図1を参照して、本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム10の一方の面に、接着剤層40を介してλ/4板20を積層し、偏光フィルム10の他方の面には、接着剤層41を介して透明樹脂フィルム30を積層し、さらにその透明樹脂フィルム30の外側、すなわち偏光フィルム10に貼合されている面とは反対側に、帯電防止機能を有する粘着剤層50を積層して、偏光板1とする。粘着剤層50の表面には通常、剥離フィルム55が貼り合わされ、使用時までその粘着剤層50を保護することになる。接着剤層40,41は、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させることによって形成される。また、λ/4板20及び透明樹脂フィルム30は、それぞれ、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定される透湿度が10g/m2・24hr以下のもので構成する。まず、本発明の偏光板を構成する各層について説明する。
[偏光フィルム]
偏光フィルム10は通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000の範囲である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10〜150μm 程度とすることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度である。また浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。乾燥処理により、偏光フィルムの水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5〜20重量%程度であり、好ましくは8〜15重量%である。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、偏光フィルムがその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光フィルムの熱安定性が悪くなる可能性がある。
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗及び乾燥を施して得られる偏光フィルムは、その厚さを例えば5〜40μm 程度とすることができる。
[λ/4板]
λ/4板20は、可視光に対して1/4波長の面内位相差値を与えるフィルムであり、その面内位相差値は、例えば100〜200nmとすることができる。ここで、面内位相差値Reは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx 、フィルムの面内進相軸方向(面内で遅相軸と直交する方向)の屈折率をny 、フィルムの厚さをdとして、次式(1)で定義される。位相差値にはこの他、厚み方向位相差値Rthと呼ばれるものがあり、これは、さらにフィルムの厚み方向の屈折率をnz として、次式(2)で定義される。
Re=(nx−ny)×d (1)
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (2)
上記のような面内位相差値を与えるために、λ/4板20としては、一軸延伸又は二軸延伸されたフィルムが用いられる。延伸することで、フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は通常、ロール状のフィルムを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉において、ロールの進行方向、進行方向に直交する方向、その両方、あるいはロールの進行方向及びそれに直交する方向のいずれでもない斜め方向へ延伸される。加熱炉の温度は通常、樹脂フィルムのガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲内である。延伸の倍率は、通常 1.1〜6倍であり、好ましくは1.1〜3.5倍である。λ/4板20は一般に、その遅相軸が偏光フィルム10の吸収軸に対して45±10°又は135±10°で交差するように配置される。
λ/4板20が延伸されたフィルムである場合、その延伸方向は任意であるが、一般には、フィルムの流れ方向に対して、0°、45°又は90°とされる。延伸方向が0°であるフィルムの位相差特性は完全一軸性となるが、延伸方向が45°又は90°であるフィルムの位相差特性は弱い二軸性を帯びることが多い。なかでも、延伸方向が45°である斜め延伸フィルムは、ロール状態で偏光フィルム10にライン貼合できることから、最も好ましい。
本発明では、λ/4板20として、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定される透湿度が10g/m2・24hr以下のフィルムを用いる。ここで透湿度は、 JIS Z 0208-1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に従って求められる値である。本明細書では、温度40℃において、対象とするフィルムを境界面とし、一方の側の空気を相対湿度90%、他の側の空気を吸湿剤によって乾燥状態に保ったとき、24時間でこの境界面を通過する水蒸気の質量(g)を、そのフィルム1m2あたりに換算した値を採用する。本明細書において以下、単に透湿度というときは、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定される値を指すものとする。このような透湿度の低いフィルムを与える樹脂として、例えば、シクロオレフィン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などを挙げることができる。
[透明樹脂フィルム]
一方、透明樹脂フィルム30も、透湿度が10g/m2・24hr以下のもので構成する。この透湿度が10g/m2・24hrより大きくなると、偏光板に要求される耐熱性を満たせなくなることが多い。このような透湿度を満たすフィルムを与える樹脂として、λ/4板20を構成する樹脂と同様、シクロオレフィン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などが好ましく用いられる。
透明樹脂フィルム30は、未延伸のいわゆる保護フィルムであってもよいし、延伸することによって屈折率異方性が付与されたいわゆる光学補償フィルムであってもよい。光学補償フィルムとして用いるために樹脂フィルムを延伸する方法は、必要とされる屈折率異方性に応じて選択すればよいが、通常は、一軸延伸又は二軸延伸が採用される。
透明樹脂フィルム30の厚さは、その材質や要求される光学特性に応じて選択すればよいが、一般には5〜200μm であり、好ましくは10〜100μm である。その厚さが5μm を下回ると、取り扱いが難しくなって、偏光板の製造に支障をきたすことがあり、一方であまり厚くなると、フィルムの透明性が損なわれたり、偏光板の厚さも厚くなるため要求される薄肉化に対応できなかったりすることがある。
透明樹脂フィルム30を、延伸されて位相差が付与されている光学補償フィルムで構成する場合、一般にはその遅相軸が、偏光フィルム10の吸収軸とほぼ平行又はほぼ直交するように配置される。範囲で示すと、両者のなす角度が0±10°又は90±10°となるようにすればよい。一方で、先述のとおり、λ/4板20は通常、その遅相軸が偏光フィルム10の吸収軸に対して45±10°又は135±10°で交差するように配置される。図2に、偏光フィルム10と、λ/4板20及び透明樹脂フィルム30との軸角度の関係の一例を斜視図で示した。この例では、偏光板を液晶セルに貼って液晶表示装置とするときの画面長手方向(図では横方向)を0°とし、視認側となるλ/4板20から見たときの反時計回り方向を正として、偏光フィルム10の吸収軸15が0°方向(画面長手方向)、λ/4板20の遅相軸25が135°方向、そして透明樹脂フィルム30の吸収軸35が90°方向(画面短手方向)となっている。
[λ/4板及び透明樹脂フィルムに用いられる透湿度の低い樹脂]
本発明では上述のとおり、λ/4板20及び透明樹脂フィルム30の両方とも、透湿度が10g/m2・24hr以下の樹脂フィルムで構成する。このような透湿度の低いフィルムを与える樹脂として、先述のとおり、シクロオレフィン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などが好適である。これらの樹脂及びそれから形成されるフィルムについて説明する。
シクロオレフィン系樹脂は、ノルボルネンの如き環状オレフィン(シクロオレフィン)を主モノマーとし、主鎖に環状構造を有する樹脂である。シクロオレフィン系樹脂としては、適宜の市販品を用いることができる。市販されているシクロオレフィン系樹脂の例を挙げると、ドイツの Topas Advanced Polymers GmbH で生産され、日本ではポリプラスチックス株式会社から販売されている“TOPAS” 、JSR株式会社から販売されている“アートン”(ARTON)、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノア”(ZEONOR)及び“ゼオネックス”(ZEONEX)、三井化学株式会社から販売されている“アペル”(APEL)などがある。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また例えば、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”のような、予め製膜され、場合によってはさらに延伸されているシクロオレフィン系樹脂フィルムの市販品を用いてもよい。
シクロオレフィン系樹脂は、耐油性に乏しいものが多く、人間の皮脂などの脂分や極性の低い有機溶剤などが付着した状態で歪みがかかると、クラックを生じることがある。これは、ソルベントクラックとも呼ばれる現象であり、高分子鎖の配向度が高いほど配向方向と直交する方向の強度が弱くなるために、クラックが発生しやすくなる。完全一軸性のフィルムは、配向度も高く、高分子鎖が一方向に揃っているために、クラックを生じやすい。このため、本発明で採用する特にλ/4板20のように、偏光フィルムよりも外側にシクロオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムを配置する場合には、nx>ny>nz となる二軸性フィルムを用いることが好ましい。ここで、nx、ny及びnz は先に説明したとおりである。
一方、ポリプロピレン系樹脂は、重合用触媒を用い、プロピレンを単独で重合させて得られる単独重合体(ホモポリマー)や、プロピレンを主体とし、それに共重合可能なコモノマーを通常1〜20重量%の割合で、好ましくは3重量%以上、また10重量%以下の割合で共重合させて得られる共重合体(コポリマー)であることができる。プロピレンに共重合可能なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン又は1−ヘキセンが好ましい。なかでも、透明性や延伸加工性に比較的優れることから、エチレンを1〜10重量%、とりわけ3〜10重量%の割合で共重合させたプロピレン/エチレン共重合体が好ましい。エチレンの共重合割合を1重量%以上とすることで、透明性や延伸加工性を上げる効果が現れる。一方、その割合があまり多くなると、樹脂の融点が下がり、λ/4板20や透明樹脂フィルム30に要求される耐熱性が損なわれることがある。
ポリプロピレン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、株式会社プライムポリマーから販売されている“プライムポリプロ”、日本ポリプロ株式会社から販売されている“ノバテック PP” 及び“ウィンテック”、住友化学株式会社から販売されている“住友ノーブレン”、サンアロマー株式会社から販売されている“サンアロマー”などがある。このようなポリプロピレン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また例えば、サン・トックス株式会社から販売されている“サントックス-CP” のような、予め製膜されているポリプロピレン系樹脂フィルムの市販品を用いてもよい。
λ/4板20は、透湿度が10g/m2・24hr以下であり、前述したようなλ/4の面内位相差を与えるという範囲で、市販されている位相差フィルムのなかから、選択して用いることもできる。具体的には、上述したとおり、シクロオレフィン系樹脂フィルムであって、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”は、延伸され、適度の位相差が付与されているので、そのなかから、所望の面内位相差を与えるものを指定して用いることができる。また、同じくシクロオレフィン系樹脂フィルムであって、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”や日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”には、延伸されて適度の位相差が付与されているグレードがあるので、それらのなかから、所望の面内位相差を与えるものを指定して用いることができる。
透明樹脂フィルム30も、透湿度が10g/m2・24hr以下であるという条件を満たす範囲で、市販されている未延伸の又は延伸フィルムのなかから、選択して用いることもできる。ポリプロピレン系樹脂の未延伸フィルムであって、保護フィルムとして使用しうる市販品の例を挙げると、サン・トックス株式会社から“サントックス-CP” という商品名で販売されているものがある。
一方、シクロオレフィン系樹脂フィルムなら、先にも述べたとおりそれぞれ商品名で、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”や、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”がある。これらには、未延伸のグレードと、延伸されて所望の位相差が付与されたグレードがあるので、それらのなかから、保護フィルムとなりうるもの又は光学補償フィルムとなりうるものを、適宜選択して用いることができる。また、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”は、シクロオレフィン系樹脂フィルムが延伸されて位相差が付与されたものであり、そのなかから所望の位相差が付与されたものを光学補償フィルムとして用いることもできる。
[接着剤層]
偏光フィルム10とλ/4板20及び偏光フィルム10と透明樹脂フィルム30とは、それぞれ接着剤層41,42を介して貼合されている。接着剤層41,42は、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤から形成される。接着剤層41,42の形成に用いられる活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線硬化型である範囲において異なる種類のものでも構わないが、λ/4板20及び透明樹脂フィルム30に対して適度な接着力を与えることを前提に、両者とも同じ接着剤を用いるほうが、生産性やコストの面では有利である。
活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線の照射を受けて硬化し、偏光フィルム10とλ/4板20及び偏光フィルム10と透明樹脂フィルム30とを、実用に足る強度で接着できるものであればよい。例えば、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤、アクリル系硬化成分とラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤、エポキシ化合物のようなカチオン重合性の硬化成分及びアクリル系化合物のようなラジカル重合性の硬化成分の両者を含有し、そこにカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤を配合した活性エネルギー線硬化型接着剤などが挙げられる。なかでも、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。またこの接着剤は、実質的に無溶剤で使用できるものがより好ましい。
カチオン重合可能なエポキシ化合物であって、それ自身が室温において液体であり、溶剤を存在させなくても適度な流動性を有し、適切な硬化接着強度を与えるものを選択し、それに適したカチオン重合開始剤を配合した活性エネルギー線硬化型接着剤は、偏光板の製造設備において、偏光フィルム10とλ/4板20及び透明樹脂フィルム30とを接着する工程で通常必要となる乾燥設備を省くことができる。また、適切な活性エネルギー線量を照射することで硬化速度を促進させ、生産速度を向上させることもできる。
このような接着剤に用いられるエポキシ化合物は、例えば、水酸基を有する芳香族化合物又は鎖状化合物のグリシジルエーテル化物、アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物、C−C二重結合を有する鎖状化合物のエポキシ化物、飽和炭素環に直接若しくはアルキレンを介してグリシジルオキシ基若しくはエポキシエチル基が結合しているか、又は飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物などであることができる。これらのエポキシ化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。なかでも脂環式エポキシ化合物は、カチオン重合性に優れることから、好ましく用いられる。
水酸基を有する芳香族化合物又は鎖状化合物のグリシジルエーテル化物は、例えば、これら芳香族化合物又は鎖状化合物の水酸基にエピクロロヒドリンを塩基性条件下で付加縮合させる方法によって製造できる。このような、水酸基を有する芳香族化合物又は鎖状化合物のグリシジルエーテル化物には、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル、多芳香環型エポキシ樹脂、アルキレングリコール又はポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルなどが包含される。
ビスフェノール類のジグリシジルエーテルとして、例えば、ビスフェノールAのグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体、ビスフェノールFのグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビフェノールのグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体などが挙げられる。
多芳香環型エポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、ナフトールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、フェノールジシクロペンタジエン樹脂のグリシジルエーテル化物などが挙げられる。さらに、トリスフェノール類のグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体なども多芳香環型エポキシ樹脂に属する。
アルキレングリコール又はポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルとして、例えば、エチレングリコールのグリシジルエーテル化物、ジエチレングリコールのグリシジルエーテル化物、1,4−ブタンジオールのグリシジルエーテル化物、1,6−ヘキサンジオールのグリシジルエーテル化物などが挙げられる。
アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物は、例えば、当該化合物のアミノ基にエピクロロヒドリンを塩基性条件下で付加縮合させる方法によって製造できる。アミノ基を有する化合物は、同時に水酸基を有していてもよい。このような、アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物には、1,3−フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物及びそのオリゴマー体、1,4−フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物及びそのオリゴマー体、3−アミノフェノールのグリシジルアミノ化及びグリジシジルエーテル化物並びにそのオリゴマー体、4−アミノフェノールのグリシジルアミノ化及びグリジシジルエーテル化物並びにそのオリゴマー体などが包含される。
C−C二重結合を有する鎖状化合物のエポキシ化物は、その鎖状化合物のC−C二重結合を、塩基性条件下で過酸化物を用いてエポキシ化する方法によって製造できる。C−C二重結合を有する鎖状化合物には、ブタジエン、ポリブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどが包含される。また、二重結合を有するテルペン類もエポキシ化原料として用いることができ、非環式モノテルペンとして、リナロールなどがある。エポキシ化に用いられる過酸化物は、例えば、過酸化水素、過酢酸、tert−ブチルヒドロペルオキシドなどであることができる。
飽和炭素環に直接若しくはアルキレンを介してグリシジルオキシ基又はエポキシエチル基が結合している脂環式エポキシ化合物は、先に掲げたビスフェノール類を代表例とする水酸基を有する芳香族化合物の芳香環を水素化して得られる水素化ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテル化物、水酸基を有するシクロアルカン化合物のグリシジルエーテル化物、ビニル基を有するシクロアルカン化合物のエポキシ化物などであることができる。
以上説明したエポキシ化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、三菱化学株式会社から販売されている“jER”シリーズ、DIC株式会社から販売されている“エピクロン”、東都化成株式会社から販売されている“エポトート”、株式会社ADEKAから販売されている“アデカレジン”、ナガセケムテックス株式会社から販売されている“デナコール”、ダウケミカル社から販売されている“ダウエポキシ”、日産化学工業株式会社から販売されている“テピック”などが挙げられる。
一方、飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物は、例えば、C−C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物のC−C二重結合を、塩基性条件下で過酸化物を用いてエポキシ化する方法によって製造できる。C−C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物としては、例えば、シクロペンテン環を有する化合物、シクロヘキセン環を有する化合物、シクロペンテン環又はシクロヘキセン環にさらに少なくとも2個の炭素原子が結合して追加の環を形成している多環式化合物などが挙げられる。C−C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物は、環外に別のC−C二重結合を有していてもよい。C−C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物の例を挙げると、シクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、単環式モノテルペンであるリモネン及びα−ピネンなどがある。
飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物は、上で述べたような環に直接結合したエポキシ基を有する脂環式構造が、適当な連結基を介して分子内に少なくとも2個形成された化合物であってもよい。ここでいう連結基には、例えば、エステル結合、エーテル結合、アルキレン結合などが包含される。
飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物の具体的な例を挙げると、次のようなものがある。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、
1,2−エポキシ−4−エポキシエチルシクロヘキサン、
1,2−エポキシ−1−メチル−4−(1−メチルエポキシエチル)シクロヘキサン、
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル (メタ)アクリレート、
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールと4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンとの付加物、
エチレン ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
オキシジエチレン ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
1,4−シクロヘキサンジメチル ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメトキシカルボニル)プロピル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなど。
以上説明した飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、株式会社ダイセルから販売されている“セロキサイド”シリーズ及び“サイクロマー”、ダウケミカル社から販売されている“サイラキュア UVR”シリーズなどが挙げられる。
エポキシ化合物を含有する硬化性接着剤は、さらにエポキシ化合物以外の活性エネルギー線硬化性化合物を含有してもよい。エポキシ化合物以外の活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、オキセタン化合物やアクリル化合物などが挙げられる。なかでも、カチオン重合において硬化速度を促進できる可能性があることから、オキセタン化合物を併用することが好ましい。
オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物であり、例えば、次のようなものを挙げることができる。
1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ベンゼン、
3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、
ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、
3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、
3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、
フェノールノボラックオキセタン、
1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼンなど。
オキセタン化合物も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、東亞合成株式会社から販売されている“アロンオキセタン”シリーズ、宇部興産株式会社から販売されている“ETERNACOLL”シリーズなどが挙げられる。
エポキシ化合物やオキセタン化合物を包含する硬化性化合物は、これらが配合された接着剤を無溶剤とするために、有機溶剤などで希釈されていないものを用いることが好ましい。また、接着剤を構成する他の成分であって、後述するカチオン重合開始剤や増感剤を包含する少量成分も、有機溶剤に溶解されたものよりも、有機溶剤が除去・乾燥されたその化合物単独の粉体又は液体を用いることが好ましい。
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線、例えば紫外線の照射を受けてカチオン種を発生する化合物である。それが配合された接着剤に求められる接着強度及び硬化速度を与えるものであればよいが、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体などが挙げられる。これらのカチオン重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
鉄−アレーン錯体としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
カチオン重合開始剤のなかでも、芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する接着剤層を与えることができるため、好ましく用いられる。
カチオン重合開始剤も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、日本化薬株式会社から販売されている“カヤラッド”シリーズ、ダウケミカル社から販売されている“サイラキュア UVI”シリーズ、サンアプロ株式会社から販売されている光酸発生剤“CPI”シリーズ、みどり化学株式会社から販売されている光酸発生剤“TAZ”、“BBI”及び“DTS”、株式会社ADEKAから販売されている“アデカオプトマー”シリーズ、ローディア社から販売されている“RHODORSIL” などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤において、カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線硬化型接着剤の総量100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部の割合で配合され、好ましくは1〜15重量部である。その量があまり少ないと、硬化が不十分になり、接着剤層の機械強度や接着強度を低下させることがある。また、その量が多すぎると、接着剤層中のイオン性物質が増加することで接着剤層の吸湿性が高くなり、得られる偏光板の耐久性能を低下させることがある。
活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じて増感剤を含有することができる。増感剤を使用することにより、反応性が向上し、接着剤層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。
増感剤となりうるカルボニル化合物の例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;9,10−ジブトキシアントラセンのようなアントラセン化合物; ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン及びその誘導体;2−クロロアントラキノン、及び2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、及びN−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノンのようなアセトフェノン誘導体;キサントン誘導体;フルオレノン誘導体などがある。増感剤となりうる有機硫黄化合物の例を挙げると、2−クロロチオキサントン、及び2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体などがある。その他、ベンジル化合物やウラニル化合物なども、増感剤として用いることができる。これらの増感剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。
増感剤を配合する場合、その配合量は、活性エネルギー線硬化型接着剤の総量100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲とすることが好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤には、その効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。配合しうる添加剤として、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤は、フィルムに適当な方法で塗工できる粘度を有するものであればよいが、その温度25℃における粘度は、10〜30,000mPa・sec の範囲にあることが好ましく、50〜6,000mPa・sec の範囲にあることがより好ましい。その粘度があまり小さいと、塗工できる装置が限られ、塗工できたとしてもムラのない均質な塗膜が得られにくくなる傾向にある。一方、その粘度があまり大きいと、流動しにくくなって、同じく塗工できる装置が限られ、ムラのない均質な塗膜が得られにくくなる傾向にある。ここでいう粘度は、B型粘度計を用いてその接着剤を25℃に調温した後、60rpm で測定される値である。
[粘着剤層]
本発明では、再び図1を参照して、透明保護フィルム30の偏光フィルム10に貼合される面と反対側の面に粘着剤層50を設ける。粘着剤層50は、偏光板1を液晶セルに貼着するための役割を果たす。また粘着剤層50には、帯電防止機能が付与される。粘着剤層50が設けられた偏光板1は、一般に、その粘着剤層50の表面を、セパレーターとも呼ばれる剥離フィルム55によって仮着保護した状態で流通し、液晶セルへ貼着する直前にその剥離フィルム55が剥離除去される。そして、剥離フィルム55を剥がすとき、粘着剤層50がしばしば静電気を帯び、そのまま液晶セルに貼ると、液晶セルの表示回路が破壊されたり液晶分子の配向が乱されたりして、表示性能に不具合を来たすことがある。粘着剤層50に帯電防止機能を付与しておくことにより、剥離フィルム55を剥がすときに発生する静電気が速やかに除去され、上記のような不具合が抑制できる。
粘着剤層50を形成するために用いる粘着剤は、帯電防止機能が付与され、かつ光学フィルム用途としての諸特性(透明性、耐久性、リワーク性など)を満たすものであればよい。リワーク性とは、粘着剤層50を介して偏光板1を液晶セルガラスに貼った後、それを剥がす必要が生じた場合に、液晶セルガラス上に糊残りや曇りなどを生じることなく剥がせる性質をいい、リワーク性に優れることは、粘着剤層50とともに偏光板を剥がした後、液晶セルをほぼそのまま再利用できることにつながる。
粘着剤として一般的には、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを少量含有するアクリル系モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にラジカル重合することにより得られ、ガラス転移温度Tgが0℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤とを含有するアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
ここで、アクリル系樹脂を構成する主要なモノマーとなる(メタ)アクリル酸エステルは、下式(I):
CH2=C(R1)COOR2 (I)
で示すことができ、式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基を表すが、R2 を構成するアルキル基の水素原子又はアラルキル基の水素原子は、炭素数1〜10のアルコキシ基によって置換されていてもよい。
式(I)に相当する(メタ)アクリル酸エステルのなかでは、R1 が水素原子であり、R2 が炭素数4〜10のアルキル基であるアクリル酸アルキルエステルが好ましく、とりわけ、R2がn−ブチル基であるアクリル酸n−ブチルが好ましい。また、R1が水素原子であり、R2 がアルコキシ基で置換されたアルキル基である化合物の例を挙げると、アクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸エトキシメチルなどがある。
アクリル系樹脂を構成するもう一つのモノマー成分となる官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、オレフィン性二重結合である(メタ)アクリロイル基を分子内に1個有するとともに、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、又はエポキシ基のような極性官能基を同一分子内に有する化合物である。なかでも、アクリロイル基がオレフィン性二重結合となるアクリルモノマーが好ましい。そのような官能基を有するアクリルモノマーの例を挙げると、水酸基を有するものとして、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましく、またカルボキシル基を有するものとして、アクリル酸が好ましい。
アクリル系樹脂の原料となるアクリルモノマー混合物は、上記の(メタ)アクリル酸エステル及び官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のモノマー(以下、「第三モノマー」と呼ぶことがある)をさらに含有してもよい。その例としては、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有するモノマー、スチレン系モノマー、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニル系モノマー、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーなどが挙げられる。
とりわけ、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有するモノマーは、共重合させるのに好ましいものの一つである。そのなかでも、下式(II):
CH2=C(R3)−COO−(CH2CH2O)n−Ar−R4 (II)
で示されるモノマーが好ましい。ここで、R3 は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表し、Arはアリーレン基を表し、R4 は水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数7〜11のアラルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表す。
式(II)に相当するモノマーの例を挙げると、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−フェノキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、2−(o−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートなどがある。これらのなかでも、2−フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル及び官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のモノマー(第三モノマー)は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。これら第三モノマーに由来する構造単位は、アクリル系樹脂全体を基準に、通常0〜20重量%の範囲で存在することができ、好ましくは0〜10重量%である。
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が、100万〜200万の範囲にあることが好ましい。この重量平均分子量Mw が100万以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、液晶セルを構成するガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が小さくなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。また、アクリル系樹脂の上記重量平均分子量Mw が200万以下であると、その粘着剤層に貼合される偏光板の寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。さらに、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnで表される分子量分布は、3〜7の範囲にあることが好ましい。
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂は、上記のような比較的高分子量のものだけで構成することもできるが、それとは異なるアクリル系樹脂との混合物で構成することもできる。混合して用いることができるアクリル系樹脂の例を挙げると、上記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、重量平均分子量が5万〜30万の範囲にあるものなどがある。
アクリル系粘着剤を構成する上記のアクリル系樹脂は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法など、公知の各種方法によって製造することができる。このアクリル系樹脂の製造においては通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤などが挙げられる。なかでも、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウムなどが好ましく用いられる。重合開始剤は、アクリル系樹脂の原料となるモノマーの総量100重量部に対して、通常 0.001〜5重量部程度の割合で用いられる。
こうして得られるアクリル系樹脂に、架橋剤を配合して粘着剤とされる。架橋剤は、アクリル系樹脂中の極性官能基を有するモノマーに由来する構造単位と架橋反応し得る官能基を、分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物などが挙げられる。
これらの架橋剤のなかでも、イソシアネート系化合物が好ましく用いられる。イソシアネート系化合物は、分子内にイソシアナト基(−NCO)を少なくとも2個有する化合物それ自体のほか、それをポリオールに反応させたアダクト体、その二量体、三量体などの形で用いることができる。具体例を挙げると、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートをポリオールと反応させて得られるアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、トリレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールと反応させて得られるアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体などがある。
架橋剤は、アクリル系樹脂100重量部に対して、通常 0.01〜5重量部程度の割合で配合され、とりわけ0.1〜5重量部、さらには0.2〜3重量部の割合で配合するのが好ましい。アクリル系樹脂100重量部に対する架橋剤の配合量を 0.01重量部以上、とりわけ 0.1重量部以上とすれば、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にある。また、その配合量を5重量部以下とすれば、偏光板1をその粘着剤層50を介して液晶セルに貼着したとき、液晶表示装置の白抜けが目立たなくなる傾向にある。
粘着剤層50には、先にも述べたとおり、帯電防止機能が付与される。帯電防止機能の付与には、粘着剤層50を形成するために用いる粘着剤に、帯電防止剤を配合する方法が一般的に採用される。帯電防止剤には、金属微粒子、金属酸化物微粒子、又は金属等をコーティングした微粒子のような、導電性の微粒子、電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物、有機のカチオン又はアニオンを有するイオン性化合物などがある。また、求められる帯電防止機能の保持期間は、一般的な偏光板の製造、流通及び保管期間の観点から、少なくとも6ヶ月程度が必要となる。
このような観点からすると、有機カチオンを有するイオン性化合物を帯電防止剤として用いる方法が好ましく採用される。イオン性化合物を構成する有機カチオンは、剥離フィルム55を剥がすときに帯電しにくいことから、ピリジニウムカチオンやイミダゾリウムカチオンが好ましい。一方、有機カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分は、無機のアニオンであってもよいし、有機のアニオンであってもよいが、なかでも、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素含有アニオンが好ましく、その具体例を挙げると、ヘキサフルオロホスフェートアニオンがある。
このイオン性化合物は、融点が30〜80℃の範囲、とりわけ35〜70℃の範囲にあるものが好ましい。融点が80℃を超えると、イオン性化合物とアクリル系樹脂との相溶性が悪くなることがある。また、融点が30℃を下回ると、帯電防止性の長期安定性が十分でなくなることがある。
イオン性化合物の具体例を挙げると、次のようなものがある。
N−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−メチル−4−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
これらのイオン性化合物はもちろん、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。
イオン性化合物は、アクリル系樹脂100重量部に対して 0.2〜8重量部の割合で配合するのが好ましく、さらには 0.5〜3重量部の割合で配合するのがより好ましい。アクリル系樹脂100重量部に対してイオン性化合物を 0.2重量部以上配合することで、その粘着剤から形成される粘着剤層50の帯電防止機能が向上する。また、その配合量を8重量部以下とすることで、粘着剤層の耐久性を保つことができる。
イオン性化合物は、いろいろな化学メーカーから販売されており、例えば、ピリジニウムカチオン型イオン性化合物、イミダゾリウムカチオン型イオン性化合物、脂肪族四級アンモニウムカチオン型イオン性化合物などがある。これらのイオン性化合物を販売するメーカーには、広栄化学株式会社、日本合成化学工業株式会社、日清紡績株式会社などがある。また、これらのメーカーに委託して、所望のイオン性化合物を生産してもらうこともできる。
粘着剤層50を形成するための粘着剤には、必要に応じて、他の成分を配合することもできる。配合しうる他の成分として、シランカップリング剤、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、上記アクリル系樹脂以外の樹脂、有機ビーズ等の光拡散性微粒子などが挙げられる。また、粘着剤に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
粘着剤を構成するこれらの各成分は、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶かした状態で適当な基材上に塗布し、乾燥させて、粘着剤層とされる。一部、溶剤に溶解しない成分もあるが、それらは液中に分散した状態で粘着剤となる。
粘着剤層を透明樹脂フィルム上に形成する方法としては、例えば、基材として剥離フィルム55を用い、上記の粘着剤を塗布して粘着剤層50を形成し、得られる粘着剤層50を透明樹脂フィルム30の表面に移設する方法、透明樹脂フィルム30の表面に上記の粘着剤を直接塗布して粘着剤層50を形成し、その粘着剤面に剥離フィルム55を貼り合わせる方法などが採用される。また、1枚の剥離フィルム上に粘着剤層を形成した後、さらにその粘着剤層の上に別の剥離フィルムを貼合して、光学フィルム(例えば、保護フィルム又は光学補償フィルム)に支えられない両面セパレーター型粘着剤シートとすることもできる。このような両面セパレーター型粘着剤シートは、必要な時期に片側の剥離フィルムを剥がし、透明樹脂フィルム30へ貼合される。両面セパレーター型粘着剤シートの市販品としては、例えば、リンテック株式会社や日東電工株式会社から販売されているノンキャリア粘着剤フィルムやノンキャリア粘着剤シートがある。
剥離フィルム55は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリプロピレン又はポリエチレンのような各種の樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、シリコーン処理のような離型処理が施されたものであることができる。このような剥離フィルムは、先にも述べたとおり、セパレートフィルム又はセパレーターとも呼ばれる。
有機溶剤溶液の形で塗布し、溶剤を乾燥させて得られる粘着剤層は、例えば、温度23℃、相対湿度65%で3〜20日程度熟成され、架橋剤の反応が十分に進行した後、液晶セルや他の光学フィルムへの貼着に用いられる。
粘着剤層50の厚さは、10〜30μmであるのが好ましく、さらには15〜25μmであるのがより好ましい。粘着剤層50の厚さを30μm 以下とすることにより、高温高湿下での接着性が向上し、液晶セルガラスと粘着剤層50との間に浮きや剥がれの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性も向上する傾向にある。また、その厚さを10μm 以上とすることにより、そこに貼合されている透明樹脂フィルム30の寸法が変化してもその寸法変化に粘着剤層50が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にある。
[液晶表示装置]
本発明の偏光板は、液晶セルの視認側に貼合して用いることにより、偏光サングラス越しに見た場合でも、視認性に優れた液晶表示装置とすることができる。具体的には、偏光フィルム10の光出射側にλ/4板20が配置された偏光板1を、液晶セルの視認側に貼着することにより、液晶パネルからの出射する光を直線偏光から円偏光に変換して方角依存性をなくすことができる。ここでいう視認側とは、液晶表示装置の液晶セルを基準にして、バックライト側とは反対側をいう。また、本発明の偏光板を備える液晶表示装置は、80℃を越えるような耐熱環境下においても熱劣化しない、耐久性に優れたものとなる。
液晶セルは、例えば、TN(Twisted Nematic、 ねじれネマチック)、STN(Super Twisted Nematic、 超ねじれネマチック)、VA(Vertical Alignment、 垂直配向)、IPS(In-Plane Switching、横電解)、OCB(Optically Compensated Bend、光学補償ベンド)など、この分野で知られている各種モードのものであることができる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中の透湿度は、先述した JIS Z 0208-1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に従って、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定された値である。
[実施例1]
(a)偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った。 その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に 56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムを作製した。延伸は、ヨウ素染色及びホウ酸処理の工程で主に行い、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
(b)粘着剤付き偏光板の作製
シクロオレフィン系樹脂からなり、日本ゼオン株式会社から“ゼオノアフィルム”の名で販売されている厚さ47μm のフィルムであって、面内位相差値が141nm、厚み方向位相差値が85nm、透湿度が5.4g/m2・24hr のものを、λ/4板として用いた。また、同じくシクロオレフィン系樹脂からなり、日本ゼオン株式会社から“ゼオノアフィルム”の名で販売されている厚さ52μm のフィルムであって、面内位相差値が55nm、厚み方向位相差値が124nm、透湿度が5.1g/m2・24hr のものを、光学補償機能付き透明樹脂フィルムとして用いた。
上記λ/4板の片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に、脂環式エポキシ化合物を硬化性成分とする実質的に溶剤を含まない紫外線硬化性接着剤を、チャンバードクターを備える塗工装置によって約2μm 厚で塗工した。また、上記光学補償機能付き透明樹脂フィルムの片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に、上と同じ接着剤を同じ装置によって約2μm 厚で塗工した。
接着剤の塗工後直ちに、上の(a)で作製した偏光フィルムの一方の面に上記λ/4板を、他方の面に上記光学補償機能付き透明樹脂フィルムを、それぞれの接着剤塗工面を介して貼合ロールにより貼合した。その後、この積層物の光学補償機能付き透明樹脂フィルム側から、メタルハライドランプを光源とする紫外線を320〜400nmの波長における積算光量が200mJ/cm2 となるように照射して、両面の接着剤を硬化させた。ここで、偏光フィルムと、λ/4板及び光学補償機能付き透明樹脂フィルムとの軸角度の関係は、図2のとおりとした。すなわち、後で液晶セルに貼るときの画面長手方向を0°とし、視認側となるλ/4板20から見たときの反時計回り方向を正として、偏光フィルム10の吸収軸15が0°方向(画面長手方向)、λ/4板20の遅相軸25が135°方向、光学補償機能付き透明樹脂フィルム30の吸収軸35が90°方向となるようにした。
さらに、得られた偏光板の光学補償機能付き透明樹脂フィルム側外面に、帯電防止剤としてN−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェートが配合されている厚さ25μm のアクリル系粘着剤の層(剥離フィルム付き)を設けて、粘着剤付き偏光板を作製した。
(c)液晶表示装置の作製
上記(b)で作製した粘着剤付き偏光板から剥離フィルムを剥がして、液晶セルの前面(視認側)に配置する偏光板(前面側偏光板)とした。また、住友化学株式会社から販売されている片面粘着剤層付きの偏光板“スミカラン SRN041APN1” (粘着剤層には剥離フィルムが付いている)から剥離フィルムを剥がして、液晶セルの背面(バックライト側)に配置する偏光板(背面側偏光板)とした。
VA(垂直配向)モードの液晶セルを備える液晶パネルが搭載されている市販の液晶テレビから液晶パネルを取りはずし、そこから両面の偏光板を剥がして液晶セルを取り出した。その液晶セルの前面(視認側)に上記の前面側偏光板を、背面(バックライト側)には上記の背面側偏光板を、それぞれの粘着剤層を介して貼合し、液晶パネルを作製した。次いで、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/拡散シート/液晶パネルの構成で組み立てて、液晶表示装置を作製した。
(d)液晶表示装置の視認性評価
得られた液晶表示装置につき、偏光サングラスをかけてさまざまな角度から観察して、視認性を評価した。その結果、いずれの角度からも良好な表示が視認できた。
(e)偏光板の耐熱試験
上記(b)で作製した粘着剤付き偏光板について、耐熱試験を行った。まず、粘着剤付き偏光板を10cm×10cmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がした粘着剤層側でガラスに貼合したものを試験用サンプルとした。このサンプルを80℃の乾燥下で500時間保持した後、外観の様子を目視で観察して、耐熱性を評価した。この例で作製した偏光板は、試験後も外観変化がなく、良好な耐熱性を示した。
[比較例1]
光学補償機能付き透明樹脂フィルムを、トリアセチルセルロースからなる厚さ40μm のフィルムであって、面内位相差値が45nm、厚み方向位相差値が125nm、透湿度が約1,000g/m2・24hrのものに変更したこと以外は、実施例1と同じ実験を行った。
その結果、実施例1の(d)に相当する液晶表示装置の視認性評価では、いずれの角度からも良好な表示が視認できた。一方、実施例1の(e)に相当する偏光板の耐熱試験では、試験後に偏光板の全面が褐色に変色していた。
以上の結果から、帯電防止剤が配合された粘着剤層を介して液晶セルに貼合される視認側偏光板において、その視認側となるλ/4板及び液晶セル側となる光学補償機能付き透明樹脂フィルムを、それぞれ透湿度の小さい樹脂で構成することにより、耐熱試験時の偏光板の変色劣化が抑えられることがわかる。