デジタル有線テレビジョン放送のシステムは、(一社)日本CATV技術協会による標準規格等で規定されているデジタル有線テレビジョン放送の信号を取り扱う多チャンネルの周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplex)伝送システムである。
各チャンネルの伝送帯域幅は6MHzであり、信号形式は、64QAM、256QAM及びOFDM(ISDB−T)であり、90MHzから770MHzまでの帯域を用いて伝送されている。
具体的には、表1に示す信号形式により実用化されている。
また、デジタル有線テレビジョン放送システムにおける地上デジタル放送及びケーブルテレビの1チャンネル(6MHz)あたりの伝送方式と情報容量は、表2に示すとおりである。
ところで、デジタル有線テレビジョン放送システムを用いて一搬送波の伝送容量(1チャンネルあたりの伝送容量)を超える大容量(例えばスーパーハイビジョン信号)のMPEG−2 TSを分配伝送する場合、従来の伝送方式では伝送することができないという問題がある。例えば、表2に示すように、ケーブルテレビの伝送方式が64QAMの場合、1チャンネルあたりの伝送容量は29.162Mbpsであるが、現在の伝送方式では、この伝送容量を超える大容量のMPEG−2 TSを伝送することができない。
この問題を解決するために、複数の搬送波を用いて大容量のTSを分割伝送する手法が提案されている(非特許文献1、特許文献1を参照)。非特許文献1の手法は、TSを複数の系統に分割し、分割した信号を64QAMの伝送方式でそれぞれ変調し、複数の搬送波を用いてそれぞれ伝送するものである。受信装置は、複数の搬送波を用いて伝送されたそれぞれの信号を、元のTSのデータ列に戻すために、多重フレームヘッダを同期の基準とすることで、信号間の到達時間差を吸収して正しい順番に合成する。また、分割伝送した信号がどの搬送波を用いたものであるかを示す周波数情報と、分割した搬送波の合成順序を示す情報を受信装置へ知らせるために、複数搬送波分割伝送記述子を用いる。複数搬送波分割伝送記述子は、SI(サービス情報)の一部として送信装置から受信装置へ送信される。
しかしながら、この非特許文献1の手法では、異なる伝送方式を用いて分割伝送することができない。そこで、特許文献1には、複数の搬送波を用いて大容量のTSを分割伝送する際に、異なる伝送方式を用いることを可能にした手法が提案されている。この手法は、送信装置が例えば64QAMと256QAMとを組み合わせてTSを分割伝送し、受信装置が元のTSを再生するために複数搬送波で分割伝送された信号を合成する場合に、所定のフレーム形式のスーパーフレームを用いるものである。
この特許文献1の手法を用いることにより、送信装置が、単一の搬送波の伝送容量を超える大容量のTSを分割してフレームに多重化し、複数の搬送波を用いて伝送する場合に、受信装置は、各搬送波で伝送されるスーパーフレームを同期させることが可能となる。その結果、送信装置が、TSを伝送速度の異なる複数の搬送波(例えば64QAM信号及び256QAM信号)に分割して伝送し、受信装置が、同期した複数のスーパーフレームから所望のTSを取り出すことが可能となる。
このような複数の搬送波を用いて大容量のTSを分割伝送する手法は、既存のデジタル有線テレビジョン放送システムを拡張して、スーパーハイビジョン等の大容量コンテンツを含む有線系の映像分配伝送システムへ応用することができるものとして期待されている。
また、複数のTSを伝送するシステムにおいて、簡単な変更によって複数のTSの独立性を保ったまま多重化及び分離することが可能な手法が提案されている(特許文献2を参照)。この手法は、一搬送波で複数のTSを多重するために、所定のフレーム形式を用いるものである。前述の特許文献1の手法は、この特許文献2の手法を基に拡張したものである。尚、特許文献2の手法は、我が国のデジタルケーブルテレビ伝送方式として実用化され、64QAMの一搬送波で複数のTSを伝送するためのフレーム形式として用いられている。
また、前述の特許文献1の手法を実際に装置化し、ケーブルテレビによりスーパーハイビジョンを視聴可能にした伝送実験が行われ、その結果が開示された(非特許文献2を参照)。非特許文献2は、実際のケーブルテレビ施設を使用し、スーパーハイビジョンの大容量信号を分配伝送した実験の概要を示している。
〔複数搬送波伝送方式〕
ここで、複数の搬送波を用いて大容量のTSを分割伝送する方式(複数搬送波伝送方式)の概要について説明する。図10は、複数搬送波伝送方式の概要を説明する図である。この複数搬送波伝送システムは、再送信施設(ヘッドエンド)に設けられた送信装置50、及び家庭等に設けられた受信装置60により構成される。送信装置50は、スロット割当情報に基づいて、伝送するSHV(スーパーハイビジョン)のTSパケット及びHV(ハイビジョン(登録商標))のTSパケットを、スーパーフレーム内の所定のスロット位置に格納することで、それぞれのTSを分割多重して5系統のスーパーフレームを生成する。そして、送信装置50は、生成した5系統のスーパーフレームを、それぞれの系統の搬送波により、ケーブルテレビ伝送路70を介して受信装置60へ送信する。受信装置60は、送信装置50からケーブルテレビ伝送路70を介して、それぞれの搬送波により5系統のスーパーフレームを受信し、スロット割当情報に基づいて、スーパーフレーム内の所定のスロット位置からTSパケットを抽出することで、元のSHVのTS及びHVのTSに合成して出力する。尚、SHVのTSパケット及びHVのTSパケットには、前述の複数搬送波分割伝送記述子を一部とするSIが含まれる。
送信装置50は、分割部51及び変調部52を備えている。尚、図10の送信装置50には、複数搬送波伝送方式の概要を説明するために必要な構成部のみが示されており、送信部等の他の構成部は省略してある。
送信装置50の分割部51は、SHVのTSパケット及びHVのTSパケットを入力し、系統(チャンネル)毎に、スロット割当情報等に基づいて、スロット割当情報等を含む多重フレームヘッダを、スーパーフレームを構成する多重フレーム内のヘッダスロットに格納すると共に、入力したSHVのTSパケット及びHVのTSパケットを、スーパーフレームを構成する多重化フレーム内のデータスロットに格納し、スーパーフレームを生成する。つまり、分割部51は、スロット割当情報等に基づいて、多重フレームヘッダ、並びにSHVのTSパケット及びHVのTSパケットをフレーム(多重化フレーム)に多重化し、SHVのTSパケット及びHVのTSパケットを系統毎に分割し、系統毎のスーパーフレームを生成する。これにより、SHVのTS及びHVのTSは、5系統のスーパーフレームに分割多重される。
図11は、系統毎に生成されるスーパーフレームの構成を説明する図である。分割部51により、図11に示す各系統のスーパーフレームが生成される。変調部52において64QAM変調が行われる最上段の系統では、多重化フレームTSMF1〜3にて構成される31.644Mbpsのスーパーフレームが生成される。また、変調部52において256QAM変調が行われる他の系統では、多重化フレームTSMF1〜4にて構成される42.192Mbpsのスーパーフレームが生成される。これらのスーパーフレームの周期は同じである。
ここで、スロット割当情報は、図10に示していないフレーム・スロット割当部により生成され、各系統におけるスーパーフレーム中の多重化フレーム数及びフレーム位置、並びに、各TSパケットを割り当てるスーパーフレームにおける多重化フレーム中のスロット数及びスロット位置が規定された情報である。つまり、スロット割当情報は、各系統において生成されるスーパーフレームを構成する複数の多重化フレームのデータスロットに対し、複数のTSのそれぞれのTSパケットを格納するための割り当てを規定した情報である。分割部51は、スロット割当情報に基づいて、入力したそれぞれのTSパケットを、各系統のスーパーフレームを構成する各多重化フレームのデータスロットに格納することで、系統毎のスーパーフレームを生成することができる。尚、スロット割当情報の構成、及びスロット割当情報に基づいてスーパーフレームを生成する処理は既知であり、詳細については前述の特許文献1を参照されたい。
図10に戻って、変調部52は、分割部51により生成された5系統のスーパーフレームを入力し、系統毎に、スーパーフレームを所定の変調方式でQAM変調し、系統毎の変調信号を生成する。図10の例では、第1〜第3,第5系統では、それぞれ256QAM変調が行われ、第4系統では、64QAM変調が行われる。そして、各系統の変調信号の周波数は、伝送用の周波数に変換され、各系統に対応した搬送波を用いて各系統のスーパーフレームが送信される。
受信装置60は、復調部61及び合成部62を備えている。尚、図10の受信装置60には、複数搬送波伝送方式の概要を説明するために必要な構成部のみが示されており、チューナ部等の他の構成部は省略してある。
受信装置60の復調部61は、図示しないチューナ部にて選局された各系統の信号を入力し、送信装置50の変調部52に対応する変調方式で復調し、系統毎のスーパーフレームを生成する。合成部62は、復調部61により生成された系統毎のスーパーフレームのヘッダスロットに格納されたスロット割当情報等を抽出し、スロット割当情報等に基づいて、データスロットからTSパケットを抽出して元のSHVのTS及びHVのTSに合成し、SHVのTSパケット及びHVのTSパケットを出力する。尚、合成部62は、元のTSに合成する際に、TSパケットからSIに含まれる複数搬送波分割伝送記述子を抽出し、各系統の信号がどの搬送波を用いたものであるかを判断する。
このように、送信装置50は、複数のTSMFフレームにより構成されるスーパーフレームを生成することにより、大容量のTSを64QAMまたは256QAMの複数の搬送波に分割して伝送し、受信装置60においてスーパーフレーム単位の同期合成が可能となる。尚、処理の詳細については特許文献1を参照されたい。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔送信装置〕
まず、本発明の実施形態による送信装置について説明する。図1は、本発明の実施形態による送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1は、SI生成部10、多重化部11、ヘッダ生成部12、分割部13、変調部14−1〜14−N及び送信部15−1〜15−Nを備えている。Nは1以上の整数である。送信装置1は、所定の大容量MPEG−2 TSと複数搬送波分割伝送記述子を含むSIとを多重し、多重した信号をスロット割当情報に基づいて所定数Nに分割してスーパーフレームに格納すると共に、代替搬送波有無情報及び優先度を含むヘッダ情報をスーパーフレームに格納し、所定の変調を施してそれぞれの搬送波によりケーブルテレビ伝送路を介して送信する。複数搬送波分割伝送記述子、代替搬送波有無情報及び優先度については後述する。尚、図1の送信装置1には、本発明の実施形態を説明するために必要な構成部のみが示されており、他の構成部は省略してある。
送信装置1のSI生成部10は、複数搬送波分割伝送記述子等の伝送制御情報を入力し、送信対象のTS毎に、TSを識別するための情報(TSid)、ケーブル分配システム記述子及び複数搬送波分割伝送記述子等を含むNIT(ネットワーク情報テーブル)を生成し、NITを含むSIを生成する。複数搬送波分割伝送記述子は、NITにおける記述子2の領域に格納される。SI生成部10により生成されたSIは、多重化部11へ出力される。
図2は、複数搬送波分割伝送記述子の構成を示す図である。複数搬送波分割伝送記述子は、送信対象のTSに対応した記述子であり、後述する受信装置2が選局を行うために必要なチャンネル毎の搬送波の中心周波数、変調方式等からなる情報である。この複数搬送波分割伝送記述子は、1番目のチャンネルに関する記述子情報、付随する搬送波数(付随する系統数(チャンネル数))の情報、2番目のチャンネルに関する記述子情報、及び到るN番目のチャンネルに関する記述子情報により構成される。例えば、使用するチャンネルの数が2の場合、複数搬送波分割伝送記述子は、1番目のチャンネルに関する記述子情報、付随する搬送波数の情報及び2番目のチャンネルに関する記述子情報により構成される。
チャンネルに関する記述子情報は、記述子タグ、記述子長、周波数、将来利用の情報、フレーム形式、外符号、変調方式、シンボルレート、内符号及び有効期限からなる。記述子タグは、チャンネルに関する記述子情報を識別するためのタグを示し、記述子長は、チャンネルに関する記述子情報の情報量を示し、周波数は、搬送波の中心周波数を示す。フレーム形式は、スーパーフレームを構成する多重化フレームの形式(ITU-T Rec J.183にて規定する複数TS伝送フレームであって、変調方式が64QAMの場合のフレーム、または変調方式が256QAMの場合のフレーム)を示す。
有効期限は、当該チャンネルの搬送波による伝送を停止する時刻(送信停止時刻)を示し、時刻が設定されていない場合は伝送が停止されないことを示す。有効期限が設定されていることは、当該チャンネルにて伝送されているデータと同じデータが、他のチャンネルでも伝送されていることを意味する。また、有効期限が設定されてからその有効期限までの間は、当該チャンネルにて伝送されるデータと同じデータが、他のチャンネルでも伝送される。同じデータが伝送される他のチャンネルは、複数搬送波分割伝送記述子に追加される記述子情報に基づいて判断され、または後述するヘッダ情報の代替搬送波有無情報に基づいて判断される。
図1に戻って、多重化部11は、伝送するTSを入力すると共に、SI生成部10により生成されたSIを入力し、予め設定された時間間隔でSIをTSに多重化する。これにより、複数搬送波分割伝送記述子を含むSIは、予め設定された時間間隔にてTSに多重化され、後述する受信装置2へ送信される。
ヘッダ生成部12は、代替搬送波有無情報、優先度、スロット割当情報等を入力し、分割部13により生成される各系統のスーパーフレームを構成する全ての多重化フレーム毎に、ヘッダ情報を生成する。この場合、代替搬送波有無情報及びスロット割当情報は、複数搬送波分割伝送記述子に従った系統数(チャンネル数)及び変調方式等に対応した情報である。尚、スロット割当情報は、図10と同様に、図1に示していないフレーム・スロット割当部により生成される。
図3は、スーパーフレームを構成する多重化フレームのヘッダ情報の構成を示す図である。このヘッダ情報は、ヘッダ生成部12によりスーパーフレームを構成する多重化フレーム毎に生成され、代替搬送波有無情報(alternative use indicator)及び優先度(Priority)を含む。
代替搬送波有無情報は、当該多重化フレームを含むスーパーフレームが伝送されるチャンネルにおいて、当該多重化フレームに含まれる同じデータ(内容)が他のチャンネルの搬送波によっても同時に伝送されているか否かを示す。すなわち、2つ以上の搬送波によりTSを構成する一部の同じ内容が送出されているか否かを示す。他のチャンネルの搬送波によっても同じ内容が同時に送出されている場合、「1」が設定される。例えば、第1のチャンネルと第3のチャンネルにおいて同じ内容が同時に伝送される場合、第1のチャンネルにて伝送されるスーパーフレーム及び第3のチャンネルにて伝送されるスーパーフレームのそれぞれのヘッダ情報には、代替搬送波有無情報「1」が設定される。
優先度は、代替搬送波有無情報が「1」に設定された場合の選局の優先度を示す。代替搬送波有無情報が「1」に設定されている場合には、他のチャンネルにおいても同じ内容が同時に伝送されている。この場合、後述する受信装置2は、同じ内容が同時に伝送されている複数のチャンネルのうちのいずれかを選択(選局)する必要がある。そこで、優先度は、受信装置2にて選局を行うために用いられる。選局の優先度が低い場合は「00」が設定され、どちらでもない場合は「01」が設定され、選局の優先度が高い場合は「10」が設定され、未定義の場合「11」が設定される。
尚、多重化フレームのデータスロットに対して複数のTSパケットを格納するためのスロット割当情報は、このヘッダ情報に含まれる。具体的には、ヘッダ情報の「Relative_ts_number」に、多重化フレームの各スロットに格納されたTSパケットの相対TS番号が格納される。
図1に戻って、分割部13は、図10に示した分割部51と同様の処理を行う。具体的には、分割部13は、多重化部11によりTSとSIとが多重化されたデータ(TSパケット)を入力すると共に、ヘッダ生成部12により生成されたヘッダ情報を入力し、系統(チャンネル)毎に、スロット割当情報に基づいて、ヘッダ情報をスーパーフレーム内の多重化フレームのヘッダスロットに格納すると共に、TSパケットをスーパーフレーム内の多重化フレームのデータスロットに格納し、スーパーフレームを生成する。つまり、分割部13は、スロット割当情報に基づいて、ヘッダ情報及びTSパケットをフレーム(多重化フレーム)に多重化し、TSパケットを系統毎に分割して系統毎のスーパーフレームを生成する。これにより、複数搬送波分割伝送記述子に従った系統数(チャンネル数)のスーパーフレームであって、TSとSIとが多重化されたデータが分割されたスーパーフレームが生成される。分割部13により生成されたN系統のスーパーフレーム1〜Nは、対応する変調部14−1〜14−Nへそれぞれ出力される。
また、分割部13は、所定の場合に、複数搬送波分割伝送記述子の有効期限が設定されたチャンネルが示す系統のスーパーフレームに含まれるTSパケットと同じ情報を、複数搬送波分割伝送記述子に新たに追加されたチャンネルが示す系統のスーパーフレームのデータスロットに格納する。これにより、複数搬送波分割伝送記述子の有効期限が設定されたチャンネルのスーパーフレームに含まれるTSパケットと、複数搬送波分割伝送記述子に新たに追加されたチャンネルのスーパーフレームに含まれるTSパケットとが同じデータとなる。詳細については後述する。
変調部14−1〜14−Nは、分割部13により生成された対応するスーパーフレームを入力し、系統毎に、スーパーフレームを所定の変調方式でQAM変調し、系統毎の変調信号を生成する。送信部15−1〜15−Nは、変調部14−1〜14−Nにより生成された対応する変調信号を入力し、変調信号の中心周波数を、複数搬送波分割伝送記述子に従った伝送用の周波数に変換し、各系統に対応した搬送波1〜Nによりスーパーフレーム1〜Nを送信する。
(使用中のチャンネルを停止する具体例)
次に、TSを2つのチャンネル1,2にて分割伝送しているときに、チャンネル1に関連する設備メンテナンス等を行うために、TSの伝送を中断することなく、チャンネル1の使用をチャンネル3の使用へ移行させ、その後チャンネル1の使用を停止する具体例について説明する。
図4は、送信装置1において、使用中のチャンネル1を停止する必要がある場合の信号処理を示すフローチャートであり、図5は、図4の処理を補足する説明図である。まず、送信装置1のSI生成部10は、TSを2つの搬送波によりチャンネル1,2にて分割伝送するための複数搬送波分割伝送記述子Aを入力する(ステップS401)。そして、複数搬送波分割伝送記述子Aを含むSIは、TSに多重化される。
図6は、複数搬送波分割伝送記述子Aの構成を示す図である。複数搬送波分割伝送記述子Aは、チャンネル1に関する記述子情報、付随する搬送波数「1」、及びチャンネル2に関する記述子情報から構成される。チャンネル1に関する記述子情報は、変調部14−1が64QAMの変調を行うことを示す情報、及び時刻が設定されていないことを示す有効期限(例えば「0」)を含む。また、チャンネル2に関する記述子情報は、変調部14−2が64QAMの変調を行うことを示す情報、及び時刻が設定されていないことを示す有効期限「0」を含む。
図4に戻って、分割部13は、チャンネル1,2の系統毎に、ヘッダ生成部12により生成されたヘッダ情報をスーパーフレーム内の多重化フレームのヘッダスロットに格納すると共に、スロット割当情報に基づいて、複数搬送波分割伝送記述子Aを含むSIが多重化されたTSパケットをスーパーフレーム内の多重化フレームのデータスロットに格納し、スーパーフレーム1,2を生成する(ステップS402)。これにより、TSとSIとが多重化されたデータが分割され、スーパーフレーム1,2が生成される。
送信部15−1,15−2は、変調部14−1,14−2により64QAM変調が行われたスーパーフレーム1,2を、各チャンネルに対応した搬送波によりそれぞれ送信する(ステップS403)。これにより、TSが2つの搬送波によりチャンネル1,2にて60Mbpsで分割伝送されている状況となる。
ここで、TSがチャンネル1,2にて分割伝送されている状況において、チャンネル1に関連する設備メンテナンス等を行うために、チャンネル1の使用を停止する必要性が生じたとする。送信装置1は、チャンネル1の搬送波による伝送を停止する前に、後述するステップS404〜ステップS408の処理により、TSをチャンネル1,2にて分割伝送し、同時に、TSをチャンネル2,3にて分割伝送する。
SI生成部10は、TSを2つの搬送波によりチャンネル1,2にて分割伝送する状況を維持すると共に、チャンネル1と同じ内容をチャンネル3にて伝送するために、TSを2つの搬送波によりチャンネル2,3にて分割伝送するための複数搬送波分割伝送記述子Bを追加入力すると共に、TSを2つの搬送波によりチャンネル1,2にて分割伝送し、かつチャンネル1の有効期限が設定された複数搬送波分割伝送記述子Aを更新入力する(ステップS404)。そして、追加入力された複数搬送波分割伝送記述子B及び更新入力された複数搬送波分割伝送記述子Aを含むSIは、TSに多重化される。
図7は、複数搬送波分割伝送記述子Bの構成を示す図である。複数搬送波分割伝送記述子Bは、チャンネル2に関する記述子情報、付随する搬送波数「1」、及びチャンネル3に関する記述子情報から構成される。チャンネル2に関する記述子情報は、変調部14−2が64QAMの変調を行うことを示す情報、及び時刻が設定されていないことを示す有効期限(例えば「0」)を含む。また、チャンネル3に関する記述子情報は、変調部14−3が256QAMの変調を行うことを示す情報、及び時刻が設定されていないことを示す有効期限(例えば「0」)を含む。
また、更新入力された複数搬送波分割伝送記述子Aは、図6に示した複数搬送波分割伝送記述子Aにおいて、チャンネル1に関する記述子情報の有効期限に所定の時刻が設定された構成となる。
図4に戻って、ヘッダ生成部12は、他の搬送波でも送出中であることを示す「1」の代替搬送波有無情報、及び所定の優先度を入力し、これらの情報を含むヘッダ情報を、スーパーフレーム1,3のヘッダ情報として生成する。また、スーパーフレーム2のヘッダ情報も生成する。例えば、チャンネル1,2,3にてスーパーフレーム1,2,3が伝送され、チャンネル1,3では同じ内容のスーパーフレーム1,3が伝送されているときに、受信装置2に対し、チャンネル1,2のスーパーフレーム1,2及びチャンネル2,3のスーパーフレーム2,3のうちの後者を選択させ、TSを復調させる場合、スーパーフレーム1の優先度として選局の優先度が低いことを示す「00」が設定され、スーパーフレーム3の優先度として選局の優先度が高い「10」が設定される。
分割部13は、スーパーフレーム1,3のヘッダ情報をスーパーフレーム1,3内の多重化フレームのヘッダスロットに格納する(ステップS405)。また、分割部13は、スーパーフレーム2のヘッダ情報をスーパーフレーム2内の多重化フレームのヘッダスロットに格納する。
そして、分割部13は、ステップS402と同様に、スロット割当情報に基づいて、複数搬送波分割伝送記述子A及び複数搬送波分割伝送記述子Bを含むSIが多重化されたTSパケットをスーパーフレーム1,2の多重化フレームのデータスロットに格納し、スーパーフレーム1,2を生成する。また、分割部13は、スーパーフレーム1に格納したチャンネル1と同じ内容のTSパケットをスーパーフレーム3の多重化フレームのデータスロットに格納し、スーパーフレーム3を生成する(ステップS406)。つまり、分割部13は、スーパーフレーム1と同じ内容のTSパケットを含むスーパーフレーム3を生成する。
この場合、分割部13は、SIに含まれるNITにおいて、複数搬送波分割伝送記述子Aと複数搬送波分割伝送記述子Bが同一のTSを識別するための情報(TSid)に対応すること、及び追加された複数搬送波分割伝送記述子B内で新たにチャンネル3に関する記述子情報が追加されていることを判断することで、チャンネル1のスーパーフレーム1と同じ内容を新たなチャンネル3のスーパーフレーム3にて送信する必要があることを判断し、スーパーフレーム3を生成する。
送信部15−1,15−2,15−3は、変調部14−1,14−2により64QAM変調が行われたスーパーフレーム1,2、及び変調部14−3により256QAM変調が行われたスーパーフレーム3を、各チャンネルに対応した搬送波によりそれぞれ送信する(ステップS407)。これにより、TSが2つの搬送波によりチャンネル1,2にて60Mbpsで分割伝送され、同時に、TSが2つの搬送波によりチャンネル2,3にて70Mbpsで分割伝送されている状況となる。
分割部13は、チャンネル1の有効期限が経過したか否かを判定し(ステップS408)、有効期限が経過していないと判定した場合(ステップS408:N)、ステップS405〜ステップS407の処理を繰り返す。これにより、TSが2つの搬送波によりチャンネル1,2にて60Mbpsで分割伝送され、同時に、TSが2つの搬送波によりチャンネル2,3にて70Mbpsで分割伝送されている状況が継続する。
分割部13は、ステップS408において、チャンネル1の有効期限が経過したことを判定した場合(ステップS408:Y)、チャンネル1を停止するために、スーパーフレーム1の生成を停止する(ステップS409)。これにより、スーパーフレーム1の搬送波による送信が停止する。また、ヘッダ生成部12は、スーパーフレーム1のヘッダ情報の生成を停止し、スーパーフレーム3のヘッダ情報に含まれる代替搬送波有無情報及び優先度を削除し、初期値(代替搬送波有無情報は「0」、優先度は未定義「11」)に設定する(ステップS410)。そして、分割部13は、スーパーフレーム2,3を生成し、送信部15−2,15−3は、変調部14−2により64QAM変調が行われたスーパーフレーム2、及び変調部14−3により256QAM変調が行われたスーパーフレーム3の送信を、各チャンネルに対応した搬送波により継続する(ステップS411)。
これにより、チャンネル1が停止し、TSが2つの搬送波によりチャンネル2,3にて70Mbpsで分割伝送されている状況となる。この場合、チャンネル1,2による60Mbpsの伝送がチャンネル2,3による70Mbpsの伝送に変更されるから、この伝送速度差である約10Mbps分の他の信号を多重することができ、伝送容量を増加することができる。
このように、TSを2つのチャンネル1,2にて分割伝送しているときに、複数搬送波分割伝送記述子Aに加えて複数搬送波分割伝送記述子Bを多重することにより、2つのチャンネル1,2による分割伝送と2つのチャンネル2,3による分割伝送とを並列に行う。これにより、後述する受信装置2は、チャンネル1,2またはチャンネル2,3のいずれの組み合わせによっても、所望のTSを復元することができる。そして、チャンネル1の有効期限が経過する前に、チャンネル1の使用をチャンネル3の使用へ移行させることにより、2つのチャンネル2,3による分割伝送へシームレスに移行することができる。したがって、TSの伝送を中断することなく、TSを伝送するチャンネルの組み合わせを変更すると共に変調方式も変更して、チャンネル1の使用を停止することができる。
以上のように、本発明の実施形態による送信装置1によれば、TSが複数のチャンネルの搬送波により分割伝送されている状況において、所定のチャンネルに関連する設備メンテナンス等を行うために、そのチャンネルの使用を停止する必要性が生じた場合に、SI生成部10は、使用を停止するチャンネルの有効期限(送信停止時刻)が設定された複数搬送波分割伝送記述子及びチャンネルに関する記述子情報が追加された新たな複数搬送波分割伝送記述子を含むSIを生成し、多重化部11は、SIを送信対象のTSに多重化し、ヘッダ生成部12は、使用を停止するチャンネル及び追加するチャンネルのヘッダ情報として、他のチャンネルの搬送波によっても同じ内容が同時に伝送されていることを示す代替搬送波有無情報及び優先度を含むヘッダ情報を生成し、分割部13は、チャンネル毎に、SI及びTSが多重化されたTSパケットとヘッダ情報とを所定位置に格納したスーパーフレームを生成し、変調部14−1〜14−N及び送信部15−1〜15−Nを介してそれぞれの搬送波により送信するようにした。
これにより、後述する受信装置2は、受信したNITに含まれる複数搬送波分割伝送記述子に基づいて、有効期限が設定されたチャンネル、及びそのチャンネルと同じ内容が伝送されているチャンネル(追加した記述子情報のチャンネル)を判断することができる。したがって、後述する受信装置2は、分割伝送されているTSによるサービスの期限を予知することができると共に、TSを復元するための搬送波の組み合わせを、停止するチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせから、追加したチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせに移行した選局を行い(前述の具体例では、チャンネル1,2の搬送波の組み合わせからチャンネル2,3の搬送波の組み合わせに移行するための選局を行い)、停止するチャンネルの搬送波を未使用状態とすることができる。つまり、送信装置1は、TSを復元するために必要な搬送波の組み合わせを変更することを、複数搬送波分割伝送記述子を用いて受信装置2へ通知することができる。
また、後述する受信装置2は、受信したスーパーフレームのヘッダ情報に含まれる代替搬送波有無情報に基づいて、同じ内容が同時に伝送されている複数のチャンネルを判断することができる。したがって、複数搬送波分割伝送記述子の場合と同様に、TSを復元するための搬送波の組み合わせを変更することができ、停止するチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせから、追加したチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせに移行した選局を行い、停止するチャンネルの搬送波を未使用状態とすることができる。つまり、送信装置1は、TSを復元するために必要な搬送波の組み合わせを変更したことを、ヘッダ情報に含まれる代替搬送波有無情報を用いて受信装置2へ通知することができる。
また、後述する受信装置2は、受信したスーパーフレームのヘッダ情報に含まれる優先度に基づいて、同じ内容が伝送されている複数のチャンネルの搬送波のうち、優先度の高いチャンネルの搬送波を選択し、優先度の高いチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせに移行した選局を行うことができる。つまり、送信装置1は、設定した優先度に応じた選局を、受信装置2に行わせることができる。
したがって、設備メンテナンス等に伴って、チャンネルの一部を変更しまたは変調方式を変更する等の処理を行う際に、提供中のサービスを中断させないで継続させることが可能となる。
また、設備メンテナンス等に伴って、複数のチャンネルを追加することにより、搬送波の数を任意に変化させることができる。この場合、送信装置1のSI生成部10は、使用を停止するチャンネルの有効期限(送信停止時刻)が設定された複数搬送波分割伝送記述子、及び複数のチャンネルに関する記述子情報を追加した複数搬送波分割伝送記述子を含むSIを生成する。
また、設備メンテナンス等に伴って伝送容量を増加させるときには、変調方式を例えば64QAMから256QAMに変更することができる。一方、伝送特性劣化等の事情により伝送容量を減少させるときには、変調方式を例えば256QAMから64QAMに変更することができる。この場合、送信装置1のSI生成部10は、複数搬送波分割伝送記述子を含むSIを生成する際に、追加するチャンネルに関する記述子情報の変調方式に、前者の場合は256QAMを設定し、後者の場合は64QAMを設定する。
〔受信装置〕
次に、本発明の実施形態による受信装置について説明する。図8は、本発明の実施形態による受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置2は、チューナ20−1〜20−N、復調部21−1〜21−N、合成部22及び制御部23を備えている。Nは1以上の整数である。受信装置2は、送信装置1から、所定の大容量MPEG−2 TS及び複数搬送波分割伝送記述子が格納され、代替搬送波有無情報及び優先度を含むヘッダ情報が格納された所定数Nのスーパーフレームを、それぞれの搬送波によりケーブルテレビ伝送路を介して受信し、複数搬送波分割伝送記述子または代替搬送波有無情報に基づいて、同じ内容が複数のチャンネルの搬送波により送信されていることを判断した場合、優先度等に基づいていずれかのチャンネルの搬送波を選択するための選局を行い、元のMPEG−2 TSを復調する。尚、図8の受信装置2には、本発明の実施形態を説明するために必要な構成部のみが示されており、スーパーフレーム間の時差を吸収する構成部等の他の構成部は省略してある。
チューナ20−1〜20−Nは、後述する制御部23から、再生対象のTSを受信するための1または複数の搬送波が指定された制御信号1を入力し、制御信号1に従って搬送波を選択する。そして、チューナ20−1〜20−Nは、選択した搬送波を中間周波数のIF信号に変換し、IF信号を対応する復調部21−1〜21−Nに出力する。例えば、後述する制御部23がチャンネル1,2の搬送波を指定する制御信号1を出力すると、チューナ20−1は、制御信号1に従ってチャンネル1の搬送波を選択し、チューナ20−2は、制御信号1に従ってチャンネル2の搬送波を選択する。
復調部21−1〜21−Nは、後述する制御部23から、再生対象のTSを復調するための変調方式が指定された制御信号2(送信装置1の変調部14−1〜14−Nの系統に対応する変調方式)を入力すると共に、対応する系統のチューナ20−1〜20−NからIF信号を入力し、制御信号2に従った変調方式で復調してスーパーフレーム1〜Nを生成し、スーパーフレーム1〜Nを合成部22に出力する。
合成部22は、復調部21−1〜21−Nからスーパーフレーム1〜Nを入力し、スーパーフレーム1〜Nのヘッダスロットからヘッダ情報を取り出し、ヘッダ情報に含まれるスロット割当情報等に基づいて、スーパーフレーム1〜Nのデータスロットから再生対象のTSを構成するTSパケットを取り出して合成し、再生対象の元のTSに復元して出力する。
合成部22は、SI抽出部221及びヘッダ抽出部222等を備えている。SI抽出部221は、スーパーフレーム1〜NのデータスロットからTSパケットを取り出し、TSパケットからNITに含まれるSIを抽出し、SIを制御部23に出力する。ヘッダ抽出部222は、スーパーフレーム1〜Nのヘッダスロットからヘッダ情報を取り出し(抽出し)、ヘッダ情報を制御部23に出力する。
制御部23は、合成部22からSIを入力し、SI内のNITに含まれるケーブル分配システム記述子及び複数搬送波分割伝送記述子を抽出し、TSと搬送波の物理伝送情報(中心周波数、変調方式、誤り訂正符号等)との関係を把握するため、ケーブル分配システム記述子及び複数搬送波分割伝送記述子に基づいて、再生対象のTSが伝送されている搬送波の組み合わせ及び変調方式等を検知する。そして、制御部23は、検知した搬送波の組み合わせによりチューナ20−1〜20−Nに選局を行わせる。具体的には、制御部23は、検知した搬送波の組み合わせに対応した搬送波を指定する制御信号1を生成し、制御信号1をチューナ20−1〜20−Nに出力する。また、制御部23は、検知した変調方式を指定する制御信号2を生成し、制御信号2を復調部21−1〜21−Nに出力する。
これにより、チューナ20−1〜20−Nは、複数搬送波分割伝送記述子に記述されたチャンネルに関する記述子情報に従った搬送波を選択することができ、復調部21−1〜21−Nは、複数搬送波分割伝送記述子に記述されたチャンネルに関する記述子情報に含まれる変調方式に従って復調を行うことができる。つまり、受信装置2は、送信装置1から送信されたチャンネル毎のスーパーフレーム1〜Nを生成することができる。
尚、受信装置2は、動作時の所定のタイミングにて(例えば一日に一回の所定時刻に)、周波数多重されている全チャンネルを予めスキャンし、TSを受信できたチャンネルからSIを取得し、SI内のNITに含まれるケーブル分配システム記述子及び複数搬送波分割伝送記述子を抽出し、TSの識別情報(TSid)と搬送波の物理伝送情報の対応関係を取得するものとする。NITには、TS毎に、TSを識別するための情報(TSid)、ケーブル分配システム識別子及び複数搬送波分割伝送記述子等の各種情報が含まれている。
また、制御部23は、複数搬送波分割伝送記述子に有効期限が設定されている場合、再生対象のTSについて、同じ内容が複数の搬送波により伝送されていることを判断する。そして、制御部23は、同じ内容を伝送している複数の搬送波のうち1つの搬送波を選択し、検知した搬送波の組み合わせから新たな搬送波の組み合わせを設定し、新たな搬送波の組み合わせによりチューナ20−1〜20−Nに選局を行わせる。これにより、合成部22は、新たな組み合わせに対応したスーパーフレームを入力することができ、新たな組み合わせのスーパーフレームから再生対象の元のTSを復元することができる。
この場合、制御部23は、同じ内容を伝送している複数の搬送波を、複数搬送波分割伝送記述子に基づいて特定する。具体的には、制御部23は、複数搬送波分割伝送記述子に含まれる記述子情報のチャンネルのうち、有効期限が設定されているチャンネル及び新たに追加された記述子情報のチャンネルを特定し、これらのチャンネルの搬送波を、同じ内容を伝送している搬送波であると判断する。
尚、制御部23は、合成部22から各チャンネルのフレームヘッダ情報を取得し、フレームヘッダ情報から代替搬送波有無情報を抽出し、代替搬送波有無情報に基づいて、同じ内容を伝送している複数の搬送波を判断するようにしてもよい。具体的には、制御部23は、代替搬送波有無情報として他の搬送波でも送出中「1」が設定されている複数のチャンネルを特定し、これらのチャンネルの搬送波を、同じ内容を伝送している搬送波であると判断する。
制御部23は、同じ内容を伝送している複数の搬送波のうち1つの搬送波を選択する第1の手法として、有効期限が設定されていないチャンネルの搬送波を選択する。有効期限が設定されているチャンネルは、当該有効期限の時刻にて送信が停止する予定であるから、送信が停止する予定のないチャンネルの搬送波を選択することにより、送信の停止に先立って、送信が停止するチャンネルから送信が停止しない新たなチャンネルへ移行することができる。
尚、制御部23は、同じデータを伝送している複数の搬送波のうち、任意に1つの搬送波を選択するようにしてもよい。制御部23は、有効期限が設定されているチャンネルの搬送波を選択した場合には、有効期限に到達する所定時間前に、有効期限が設定されていないチャンネルの搬送波を選択する必要がある。
また、制御部23は、第2の手法として、合成部22から各チャンネルのフレームヘッダ情報を取得し、フレームヘッダ情報から代替搬送波有無情報及び優先度を抽出し、代替搬送波有無情報として他の搬送波でも送出中「1」が設定されており、かつ、優先度として選局の優先度が高い「10」が設定されているチャンネルを特定し、当該チャンネルの搬送波を選択する。これにより、同じ内容を伝送している複数の搬送波のうち、送信装置1にて設定された優先度に従ったチャンネルの搬送波を選択することができる。
尚、制御部23は、優先度として選局の優先度が高い「10」が設定されているチャンネルが複数存在する場合、複数のチャンネルのうち任意の1チャンネルの搬送波を選択する。また、制御部23は、優先度として選局の優先度が高い「10」が設定されているチャンネルが存在しない場合、同じ内容を伝送している複数の搬送波のうち、任意に1つの搬送波を選択する。
また、代替搬送波有無情報として他の搬送波でも送出中「1」が設定されているチャンネルが、同じ内容が伝送されているチャンネルとなる。したがって、制御部23は、各チャンネルのフレームヘッダ情報に含まれる代替搬送波有無情報に基づいて、代替搬送波有無情報として他の搬送波でも送出中「1」が設定されている複数のチャンネルを特定し、特定した複数のチャンネルの搬送波により同じ内容が伝送されていることを判断するようにしてもよい。
(選局処理)
次に、チャンネルの搬送波を選択する選局処理について説明する。図9は、受信装置2における選局処理を示すフローチャートである。まず、受信装置2がNITを受信すると(ステップS901)、受信装置2の制御部23は、NITからケーブル分配システム記述子及び複数搬送波分割伝送記述子を抽出する(ステップS902)。
制御部23は、ケーブル分配システム記述子及び複数搬送波分割伝送記述子を構成するチャンネルに関する記述子情報の数に基づいて、TSが複数の搬送波により分割伝送されているか(複数搬送波分割伝送であるか)、またはTSが単一の搬送波により伝送されているか(単一搬送波伝送であるか)を判定し、いずれかの伝送であるかを区別する(ステップS903)。例えば、制御部23は、複数搬送波分割伝送記述子がNITに含まれている場合、複数搬送波分割伝送されているTSがあると判定し、ケーブル分配システム記述子により単一のチャンネルに関する記述子情報のみにより構成されている場合、単一搬送波伝送であると判定する。この場合、複数搬送波分割伝送記述子がNITに含まれていないとき、複数搬送波分割伝送されているTSが無く、単一搬送波伝送されているTSのみが同一のケーブルテレビのネットワークに周波数多重伝送されていると判定する。
制御部23は、複数搬送波分割伝送ではなく単一搬送波伝送であると判定した場合(ステップS904:N)、単一搬送波の選局をチューナ20−1〜20−Nのいずれかに行わせる(ステップS912)。この場合、例えば複数搬送波分割伝送ではなく、スーパーフレームを用いない場合の選局が行われる。そして、合成部22は、選局されたチャンネルからTSを再生し、出力する(ステップS913)。
制御部23は、複数搬送波分割伝送であると判定した場合(ステップS904:Y)、複数搬送波分割伝送記述子のチャンネルに関する記述子情報に含まれる有効期限が設定されているか否かを判定する(ステップS905)。例えば、制御部23は、複数搬送波分割伝送記述子内の有効期限の箇所に、何らかの時刻が設定されている場合、有効期限が設定されていると判定し、当該箇所に時刻が設定されていない場合(例えば「0」が設定されている場合)、有効期限が設定されていないと判定する。
制御部23は、ステップS905において、有効期限が設定されていないと判定した場合(ステップS905:N)、同じ内容が伝送されている他の搬送波は無いものと判断する(ステップS906)。この場合、選局は、複数搬送波分割伝送記述子に含まれる記述子情報のチャンネルにおける搬送波の組み合わせにて行われる。
制御部23は、ステップS905において、有効期限が設定されていると判定した場合(ステップS905:Y)、同じ内容が伝送されている他の搬送波が有るものと判断する(ステップS907)。そして、制御部23は、合成部22により抽出された各チャンネルのフレームヘッダ情報から各チャンネルの代替搬送波有無情報及び優先度を抽出する(ステップS908)。
制御部23は、例えば、複数搬送波分割伝送記述子が示すチャンネルのうち、有効期限が設定されているチャンネル及び新たに追加された記述子情報のチャンネルを特定し、これらのチャンネルの搬送波により同じ内容が伝送されていると判断し、優先度に基づいて、同じ内容が伝送されている搬送波のうち、1つの搬送波を選択する(ステップS909)。そして、ステップS910へ移行する。
制御部23は、ステップS906またはステップS909から移行して、搬送波の組み合わせによる選局をチューナ20−1〜20−Nに行わせる(ステップS910)。具体的には、制御部23は、同じ内容が伝送されている搬送波が無い場合、ステップS906から移行して、複数搬送波分割伝送記述子が示すチャンネルにおける搬送波の組み合わせによる選局をチューナ20−1〜20−Nに行わせる。また、制御部23は、同じ内容が伝送されている搬送波が有る場合、ステップS909から移行して、複数搬送波分割伝送記述子が示すチャンネルにおける搬送波の組み合わせのうち、ステップS909にて選択した搬送波を含む新たな搬送波の組み合わせによる選局をチューナ20−1〜20−Nに行わせる。
合成部22は、新たな組み合わせに対応したスーパーフレームを入力し、新たな組み合わせのスーパーフレームから再生対象の元のTSを再生し、出力する(ステップS911)。
(使用中のチャンネルを停止する具体例)
次に、TSを2つのチャンネル1,2にて分割伝送しているときに、チャンネル1に関連する設備メンテナンス等を行うために、TSの伝送を中断することなく、チャンネル1の使用をチャンネル3の使用へ移行させ、その後チャンネル1の使用を停止する具体例について説明する。これは、前述した送信装置1における具体例と同じである。
TSが2つの搬送波によりチャンネル1,2にて分割伝送されており、受信装置2は、図6に示した複数搬送波分割伝送記述子Aを抽出するものとする。受信装置2の合成部22は、復調部21−1〜21−2からスーパーフレーム1,2を入力し、スーパーフレーム1,2のヘッダスロットからヘッダ情報を取り出し、ヘッダ情報に含まれるスロット割当情報等に基づいて、スーパーフレーム1,2のデータスロットからTSパケットを取り出して合成し、再生対象のTSに復元して出力する。これにより、図5に示したように、TSが2つの搬送波によりチャンネル1,2にて60Mbpsで分割伝送されている状況となる。
ここで、TSがチャンネル1,2にて分割伝送されている状況において、チャンネル1に関連する設備メンテナンス等を行うために、チャンネル1の使用を停止する必要性が生じたとする。送信装置1は、図6に示した複数搬送波分割伝送記述子A(チャンネル1及びチャンネル2に関する情報を含み、チャンネル1の有効期限が設定された複数搬送波分割伝送記述子)、及び図7に示した複数搬送波分割伝送記述子B(チャンネル2に関する情報に加えチャンネル3に関する情報が追加された複数搬送波分割伝送記述子)を含むスーパーフレームを送信する。また、送信装置1は、TSを2つの搬送波によりチャンネル1,2にて分割伝送すると共に、チャンネル1と同じ内容をチャンネル3にて伝送する。
受信装置2の制御部23は、合成部22のSI抽出部221により抽出されたSIから複数搬送波分割伝送記述子A及び複数搬送波分割伝送記述子Bを抽出し、複数搬送波分割伝送記述子Bがチャンネル2及びチャンネル3に関する記述子情報を含むから、複数搬送波分割伝送であると判定し、複数搬送波分割伝送記述子Aには有効期限が設定されているから、同じ内容が伝送されている搬送波が有ると判定する。
制御部23は、合成部22のヘッダ抽出部222により抽出されたチャンネル1,3のヘッダ情報から代替搬送波有無情報を抽出し、これらの代替搬送波有無情報には他の搬送波でも送出中「1」が設定されているから、チャンネル1,3において同じ内容が伝送されているものと判断する。
このように、受信装置2は、SIに含まれる複数搬送波分割伝送記述子A及び複数搬送波分割伝送記述子Bまたはスーパーフレームのヘッダ情報に含まれる代替搬送波有無情報に基づいて、TSが2つのチャンネル1,2により分割伝送され、同時に、2つのチャンネル2,3により分割伝送されていることを判断することができる。つまり、受信装置2は、所望のTSを復元するために、送信装置1から送信された複数搬送波分割伝送記述子A及び複数搬送波分割伝送記述子Bまたはスーパーフレームのヘッダ情報に含まれる代替搬送波有無情報により、チャンネル1,2による組み合わせとチャンネル2,3による組み合わせとが有効であることの通知を受けることができる。そして、受信装置2は、チャンネル1,2を選局して、チャンネル1,2のスーパーフレーム1,2を合成するか、または、チャンネル2,3を選局して、チャンネル2,3のスーパーフレーム2,3を合成することにより、所望のTSを復元することができる。これにより、図5に示したように、TSが2つの搬送波によりチャンネル1,2にて60Mbpsで分割伝送され、同時に、TSが2つの搬送波によりチャンネル2,3にて70Mbpsで分割伝送されている状況となる。
制御部23は、TSがチャンネル1,2の複数の搬送波により分割伝送され、かつ、チャンネル1,3において同じ内容が伝送されているものと判断すると、合成部22のヘッダ抽出部222により抽出された各チャンネルのフレームヘッダ情報から各チャンネルの代替搬送波有無情報及び優先度を抽出する。そして、制御部23は、例えば、優先度に基づいて、同じ内容が伝送されているチャンネル1,3の搬送波のうち、優先度の高いチャンネル3の搬送波を選択し、複数搬送波分割伝送記述子Bが示す新たな搬送波の組み合わせ(チャンネル2,3の搬送波の組み合わせ)を設定し、新たな搬送波の組み合わせによる選局をチューナ20−2,20−3に行わせる。
合成部22は、新たな組み合わせに対応したスーパーフレーム2,3を入力し、新たな組み合わせのスーパーフレーム2,3から再生対象の元のTSを再生し、出力する。これにより、TSが2つの搬送波によりチャンネル1,2にて60Mbpsで分割伝送され、同時に、TSが2つの搬送波によりチャンネル2,3にて70Mbpsで分割伝送されている状況において、後者の分割伝送が選択され、TSが復元される。したがって、チャンネル1の使用を停止してもよい状態となる。
その後、送信装置1において、チャンネル1の有効期限が経過すると、スーパーフレーム1の生成が停止され、チャンネル1の搬送波による送信が停止する。そして、複数搬送波分割伝送記述子及びヘッダ情報に含まれる代替搬送波有無情報及び優先度は、TSが2つの搬送波によりチャンネル2,3にて分割伝送される状況に対応した情報に変更される。
これにより、チャンネル1が停止し、TSが2つの搬送波によりチャンネル2,3にて70Mbpsで分割伝送されている状況となる。つまり、TSを2つのチャンネル1,2にて分割伝送しているときに、SIに含まれる複数搬送波分割伝送記述子Aと複数搬送波分割伝送記述子Bを併用することにより、2つのチャンネル1,2による分割伝送と2つのチャンネル2,3による分割伝送とを並列に行い、チャンネル1の有効期限が経過する前に、チャンネル1の使用をチャンネル3の使用へ移行させ、2つのチャンネル2,3による分割伝送へシームレスに移行することができる。したがって、TSの伝送を中断することなく、TSを伝送するチャンネルの組み合わせを変更すると共に変調方式も変更して、チャンネル1の使用を停止することができる。
以上のように、本発明の実施形態による受信装置2によれば、TSが複数のチャンネルの搬送波により分割伝送され、これらのチャンネルのスーパーフレームから元のTSを復元している状況において、所定のチャンネルに関連する設備メンテナンス等を行うために、そのチャンネルの使用を停止する必要性が生じた場合に、制御部23は、合成部22のSI抽出部221により抽出されたSIから複数搬送波分割伝送記述子を抽出し、有効期限が設定されているチャンネルを、当該有効期限になると停止するチャンネルであると判断し、複数搬送波分割伝送記述子に含まれる追加された記述子情報のチャンネルを、停止するチャンネルと同じ内容が伝送されているチャンネルであると判断するようにした。そして、制御部23は、TSを復元するための搬送波の組み合わせを、停止するチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせから、追加したチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせに移行した選局を、チューナ20−1〜20−Nに行わせるようにした。
また、制御部23は、合成部22のヘッダ抽出部222により抽出された各チャンネルのフレームヘッダ情報から代替搬送波有無情報を抽出し、代替搬送波有無情報に他の搬送波でも送出中「1」が設定されている複数のチャンネルを、同じ内容が同時に伝送されている複数のチャンネルであると判断するようにした。そして、制御部23は、停止するチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせから、追加したチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせに移行した選局を、チューナ20−1〜20−Nに行わせるようにした。
また、制御部23は、合成部22のヘッダ抽出部222により抽出された各チャンネルのフレームヘッダ情報から優先度を抽出し、同じ内容が伝送されている複数のチャンネルの搬送波のうち、優先度の高いチャンネルの搬送波を選択し、優先度の高いチャンネルの搬送波を含む複数のチャンネルの搬送波の組み合わせに移行した選局を、チューナ20−1〜20−Nに行わせるようにした。
これにより、受信装置2は、停止するチャンネルの搬送波を未使用状態とすることができる。つまり、受信装置2は、TSを復元するために必要な搬送波の組み合わせが変更されたことを、複数搬送波分割伝送記述子または代替搬送波有無情報を用いて認識することができる。したがって、設備メンテナンス等に伴って、チャンネルの一部を変更しまたは変調方式を変更する等の処理を行う際に、提供中のサービスを中断させないで継続させることが可能となる。この場合、運用中のチャンネルの伝送容量を増加させることができ、一部の搬送波を変更することができる。
また、設備メンテナンス等に伴って、複数のチャンネルを追加することにより、搬送波の数を任意に変化させることができる。この場合、受信装置2の制御部23は、複数搬送波分割伝送記述子または代替搬送波有無情報に基づいて、複数のチャンネルが追加されたことを認識することができる。また、設備メンテナンス等に伴って伝送容量を増加させるときには、受信装置2の制御部23は、複数搬送波分割伝送記述子に基づいて、変調方式が例えば64QAMから256QAMに変更されることを認識する。一方、伝送特性劣化等の事情により伝送容量を減少させるときには、受信装置2の制御部23は、複数搬送波分割伝送記述子に基づいて、変調方式が例えば256QAMから64QAMに変更されることを認識する。そして、制御部23は、当該チャンネルの復調部21にその変調方式で変調処理を行わせる。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、デジタル有線テレビジョン放送システムを例にして説明したが、本発明は、デジタル有線テレビジョン放送システムに限定されるものではなく、複数の搬送波によりデジタルデータを伝送するシステムであれば適用がある。