JP6324128B2 - 線材、これを用いた被覆電線および自動車用ワイヤハーネス、線材の製造方法 - Google Patents

線材、これを用いた被覆電線および自動車用ワイヤハーネス、線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム材料中にカーボンナノチューブを含む複合材料を用いた線材等に関するものである。
従来、自動車用ワイヤハーネスは銅を導電材料として利用されているが、近年の自動車軽量化の要求に伴い、一部アルミニウムを導電材料とする自動車用ワイヤハーネスが利用されている。アルミニウム製のワイヤハーネスに使用されるアルミニウムは強度が要求されるため純アルミではなく合金系のアルミが使用されている。
しかしアルミニウムを合金化することで導電率、伸びが低下してしまう課題がある。例えばA6101系アルミ合金(Al 98.9%、Si 0.5% Mg 0.6%)は、引張強度が215MPaと純アルミの倍以上の引張強度を有するが、導電率は50IACS%と純アルミの60IACS%から15%以上低下してしまう。
これに対し、アルミニウム/カーボンナノチューブ複合材料による線材が提案されている。カーボンナノチューブは、炭素によって作られるグラフェンシートが単層あるいは多層の同軸管状になった物質であり、超微細径、軽量性、高強度、高屈曲性、高電流密度、高熱伝導性、高電気伝導性を有する材料である。このカーボンナノチューブと金属を用いて、従来にない特性を持つ複合材料を得ることが試みられている。
例えば、金属粉体などからなる放電プラズマ焼結体を基材としており、単層または多層のグラフェンにより構成された極細のチューブ状構成体からなる繊維状炭素材料が基材中に分布して一体化されていることを特徴とする高熱伝導複合材料が開示されている(特許文献1を参照)。
国際公開第2006/120803号
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、金属組織に取り込まれたカーボンナノチューブが、複数のカーボンナノチューブ同士が互いに絡まった状態となっている。そのため、カーボンナノチューブ自体は直径が細いものであっても、カーボンナノチューブ組織は数μmのオーダーとなる。このオーダーの組織は、金属材料中で異物とみなされる。一般に金属に異物が存在すると、異物と金属材料の界面に応力集中が起こり異物を起点に割れが進行してしまう。すなわち、特許文献1に記載の発明は内部に多量の異物を含む組織構造となっている。そのため、塑性加工には不向きとなり、結果、特許文献1の手法ではカーボンナノチューブと金属と最適な構造に複合化することが困難となっていた。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、カーボンナノチューブが分散されたアルミニウム材料であって、高い機械強度と優れた導電性を有する複合材料を用いた線材を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、第1の発明は、線材であって、アルミニウム製の内層と、前記内層の外周に設けられ、前記内層を被覆する外層と、を具備し、前記外層は、アルミニウム製の母材に、カーボンナノチューブが単体または凝集体で分散しており、線材の長手方向に垂直な断面での、前記単体または前記凝集体のサイズが、線材の径の1%以下であり、断面において、線材の半径に対する前記外層の厚みの占める割合が、10%〜30%であり、前記母材に対する前記カーボンナノチューブの配合比が0.2重量%以上5重量%以下の範囲であることを特徴とする線材である。
第1の発明によれば、アルミニウム製の内層と、アルミニウムにカーボンナノチューブが分散した外層とからなるため、高い導電率と強度とを両立した線材を得ることができる。
特に、アルミニウム製の母材中でのカーボンナノチューブが、単体で分散するか、または凝集体を形成してもその径は線材の1%以下と、細かく分散しているため、従来のようなカーボンナノチューブ同士が絡まって大きな凝集体となる場合と比較して、高い強度を得ることができる。このため、例えば、電線として使用した際に、端子による加締めで線材が潰れすぎることを抑制することができる。
また、アルミニウム母材が線材の長手方向につながっているため、アルミニウムとカーボンナノチューブの界面での電気抵抗の影響による導電率の低下が少ない。線材の長手方向に垂直な断面において、カーボンナノチューブの凝集体のサイズが線材の径の1%を超えると、結果として母材中のカーボンナノチューブが、不均一な分布になって強度が低下したり、異物となって破壊の起点になったりする。また、アルミニウム母材が長手方向につながりにくくなり、導電率が低下する。
これに対し、線材の長手方向に垂直な断面において、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブの凝集体が、線材の径の1%以下のサイズで分散していれば、長手方向には長く伸びても良い。線材の長手方向と平行に配向していることが、強度と電気伝導度の点で特に望ましい。
また、アルミニウムにカーボンナノチューブが分散するため、少量(例えば0.2重量%以上)の添加でも強度の向上効果が大きく、この結果、高い導電率を確保することができる。
また、断面での線材の半径に対する外層の厚みの占める割合が10%〜30%であるため、強度向上の効果と、導電率の確保および製造性にも優れた線材を得ることができる。
第2の発明は、第1の発明にかかる線材が、複数撚りあわせられて、最外周に絶縁被覆が施されることを特徴とする被覆電線である。
第3の発明は、第2の発明にかかる被覆電線の端部に、コネクタが接続されることを特徴とする自動車用ワイヤハーネスである。
第2、第3の発明によれば、特に自動車に適したワイヤハーネスとして利用することができる。
第4の発明は、線材の製造方法であって、混酸によって酸処理を施したカーボンナノチューブを、液中に分散させた分散液Aと、アルミニウム製の粒子を液中に分散させた分散液Bと、を、アルミニウム製の母材に対する前記カーボンナノチューブの配合比が0.2重量%以上5重量%以下の範囲となるように混合し、ヘテロ凝集反応させ、得られた粉末を、乾燥後、放電プラズマ焼結によって、中空円筒体に焼結し、前記中空円筒体の内部に、アルミニウム製の柱状体を挿入して複合体を形成し、前記複合体を熱間押出加工および冷間引き抜き加工によって線材を得て、前記線材の、断面において、線材の半径に対する外層の厚みの占める割合が、10%〜30%であることを特徴とする線材の製造方法である。
前記アルミニウム製の粒子は、平均粒径が1.0〜25μmであることが望ましい。
第4の発明によれば、アルミニウム製の内層と、アルミニウムにカーボンナノチューブが分散した内層とを有する線材であって、外層中にカーボンナノチューブを十分に分散させることができる。このため、強度の高い線材を得ることができる。
特に、アルミニウム製の粒子の平均粒径が1.0μm以上であれば、取扱い性に優れ、焼結も容易である。また、アルミニウム製の粒子が25μm以下であれば、アルミニウム粒子とカーボンナノチューブを均一に分散させることができる。
本発明によれば、カーボンナノチューブが分散されたアルミニウム材料であって、高い機械強度と優れた導電性を有する複合材料を用いた線材を提供することができる。
線材1を示す斜視図。 線材1の断面図。 外層5におけるカーボンナノチューブの分散状態を示す概念図であり(a)は、本発明の線材を示す図、(b)は、従来の複合体を示す図。 混合液13を作成する工程を示す図。 焼結方法を示す図。 中空円筒体25に柱状体27を挿入する工程を示す図。 複合体31を押出加工する工程を示す図。
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、線材1を示す斜視図、図2は、断面図である。線材1は、内層3と、内層3の外周に設けられる外層5からなる。
内層3は、アルミニウム製である。ここで、アルミニウム製とは、アルミニウムおよびアルミニウム合金を含む。内層3を構成するアルミニウムとしては、例えば純アルミニウム(A1000系)やA6000系合金を使用することができる。特に、純アルミニウムを用いることで、高い導電率を確保することができる。
純アルミニウムとしては、例えば、JIS A1070合金、JIS A1050合金を使用することができる。また、A6000系合金としては、JIS A6101合金を用いることができる。なお、アルミニウム材料中には、製造工程上不可避的に混入するその他の不可避不純物や、自然に酸化して生成される酸化アルミニウムが含まれる。
外層5は、内層3の全周に形成される。図2に示すように、線材1の半径をBとし、外層5の厚みをAとすると、A/Bは、10%〜30%であることが望ましい。被覆率が10%未満では、外層5の厚みが薄すぎて、強度向上等に対する外層を形成した効果が小さい。また、被覆率が30%を超えると、コストが増加するため望ましくない。
外層5は、アルミニウム母材中にカーボンナノチューブが分散して構成される。アルミニウム母材としては、前述した、内層3を構成するアルミニウムを適用することができる。
カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。
カーボンナノチューブは、平均直径が0.5〜50nmであることが好ましい。さらに、カーボンナノチューブは、直線状であっても、湾曲状であってもよい。なお、カーボンナノチューブの平均直径は電子顕微鏡による径の実測値を平均して求めることができる。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。
また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するススから得られる。レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。カーボンナノチューブは、アルミと複合化される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、溶媒への分散性を改善することができる。
また、カーボンナノチューブが、バリスティック伝導を有するカーボンナノチューブを含むことが好ましい。バリスティック伝導とは、カーボンナノチューブの大きさが電子の平均自由工程よりも大きく、位相総和長よりも小さい場合に実現する。電子は電子散乱のみを受けて伝導することで、キャリアの無散乱走行に基づく電気伝導性の向上が期待されるものである。
また、カーボンナノチューブが、断面が同心円状のダブルウオールカーボンナノチューブまたは、断面が押しつぶされたように変形したダブルウオールカーボンナノチューブを含んでもよい。ダブルウオールカーボンナノチューブとは、二層カーボンナノチューブ(DWNT)のことである。
カーボンナノチューブが、ドーピングされたカーボンナノチューブを含んでもよい。ドーピングとは、カーボンナノチューブの内部空間にドーパントを収容することや、カーボンナノチューブをドーパントで被覆することである。ドーパントは、アルカリ金属、ハロゲン、導電性高分子(PPyCFSO、PPyTFSI)、イオン液体(EMIBF、EMITFSI)、有機分子(TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)、DNBN−3,5−Dinitrobenzonitrile,F4−TCNQ(Tetrafluorotetracyanoquinodimethane)、TDAE(Tetrakis(dimethylamino)ethylene)、TTF(Tetrathiafulvalene)、TMTSF(Tetramethyltetraselenafulvalene))などが好ましい。
ここで、本発明は、外層5におけるアルミニウム母材中のカーボンナノチューブの分散度が高い。図3は、線材1の外層5の長手方向断面における、母材7中のカーボンナノチューブ9の分散状態を示す概念図である。なお、図中Cは、線材の長手方向である。本発明では、図3(a)に示すように、母材7中にカーボンナノチューブ9の単体または凝集体が略均一に分散する。なお、外層5においては、カーボンナノチューブ9は、加工方向である長手方向(図中C)の方向に配向する。この際、線材1の径方向(長手方向Cと垂直な方向であって、図における上下方向)に対する単体または凝集体のサイズ(図中D)は、線材1の外径の1%以下である。例えば、線材1の外径が100μmであれば、カーボンナノチューブ9の径方向サイズDは、1μm以下である。このように、線材1の長手方向に垂直な断面において、カーボンナノチューブ9の単体又は凝集体が、線材1の径の1%以下のサイズで分散していれば、少量の添加であっても高い強度を得ることができる。また、母材7がカーボンナノチューブ9によって分断されないため、導電率の低下も少ない。
これに対し、図3(b)に示した従来の複合材料のように、カーボンナノチューブ9同士が互いに絡まりあって、大きな凝集体を形成すると、線材1の径方向(長手方向Cと垂直な方向であって、図における上下方向)に対する凝集体のサイズ(図中E)は、線材1の外径の1%を大きく超える。線材1の長手方向に垂直な断面において、カーボンナノチューブ9の凝集体のサイズが線材の径の1%を超えると、結果として母材中のカーボンナノチューブ9が、不均一な分布になり、例えば異物となって破壊の起点になる。また、アルミニウム母材が長手方向につながりにくくなり、導電率が低下する。
なお、分散の程度や、凝集体の大きさは、線材をFIB(集束イオンビーム)加工して径方向や長手方向の断面を出し、SEMやSIMで観察するといった、従来より知られている方法により、観察可能である。
次に、本発明の線材の製造方法について説明する。線材を構成する複合材は、アルミニウム粉末とカーボンナノチューブを原料に混合することにより製造可能である。その混合方法は湿式、乾式のいずれの混合法でも構わない。湿式混合方法としてはそれぞれを溶媒に分散し、アルミニウムおよびカーボンナノチューブそれぞれが帯電する電荷によって凝集反応させるヘテロ凝集法や、それぞれの材料をスラリー状にしてミリングするボールミル、ビーズミル混合法等が適用できる。また乾式の混合方法としては、気層中で混合するドライミリング法がある。
以下、ヘテロ凝集法について説明する。図4に示すように、まず、硫酸と硝酸の混酸により酸処理をしたカーボンナノチューブ9をエタノールに分散させた分散液11aと、例えばガスアトマイズ法で製造したアルミニウム粒子8をエタノールに分散させた分散液11bを準備する。
なお、アルミニウム粒子8は、平均粒径が1.0〜25μmであることが望ましい。アルミニウム粒子8の平均粒径はレーザー回折式の粒度分布測定器(マイクロトラック法)によるD50値を平均粒径とする。平均粒径が1.0μm未満では、取扱い性が悪い。また、平均粒径が25μmを超えると、アルミニウム粒子8を確実に分散させることが困難となる。
各分散液は、カーボンナノチューブ9の混合比率がアルミニウムに対し0.2〜5wt%となるように計量する。カーボンナノチューブ9の添加量が0.2重量%未満であるとカーボンナノチューブ添加の効果が発現しない。また、カーボンナノチューブ9を5重量%以上添加すると、カーボンナノチューブ9を分散させることが困難となる。また、アルミニウムの流動性が低下するため、加工が困難となる。また、カーボンナノチューブ9の添加量が増えると、導電率が低下するため望ましくない。なお、さらに望ましくは、カーボンナノチューブ9の添加量が0.5〜3wt%となるようにする。
次に、これらの分散液11a、11bを混合して、混合液13を得る。混合液13では、ヘテロ凝集反応によって、アルミニウム粒子8の表面にカーボンナノチューブ9が付着した構造となる。ヘテロ凝集とは、性質の異なる少なくとも2種以上の微粒子をファンデアルワールス力もしくは静電相互作用により凝集させることである。凝集反応したアルミニウム粒子8とカーボンナノチューブ9を減圧濾過によって回収、乾燥し複合粉末を得る。
得られた複合粉末を放電プラズマ焼結によって焼結する。図5は、放電プラズマ焼結を行う工程を示す図である。得られた粉末23を、焼結用の下型21と上型19へ投入する。上型19と下型21は、それぞれ電極17a、17bと導通しており、電極17a、17bは、図示を省略した電源に接続される。真空環境で電極17a、17bに通電することで、粉末23が、融点以下の温度で焼結される。以上により、下型21と上型19とで形成されるキャビティー形状である円筒状の部材を形成することができる。
次に、図6に示すように、焼結によって得られた中空円筒体25の中空部に、柱状体27を挿入する。柱状体27は、あらかじめ加工されたアルミニウム製の部材である。なお、中空円筒体25の厚みと中空径(柱状体27の外径)の比率は、最終加工品において、線材外径に対する外層厚みが所定の範囲となるように設計される。
次に、図7に示すように、得られた複合体31を熱間押出加工によって棒材10を得る。押出加工による線材の製造方法は、複合体31をコンテナの中に入れ、押棒によって複合体31に圧力を加えてダイス29から押し出すことにより、棒材10(または線材1)を得る方法である。ダイス29の出口側の形状が棒材10の形状と等しくなる。なお、複合体31の押出温度は、例えば、500℃程度である。
なお、ダイス29は、円錐ダイスを用いる方が望ましい。この方がメタルフローが制御しやすく安定して製品が得られやすいからである。又は、比較的メタルフローが安定しやすい間接押出法などを用いることもできる。
さらに、押し出された棒材10を冷間引抜加工することによって線材1を得る。引抜加工による線材の製造方法は、ダイスに棒材10を押し当て、ダイスの穴から棒材10を引き抜くことで線材1を得る方法である。得られた線材1は、ドラム等に巻き取られる。
なお、一回の引抜き加工での断面積減少には限界があるため、細い線材を得るには、引抜きの加工度を低く抑えて、引抜き加工を繰り返し行うことが好ましい。引抜き加工を繰り返して行うには、引抜き加工と引抜き加工の間に中間焼鈍と呼ばれる熱処理を行なって加工歪を除去することが望ましい。引抜きのダイス形状、ダイス材質、潤滑剤、その他の条件等については、一般的な金属の引き抜きと同様にして行うことができる。
このようにして得られた線材1は、アルミニウム製の内層3によって、高い導電率を得ることができる。すなわち、線材全体をカーボンナノチューブとアルミニウムとの複合材で構成する場合と比較して、高い導電率を得ることができる。
また、内層3に導電率の高い純アルミニウムを用いても、外層5がカーボンナノチューブを含む複合材であるため、高い強度を確保することができる。このように、高い導電率と高い強度とを両立するため、本発明の線材1は、電線として特に有効である。
また、本発明の線材1を複数撚りあわせられて、最外周に絶縁被覆を形成することで、高い導電率と高い強度とを両立した被覆電線を得ることができる。
さらに、得られた1本または複数本の被覆電線の端部に、コネクタを接続することで、ワイヤハーネスを得ることができる。このようなワイヤハーネスは、アルミニウムが素材として用いられているため、軽量であり、特に自動車用のワイヤハーネスとして有効である。
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(アルミニウム/カーボンナノチューブ複合化)
硫酸と硝酸の混酸により酸処理をしたカーボンナノチューブ(保土谷化学製 NT−7K)、及びガスアトマイズ法で製造した平均粒径5μmのアルミニウム粒子を、カーボンナノチューブの混合比率がアルミニウムに対し0.5wt%になるように計量し、それぞれエタノールに十分に分散させ、混合することでヘテロ凝集反応をさせた。凝集反応したアルミニウムとカーボンナノチューブを減圧濾過によって回収、乾燥し複合粉末を得た。
(放電プラズマ焼結)
得られた複合粉末を放電プラズマ焼結によって焼結した。まず、複合粉末を焼結用の外形φ15mm×30mmのリング形状のダイへ投入し、パンチで蓋をし、真空環境、50MPaで600℃×20分焼結した。
(焼結体複合化)
焼結したリンク形状の複合材料の中央部に、純アルミニウムの焼結体を組み込み複合体とした。その比率は、最終加工品が複合材料の被覆厚/線材半径で20%となるように設計し、組み合わせた。
(熱間押出し、冷間引抜)
焼結体を500℃〜550℃に保温し荷重をかけることでφ3.0mmの棒状に押出した。押し出されたφ3.0mmの棒を数回のダイスを用いて線径を細く冷間引抜加工し、φ0.1mmになるまで繰り返した。なお、外層の被覆厚/半径は、20%であった。
(実施例2)
カーボンナノチューブの量の添加量をアルミニウムに対し1wt%にした以外は、実施例1と同様に製造した。
(実施例3)
外層の被覆厚/半径を10%とした以外は、実施例2と同様に製造した。
(実施例4)
外層の被覆厚/半径を30%とした以外は、実施例2と同様に製造した。
(実施例5)
カーボンナノチューブの量の添加量をアルミニウムに対し3wt%にした以外は、実施例2と同様に製造した。
(実施例6)
カーボンナノチューブの量の添加量をアルミニウムに対し4wt%にした以外は、実施例2と同様に製造した。
(実施例7)
内層を構成するアルミニウムとして、純アルミニウムではなく、A6101系アルミニウム合金を使用にした以外は、実施例2と同様に製造した。
(実施例8)
カーボンナノチューブの量の添加量をアルミニウムに対し0.2wt%にした以外は、実施例1と同様に製造した。
(実施例9)
カーボンナノチューブの量の添加量をアルミニウムに対し5wt%にした以外は、実施例1と同様に製造した。
(比較例1)
カーボンナノチューブを添加せずに純アルミニウム粉末のみを焼結、細線化加工した。
(比較例2)
カーボンナノチューブを添加せずにA6061アルミニウム粉末のみを焼結、細線化加工した。
(比較例3)
カーボンナノチューブの量の添加量をアルミニウムに対し8wt%にした以外は、実施例1と同様に製造した。
(比較例
カーボンナノチューブの量の添加量をアルミニウムに対し0.1wt%にした以外は、実施例1と同様に製造した。
(比較例
外層の被覆厚/半径を5%とした以外は、実施例2と同様に製造した。
(比較例
外層の被覆厚/半径を40%とした以外は、実施例2と同様に製造した。
それぞれのサンプルについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(電気特性評価)
細線化加工した線材を4端子法で抵抗を測定した。線材の径、クリップ間の距離を測定し、4端子法で測定した抵抗値から線全体の平均的な体積抵抗率を算出し、導電性(IACS%)を評価した。
(機械特性評価)
細線化加工した線材約100mmの両端をチャッキングし、テンシロンで速度10mm/minで引張り、破断までの最大値を、線径で割ることで、引張強度を算出した。また、同時に破断したときの伸びも測定した。
(引抜強度維持率評価)
自動車用ワイヤハーネス材料としては接続部の信頼性が重要である。そこで線材を撚線化し、アルミハーネス用圧着端子を圧着し、その信頼性評価を実施した。信頼性評価は圧着してから1000hr後の端子引抜強度の変化を測定した。初期強度を100%としてその維持率を評価した。
(加工性)
最終的な線材までの加工ができたかどうかを評価した。なお、表中の「○」はφ0.1mmまで加工できたものであり、「×」は最終まで加工できなかったものである。また、「△」は細線化加工はできたが加工途中での断線が頻発したものである。
Figure 0006324128
(機械特性結果)
実施例1〜8は、目標とする200MPa以上の引張強度を発現することを確認した。伸び値はいずれも2〜3%であった。これに対し、カーボンナノチューブを含まない比較例1、2は200MPaに達しなかった。また比較例3は、最終的な線材まで加工することができず機械特性、電気特性の最終評価ができなかった。比較例4は、カーボンナノチューブの配合量が少なく、強度向上の効果が見られなかった。比較例5は、外層の厚みが薄すぎるため、強度向上の効果が見られなかった。
(電気特性結果)
実施例1〜8は、目標とするIACSで55%以上を満足した。内層がアルミニウム合金層である比較例2は、目標とする導電率55%を満足しなかった。また、外層が厚すぎる比較例6は、目標とする導電率55%を満足しなかった。
(引抜強度維持率結果)
実施例1〜8は、目標とする1000時間経過後の強度維持率95%を満足した。カーボンナノチューブを含まず、純アルミニウムを用いた比較例1は、維持率が80%となった。また、カーボンナノチューブの添加量が少ない比較例4と、外層の薄い比較例4も、維持率が90%未満であった。
(加工性結果)
実施例1〜8は、すべて線材まで加工できた。一方、内層がアルミニウム合金である比較例2と、カーボンナノチューブの添加量が多い比較例3は、線材まで加工することができなかった。また、外層の厚い比較例6は、加工時に破断が多発した。
なお、詳細は省略するが、本発明の製造方法を用いた実施例は、線材の長手方向に垂直な断面における、カーボンナノチューブの単体又は凝集体のサイズが、全て線材の径の1%以下で分散していた。一方、従来の方法(例えば特許文献1の方法)による製造方法では、カーボンナノチューブの凝集体のサイズが、線材の径の1%を超えるものが多々見られ、強度や導電率が低下した。例えば、従来の製造方法により製造された線材の引張強度は200MPa以下となった。また、従来の製造方法では、細線加工時に切れてしまうことがあった。これは、CNTの大きな凝集体が、異物となって破断の起点になったためである。
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………線材
3………内層
5………外層
7………母材
8………アルミニウム粒子
9………カーボンナノチューブ
10………棒材
11a、11b………分散液
13………混合液
17a、17b………電極
19………上型
21………下型
23………粉末
25………中空円筒体
27………柱状体
29………ダイス
31………複合体

Claims (5)

  1. 線材であって、
    アルミニウム製の内層と、
    前記内層の外周に設けられ、前記内層を被覆する外層と、
    を具備し、
    前記外層は、アルミニウム製の母材に、カーボンナノチューブが単体または凝集体で分散しており、
    線材の長手方向に垂直な断面での、前記単体または前記凝集体のサイズが、線材の径の1%以下であり、
    断面において、線材の半径に対する前記外層の厚みの占める割合が、10%〜30%であり、
    前記母材に対する前記カーボンナノチューブの配合比が0.2重量%以上5重量%以下の範囲であることを特徴とする線材。
  2. 請求項1に記載の線材が、複数本撚りあわせられて、最外周に絶縁被覆が施されることを特徴とする被覆電線。
  3. 請求項記載の被覆電線の端部に、コネクタが接続されることを特徴とする自動車用ワイヤハーネス。
  4. 線材の製造方法であって、
    混酸によって酸処理を施したカーボンナノチューブを、液中に分散させた分散液Aと、
    アルミニウム製の粒子を液中に分散させた分散液Bと、
    を、アルミニウム製の母材に対する前記カーボンナノチューブの配合比が0.2重量%以上5重量%以下の範囲となるように混合し、ヘテロ凝集反応させ、
    得られた粉末を、乾燥後、放電プラズマ焼結によって、中空円筒体に焼結し、
    前記中空円筒体の内部に、アルミニウム製の柱状体を挿入して複合体を形成し、
    前記複合体を熱間押出加工および冷間引き抜き加工によって線材を得て、
    前記線材の断面において、線材の半径に対する外層の厚みの占める割合が、10%〜30%であることを特徴とする線材の製造方法。
  5. 前記アルミニウム製の粒子は、平均粒径が1.0〜25μmであることを特徴とする請求項4記載の線材の製造方法。
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