JP6114790B2 - 熱リレー、熱スイッチ、加熱冷却装置、ヒートサイクル射出成形装置及びヒートサイクル射出成形方法 - Google Patents

熱リレー、熱スイッチ、加熱冷却装置、ヒートサイクル射出成形装置及びヒートサイクル射出成形方法 Download PDF

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Description

この発明は、高温・低温の2つの熱源と伝熱対象との選択的接続を切り換える手段として熱リレー、その熱リレーに好適に利用される伝熱/断熱の操作手段としての熱スイッチ、熱リレーを用いた加熱冷却装置、ヒートサイクル射出成形装置、及びヒートサイクル射出成形方法に関する。
対象物を加熱、冷却する加熱冷却装置としては、例えば特許文献1に開示された金型の温度を制御する金型温度調整装置900(図10)が知られている。金型温度調整装置900は、金型10を加熱及び冷却するために金型の内部に設けられる金型温調用流路40と、その金型温調用流路40に加熱された熱媒体を送るための加熱用温調器51と、金型温調用流路40に冷却された熱媒体を送るための冷却用温調器60と、流路切り替え手段としての三方弁74I,74O,75I,75O,76I,76Oと、これらの三方弁同士を接続する配管42,43,44,45,46,47と、三方弁の作動を制御して流路を切り替えるための流路制御装置30から構成される。
金型温度調整装置900は、金型温調用流路40に、金型10を加熱する場合は加熱用温調器51で加熱された熱媒体を供給し、冷却する場合は冷却用温調器60で冷却された熱媒体を供給するものである。
ところで、加熱源若しくは冷却源に接続しながら対象物を加熱・冷却するための熱を中継する伝熱手段として、従来からウィックレスヒートパイプとウィック形ヒートパイプとが知られている。以下、これらについて説明する。
〔ウィックレスヒートパイプ3〕
図1にウィックレスヒートパイプ3の作動状態を示す。図1(a)はヒートパイプ下部に高温熱源がある場合(以降、ボトムヒートモードと称する)の作動を示す。図1(b)はヒートパイプ上部に高温熱源がある場合(以降、トップヒートモードと称する)の作動を示す。
ウィックレスヒートパイプ3は、断熱層2を挟んだ2つの領域にその上部と下部を突出して配置される。その2つの領域は共に液体の媒質でも良いし、金型や高温熱源のような固形物でも良い。
ボトムヒートモードの場合、断熱層2を挟んで低い位置に図示しない高温熱源が配置される。ウィックレスヒートパイプ3の内部には、例えば水等の作動液4が注入されている。よって、重力によってウィックレスヒートパイプ3の下部に偏在する作動液4は、高温熱源からの熱を吸熱して気化し、蒸気流5となって上部に熱を伝達する。蒸気流5はウィックレスヒートパイプ3の上部の壁に熱を放出した後、液化して壁伝いに下部に戻り、再び気化して上部に熱を伝達するサイクルを繰り返すことで高速に熱を伝達する。
トップヒートモードの場合、重力によってウィックレスヒートパイプ3の下部に偏在する作動液4には、上記した熱の循環サイクルが発生せず、断熱層2を挟んで上部と下部は断熱状態となる。
〔ウィック形ヒートパイプ6〕
図2は、ウィック形ヒートパイプ6の作動状態を示す図であり、(a)はボトムヒートモード、(b)はトップヒートモードを示している。ウィック形ヒートパイプ6は、ヒートパイプの長手方向の内壁沿いにウィック6aを備える点で、ウィックレスヒートパイプ3と異なる。ウィック(wick)とは「ろうそくの芯」の意味であり、毛細管現象によって液体を重力に逆らって上方に吸い上げる働きをするものである。
図2では、ウィック6aによってウィック形ヒートパイプ6の内壁に狭い隙間を作り毛細管現象で作動液4を上方に持ち上げる例を示している。これ以外にも、文字通り「ろうそくの芯」に相当する例えば金属を編み込んだケーブルのようなものを用いても良いし、ヒートパイプの内壁に狭い溝を設けても良い。
このウィック6aによって、ウィック形ヒートパイプ6の長手方向の全域に亘って作動液4が配される。その結果、トップヒートモードでも作動液4の循環サイクルが発生するので、放熱方向に示す矢印(図2(b))のように上方の熱を下部に放熱することが可能となる。ボトムヒートモードの作動は、ウィックレスヒートパイプ3と同じである。
特開2009−137075号公報
従来のヒートパイプ(ウィックレスヒートパイプ3やウィック形ヒートパイプ6)を加熱冷却装置に利用するには、ヒートパイプの一方の端部に高温熱源と低温熱源を切り換えて接続させる必要があり、その切り換えの機構が複雑になる課題があった。よって、従来の金型温度調整装置900で説明したように温水と冷水を流す流路が用いられていた。また、従来の加熱冷却装置は、例えば金型のような対象物の近傍に2系統の温度調節機構を配置しなければならないため装置が大型化してしまう課題があった。また、装置が大型化する関係で、小型の金型に対応できない課題があった。
この発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、小型化できる効率的なヒートサイクルの手段、およびその要素技術を提供することを目的とする。
この発明の熱リレーは、小型化できる効率的なヒートサイクルの手段の要素技術として使用される、高温・低温の2つの熱源と伝熱対象との選択的接続を切り換える手段である。この発明の熱リレーは、第1の端部と第2の端部とを有するウィック形ヒートパイプと、それぞれ第1の端部と第2の端部とを有する第1のウィックレスヒートパイプと第2のウィックレスヒートパイプを備える。ウィック形ヒートパイプの第1の端部が伝熱対象に接続する接続端部を構成し、ウィック形ヒートパイプの第2の端部には、第1及び第2のウィックレスヒートパイプの両方の第1の端部が共に接続される。第1のウィックレスヒートパイプの第1の端部と第2の端部との重力方向に係る相対的な順序と、第2のウィックレスヒートパイプの第1の端部と第2の端部との重力方向に係る相対的な順序とを、各個別に反転させることで、伝熱の態様を切り換える。
この発明の加熱冷却装置は、第1の端部と第2の端部とを有するウィック形ヒートパイプと、それぞれ第1の端部と第2の端部とを有する第1と第2のウィックレスヒートパイプと、第1のウィックレスヒートパイプの第2の端部に接続される高温熱源と、第2のウィックレスヒートパイプの第2の端部に接続される低温熱源とを備える。ウィック形ヒートパイプの第1の端部が伝熱対象に接続する接続部を構成し、ウィック形ヒートパイプの第2の端部には、第1及び第2のウィックレスヒートパイプの両方の第1の端部が共に接続される。第1のウィックレスヒートパイプの第1の端部と第2の端部との重力方向に係る相対的な順序と、第2のウィックレスヒートパイプの第1の端部と第2の端部との重力方向に係る相対的な順序とを、各個別に反転させることで、伝熱対象に対する高温熱源による加熱と低温熱源による冷却とを切り換える。
この発明の熱スイッチも、小型化できる効率的なヒートサイクルの手段の要素技術として使用される「2点間の伝熱のオン(伝熱)・オフ(断熱)を行う手段」であり、熱リレーに用いることができる。この発明の熱スイッチは、一端を開口端とし他端を閉成端として軸沿いに延長した筒状の容器をなす第1のハウジングと、一端を開口端とし他端を閉成端として軸沿いに延長した筒状の容器をなすとともに内側に軸沿いに延長したウィックが固定具備された第2のハウジングとが、その開口端どうしが対向する向きで軸を一致させ、第2のハウジングが第1のハウジングに対して軸沿いに挿抜されるように相互に結合され、その内部には作動液が封入されてなり、第2のハウジングの第1のハウジングに対する前記挿抜によって、第1のハウジングの閉成端と第2のハウジングの閉成端との間の伝熱と断熱とを切り換える。
この発明のヒートサイクル射出冷却装置は、上記した加熱冷却装置の伝熱対象に接続する接続端部が、射出成形用の金型に熱的に接続されて構成される。
この発明の熱リレーは、2個のウィックレスヒートパイプを備え、その両者の一方の端部は同一の伝熱対象にウィック形ヒートパイプを介して接続するので、2個のウィックレスヒートパイプの端部の重力方向に係る相対的な順序を逆転させるだけで伝熱の方向を逆転させることが可能になる。よって、この発明の熱リレーを用いた加熱冷却装置は、加熱と冷却の切り換えを容易に行うことができる。また、この発明の熱スイッチは、この発明の熱リレーに適用が可能であり、第2のハウジングの第1のハウジングに対する挿抜(ハウジングの挿抜)という簡単な操作によって伝熱と断熱の切り換えができる。更に、この発明のヒートサイクル射出冷却装置は、この発明の加熱冷却装置を用いるので金型の加熱と冷却を簡単に切り換えることができる。
ウィックレスヒートパイプの作動状態を示す図。 ウィック形ヒートパイプの作動状態を示す図。 この発明の加熱冷却装置100の構成例と作動状態を示す図。 この発明の加熱冷却装置200の構成例と作動状態を示す図。 この発明の熱スイッチ260の作動状態を示す図。 図5の熱スイッチ260の天地を逆転した状態を示す図。 熱スイッチを用いた加熱冷却装置300の構成例と作動状態を示す図。 この発明のヒートサイクル射出成形装置400の模式図であり、金型加熱を示す図。 この発明のヒートサイクル射出成形装置400の模式図であり、金型冷却を示す図。 従来の金型温度調整装置900を示す図。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。この発明は、小型化できる効率的なヒートサイクルの手段を提供することを最終的な目的としている。そして、その目的を達成するための要素技術として、上述した何れかのヒートパイプの技術を応用した熱スイッチと熱リレーを提供する。この発明の熱スイッチを用いた熱リレーは、例えば加熱冷却装置の加熱と冷却の切り換えを容易に行うことができる。また、この発明の加熱冷却装置を利用すれば、金型の加熱と冷却を簡単に切り換えできるヒートサイクル射出成形装置を実現できる。
図3に、ウィックレスヒートパイプを2個用いた実施例1の加熱冷却装置の構成例と作動状態を示す。加熱冷却装置100は、熱リレー150、高温熱源33、低温熱源34で構成される。熱リレー150は、第1の端部31aと第2の端部31bを有する第1のウィックレスヒートパイプ31と,第1の端部32aと第2の端部32bを有する第2のウィックレスヒートパイプ32とを備える。なお、「端部」とは、細長い形状の長手方向の端の部分を示しており、先端だけでなくその近傍も含む意味である。本明細書では、熱の伝達に関わる端の部分を「端部」と呼ぶ。
第1と第2のウィックレスヒートパイプ31,32の両方の第1の端部31a,32aが、共に同一の伝熱対象35(ワークと称することもある)に接続し、第1のウィックレスヒートパイプ31の第1の端部31aと第2の端部31bとの重力方向に係る相対的な順序と、第2のウィックレスヒートパイプ32の第1の端部32aと第2の端部32bとの重力方向に係る相対的な順序とを、同時に反転させることで伝熱の態様を切り換えることを特徴とする。実施例1では、端部31a,32aが伝熱対象35(ワーク)と接続される接続端部である。以下、ワーク35と直接的または間接的に接続される端部を「接続端部」と呼ぶ。なお、「重力方向に係る相対的な順序」は、熱を伝達するサイクルが発生するか否かを決める順序であり、第1の端部31aと第2の端部31bとを結ぶ線が重力方向と一致している必要はない。以下により正確に説明する。重力の方向を法線方向とし第1の端部31aを含む第1の面と、重力の方向を法線方向とし第2の端部31bを含む第2の面とを考える。「重力方向に係る相対的な順序」とは、これらの面の上(または下)からの順序である。また、図3では、第1と第2のウィックレスヒートパイプ31,32の第1の端部31a,32aは、ワーク35に直接接続されている。しかし、例えば二股のシート状ヒートパイプを介して接続してもよい。
図3(a)は、伝熱対象35を高温に制御する伝熱の態様を示している。端部31aよりも重力方向に係る相対的順序が下の第1のウィックレスヒートパイプ31の第2の端部31bには、高温熱源33が接続される。同様に重力方向に係る相対的順序が下の第2のウィックレスヒートパイプ32の第2の端部32bには、低温熱源34が接続される。よって、第1のウィックレスヒートパイプ31はボトムヒートモードで作動して、高温熱源33の温度を伝熱対象35に伝達する。第2のウィックレスヒートパイプ32はトップヒートモードで作動するので、低温熱源34と伝熱対象35は断熱状態になる。なお、第1と第2のウィックレスヒートパイプ31,32の第2の端部31b,32bは、高温熱源33や低温熱源34と直接接続されなくても、例えば、それぞれシート状ヒートパイプを介して接続してもよい。
図3(b)は、伝熱対象35を低温に制御する伝熱の態様を示している。図3(b)は、図3(a)の第1の端部31a,32aと第2の端部31b,32bとの重力方向に係る相対的順序関係を、反転させたものである。よって、伝熱対象35が最も下に配置される。
この場合、第2のウィックレスヒートパイプ32がボトムヒートモードで作動し、第2のウィックレスヒートパイプ32の作動液4は伝熱対象35から熱を低温熱源34の温度になるまで奪う。一方、第1のウィックレスヒートパイプ31はトップヒートモードで作動するので断熱状態である。
このように実施例1の熱リレーは、重力方向に係る相対的な順序を反転させれば(例えば180°回転させれば)、簡単に伝熱の態様を切り換えることが可能である。また、この熱リレーを要素技術として用いた加熱冷却装置は、小型化できる効率的なヒートサイクルの手段として利用できる。
図4に実施例2の加熱冷却装置200の構成例と作動状態を示す。加熱冷却装置200は、熱リレー250、高温熱源55、低温熱源56で構成される。熱リレー250は、ウィック形ヒートパイプ50と、第1のウィックレスヒートパイプ53と、第2のウィックレスヒートパイプ54とを備える。
ウィック形ヒートパイプ50は、第1の端部50aと、第2の端部50bとを有する。第1のウィックレスヒートパイプ53と第2のウィックレスヒートパイプ54も同様にそれぞれ第1の端部53a,54aと第2の端部53b,54bとを有する。
高温熱源55は、第1のウィックレスヒートパイプ53の第2の端部53bに接続される。低温熱源56は、第2のウィックレスヒートパイプの第2の端部54bに接続される。
ウィック形ヒートパイプ50の第1の端部50aがワーク(伝熱対象)35に接続し、ウィック形ヒートパイプ50の第2の端部50bには、第1と第2のウィックレスヒートパイプ53,54の両方の第1の端部53a,54aが共に接続される。
この例では、ウィック形ヒートパイプ50の第2の端部50bと、第1のウィックレスヒートパイプ53の第1の端部53aの中心と第2のウィックレスヒートパイプ54の第1の端部54aの中心とを通る直線を軸として、第1のウィックレスヒートパイプ53と第2のウィックレスヒートパイプ54とが個別に回転可能にされている。
図4(a)はワーク35を冷却する態様を示す。第1のウィックレスヒートパイプ53をトップヒートモードにして断熱状態とし、第2のウィックレスヒートパイプ54をボトムヒートモード(上部に低温熱源を配置した状態、または下部に高温熱源を配置した状態)で作動させる。その結果、第1の端部50aにワーク35を接続させたウィック形ヒートパイプ50は、トップヒートモードでも上方の熱を下方に伝達することができるので、低温熱源56がワーク35の温度を低下させることができる。
図4(b)は断熱状態を示す。図4(b)は、図4(a)に対して第2のウィックレスヒートパイプ54を、その第1の端部54aとウィック形ヒートパイプ50の第2の端部50bとの接続部を回転軸として上下が反転するように回転させた状態である。この状態では、第1と第2のウィックレスヒートパイプ53,54は、共にトップヒートモードで作動するのでワーク35と、高温熱源55及び低温熱源56との間に熱の伝達は発生しない。
図4(c)はワーク35を加熱する態様を示す。図4(c)は、図4(b)に対して第1のウィックレスヒートパイプ53を、その第1の端部53aとウィック形ヒートパイプ50の第2の端部50bとの接続部を軸として上下が反転するように回転させた状態である。この状態では、第1のウィックレスヒートパイプ53がボトムヒートモード、第2のウィックレスヒートパイプ54がトップヒートモードで作動する。その結果、第1のウィックレスヒートパイプ53の高温熱源55が、ウィック形ヒートパイプ50を介してワーク35をその温度になるまで加熱できる。
このように、加熱冷却装置200は、第1のウィックレスヒートパイプ53の第1の端部53aと第2の端部53bとの重力方向に係る相対的順序と、第2のウィックレスヒートパイプ54の第1の端部54aと第2の端部54bとの重力方向に係る相対的順序とを個別に反転させることで、断熱と伝熱とを切り換えできる。なお、上記した回転軸に入力する駆動力は、人力、モータ、シリンダ等、何でも良い。また、高温熱源55及び低温熱源56の熱源は、流体に限らず電熱ヒータ、ペルチェ素子等を用いて簡単に構成できる。
さらには、図4の例では、第1と第2のウィックレスヒートパイプ53,54は、ウィック形ヒートパイプ50の第2の端部50bとの接続部を軸として回転した。しかし、回転の軸が存在することは必須ではなく、第1と第2のウィックレスヒートパイプ53,54の第2の端部53b,54bがウィック形ヒートパイプ50の第2の端部50bと接続された状態で、重力方向に係る相対的順序を反転できれば、他の方法でもよい。
このように実施例2の熱リレーは、重力方向に係る相対的な順序を反転させれば(例えば180°回転させれば)、簡単に伝熱の態様を切り換えることが可能である。また、この熱リレーを要素技術として用いた加熱冷却装置は、小型化できる効率的なヒートサイクルの手段として利用できる。
図5は、実施例3の熱スイッチ260の作動状態を示す図であり、(a)は伸縮方向に縮めた状態、(b)は伸張した状態を示している。熱スイッチ260は、一端を開口端61bとし他端を閉成端61aとして軸沿いに延長した筒状の容器をなす第1のハウジング61と、一端を開口端62cとし他端を閉成端62bとして軸沿いに延長した筒状の容器をなすと共に内側に軸沿いに延長したウィック62aが固定具備された第2のハウジング62とが、開口端61b、62c同士が対向する向きで軸を一致させ、第2のハウジング62が第1のハウジング61に対して軸沿いに挿抜されるように相互に結合され、その内部には作動液4’が封入されている。熱スイッチ260は、第1のハウジング61に、第2のハウジング62が挿抜するように結合されて伸縮自在とされたものである。
図5(a)に、トップヒートモード(上部に高温熱源を配置した状態、または下部に低温熱源を配置した状態)で、第1のハウジング61に第2のハウジング62を挿入した状態を示す。この状態では、伸縮方向で第1のハウジング61と第2のハウジング62のウィック62aは重なり合い、第1のハウジング61の第2のハウジング62が結合する側と反対側の端部近くに第1のハウジング62のウィック62aが到達する。したがって、作動液4’が高温熱源に接する位置まで引き上げられ、熱の移動が始まる。よって、熱スイッチ260はトップヒートモードでも熱を伝達する。なお、このとき熱スイッチ260は、全体としてウィック形ヒートパイプとして機能する態様となっている。つまり、図2を用いて説明したように、ボトムヒートモード(上部に低温熱源を配置した状態、または下部に高温熱源を配置した状態)でも熱を伝達できる。
図5(b)に、トップヒートモードで、第1のハウジング61から第2のハウジング62を抜き出した状態を示す。この状態では、作動液4’が高温熱源とはなれた状態となるので、熱が移動できない。よって、熱スイッチ260は断熱状態となる。なお、このとき熱スイッチ260は、全体としてウィックレスヒートパイプとして機能する態様となっている。つまり、図1を用いて説明したように、ボトムヒートモードの場合は熱を伝達できる。
図6に、熱スイッチ260を図5の場合と天地方向で逆転させ、トップヒートモードで使用する状態を示す。図6(a)に、上部に高温熱源を配置し、第1のハウジング61に第2のハウジング62を挿入した状態を示す。この状態では、第2のハウジング62に固定具備されたウィックの開口端側の先端が、少なくとも、第1のハウジング61の閉成端から、軸方向の重力によってその第1のハウジング61の閉成端側に作動液4’が偏在したと仮定した場合に液面が達する位置までの領域内に到達する。そして、ウィック62aによって作動液4’が高温熱源に接する位置まで引き上げられるので、熱の移動が始まる。よって、熱スイッチ260は熱を伝達する。なお、このとき熱スイッチ260は、全体としてウィック形ヒートパイプとして機能する態様となっている。つまり、図2を用いて説明したように、ボトムヒートモードでも熱を伝達できる。
図6(b)に、トップヒートモードで、第1のハウジング61に第2のハウジング62を抜き出した状態を示す。この状態では、第2のハウジング62に固定具備されたウィック62aの開口端側の先端が、少なくとも、第1のハウジング61の閉成端から、軸方向の重力によってその第1のハウジング61の閉成端側に作動液4’が偏在したと仮定した場合に液面が達する位置までの領域の外に引き出される。つまり、作動液4’がウィック62aに到達しないので、作動液4’は高温熱源に接する位置に到達できない。したがって、熱リレー250は断熱状態となる。なお、このとき熱スイッチ260は、全体としてウィックレスヒートパイプとして機能する態様となっている。つまり、図1を用いて説明したように、ボトムヒートモードの場合は熱を伝達できる。
このように実施例3の熱スイッチは、トップヒートモード(上部に高温熱源を配置した状態、または下部に低温熱源を配置した状態)で利用すれば、第2のハウジングの第1のハウジングに対する挿抜(ハウジングの挿抜)という簡単な操作によって伝熱の態様を切り換えることが可能である。
図7に、実施例4の加熱冷却装置300の構成例と作動状態を示す。加熱冷却装置300は、熱リレー350、高温熱源55、低温熱源56を備える。熱リレー350は、加熱冷却装置200と同じウィック形ヒートパイプ50と、2個の熱スイッチ83,84で構成される。ウィック形ヒートパイプ50は、第1の端部50aと第2の端部50bとを有する。第1の熱スイッチ83と第2の熱スイッチ84は、実施例3で説明した熱スイッチ260と同じである。
ウィック形ヒートパイプ50の第1の端部50aがワーク35に接続される。ウィック形ヒートパイプ50の第2の端部50bには、第1の熱スイッチ83の2つの端部(第1のハウジング83aの閉成端である端部83cと第2のハウジング83bの閉成端である端部83d)のうちの下方に配置される端部83dと、第2の熱スイッチ84の2つの端部(第1のハウジング84aの閉成端である端部84cと第2のハウジング84bの閉成端である端部84d)のうちの上方に配置される端部84cとが、共に接続される。
高温熱源55は、第1の熱スイッチ83の2つの端部(第1のハウジング83aの閉成端である端部83cと第2のハウジング83bの閉成端である端部83d)のうちの上方に配置される端部83cに接続される。低温熱源56は、第2の熱スイッチ84の2つの端部(第1のハウジング84aの閉成端である端部84cと第2のハウジング84bの閉成端である84d)のうちの下方に配置される端部84dに接続される。
加熱冷却装置300は、第1の熱スイッチ83の第2のハウジング83bに対する第1のハウジング83aの挿抜と、第2の熱スイッチ84の第1のハウジング84aに対する第2のハウジング84bの挿抜とを、各個別に行うことで伝熱の態様を切り換える。
図7(a)はワーク35を冷却する態様を示す。第1の熱スイッチ83は、その第1のハウジング83aが引き上げられて、全体としてウィックレスヒートパイプとして機能し、トップヒートモードにおける断熱状態となる(図5(b)参照)。一方、第2の熱スイッチ84は、第2のハウジング84bが押し込まれて、全体としてウィック形ヒートパイプとして機能し、熱を伝達する(図5(a)参照)。よって、第2の熱スイッチ84は熱循環が可能であり、ワーク35は、低温熱源56の温度になるまで冷却される。
図7(b)は断熱状態を示す。図7(b)は、第1の熱スイッチ83は、その第1のハウジング83aが引き上げられ(図7(a)と同じ)、第2の熱スイッチ84の第2のハウジング84bが引き下げられている。この結果、第2の熱スイッチ84も同じ断熱状態となる。図7(b)では、第1の熱スイッチ83も断熱状態なので、ワーク35と、高温熱源55及び低温熱源56との間に熱の伝達は発生しない。
図7(c)ワーク35を加熱する態様を示す。図7(c)は、第1の熱スイッチ83の第1のハウジング83aを押し下げられ、第2の熱スイッチ84の第2のハウジング84bが引き下げられている(図7(b)と同じ)。第1の熱スイッチ83全体としてウィック形ヒートパイプのトップヒートモードとしてし、熱を伝達する(図5(a)参照)。その結果、ワーク35は、高温熱源55の温度になるまで加熱される。
このように、加熱冷却装置300は、第1の熱スイッチ83又は第2の熱スイッチ84を個別に伸縮させることで伝熱の態様を切り換えることができる。つまり、実施例3で説明した熱スイッチを要素技術として用いた加熱冷却装置は、小型化できる効率的なヒートサイクルの手段として利用できる。
図8にこの発明のヒートサイクル射出成形装置400の模式図を示す。ヒートサイクル射出成形装置400は、実施例1で説明した熱リレー150を用いてヒートサイクル射出成形部86の金型86aの温度を制御するようにしたものである。
熱リレー150の第1のウィックレスヒートパイプ31の第2の端部31bと高温熱源33とは、シート状ヒートパイプ81で熱的に接続され、第2のウィックレスヒートパイプ32の第2の端部32bと低温熱源34とは、シート状ヒートパイプ80で接続される。それぞれの第1の端部31a,32aには、二股のシート状ヒートパイプ82の二股に分かれた先端の一方がそれぞれ接続され、その他方の端が金型86aに接続される。
シート状ヒートパイプ80,81,82には、例えば、参考文献(特開2008−82698号公報)で公知の「薄型シート状ヒートパイプ」を用いることができる。このヒートパイプは、薄型のシート状であるので柔軟性があり変形が可能である。
図8は、金型86aを加熱する態様を示す。第1のウィックレスヒートパイプ31の第2の端部31bと第2のウィックレスヒートパイプ32の第2の端部32bの重力方向に係る相対的な位置が、それぞれの第1の端部31a,32aよりも低くなるように傾けられている。そのため、第1のウィックレスヒートパイプ31はボトムヒートモードとなるので熱を伝達し、第2のウィックレスヒートパイプ32はトップヒートモードとなるので断熱状態となる。その結果、高温熱源33の熱が、金型86aに伝達される。
図9は、金型86aを冷却する態様を示す。金型86aの冷却する場合は、図8と逆に、第1のウィックレスヒートパイプ31の第2の端部31bと第2のウィックレスヒートパイプ32の第2の端部32bの重力方向に係る相対的な位置が、それぞれの第1の端部31a,32aよりも高くなるように傾けられる。この場合、第2のウィックレスヒートパイプ32がボトムヒートモードとなるので熱を伝達し、第1のウィックレスヒートパイプ31はトップヒートモードとなるので断熱状態となる。したがって、今度は金型86aが低温熱源34の温度になるまで冷却される。この時、高温熱源33と低温熱源34とをヒートポンプ85で連結することで、金型86aの熱エネルギーを高温熱源33に回収することができ、熱効率を向上させることが可能である。
以上述べたように、この発明のヒートサイクル射出成形装置400は、熱リレー150の傾斜の向きを変えるだけで金型86aの加熱と冷却を切り換えることができる。なお、従来技術で説明したように既存のヒートサイクル成形では温調設備として、加熱用に加熱用温調器、冷却用に冷却用温調器を必要とする。そして、金型に加熱・冷却用に2回路の水管を設けるか、1回路の水路に流す液体の温度をバルブで切り換える。
この水管が、微小部品を成形する際の障害となっていた。微小部品を成形するには当然にその成形用の型も微小である必要がある。しかし、その微小な型に水管を通すことは困難である。その点、この発明のヒートサイクル射出成形装置400は、金型の温度制御をシート状ヒートパイプを介して行うので微小な型の温度制御に適し、局所的な加熱・冷却を可能にする。
以上述べたように、この発明の熱リレーは、2個のヒートパイプの熱の指向性を利用して熱を中継するものである。また、この発明の熱スイッチは、簡単な操作で伝熱と断熱の態様を切り換えることができる。また、その熱リレーを用いた加熱冷却装置は、熱リレーの端部の重力方向に係る相対的な位置を同時に反転させることで、対象物の温度を制御する。よって、熱源を接続し直す必要が無いので、比較的簡単な機構による温度制御を可能にする。
なお、この発明のヒートサイクル射出成形装置400の高温熱源33と低温熱源34とをヒートポンプで連結する例を説明したが、それらを単独の熱源としても微小な型の温度制御に適する効果を奏する点で変わりはない。また、この発明の熱リレー150(図3)の説明において、伝熱の態様を切り換えるのに重力に対するその向きを180°回転させる例で説明を行ったが、ヒートサイクル射出成形装置400で説明したように、熱リレー150の傾斜を逆転させるだけで伝熱の態様を切り換えることができる。
2 断熱層
3,31,32,53,54 ウィックレスヒートパイプ
4,4’ 作動液
5 蒸気流
6 ウィック形ヒートパイプ
6a,62a ウィック
10 金型
30 流路制御装置
31a,31b,32a,32b,50a,50b,53a,53b,54a,54b 端部
33,55 高温熱源
34,56 低温熱源
35 伝熱対象(ワーク)
40 金型温調用流路
42,43,44,45,46,47 配管
50 ウィック形ヒートパイプ
51 加熱用温調器
60 冷却用温調器
61,62 ハウジング
61a,62b 閉成端
61b,62c 開口端
74I,74O,75I,75O,76I,76O 三方弁
80,81,82 シート状ヒートパイプ
83,84,260 熱スイッチ
83a,83b,84a,84b ハウジング
83c,83d,84c,84d 端部
85 ヒートポンプ
86 ヒートサイクル射出成形部
86a 金型
100,200,300 加熱冷却装置
150,250,350 熱リレー
400 ヒートサイクル射出成形装置
900 金型温度調整装置

Claims (7)

  1. 一端を開口端とし他端を閉成端として軸沿いに延長した筒状の容器をなす第1のハウジングと、一端を開口端とし他端を閉成端として軸沿いに延長した筒状の容器をなすとともに内側に軸沿いに延長したウィックが固定具備された第2のハウジングとが、その開口端どうしが対向する向きで軸を一致させ、第2のハウジングが第1のハウジングに対して軸沿いに挿抜されるように相互に結合され、その内部には作動液が封入されてなり、
    第2のハウジングの第1のハウジングに対する前記挿抜によって、第1のハウジングの閉成端と第2のハウジングの閉成端との間の伝熱と断熱とを切り換えるよう構成したことを特徴とする熱スイッチ。
  2. 請求項に記載される熱スイッチであって、
    前記第2のハウジングの前記第1のハウジングに対する前記挿抜の挿入状態においては、前記第2のハウジングに固定具備された前記ウィックの開口端側の先端が、少なくとも、前記第1のハウジングの前記閉成端から、前記軸方向の重力によってその第1のハウジングの閉成端側に前記作動液が偏在したと仮定した場合に液面が達する位置までの領域内に到達し、
    前記第2のハウジングの前記第1のハウジングに対する前記挿抜の抜出状態においては、前記第2のハウジングに固定具備された前記ウィックの開口端側の先端が、少なくとも、前記第1のハウジングの前記閉成端から、前記軸方向の重力によってその第1のハウジングの閉成端側に前記作動液が偏在したと仮定した場合に液面が達する位置までの領域の外に引き出されることを特徴とする熱スイッチ。
  3. 第1の端部と第2の端部とを有するウィック形ヒートパイプと、何れも請求項に記載される熱スイッチである第1の熱スイッチと第2の熱スイッチとを備えてなり、
    ウィック形ヒートパイプの第1の端部が伝熱対象に接続する接続端部を構成し、
    ウィック形ヒートパイプの第2の端部には、第1の熱スイッチの前記第1のハウジングの閉成端と前記第2のハウジングの閉成端との2つの端部のうちの重力方向に係り相対的に下方に配置される端部と、第2の熱スイッチの前記第1のハウジングの閉成端と前記第2のハウジングの閉成端との2つの端部のうちの重力方向に係り相対的に上方に配置される端部とが、共に接続され、
    第1の熱スイッチの前記第2のハウジングの前記第1のハウジングに対する前記挿抜と、第2の熱スイッチの前記第2のハウジングの前記第1のハウジングに対する前記挿抜とを、各個別に行うことで、伝熱の態様を切り換えることを特徴とする熱リレー。
  4. 第1の端部と第2の端部とを有するウィック形ヒートパイプと、何れも請求項に記載される熱スイッチである第1の熱スイッチと第2の熱スイッチと、第1の熱スイッチの前記第1のハウジングの閉成端と前記第2のハウジングの閉成端との2つの端部のうちの重力方向に係り相対的に上方に配置される端部に接続される高温熱源と、第2の熱スイッチの前記第1のハウジングの閉成端と前記第2のハウジングの閉成端との2つの端部のうちの重力方向に係り相対的に下方に配置される端部に接続される低温熱源とを備えてなり、
    ウィック形ヒートパイプの第1の端部が伝熱対象に接続する接続端部を構成し、
    ウィック形ヒートパイプの第2の端部には、第1の熱スイッチの前記2つの端部のうちの重力方向に係り相対的に下方に配置される端部と、第2の熱スイッチの前記2つの端部のうちの重力方向に係り相対的に上方に配置される端部とが、共に接続され、
    第1の熱スイッチの前記第2のハウジングの前記第1のハウジングに対する前記挿抜と、第2の熱スイッチの前記第2のハウジングの前記第1のハウジングに対する前記挿抜とを、各個別に行うことで、前記伝熱対象に対する前記高温熱源による加熱と前記低温熱源による冷却と前記高温熱源及び前記低温熱源に対する断熱とを切り換えることを特徴とする切り換え可能な加熱冷却装置。
  5. 請求項に記載した加熱冷却装置の伝熱対象に接続する接続端部が、射出成形用の金型に熱的に接続されてなるヒートサイクル射出成形装置。
  6. 請求項に記載したヒートサイクル射出成形装置において、前記接続端部と前記金型とがシート状ヒートパイプによって熱的に接続されることを特徴とするヒートサイクル射出成形装置。
  7. 請求項又はに記載したヒートサイクル射出成形装置を利用して、前記金型に対する加熱と冷却とを切り換えることを特徴とするヒートサイクル射出成形方法。
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