JP6118269B2 - クロマトグラフ媒体 - Google Patents
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Description
一方で、光学異性体用分離剤には、多糖のフェニルエステル等の多糖誘導体を含有する分離剤が知られている。このような芳香族環を含む分離剤は、TLCプレートの分離剤層に用いた場合、紫外線の照射や発色試薬の発色処理では検出対象成分を検出することができないことがある。
前記分離剤層の一部に前記被浸透層が積層されていない領域があり、
前記分離剤層は、前記目的物質に対する分離性と紫外線に対する光学応答性とを有し、
前記被浸透層は、前記目的物質と前記分離剤層とは異なる光学応答性を有する、クロマトグラフ媒体。
<2> 前記分離剤層の一部に前記被浸透層が積層されていない領域が、前記クロマトグラフ媒体における前記目的物質を展開させるための展開液が浸漬する浸漬端部から、該クロマトグラフ媒体の展開方向の長さの1/2までの間の領域に存在する、<1>に記載のクロマトグラフ媒体。
<3> 前記被浸透層は、クロマトグラフ媒体の展開方向に不連続に積層されている、<1>または<2>に記載のクロマトグラフ媒体。
<4> 前記被浸透層は、前記分離剤層の上にドット状に積層されている、<1>〜<3>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<5> 前記ドット状に積層されている被浸透層は、該ドットの平均径が0.01〜5mmであり、ドット間のピッチが0.015〜5mmである、<4>に記載のクロマトグラフ媒体。
<6> 前記被浸透層は、前記分離剤層の上に、クロマトグラフ媒体の展開方向と交差する帯状の列として積層されている、<1>〜<3>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<7> 前記帯状の列を形成する帯は、直線、波線及びそれらの破線から選ばれる<6>に記載のクロマトグラフ媒体。
<8> 前記被浸透層の厚みが、前記分離剤層よりも薄い、<1>〜<7>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<9> 前記分離剤層を構成する分離剤が、光学異性体用分離剤である、<1>〜<8>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<10> 前記光学異性体用分離剤が、多糖と多糖の水酸基或いはアミノ基の一部又は全部と置き換わった芳香族エステル基、芳香族カルバモイル基、芳香族エーテル基、及びカルボニル基のいずれかとからなる多糖誘導体を含むことを特徴とする<9>に記載のクロマトグラフ媒体。
<11> 前記被浸透層は、多孔質体及び蛍光指示薬もしくは発色試薬を構成材料として含む、<1>〜<10>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<12> 前記多孔質体が、シリカゲルまたは表面処理されたシリカゲルである、<9>に記載のクロマトグラフ媒体。
<13> 前記被浸透層がさらにバインダを構成材料として含む、<11>または<12>に記載のクロマトグラフ媒体。
<14> 前記被浸透層上に目盛及び/または文字が存在する、<1>〜<13>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<15> 前記目盛及び/または文字が、前記被浸透層とは異なる光学応答性を有する、<14>に記載のクロマトグラフ媒体。
<16> 前記分離剤層に面して、または、前記被浸透層に面して、前記クロマトグラフ媒体を支持するための基材を有する、<1>〜<15>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<17> 前記クロマトグラフ媒体がプレート状、筒状または柱状である、<1>〜<16>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。
<18> <1>〜<15>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体と、該クロマトグラフ媒体を支持するための基材とを有し、前記基材上の複数領域に前記クロマトグラフ媒体が積層されてなる、TLCプレート。
<19> <1>〜<15>のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体と該クロマトグラフ媒体を支持するための基材とからなる、TLC材料。
また、本発明のクロマトグラフ媒体では、前記分離剤層の一部の領域に、前記被浸透層が積層されていない領域があることで、この領域に前記目的物質をスポッティングして、展開を行った場合には、分離剤層と被浸透層の間の相互作用、あるいは、被浸透層による目的物質の保持によって生じうる目的物質のテーリングを極力防ぐことができる。
また、本発明のクロマトグラフ媒体は、他の部材を用いることなく単一のキットで目的物質の分離と検出を行うことができることから、目的物質の分離と検出のために複雑な工程を必要としない。
本発明でいうクロマトグラフ媒体は、上記の分離剤層と被浸透層が積層されており、その形状がプレート状、筒状及び柱状のものを含み、プレート状のものは、いわゆる薄層クロマトグラフィー(TLC)のことである。一方、筒状や柱状のものは、ステッィク状カラムと呼ばれることもある。
前記被浸透層は前記分離剤層に面して積層されており、前記被浸透層と分離剤層とを有するクロマトグラフ媒体において、前記分離剤層の一部の領域に、前記被浸透層が積層されていない領域が存在する。また、前記分離剤層は、目的物質に対する分離能を有するとともに、紫外線に対する光学応答性を有する。一方、前記被浸透層は、紫外線に対する光学応答性が、目的物質及び分離剤層とは異なる。
本発明のクロマトグラフ媒体では、分離剤層の一部の領域に被浸透層が存在しない領域が存在する。このような領域に目的物質をスポッティングして展開させた場合には、分離剤層と被浸透層との間の相互作用、あるいは、被浸透層による目的物質の保持によって生じうる目的物質のピークがブロードになることを極力防ぐことができる。
目的物質の十分な分離を確保する観点からは、前記分離剤層の領域のうち、前記被浸透層が積層されていない領域が、前記クロマトグラフ媒体における前記目的物質を展開させるための展開液が浸漬する浸漬端部(以下、下側縁ともいう)から、該クロマトグラフ媒体の展開方向の長さの1/2までの間の領域に存在することが好ましい。
目的物質の良好な分離を確保する観点から、前記被浸透層が積層されていない領域は、前記クロマトグラフ媒体の下側縁から、該クロマトグラフ媒体の展開方向の長さの1/20〜1/2.2までの間の領域であることがより好ましい。このような領域の境界は、目的物質のスポッティング位置及び展開槽に浸漬した際の液浸の位置よりも展開方向の長さの下流側に設けるようにする。
また、前記分離剤層の一部に前記被浸透層が積層されていない領域の形状及び場所は、生産性の観点から、クロマトグラフ媒体がプレート状のものである場合、その下側縁を含めた四角形であることが好ましい。
あるいは、目的物質のスポッティングが行える程度の大きさの略円形状の形状であってもよい。
分離剤層の全面積に対する、被浸透層が積層されていない領域の面積の割合は、0.05%〜50%であることが好ましく、多様な目的物質の分離の確認が行えるようにする観点からは、0.2%〜40%であることがより好ましい。
このような、被浸透層が積層されておらず分離剤層が露出している領域は、分離剤層を積層した後、後述する塗布技術、浸漬技術あるいは印刷技術を用いて被浸透層を積層する際に、その領域だけ塗布、浸漬あるいは印刷しない方法を用いて得ることができる。
あるいは、被浸透層の積層を分離剤層の全面に一旦行った後、掻き採り等の操作で分離剤層から除去することによっても得ることができる。
プレート状のものとしては、基材として後述するものを用いて、紫外線を照射する方向から見て、被浸透層、分離剤層、基材の順に積層する第一の態様(図8(a)参照)や、紫外線を照射する方向から見て、基材、被浸透層、分離剤層の順で積層する第二の態様(図8(b)参照)が挙げられる。
前記第一の態様では、目的物質のスポッティングは紫外線を照射する面のうち、分離剤層が露出している領域に行う。
前記第二の態様で用いる基材として、図8(b)で示すような柔軟性を有する素材を用い、図8(b)に示すよう分離剤層及び被浸透層に接して形成することが、分離剤層及び被浸透層の崩壊を防止する観点から好ましい。
また、前記第二の態様では、図8(b)に示すように紫外線を照射する方向とは逆の方向(図8(b)中の5’)から目的物質のスポッティングを行うことができるが、基材の一部を除去して紫外線を照射する方向と同じ方向(図8(b)中の5)からスポッティングを行うこともできる。
筒状の基材の内周面に分離剤層と被浸透層を積層させる場合、筒状の基材として光透過性を有するものを用いることにより、目的物質の確認を行うことができる。ここで光透過性とは、目的物質のスポットの光学的特徴(発色、発光、及び吸光等)を確認可能な透明性を言う。そのような光透過性を有するカラム管等の管には、例えば石英ガラスの管や、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂製の管を用いることができる。
また、基材を有さず、分離剤層と被浸透層のみからなり、通液性を有するクロマトグラフ媒体とすることもできる。
図9に示される筒状または柱状のクロマトグラフ媒体においても、目的物質は被浸透層が積層されておらず、分離剤層が露出している領域にスポッティングする。
このような筒状や柱状のクロマトグラフ媒体においては、通常1〜40cmの長さを有し、径(最大径)は、通常0.1〜1cmである。
上記分離剤には、粒子状の分離剤を用いることができる。このような粒子状の分離剤としては、分離剤のみからなる粒子、粒子状の担体に分離剤が担持されてなる粒子、が挙げられる。担体への分離剤の担持には、物理的な吸着による担持の他、担体への化学結合による分離剤の担持も含まれる。
まず、少なくとも表面に前記分離剤を有する柱状の多孔質体を形成する。このような多孔質体は、分離剤による柱状の多孔質体、及び、担体による柱状の多孔質体とこれに担持される前記分離剤、のいずれかによって形成することができる。
用いることのできるアルコールとしては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール及び3−メチル−3−メトキシブタノールが挙げられる。
このような範囲内であれば、流動性の高いスラリー状の材料だけでなく、例えば筒状や柱状のクロマトグラフ媒体を作製する際には、塗布用溶剤の含有量が少ない粘度の高い材料も使用することができる。
また、本発明のクロマトグラフ媒体では、サンプルの分離性能を良好に保つ観点から、分離剤層の厚さよりも被浸透層の厚さが小さい方が好ましい。
本発明における分離剤層と被浸透層の厚さの比は、サンプルの分離性能を良好に保つ観点から、分離剤層を1としたとき、0.002〜0.8であることが好ましく、0.005〜0.5であることがより好ましく、0.006〜0.4であることが特に好ましい。
また被浸透層は、分離剤層においてスポットを形成している成分の少なくとも一部が浸透する層である。
また、被浸透層を構成する材料は、クロマトグラフ媒体上における分離剤層における目的物質の分離特性、即ち、移動相と分離剤層の間の目的物質の分配に影響を与えないものであることが、クロマトグラフ媒体上における目的物質のスポットをブロードにしないために重要である。
このことから、被浸透層の構成材料は、例えば分離剤層で用いられる分離剤が担体に担持されたものである場合、その担体と同じものであることが好ましい。また、被浸透層の構成材料は、後述する材料の中から、移動相と分離剤層の間の目的物質の分配に影響を与えないものを適宜選んで使用することができる。
その間隔としては、目的物質が浸透し、これを検出するのに十分な解像度を得るために、0.015mm以上であることが好ましく、0.02mm以上であることがより好ましく、0.05mm以上であることが特に好ましい。一方、目的物質の被浸透層への拡散による分離剤層との相互作用を抑え、目的物質の良好な分離を確保するためには、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが特に好ましい。
また、目的物質が浸透し、検出するのに十分な面積を確保する観点から、被浸透層の空隙容積(材料内部の空隙容積(内部空隙)と材料間の空隙容積(外部空隙)を合わせたもの)の層全体の体積に占める割合が、0.1〜0.9であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましい。
ドットの形状が円形である場合、その平均径は0.01〜5mmであることが、目的物質の浸透性及び分離特性の観点から好ましく、0.01〜4mmであることがより好ましく、0.02〜3mmであることがさらに好ましく、0.05〜1mmであることが特に好ましい。
一方、ドットの形状が円形以外のものである場合、その最大径の平均径が0.02〜6mmであることが、円形の場合と同様の理由で好ましく、0.05〜5mmであることがより好ましく、0.05〜1.5mmであることがさらに好ましい。
本発明でいう最大径とは、例えば楕円形の場合、その最も長い軸の長さを意味するが、より一般的には、平行な2つの平面で、その形状を上面から見て任意の方向に挟んだときの2つの平面間の距離の最大値である。
ドットが円型である場合、ピッチは上記と同様の理由で、好ましくは0.01〜6mm、より好ましくは0.02〜3mmであり、さらに好ましくは0.05〜1mであり、0.06〜1mmであることが特に好ましい。
また、ドットの密度を線数(1インチ当たりのドット個数)で表すと、好ましくは5〜2000、より好ましくは10〜400であり、さらに好ましくは20〜300である。
前記帯状の列を形成する帯の形状としては、例えば直線、波線及びこれらの破線を挙げることができる。この帯の幅は特に制限されるものではないが、目的物質の分離特性を保ち、かつ、目的物質の検出に十分な解像度を得る観点から、0.01〜15mmであること好ましく、0.02〜10mmであることがより好ましい。
また、帯と帯の間隔については、特に制限されるものではないが、目的物質の均一な分離特性を得る観点から、等間隔であることが好ましく、その間隔としては0.01〜3mmであること好ましく、0.02〜2mmであることがより好ましい。
そのような多孔質体は、目的物質の十分な浸透性を確保する観点から、ガス吸着法により測定される細孔容積が0.1ml/g以上であることが好ましく、0.2ml/g以上であることがより好ましく、0.3〜0.9ml/gであることが特に好ましい。
上記のような細孔容積を有する多孔質体としては、後述する好ましい多孔質体であるシリカゲルやセラミックスの市販品でカタログ値として上記範囲を満たすものを用いてもよいし、シリカを含むものであればフッ化水素水溶液やアルカリ水溶液による処理を行って調整してもよいし、セラミックスであればその造粒時の焼成条件、酸溶液での処理などを行って調整することもできる。
多孔質体の粒径は、通常の粒径測定装置で測定される平均粒径を採用することができるが、カタログ値であってもよい。
これらのうち、上記細孔容積や粒径を有するものが好ましく用いられ、溶剤との親和性の観点から、シリカゲルを用いることが好ましい。
本発明で用いることのできるシリカゲルは、例えば、シランカップリング剤で表面処理されたシリカゲル、例えばオクタデシルシリル基、アミノプロピルシリル基で修飾したシリカゲルも使用することができる。このような表面処理されたシリカゲルは、分離剤層と移動相の間での目的物質の分配に影響を与えない傾向があることから好ましく用いられる。
また、上記の多孔質体は、分離剤層と移動相の間での目的物質の分配に影響を与えないものを選択することが、クロマトグラフ媒体上における目的物質のスポットをブロードにしない観点から好ましい。
このような組成物におけるバインダの含有量は、形成される被浸透層の強度と、被浸透層における分離剤層と被浸透層との相互作用であるバイパス作用を減少させる観点から、バインダの種類に応じて適宜に決めることができる。例えば石膏であれば、バインダの含有量は、蛍光指示薬あるいは発色試薬の100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましく、1〜20質量部であることがさらに好ましい。また、例えばカルボキシメチルセルロース等の有機系のバインダであれば、バインダの含有量は、蛍光指示薬あるいは発色試薬の100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
また、前記支持体については、これを含有させる場合、蛍光指示薬あるいは発色試薬の100質量部に対して0.1〜0.9質量部であることが好ましく、0.2〜0.8質量部であることがより好ましく、0.3〜0.7質量部であることが特に好ましい。
また、本発明のクロマトグラフ媒体において、被浸透層がクロマトグラフ媒体の展開方向に不連続に積層されている場合には、例えば印刷技術を用いて、被浸透層を積層することができる。
スクリーン印刷では、スクリーン版として、開口部の形状として上記の積層の態様で説明したものを有するもの(クロマトグラフ媒体の展開方向に不連続に開口しているものや、種々の形状を有するドットや帯状の列を開口部として有しているもの)を用いることができる。シルクスクリーン印刷のようなスクリーン印刷では、被浸透層を比較的安価で簡単な操作で積層させることができることから、好ましく用いられる。
スクリーン版は、後述する多孔質体を含むスラリーを印刷インキとして用い得るものであれば、特にその材料が限定されるものではない。そのようなスクリーン版として、例えばメタルマスクが挙げられる。
一方、インクジェット印刷を用いる場合も、印刷に用いるインクとして、後述する多孔質体を含むスラリーを用いること以外は、通常用いられているインクジェット印刷の技術を用いることができる。
また、筒状や柱状のクロマトグラフ媒体において、被浸透層がクロマトグラフ媒体の展開方向に不連続に積層されている場合には、例えば印刷技術を用いて、被浸透層を積層することができる。そのような印刷技術としては、上述したスクリーン印刷を用いることができ、スクリーン版としては、上述した開口部及び柔軟性を有し、分離剤層の周面に巻き付けることができるものを用いることが好ましい。
一方、被浸透層の厚さ(平均厚さ)は、目的物質のスポットの拡散の防止の観点から0.2mm以下であることが好ましく、0.15mm以下であることがさらに好ましい。
多孔質体を含むスラリーを調製する際に用いる材料としては、溶剤と必要に応じてバインダが挙げられる。そのような溶剤やバインダは、分離剤層を形成する際に用いることができるものと、同じものを用いることができる。
蛍光指示薬あるいは発色試薬とバインダ及び必要に応じて支持体を含有する組成物を用いる場合には、上記の蛍光指示薬あるいは発色試薬の溶液に上記バインダを含有する組成物を溶解乃至懸濁させて塗布液、印刷インキとすることができる。
用いることのできるアルコールとしては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール及び3−メチル−3−メトキシブタノールが挙げられる。
ここで用いることができる基材、分離剤層、被浸透層やそれらの積層方法については、上述したものを用いることができる。また、TLC材料において、溝を設ける場所についても特に限定されるものではない。
試料中の目的物質の分離及び検出は、クロマトグラフ媒体の展開方向(クロマトグラフ媒体がTLCプレートの場合で、その形状として長方形のものを用いる場合には、長手方向が好ましい)へ移動相を用いて試料を展開させる工程と、該クロマトグラフ媒体上の移動相を乾燥させる工程と、移動した目的物質の各成分のスポットを紫外線の照射又は発色試薬の発色処理によって検出する工程と、を含む方法によって行うことができる。
本発明のクロマトグラフを用いて試料を移動相を用いて展開させると、試料中の目的物質の分離が行われると同時に、分離剤層上の被浸透層に目的物質が浸透する。
なお、本発明における目的物質は、被浸透層とは異なる光学応答性を有し、分離剤層と同じ光学応答性を有する。
まず、株式会社ダイセル製CHIRALPAK IA(同社の登録商標)の充填剤(「IA充填剤」とも言う)4.00gと、石膏0.60gと、2%CMC(カルボキシメチルセルロース)1110(株式会社ダイセル製)水溶液4.00gと、20%スノーテックスC(日産化学工業株式会社製)水溶液0.60gとを、水0.40g、エタノール1.60gの混合溶液に添加し、超音波を照射しながら十分に攪拌して第一のスラリーを調製した。
また、シリカゲル2.00g(ダイソー株式会社製液体クロマトグラフィー用、IR−60−5/20−U)、3%CMC(カルボキシメチルセルロース)1110(株式会社ダイセル製)水溶液2.00g、マンガン含有ケイ酸亜鉛0.08gとを、水1.42g、エタノール1.20gの混合溶液に添加し、超音波を照射しながら十分に攪拌して第二のスラリーを調製した。
これらのスラリーのうち、第一のスラリーを、TLCプレート作製用スプレッダを用いて6枚直列に並べたガラス板の表面に均一に塗布し、第一のスラリー層を風乾し、真空ポンプで引きながら60℃で3時間真空乾燥することによって、第一のスラリーによる分離剤層を積層した。 次に分離剤層の上に第二のスラリーをメタルマスク(東京プロセスサービス)により塗布した。スクリーン版として、ピッチが0.6mmで、孔径0.4mmの円形状の開口部を規則的に有するもの(図5参照)を使用した。なお、第二のスラリーは、TLCプレートの下側縁から、該TLCプレートの展開方向の長さの1.5cmまでの間を除く領域に均一に塗布し、第二のスラリー層を風乾し、真空ポンプで引きながら60℃で3時間真空乾燥することによって、分離剤層の上に第二のスラリーの層である被浸透層がドット状に積層されたTLCプレート1を作製した。
第一のスラリーによる分離剤層がIA充填剤による層であり、第二のスラリーによる被浸透層が前記シリカゲルの層である。また、IA充填剤の平均粒径は20μmであり、シリカゲルの平均粒径は14.4μmである。
被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値を求めた。さらにk’=(1−Rf)/Rfの関係からk’値を求めた。さらにk’値を用いてα値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表1に示す。
実施例1のTLCプレートにおいて、被浸透層が存在しない領域を設けず、分離剤層上の全面に被浸透層を設けたこと以外は実施例1と同様の原料、手順によりTLCプレート3を作製した。そして、目的物質のスポッティングを被浸透層上に行ったこと以外は実施例1と同様の操作、展開液を用いて、トランス−スチルベンオキサイド、トレガー塩基及びフラバノンの光学異性体を展開させた。その後、実施例1と同様に、被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値を求めた。さらにk’=(1−Rf)/Rfの関係からk’値を求めた。さらにk’値を用いてα値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表1に示す。
実施例1で作製したTLCプレート1と同様の原料、手順を用いて作製したTLCプレート2を用い、展開液としてメタノールを用いた以外は実施例1と同様の手順により、TLCプレート1の展開方向に試料中のトランス−スチルベンオキサイド、トレガー塩基及びフラバノンの光学異性体を展開させた。その後、実施例1と同様に、被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値、k’値、α値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表2に示す。
実施例1のTLCプレートにおいて、被浸透層が存在しない領域を設けず、分離剤層上の全面に被浸透層を設けたこと以外は実施例1と同様の原料、手順によりTLCプレート4を作製した。そして、目的物質のスポッティングを被浸透層上に行い、展開液としてメタノールを用いた以外は実施例1と同様の手順により、トランス−スチルベンオキサイド、トレガー塩基及びフラバノンの光学異性体を展開させた。その後、実施例1と同様に、被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値を求めた。さらにk’=(1−Rf)/Rfの関係からk’値を求めた。さらにk’値を用いてα値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表2に示す。
実施例1で作製したTLCプレート1と同様の原料、手順を用いて作製したTLCプレート5を用い、実施例1と同様の操作、展開液(n−ヘキサンとエタノールを体積比で9:1で含有する混合溶剤)により、ベンゾインエチルエーテル、トランス−スチルベンオキサイド、トレガー塩基及びフラバノンを展開させた。その後、実施例1と同様に、被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値を求めた。さらにk’=(1−Rf)/Rfの関係からk’値を求めた。さらにk’値を用いてα値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表3に示す。
実施例1で作製したTLCプレート1の作製に用いた原料のうち、第二のスラリーに含有させたシリカゲルをアミノプロピルシリル化シリカゲル(製品名:IR−60−5/20−APS、会社名:ダイソー株式会社)を用いた以外は同様の原料、手順を用いて作製したTLCプレート6を用い、実施例1と同様の操作、展開液(n−ヘキサンとエタノールを体積比で9:1で含有する混合溶剤)により、ベンゾインエチルエーテル、トランス−スチルベンオキサイド、トレガー塩基及びフラバノンを展開させた。その後、実施例1と同様に、被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値、k’値、α値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表3に示す。
実施例1で作製したTLCプレート1と同様の原料、手順を用いて作製したTLCプレート7を用い、展開液をn−ヘキサンとイソプロピルアルコール(2−プロパノール)を体積比で9:1で含有する混合溶剤に変更した以外は実施例1と同様の操作により、ベンゾインエチルエーテル、トランス−スチルベンオキサイド、トレガー塩基及びフラバノンを展開させた。その後、実施例1と同様に、被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値、k’値、α値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表4に示す。
実施例1で作製したTLCプレート1の作製に用いた原料のうち、第一のスラリーに含有させたシリカゲルをアミノプロピルシリル化シリカゲル(製品名:IR−60−5/20−APS、会社名:ダイソー株式会社)を用いた以外は同様の原料、手順を用いて作製したTLCプレート8を用い、展開液をn−ヘキサンとイソプロピルアルコール(2−プロパノール)を体積比で9:1で含有する混合溶剤に変更した以外は実施例1と同様の操作により、ベンゾインエチルエーテル、トランス−スチルベンオキサイド、トレガー塩基及びフラバノンを展開させた。その後、実施例1と同様に、被浸透層における試料の点着位置、展開液の到達位置、及びスポットの中心位置とから、各スポットのRf値、k’値、α値を求めた。それぞれの光学異性体についての結果を表4に示す。
TB:トレガー塩基
FLV:フラバノン
BEE:ベンゾインエチルエーテル
1:被浸透層
2:分離剤層
3:基材
4:紫外線照射方向
5、5’:スポッティング方向
Claims (19)
- 目的物質を分離するための分離剤層と、該分離剤層に面して積層され、該分離剤層で分離された目的物質が浸透するための被浸透層とを有するクロマトグラフ媒体であって、
前記分離剤層の一部に前記被浸透層が積層されていない領域があり、
前記分離剤層は、前記目的物質に対する分離性と紫外線に対する光学応答性とを有し、
前記被浸透層は、前記目的物質と前記分離剤層とは異なる光学応答性を有する、クロマトグラフ媒体。 - 前記分離剤層の一部に前記被浸透層が積層されていない領域が、前記クロマトグラフ媒体における前記目的物質を展開させるための展開液が浸漬する浸漬端部から、該クロマトグラフ媒体の展開方向の長さの1/2までの間の領域に存在する、請求項1に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記被浸透層は、クロマトグラフ媒体の展開方向に不連続に積層されている、請求項1または2に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記被浸透層は、前記分離剤層の上にドット状に積層されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記ドット状に積層されている被浸透層は、該ドットの平均径が0.01〜5mmであり、ドット間のピッチが0.015〜5mmである、請求項4に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記被浸透層は、前記分離剤層の上に、クロマトグラフ媒体の展開方向と交差する帯状の列として積層されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記帯状の列を形成する帯は、直線、波線及びそれらの破線から選ばれる請求項6に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記被浸透層の厚みが、前記分離剤層よりも薄い、請求項1〜7のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記分離剤層を構成する分離剤が、光学異性体用分離剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記光学異性体用分離剤が、多糖と多糖の水酸基或いはアミノ基の一部又は全部と置き換わった芳香族エステル基、芳香族カルバモイル基、芳香族エーテル基、及びカルボニル基のいずれかとからなる多糖誘導体を含むことを特徴とする請求項9に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記被浸透層は、多孔質体及び蛍光指示薬もしくは発色試薬を構成材料として含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記多孔質体が、シリカゲルまたは表面処理されたシリカゲルである、請求項11に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記被浸透層がさらにバインダを構成材料として含む、請求項11または12に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記被浸透層上に目盛及び/または文字が存在する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記目盛及び/または文字が、前記被浸透層とは異なる光学応答性を有する、請求項14に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記分離剤層に面して、または、前記被浸透層に面して、前記クロマトグラフ媒体を支持するための基材を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 前記クロマトグラフ媒体がプレート状、筒状または柱状である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体と、該クロマトグラフ媒体を支持するための基材とを有し、前記基材上の複数領域に前記クロマトグラフ媒体が積層されてなる、TLCプレート。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載のクロマトグラフ媒体と該クロマトグラフ媒体を支持するための基材とからなる、TLC材料。
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