JP2009256118A - カーボンナノチューブ及びその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ及びその製造方法 Download PDF

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拓男 今永
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Morinobu Endo
守信 遠藤
Ryugan Kin
隆岩 金
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Abstract

【課題】フィラーとして他の材料に複合化するか又はそれ単体を成形した際に、高強度の材料とすることができ、さらに、導電性フィラーとして用いる場合に、屈曲による電気抵抗の増大を防ぐことができるカーボンナノチューブを提供する。
【解決手段】フィラーとして他の材料に複合化するか又はそれ単体を成形するためのカーボンナノチューブであって、カーボンナノチューブは、多層型であり、3wt%以上のホウ素がドープされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、多層型のカーボンナノチューブに関するものである。
多層型のカーボンナノチューブ(以下、Multi Wall Carbon Nano Tube:MWCNTと略す)は、チューブが何層にも入れ子になっている構造をしており、チューブ間はファンデルワールス力で結合している。カーボンナノチューブ(以下、Carbon Nano Tube:CNTと略す)をフィラーとして他の材料に複合化するか又はそれ単体として成形する場合、製造時には応力が加わることとなる。ファンデルワールス力は弱いため、MWCNTにこのような圧力が作用した際、内側のチューブが滑り押し出されるテレスコープ現象が確認されている(例えば、非特許文献1参照。)。
このテレスコープ現象が発現すると、外側のチューブは支えを失うため、機械強度が元のMWCNTより低下し、加わっている圧力により屈曲する。屈曲したMWCNTでは、屈曲点が電子散乱因子となり、電子が散乱され、電気抵抗が増加する。すなわち、粉体抵抗測定時には、加圧されるため屈曲し、抵抗が増大してしまう。一方、屈曲したMWCNTから圧力を除くと、押し出された内側チューブは元の位置に戻ろうとするため、MWCNTも直線状に戻ろうとし、スプリングバックが大きくなる。不活性雰囲気下での熱処理では、熱処理温度を上昇させるほど、チューブの層構造のそろったMWCNTを形成するため、テレスコープ効果が発現しやすくなり、結果としてスプリングバックや粉体抵抗は増加する。
また、製造されたCNTの結晶性を向上し特性を向上させる技術としては、1000℃以上の真空もしくは不活性雰囲気下で焼成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この技術においては、焼成したCNTは機械強度に劣り圧縮時に屈曲しやすくなるため、屈曲点が電子散乱源となり、図1における試料5〜8により示されているように粉体抵抗が増大するという課題があった。また、屈曲しやすくなることは、図2における試料5〜8により示されているように大きなスプリングバックも発生させるため、圧縮成形性に劣るという課題もあった。
さらに、CNTの特性を向上させる技術としては、CNTにホウ素を含有させる技術が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、この技術では、直径10nm程度の細いCNTを用いているため、1600℃以上の高温処理に耐えることができず熱分解してしまうという課題があった。また、細いCNTであるため、本発明で示すような屈曲を抑制する効果は得ることができないという課題もあった。
また、2層CNTのサイズコントロール、形状コントロールを低温で行う技術として、CNTの六員環炭素原子をホウ素原子に置換し、隣接する2層CNTを融合して、径大な2層のチューブ構造を形成させる技術が報告されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、この技術は、2層CNTに関するものであり、MWCNTに特有のテレスコープ現象を抑制する技術と異なったものである。CNTには、もともとある程度の欠陥やほころびがあり、MWCNTにおいては、それらが隣接する層に引っかかり、テレスコープ現象を抑制している。ところが、熱処理することにより欠陥やほころびを修復して結晶性を向上させると、引っかかりがなくなり、テレスコープ現象が顕著に発生して、機械強度の低下や、それに起因した屈曲による電気抵抗の増大といった矛盾が生じていた。
「カーボンナノチューブの材料科学入門」、斎藤弥八編著、コロナ社(2005)、p43 特開平7−150419号公報 特開2000−281323号公報 特開2006−282408号公報
したがって、本発明は、結晶性を高めながらもテレスコープ現象を抑制させる、すなわち、フィラーとして他の材料に複合化するか又はそれ単体を成形した際に、高強度の材料とすることができ、さらに、導電性フィラーとして用いる場合に、屈曲による電気抵抗の増大を防ぐことができるカーボンナノチューブを提供することを目的としている。
本発明のカーボンナノチューブは、上記知見に基づいてなされたものであり、フィラーとして他の材料に複合化するか又はそれ単体を成形するためのカーボンナノチューブであって、前記カーボンナノチューブは、多層型であり、3wt%以上のホウ素をドープしてなることを特徴としている。
本発明によれば、MWCNTに3wt%以上のホウ素をドープさせることにより、添加したホウ素がMWCNTのチューブ間に入りこみ、内側のチューブと外側のチューブを橋渡しする結合を形成する。これにより、ホウ素が添加されたMWCNTではテレスコープ現象の発現が抑制され、MWCNTが本来有する機械強度を発揮し、応力に対しても屈曲しにくくなる。CNTの屈曲点は電子散乱源となるため、屈曲したCNTでは電気抵抗が増大する。したがって、ホウ素が添加されたCNTは電子散乱源となる屈曲点が少ないため、CNT本来の導電性が発揮される。その結果、フィラーとして他の材料に複合化するか又はそれ単体を成形した際に、高強度の材料とすることができ、さらに、導電性フィラーとして用いる場合に、屈曲による電気抵抗の増大を防ぐことができる。
本発明のCNTは多層型のMWCNTであることが必須である。下記の実施例において詳細に説明しているが、一層型のCNT(以下、Single Wall Carbon Nano Tube:SWCNTと略す)や二層型のCNT(以下、Double Wall Carbon Nano Tube:DWCNTと略す)はホウ素添加時の熱処理において分解してしまうため、ホウ素添加による屈曲の抑制及び電気抵抗の低減という本発明の効果を発揮し得るCNTはMWCNTである。MWCNTは、SWCNTやDWCNTと比較すると、直径が太いために曲率が小さく、層数も多いことから、より黒鉛に近い性質を示すようになり、耐熱性に優れる。そのため、不活性ガス雰囲気下では2000℃以上の高温にも耐えうる。
また、本発明のCNTは、3wt%以上のホウ素がドープされたものであることが必須である。ホウ素の添加量が3wt%未満では、テレスコープ現象の発現を抑制するといった効果が十分に発揮しない。ホウ素はCNTの結合に影響を及ぼし、CNT内でのホウ素間距離を一定に保つ性質があるため、CNTの炭素原子量に対する添加ホウ素原子量の最大量は一定となるため、ホウ素添加量はある点で飽和する。
さらに、本発明のCNTは、直径が20nm以上であることが好ましい。MWCNTは、層と層の間隔がほぼ一定で、直径が大きくなるほど層の数が多くなる構造を有している。そのため、テレスコープ現象は、直径が20nm以上となる層構成において発生し、さらに層の数が多くなるとより顕著となる。一方、直径が20nm未満となる場合には、抑えるべきテレスコープ現象が発生せず、直径が10nmではこの現象はほとんど見られなくなる。
また、MWCNTにホウ素を添加するには大きな活性化エネルギーが必要となる。そのため、本発明のCNTを作製するためには、CNTとホウ素源を混錬した後、不活性ガス雰囲気下、2000℃以上で熱処理する工程が必要となる。添加時の熱処理温度が2000℃未満ではホウ素がMWCNTに添加されない。
さらに、本発明のCNTにおけるホウ素源としては、炭化ホウ素、金属ホウ素、酸化ホウ素などホウ素を含む何れの素材を用いてもよい。また、ホウ素添加時に用いる不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウムなど何れのものでもよい。
CNTをバルクとして用いるには、樹脂や金属等と混合して複合材料として用いる場合やCNT単独として用いる場合等、様々な形態が考えられるが、いずれにおいても圧縮成形の工程が必要となる。ここに本発明のCNTを用いることでスプリングバックの抑制による成形性の向上や導電性の向上、強度の向上等の効果が期待できる。
例えば、CNTと金属の複合材料を粉末冶金法により作製する際、CNTと金属粉末を混合して混合粉末を作製した後、焼結前に加圧成形して圧粉体を作製する方式が考えられる。もしくはHIP法などの圧縮成形と焼結を同時に行う加圧焼結法を積極的に用いる方式もある。ここに本発明のCNTを用いると、スプリングバックを抑制することが可能となり、精度の良い成形が可能となる。また、同時に加圧によるCNTの屈曲も抑制されCNT本来の強度を得ることが可能となるため、複合材料の強度向上も期待できる。
さらなる具体例としては、例えば、CNTと銅との複合材料を作製する際に、まず、銅粉末とCNTをボールミルにより混合し、得られた混合粉末をダイスに入れてプレス機で加圧成形し圧粉体を作製する。この圧粉体を真空焼結により焼結し複合材料とする。もしくは混合粉末をダイスに入れ、等方圧をかけつつ焼結を行うHIPを用いてもよい。
1.カーボンナノチューブの作製
<試料1〜4>
MWCNT(NCT社製、直径20nm)とホウ素重量比が3wt%となる量の和光純薬(株)製の炭化ホウ素をエタノール中に入れ、攪拌しながら30℃に熱しエタノールを乾燥させてホウ素源−CNT混合粉末を得た。この混合粉末を黒鉛炉に投入し、炉内をアルゴンパージした。次いで、温度を上昇させて1500〜3000℃の所定温度で30分保持した後、50℃以下まで炉冷し、熱処理温度を異ならせた試料1〜4のホウ素ドープCNTを作製した。なお、上記工程においては、アルゴンパージから炉冷が完了するまでの間アルゴンを流し続けた。
<試料5〜8>
上記試料1〜4のホウ素ドープCNTの作製工程において、ホウ素を添加しない以外は同様にして、比較用の試料5〜8のCNTを作製した。
<試料9〜14>
上記試料3のホウ素ドープCNTの作製工程において、CNTに対するホウ素重量比が0〜15wt%の所定量となるようにホウ素の添加量を変更した以外は同様にして、ホウ素添加量を異ならせた試料9〜14のホウ素ドープCNTを作製した。
<試料15〜18>
上記試料3のホウ素ドープCNTの作製工程において、CNTをSWCNT(CNI社製、直径1nm)、M.Endo et al., Nature, vol433(2005), p476に開示された方法により作製したDWCNT(直径2nm)、MWCNT(JFEエンジニアリング社製、直径10nm)及びVGCF(昭和電工社製、直径150nm)にそれぞれ変更した以外は同様にして、CNTを異ならせた試料15〜18のホウ素ドープCNTを作製した。
<試料19〜20>
上記試料17及び18のホウ素ドープCNTの作製工程において、ホウ素を添加しない以外は同様にして、比較用の試料19〜20のCNTを作製した。
2.評価方法
上記のようにして作製したホウ素ドープCNT及び比較用のCNTに対して、下記の方法により粉体抵抗、スプリングバック及びラマンスペクトルを測定した。
粉体抵抗については、試料20mgをφ6mmの真鍮製ダイスに充填後、真鍮製パンチで10〜20MPaの圧力を加え、試料高さの測定結果から試料密度が1g/cmとなった際に上下パンチ間に5mAの電流をかけ、測定された電圧及び試料高さから抵抗率を求めた。
スプリングバックについては、粉体抵抗測定と同様に試料20mgをφ6mmの真鍮製ダイスに充填後、真鍮製パンチで125MPaの圧力を加え、次いで、圧力を開放し、試料充填時、加圧時、及び圧力開放時それぞれの試料高さを測定し、この測定結果と以下の式からスプリングバック度を求めた。
スプリングバック度=(L2−L1)/L0
L0:充填時の試料高さ
L1:最大加圧時の試料高さ
L2:圧力開放時の試料高さ
ラマンスペクトルについては、HORIBA JY社製の商品名:RablamARAMISにより、レーザー波長532nm、測定範囲150〜400cm−1で測定した。
3.評価
まず、試料1〜8のホウ素ドープCNTに対する粉体抵抗測定結果から示す。図1はNCT社製のMWCNTにホウ素3wt%添加時の処理温度と粉体抵抗の相関を示すグラフである。なお、比較としてホウ素添加をせずCNTのみをアルゴン雰囲気下で熱処理した結果も同時に示した。これらの測定結果から、ホウ素添加しなかった試料5〜8では、熱処理温度上昇に伴い、粉体抵抗が増加していることが明確に示されている。一方、ホウ素添加した試料1〜4では、2000℃以上で粉体抵抗が一定となり、その値もホウ素を添加しない場合よりも低くなっていることが示されている。したがって、NCT−MWCNTにおいては、ホウ素を3wt%添加した場合には、熱処理温度を2000℃以上としても粉体抵抗の上昇を抑えることができることが示された。
また、上記試料1〜8に対して、屈曲の容易性を調べるためにスプリングバック度を測定した。図2はNCT−MWCNTにホウ素3wt%添加時の処理温度とスプリングバック度の相関を示すグラフである。なお、上記粉体抵抗測定と同様に、比較としてホウ素添加をせずCNTのみをアルゴン雰囲気下で熱処理した結果も同時に示した。これらの測定結果から、ホウ素を添加しない試料5〜8では、熱処理温度上昇に従ってスプリングバック度が増加することが示されているが、一方で、ホウ素を添加した試料1〜4では、2000℃以上で一定となり、かつ、ホウ素を添加しなかった場合よりスプリングバック度が低下することが示されている。この結果は、図1の粉体抵抗測定結果と一致するものであった。また、1500℃では、ホウ素を添加しなかった場合と添加した場合でスプリングバック度に差が生じないことが示された。これらの結果より、ホウ素がCNTに添加される温度は2000℃以上であることが確認できた。
次に、ホウ素の添加量を異ならせた試料9〜14を用いて、ホウ素の添加量による粉体抵抗への影響を調べた。図3は2500℃熱処理時のNCT−MWCNTへのホウ素添加量と粉体抵抗の相関を示すグラフである。これらの測定結果から、ホウ素添加量を1wt%以上とした試料10〜14では、ホウ素を添加していない試料9よりも粉体抵抗が低下しており、また、ホウ素添加量が1wt%以上で粉体抵抗の値がほぼ一定となることが示された。以上のことから、ホウ素の添加により粉体抵抗が減少することが明らかとなった。
また、上記試料9〜14に対して、屈曲の容易性を調べるためにスプリングバック度を測定した。図4は2500℃熱処理時のNCT−MWCNTへのホウ素添加量とスプリングバック度の相関を示すグラフである。これらの測定結果から、ホウ素添加量が3wt%以上の試料11〜14では、ホウ素を添加していない試料9よりもスプリングバック度が低下しており、また、ホウ素添加量が3wt%以上でスプリングバック度がほぼ一定となることが示されている。この結果は上記図3の結果とは異なるが、粉体抵抗及びスプリングバック度の両特性に優れることを考慮すると、本発明においては、ホウ素添加による効果はCNT比3wt%以上で発現すること、及び3wt%以上で効果が飽和することが確認できた。
次いで、一層型のCNTである試料15及び二層型のCNTである試料16を用いて、本発明においては、多層型のCNTであることが必須である根拠を示す。図5及び6は直径1nmのCNI−SWCNTと直径2nmの自作DWCNTの各々にホウ素を3wt%混練し2500℃で熱処理したときの処理前と処理後のラマンスペクトルである。これらの測定結果から、いずれのCNTでも、処理前に確認されたピークが処理後では消失しているのが確認できる。処理前に確認されたピークはRBMピークと言われるSWCNT及びDWCNTに特異的なピークであることから、熱処理によりSWCNT及びDWCNTのCNT構造が分解したことが伺える。したがって、ホウ素添加による屈曲の抑制及び電気抵抗の低減という本発明の効果を発揮し得るCNTはMWCNTであることが確認された。
さらに、直径の異なるMWCNTである試料3,7及び17〜20を用いて、本発明におけるMWCNTの直径についての根拠を示す。図7はホウ素添加量を0wt%(添加なし)もしくは3wt%、処理温度を2500℃とした時のMWCNTの直径とスプリングバック度の相関を示したグラフである。これらのグラフから、MWCNTの直径が10nmの試料17及び19では、スプリングバック度がホウ素添加の有無にかかわらず変化しないことが示された。これに対し、MWCNTの直径が20nm又は150nmの試料3及び7又は試料18及び20では、ホウ素添加によりスプリングバック度が低下することが確認された。このことから、本発明においては、MWCNTの直径が20nm以上であることが好ましい態様であることが示された。
NCT社製のMWCNTにホウ素3wt%添加時の処理温度と粉体抵抗の相関を示すグラフである。 NCT−MWCNTにホウ素3wt%添加時の処理温度とスプリングバック度の相関を示すグラフである。 2500℃熱処理時のNCT−MWCNTへのホウ素添加量と粉体抵抗の相関を示すグラフである。 2500℃熱処理時のNCT−MWCNTへのホウ素添加量とスプリングバック度の相関を示すグラフである。 直径1nmのCNI−SWCNTのホウ素を3wt%混練し2500℃で熱処理したときの処理前と処理後のラマンスペクトルである。 直径2nmの自作DWCNTのホウ素を3wt%混練し2500℃で熱処理したときの処理前と処理後のラマンスペクトルである。 ホウ素添加量を0wt%(添加なし)もしくは3wt%、処理温度を2500℃とした時のMWCNTの直径とスプリングバック度の相関を示したグラフである。

Claims (3)

  1. フィラーとして他の材料に複合化するか又はそれ単体を成形するためのカーボンナノチューブであって、
    前記カーボンナノチューブは、多層型であり、3wt%以上のホウ素をドープしてなることを特徴とするカーボンナノチューブ。
  2. 前記カーボンナノチューブは、直径が20nm以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ。
  3. 請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブを製造する方法であって、2000℃以上の温度でホウ素をドープさせることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
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