難分解性物質を含む有機物が分解除去される。なお、水処理の原理は、前述の実施の形態1と同様である。
本実施の形態2によれば、送風手段としてのプロペラユニット21を動作させることで、高圧電極11の延在方向と放電が進展する方向の双方と交差する気流Aが誘起されるため、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。また、接地電極7及び高圧電極11を備えたユニット20を鉛直方向に4基備え、各ユニット20の接地電極7と高圧電極11の間でそれぞれ放電を形成するようにしたので、上記実施の形態1より狭い設置面積であっても、実施の形態1よりも放電と被処理水6が接する接触面積を増やすことができるため、高速で効率的な水処理を行うことができる。
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。本実施の形態3に係る水処理装置は、各ユニット20の接地電極7の流水部7aが、水平面に対して被処理水6の通流方向の下流側に向けて低くなるように傾斜している。また、上下方向に隣り合う接地電極7は、互いに逆方向に傾斜しており、被処理水の通流方向が逆方向である。なお、各接地電極7は、幅方向には水平に設置されている。被処理水6は、傾斜された各接地電極7の流水部7aに沿って、順次ジグザグ状に一連の流れとして流下する。
接地電極7Aの左側端部は処理槽1の左側面に固定され、右側端部は処理槽1の右側面から所定寸法離間されており、左側端部は右側端部より高い位置に保持されている。また、接地電極7Bの右側端部は、処理槽1の右側面に固定され、左側端部は処理槽1の左側面から離間されており、右側端部は左側端部より高い位置に保持されている。以下同様に、接地電極7C、接地電極7Dが交互に設けられている。本実施の形態3に係る水処理装置のその他の構成、動作、及び水処理の原理については、上記実施の形態1及び実施の形態2と同様であるので説明を省略する。
なお、本実施の形態3に係る水処理装置の接地電極7の傾斜角度は、適宜決定することができる。一般に傾斜角度を大きくすると、水膜10の厚さが薄くなる一方で、被処理水6の流下速度が増加し、処理槽1内における被処理水6の滞在時間が短くなる。従って、処理槽1の大きさ、被処理水6の水質、及び被処理水6の流量等を考慮して、傾斜の角度を適宜決めることが望ましい。
本実施の形態3によれば、上記実施の形態2と同様の効果に加え、各ユニット20の接地電極7が傾斜しているため、接地電極7が水平に配置された場合と比較して水膜10の厚さが薄くなる。これにより、被処理水6の体積に対する表面積の割合が増加し、前述の式(5)、式(6)、及び式(7)の反応がより多く生じるため、高速かつ効率的な水処理が行われる。
実施の形態4.
図6は、本発明の実施の形態4に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。本実施の形態4に係る水処理装置は、送風手段として、ガスの循環路である循環配管25とブロワ26を有し、各ユニット20の高圧電極11の上部に、気流をガイドする導風部材であるガイド22A、22B、22C、22D(総称してガイド22と記す)を設けたものである。なお、本実施の形態4に係る水処理装置のその他の構成及び動作、水処理の原理等については、上記実施の形態1または上記実施の形態3と同様であるので説明を省略する。
図6に示すように、処理槽1は、その上面に循環ガス出口23が設けられ、右側面の底部付近に循環ガスの吐出口24が設けられている。処理槽1の外部には、循環ガス出口23と吐出口24を繋ぐように循環配管25が設けられ、循環配管25の途中にブロワ26が配設されている。本実施の形態4では、吐出口24は、最下段のユニット20Dにおける被処理水6の下流側端部に対向する処理槽1の側面に設けられ、循環ガス出口23は、最上段のユニット20Aにおける被処理水6の上流側端部に対向する処理槽1の上面に設けられている。また、ガス供給口2は、処理槽1の左側面の底部付近に設けられている。
ユニット20Aの高圧電極11Aに対して接地電極7Aの反対側には、処理槽1の右側面と処理槽1の上面を繋ぐ平板状のガイド22Aが、接地電極7Aと平行に設置されている。同様に、ユニット20Bには、処理槽1の左側面と接地電極7Aの下面を繋ぐガイド22Bが設けられ、ユニット20Cには、処理槽1の右側面と接地電極7Bの下面を繋ぐガイド22Cが設けられ、ユニット20Dには、処理槽1の左側面と接地電極7Cの下面を繋ぐガイド22Dが設けられている。
本実施の形態4では、ブロワ26を動作させることで、循環ガス出口23から吸気された処理槽1内のガスが循環配管25を通り、吐出口24から処理槽1の下部空間に吐出される。これにより処理槽1内に気流Aが形成される。気流Aは、接地電極7Dとガイド22Dと処理槽1の3つの側面(図6の左側面と図示しない前後方向の側面)によって囲まれた領域を、接地電極7Dの上面に沿って、被処理水6の通流方向と逆方向に流れる。
その後、気流Aは、接地電極7Cとガイド22Cと処理槽1の側面とによって囲まれた領域、接地電極7Bとガイド22Bと処理槽1の側面とによって囲まれた領域を順次通過し、最終的には接地電極7Aとガイド22Aと処理槽1の側面とによって囲まれた領域を通過して循環ガス出口23から吸気される。このように、本実施の形態4では、ブロワ26により処理槽1内のガスが循環され、処理槽1内に一連の流れとして気流Aが誘起される。
なお、ガイド22の材質は特に限定されないが、例えばステンレス等の金属材料を使用する場合は、ガイド22と高圧電極11の距離を、接地電極7と高圧電極11の距離よりも大きくすることが望ましい。これにより、好ましくない箇所での放電を抑制することができる。また、ガイド22にセラミックまたはガラス等の絶縁体を用いる場合は、高圧電極11と近接させて配置することができる。従って、気流Aが通る領域を狭くすることができ、少ない送風量でスパーク放電を抑制する効果が得られる。
また、送風手段は必ずしもブロワ26である必要なく、ポンプやファン等を用いることができる。ただし、処理槽1内のオゾンを含む高湿度ガスに対して使用することから、耐食性に優れた機器を用いることが望ましい。例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされたポンプやブロワ等は好適に用いられる。
本実施の形態4によれば、上記実施の形態1及び実施の形態3と同様の効果に加え、1台のブロワ26によって誘起された気流Aを4基のユニット20に連続的に通し、各高圧電極11を含む放電領域の全領域にわたって気流Aを作用させるようにしたので、上記実施の形態3のように各ユニット20の高圧電極11のそれぞれに対応するプロペラユニット21を備える必要がなく、装置構成が簡素化される。また、ガイド22を設けることにより乱流が抑制され、気流Aが散逸することなく循環されるため、全体的に少ない送風量でスパーク放電を抑制する効果が得られる。
実施の形態5.
図7は、本発明の実施の形態5に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。本実施の形態5に係る水処理装置は、上記実施の形態4に係る水処理装置のガイド22を設備せず、各ユニット20における被処理水6の下流側端部に対向する処理槽1の側面に、循環ガスの吐出口24A、24B、24C、24D(総称して吐出口24と記す)を設けたものである。なお、本実施の形態5に係る水処理装置のその他の構成及び動作、水処理の原理等については、上記実施の形態1または上記実施の形態4と同様であるので説明を省略する。
図7に示すように、処理槽1の上面に設けられた循環ガス出口23には循環配管25の一方の端部が接続され、ブロワ26の吸気部に連通されている。処理槽1の右側面には、ユニット20Aの右側端部の高圧電極11Aに対応する位置に、処理槽1を貫通する吐出口24Aが設けられると共に、ユニット20Cの右側端部の高圧電極11Cに対応する位置に、吐出口24Cが設けられている。
また、処理槽1の左側面には、ユニット20Bの左側端部の高圧電極11Bに対応する位置に、吐出口24Bが設けられると共に、ユニット20Dの左側端部の高圧電極11Dに対応する位置に、吐出口24Dが設けられている。循環配管25の他方の端部は複数に分岐され、吐出口24A、24B、24C、24Dにそれぞれ接続されている。なお、各吐出口24は、高圧電極11の延在方向全域に気流Aが均等に当たるように、細長いスリット状に形成されている。
本実施の形態5に係る水処理装置においてブロワ26を動作させると、循環ガス出口23から吸気された処理槽1内のガスが、複数(図7では4基)のユニット20に対応して分岐された循環配管25を通り、各吐出口24から吐出される。これにより、高圧電極11の延在方向の全領域にわたって高圧電極11と接しながら、接地電極7の流水部に沿って被処理水6の通流方向と逆方向に流れる気流Aが形成される。
本実施の形態5によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、循環配管25をユニット20の数に分岐し、各ユニット20の高圧電極11に対応する処理槽1の側面に形成された吐出口24から気流Aを吐出させてスパーク放電を抑制するようにしたので、上記実施の形態4のガイド22(図6参照)を省略することができ、上記実施の形態4よりも処理槽1の内部構成を簡素化することができる。
実施の形態6.
図8は、本発明の実施の形態6に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。本実施の形態6に係る水処理装置は、上記実施の形態5に係る水処理装置の吐出口24の位置を一部変更し、吐出口24A、24B及び逆向吐出口27B、27Dを全て処理槽1の右側面に設けたものである。循環配管25は4系統に分岐され、吐出口24A、24C、及び逆向吐出口27B、27Dにそれぞれ接続されている。なお、本実施の形態6に係る水処理装置のその他の構成及び動作、水処理の原理等については、上記実施の形態1または上記実施の形態5と同様であるので説明を省略する。
本実施の形態6に係る水処理装置は、図8に示すように、ユニット20Aの高圧電極11Aに対応する吐出口24Aと、ユニット20Cの高圧電極11Cに対応する吐出口24Cが、ユニット20A、20Cにおける被処理水6の下流側端部に対向する処理槽1の側面に設けられ、被処理水の通流方向と逆方向の気流Aを形成している。
また、ユニット20Bの高圧電極11Bに対応する逆向吐出口27Bと、ユニット20Dの高圧電極11Dに対応する逆向吐出口27Dが、ユニット20B、20Dにおける被処理水6の上流側端部に対向する処理槽1の側面に設けられ、被処理水6の通流方向と同じ方向の気流A´を形成している。
なお、本実施の形態6では、吐出口24と逆向吐出口27をそれぞれ2個ずつ設けたが、吐出口24と逆向吐出口27の設置数またはそれらの設置比率は、装置構成の簡易さと水処理の効率等を考慮して適宜変更することができる。処理槽1内の気相オゾン及び過酸化水素を被処理水6に溶解させる効果においては、対向流である気流Aが望ましいが、高圧電極11に付着した水滴を風圧によって吹き飛ばす効果は、気流Aと気流A´に違いはない。
本実施の形態6によれば、上記実施の形態1及び実施の形態5と同様の効果に加え、被処理水6の通流方向と同じ方向の気流A´を形成する逆向吐出口27B、27Dを設けることにより、水処理の効率に関して一定の効果を得ながら装置構成を簡素にすることができ、循環配管25の長さを上記実施の形態5よりも短くすることができる。
実施の形態7.
図9は、本発明の実施の形態7に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。上記実施の形態2から実施の形態6では、各ユニット20を構成する接地電極7は平板状であったが、本実施の形態7では、各ユニット20を構成する接地電極29A、29B、29C、29D(総称して接地電極29と記す)は、断面形状が略直角三角形の中空の三角筒形である。
接地電極29の形状及び配置について、図9を用いて詳細に説明する。接地電極29は、図9の紙面の正面側から見て断面が略直角三角形に形成されており、斜面を上側、水平な底面を下側にして設置され、垂直面は処理槽1の側面に位置している。なお、垂直面には、噴上げガス送給口28A、28B、28C、28D(総称して噴上げガス送給口28と記す)が設けられている。
接地電極29A、29Cは、図9において左側に位置する垂直面が処理槽1の左側面に固定され、右側に位置する頂角端部が処理槽1の右側面から離間されている。同様に、接地電極29B、29Dは、右側に位置する垂直面が処理槽1の右側面に固定され、左側に位置する頂角端部が処理槽1の左側面から離間されている。これにより、被処理水6は、接地電極29A、29B、29C、29Dのそれぞれの斜面からなる流水部に沿って一連の流れとして流下する。
また、接地電極29の流水部は、通気性を有する多数の微細孔30を有しており、ブロワ26によって付勢された気流が各々の噴上げガス送給口28を通って流水部の背面側から送給されることにより、被処理水6をミスト状ないしはそれに近い微細水滴31として上方に跳ね上げ、流水部の上方に被処理水6の微細水滴31の層が形成される。なお、微細孔30の寸法は、直径0.1mm以上、1mm以下とすることが望ましい。直径が0.1mm未満の場合は微細孔30が閉塞しやすく、1mmを超える場合は微細孔30の断面で気流の分布が生じ、均一に微細水滴31を形成することが困難になる。
また、微細水滴31の水滴径は、一般に1μm以上、1mm以下とすることが望ましい。水滴径が1μm未満の場合、微細水滴31の体積が小さく(6)式や(7)式の反応がすぐに飽和するため反応の効率が低下しやすく、1mmを超える場合は、高圧電極11に微細水滴31が付着した際に、スパーク放電が発生する可能性が高くなる。
処理槽1の上面に形成された循環ガス出口23には、ブロワ26の吸気部に連通する循環配管25が取り付けられている。ブロワ26の吐出側に接続された循環配管25は下流側に向けて左右に分岐されている。処理槽1の左側に分岐された循環配管25は、さらに4系統に分岐され、それぞれガス送給口28A、28C、及び吐出口24B、24Dに接続されている。また、処理槽1の右側に分岐された循環配管25は、さらに4系統に分岐され、それぞれ連通する噴上げガス送給口28B、28D、及び吐出口24A、24Cに接続されている。
本実施の形態7に係る水処理装置においてブロワ26を動作させると、処理槽1内から循環ガス出口23を介して循環配管25に吸気されたガスの一部は、各噴上げガス送給口28を通って接地電極29の中空内部に送給され、それぞれの斜面に形成された微細孔30から上方へ吐出される。この際、接地電極29の斜面を流下する水膜10の一部が、微細水滴31として上方に噴き上げられる。同時に、処理槽1内から循環配管25に吸気されたガスの一部は、各吐出口24から吐出され、それぞれの高圧電極11に対し、被処理水6の通流方向と逆方向の気流Aを形成する。
本実施の形態7では、接地電極29の斜面を流下する被処理水6が形成する水膜10の一部が、微細水滴31として上方に跳ね上げられることにより、高圧電極11と接地電極29との間に形成された放電と被処理水6との接触面積が増加する。その結果、前述の(5)式の反応が多く発生する。また、ガスが微細孔30から吐出する際に水膜10が撹拌されるため、被処理水6中に溶解するオゾン、過酸化水素、または有機物等の濃度が均一化され、前述の(9)式の反応が多く生じる。
さらに、微細孔30から噴き出すガスは、処理槽1内から吸気したものであるため、放電で生じたオゾン及び過酸化水素を含む。オゾン及び過酸化水素を含むガスが水膜10と接触することで、前述の(6)式や(7)式の反応が多く発生する。これらのことから、微細水滴31を形成することにより、微細水滴31を形成しない場合よりも水処理の速度と効率が向上する。
なお、微細水滴31を形成することにより、高圧電極11に付着する水滴が多くなるが、処理槽1内から吸気されたガスの一部は吐出口24を通って高圧電極11に吹き付けられているので、高圧電極11に付着した水滴は風圧により吹き飛ばされる。即ち、微細水滴31の形成に伴い高圧電極11に水滴が付着しても、その水滴は迅速に取り除かれるため、スパーク放電を抑制することができる。なお、本実施の形態7では、噴上げガス送給口28に送給するガスをブロワ26により付勢したが、微細水滴31を形成するための送風手段を別に用意してもよい。
本実施の形態7によれば、上記実施の形態1及び実施の形態5と同様の効果に加え、接地電極29の流水部に微細孔30を設け、水膜10の一部から微細水滴31を形成することにより、さらに効率的かつ高速な水処理が可能となる。
実施の形態8.
図10は、本発明の実施の形態8に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。本実施の形態8に係る水処理装置は、ユニット20を流下した被処理水6を処理槽1内に循環させる水循環配管60と、被処理水6を微細水滴化して送風手段(図10ではブロワ26)により形成された気流Aに供給する微細水滴供給手段61を備えている。
本実施の形態8に係る水処理装置は、平板状の接地電極7と複数の高圧電極11から構成されるユニットを1基備えている。処理槽1には、左側面に循環ガス出口23が設けられ、右側面の高圧電極11と接地電極7との間の高さに気流Aを誘起する吐出口24が設けられている。処理槽1の外部には、循環ガス出口23と吐出口24を繋ぐ循環配管25が設けられ、循環配管25の途中にはブロワ26が配設されている。
また、処理槽1の外部には、水排出口5から排出された処理後の被処理水6を一時的に貯水する貯水槽62が設けられている。貯水槽62は、底部に水排出口63を有し、上部に水循環口64を有している。この水循環口64と吐出口24を繋ぐ水循環配管60には、水循環ポンプ65と、水循環ポンプ65よりも吐出口24側に配置される微細水滴供給手段61とが配設されている。
本実施の形態8に係る水処理装置において水循環ポンプ65を動作させると、水循環口64から吸水された貯水槽62内の被処理水6が水循環配管60を通り、微細水滴供給手段61に供給される。微細水滴供給手段61に供給された被処理水6は、微細水滴66として吐出口24に供給され、吐出口24から吐出されるガスと共に高圧電極11と接地電極7との間に供給される。
このように、被処理水6の一部を微細水滴66として高圧電極11付近に供給することにより、高圧電極11と接地電極7との間に形成された放電と被処理水6との接触面積が増加する。その結果、前述の(5)式の反応が発生し、処理後の被処理水6に微量に残留していた有機物がさらに分解除去される。また、微細水滴66がオゾン及び過酸化水素を含むガスと接触することで、前述の(6)式や(7)式の反応が多く発生する。これらのことから、微細水滴66を供給することにより、微細水滴66を供給しない場合よりも水処理の速度と効率が向上する。
なお、微細水滴66を供給することにより、高圧電極11に付着する水滴が多くなるが、処理槽1内から吸気されたガスが吐出口24を通って高圧電極11に吹き付けられているので、高圧電極11に付着した水滴は風圧により吹き飛ばされる。即ち、微細水滴66の形成に伴い高圧電極11に水滴が付着しても、その水滴は迅速に取り除かれるため、スパーク放電を抑制することができる。
微細水滴供給手段61は、被処理水6を微細水滴化することができるものであれば、特に限定されるものではなく、種々の手法を適用することができる。例えば、シャワーノズル、一流体ノズル、二流体ノズル、超音波振動子、超音波ホモジナイザ、または機械的に被処理水6を跳ね上げて水滴化する跳ね上げ機構、または被処理水6を落下、ないし壁面に衝突させて水滴化する反跳機構等を適用することができる。微細水滴66の水滴径は、100μm以下であれば、ガスと共に処理槽10の広い範囲に拡散されるため好ましい。
また、本実施の形態8では、微細水滴供給手段61を処理槽1の外部に設けたが、処理槽1の内部に設置することもできる。その場合、処理槽1の内部において送風装置14(図1参照)で発生した気流Aに微細水滴66を供給する。処理槽1の内部に微細水滴供給手段61を設置した場合、吐出口24の内壁への衝突による微細水滴66の損失を抑制することができる。また、本実施の形態8では、ユニットを流下した被処理水6を微細水滴66として供給したが、処理前の被処理水6を供給しても同様の効果を得ることができる。また、被処理水6以外の水を供給した場合も、前述の(6)式や(7)式の反応が多く発生することにより、水処理効率と水処理速度を向上する効果が得られる。
本実施の形態8によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、微細水滴供給手段61により被処理水6の一部を微細水滴66として高圧電極11付近に供給するようにしたので、さらに高速かつ効率的な水処理が可能となる。
実施の形態9.
図11は、本発明の実施の形態9に係る水処理装置の要部構成を概念的に示す断面図である。本実施の形態9に係る水処理装置は、処理槽1の内部環境計測手段として、処理槽1内の被処理水6の温度を計測する温度計70と、処理槽1内の温湿度を計測する温湿度計71と、高圧電極11における電気特性を計測する電気特性計測手段72と、処理槽1の内部における放電18による発光強度を計測する受光計73とを備えると共に、内部環境計測手段による計測結果に基づいて送風手段(図11ではプロペラユニット21)の送風量を調整する送風量制御ユニット74を備えている。
なお、図11に示す例では、内部環境計測手段として、温度計70、温湿度計71、電気特性計測手段72、及び受光計73を備えているが、それらの少なくとも1つを備えていればよい。また、温湿度計71は、処理槽1内の温度及び湿度(露点)のいずれか一方を計測するものであってもよい。
図11に示すように、温度計70は接地電極7に設けられ、温湿度計71及び受光計73は、処理槽1の内部上方に設けられる。また、電気特性計測手段72は、処理槽1の外部において、高圧電極11とパルス電源75を接続する電気配線76に設けられる。温度計70、温湿度計71、電気特性計測手段72及び受光計73から出力された信号は、それぞれ送風量制御ユニット74に入力される。送風量制御ユニット74は、受信した各信号に基づいて、プロペラユニット21により形成される気流Aの送風量を制御する。なお、本実施の形態9に係る水処理装置のその他の構成及び動作、水処理の原理等については、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
本実施の形態9に係る水処理装置における温度計を用いた送風量の制御手順について、図12のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1において、水処理の際に想定される様々な被処理水6の温度に対し、必要な送風量を予め計測して求め、被処理水6の温度に対する必要な送風量のデータを送風量制御ユニット74に保存する。高圧電極11に形成される水滴は、気流A中の水分量に応じてその形成頻度及び寸法が変化することから、高圧電極11に形成される水滴の形成頻度及び寸法は、被処理水6の蒸気圧、即ち温度に依存する。
被処理水6の温度が高くなると、水滴の形成頻度が増加し、かつ寸法が大きくなるため、水滴を風圧によって吹き飛ばすために送風量の増加が必要になる。一方、被処理水6の温度が低くなると、水滴の形成頻度が低下し、寸法が縮小するため、少ない送風量で良い。このように、被処理水6の温度に依存して必要な送風量が決まるため、予め実験を行い、データを保存しておく。
次に、ステップS2において、水供給口4から被処理水6を供給し、水処理を開始する。続いてステップS3において、被処理水6が供給されている場合(YES)、ステップS4に進み、温度計70により被処理水6の温度を計測する。続いてステップS5において、送風量制御ユニット74は、予め保存されている、現在の被処理水6の温度に必要な送風量のデータを取得し、ステップS6において、現在の送風量と、ステップS5で取得した必要な送風量とを比較する。
ステップS6において、現在の送風量が必要な送風量よりも少ない場合(YES)は、ステップS7に進み、送風量を増加する。一方、ステップS6において、現在の送風量が必要な送風量よりも大きい場合(NO)は、ステップS8に進み、送風量を減少する。ステップS3において被処理水6の供給が終了するまでは、以上の処理を連続的または離散的に繰り返す。
次に、温湿度計71を用いた送風量の制御手順について、図13のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS11において、水処理の際に想定される気流Aの様々な温湿度に対し、必要な送風量を予め計測して求め、気流Aの温湿度に対する必要な送風量のデータを送風量制御ユニット74に保存する。高圧電極11に形成される水滴は、気流A中の水分量に応じてその形成頻度及び寸法が変化することから、高圧電極11に形成される水滴の形成頻度及び寸法は、気流Aの水分量、即ち気流Aの温湿度に依存する。
気流Aの水分量が多くなると、水滴の形成頻度が増加し、かつ寸法が大きくなるため、水滴を風圧によって吹き飛ばすために送風量の増加が必要になる。一方、気流Aの水分量が少なくなると、水滴の形成頻度が低下し、寸法が縮小するため、少ない送風量で良い。このように、気流Aの温湿度に依存して必要な送風量が決まるため、予め実験を行い、データを保存しておく。
続いてステップS12において、水供給口4から被処理水6を供給し、水処理を開始する。次にステップS13において、被処理水6が供給されている場合(YES)、ステップS14に進み、温湿度計71により気流Aの温湿度を計測する。続いてステップS15において、送風量制御ユニット74は、予め保存されている、現在の気流Aの温湿度に必要な送風量のデータを取得し、ステップS16において、現在の送風量と、ステップS15で取得した必要な送風量とを比較する。
ステップS16において、現在の送風量が必要な送風量よりも少ない場合(YES)は、ステップS17に進み、送風量を増加する。一方、ステップS16において、現在の送風量が必要な送風量よりも大きい場合(NO)は、ステップS18に進み、送風量を減少する。ステップS13において被処理水6の供給が終了するまでは、以上の処理を連続的または離散的に繰り返す。なお、図13のフローチャートでは、気流Aの温湿度データを用いて送風量を制御する例を示したが、温度または湿度のいずれか一方を用いて送風量を制御することも可能である。
次に、電気特性計測手段72を用いた送風量の制御手順について、図14のフローチャートを用いて説明する。ステップS21において、高圧電極11に入力された電気特性に対し、その電気特性において必要な送風量を予め計測して求め、電気特性に対する必要な送風量のデータを送風量制御ユニット74に保存する。高圧電極11と接地電極7との間の電界分布は、上記実施の形態1で説明したように、高圧電極11における水滴形成状態に依存して変化する。即ち、パルス電源75から高圧電極11に電圧を入力した場合の電気特性(電圧、電流、及び電力)は、高圧電極11での水滴形成状態に依存して変化することから、電気特性により必要な送風量が決まる。
続いてステップS22において、水供給口4から被処理水6を供給し、水処理を開始する。次にステップS23において、被処理水6が供給されている場合(YES)、ステップS24に進み、電気特性計測手段72により高圧電極11の電気特性を計測する。続いてステップS25において、送風量制御ユニット74は、予め保存されている、現在の高圧電極11の電気特性に必要な送風量のデータを取得し、ステップS26において、現在の送風量と、ステップS25で取得した必要な送風量とを比較する。
ステップS26において、現在の送風量が必要な送風量よりも少ない場合(YES)は、ステップS27に進み、送風量を増加する。一方、ステップS26において、現在の送風量が必要な送風量よりも大きい場合(NO)は、ステップS28に進み、送風量を減少する。ステップS23において被処理水6の供給が終了するまでは、以上の処理を連続的または離散的に繰り返す。
また、電気特性計測手段72を用いた別の制御方法として、図15のフローチャートに示す手順で送風量を制御することもできる。ステップS31において、高圧電極11におけるスパーク放電発生時の電気特性を予め計測して求め、その閾値データを送風量制御ユニット74に保存する。高圧電極11に水滴が形成され、スパーク放電が発生した場合、高圧電極11に流れる電流及び電力は瞬時的に増加する。従って、電気特性の瞬時的な増加を計測することで、スパーク放電の発生を検出することができる。
次に、ステップS32において、水供給口4から被処理水6を供給し、水処理を開始する。続いてステップS33において、被処理水6が供給されている場合(YES)、ステップS34に進み、電気特性計測手段72により高圧電極11の電気特性を計測する。さらに、ステップS35において、計測した電気特性と、ステップS31で保存したスパーク放電発生時の電気特性の閾値データとを比較する。
ステップS35において、計測した電気特性がスパーク放電発生時の電気特性の閾値データよりも大きい場合(YES)は、スパーク放電が発生しているので、ステップS36に進み、送風量を増加する。一方、ステップS35において、計測した電気特性が閾値データよりも小さい場合(NO)は、ステップS37に進み、送風量を減少する。ステップS33において被処理水6の供給が終了するまでは、以上の処理を連続的または離散的に繰り返す。
次に、受光計73を用いた送風量の制御手順について、図16のフローチャートを用いて説明する。ステップS41において、スパーク放電発生時の発光強度を予め計測して求め、その閾値データを送風量制御ユニット74に保存する。高圧電極11に水滴が形成され、スパーク放電が発生した場合、放電からの発光強度が瞬時的に増加する。従って、放電からの発光強度の変化を計測することで、スパーク放電の発生を検出することができる。
続いてステップS42において、水供給口4から被処理水6を供給し、水処理を開始する。次にステップS43において、被処理水6が供給されている場合(YES)、ステップS44に進み、受光計73により放電の発光強度を計測する。さらに、ステップS45において、計測した発光強度と、ステップS41で保存したスパーク放電発生時の発光強度の閾値データとを比較する。
ステップS45において、計測した発光強度がスパーク放電発生時の発光強度の閾値データよりも大きい場合(YES)は、スパーク放電が発生しているので、ステップS46に進み、送風量を増加する。一方、ステップS45において、計測した発光強度が閾値データよりも小さい場合(NO)は、ステップS47に進み、送風量を減少する。ステップS43において被処理水6の供給が終了するまでは、以上の処理を連続的または離散的に繰り返す。
このように、本実施の形態9に係る水処理装置は、処理槽1の内部環境計測手段としての温度計70、温湿度計71、電気特性計測手段72、受光計73による計測結果に基づいて送風量を制御することにより、処理槽1内の状態に応じて、高圧電極11に付着した水滴を吹き飛ばすために必要な最小の送風量の気流Aを常に送風することが可能となり、プロペラユニット21の消費電力を抑制することができる。
さらに、送風量を最小に抑制することで、単位体積当たりの気流Aに投入される電力を増加することができると共に、気流内のラジカルが処理槽1の内壁に衝突し分解する頻度を抑制することができるので、単位体積当たりの気流内のラジカル量が増加し、前述の(6)式及び(7)式の反応を多く生じさせることができ、高速な水処理が可能となる。
なお、温度計70、温湿度計71、電気特性計測手段72、及び受光計73を全て備えている必要はなく、いずれか一つを用いて送風量を制御するようにしてもよい。ただし、複数を組み合わせた方が、送風量を高精度に制御することが可能となり、スパーク放電を確実に抑制することができる。
本実施の形態9において用いられる温度計70としては、熱電対、抵抗温度計、非接触温度計、液柱温度計、バイメタル式温度計等の一般的な温度計測手段を用いることができる。また、温湿度計71としては、熱電対、抵抗温度計、非接触温度計、液柱温度計、バイメタル式などの一般的な温度計測手段や、伸縮式、バイメタル式、電気式等の一般的な湿度計測手段を用いることができる。
また、電気特性計測手段72としては、抵抗分圧式や変圧式等の高電圧プローブ、誘導式や分流式の電流プローブ、電気光学、磁気光学効果を用いた手法等、一般的な電気特性計測手段を用いることができる。受光計73としては、光電効果を利用したもの、半導体受光素子を利用したもの等、一般的な光計測手段を用いることができる。
本実施の形態9によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、気流Aの送風量を最適化することにより、効率的にスパーク放電を抑制することが可能となり、プロペラユニット21の消費電力を抑制することができると共に、単位体積当たりの気流内のラジカル量が増加し、高速な水処理が可能となる。なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。