JP6118224B2 - 搬送ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、物品を搬送する搬送ベルトに関するものである。
無端状の搬送ベルトは、様々な物品の搬送に用いられている。そして、搬送ベルトで搬送される食品や医薬品、電子部品などの製品を、搬送ベルト上で物品を搬送しながら外観検査を行う際には、光透過性を有する搬送ベルトの裏面から光を当ててベルト上を明るくし、異物混入、製品の欠けなどの異常を目視で検査する。
例えば、特許文献1には、コンベヤ上下に配置された透過型光電センサーの投光機と受光機の間を通過する、コンベヤと同系色の薄板上の搬送物の検出方法が提案されている。特許文献1では、コンベヤベルトとして光透過性を有する白色ウレタン製ベルトを使用し、光透過率が1%以上(好ましくは3%以上)であることが記載されている。しかしながら、コンベヤと同系色で薄板状搬送物の通過を検出するのみであれば、上記透過率でも良いが、物品を搬送しながら異物や外観異常を目視検査する場合は、搬送物がよく観察できるよう、コンベヤベルト裏面から光を照射する必要がある。このように、搬送ベルトの裏面に光源を設置して、搬送物を目視検査する場合には、優れた視認性が要求される。
また、特許文献1に記載された白色ウレタン製ベルトは、帯電性がなく、ゴミ等の塵埃が付着しにくく、スリップしにくく、擦れても表面が破けない等の性質を有するためにコンベアベルトとして好ましい、と記載されている。しかしながら、単に白色ウレタン製ベルトとしているだけで、具体的な構成は開示されていない。
一方、搬送ベルトとして、様々な物品を安定的かつ長期的に搬送する強度や耐久性を確保するためには、搬送ベルトに、抗張体として芯体帆布を含む必要である。例えば、特許文献2には、樹脂ベルト上で食品を搬送しながら裁断をおこなうために、樹脂表面カバー層を厚くした搬送ベルトが提案されている。
そして、特許文献2には、比較例の従来の樹脂搬送ベルトとして、経糸としてポリエステルマルチフィラメント(1000デニール=約1111dtex)、緯糸としてポリエステルモノフィラメント(900デニール=約1000dtex)を用いて平織りして得られる芯体帆布に厚さ0.3mmのポリウレタンを表面カバー層とした無端状の搬送ベルトが記載されている。このように、特許文献2に示すような従来の搬送ベルトでは、強度や耐久性を確保するために、搬送ベルト全体が厚くなってしまい、搬送ベルトの裏面に光源を設置して、搬送物を目視検査する場合、特に視認性を考慮した構成にはなっていなかった。
特開2005−239341号公報 特開2003−171006号公報
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、搬送ベルトの裏面に光源を設置して搬送物を目視検査する場合の視認性に優れた搬送ベルトを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の搬送ベルトは、透明熱可塑性材料で形成される表面カバー層と、透明熱可塑性材料からなる接着剤を含浸した少なくとも1層の芯体帆布と、を積層した搬送ベルトであって、前記芯体帆布は、90%以上の光透過性を有することを特徴とする。
本発明の搬送ベルトによれば、90%以上の光透過性を有する芯体帆布を用いて搬送ベルトを形成しているため、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、搬送ベルトの裏面に光源を設置して、搬送物を目視検査する場合に、優れた視認性を得ることができる。また、表面カバー層および芯体帆布に含侵させる接着剤を透明熱可塑性材料で構成することにより光透過性の低下を防止することができる。ここで、透明熱可塑性材料は、光を透過させるため無色透明の外観を呈し、顔料や染料、固体充填剤など光を隠蔽する成分を含まないものとする。また、光透過率とは、特定の波長の入射光が試料(ここでは、芯体帆布)を通過する割合を百分率で表したものである。
上記搬送ベルトにおいて、前記芯体帆布は、経糸と緯糸とが交差して織られた織布であることが好ましい。
芯体帆布として経糸と緯糸とを交差させて織られた織布(平織り、綾織り、朱子織り)を用いることにより、高い光透過率を得ることができる。織布の方が、編布よりも空隙が多く、光透過率が高いからである。
上記搬送ベルトにおいて、前記芯体帆布は、繊度280〜560dtexの繊維で織られたものことが好ましい。
芯体帆布を、従来の搬送ベルトに用いられている繊維の繊度より細径の繊度280から560dtexの繊維で織ることにより、芯体帆布が薄くなり、高い光透過性を得ることができる。尚、芯体帆布の繊度が280dtex未満の場合、ベルト張力が低くなり、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保できず、物品搬送に支障がでる虞がある。一方、芯体帆布の繊度が560dtexを超えると、光透過率が悪くなる虞がある。
上記搬送ベルトにおいて、前記芯体帆布の厚みは、0.2〜0.5mmであることが好ましい。
芯体帆布の厚みは、0.2mmよりも薄いと、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性が確保できず、0.5mmよりも厚いと、光透過性が低下してしまうため、芯体帆布の厚みを0.2〜0.5mmとすることにより、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、高い光透過性を得ることができる。
上記搬送ベルトにおいて、前記芯体帆布を構成する繊維は、白色導電性繊維を含むことが好ましい。
搬送ベルトが帯電すると、搬送物がベルトに吸着し、スムーズな乗り継ぎができなくなる虞がある。また、周囲の埃がベルトや搬送物に付着し、搬送物を汚す虞がある。さらに、搬送物が電子部品の場合、静電気により、故障などの不具合が発生ずる場合がある。そこで、芯体帆布を形成する繊維に導電性繊維を含ませることにより、静電気を放電させ、搬送ベルトの帯電を防止することができる。尚、光透過性が低下させないため、カーボンブラックなど黒色の導電性物質を練り込んだ従来の導電性繊維ではなく、白色の導電性繊維(白色導電性繊維)を使用する。更に、導電性繊維は、白色に限らず、透明であってもよい。
また、本発明に係る搬送ベルトにおいて、前記表面カバーと同じ透明熱可塑性材料で形成された中間層と、前記中間層を介して90%以上の光透過性を有する第2の芯体帆布と、を更に積層したものであって良い。
搬送ベルトに芯体帆布を2層積層することにより、搬送ベルトの強度や耐久性が高まり、搬送物が重く、搬送ベルトに強度が要求される場合に、強度を確保することができ、また、搬送物をベルト幅方向より投入・搬出する場合に、搬送ベルトがめくれ上がることを抑制することができる。尚、芯体帆布と第2の芯体帆布が同じであった場合、光の干渉縞が発生して、搬送物の視認性が低下するため、第2の芯体帆布は、芯体帆布と異なる織組織であることが好ましい。
前記透明熱可塑性材料は、透明熱可塑性エラストマーまたは透明熱可塑性樹脂であることが好ましい。
透明熱可塑性材料として、実用性に優れた透明熱可塑性エラストマーまたは透明熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、透明熱可塑性エラストマーまたは透明熱可塑性樹脂は、いずれも、光を透過させるため無色透明の外観を呈し、顔料や染料、固体充填剤など光を隠蔽する成分を含まないものであって、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなる。
上記搬送ベルトにおいて、前記透明熱可塑性材料は、無黄変ポリウレタンエラストマーであることが好ましい。
表面カバー層、中間層および芯体帆布の接着処理に使用する透明熱可塑性材料として、加工性や強度に優れたポリウレタンエラストマーを使用すると、加工性や強度に優れる。尚、フェニル基を含むポリウレタンエラストマーを使用すると、フェニル基が紫外線と反応して、表面カバー層や芯体帆布が経時により黄変し、搬送物の視認性が低下する虞があるため、フェニル基を含まない無黄変ポリウレタンエラストマーを使用することが好ましい。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、搬送ベルトの裏面に光源を設置して搬送物を目視検査する場合の視認性に優れた搬送ベルトを提供することができる。
第一の実施形態に係る搬送ベルトを示す断面図である。 第一の実施形態に係る搬送ベルトの接合部を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 第二の実施形態に係る搬送ベルトを示す断面図である。 本実施例に係る光透過率測定装置を示す模式図である。 本実施例に係る走行帯電圧測定装置を示す模式図である。 本実施例に係る屈曲走行試験を行う屈曲走行試験機を示す模式図である。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第一の実施形態に係る搬送ベルト]
まず、第一の実施形態に係る搬送ベルトについて、図1及び図2に基づいて、説明する。
図1に、第一の実施形態に係る搬送ベルト1を示す。図1に示す搬送ベルト1は、図の上面側が外周側、下面側が内周側となり、図の長手方向がベルト周長方向となり、図の奥行き方向がベルト幅方向となる。
第一の実施形態に係る搬送ベルト1は、搬送ベルト1の外周側から内周側へ順に、表面カバー層2と、芯体帆布3とが積層された構造として形成される。また、芯体帆布3には、透明熱可塑性エラストマーからなる接着剤が含浸されており、接着層4が形成されている。搬送ベルト1全体の厚さは、例えば0.3〜1.5mmであって、好ましくは、0.45から1.0mmである。物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、高い光透過性を得るためである。
表面カバー層2は、搬送ベルト1の表面に設けられ、芯体帆布3を保護するものである。表面カバー層2の厚さは、例えば、0.1から0.5mmである。物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、高い透過性を損なわないようにするためである。
表面カバー層2は、ポリウレタン、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなる熱可塑性エラストマーから形成される。表面カバー層2を形成する熱可塑性エラストマーは、光を透過させるため、無色透明の外観を呈し、顔料や染料、固体充填剤など光を隠蔽する成分を含まないものとする。表面カバー層2を形成する熱可塑性エラストマーは、特に、加工性や強度に優れたポリウレタンエラストマーであって、無黄変タイプのポリウレタンエラストマーが好ましい。更に、表面カバー層2を形成する熱可塑性エラストマーは、フェニル基を含まない無黄変ポリウレタンエラストマーであることが好ましい。表面カバー層2を形成する熱可塑性エラストマーとして、フェニル基を含むポリウレタンエラストマーを使用すると、フェニル基が紫外線と反応して、経時により黄変する虞があるからである。尚、表面カバー層2は、透明熱可塑性材料から形成されていればよく、透明熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
芯体帆布3は、経糸と緯糸を交差させて織られた織布(平織り、綾織り、朱子織等)である。例えば、芯体帆布3は、経糸、緯糸をほぼ直角に交差して織られた平織り布が使用できる。芯体帆布3は、光透過率が90%以上になるように、経糸と緯糸の材質、繊度、密度が決定される。芯体帆布3は、例えば、経糸密度63〜125本/5cm、緯糸密度70〜100本/5cmに織られた平織り布を使用することができる。
芯体帆布3の厚さは、例えば、0.15〜0.7mmであって、特に0.2から0.5mmが好ましい。芯体帆布の厚みは、0.2mmよりも薄いと、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性が確保できず、0.5mmよりも厚いと、光透過性が低下してしまうため、芯体帆布の厚みを0.2〜0.5mmとして、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、高い光透過性を得るためである。
芯体帆布3を構成する経糸、緯糸は、共に、繊度(糸の太さ)が、280〜560dtexであることが好ましい。ここで、dtex(デシテックス)とは、10,000メートルの糸の質量をグラム単位で表したものである。繊度が280dtex未満の場合、ベルト張力が低くなり、物品搬送に支障がでる虞があり、繊度が560dtexを超えると、光透過率が悪くなるからである。
また、芯体帆布3を構成する経糸、緯糸の材質としては、ポリエステル、ビニロン、ポリ乳酸、ポリウレタンなどの合成繊維が用いられるが、光透過性を高くするため、透明、半透明、白色の外観を呈することが好ましい。
具体的には、芯体帆布3を構成する経糸として、ポリエステルマルチフィラメント、撚り合せ数1、繊度280から560dtexの繊維を使用することができる。また、芯体帆布3の緯糸として、ポリエステルモノフィラメント、繊度280から560dtexの繊維が使用することができる。
更に、芯体帆布3を構成する経糸には、白色導電性繊維が撚り込みされた導電性経糸を使用することが好ましい。芯体帆布3が白色導電性繊維を含むことにより、搬送ベルト1を帯電しにくくすることができるからである。尚、通常の経糸複数本に1本の割合で、導電性経糸を織り込んだものを、芯体帆布3の経糸として使用する。更に、導電性繊維は、白色に限らず、透明であってもよい。芯体帆布3を形成する繊維に導電性繊維を含ませることにより、静電気を放電させ、搬送ベルトの帯電を防止することができるからである。
ここで、白色導電性繊維としては、ポリエステル繊維に白色導電セラミックスを練り込んだ、例えば、繊度28dtex、線抵抗10Ω/cm以下の繊維を用いることができる。具体的には、芯体帆布3を構成する経糸(ポリエステルマルチフィラメント、撚り合せ数1、繊度280から560dtex)に撚りを掛ける際に、白色導電性繊維を複数本(例えば、2本)一緒に撚り込み、導電性の経糸を作成する。
芯体帆布3の接着層4は、表面カバー層2と接合するために、芯体帆布3に接着処理がされて、形成される。芯体帆布3の接着層4は、表面カバー層2と同様の透明熱可塑性エラストマーを用いて、これを有機溶媒に溶かした接着剤を芯体帆布3にコーティングさせて形成される、または、芯体帆布3を接着剤に浸漬させて形成される。ここで、接着剤としては、特に、透明無黄変ポリウレタンエラストマーをメチルエチルケトン/シクロヘキサン/テトラヒドロフランの混合溶媒に溶解させたものが用いられる。尚、接着剤としては、透明熱可塑性材料を用いればよく、透明熱可塑性エラストマーの代わりに、透明熱可塑性樹脂を用いてもよい。
第一の実施形態に係る搬送ベルト1は、図2に示すように、両端を接合して、無端状のベルトとして使用される。図2は、第一の実施形態に係る搬送ベルトの接合部を示している。搬送ベルト1の両端の接合においては、まず、搬送ベルト1の長手方向の両端をジグザグ状に切断し、互いに突き合わせ接合する。次に、上述の表面カバー層2と同様の材質(透明無黄変ポリウレタンエラストマー)のエンドレスシート8により、搬送ベルト1の長手方向の両端部を接合した接合部を覆うように貼り合せる。そして、熱板プレス機を用いて、エンドレスシート8と共に搬送ベルト1の接合部を加圧して、接合する。ここで、エンドレスシート8は、厚さ0.15mm程度のものが好ましい。以上のように構成されることにより、接合部が高い光透過性を得ることができる。尚、接合部の光透過性が悪いと、搬送ベルト1の長手方向の両端部のジグザグ状の合わせ目から光が漏れるため、接合部のみ光っているように見え、搬送ベルト1の外観異常となる虞がある。
以上のように、第一の実施形態に係る搬送ベルト1によれば、90%以上の光透過性を有する芯体帆布3を用いて搬送ベルト1を形成しているため、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、搬送ベルト1の裏面に光源を設置して、搬送物を目視検査する場合に、優れた視認性を得ることができる。また、表面カバー層2および芯体帆布3に含侵させる接着剤(接着層4)を透明熱可塑性材料で構成することにより光透過性の低下を防止することができる。
[第二の実施形態に係る搬送ベルト]
ここで、第二の実施形態に係る搬送ベルトについて、図3に基づいて、説明する。
図3に、第二の実施形態に係る搬送ベルト1を示す。図3に示す搬送ベルト1は、図の上面側が外周側、下面側が内周側となり、図の長手方向がベルト周長方向となり、図の奥行き方向がベルト幅方向となる。
第二の実施形態に係る搬送ベルト1は、搬送ベルト1の外周側から内周側へ順に、表面カバー層2と、芯体帆布3と、中間層5と、第2の芯体帆布6とが積層された構造として形成される。ここで、芯体帆布3には、透明熱可塑性エラストマーからなる接着剤が含浸されており、接着層4が形成されている。また、第2の芯体帆布6には、透明熱可塑性エラストマーからなる接着剤が含浸されており、接着層7が形成されている。表面カバー層2と、芯体帆布3と、芯体帆布3の接着層4は、図1に示す第一の実施形態に係る搬送ベルト1の構成と同じであり、説明を省略する。
中間層5は、上述した表面カバー層2と同じ材質で形成されて、芯体帆布3と第2の芯体帆布6とを接合する。中間層5の厚さは、例えば0.1から0.5mmである。物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、高い透過性を損なわないようにするためである。
第2の芯体帆布6は、中間層5を介して、芯体帆布3と接合される。第2の芯体帆布6の構成材料は、芯体帆布3と同様であるが、光透過率が90%以上となるように、経糸と緯糸の材質、繊度、密度が決定される。尚、芯体帆布3と第2の芯体帆布6の繊度・密度・織組織が同等であると光が透過する際に干渉縞が生じるため、芯体帆布3と第2の芯体帆布6の繊度・密度・織組織が異なるように形成されることが好ましい。
第2の芯体帆布6は、具体的には、経糸として、繊度56dtex、密度230本/3cm、緯糸として、繊度110dtex、密度135本/3cmのポリエステル繊維で織られた、光透過率が90%の平織り布を用いることができる。尚、芯体帆布3に導電繊維を使用しているため、第2の芯体帆布6には、導電性繊維を織り込まなくてもよい。
第2の芯体帆布6の接着層7は、中間層5と接合するために、第2の芯体帆布6に接着処理がされて、形成される。第2の芯体帆布6の接着層7は、上述した芯体帆布3の接着層4と同じ材料で形成される。尚、芯体帆布3の接着層4と同様に、接着剤としては、透明熱可塑性材料を用いればよく、透明熱可塑性エラストマーの代わりに、透明熱可塑性樹脂を用いてもよい。
以上のように、第二の実施形態に係る搬送ベルト1によれば、搬送ベルト1に芯体帆布3と第2の芯体帆布6を2層積層することにより、搬送ベルト1の強度や耐久性が高まり、搬送物が重く、搬送ベルト1に強度が要求される場合に、強度を確保することができ、また、搬送物をベルト幅方向より投入・搬出する場合に、搬送ベルト1がめくれ上がることを抑制することができる。
尚、第二の実施形態に係る搬送ベルト1も、図2に示す第一の実施形態に係る搬送ベルト1と同様に、両端を接合して、無端状のベルトとして使用される。
[搬送ベルトの製造方法]
本実施形態に係る搬送ベルトの製造方法について説明する。
まず、第一の実施形態に係る搬送ベルト1の製造方法について説明する。透明熱可塑性エラストマーを押出機によってシート状に押出成形した表面カバー層2を形成する。また、芯体帆布3には、透明熱可塑性エラストマーを用いて、これを有機溶媒に溶かした接着剤をコーティングするか、または、芯体帆布3を接着剤に浸漬させて接着層4を形成する。そして、押出直後の高温、半溶融状態の表面カバー層2を、接着層4を形成した芯体帆布3と積層する。最後に、ロール間で加圧して、表面カバー層2及び芯体帆布3の両者を、接着層4を介して積層接着して、第一の実施形態に係る搬送ベルト1を得る。
尚、平プレスにより、接着層4を介して表面カバー層2と芯体帆布3を、ラミネーション(薄膜接着)して、第一の実施形態に係る搬送ベルト1を得ても良い。
次に、第二の実施形態に係る搬送ベルト1の製造方法について説明する。透明熱可塑性エラストマーを押出機によってシート状に押出成形した表面カバー層2及び中間層5を形成する。また、芯体帆布3及び第2の芯体帆布6には、透明熱可塑性エラストマーを用いて、これを有機溶媒に溶かした接着剤をコーティングするか、または、芯体帆布3及び第2の芯体帆布6を接着剤に浸漬させて、接着層4及び接着層7を形成する。そして、押出直後の高温、半溶融状態の表面カバー層2と、接着層4を形成した芯体帆布3と、押出直後の高温、半溶融状態の中間層5と、接着層7を形成した第2の芯体帆布6と、積層する。最後に、ロール間で加圧して、表面カバー層2と芯体帆布3、そして、芯体帆布3と中間層5を、接着層4を介して積層接着すると共に、中間層5と第2の芯体帆布6を、接着層7を介して積層接着して、第二の実施形態に係る搬送ベルト1を得る。
尚、平プレスにより、接着層4を介して表面カバー層2と芯体帆布3、そして、芯体帆布3と中間層5を、接着層7を介して中間層5と第2の芯体帆布6を、ラミネーションして、第二の実施形態に係る搬送ベルト1を得ても良い。
(搬送ベルト)
実施例として、実施例1〜4の搬送ベルトを形成した。実施例1〜3の搬送ベルト1は、外周側から内周側へ順に、表面カバー層2と、接着層4が形成された芯体帆布3とが積層された上述の第一の実施形態に係る搬送ベルト1の構造で形成した。また、実施例4の搬送ベルト1は、外周側から内周側へ順に、表面カバー層2と、接着層4が形成された芯体帆布3と、中間層5と、接着層7が形成された第2の芯体帆布6とが積層された上述の第二の実施形態に係る搬送ベルト1の構造で形成した。
本実施例(実施例1〜4)では、ポリエステルマルチフィラメント、撚り合せ数1、繊度280から560dtexの繊維を経糸とし、ポリエステルモノフィラメント、繊度280から560dtexの繊維を緯糸とし、経糸に白色導電性繊維を撚り込んだ導電性経糸を経糸10本に1本の割合で混合して使用し、経糸密度63〜125本/5cm、緯糸密度70〜100本/5cmで織られた、光透過率92〜98%の平織り布を、芯体帆布3とした。また、実施例4では、ポリエステルマルチフィラメント、繊度56dtexの繊維を経糸とし、ポリエステルマルチフィラメント、繊度110dtexの繊維を緯糸とし、経糸密度230本/3cm、緯糸密度135本/3cmで織られた、光透過率が90%の平織り布を、第2の芯体帆布6とした。また、実施例1〜4では、表面カバー層2は、いずれも、透明無黄変ポリウレタンエラストマーを使用して、厚み0.3mmとなるように構成した。同様に、実施例4では、中間層5として、透明無黄変ポリウレタンエラストマーを使用して、厚み0.3mmとなるように構成した。そして、接着層4及び接着層7として、いずれも、透明無黄変ポリウレタンエラストマーをメチルエチルケトン/シクロヘキサン/テトラヒドロフランの混合溶媒に溶解させた接着剤(ウレタンエラストマーの濃度10wt%)を使用し、芯体帆布3及び第2の芯体帆布6を浸漬して接着処理を行った。
また、比較例として、表面カバー層2のない芯体帆布3のみの搬送ベルト(比較例1)、外周側から内周側へ順に、表面カバー層2と、芯体帆布3と、芯体帆布3の接着層4と、中間層5と、第2の芯体帆布6と、第2の芯体帆布6の接着層7と、が積層された上述の第二の実施形態に係る搬送ベルト1の構造で形成した搬送ベルト(比較例2)を用意した。
比較例(比較例1〜2)では、ポリエステルスパン糸、繊度20番手の繊維を経糸とし、ポリエステルモノフィラメント、繊度1100dtexの繊維を緯糸とし、経糸に黒色導電性繊維を撚り込んだ導電性経糸を経糸10本に1本の割合で混合して使用し、経糸密度140本/5cm、緯糸密度56本/5cmに織られた、光透過率88%の平織り布を、芯体帆布3とした。また、比較例2では、表面カバー層2及び中間層5は、透明ポリウレタンエラストマー(無黄変ではない)を使用して、表面カバー層2は厚み0.8mmとなるように、中間層5は厚み0.3mmとなるように構成した。また、比較例2では、ポリエステルスパン糸、繊度20番手の繊維を経糸とし、ポリエステルモノフィラメント、繊度1100dtexの繊維を緯糸として、経糸密度140本/5cm、緯糸密度56本/5cmで織られた、光透過率が88%の平織り布を、第2の芯体帆布6とした。そして、接着層4及び接着層7として、いずれも、透明ポリウレタンエラストマー(無黄変ではない)をメチルエチルケトン/シクロヘキサン/テトラヒドロフランの混合溶媒に溶解させた接着剤(ウレタンエラストマーの濃度10wt%)を使用し、芯体帆布3及び第2の芯体帆布6を浸漬して接着処理を行った。
尚、実施例、比較例の各搬送ベルト1は無端状に形成されて、その寸法は、いずれも幅100mm、周長1450mmとした。実施例、比較例の各搬送ベルト1の接合部は、それぞれ、表面カバー層2と同様の材質の厚さ0.15mmのエンドレスシート8を使用し、熱板プレス機を用いて、温度130℃×圧力0.3MPa、加圧時間5分の条件で、加圧し、接合した。
以上で説明した、実施例、比較例の各搬送ベルトについての層構造、搬送ベルトの厚みをまとめると、下記の表1に示す通りとなる。尚、表1において、芯体帆布3を、第2の芯体帆布6と区別する為に、第1の芯体帆布と記載した。
そして、実施例、比較例の各搬送ベルトについて、下記の光透過率測定試験、走行帯電圧測定試験、ベルト強力測定試験、耐変色試験、屈曲走行試験を行った。
(光透過率測定試験)
光透過率測定試験では、実施例、比較例の各搬送ベルト1について、ベルト裏面に設置した光源から、搬送ベルト1を通過する光の透過率を、光透過性として測定した。具体的には、図4に示すように、実施例、比較例の各搬送ベルト1をプーリ10に巻きかけた状態で、ベルト裏面に設置した光源(例えば、LEDライトボード)11から光を照射し、光センサー(照度計)12にて、光源11の照度Eと、ベルト表面の照度Eとを測定し、光透過率Tを次式で算出した。
光透過率T=(E/E)×100(%)
尚、本実施例において、測定環境は、室内、室温23℃、湿度52%、部屋全体の明るさ960ルクスであり、光源11は、照度4030ルクスに調整した。
(走行帯電圧測定試験)
走行帯電圧測定試験では、実施例、比較例の各搬送ベルト1について、走行帯電圧を測定して、帯電防止性能の評価を行った。ここで、走行帯電圧とは、ベルトが走行している時にベルト表裏面とプーリが接触したり離れたりする部分で発生する電圧をいう。具体的には、図5に示すように、実施例、比較例の各搬送ベルト1をプーリ10に巻きかけた状態で、搬送ベルト1を走行させながら、ベルト表面からX(mm)離れた場所に設置した走行帯電圧測定装置13を用いて搬送ベルト1の表面電位を測定し、走行帯電圧として測定した。搬送ベルト1が帯電している場合、走行帯電圧は、−20000から−30000Vである。また、搬送ベルト1が帯電していない場合、走行帯電圧は、およそ−1000Vである。尚、本実施例において、測定環境は、室内、室温23℃、湿度50%であった。また、プーリ10のプーリ径φ200mm、搬送ベルト1の走行速度を5m/sとし、X=50mmとした。
(ベルト強力測定試験)
ベルト強力測定試験では、実施例、比較例の各搬送ベルト1について、引張実験によりベルト強力を測定した。具体的には、実施例、比較例の各搬送ベルト1のそれぞれについて、試験片を用いて100mm/minの速度で引張り、ベルト強力を測定した。尚、搬送ベルト1としては、10N/mm以上のベルト強力があれば、実用可能である。
(耐変色試験)
耐変色試験では、実施例、比較例の各搬送ベルト1について、耐光試験機を用いて耐変色試験を行い、試験前後の色差を、色差計を用いて測定した。具体的には、実施例、比較例の各搬送ベルト1のそれぞれについて、試験片に対して、紫外線カーボンアーク燈式耐光試験機により紫外線を温度63℃下で22時間照射し、色差計を用いて試験前後のL表色系のΔL、Δa、Δbを測定し、色差ΔEを次式で算出した。ΔEは耐変色性を示し、ΔEが大きいほど変色していることを示す。
ΔE= 〔(ΔL +(Δa+(Δb1/2
ΔE:L表色系における試験前後の試験片の色差
ΔL:L表色系における試験前後の試験片の明度の差
Δa,Δb:L表色系における試験前後の試験片の各色度座標の差
(屈曲走行試験)
屈曲走行試験では、実施例、比較例の各搬送ベルト1について、屈曲走行試験機を用いて屈曲走行試験を行い、走行後の強力保持率を評価した。具体的には、図6に示すように、実施例、比較例の各搬送ベルト1について、屈曲走行試験機30の駆動ローラ31(直径50mm)と4つのガイドローラ(直径15mm)32〜35に巻き掛けて、各搬送ベルト1をガイドローラに沿って屈曲させながら走行させた。各搬送ベルト1を40万回転させることにより、各搬送ベルト1を5つのプーリ31〜35によって200万回屈曲させた後、各搬送ベルト1の接合部を目視により観察した。なお、走行試験条件は、ベルト張力を1N/mm、ベルト走行速度を150m/minとした。そして、走行後の強力保持率が90%以上の搬送ベルト1を○とし、走行後の強力保持率が80%以上、90%未満の搬送ベルト1を△として評価した。
実施例、比較例の各搬送ベルトについて、層構造及び搬送ベルトの厚みと共に、上述した光透過率測定試験、走行帯電圧測定試験、ベルト強力測定試験、耐変色試験、屈曲走行試験の結果を、それぞれ、表1の「光透過性(%)」、「走行耐電圧(V)」、「ベルト強力(N/mm)」、「耐変色性(ΔE)」、「屈曲走行試験」の欄に示す。
表1に示す結果から、光透過性測定試験の結果では、第一の実施形態の搬送ベルト1の構成である実施例1〜3の搬送ベルトは、比較例1の搬送ベルトと比べ、光透過率が高くなっている。また、第二の実施形態の搬送ベルト1の構成である実施例4の搬送ベルトは、比較例2の搬送ベルトと比べ、光透過率が高くなっている。
また、走行帯電圧測定試験の結果では、通常の搬送ベルトの走行帯電圧は、白色導電性繊維を撚り込んだ導電性経糸を用いた実施例1〜4の搬送ベルトの走行帯電圧は、−2000V程度である。また、黒色導電性繊維を撚り込んだ導電性経糸を用いた比較例1〜2の搬送ベルトの走行帯電圧は、−1000V程度である。
また、耐変色試験の結果では、透明無黄変ポリウレタンエラストマーを表面カバー層2、接着層4、中間層5、及び、接着層7に用いた実施例1〜4の搬送ベルトのフェードメータ試験後の色差変化ΔEは、透明ポリウレタンエラストマーを表面カバー層2、接着層4、中間層5、及び、接着層7に用いた比較例1〜2より小さくなった。
また、ベルト強力測定試験の結果では、第一の実施形態の搬送ベルト1の構成である実施例1〜3の搬送ベルトは、比較例1の搬送ベルトと比べ、ベルト張力が低くなっている。また、第二の実施形態の搬送ベルト1の構成である実施例4の搬送ベルトは、比較例2の搬送ベルトと比べ、ベルト張力が低くなっているが、実施例1,3の搬送ベルトと比べると、ベルト張力が高くなっている。
また、屈曲走行試験の結果では、実施例3の搬送ベルトは、走行後の強力保持率が80%以上、90%未満となったが、実施例1〜2,4及び比較例1〜2の搬送ベルトは、走行後の強力保持率が90%以上となった。
[考察]
上述の試験より、以下のことが明らかになった。
光透過性測定試験では、実施例1〜3の搬送ベルトは、比較例1の搬送ベルトと比べ、光透過率が高くなっており、実施例4の搬送ベルトは、比較例2の搬送ベルトと比べ、光透過率が高くなっていることが明らかとなった。これは、比較例1〜2の搬送ベルトに比べて、実施例1〜4の搬送ベルトに、より光透過性の高い芯体帆布が用いられているためだと考えられる。
走行帯電圧測定試験では、白色導電性繊維を撚り込んだ導電性経糸を用いた実施例1〜4の搬送ベルトの走行帯電圧は、−2000V程度であることが明らかになった。これにより、通常の搬送ベルトの走行帯電圧は、−20000から−30000Vであるのに対して、十分に帯電防止ができていることがわかる。
耐変色試験では、実施例1〜4の搬送ベルトのフェードメータ試験後の色差変化ΔEは、比較例1〜2より小さくなったことが明らかになった。これは、比較例1〜2に用いられている透明ポリウレタンエラストマーに含まれるフェニル基が、紫外線と反応して、表面カバー層2、接着層4、中間層5、及び、接着層7が経時により黄変したからであると考えられる。
ベルト強力測定試験では、実施例1〜3の搬送ベルトは、比較例1の搬送ベルトと比べ、ベルト張力が低くなっており、実施例4の搬送ベルトは、比較例2の搬送ベルトと比べ、ベルト張力が低くなっているが、実施例1,3の搬送ベルトと比べると、ベルト張力が高くなっていることが明らかになった。通常の軽搬送用途で要求される張力は10N/mm以上であるので、実施例1〜4の搬送ベルトは、軽搬送用途の搬送ベルトとして使用することができる。
屈曲走行試験では、実施例3の搬送ベルトは、走行後の強力保持率が80%以上、90%未満となり、実施例1〜2,4及び比較例1〜2の搬送ベルトは、走行後の強力保持率が90%以上となったことが明らかになった。これにより、実施例1〜4では、搬送ベルト1の異常が発生しないと考えられる。
以上より、外周側から内周側へ順に、表面カバー層2と、接着層4が形成された芯体帆布3とが積層された第一の実施形態に係る搬送ベルト1、及び、外周側から内周側へ順に、表面カバー層2と、接着層4が形成された芯体帆布3と、芯体帆布3の接着層4と、中間層5と、接着層7が形成された第2の芯体帆布6とが積層された第二の実施形態に係る搬送ベルト1は、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、搬送ベルトの裏面に光源を設置して搬送物を目視検査する場合の視認性に優れたことが明らかとなった。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
本発明を利用すれば、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性を確保しつつ、搬送ベルトの裏面に光源を設置して搬送物を目視検査する場合の視認性に優れた搬送ベルトを提供することができる。
1 搬送ベルト
2 表面カバー層
3 芯体帆布
4 接着層
5 中間層
6 第2の芯体帆布
7 接着層

Claims (8)

  1. 透明熱可塑性材料で形成される表面カバー層と、
    透明熱可塑性材料からなる接着剤を含浸した少なくとも1層の芯体帆布と、
    を積層した搬送ベルトであって、
    前記芯体帆布は、90%以上の光透過性を有することを特徴とする搬送ベルト。
  2. 前記芯体帆布は、経糸と緯糸とが交差して織られた織布であることを特徴とする請求項1に記載の搬送ベルト。
  3. 前記芯体帆布は、繊度280〜560dtexの繊維で織られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送ベルト。
  4. 前記芯体帆布の厚みは、0.2〜0.5mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
  5. 前記表面カバーと同じ透明熱可塑性材料で形成された中間層と、
    前記中間層を介して90%以上の光透過性を有する第2の芯体帆布と、を更に積層したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
  6. 前記芯体帆布を構成する繊維は、白色導電性繊維を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
  7. 前記透明熱可塑性材料は、透明熱可塑性エラストマーまたは透明熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
  8. 前記透明熱可塑性材料は、無黄変ポリウレタンエラストマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
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