JP6119492B2 - カーボンナノホーン集合体、これを用いた電極材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
上記窒素等置換カーボンナノホーン集合体は電極材料として用いることができる。電極材料としては、燃料電池、リチウムイオン電池、太陽電池等の電極材料として用いることができる。
上記窒素等置換カーボンナノホーン集合体を用いた電極材料は、燃料電池の触媒として用いることができる。窒素等置換カーボンナノホーン集合体は、水素やメタノール等の有機液体燃料から電子を放出させて水素イオンとする反応の触媒活性を有し、且つ、水素イオンと酸素と電子とから水を生成する反応の触媒活性を有することから、燃料電池の触媒としての機能を有する。また、比表面積が大きく、原料の燃料や酸化剤の伝導性や、反応生成物の水素イオンや水の伝導性が極めて高く、燃料電池の出力を向上させることができる。更に、窒素等置換カーボンナノホーン集合体は、触媒機能を有する金属触媒を微粒子として担持又は付着させる機能を有することから、これらを用いた燃料電池において、触媒機能を著しく向上させることができる。
上記窒素等置換カーボンナノホーン集合体を用いた電極材料は、リチウムイオン電池の活物質や、導電剤として用いることができる。窒素等置換カーボンナノホーン集合体は、電池の充放電に伴い活物質と集電体との間の電気伝導パスを良好にし、電極の抵抗を低減する。また、リチウムを取込むことができ活物質としても作用することができる。
[実施例1、2、比較例1]
窒素/アルゴン雰囲気下で、炭素ターゲットをCO2レーザーアブレーションすることで窒素置換カーボンナノホーン集合体を作製した。グラファイトをターゲットとし、2rpmで回転させた。CO2レーザーのエネルギー密度は、50kW/cm2で連続的に照射した。チャンバー温度は室温であった。チャンバー内に導入する混合ガスは、窒素に対するアルゴン量を変化させ、窒素100vol%(実施例2)、窒素50vol%(実施例1)、アルゴン100vol%(比較例1)に調整した。また、ガス流量は、10L/minに調整した。圧力は760〜950Torrに制御した。
実施例2、比較例1で得られたカーボンナノホーン集合体について、77Kでの窒素の平衡吸着量を測定した。得られた吸着等温線を図3(a)に示す。吸着等温線とは、吸着現象において、圧力を変化させたときの、平衡吸着量をプロットしたものである。実施例2のカーボンナノホーン集合体は、SEMやTEMでは形状やサイズが比較例1と同じように観察されたが、吸着等温線では相対圧力の低圧からの吸着量が著しく小さかった。尚、BET比表面積は、245m2/g(実施例2)、386m2/g(比較例1)であった。
実施例1、2、比較例1で得られたカーボンナノホーン集合体について、X線光電子分光(XPS)を行った。XPSは、固体に一定エネルギーの電磁波をあて、光電効果によって外に飛び出してきた電子(光電子)のエネルギーを測定し、固体の電子状態を調べる方法である。炭素元素1s軌道(C1s)から遷移した光電子エネルギー強度、窒素元素1s軌道(N1s)から遷移した光電子エネルギー強度を、それぞれ図4(a)、(b)に示す。C1sピークは284.3eVであり、何れもグラファイトとほぼ同じである。また、N1sピークは、実施例1、2のカーボンナノホーン集合体で検出され、比較例1のカーボンナノホーン集合体では検出されなかったことから、窒素雰囲気下のレーザーアブレーションにより、ターゲットのグラファイトにレーザーが照射される際、周囲の窒素を取り込んでナノホーンを形成していることが示された。ピーク位置が397eVと401eVであり、ピリジン型と3配位型の構造で、窒素が取り込まれていることが分かった。
上記で作製した窒素置換カーボンナノホーン集合体の触媒活性を電気化学的手法による酸素還元反応により評価した。測定は回転電極を利用した標準的な3極式セルで行った。作用極の回転電極上に、実施例2、比較例1で得られたカーボンナノホーン集合体粉末とナフィオン(Nafion)(フッ素樹脂共重合体の商品名、デユポン社製)溶液と水を分散させた溶液を作製し、回転電極上に添加することでサンプルを固定した。参照電極はAg/AgClを使用し、対極は白金を使用した。電解質溶液は、0.1MKOHを用いた。アルカリ溶液中であるので、電位窓を0V〜−0.8Vまでで使用した。電極の回転速度は、1500rpmで行った。電解質溶液を十分に酸素の過飽和にし、0.05mV/sで走査し、電流を測定した。結果を図5に示す。図5に示す電流電圧線は、横軸の参照電極に対する電圧と縦軸の電流密度との関係を示し、図3で得られたBET比表面積から求めた。実施例2のカーボンナノホーン集合体は0.4Vで電流密度変化が大きく変化し、触媒活性が高いことが分かった。ここで、酸化電流を正とするため還元電流は負である。
レーザーアブレーションにおいて、雰囲気ガスとして、表1に示す窒素濃度の混合ガスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、窒素置換カーボンナノホーン集合体(実施例3〜7)を作製し、触媒活性を測定した。窒素含有率は、XPSの炭素と窒素のピークから算出した。結果を表1に示す。カーボンナノホーンのグラフェンシートの炭素元素が窒素元素置換されることで、触媒活性が向上し、且つ、炭素元素数に対する窒素元素数が0.1%以上で効果があり、1.0〜5.0%付近が最適であることが分かった。この結果は、窒素が触媒活性サイトとして機能していることを示している。窒素の置換量に最適値があるのは、カーボンナノホーンを形成している炭素6員環に窒素が取り込まれると、隣接する炭素6員環の触媒活性が低下することが考えられる。
窒素置換カーボンナノホーン集合体の比抵抗を測定した。室温で、窒素置換カーボンナノホーン集合体の粉末を50MPaで加圧成形したペレットを作製し、四端子法により電気抵抗を測定した。結果を表2に示す。カーボンナノホーン集合体において、炭素元素が窒素元素で置換されると比抵抗が減少した。このとき、炭素元素に対し窒素元素が3atm%程度置換された窒素置換カーボンナノホーン集合体で抵抗値が最も低くなることが分かった。これは、窒素が取り込まれたことによりキャリアが増加し導電性が向上するが、欠陥も増えてキャリアの散乱も増えるため置換窒素元素が3atm%程度のものが最適であったと思われる。
実施例2の窒素置換カーボンナノホーン集合体にPtを20質量%担持した触媒にデュポン社製5%ナフィオン溶液を加え混練した後、カーボン電極上に塗布し、140℃で乾燥した(カソード:空気極)。燃料極(アノード)は、カーボンブラックにPtRu合金を50質量%担持したものを使用した。アノード電極とカソード電極を固体電解質膜の両面に圧着させて燃料電池電極を作製した。比較のため実施例1の窒素置換カーボンナノホーン集合体の代わりに比較例1を使って同様の電極を作製した。この電極を用いて、直接メタノール型燃料電池のセルを作り、室温下で電池特性を測定したところ、実施例2での燃料電池は、電池出力が40mW/cm2であったが、比較例1の場合は30mW/cm2であった。この結果は、実施例2の窒素置換カーボンナノホーン集合体自身が触媒活性を持っていることを示している。
実施例2で作製した窒素置換カーボンナノホーン集合体を5質量%、黒鉛の負極材80質量%にポリイミドを15質量%加え、さらにNメチル−2−ピロリジノンを混ぜ十分に攪拌し、ペーストを作製した。得られたペーストを集電体用の銅箔に厚さ50μmで塗布した。その後、120℃で1時間乾燥させた後、ローラプレスにより電極を加圧成形し、2cm2に打ち抜き負極とした。対極は、Li箔を使用した。電解液はLiPF6を体積比で3:7のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートに1Mで混合した。セパレーターは、30μmのポリエチレン製多孔質フィルムを用いて、評価用のリチウムイオン二次電池セルを作製した。得られたセルを充放電試験機にセットし、電圧が0Vに達するまで0.5mA/cm2の定電流で充電を行った。放電は、0.5mA/cm2の定電流で行い、セル電圧が2.0Vに達した時点で終了し、放電容量を求めた。比較のために、比較例1でセルを作製し、同様の条件で評価した。実施例2、比較例1において、初回充電量はそれぞれ420mA/gと415mA/gを示し、初回放電容量は、それぞれ352mA/g、335mA/gを示した。初回の充放電効率は、およそ84%と81%になり、実施例2の窒素置換カーボンナノホーン集合体を使用した方が良好な電池特性を示した。また、1C(電池を1時間で完全に充放電できる電流値)で比較した場合、実施例2の窒素置換カーボンナノホーン集合体を使用した方が1Vでの放電容量が5%増加した。これらの結果は、窒素置換カーボンナノホーン集合体が良導体であるため、活物質間の抵抗が減少したことやLiイオンの拡散抵抗が減少したことを示している。
アルゴン雰囲気下で、1質量%ホウ素含有炭素ターゲットをCO2レーザーアブレーションすることでホウ素置換カーボンナノホーン集合体を作製した。1質量%ホウ素含有グラファイトをターゲットとし、2rpmで回転させた。CO2レーザーのエネルギー密度は、50kW/cm2で連続的に照射した。チャンバー温度は室温であった。チャンバー内に導入するガスは、アルゴン100vol%に調整した。また、ガス流量は、10L/minに調整した。圧力は760〜950Torrに制御した。
実施例10で得られたホウ素置換カーボンナノホーン集合体についてXPSを行った。炭素元素1s軌道(C1s)から遷移した光電子エネルギー強度、ホウ素元素1s軌道(B1s)から遷移した光電子エネルギー強度を、それぞれ図9(a)、(b)に示す。C1sピークは283.4eVであり、グラファイトに比べて低エネルギー側にシフトしている。これは、炭素骨格にホウ素が取り込まれたためである。また、B1sピークは、比較例1のカーボンナノホーン集合体では検出されなかったことから、レーザーアブレーションにより、ターゲットのホウ素含有グラファイトにレーザーが照射される際、周囲のホウ素を取り込んでナノホーンを形成していることが示された。ピーク位置が186.5eVと190.9eVであり、主にB4CとBC2O構造が形成されていると思われる。
窒素雰囲気下で、1質量%ホウ素含有炭素ターゲットをCO2レーザーアブレーションすることで窒化ホウ素含有カーボンナノホーン集合体を作製した。1質量%ホウ素含有グラファイトをターゲットとし、2rpmで回転させた。CO2レーザーのエネルギー密度は、50kW/cm2で連続的に照射した。チャンバー温度は室温であった。チャンバー内に導入するガスは、窒素100vol%に調整した。また、ガス流量は、10L/minに調整した。圧力は760〜950Torrに制御した。
実施例11で得られた窒化ホウ素置換カーボンナノホーン集合体について、XPSを行った。炭素元素1s軌道(C1s)から遷移した光電子エネルギー強度、ホウ素元素1s軌道(B1s)から遷移した光電子エネルギー強度、窒素元素1s軌道(N1s)から遷移した光電子エネルギー強度を、それぞれ図11(a)、(b)、(c)に示す。C1sピークは283.4eVであり、グラファイトに比べて低エネルギー側にシフトしている。これは、炭素骨格にホウ素が取り込まれたためである。また、B1sピークが189.6eVであることから、主にBN構造が形成されていると思われる。N1sのピークが398eVであることから、主にBN構造のN原子の存在が考えられ、401eVのピークから3配位型の構造で窒素が取り込まれていることが分かった。
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
カーボンナノホーンを構成する炭素元素の一部が窒素元素、ホウ素元素、又は窒化ホウ素で置換され、前記窒素元素数が前記炭素元素数に対して0.1〜5.5%であり、前記ホウ素元素数が前記炭素元素数に対して10%以下であり、前記窒化ホウ素数が前記炭素元素数に対して10%以下であることを特徴とするカーボンナノホーン集合体。
[付記2]
平均直径が10nm以上、150nm以下であることを特徴とする付記1記載のカーボンナノホーン集合体。
[付記3]
ペダル型であることを特徴とする付記1又は2記載のカーボンナノホーン集合体。
[付記4]
前記カーボンナノホーンが1.0nm以上、5.0nm以下の直径を有することを特徴とする付記1から3の何れかに記載のカーボンナノホーン集合体。
[付記5]
前記カーボンナノホーンが30nm以上50nm以下の長さを有することを特徴とする付記1から4の何れかに記載のカーボンナノホーン集合体。
[付記6]
付記1から5の何れかに記載のカーボンナノホーン集合体を用いた電極材料。
[付記7]
リチウムイオン電池の電極活物質又は導電剤の少なくとも一方に用いることを特徴とする付記6記載の電極材料。
[付記8]
燃料電池の触媒として用いることを特徴とする付記6記載の電極材料。
[付記9]
前記カーボンナノホーン集合体が触媒を担持していることを特徴とする付記8記載の電極材料。
[付記10]
ターゲットとして炭素を用い、ターゲットを回転させながら窒素の存在下でレーザーアブレーションによりターゲットを蒸発させる工程、又は、ターゲットとしてホウ素含有炭素を用い、ターゲットを回転させながら希ガス又は窒素の存在下でレーザーアブレーションによりターゲットを蒸発させる工程を有することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法。
[付記11]
前記窒素と共に前記希ガスを含む混合ガス中の窒素の割合を増減させてレーザーアブレーションを行い、カーボンナノホーンを構成する炭素元素を置換する窒素元素の量又は窒化ホウ素の量を制御することを特徴とする付記10記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
[付記12]
ターゲットのホウ素含有炭素中のホウ素元素の含有割合を増減させて、カーボンナノホーンを構成する炭素元素を置換するホウ素元素又は窒化ホウ素の量を制御することを特徴とする付記10又は11に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
[付記13]
前記窒素又は前記希ガスに水素を混合することを特徴とする付記10から12の何れかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
[付記14]
レーザ出力1kW/cm2以上、1000kW/cm2以下、ターゲット回転速度0.1rpm以上、6rpm以下、ガス流速0.1L/min以上、200L/min以下、圧力500Torr以上、950Torr以下、室温でレーザーアブレーションを行うことを特徴とする付記10から13の何れかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
Claims (10)
- カーボンナノホーンを構成する炭素元素の一部が窒素元素、ホウ素元素、又は窒化ホウ素で置換され、前記窒素元素数が前記炭素元素数に対して0.1〜5.5%であり、前記ホウ素元素数が前記炭素元素数に対して10%以下であり、前記窒化ホウ素数が前記炭素元素数に対して10%以下であることを特徴とするカーボンナノホーン集合体。
- 平均直径が10nm以上、150nm以下であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノホーン集合体。
- 請求項1又は2記載のカーボンナノホーン集合体を用いた電極材料。
- リチウムイオン電池の電極活物質又は導電剤の少なくとも一方に用いることを特徴とする請求項3記載の電極材料。
- 燃料電池の触媒として用いることを特徴とする請求項3記載の電極材料。
- 前記カーボンナノホーン集合体が触媒を担持していることを特徴とする請求項5記載の電極材料。
- ターゲットとして炭素を用い、ターゲットを回転させながら窒素の存在下でレーザーアブレーションによりターゲットを蒸発させる工程、又はターゲットとしてホウ素含有炭素を用い、ターゲットを回転させながら希ガス又は窒素の存在下でレーザーアブレーションによりターゲットを蒸発させる工程を有することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法。
- 前記窒素と共に希ガスを含む混合ガス中の窒素の割合を増減させてレーザーアブレーションを行い、カーボンナノホーンを構成する炭素元素を置換する窒素元素の量又は窒化ホウ素の量を制御することを特徴とする請求項7記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
- 前記窒素又は前記希ガスに水素を混合することを特徴とする請求項7又は8記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
- レーザ出力1kW/cm2以上、1000kW/cm2以下、ターゲット回転速度0.1rpm以上、6rpm以下、ガス流速0.1L/min以上、200L/min以下、圧力500Torr以上、950Torr以下、室温でレーザーアブレーションを行うことを特徴とする請求項7から9の何れか1項記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
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