<偏光板>
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にエポキシ化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物層からなる接着剤層を介して保護フィルムが積層されてなる偏光板であり、片面の保護フィルムが延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるものである。この延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有しており、380nmの光線透過率が10%以下である。また、もう一方の片面には320nmの光線透過率が60%以上である保護フィルムを備えるものである。以下、本発明の偏光板について具体的に説明する。
(偏光フィルム)
本発明に用いられる偏光フィルムは、通常、公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、およびアンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。このポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタール等を用いることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常、1,000〜10,000程度であり、1,500〜5,000程度が好ましい。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、たとえば、10μm〜150μm程度とすることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、または染色の後に行なうことができる。一軸延伸を染色の後で行なう場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前またはホウ酸処理中に行なってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行なってもよい。
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行なう乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行なう湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常、3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、通常、水100重量部あたり0.01〜1重量部程度である。また、ヨウ化カリウムの含有量は、通常、水100重量部あたり0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常、20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、通常、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部程度であり、1×10-3〜1重量部程度が好ましい。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行なうことができる。
ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、通常、水100重量部あたり、2〜15重量部程度であり、5〜12重量部が好ましい。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、通常、水100重量部あたり、0.1〜15重量部程度であり、5〜12重量部程度が好ましい。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常、60〜1,200秒程度であり、150〜600秒程度が好ましく、200〜400秒程度がより好ましい。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常、50℃以上であり、50〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、たとえば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行なうことができる。水洗処理における水の温度は、通常、5〜40℃程度である。また、浸漬時間は、通常、1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。偏光フィルムの厚みは、通常、5〜40μm程度である。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行なうことができる。乾燥処理の温度は、通常、30〜100℃程度であり、50〜80℃が好ましい。乾燥処理の時間は、通常、60〜600秒程度であり、120〜600秒が好ましい。
乾燥処理によって、偏光フィルムの水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常、5〜20重量%であり、8〜15重量%が好ましい。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、偏光フィルムがその乾燥後に損傷したり、破断したりする場合がある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光フィルムの熱安定性に劣る場合がある。
(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、その後引き続いて縦延伸し、次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルム、または一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルムを用いることができる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、繰り返し単位の80mol%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他のジカルボン酸成分とジオール成分を含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分としては、たとえば、イソフタル酸、4,4’−ジカルボキシジフェニール、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、および1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。
他のジオール成分としては、たとえば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
これらの他のジカルボン酸成分や他のジオール成分は、それぞれ単独で用いられてもよいし、異なる複数種が併用されてもよい。また、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を併用することもできる。また、他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、およびカーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分、またはジオール成分が用いられてもよい。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂の製造方法としては、テレフタル酸およびエチレングリコール(ならびに必要に応じて他のジカルボン酸または他のジオール)を直接重縮合させる方法、テレフタル酸のジアルキルエステルおよびエチレングリコール(ならびに必要に応じて他のジカルボン酸のジアルキルエステルまたは他のジオール)とをエステル交換反応させた後重縮合させる方法、およびテレフタル酸(および必要に応じて他のジカルボン酸)のエチレングリコールエステル(および必要に応じて他のジオールエステル)を重縮合させる方法等が採用される。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒に樹脂を溶解し、30℃で測定した極限粘度で表したとき、通常、0.45〜1.0dL/gであり、0.50〜1.0dL/gが好ましく、0.52〜0.80dL/gがより好ましい。極限粘度が0.45dL/g未満であると、フィルム製造時の生産性が低下したり、フィルムの機械的強度が低下したりする場合がある。また、極限粘度が1.0dL/gを超えると、フィルム製造におけるポリマーの溶融押出安定性に劣る場合がある。
本発明の偏光板において、偏光フィルムに接着剤層を介して積層される延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、偏光フィルムの紫外線による劣化を防止するために紫外線吸収剤を含有し、380nmの光線透過率は10%以下、好ましくは5%以下である。積層される延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの380nmの光線透過率が10%を超えると、十分な紫外線吸収能を発揮できないおそれがある。
本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム中に含有される紫外線吸収剤は特に限定されるものではないが、主として、有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤が挙げられる。
有機系紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、例えば、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等、ベンゾフェノン系、例えば、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−オクトキベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン等、ベンゾトリアゾール系、例えば、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´5´−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´5´−ジ−t−ブチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール等、天然物系、例えば、オリザノール、シアバター、バイカリン等、生体系、例えば、角質細胞、メラニン、ウロカニン酸等が挙げられる。これら有機系紫外線吸収剤は1種類、または2種類以上併用して用いることができる。これらの有機系紫外線吸収剤には紫外線安定剤として、ヒンダードアミン系化合物を併用することができる。
無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン系複合酸化物、酸化亜鉛系複合酸化物、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)等が挙げられる。酸化チタン系複合酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナをドープした酸化亜鉛等が挙げられる。これらの無機系紫外線吸収剤は1種類、または、2種類以上併用して用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤を併用してもかまわない。
また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、必要に応じて上記紫外線吸収剤以外の添加剤を含有することができる。添加剤としては、たとえば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤および耐衝撃性改良剤等が挙げられる。その添加量は、光学物性に悪影響を与えない範囲であることが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、このような添加剤の配合のため、および後記するフィルム成形のため、通常、押出機によって造粒されたペレット形状で用いられる。ペレットの大きさや形状は、特に制限されるものではないが、通常、高さ、直径ともに5mm以下の円柱状、球状、または扁平球状である。
上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、フィルム状に成形し、延伸処理することにより、透明で均質な機械的強度の高いポリエチレンテレフタレートフィルムとすることができる。その製造方法としては、たとえば、次に記載する方法が採用される。
まず、乾燥させたポリエチレンテレフタレート樹脂からなるペレットを溶融押出装置に供給し、融点以上に加熱し溶融する。次に、溶融した樹脂をダイから押し出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸フィルムを得る。この溶融温度は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の融点や押出機に応じて適宜定められるが、通常、250〜350℃である。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂には、必要に応じ2種以上の樹脂構造や組成の異なる樹脂を混合してもよい。たとえば、ブロッキング防止剤としての粒状フィラー、紫外線吸収剤、または帯電防止剤等の配合されたペレットと、無配合のペレットとを混合して用いること等が挙げられる。
また、押し出すフィルムの積層数は、必要に応じ2層以上にしてもよい。たとえば、ブロッキング防止剤としての粒状フィラーを配合したペレットと無配合のペレットを用意し、異なる押出機から同一のダイへ供給して「フィラー配合/無配合/フィラー配合」の2種3層からなるフィルムを押し出すこと等が挙げられる。
二軸延伸フィルムを得る場合、上記未延伸フィルムは、ガラス転移温度以上の温度において、通常、まず押出方向へ縦延伸される。延伸温度は、通常、70〜150℃であり、80〜130℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、1.1〜6倍であり、2〜5.5倍が好ましい。この延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの長尺方向の強度が実用に不足する場合がある。また、6倍を超えると、横方向の強度が実用に不足する場合がある。この延伸は一回で終えることも、必要に応じて複数回に分けて行なうこともできる。通常、複数回の延伸を行なう場合でも、合計の延伸倍率は上記の範囲であることが好ましい。
こうして得られる縦延伸フィルムは、この後、熱処理を行なうことができる。次いで、必要により弛緩処理を行なうこともできる。この熱処理温度は、通常、150〜250℃であり、180〜245℃が好ましく、200〜230℃がより好ましい。また、熱処理時間は、通常、1〜600秒間であり、1〜300秒間が好ましく、1〜60秒間がより好ましい。
弛緩処理の温度は、通常、90〜200℃であり、120〜180℃であることが好ましい。また、弛緩量は、通常、0.1〜20%であり、2〜5%であることが好ましい。この弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のポリエチレンテレフタレートフィルムの150℃における熱収縮率が2%以下になるように、弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することがさらに好ましい。
二軸延伸フィルムを得る場合、通常、縦延伸処理の後に、もしくは必要に応じて熱処理または弛緩処理を経た後に、テンターによって横延伸が行なわれる。この延伸温度は、通常、70〜150℃であり、80〜130℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、1.1〜6倍であり、2〜5.5倍であることが好ましい。横延伸における延伸倍率が1.1倍未満であると、横方向の強度が実用に不足する場合がある。また、この延伸倍率が6倍を超えると、縦方向との強度のバランスが悪化し、実用に耐えない場合がある。
この後、熱処理および必要に応じて弛緩処理を行なうことができる。熱処理温度は、通常、150〜250℃であり、180〜245℃が好ましく、200〜230℃がより好ましい。熱処理時間は、通常、1〜600秒間であり、1〜300秒間が好ましく、1〜60秒間がより好ましい。
弛緩処理の温度は、通常、100〜230℃であり、110〜210℃であることが好ましく、120〜180℃がより好ましい。また、弛緩量は、通常、0.1〜20%であり、1〜10%であることが好ましく、2〜5%であることがより好ましい。この弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のポリエチレンテレフタレートフィルムの150℃における熱収縮率が2%以下になるように、その弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することが好ましい。
一軸延伸および二軸延伸処理においては、その延伸処理温度が250℃を超えると、樹脂に熱劣化が生じたり、結晶化が進みすぎたりするために光学性能が低下する場合がある。また、延伸処理温度が70℃未満になると、延伸に過大なストレスがかかったり、フィルムが固化し延伸自体が不可能になったりする場合がある。
また、一軸延伸および二軸延伸処理においては、ボーイングに代表されるような配向主軸の延伸方向に対する歪みを緩和させるために、再度、熱処理を行なったり、延伸処理を行なったりすることができる。ボーイングによる配向主軸の延伸方向に対する歪みの最大値は、通常、45゜以内であるが、30°以内へ緩和させることが好ましく、15°以内とすることがより好ましい。配向主軸の歪みの最大値が45゜を超えると、後の工程で偏光板を構成し枚葉化されたときに、この枚葉間で光学特性の不均一が生じる場合がある。
ここで、延伸方向とは、縦延伸または横延伸における延伸倍率の大きい方向をいう。ポリエチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸では、通常、横延伸倍率の方が縦延伸倍率より若干大きくなされるので、この場合、延伸方向とは、フィルムの長尺方向に対して垂直方向をいう。また、一軸延伸では、通常、上記のように横方向へ延伸されるので、この場合、延伸方向とは、同じく長尺方向に対して垂直方向をいう。
また、配向主軸とは、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上の任意の点における分子配向方向をいう。また、配向主軸の延伸方向に対する歪みとは、配向主軸と延伸方向との角度差をいう。さらに、その最大値とは、長尺方向に対して垂直方向上における値の最大値をいう。
配向主軸は、たとえば、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)または分子配向計MOA(王子計測機器株式会社製)などを用いて測定できる。
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「ダイアホイル」、「ホスタファン」、「フュージョン」(以上、三菱樹脂株式会社製)、「テイジンテトロンフィルム」、「メリネックス」、「マイラー」、「テフレックス」(以上、帝人デュポンフィルム株式会社製)、「東洋紡エステルフィルム」、「東洋紡エスペットフィルム」、「コスモシャイン」、「クリスパー」(以上、東洋紡績株式会社製)、「ルミラー」(東レフィルム加工株式会社製)、「エンブロン」、「エンブレット」(ユニチカ株式会社製)、「スカイロール」(エス・ケー・シー社製)、「コーフィル」(株式会社高合製)、「瑞通ポリエステルフィルム」(株式会社瑞通製)、および「太閤ポリエステルフィルム」(フタムラ化学株式会社製)等が挙げられる。この中でも、生産性や廉価性の観点から、本発明には二軸延伸品が好ましく用いられる。
(コーティング層)
本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、本発明の効果を妨げない限り、偏光フィルムと接着される面に接着機能を有するコーティング層(易接着層)が付与されていることが好ましい。易接着層の形成により、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性を向上させることができる。
易接着層を構成する成分は、特に限定されるものではないが、たとえば、極性基を骨格に有し比較的低分子量で低ガラス転移温度である、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、またはアクリル系樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて架橋剤、有機または無機フィラー、界面活性剤、および滑剤等を含有することができる。
上記易接着層を延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成する方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、すべての延伸工程が終了したフィルムに形成する方法、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を延伸している工程中、たとえば縦延伸と横延伸工程の間に形成する方法、および偏光フィルムと接着される直前または接着された後に形成する方法等が採用される。中でも、生産性の観点からは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を縦延伸した後に形成し、引き続き横延伸する方法が好ましく採用される。
易接着層の厚みは、乾燥後の厚みとして、通常、0.01〜5μmであり、0.03〜0.6μmが好ましい。厚みが0.01μm未満であると、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性に劣る場合がある。また、厚みが5μmを超えると、コーティング層の親水性が過剰になり積層体の耐水性に劣る場合がある。
上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成するコーティング層は、本発明の効果を妨げない限り、上記易接着層以外の機能層を積層することもできる。積層される機能層には、たとえば、導電層、ハードコート層、平滑化層、易滑化層およびブロッキング防止層等が挙げられる。
(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムへの防眩性の付与)
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、そのフィルムが偏光板の視認側に用いられる場合、防眩性(ヘイズ)が付与されていることが好ましい。防眩性を付与する方法としては、たとえば、上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂中に無機微粒子もしくは有機微粒子を混合してフィルム化する方法、上記多層フィルムの製法に準じて、片側に無機微粒子もしくは有機微粒子が混合された層を有する未延伸フィルムから延伸フィルム化する方法、および、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの偏光フィルムと接着される面と反対側の面に、無機微粒子もしくは有機微粒子を硬化性バインダー樹脂に混合してなる塗布液をコートし、バインダー樹脂を硬化させて防眩層を設ける方法等が採用される。
無機微粒子としては、たとえば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ−シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、およびリン酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子としては、たとえば、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコーン樹脂粒子、およびポリイミド粒子等が挙げられる。
防眩性が付与された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのヘイズ値は、3〜45%の範囲内であることが好ましい。ヘイズ値が3%を下回ると、十分な防眩効果が現れない場合がある。また、45%を超えると、このフィルムを用いてなる液晶表示装置の画面が白ちゃけ、画質の低下を招く場合がある。なお、このヘイズ値は、JIS K 7136に準拠し、たとえば、ヘイズ・透過率計HM−150(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。ヘイズ値の測定に際しては、フィルムの反りを防止するために、たとえば、光学的に透明な粘着剤を用いて防眩性付与面が表面となるようにフィルム面をガラス基板に貼合した測定サンプルを用いることが好ましい。
なお、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが偏光板のバックライト側に用いられる場合、防眩性はあえて付与しなくてもよい。この場合、そのヘイズ値は、通常、6%未満である。
防眩性が付与された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上には、さらに、導電層、ハードコート層、低反射層、平滑化層、易滑化層、およびブロッキング防止層等の、防眩層以外の機能層を積層することができる。また、防眩層を形成する樹脂組成物(塗布液)として、これらのいずれかの機能を兼ね備える樹脂組成物を選択することもできる。
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの偏光フィルムと接着される面と反対側の面に上記防眩層等の機能層を積層する場合、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの機能層を積層する面には、機能層との密着性を向上させるために、上記と同様のコーティング層を形成することができる。
(接着剤層)
本発明の偏光板が備える接着剤層は、偏光フィルムと保護フィルムとの接着を担う層であり、エポキシ化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物層からなるものである。エポキシ化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を用いることにより、偏光フィルムと保護フィルムとの密着性を向上させることが可能になるとともに、無溶剤の接着剤とすることができ、この場合、接着剤層を乾燥させる工程が不要になるため、生産性を向上させることができる。エポキシ化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を接着剤として用いる場合、偏光フィルムと保護フィルムとを当該接着剤を介して積層させた後、紫外線を延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは反対側に積層される保護フィルム面側より照射して当該接着剤を硬化させることにより、当該紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物層からなる接着剤層が形成される。
エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物を好ましく用いることができる。脂環式エポキシ化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を接着剤として用いることにより、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性および過酷な環境下における偏光板の耐久性をより向上させることができる。
ここで、脂環式エポキシ化合物とは、飽和環状化合物の環に直接エポキシ基を有してなるもの、および飽和環状化合物の環に直接もしくはアルキレンを介してグリシジルオキシ基またはエポキシエチル基が結合しているものをいう。なお、他のエポキシ基を構造内に有していてもよい。
飽和環状化合物の環に直接エポキシ基を有してなる脂環式エポキシ化合物とは、C−C二重結合を環に有する環状化合物のC−C二重結合を、過酸化物を用いて塩基性条件下においてエポキシ化させることにより得られるものである。
C−C二重結合を環に有する環状化合物としては、たとえば、シクロペンテン環を有する化合物、シクロヘキセン環を有する化合物、およびそれらの多環式化合物等が挙げられる。C−C二重結合を環に有する環状化合物は、環外にC−C二重結合を有していてもよく、このような化合物としては、たとえば、1−ビニル−3−シクロヘキセンおよび単環式モノテルペンであるリモネンならびにα−ピネン等が挙げられる。
また、飽和環状化合物の環に直接エポキシ基を有してなる脂環式エポキシ化合物は、上記によって得られるエポキシ化物を適当な官能基を介して2量化した構造の化合物であってもよい。その官能基からなる結合構造としては、たとえば、エステル結合、エーテル結合、およびアルキレンによる結合等が挙げられる。また、上記エポキシ化物の2量化した構造は、これらの結合を複数有していてもよい。
上記飽和環状化合物の環に直接エポキシ基を有してなる脂環式エポキシ化合物の製造方法としては、たとえば、C−C二重結合を環に有する環状化合物を合成した後、エポキシ化する方法、および、C−C二重結合がエポキシ化された化合物を、さらに上記のように官能基を反応させて目的とする構造へ合成する方法等が採用される。エポキシ基の副反応等を抑制する観点から、通常、C−C二重結合を環に有する環状化合物を合成した後、エポキシ化する方法が好ましく採用される。
C−C二重結合を環に有する環状化合物の合成法は、目的とするエポキシ化合物の骨格に応じて変わるものであり特に限定されないが、2量化された環状化合物の合成例として、たとえば、3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒドから適切な触媒を用いてティシチェンコ反応により、エステル化合物である3−シクロヘキセニルメチル 3−シクロヘキセンカルボキシレートを得る方法を挙げることができる。
さらに、上記エステル化合物と、ジカルボン酸化合物あるいはそのエステル、ジオール化合物あるいはそのエステル、ポリアルキレングリコールあるいはそのエステル、またはヒドロキシカルボン酸化合物あるいはそのエステル等とを、必要に応じて触媒を用いてエステル交換反応させることで、シクロヘキセニル基を両端に有した化合物が得られる。
ジカルボン酸化合物およびそのエステルとしては、たとえば、シュウ酸、アジピン酸、およびセバシン酸、ならびにそれらのジメチルエステル等が挙げられる。また、ジオール化合物およびそのエステルとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ならびにそれらのジメチルエステル等が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸化合物およびそのエステルとしては、たとえば、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、およびクエン酸、ならびにそれらのジメチルエステル・酢酸エステル等、およびラクチド、プロピオラクトン、ブチロラクトン、およびカプロラクトン等が挙げられる。
こうして得られるC−C二重結合を環に有する環状化合物を、過酸化物を用いてエポキシ化することにより、飽和環状化合物の環に直接エポキシ基を有してなる脂環式エポキシ化合物を得ることができる。過酸化物としては、たとえば、過酸化水素、過酢酸、およびtert−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
紫外線硬化性樹脂組成物からなる接着剤において好ましく用いられる飽和環状化合物の環に直接エポキシ基を有してなる脂環式エポキシ化合物の具体例を挙げれば、たとえば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1−メチル−4−(1−メチルエポキシエチル)シクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル メタアクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの4−(1,2−エポキシエチル)−1,2−エポキシシクロヘキサン付加物、エチレン ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、オキシジエチレン ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,4−シクロヘキサンジメチル ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、および3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメトキシカルボニル)プロピル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
飽和環状化合物の環に直接もしくはアルキレンを介してグリシジルオキシ基またはエポキシエチル基が結合している脂環式エポキシ化合物は、後記する水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物の芳香環が水素化されている化合物、水酸基を有する飽和環状化合物のグリシジルエーテル化物、およびビニル基を有する飽和環状化合物のエポキシ化物などでありうる。
水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物としては、たとえば、ビスフェノールAのグリシジルエーテル化物およびそのオリゴマー体、ならびにビスフェノールFのグリシジルエーテル化物およびそのオリゴマー体等が挙げられる。これら芳香族グリシジルエーテル化物の前駆体であるビスフェノールAやビスフェノールFを、触媒の存在下に加圧下で選択的に核水素化反応を行ない、得られる水添ビスフェノールAや水添ビスフェノールFにエピクロロヒドリンを反応させれば、飽和環状化合物の環に直接グリシジルオキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物となる。
水酸基を有する飽和環状化合物のグリシジルエーテル化物としては、たとえば、1,4−シクロヘキサンジメタノール ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
ビニル基を有する飽和環状化合物のエポキシ化物としては、たとえば、1,3−ビス(エポキシエチル)シクロヘキサン、1,2,4−トリス(エポキシエチル)シクロヘキサン、および2,4−ビス(エポキシエチル)−1−ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
上記した脂環式エポキシ化合物の中でも、偏光板の耐久性を向上させるうえにおいて良好な硬化物特性を示し、または適度な硬化性を有するとともに、比較的廉価に入手できることから、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよび水添ビスフェノールAのグリシジルエーテル化物が好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがより好ましい。
これらの脂環式エポキシ化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
このような脂環式エポキシ化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「セロキサイド」、「サイクロマー」(以上、ダイセル化学工業株式会社製)および「サイラキュア」(ダウケミカル社製)等が挙げられる。
上記紫外線線硬化性樹脂組成物からなる接着剤には、脂環式エポキシ化合物以外の紫外線硬化性化合物を配合することができる。このような紫外線硬化性化合物としては、脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物を用いることができる。脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物を併用することにより、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性をより向上させることができる。
脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物としては、たとえば、水酸基を有する芳香族化合物または鎖状化合物のグリシジルエーテル化物、アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物、およびC−C二重結合を有する鎖状化合物のエポキシ化物等が挙げられる。
水酸基を有する芳香族化合物または鎖状化合物のグリシジルエーテル化物とは、芳香族化合物または鎖状化合物の水酸基へエピクロルヒドリン等の化合物をアルカリ条件下において付加縮合させることにより得られるものである。たとえば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、多芳香環型エポキシ樹脂、およびアルキレングリコール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールAのグリシジルエーテル化物およびそのオリゴマー体、ビスフェノールFのグリシジルエーテル化物およびそのオリゴマー体、ならびに3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールのグリシジルエーテル化物およびそのオリゴマー体等が挙げられる。
また、多芳香環型エポキシ樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、ナフトールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、およびフェノールジシクロペンタジエン樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。さらに、トリヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル化物およびそのオリゴマー体、ならびにトリスフェノールPAのグリシジルエーテル化物およびそのオリゴマー体等も挙げられる。
また、アルキレングリコール型エポキシ樹脂としては、たとえば、エチレングリコールのグリシジルエーテル化物、ジエチレングリコールのグリシジルエーテル化物、1,4−ブタンジオールのグリシジルエーテル化物、および1,6−ヘキサンジオールのグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物とは、そのアミノ基へエピクロルヒドリン等の化合物を塩基性条件下において付加縮合させることにより得られるものである。アミノ基を有する化合物は、同時に水酸基を有していてもよい。たとえば、1,3−フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物およびそのオリゴマー体、1,4−フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物およびそのオリゴマー体、3−アミノフェノールのグリシジルアミノ化およびグリジシジルエーテル化物ならびにそのオリゴマー体、および、4−アミノフェノールのグリシジルアミノ化およびグリジシジルエーテル化物ならびにそのオリゴマー体等が挙げられる。
C−C二重結合を有する鎖状化合物のエポキシ化物とは、C−C二重結合を有する鎖状化合物のC−C二重結合を、過酸化物を用いて塩基性条件下においてエポキシ化させることにより得られるものである。C−C二重結合を有する鎖状化合物としては、たとえば、ブタジエン、ポリブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、およびヘキサジエン等が挙げられる。また、二重結合を有するテルペン類も用いられる。たとえば、非環式モノテルペンとしてリナコール等が挙げられる。過酸化物としては、たとえば、過酸化水素、過酢酸、およびtert−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物およびそのオリゴマー等は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、およびそのオリゴマー等は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「エピコート」(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、「エピクロン」(DIC株式会社製)、「エポトート」(東都化成株式会社製)、「アデカレジン」(株式会社ADEKA製)、「デナコール」(ナガセケムテックス株式会社製)、「ダウエポキシ」(ダウケミカル社製)および「テピック」(日産化学工業株式会社製)等が挙げられる。
本発明で用いられるエポキシ化合物のエポキシ当量は、通常、30〜2,000g/eqであり、50〜1,500g/eqであることが好ましく、70〜1,000g/eqであることがより好ましい。エポキシ当量が30g/eqを下回ると、接着剤層の可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする場合がある。一方、2,000g/eqを超えると、硬化速度が低下したり、硬化した接着剤層に必要な剛性や強度が不足したりする場合がある。なお、このエポキシ当量は、JIS K 7236(ISO 3001)に準拠して測定される値である。
また、上記脂環式エポキシ化合物以外の紫外線硬化性化合物として、オキセタン化合物を用いることもできる。オキセタン化合物の併用により、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化速度を向上させることができる。
オキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物であって、紫外線硬化性であれば特に限定されるものではないが、たとえば、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、および1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン等が挙げられる。
オキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「アロンオキセタン」(東亞合成株式会社製)、および「ETERNACOLL」(宇部興産株式会社製)等が挙げられる。
紫外線硬化性樹脂組成物中における脂環式エポキシ化合物の配合比は、紫外線硬化性化合物(脂環式エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物およびオキセタン化合物)の合計100重量部に対して、脂環式エポキシ化合物30〜95重量部が好ましく、50〜90重量部がより好ましく、70〜85重量部がさらに好ましい。紫外線硬化性化合物総量100重量部に対し、脂環式エポキシ化合物が30重量部以上配合されると、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物により接着されてなる偏光板の耐久性が向上する効果がある。また、95重量部を超えると、硬化物層の靭性が劣ったり、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化速度が低下したりする場合がある。
紫外線硬化性化合物としては、有機溶剤等で希釈されていないものを用いることが好ましい。また、後記する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を構成する光重合開始剤および増感剤等の少量成分においても、有機溶剤に溶解されたものよりも、有機溶剤が除去・乾燥されたその化合物単独の粉末または液体を用いることが好ましい。
本発明で用いられるエポキシ化合物を含む紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線の照射によって硬化し、該硬化物層を挟持するフィルム同士に接着力を与える硬化性組成物である。エポキシ化合物を含む紫外線硬化性樹脂組成物は、カチオン重合開始剤を配合するのが好ましい。
カチオン重合開始剤は、紫外線照射によってカチオン種またはルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させるものである。このカチオン重合開始剤は、潜在性が付与されていることが好ましい。潜在性の付与によって本発明に用いられる紫外線硬化性組成物の可使時間が長くなり、作業性も良好になる。
紫外線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物としては、特に限定されるものではないが、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;および鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、たとえば、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、およびベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレート等が挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩としては、たとえば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、およびジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
芳香族スルホニウム塩としては、たとえば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルフォニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、および4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
鉄−アレン錯体としては、たとえば、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、およびキシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等が挙げられる。
これらのカチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物層を与えることができるため、好ましく用いられる。
カチオン重合開始剤の配合量は、紫外線硬化性化合物の合計100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部であり、1〜15重量部が好ましい。その量が0.5重量部を下回ると、硬化が不十分になり、硬化物層の機械強度や接着強度が低下する場合がある。また、その量が20重量部を超えると、硬化物層中のイオン性物質が増加することで硬化物層の吸湿性が高くなり、得られる偏光板の耐久性能が低下する場合がある。
これらのカチオン重合開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「カヤラッド」(日本化薬株式会社製)、「サイラキュア」(ユニオンカーバイド社製)、光酸発生剤「CPI」(サンアプロ株式会社製)、光酸発生剤「TAZ」、「BBI」、「DTS」(以上、ミドリ化学株式会社製)、「アデカオプトマー」(株式会社ADEKA製)、および「RHODORSIL」(ローディア社製)等が挙げられる。
紫外線硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、たとえば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、および消泡剤等が挙げられる。イオントラップ剤としては、たとえば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系、およびこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。酸化防止剤としては、たとえば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
硬化前における紫外線硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、フィルムに適当な方法で塗工できる粘度であれば特に制限されるものではないが、10〜30,000mPa・sの範囲が好ましく、50〜6,000mPa・sの範囲がより好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が10mPa・sを下回ると、塗工できる装置が限られ、塗工できたとしてもムラのない均質な塗膜が得られない場合がある。また、30,000mPa・sを超えると、流動し難いために同じく塗工できる装置が限られ、ムラのない均質な塗膜が得られない場合がある。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度は、B型粘度計を用いてその組成物を25℃に調温した後に60rpmで測定される値である。
偏光フィルムの両面に備える接着剤層は、同種の紫外線硬化性樹脂組成物を用いてもよく、また、それぞれ異種の紫外線硬化性樹脂組成物を用いてもよい。同一の紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合、接着剤が一種類ですむため工程が簡便になる。
以上に示される紫外線硬化性樹脂組成物からなる接着剤の層(硬化前の接着剤層)を偏光フィルムまたは積層される保護フィルム上に形成する方法としては、たとえば、偏光フィルムもしくは積層される保護フィルム上に該組成物を塗工する方法、該組成物を吹き付ける方法、またはあらかじめフィルム状に成形した該組成物を貼合する方法等が採用される。中でも、組成物を塗工する方法またはフィルム状組成物を貼合する方法が比較的塗膜の均質性の高いことから好ましく、組成物を塗工する方法が比較的生産性が高いことからより好ましい。
塗工する方法としては、たとえば、ダイコーター、カンマコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター、およびエアドクターコーター等が採用される。
接着剤層の厚さは、通常、0.1〜20μmであり、0.2〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。厚みが0.1μmを下回ると、硬化させた接着剤層による偏光フィルムと積層される保護フィルムとの間の密着力が不足する場合がある。また、厚みが20μmを超えると、接着剤層の硬化が十分進行しなかったり、硬化してもその厚みによりフィルムの屈曲性が悪化したり、薄肉化の効果が得られなかったりする場合がある。
上記接着剤層を介して積層された偏光フィルムと保護フィルムとの積層体に対して紫外線を照射し、接着剤層を硬化させることにより、本発明の偏光板を得ることができる。
光源としては、たとえば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、およびメタルハライドランプ等が挙げられる。
照射強度は、紫外線硬化性樹脂組成物や照射時間によって決定されるものであり、特に制限されるものではないが、たとえば、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜1000mW/cm2であることが好ましい。
照射時間は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物や照射強度によって決定されるものであり、特に制限されるものではないが、たとえば、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10〜2,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物への積算光量が10mJ/cm2未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる場合がある。また、2,000mJ/cm2を超えると、照射される紫外線により保護フィルムや紫外線硬化型接着剤、偏光フィルムの劣化が生じる場合がある。
(保護フィルム、光学補償フィルム)
本発明の偏光板は、偏光フィルムの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面と反対側の面に、接着剤層を介して320nmの範囲での光線透過率が60%以上である、保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていることを特徴とする。
保護フィルムまたは光学補償フィルムは、上記320nmの範囲での光線透過率が60%以上を満たしていれば、光学フィルムとしての光学特性を有するものを目的に合わせて適宜使用することができ、特に限定されるものではないが、保護フィルムとしては、たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)等からなるセルロース系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、およびポリエステル系樹脂フィルム等の透明フィルムが挙げられる。
また、光学補償フィルムとしては、上記の保護フィルムとして挙げたフィルムを延伸して屈折率異方性を持たせたもの、光学異方性付与添加剤を配合したもの、および表面に光学異方性層を形成したもの等が挙げられる。
また、これら保護フィルムまたは光学補償フィルムには、後記するように、光学機能性フィルムを積層したり、光学機能層をコーティングしたりすることもできる。
また、保護フィルムまたは光学補償フィルムには、後記するように、光学機能性フィルムを積層したり、光学機能層をコーティングしたりすることもできる。
セルロース系樹脂フィルムとは、セルロースの部分または完全エステル化物からなるフィルムであり、たとえば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、およびそれらの混合エステル等からなるフィルムが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、およびセルロースアセテートブチレートフィルム等が好ましく用いられる。
オレフィン系樹脂フィルムとは、たとえば、エチレンおよびプロピレン等の鎖状オレフィンモノマー、またはノルボルネンおよび他のシクロペンタジエン誘導体等の環状オレフィンモノマーを、重合用触媒を用いて重合して得られる樹脂からなるフィルムである。
鎖状オレフィンモノマーからなるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン系樹脂が挙げられる。中でも、プロピレンの単独重合体からなるポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマーを、通常、1〜20重量%の割合で、好ましくは3〜10重量%の割合で共重合させたポリプロピレン系樹脂も好ましい。
プロピレンと共重合可能なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、または1−ヘキセンが好ましい。中でも、透明性や延伸加工性に比較的優れることからエチレンを3〜10重量%の割合で共重合させたものが好ましい。エチレンの共重合割合を1重量%以上とすることで、透明性や延伸加工性を上げる効果が現れる。一方、その割合が20重量%を超えると、樹脂の融点が下がり保護フィルムや光学補償フィルムに要求される耐熱性が損なわれる場合がある。
環状オレフィンモノマーを重合してなるオレフィン系樹脂は、一般に、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、脂環式(ポリ)オレフィン系樹脂、またはノルボルネン系樹脂と称される。ここでは環状オレフィン系樹脂と称する。
環状オレフィン系樹脂としては、たとえば、シクロペンタジエンとオレフィン類とからディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行ない、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンとオレフィン類またはメタクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行ない、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン、それらの誘導体類、またはその他の環状オレフィンモノマーを2種以上用いて同様に開環メタセシス共重合を行ない、それに続く水添によって得られる樹脂;ならびに、上記ノルボルネン、テトラシクロドデセン、それらの誘導体、およびビニル基を有する芳香族化合物等を付加共重合させて得られる樹脂等が挙げられる。
このような環状オレフィン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、各々商品名で、「トーパス」(Topas Advanced Polymers
GmbH製)、「アートン」(JSR株式会社製)、「ゼオノア」、「ゼオネックス」(以上、日本ゼオン株式会社製)、および「アペル」(三井化学株式会社製)等が挙げられる。
アクリル系樹脂フィルムの好ましい具体例としては、メタクリル酸メチル系樹脂からなるフィルムを挙げることができる。メタクリル酸メチル系樹脂とは、メタクリル酸メチル単位を50重量%以上含む重合体である。メタクリル酸メチル単位の含有量は、好ましくは70重量%以上であり、100重量%であってもよい。メタクリル酸メチル単位が100重量%の重合体は、メタクリル酸メチルを単独で重合させて得られるメタクリル酸メチル単独重合体である。
このメタクリル酸メチル系樹脂は、通常、メタクリル酸メチルを主成分とする単官能単量体および必要に応じて使用される多官能単量体を、ラジカル重合開始剤および必要に応じて使用される連鎖移動剤の共存下に重合することにより得ることができる。
メタクリル酸メチルと共重合し得る単官能単量体としては、たとえば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、3−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、および2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチル等のヒドロキシアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびアクリル酸等の不飽和酸類;クロロスチレンおよびブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類;ビニルトルエンおよびα−メチルスチレン等の置換スチレン類;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;無水マレイン酸および無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物類;ならびにフェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類等を挙げることができる。このような単量体は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
メタクリル酸メチルと共重合し得る多官能単量体としては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびテトラデカエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエチレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、またはこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトール等の多価アルコールをアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの、ならびにこれら末端水酸基にグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、およびこれらのアルキレンオキシド付加物等にグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;およびジビニルベンゼン等のジアリール化合物等が挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
メタクリル酸メチル系樹脂は、該樹脂が有する官能基間の反応を行なうことによって変性された変性メタクリル酸メチル系樹脂であってもよい。その反応としては、たとえば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、および、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂フィルムを構成するポリカーボネート系樹脂とは、通常、二価フェノールとホスゲンまたはジフェニルカーボネート類等のカーボネート前駆体とを界面重縮合法、または溶融エステル交換法で反応させて得られるものであり、二価フェノールとしてビスフェノールAを用いた芳香族ポリカーボネート樹脂が一般的である。この他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物を開環重合させたもの等も挙げられる。
二価フェノールとしては、光学用透明樹脂としての性能を損なうものでなければ特に限定されるものではないが、たとえば、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)の他にも、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、および4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられ、これらは単独で、または異なる複数種が併用されて用いられる。
また、分子量を適切な範囲に調整したり、高分子鎖の水酸基末端を封止したりするために、一価フェノール化合物が併用されてもよい。一価フェノールとしては、末端封止剤として機能する化合物であれば特に限定されるものではないが、たとえば、フェノール、4−tert−ブチルフェノール、および1−フェニル−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂等を、保護フィルムに成形する方法としては、たとえば、溶媒に溶解させた樹脂を金属製バンド、またはドラムへ流延し、溶媒を乾燥除去してフィルムを得る溶媒キャスト法、および樹脂をその溶融温度以上に加熱・混練してダイより押し出し、冷却することによりフィルムを得る溶融押出法が採用される。中でも、生産性の観点からは溶融押出法が好ましく採用される。
また、偏光フィルムにおける延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層される側とは反対側に、接着剤層を介して設けられる保護フィルムとして用いることができるポリエステル系樹脂フィルムとしては、上記320nmの範囲での光線透過率が60%以上を満たしていれば、当該延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂と同種のものを用いることができる。
また、セルロース系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムとしては、目的に合う屈折率特性を有するものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、上記で挙げたセルロース系樹脂フィルムを一軸もしくは二軸延伸して得られるフィルム、またはセルロース系樹脂フィルムに位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロース系樹脂フィルム表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布したフィルム、およびそれらのフィルムを、さらに一軸または二軸延伸して得られるフィルム等が挙げられる。
セルロース系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムは、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「フジタックWV」(富士フイルム株式会社製)および「コニカミノルタTACフィルムKC8UCR」(コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
また、保護フィルムとして例示した、オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、およびポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、ならびにそれらからなる多層押出フィルム等を光学補償フィルムとして用いるには、通常、その未延伸フィルムを延伸し、フィルムに屈折率異方性を持たせる。延伸方法は、必要とされる屈折率異方性に応じて選択されるものであり、特に限定されるものではないが、通常、縦一軸延伸、横一軸延伸、または縦、横逐次二軸延伸が採用される。
オレフィン系樹脂やポリカーボネート系樹脂を始めとする多くの樹脂は正の屈折率異方性を有し、応力が加えられた方向で最も屈折率が大きくなるので、それらが縦一軸延伸されたフィルムは、通常nx>ny=nzの屈折率異方性を与える。ここで、nxは、フィルムの面内遅相軸方向(面内で屈折率が最大の方向)の屈折率であり、nyはフィルムの進相軸方向(面内で進相軸と直交する方向)の屈折率であり、nzはフィルムの法線方向の屈折率である。これらの樹脂が横一軸延伸されたフィルムは、通常nx>ny≒nzの屈折率異方性を与える。一方、アクリル系樹脂のように負の屈折率異方性を有する樹脂は、応力が加えられた方向で最も屈折率が小さくなるので、その縦一軸延伸フィルムは、通常nx=nz>nyの屈折率異方性を与え、その横一軸延伸フィルムは、通常nx≒nz>nyの屈折率異方性を与える。正の屈折率異方性を有する樹脂が逐次二軸延伸されたフィルムは、通常nx>ny>nzの屈折率異方性を与える。
また、所望の屈折率特性を付与するために、熱収縮性フィルムを目的とするフィルムに貼合し、延伸加工に代えて、または延伸加工とともに、または延伸加工の後にフィルムを収縮させることも行なわれる。通常、この操作は、屈折率異方性がnx>nz>nyまたはnz>nx≧nyとなる光学補償フィルムを得るために行なわれる。
これら光学補償フィルムについて、厚みをdとした場合、面内位相差値R0は(nx−ny)×dで、厚み方向の位相差値Rthは[(nx+ny)/2−nz]×dでそれぞれ表すことができる。
光学補償フィルムは、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、環状ポリオレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムとしては、それぞれ商品名で、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン株式会社製)、「アートンフィルム」(JSR株式会社製)、「エスシーナ位相差フィルム」(積水化学工業株式会社製)、および「ピュアエースER」(帝人化成株式会社製)等が挙げられる。また、ポリカーボネート系樹脂からなる光学補償フィルムとしては、たとえば、「ピュアエースWR」(帝人化成株式会社製)等が挙げられる。
さらに、接着剤層を介して偏光フィルムに積層される保護フィルムまたは光学補償フィルムには、光学機能性フィルムを積層したり、光学機能層をコーティングしたりすることもできる。この光学機能性フィルムおよび光学機能層としては、たとえば、防眩層、導電層、ハードコート層、および反射防止層等が挙げられる。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは反対側に積層された透明樹脂フィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に粘着剤層を有することができる。このような粘着剤層は、液晶セルとの貼合に用いることができる。
粘着剤層を構成する粘着剤は、光学フィルム用途としての諸特性(透明性、耐久性、リワーク性等)を満たしていれば特に限定されるものではないが、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを少量含有するアクリルモノマー組成物を重合開始剤の存在下ラジカル重合してなる、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤とを含有するアクリル系粘着剤が用いられる。
ここで、アクリル系樹脂の主成分となる(メタ)アクリル酸エステルは、下記式:
CH2=C(R1)COOR2
で表すことができ、式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数1〜14のアルキル基、またはアラルキル基を表し、R2のアルキル基の水素原子、またはアラルキル基の水素原子は、炭素数1〜10のアルコキシル基によって置換されていてもよい。
このようなアクリル酸エステルとしては、たとえば、R1がHであり、R2がn−ブチル基であるアクリル酸n−ブチル、R1がHであり、R2が2−エチルヘキシル基であるアクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。また、たとえば、R1がHであり、R2がアルコキシル基で置換されたアルキル基である場合、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル等が挙げられる。
また、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとは、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、およびエポキシ基等の極性官能基と、一つのオレフィン性二重結合(通常は(メタ)アクリロイル基)を分子内に有するものである。
このような官能基を有するアクリルモノマーの例を挙げれば、たとえば、水酸基を有するものとして、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましく用いられる。また、カルボキシル基を有するものとして、アクリル酸が好ましく用いられる。
また、アクリルモノマー組成物は、(メタ)アクリル酸エステルおよび官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のモノマーをさらに含有してもよい。その例としては、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有するモノマー、スチレン系モノマー、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニル系モノマー、および分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー等が挙げられる。
中でも、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有するモノマーとしては、下記式:
CH2=C(R3)−COO−(CH2CH2O)n−Ar−R4
で表されるモノマーが好ましい。
上記式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、nは1〜8の整数であり、Arはアリーレン基であり、R4は水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数7〜11のアラルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を表す。
このようなモノマーとしては、たとえば、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−フェノキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、および2−(o−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、2−フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルおよび官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のモノマーは、それぞれ単独で用いられてもよいし、異なる複数種が併用されてもよい。このモノマーに由来する構造単位のアクリル系樹脂全体に対する含有量は、通常、0〜20重量%であり、0〜10重量%が好ましい。
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂の分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で示される値として、100万〜200万が好ましい。重量平均分子量が100万以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。また、重量平均分子量が200万以下であると、その粘着剤層に貼合される透明樹脂フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。さらに、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、3〜7の範囲が好ましい。
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂は、上記のような比較的高分子量のものだけで構成できるが、それとは異なるアクリル系樹脂との混合物で構成することもできる。混合して用いられるアクリル系樹脂としては、たとえば、上記式で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、重量平均分子量が5万〜30万の範囲にあるものを挙げることができる。
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂の製造方法としては、たとえば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等、公知の各種方法が採用される。このアクリル系樹脂の製造においては、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、および過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤等が挙げられる。中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、および過硫酸アンモニウム等が好ましく用いられる。このような重合開始剤の配合量としては、アクリルモノマーの総量100重量部に対して、通常、0.001〜5重量部程度である。
こうして得られるアクリル系樹脂に、架橋剤を配合して粘着剤組成物とする。架橋剤は、アクリル系樹脂中の極性官能基を有するモノマーに由来する構造単位と架橋反応のできる官能基を、分子内に少なくとも2個有する化合物であり、たとえば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、およびアジリジン系化合物等が挙げられる。
これらの架橋剤の中でも、イソシアネート系化合物が好ましく用いられる。イソシアネート系化合物としては、分子内にイソシアナト基(−NCO)を少なくとも2個有する化合物それ自体のほか、それをポリオール等と反応させたアダクト体、その2量体、3量体などの形で用いることができ、たとえば、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートをポリオールと反応させて得られるアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、およびトリレンジイソシアネートの三量体、ならびにヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールと反応させて得られるアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、およびヘキサメチレンジイソシアネートの三量体等が挙げられる。
架橋剤のアクリル系樹脂100重量部に対する配合量は、通常、0.01〜5重量部であり、0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。アクリル系樹脂100重量部に対する架橋剤の量が0.01重量部以上、特に0.1重量部以上であると、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にある。また、5重量部以下であると、粘着剤層付き偏光板を液晶表示装置に適用したときの白抜けが目立たなくなる傾向にある。
本発明に用いられる粘着剤層は、偏光板に帯電する静電気を徐電するために帯電防止性を有することが好ましい。偏光板は、粘着剤層を保護している剥離フィルム(セパレーター)を剥離して液晶セルへ貼合されるとき等にしばしば静電気を帯びるが、粘着剤層が帯電防止性を有していれば、その静電気が速やかに徐電され、液晶セルの表示回路が破壊されたり、液晶分子が配向を乱されたりすることが抑制される。
粘着剤層に帯電防止性を付与するには、一般に、粘着剤に、金属微粒子、金属酸化物微粒子、または金属等をコーティングした微粒子等を含有させる方法;電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物を含有させる方法;または、有機塩系の帯電防止剤を配合させる方法等が採用される。一方、求められる帯電防止性の保持時間としては、一般的な偏光フィルムの製造、流通および保管期間の観点から、少なくとも6ヶ月程度必要である。
そこで、本発明に用いられる粘着剤に帯電防止性を付与するには、融点が30〜80℃であり、有機カチオンを有しているイオン性化合物を含有させる方法が好ましく採用される。このイオン性化合物の融点は、35〜70℃であるのがより好ましい。融点が80℃を超えると、イオン性化合物とアクリル系樹脂との相溶性が悪くなる場合がある。また、融点が30℃未満であると、帯電防止性の長期安定性に劣る場合がある。
融点が30〜80℃であるイオン性化合物を構成する有機カチオン成分としては、剥離フィルム(セパレーター)を剥がすときにより帯電しにくいことから、ピリジニウムカチオンやイミダゾリウムカチオンが好ましい。一方、有機カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分としては、無機のアニオンであってもよいし、有機のアニオンであってもよい。中でも、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましく、ヘキサフルオロホスフェートアニオンがより好ましい。
イオン性化合物の具体例を挙げれば、たとえば、N−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N−オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−4−ヘキシルピリジニウム
ヘキサフルオロホスフェート、および1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート等である。このようなイオン性化合物は、それぞれ単独で用いられてもよいし、異なる複数種が併用されてもよい。
イオン性化合物のアクリル系樹脂100重量部に対する含有量は、0.2〜8重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。アクリル系樹脂100重量部に対してイオン性化合物が0.2重量部以上含有されると、この粘着剤組成物を用いた粘着剤層の帯電防止性能が向上することから好ましい。また、その含有量が8重量部以下であると、粘着剤層の耐久性を保つのが容易であることから好ましい。
このようなイオン性化合物は市販品もあり、たとえば、ピリジニウムカチオン型イオン性化合物(光栄化学株式会社製)、イミダゾリウムカチオン型イオン性化合物(日本合成化学工業株式会社製)、および脂肪族四級アンモニウムカチオン型イオン性化合物(日清紡績株式会社製)等が挙げられる。
粘着剤組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、および上記アクリル系樹脂以外の樹脂等、ならびに有機ビーズ等の光拡散性微粒子を配合してもよい。また、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層形成後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
粘着剤組成物を構成するこれらの各成分は、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶かした状態で適当な基材上に塗布し、乾燥させて、粘着剤層とされる。
粘着剤層を透明樹脂フィルム上に形成する方法としては、たとえば、上記基材として剥離フィルムを用い、上記粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層を透明樹脂フィルム表面に積層する方法、および透明樹脂フィルム表面に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤面に剥離フィルムを貼り合わせる方法等が採用される。また、剥離フィルムの上に粘着剤層を得た後に、さらに剥離フィルムを貼合して、光学フィルム(たとえば、保護フィルムまたは光学補償フィルム)に支えられない両面セパレーター型粘着剤シートを得ることもできる。このような両面セパレーター型粘着剤シートは、必要な時期に片側の剥離フィルムを剥離し、透明樹脂フィルムとの貼合に用いられる。両面セパレーター型粘着剤シートの市販品としては、たとえば、ノンキャリア粘着剤フィルム・シート(リンテック株式会社製、日東電工株式会社製)が挙げられる。
なお、剥離フィルムとは、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリプロピレンまたはポリエチレン等の各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであり、セパレーターフィルムまたはセパレーターとも呼ばれる。
こうして塗布、乾燥された粘着剤層は、通常、たとえば、温度23℃、湿度65%で3〜20日程度熟成され、架橋剤の反応が十分に進行した後、液晶セルや他の光学フィルムとの貼合に用いられる。
粘着剤層の厚みは、10〜30μmが好ましく、15〜25μmがより好ましい。粘着剤層の厚みが30μm以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にある。また、その厚みが10μm以上であると、そこに貼合されている透明樹脂フィルムの寸法が変化してもその寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にある。
<液晶表示装置>
以上のようにしてなる偏光板、すなわち、紫外線吸収剤を含有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着剤層/偏光フィルム/接着剤層/透明樹脂フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する偏光板は、粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの片面または両面に貼合し、液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは、液晶表示装置に適用することができる。
本発明の偏光板は、たとえば、液晶表示装置において、視認側に配置される偏光板として用いることができる。特に、本発明の偏光板を構成する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに防眩層が積層されている場合、本発明の偏光板は視認側に配置される。視認側とは、液晶表示装置の液晶セルを基準にして、バックライト側とは反対側をいう。液晶表示装置のバックライト側に配置される偏光板は、本発明の偏光板であってもよいし、従来公知の偏光板であってもよい。
液晶セルの動作モードは、特に限定されるものではないが、本発明の偏光板の特徴である薄肉、高生産性等の観点からは、透過型のVAモードまたはIPSモード液晶セルが好ましく、中でも、それらのモードであり比較的大型のテレビ用液晶セルがより好ましい。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、これらの例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ないかぎり重量基準である。評価は以下のようにして行った。
<光線透過率>
偏光フィルムに積層される保護フィルムについて、株式会社島津製作所社製の分光光度計UV2450を用いて320mnおよび380mnの光線透過率を測定した。
<耐光性評価>
得られた偏光板を40mm×40mmに切り出し、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは反対側に積層された保護フィルムの外面に粘着剤を介してガラス基板に貼合した。その後、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製S80)に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから紫外線照射されるように投入した。500時間照射した後、取り出し、初期からの変色の有無を外観目視評価した。
<耐湿熱性評価>
得られた偏光板を40mm×40mmに切り出し、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは反対側に積層された保護フィルムの外面に粘着剤を介してガラス基板に貼合した。その後、60度90%RHのオーブンに1000時間投入し、取り出し後、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物層からなる接着剤層の反応不足によって生じる偏光フィルムの脱色有無を外観目視評価した。
<密着性評価>
得られた偏光板の偏光フィルムと両面の保護フィルムそれぞれの界面にカッターの刃を入れ、カッターの刃がそのまま進んで保護フィルムと偏光フィルムの間に剥離が生じるか否かで保護フィルムと偏光フィルムの密着性を評価した。
[製造例1]偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9mol%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/純水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/純水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主にヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行なわれ、工程中合計の延伸倍率は5.3倍であった。
[製造例2]紫外線硬化性接着剤組成物の作製
次の各成分を混合し、液状の接着剤組成物を作製した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 40部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 60部
ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルフォニウム ヘキサフルオロアンチモネート(カチオン重合開始剤) 4.0部
[製造例3]水系接着剤の作製
次の各成分を混合し、水系接着剤を作製した。
純水 100部
カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔クラレポバールKL318(株式会社クラレから入手) 3.0部
水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(固形分濃度30%の水溶液)〔スミレーズレジン650(住化ケムテックス株式会社から入手)〕 1.5部
<実施例1>
380nmの光線透過率が1%の紫外線吸収剤を有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、その貼合面にコロナ処理を施した後、製造例2で得られた紫外線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備えた塗工装置によって厚さ3μmの厚みに塗工した。また、320nmの光線透過率が90%の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムの貼合面にコロナ処理を施した後、同様に製造例2で得られた紫外線硬化性接着剤組成物を厚さ3μmの厚みに塗工した。
各フィルムへ接着剤組成物を塗工した後、直ちに、製造例1で得られた偏光フィルムの片面に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、他面に環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。その後、ライン速度20m/分にて、メタルハライドランプを280〜320nmの波長における積算光量が320mJ/cm2となるように環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルム側から照射して、両面の接着剤を硬化させて偏光板を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、380nmの光線透過率が9%の紫外線吸収剤を有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1における環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムに代えて、320nmの光線透過率が86%のセルロース系樹脂からなるフィルムからなる光学補償フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1における環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムに代えて、320nmの光線透過率が60%のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる保護フィルムを用い、さらに、メタルハライドランプによる照射を280〜320nmの波長における積算光量を450mJ/cm2としたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。評価結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、380nmの光線透過率が31%の紫外線吸収剤を有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。評価結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例4における320nmの光線透過率が60%のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる保護フィルムに代えて、320nmの光線透過率が30%のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる保護フィルムを用いたこと以外は、実施例4と同様にして偏光板を得た。評価結果を表1に示す。
表1の結果からもわかるように、本実施例の偏光板は、優れた紫外線吸収能を有するとともに、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる保護フィルムとの密着性に優れるとともに、湿熱環境下においても高い耐久性を有する。また、何れの実施例においても外観が良好であった。
<比較例3>
380nmの光線透過率が1%の紫外線吸収剤を有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび320nmの光線透過率が90%の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムをそれぞれ偏光フィルムの貼合面側にコロナ処理を施した後、製造例3で得られた水系接着剤をそれぞれ塗工し、偏光フィルムの両面にそれぞれ貼合した。その後、直ちに80℃に設定した熱風循環式乾燥機で5分間乾燥して偏光板を得た。
本比較例の偏光板は、偏光フィルムと保護フィルムとの間で容易に剥がれ、密着性に劣るものであった。
<実施例5>
(a)視認側偏光板の作製
実施例1における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、380nmの光線透過率が1%の紫外線吸収剤を有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの偏光フィルムと接着される面と反対側の面に防眩層形成用樹脂組成物の硬化物層からなる防眩層を有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。こうして得られた偏光板の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムの外面にコロナ処理を施し、厚み20μmのアクリル系粘着剤の層を設け、粘着剤層付き視認側偏光板を得た。その後、後記する液晶テレビの画面サイズへ吸収軸を長辺方向へ合わせて裁断し、視認側偏光板シートを得た。
(b)バックライト側偏光板の作製
実施例1で得られた偏光板の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムの外面にコロナ処理を施し、厚み20μmのアクリル系粘着剤の層を設け、粘着剤層付きバックライト側偏光板を得た。その後、後記する液晶テレビの画面サイズへ吸収軸を短辺方向へ合わせて裁断し、バックライト側偏光板シートを得た。
(c)液晶表示装置の作製
垂直配向モードの液晶セルを備える液晶パネルが搭載された市販の液晶テレビの液晶パネルから、両面の偏光板を剥離し液晶セルを取り出した。その液晶セルの前面(視認側)には上記視認側偏光板シートを、背面(バックライト側)には上記バックライト側偏光板シートを、それぞれの粘着剤層を介して貼合し液晶パネルを作製した。
次いで、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/拡散シート/液晶パネルの構成で組み立てて、液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置を作動させたところ、色ムラ等の不具合は観察されなかった。