以下にさらに説明するとおり、本発明者は、金属を生理活性物質、これだけに限らないが、特に経口投与を意図した生理活性物質に配位することで、前記生理活性物質の薬物動態学的(pharmacokinetic:PK)性質を調節することができ、未配位の生理活性物質に対して薬物動態学的性質の改善を示す化合物ができることを発見した。一部の実施形態では、アジュバントも前記金属に配位し、未配位の生理活性物質に対してPK性質が改善を示した化合物となる。本発明者はさらに、金属、これだけに限らないが、特にビスマスへの配位がレボドパ、トリヨードサイロニン、メサラミン、およびジクロロ酢酸の血漿濃度−時間曲線を調節し、上昇させる有効な方法を提供することをさらに発見した。さらに、ビスマスへの生理活性物質の配位により、化合物が、患者の消化(gastrointestinal:GI)管から薬物を徐々に放出する一種の消化管デポーとして挙動することを発見した。
この説明中および添付の請求項において、以下の定義は理解されるものとする。
「ビスマス含有化合物」と関連して使用される「〜に配位した」という表現および「配位」の用語は、ビスマス原子または鉄とヘテロ原子含有配位子との間に存在する可能性がある、様々な種類の結合力を含む。これらの結合力は、これに限定されるものではないが、配位共有結合、イオン結合、キレート化、イオン対形成など、およびその組み合わせを含む。
本明細書で使用する「ビスマス含有化合物」の表現は、単量体、オリゴマー、および重合体構造を指す。ビスマス錯体が架橋形成および/または重合する周知の傾向を考慮し、本明細書の「ビスマス含有化合物」の言及は、別個の単量体錯体および二次元シート状構造および/または三次元構造を含むことは理解される。さらに、そのような化合物の結合の性質を断定的および明らかに特徴付ける際には困難があることを考慮し、「ビスマス含有化合物」の表現は、「ビスマス錯体」、「ビスマス配位錯体」、「ビスマス塩」などの表現を含み、これらと同義で使用される一般的記述として表される。
「生理活性物質」の表現は、一般に、制限なく、直接または間接的に、患者における生理反応、望ましくは必ずしも治療上有効な反応ではない反応を誘発する化合物を指す。本明細書で使用するとおり、「生理活性物質」の表現は、「医薬品」の表現および「薬物」の用語と同義で使用される。
「配位ポリマー」の表現は、金属原子、イオン、またはクラスターを中心とした一次元、二次元、または三次元ネットワークの集合を指す。
一般的な導入として、本教示の金属含有化合物は、第1の金属および前記第1の金属に配位した生理活性物質を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物の薬物動態学的性質が、未配位の状態の前記生理活性物質の対応する薬物動態学的性質と比較して調節される。一部の実施形態では、前記金属含有化合物がさらに第2の金属を含む。一部の実施形態では、前記第2の金属に前記生理活性物質も配位している。一部の実施形態では、前記第1の金属と前記第2の金属が異なる。
一部の実施形態では、前記第1の金属と前記第2の金属が第IIA属金属、p−ブロック金属、遷移金属、ランタニド、およびアクチニドから独立して選択される。一部の実施形態では、前記第1の金属および/または前記第2の金属がp−ブロック金属である。一部の実施形態では、前記第1の金属と前記第2の金属がそれぞれ独立して第IIIA属金属、第IVA属金属、および第VA属金属から選択される。一部の実施形態では、前記第1の金属および/または前記第2の金属がそれぞれ独立して第VA属金属である。一部の実施形態では、前記第1の金属および/または前記第2の金属がそれぞれ独立してビスマスである。
本教示のビスマス含有化合物には、ビスマスと前記ビスマスに配位した生理活性物質を含む。一部の実施形態では、前記ビスマス含有化合物の薬物動態学的性質が、未配位の状態の前記生理活性物質の対応する薬物動態学的性質と比較して調節される。一部の実施形態では、前記ビスマス含有化合物がさらに第2の金属を有する。一部の実施形態では、前記第2の金属に前記生理活性物質も配位している。一部の実施形態では、前記第2の金属がビスマスとは異なる。
金属(例えば、ビスマスなど)と配位し、安定な化合物を形成することができる生理活性物質の方法はすべて、本教示に従い、特に、これだけに限らないが、そうでない場合は単回速放性(immediate release:IR)製剤により達成できるよりも長い治療濃度域で、最小限の有効臨床血漿濃度以上を維持する必要がある薬物に利用するために検討される。使用が検討された代表的な薬物は、これに限定されるものではないが、消化(GI)管治療薬(例えば、制酸薬、還流抑制剤、整腸剤、抗ドパミン作用薬、プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitors:PPIs)、H2受容体拮抗薬、細胞保護剤、プロスタグランジン類似体、緩下薬、鎮痙剤、止瀉薬、胆汁酸金属イオン封鎖剤、オピオイドなど)、心血管系治療薬(例えば、β受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿薬、強心配糖体、抗不整脈薬、硝酸塩、抗狭心症薬、血管収縮薬、血管拡張薬、末梢賦活薬など)、降圧薬(例えば、ACE阻害剤、アンギオテンシン受容体遮断薬、α遮断薬など)、凝固薬(例えば、抗凝固剤、ヘパリン、抗血小板薬、線維素溶解薬、抗血友病因子、止血薬など)、アテローム性動脈硬化/コレステロール阻害薬(例えば、脂質低下薬、スタチンなど)、中枢神経系作用薬(例えば、睡眠薬、麻酔薬、抗精神病薬、これに限定されるものではないが、三環系抗うつ薬を含む抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害薬など)、制吐薬、抗けいれん薬、抗てんかん薬、精神安定剤、バルビツール酸塩、これに限定されるものではないが、パーキンソン病治療薬などを含む運動障害治療薬、これに限定されるものではないが、アンフェタミンを含む刺激薬、ベンゾジアゼピン、シクロピロロン、ドパミン拮抗薬、抗ヒスタミン薬、コリン作動薬、抗コリン作用薬、催吐薬、カンナビノイド、5−HTセロトニン拮抗薬など)、鎮痛剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、つまりNSAID、オピオイド、これに限定されるものではないが、パラセタモール、三環系抗うつ薬、抗痙攣薬などを含む様々なオーファンドラッグなど)、筋骨格障害治療薬(例えば、これに限定されるものではないが、COX−2選択的阻害薬などを含むNSAID、筋弛緩薬、神経筋治療薬、抗コリンエステラーゼなど)、眼治療薬(例えば、アドレナリン作動性神経細胞遮断薬、収斂剤、眼潤滑剤、散瞳薬、毛様筋調節薬、これに限定されるものではないが、アドレナリン作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬/高浸透圧薬、コリン作動薬、縮瞳薬、副交感神経作動薬、プロスタグランジン作動薬/プロスタグランジン阻害薬、ニトログリセリンなどを含む抗緑内障薬)、局所麻酔薬(例えば、ベンゾカイン、ブタンベン、ジブカイン、リドカイン、オキシブプロカイン、プラモキシン、プロパラカイン、プロキシメタカイン、テトラカインなど)、交感神経刺激薬、副交感神経抑制薬、抗菌薬(例えば、抗生物質、局所抗生物質、サルファ剤、アミノグリコシド、フルオロキノロン類など)、抗ウイルス剤、眼、鼻、および喉の治療薬(例えば、交感神経刺激薬、抗ヒスタミン剤、抗コリン作用薬、NSAID、ステロイド、防腐剤、局所麻酔薬、抗真菌薬、耳垢水など)、呼吸器系治療薬(例えば、気管支拡張剤、NSAID、抗アレルギー薬、鎮咳薬、粘液溶解薬、充血除去剤、コルチコステロイド、β−2−アドレナリン作動薬、抗コリン作用薬、ステロイドなど)、内分泌系疾患治療薬(例えば、アンドロゲン、抗アンドロゲン、ゴナドトロピン、コルチコステロイド、ヒト成長ホルモン、インスリン、これに限定されるものではないが、スルホニル尿素、ビグアニド/メトホルミン、チアゾリジンジオン、インスリンなどを含む抗糖尿病薬、甲状腺ホルモン、抗甲状腺薬、カルシトニン、ジホスホン酸塩、バソプレシン類似体など)、生殖器系および泌尿器系治療薬(例えば、抗真菌薬、アルカリ化物質、キノロン、抗生物質、コリン作動薬、抗コリン作用薬、抗コリンエステラーゼ、鎮痙剤、5−α還元酵素阻害剤、選択的α−1遮断薬、シルデナフィル、不妊治療薬など)、避妊薬(例えば、ホルモン避妊薬など)、産科および婦人科で使用する薬物(例えば、NSAID、抗コリン作用薬、止血剤、抗線維素溶解薬、ホルモン置換療法(hormon replacement therapy:HRT)、骨調整剤、β−受容体作動薬、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(lutenizing−hormone−releasing hormone:LHRH)、ゴナドトロピン放出阻害薬、プロゲストゲン、ドパミン作動薬、エストロゲン、プロスタグランジン、ゴナドレリン、ジエチルスチルベストロールなど)、皮膚治療薬(例えば、皮膚軟化剤、鎮痒薬、抗真菌薬、殺菌薬、疥癬虫殺虫剤、シラミ駆除剤、タール製品、ビタミンA誘導体、ビタミンD類似体、角質溶解薬、研磨剤、全身抗生物質、局所抗生物質、ホルモン、痂皮形成抑制剤(desloughing agents)、滲出吸収剤、線維素溶解薬、タンパク分解剤、日焼け防止薬、発汗抑制剤、コルチコステロイドなど)、感染および寄生治療薬(例えば、抗生物質、これに限定されるものではないが、イミダゾール、ポリエンなどを含む抗真菌薬、抗ハンセン菌薬、抗結核薬、抗マラリア薬、駆虫薬、抗アメーバ薬、抗ウイルス薬、抗原虫薬、駆虫薬など)、抗炎症薬(例えば、NSAIDs、コルチコステロイドなど)、免疫系治療薬(例えば、ワクチン、免疫グロブリン、免疫抑制剤、インターフェロン、モノクローナル抗体など)、アレルギー治療薬(例えば、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、NSAIDs、肥満細胞阻害薬など)、栄養剤(例えば、強壮剤、鉄剤、電解液、非経口栄養剤、ビタミン、抗肥満薬、同化薬、造血薬、食品薬(food product drugs)など)、抗腫瘍薬(例えば、細胞毒性薬、治療抗体、性ホルモン、アロマターゼ阻害薬、ソマトスタチン阻害薬、組み換えインターロイキン、G−CSF、エリスロポエチンなど)、安楽死薬(euthanaticum agents)など、およびその組み合わせを含む。
一部の実施形態では、本教示で使用が検討される代表的な生理活性物質に、これに限定されるものではないが、抗感染薬(例えば、抗アメーバ薬、アミノグリコシド、駆虫薬、これに限定されるものではないが、アゾール系抗真菌薬、エキノカンジン、ポリエンなどを含む抗真菌薬、これに限定されるものではないが、抗マラリア薬の併用、抗マラリア薬キノリンなどを含む抗マラリア薬、これに限定されるものではないが、アミノサリチル酸塩、抗結核薬の併用、ニコチン酸誘導体、リファマイシン誘導体、ストレプトマイセス誘導体などを含む抗結核薬、これに限定されるものではないが、アダマンタン抗ウイルス薬、抗ウイルス薬の併用、抗ウイルス薬インターフェロン、ケモカイン受容体拮抗薬、インテグラーゼ鎖移転阻害薬、ノイラミニダーゼ阻害剤、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(non−nucleoside reverse transcriptase inhibitors:NNRTIs)、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(nucleoside reverse transcriptase inhibitors:NRTIs)、プロテアーゼ阻害薬、プリン・ヌクレオシドなどを含む抗ウイルス薬、カルバペネム、これに限定されるものではないが、第一世代セファロスポリン、第二世代セファロスポリン、第三世代セファロスポリン、第四世代セファロスポリン、次世代セファロスポリンなどを含むセファロスポリン、糖ペプチド抗生物質、グリシルグリシン、レプロスタティクス(leprostatics)、リンコマイシン誘導体、リポグリコペプチド、これに限定されるものではないが、ケトライド、マクロライドなどを含むマクロライド誘導体、抗生物質、これに限定されるものではないが、アミノペニシリン、抗緑膿菌性ペニシリン、β−ラクタマーゼ阻害薬、天然ペニシリン、ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンなどを含むペニシリン、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、尿路抗感染薬など、抗コリン作用薬/鎮痙剤、抗糖尿病薬(例えば、α−グリコシダーゼ阻害薬、抗糖尿病薬の併用、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害薬、メグリチニド、非スルホニル尿素、スルホニル尿素、チアゾリジンジオンなど)、抗痛風薬、抗脂質異常症薬(例えば、抗脂質異常症薬の併用、胆汁酸金属イオン封鎖剤、コレステロール吸収阻害剤、フィブリン酸誘導体、スタチンなど)、抗高尿酸血症薬、抗悪性腫瘍薬(例えば、アルキル化剤、抗CTLA−4モノクローナル抗体、抗生物質/抗悪性腫瘍薬、代謝拮抗薬、抗腫瘍性解毒剤、抗腫瘍性インターフェロン、抗腫瘍性モノクローナル抗体、BCR−ABLチロシンキナーゼ阻害薬、CD20モノクローナル抗体、CD33モノクローナル抗体、CD52モノクローナル抗体、EGFR阻害薬、HER2阻害薬、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ホルモン/抗悪性腫瘍薬、混合型抗悪性腫瘍薬、分裂抑制剤、mTOR阻害薬、mTORキナーゼ阻害薬、マルチキナーゼ阻害薬、三官能性モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害薬、VEGF/VEGFR阻害薬など)、心血管作動薬(例えば、高血圧性緊急症用の薬物、肺高血圧症用の薬物、アルドステロン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII阻害薬、中枢性抗アドレナリン作動薬、末梢性抗アドレナリン作動薬、α−アドレナリン受容体拮抗薬、これに限定されるものではないが、硝酸塩などを含む抗狭心症薬、これに限定されるものではないが、I群抗不整脈薬、II群抗不整脈薬、III群抗不整脈薬、IV群抗不整脈薬、V群抗不整脈薬などを含む抗不整脈薬、変時性抗コリン作用薬、降圧薬の併用、これに限定されるものではないが、心選択性β遮断薬、非心選択性β遮断薬などを含むβ−抗アドレナリン作動薬、カルシウムチャネル遮断薬、これに限定されるものではないが、炭酸脱水酵素阻害薬、ループ利尿薬、カリウム保持性利尿薬、チアジド系利尿薬,などを含む利尿薬、変力薬、末梢血管拡張薬、プロスタグランジンD2拮抗薬、レニン阻害薬、硬化剤、血管拡張剤、バソプレシン拮抗薬、昇圧剤など)、中枢神経系薬(例えば、これに限定されるものではないが、鎮痛剤の併用、抗片頭痛薬、cox−2阻害薬、麻薬性鎮痛薬の併用、麻薬性鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬、サリチル酸塩などを含む鎮痛薬、食欲抑制剤、これに限定されるものではないが、バルビツレート抗けいれん薬、ベンゾジアゼピン系抗けいれん薬、カルバメート抗けいれん薬、炭酸脱水酵素阻害薬抗けいれん薬、ジベンザゼピン抗けいれん薬、脂肪酸誘導体抗けいれん薬、γ−アミノ酪酸類似体、γ−アミノ酪酸再取り込み阻害薬、γ−アミノ酪酸アミノ基転移酵素阻害薬、ヒダントイン抗けいれん薬、オキサゾリジンジオン抗けいれん薬、ピロリジン抗けいれん薬、スクシンイミド抗けいれん薬、トリアジン抗けいれん薬、尿素抗けいれん薬などを含む抗けいれん薬などを含む抗けいれん薬、これに限定されるものではないが、5HT3受容体拮抗薬、抗コリン作用性制吐薬、フェノチアジン系制吐薬などを含む制吐薬/抗めまい薬、これに限定されるものではないが、抗コリン性抗パーキンソン薬、ドパミン作動制抗パーキンソン病薬などを含む抗パーキンソン薬、これに限定されるものではないが、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピンなどを含む抗不安薬、鎮静薬、および睡眠薬、コリン作動薬、コリンエステラーゼ阻害剤、CNS刺激薬、アルコール依存症に使用する薬物、これに限定されるものではないが、神経筋遮断薬、骨格筋弛緩薬の併用、骨格筋弛緩薬などを含む筋弛緩薬)、凝固調節因子(例えば、これに限定されるものではないが、クマリンおよびインダンジオン、第Xa因子阻害薬、ヘパリン、トロンビン阻害薬などを含む抗凝固剤、これに限定されるものではないが、糖タンパク血小板阻害薬、血小板凝集阻害薬などを含む抗血小板薬、血小板刺激薬、血栓溶解剤など)、胃腸薬(例えば、5−アミノサリチル酸、止瀉薬、これに限定されるものではないが、クロライド・チャネル活性剤、末梢オピオイド受容体遮断薬、セロトニン作動性神経腸管モジュレーターなどを含む機能性腸疾患薬、胆石安定化剤、GI刺激薬、H.ピロリ除菌薬、H2拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬など)、甲状腺剤、免疫グロブリン、免疫学的薬物、免疫抑制薬、代謝製剤(例えば、骨吸収阻害薬、末梢性抗肥満薬など)、解毒薬、乾癬治療薬、抗リウマチ薬、キレート剤、コリン作動性筋刺激薬、泌尿生殖器系薬物(例えば、性交不能治療薬、子宮収縮抑制薬、尿中抗けいれん薬、尿中pH調節剤、子宮収縮薬など)、抗精神病薬、経鼻抗ヒスタミン薬および充血除去剤、鼻用ステロイド薬、精神治療薬(例えば、これに限定されるものではないが、モノアミン酸化酵素阻害薬、フェニルピペラジン系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、四環系抗うつ薬、三環系抗うつ薬などを含む抗うつ薬、これに限定されるものではないが、非定型抗精神病薬、フェノチアジン系抗精神病薬、チオキサンテンなどを含む抗精神病薬、ノレピネフリン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン−ドパミン再取り込み阻害薬、精神治療薬の併用など)、呼吸器薬(例えば、気管支喘息治療薬の併用、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、これに限定されるものではないが、アドレナリン作動性気管支拡張薬、抗コリン性気管支拡張薬、気管支拡張薬の併用、メチルキサンチンなどを含む気管支拡張薬、充血除去剤、去痰薬、ロイコトリエン調節因子、上気道薬の併用など)、殺精子剤、局所薬(例えば、肛門直腸製剤、防腐薬および殺菌薬、これに限定されるものではないが、局所ざ瘡薬、局所麻酔薬、局所抗感染薬、局所抗生物質、局所抗真菌薬、局所抗ヒスタミン薬、局所乾癬治療薬、局所抗ウイルス薬、局所収斂薬、局所創傷清拭薬、局所脱色素薬、局所皮膚軟化剤、局所角質溶解薬、局所ステロイド、局所ステロイドと抗感染薬などを含む皮膚病薬、口および喉製剤、これに限定されるものではないが、感染症治療薬などを含む点鼻剤、これに限定されるものではないが、耳垢水、耳麻酔薬、耳抗感染薬、耳ステロイド、耳ステロイドと抗感染薬などを含む耳製剤、これに限定されるものではないが、膣抗感染薬などを含む膣製剤)などおよびその組み合わせを含む。
一部の実施形態では、本教示に従うビスマス含有化合物の形成に使用する前記生理活性物質がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄またはセレニウム)を含む。一部の実施形態では、前記生理活性物質が前記第一のヘテロ原子に近接近してさらにヘテロ原子を含み、これがビスマスと結合またはそうでない場合はキレートし、配位化合物を形成することができる。この配列の官能基を有する生理活性物質はビスマスと結合するように構成され、結果として生じたビスマスおよび前記生理活性物質を含む化合物は、生態系でもここでの加水分解を調節できるほど十分安定であり、前記生理活性物質の性能が十分調節される。多座配位子によって与えられるそのような加水分解安定性は、配位子のpKaを低下させることで後押しされ、配位金属存在下、弱い塩基(例えば、トリエチルアミン)を用いるとアミドも脱プロトンすることができる。したがって、プロトン化したヘテロ原子を持つ生理活性物質は、通常、典型的な生物学的pHでイオン化し、共有結合により配位した金属で置換されたプロトンを有することができ、関与するヘテロ原子の追加キレートにより共有結合性を高めることができる。
一部の実施形態では、ビスマスに結合する前記生理活性物質のヘテロ原子の少なくとも1つが酸素、窒素、硫黄、またはセレニウムである。一部の実施形態では、ビスマス以外の金属と錯体を形成するために使用される生理活性物質がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、またはセレニウム)にプロトンを含み、pKaは水よりわずかに高い、または低く、最初のプロトン化ヘテロ原子に近接してさらにヘテロ原子を有し、プロトン化ヘテロ原子は前記金属との結合またそうでない場合はキレート化に関与することができる。
一部の実施形態では、前記金属含有化合物がビスマスおよび生理活性物質を有し、少なくとも1つのヘテロ原子が前記ビスマスと配位するように構成されている。一部の実施形態では、前記ヘテロ原子が生理活性物質に結合した官能基の一部である。代表的な官能基には、これに限定されるものではないが、環状および非環状アミン、アミド、アルコキシド、カルバメート、ヒドロキサメート、チオカルバメート、ウレイド、ジチオカルバメート、エノラート、カルボキシラート、アミノカルボキシラート、アミノアルコキシド、ジオール、ヒドロキシカルボキシラート、スルフィナート、スルフォナート、チオラート、メルカプトカルボキシラート、チエノラート、ジチオカルボキシラート、ジチオカルバメート、ジチオカルボナート、ジチオフォスフィナート、ジチオフォスフェートなど、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、代表的な官能基に、これに限定されるものではないが、トロポロナート、ベンゼンチオラート、ベンゼンスルフィナート、ピリジンカルボキシラート、カテコラートなど、およびその組み合わせを含む。
一部の実施形態では、ビスマスと配位するように構成された前記ヘテロ原子が酸素、硫黄、セレニウム、または窒素である。一部の実施形態では、前記ヘテロ原子が酸素であり、前記酸素を提供する官能基がカルボキシル基またはカテコールヒドロキシ基である。本教示にしたがって使用することを意図したカテコール基またはジオール基を含む代表的な生理活性物質は、これに限定されるものではないが、リファキシミン、アポモルフィン、エピネフリン、エンタカポン、ベンセラジド、トルカポン、マソプロコール、ケルセチン、コーヒー酸、イソプレナリン、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、前記官能基がカルボキシル基である。本教示にしたがって使用することを意図したカルボキシル基を含む代表的な生理活性物質は、これに限定されるものではないが、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンE1、ニレプロスト、カプトプリル、ミコフェノール酸(ミコフェノール酸塩)、トラネキサム酸、エナラプリル酸、バルプロ酸、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、バクロフェン、5−アミノサリチル酸、メチルドーパ、レボドパ、トラネキサム酸、フルセミド、メトトレキセート、クロラムブシル、6−アミノカプロン酸、トレチノイン、D,L−2,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、エタクリン酸、ペニシラミン、プロベニシド(probenicid)、カルビドパ、メルファラン、フシジン酸、L−システイン、7−テオフィリン酢酸、ニコチン酸、L−サイロキシン、ブメタニド、葉酸、レチノイン酸、イソニペコチン酸、グルタチオン、アシビシン、ロフラゼプ酸塩、イオパノ酸、フェニルアラニルアラニン、システアミン、N−アセチルシステイン、チクリナフェン、フォリン酸、オロチン酸、ビオチン、オレイン酸、リノール酸、コール酸、サラゾスルファピリジン、アゾジサール、エトレチン酸(etretinic aid)、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、前記生理活性物質がトリヨードサイロニン、レボドパ、ジクロアセテート、メサラミン、およびその組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態では、前記生理活性物質がレボドパである。
一部の実施形態では、前記生理活性物質、および一部の実施形態ではビスマスである前記金属が単一の結合点で配位しているが、他の実施形態では、前記生理活性物質および前記金属が複数の結合点で配位している(例えば、多座配位子)。
一部の実施形態では、一部の実施形態ではビスマス含有化合物である、前記金属含有化合物が、さらに前記金属に配位したアジュバントを含む。一部の実施形態では、前記アジュバントが、脂質、炭水化物、アミノ酸、生体接着ポリマー、ペプチド、胆汁酸、およびその組み合わせから成る群から選択される。一部の実施例では、前記アジュバントが炭水化物である。一部の実施形態では、前記アジュバントがアスコルビン酸、クエン酸、アルギニン、グリシン、ロイシン、カルノシン、フェルラ酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キトサン、キチン、ポリアクリル酸、ペクチン、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびその組み合わせから成る群から選択される。
さらに一般的な導入として、本教示に従う配位ポリマーには、金属含有化合物を含むポリマー基質を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物がビスマスおよび前記ビスマスに配位した生理活性物質を含むビスマス含有化合物である。一部の実施形態では、前記生理活性物質が前記金属と配位するように構成された少なくとも1つのヘテロ原子を含み、トリヨードサイロニン、レボドパ、ジクロアセテート、メサラミン、およびその組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態では、前記ポリマーがアルギン酸ヒドロゲルを含む。
さらに一般的な導入として、本教示に従う生理活性物質の薬物動態学的性質を調節する方法には、前記生理活性物質を金属に配位し、金属含有化合物を形成する工程、および前記金属含有化合物を患者に投与する工程を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物から放出された前記生理活性物質の薬物動態学的性質が、未配位の状態の前記生理活性物質に対して調節される。一部の実施形態では、前記金属含有化合物はビスマス含有化合物である。
一部の実施形態では、調節される前記薬物動態学的性質が、放出期間、ピーク血漿濃度、吸収、生物学的利用能、吸収のばらつき、毒性およびその組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態では、一部の実施形態で、ビスマス含有化合物である前記金属含有化合物から放出される前記生理活性物質が、未配位の状態の生理活性物質と比較して、放出期間、ピーク血漿濃度、吸収、および生物学的利用能の1若しくはそれ以上の向上を示す。一部の実施形態では、一部の実施形態で、ビスマス含有化合物である前記金属含有化合物から放出される前記生理活性物質が、ピーク血漿濃度、吸収、吸収のばらつき、および毒性の1若しくはそれ以上の減少を示す。一部の実施形態では、一部の実施形態で、ビスマス含有化合物である前記金属含有化合物が、未配位の状態の生理活性物質と比較して、生体接着性の向上を示す。
一部の実施形態では、前記生理活性物質がレボドパ、トリヨードサイロニン、メサラミン、ジクロアセテート、およびその組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態では、一部の実施形態でビスマス含有化合物である、前記金属含有化合物が、さらに前記金属に配位したアジュバントを有する。
一部の実施形態では、生理活性物質の薬物動態学的性質を調節する方法が、さらに前記金属含有化合物の薬物動態学的性質を向上するように作用する医薬品を前記患者に同時投与する工程を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物はビスマス含有化合物である。
以下にさらに説明するとおり、ビスマス化合物は一般に消化管に留まる傾向を有する。本教示に従うビスマス含有化合物は、それ自体、薬物を徐々に放出するための消化管デポーとして挙動するようにデザインすることができる。したがって、一部の実施形態では、前記生理活性物質が前記患者の消化管の望みの部位に輸送され、主に前記望みの部位から前記患者内に放出される。一部の実施形態では、前記望みの部位が患者の胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸、およびその組み合わせから成る群から選択される。
さらに一般的な導入として、PDを治療する方法には患者に金属含有化合物を経口投与する工程を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物がビスマス含有化合物であり、ビスマスおよび前記ビスマスに配位したLDを含む。一部の実施形態では、前記ビスマス含有化合物がさらにアジュバントを有し、そのアジュバントは、一部の実施形態では、炭水化物、アミノ酸、脂質、生体接着ポリマー、ペプチド、胆汁酸、およびその組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態では、前記炭水化物がアスコルビン酸を有し、前記アミノ酸はアルギニン、グリシン、ロイシン、およびその組み合わせから成る群から選択され、前記脂質がフェルラ酸を有し、前記生体接着ポリマーがアルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キトサン、キチン、ポリアクリル酸、ペクチン、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびその組み合わせから成る群から選択され、前記ペプチドがカルノシンを有する。
一部の実施形態では、PDを治療する方法がさらに、前記LDの脳以外での脱炭酸を阻害する医薬品を前記患者に同時投与する工程を有する。同時投与される代表的な医薬品には、これに限定されるものではないが、カルビドパ、ベンセラジド、エンタカポン、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、前記医薬品は、LDのように、金属に配位されるアジュバントとして提供される。
さらに一般的な導入として、甲状腺機能低下症を治療する方法には患者に金属含有化合物を経口投与する工程を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物がビスマス含有化合物であり、ビスマスおよび前記ビスマスに配位した3,5,3’−トリヨードサイロニン(別名、トリヨードサイロニン、リオチロニン、またはT3)を有する。一部の実施形態では、前記方法がさらに、前記患者にサイロキシン(T4)を同時投与する工程を含む。
さらに一般的な導入として、潰瘍性大腸炎を治療する方法には患者に金属含有化合物を経口および/または直腸投与する工程を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物がビスマス含有化合物であり、ビスマスおよび前記ビスマスに配位したメサラミンを有する。
一部の実施形態では、一部の実施形態ではビスマス含有化合物である、前記金属含有化合物が、さらにアジュバントを有する。一部の実施形態では、前記アジュバントが細胞間接着分子(intercellular adhesion molecule:ICAM)結合剤である。他の実施形態では、前記アジュバントが生体接着物質であり、代表的な物質には、これに限定されるものではないが、グルコサミン、マンヌロン酸、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、前記生体接着分子が単量体構造を有し、一方、前記金属含有化合物が単量体または重合体構造のいずれかを有する。他の実施形態では、前記生体接着分子が重合体構造を有し、一方、前記金属含有化合物が単量体構造を有する。
最後に、一般的な導入として、癌を治療する方法には患者に金属含有化合物を経口投与する工程を含む。一部の実施形態では、前記金属含有化合物がビスマス含有化合物であり、ビスマスおよび前記ビスマスに配位したジクロロ酢酸塩を有する。一部の実施形態では、前記ビスマス含有化合物から放出されるジクロロ酢酸塩により誘導される末梢性ニューロパシーの程度が、未配位の状態のジクロロ酢酸塩により誘導される末梢性ニューロパシーの程度よりも低い。
本発明では、金属と薬物配位子との間で形成される配位化合物の調製について検討した。配位化合物(別名、金属錯体またはキレート)は、金属原子またはイオンと、前記金属に形式的に電子を供与する1若しくはそれ以上の配位子(例えば、原子、イオン、または分子)を含む。従来から、キレート化合物は、1若しくはそれ以上のキレート配位子に結合した金属イオンの組み合わせを指す。キレート配位子(またはキレート)は、前記金属イオンに2若しくはそれ以上の結合点を有する(例えば、複素環構造を形成する)ように構成された多座配位子である。したがって、キレート化合物は、従来、配位化合物のサブセットと考えられている。
特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、これらの配位錯体では、塩に見られる純粋な静電気引力とは対照的に、イオンおよび配位共有結合の組み合わせを形成することで、前記薬物配位子が少なくとも部分的に前記金属イオンの正電荷を中和する、と考えられている。配位錯体には静電気引力も存在する可能性があるが、前記錯体はさらに、前記金属と薬物配位子との間に本質的な共有配位結合を有する。現在、前記配位錯体の共有原子価がこのように高くなっているのは、主としてその酸性プロトンのpKa低下と関係していると考えられており、これらの配位化合物の溶液は生理学的pHで安定になるようになっており、また未配位の状態と比較して前記薬物配位子の薬物動態学的性質を調節することとも関係している。
本教示に従い、特定の条件および/または特定の金属では、不溶性の結晶構造が生成する可能性があることが発見された。金属:薬物結合は消化管または全身で加水分解するため、このような金属:薬物錯体の不溶性は、標的臓器へ薬物を徐々に送達する手段を提供する。前記金属:薬物錯体は、この目的のためすでに開発されている薬物送達製剤を用い、標的臓器に送達することができる。さらに、高分子材料によって与えられる結合部位は多数あるため、高分子結晶構造は非常に強い生体接着性を示す可能性がある。さらに、重合体構造は生物膜または粘膜面を形成することができ、これによってその生体接着性を高める。したがって、本教示に従う一部の実施形態では、前記金属:薬物錯体が重合体構造を有する。一部の実施形態では、高分子アジュバントを用い、金属:薬物錯体に高分子の特性を移すことができる。
アルギン酸は薬物の放出をコントロールする生体高分子として利用されてきたが、それによって乾燥したアルギン酸ビーズが生体液に触れると再膨張することができる。膨張した前記ビーズ、つまりヒドロゲルは、薬物など、カプセル型化合物の拡散バリアを形成し、前記ヒドロゲルからの前記薬物の移動を遅くすることができる。前記アルギン酸コーティングの金属含有塩(例えば、カルシウム塩)は、さらに放出を遅くする。この所見は、アルギン酸ヒドロゲル内で薬物を金属と配位させると、前記薬物の血漿濃度時間曲線に大きな影響を与えるという、本教示に従う根拠を裏付けている。したがって、一部の実施形態では、前記薬物の前記高分子基質からの放出は、金属が前記薬物を前記生体接着高分子に結合させるという理由から遅くなる。前記金属:ポリマー結合開裂の動態は、様々な薬物:高分子水素結合および親油性相互作用の開裂の動態よりも厳密にコントロールすることができる。したがって、一部の実施形態では、金属の配位が生体接着高分子と薬物との結合生成を促す。
一部の実施形態では、薬物配位子を配位するために使用する金属がビスマスである。調節された薬物動態を与えるために十分な安定性の錯体を形成するためには、薬物配位子のビスマスとヘテロ原子の結合点が1つあれば十分であることが発見された。多座配位子とのキレート化も本教示に従うビスマス含有化合物の許容される結合方法であり、必要ではないが、追加で利益を提供することができる。一部の実施形態では、薬物配位子とビスマス原子との結合が単一の結合点を有し、他の実施形態では、前記結合が複数の結合点を有する。特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、単一の結合点で結合する能力は、ビスマスに結合した有機配位子の間に存在する高分子の性質によるものである可能性があると考えられている。
ビスマスは経口薬として安全に使用されてきた歴史がある。ビスマス含有市販薬(OTC)製品は、胃不調を改善するため、100年以上使用されてきた(例えば、Procter & Gambleが商品名PEPTO−BISMOLで販売しているビスマスサブサリチル酸製剤)。さらに、ビスマス含有薬物はH.ピロリ誘発性潰瘍の除菌にFDAから承認されている。
特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、ビスマスの胃接着性は、少なくとも部分的に、非常に不溶性の吸収されにくい錯体を形成する、消化管でのビスマス化合物の沈殿によるものと考えられている。
1つの研究において、ある研究者グループがPEPTO−BISMOLのサリチル酸部分は、大部分が6時間かけて吸収されるが、同時間でのビスマスの吸収はごくわずかであることを証明した。サリチル酸は投与後30分で血中に現れるが(90%は最終的に吸収される)、ビスマスは投与後数時間経っても非常に少量しか現れず、前記薬物を6週間のコースで投与後3ヵ月以上体内に留まることが示された。
ビスマスはイヌの腸管に接着する傾向があることも証明されている。例えば、イヌに大量の炭酸ビスマスを混ぜた食餌を与えた後12週間経っても、大量のビスマスがまだ腸に認められた。これらの所見は、本教示に従い、ビスマス錯体が徐々に薬物を放出する消化管デポーとして挙動する可能性があるという根拠を裏付けている。
特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、有機ビスマス化合物の高分子結晶構造はさらに、または代わりに、ビスマス含有化合物の胃保持性の原因となっている可能性があると考えられている。ビスマス錯体は、典型的には、異なる方向からの架橋結合による印の付いた複雑な重合体構造を形成し、二次元シートおよび三次元構造からチャネルを持った大きなメッシュ構造を形成する。これらの独特なシート様重合体構造は、(例えば、クレーター様潰瘍に選択的に沈着し、保護コーティングを形成することで)前記錯体の抗潰瘍作用の原因となっている可能性がある。わずかな結晶および独特のビスマスコーティングは、コロイド状次クエン酸ビスマス投与後の動物モデルおよび患者のクレーター様潰瘍で観察されてきた。
最初の一連の実施形態では、金属に配位した前記生理活性物質がLDである。導入として、PDと関連した運動機能障害の治療には、典型的には中枢神経系(central nervous system:CNS)内でドパミンに変換されるか、ドパミン作用を保持するか、またはドパミン利用能を上昇させる薬物が関与する。ドパミン置換療法は、古典的には、脱炭酸が起こる可能性がある血液能関門(blood brain barrier:BBB)を通過させるため、ドパミンの代謝前駆体であるLDの経口投与により達成される。末梢での脱炭酸を抑制するため、他の薬物(例えば、カルビドパおよびベンセラジド)を同時に投与することができる。より最近では、第三の薬物としてカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(catechol−O−methyltransferase:COMT)によるLD代謝を阻害するエンタカポンが利用され、LDの血漿中半減期が短いことを改善した(例えば、カルビドパ、LD、およびNovartis PharmaceuticalsによりSTALEVOの商品名で販売されているエンタカポンの併用)。
LDは、まだPDの対症療法および患者の生活の質改善に最も効果的な薬物である。当初、1960年にIV注射として投与され、LDの経口投与成功を報告し、活字になった記事が現れるまで7年かかった。有効性と持続期間を改善し、有害作用(例えば、悪心)を最小限にするため、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(3,4−dihydroxyphenylalanine:DOPA)の使用には長年多くの改良がなされてきた。これらの改良には、ラセミ体からのデキストロ異性体の除去、持続放出製剤の製剤化、およびDOPAの代謝を抑制するための酵素阻害剤の同時投与が含まれる。それにもかかわらず、以下にさらに説明するとおり、LD療法はまださらに改良が必要である。
LDと比較して吸収特性が改善し、半減期が長くなった直接作用型ドパミン受容体拮抗薬とLDを置き換えるため、広範な努力がなされてきた。様々なドパミン受容体サブタイプに対し、様々な親和性の値を有するドパミン拮抗薬の開発は進歩してきた。しかし、これらの薬物(例えば、プラミペキソール、ロピニロール、およびカベルゴリン)は、LDの貴重なアジュバントであることが証明され、少なくとも初期はLDと置換することもできるが、永久的に置換することはできない。ドパミンの独特の活性および/またはLD自体の神経伝達活性のためであろうがなかろうが、これが試みられ、真の「究極の判断基準」は独特の効果的治療を提供する。様々なプロドラッグが研究されてきたが、今日までに市場に出たものはない。さらに、他の薬物がLDのアジュバントとして使用され(例えば、コリン拮抗薬、NMDA拮抗薬、およびアデノシンA2A受容体拮抗薬)、別の投与経路(例えば、LDのメチルエステルパッチ)が調査されてきた。
PDの治療において、カルビドパ−LD血漿濃度を一定に維持することは、吸収が一定しないこと、胃腸症状、および/または患者のコンプライアンスの問題のため、重要な課題である。さらに、LDは水溶性および脂溶性が低いため、性別、年齢、および胃運動性などの因子がLDの生物学的利用能に影響している可能性がある。数年間治療後、一般にLDに対する反応性が徐々に低下し、このため患者はPDの運動緩慢、硬直、および振戦の特徴に対して同じ有効性を達成するため、投与量と投与頻度を増加することが必要になる(つまり、「すり減り(wearing−off)効果」)。さらに、LD療法にはジスキネジー、ジストニア、「オン・オフ現象」、および薬効時間短縮(end−of−dose deterioration)を含む、CNSの副作用および新しい運動機能の合併症もあり、これらはLDの投与量が増加するとさらに悪化する。
上述の点に加え、LDの速く、広範な代謝がさらに投与パラメーターを複雑にしている。したがって、LDが脳に入る前にドパミンに変換されるのを最小限にするため、LDと末梢デカルボキシラーゼ阻害剤(例えば、カルビドパ)を同時に投与することが標準的な習慣であり、末梢ドパミンによって誘導される悪心および嘔吐も最小限にしながら脳のLD濃度を上昇させる。モノアミン酸化酵素B型(MAO−B)阻害薬(例えば、セレギリン、ラサギリン)を使用すると、ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)への酸化的脱アミノ化が阻害されるため、ドパミン活性が延長する。さらに、上述のとおり、エンタカポンなどのCOMT阻害薬は、ドパミンの3−メトキシチラミンへの変換を抑制するために使用される。COMT阻害薬はLDから3−O−メチルドパ(3−OMD)への変換を最小限にする上でも有効であり、この変換は吸収時に起こり、生物学的利用能を低下させる可能性がある。
特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、脳内でドパミンの利用能が変化することも、LDの長期的有効性の消失の一因となっていると考えられている。PDが進行するとBBB自体の統合性が損なわれることを示唆した根拠も増加している。BBBの機能障害が細胞死、慢性的な炎症、P糖タンパクの発現減少、血管新生、および/または他のメカニズムによるものであるのか否かは、現時点では明確に理解されていない。さらに、BBBの機能障害では重篤な健康問題に至る可能性があり、この場合、正常ではBBBによって除去される毒素および代謝物が、制約なく通過することができる。このようなBBBの漏出により、カルビドパなどのデカルボキシラーゼ阻害剤が脳に入る可能性があり、それによってLDのドパミンへの変換を阻害すると考えられる。
LDがドーパミン作動性ニューロンに対して毒性を示すという考えは、in vitro研究を基に検討されてきた。しかし、これらの根拠の道筋は、他の補正要因が作用するかもしれないin vitroでは観察されなかった。それにもかかわらず、長期的使用の厄介な問題はドーパミン作動性ニューロンおよび/またはPDの進行に関与する受容体の変化の結果として生じているように思われる。時間が経過するにつれ、患者はPDの初期から中期および進行期に進行するため、LDの臨床的有効性の治療濃度域は大幅に狭まる傾向がある。同時に、LDの血漿濃度を事実上映し出すまで、作用の持続期間は短くなる。このような厄介な問題の結果、標的血漿濃度を達成する、または経口投与したLDからの一貫したドパミン作用を維持することは、まだPD治療で最大の課題の1つとなっている。
明らかになりつつある根拠は、パルスLD投与が上述の合併症を引き起こす際に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆している。前記薬物をこれまで投与していない患者に最初に使用した場合、LDの従来の投与スケジュールは、PDの運動機能および他の症状の改善に非常によく働くことが多い。この段階では、線条体に十分な数の大脳基底核神経終末が存在してLDからのドパミンを貯蔵し、シナプス後受容体の感度は比較的正常である。しかし、線条体は引き続き進行性の脱神経を受けているため、ドパミンを貯蔵できる神経終末は少なくなっており、外因性LDの緩衝能力が失われる。ドパミン受容体にも変化が起こり、感作および/または耐性がみられる可能性もある。いずれにしても、LDレベルを"off" period(レボドパの効果が著減する時間帯)を回避するのに十分な高さであるが、ジスキネジーを回避するのに十分な低さとすることは非常に難しい。
濃度がジスキネジーの閾値を超えている場合、患者は、様々な憂慮すべき異常不随意運動を経験し、これは疾患症状よりも厄介となる可能性がある。LD自体が、このように治療濃度域が狭くなっている原因である可能性も検討された。しかし、特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、根拠に基づき、問題はLDではなく、前記薬物が投与される方法であると考えられている。現在の考えは、LDのパルス投与に関連したリスクに焦点を当てており、この考えでは、血漿濃度が投与後急速に上昇し、治療閾値の上限を上回る。吸収相を過ぎると、LDが急速に代謝され、血漿濃度が反応閾値未満に急激に低下する。濃度が最小有効濃度未満であれば、患者は"off" periodを経験する。したがって、PD治療におけるLDの有効性は、薬物投与の方法とタイミングを変更することで改善することができる。
LD濃度を治療の全段階で治療濃度域に留まるようにコントロールすることができれば、長期的なLD療法でみられる問題は回避できる可能性がある。現在、LDは毒性がないと考えられているため、運動障害治療の専門家の多くは、できるだけ早くLDを開始することを好んでいる。警告はあるが、すべてのPD患者にLDにより連続的なドパミン作動性刺激(dopaminergic stimulation:CDS)を行うという考えは、臨床的に受け入れられつつある。単一の投薬形態にカルビドパおよびエンタカポンとLDを組み合わせた初の製剤であるSTALEVOは、改善を示す可能性があるが、血漿中LD濃度の変動は解消しない。したがって、本教示に従い、運動系の合併症を伴わずに同等の抗パーキンソン効果を提供するという、LDの長時間作用型経口製剤を開発する目標が掲げられてきた。
データは、連続的放出(continuous release:CR)製剤は速放性(immediate release:IR)製剤よりもさらに胃内容排出に依存していることを示しており、持続放出製剤の効果は期待外れであった。それに反して、静脈内または十二指腸内投与によるLD/カルビドパの連続注入は、LD血漿濃度を良好にコントロールする。これらの臨床効果はLD血漿濃度によって正確に映し出される。
静脈内または十二指腸内投与によるL−DOPAの連続注入では、最適な薬物動態に近くなることが分かった。そのような注入では、CDSと安定な血漿L−DOPA濃度が提供され、脳のドパミンが着実に補充され、脳のドパミン受容体が絶えず刺激される。LD/カルビドパを吸収が行われる十二指腸に直接送達する製剤(例えば、Solvay Pharmaceuticalsが商品名DUODOPAで販売している製剤など)は、後期PD患者に提供される利益のため、評判が高かった。特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、CDSは中核症状および薬剤誘発性ジスキネジーをいずれも軽減すると考えられている。しかし、LD注入はほとんどのPD患者で実用的ではない。注入療法は明らかに効果が高いが、高価で煩雑であり、疾患初期の患者には受け入れられない可能性がある。したがって、本教示に従い、経口投与される薬物製剤によりLDの薬物動態を最適化するという目標が掲げられた。
上述の問題を回避するため、プロドラッグが開発された。理想的には、プロドラックは水または脂質に溶解し、化学的分解または代謝されずに消化管に完全に吸収され、再現性のある治療濃度で血流に親薬物を送達することができるはずである。今日まで、研究からは、LDよりも効果が高いFDA承認の薬物製剤はまだできていない。
外部ポンプ(例えば、デポー送達系のDUODOPA)によりLDを送達するか、または消化管におけるLDの滞留時間を延長させる方法は、CDSが最適化されたまたは最適化されうる方法の例である。本教示に従い、胃および小腸における薬物滞留時間の延長は、生体接着ポリマーが胃および/または腸の内層に接着することができるため、これを用いて前記薬物を製剤化することで達成できる。
本教示に従い、胃から徐々に放出されるLD化合物は、金属配位化学の技術を利用し、金属:LD錯体に固有の共有結合性および安定性を与えることで得られる。さらに本教示に従い、金属との配位により生体接着性をLDに与えることができ、胃、十二指腸、または空腸を標的とした場合、これらの生体接着性はLDの放出を長期間延長することができる。一部の実施形態では、LDの吸収延長における生体接着メカニズムにより、CDSが改善する。一部の実施形態では、金属:LD錯体の標的が胃である。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。
連続放出型LD/カルビドパ製剤(例えば、SINEMET−CR)も、本教示に従い、金属配位による利益を受ける可能性がある。そのような方法で、LDの脳での利用能は、全身生物学的利用能の上昇、脳以外の脱炭酸の低下、BBBへの通過促進、頻回の投与法で見られることが多いパルス送達の減衰を組み合わせて上昇させることができる。生物学的利用能が上昇すると、次に、前記製剤の必要な投与量増加が抑えられ、それによってLD血漿濃度のばらつきがさらに低下する。
第2の一連の実施形態では、金属に配位した前記前記生理活性物質がリオチロニンである。導入として、甲状腺の主な機能は、代謝恒常性に重要な役割を果たすサイロキシン(T4)およびリオチロニン(3,5,3’−トリヨードサイロニンまたはT3)の2種類のホルモンを合成することである。血流中に放出されると、いずれのホルモンもサイロキシン結合グロブリン、トランスチレチン、およびはるかに少量であるが、サイロキシン結合アルブミンなどの輸送タンパク質に迅速に結合する。最終的に、前記ホルモンは標的細胞の核において遺伝子の転写を開始し、T3は前駆体ホルモンであるT4の3倍の効果があると考えられている。したがって、事実上すべての体器官が前記甲状腺ホルモンの影響を受ける。
健常人において、甲状腺機能および特に血清T4およびT3濃度はネガティブフィードバック系によって制御され、視床下部の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyroid releasing hormone:TRH)が下垂体を刺激し、甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)を生成し、これが甲状腺を刺激してT4およびT3の生成と刺激を行う。循環血液中の甲状腺ホルモンはTRHおよびTSHを阻害することで、T4およびT3の生成をダウンレギュレートし、フィードバックループを完成させる。代謝平衡はこのネガティブフィードバック系によって維持され、前記甲状腺は正常で1日推定70〜90μgのT4と15〜30μgのT3を血流中に放出するようになる。特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、T3は健常な甲状腺によって分泌されるが、血液循環中のT3の大部分は、肝臓などの末梢組織によるT4の脱イオン化の結果であると考えられている。
甲状腺機能低下症は甲状腺機能障害が関連した最も一般的な疾患であり、血流中に放出されるホルモンの量が代謝性要求を満たすことができない場合に発生する。甲状腺機能低下症の臨床症状には、寒冷および運動不耐性、心拍出量の低下、疲労、傾眠、慢性便秘、感情鈍麻、発汗低下、および毛髪と皮膚の変化の1若しくはそれ以上が含まれる可能性がある。臨床検査では、低ナトリウム、低血糖グルコース、コレステロールおよびトリグリセリドの上昇、および貧血の1若しくはそれ以上が明らかとなる可能性がある。甲状腺機能低下症と関連した精神症状には、うつ、記憶障害、社会的ひきこもり、全身機能の緩徐化、および気分障害の1若しくはそれ以上が含まれる可能性がある。
米国では、甲状腺機能低下症は、甲状腺の自己免疫性破壊(橋本病)、131I療法または切除手術によって引き起こされることが多い。米国では、400〜500万人が甲状腺機能低下症と診断されているが、甲状腺機能が低く、診断されていない人も1000万人いると推定されている。甲状腺機能低下症に伴う症状は、加齢、更年期、およびストレスと混同されることもある。推定10%の高齢女性が罹患している無症状の甲状腺機能低下症は、うつ病および/または気分障害に関与している可能性もある。
甲状腺機能低下症の従来の治療は、単純に、甲状腺から分泌されなくなった甲状腺ホルモンを置き換えるものである。実際には、前記ホルモンはペプチドではなく単一のアミノ酸残基(T3またはT4)であり、それ自体は経口投与すると消化管からよく吸収されるため、このアプローチは簡便である。甲状腺機能低下症治療用の最初の製剤は、乾燥ブタ甲状腺由来のT3とT4を組み合わせたものであった。WesthroidおよびArmour Thyroidなど、この治療法の改良版は、まだ限定的にしか使用されていない。しかし、この天然製剤の有効性(つまり、1錠あたりのT3およびT4のミリグラム数)は正確に定量することができないため、現在の標準的治療法では、T3は上述の脱イオン代謝反応によってT4から作られるという考えを考慮し、T4のみが経口投与されることが多い。SYNTHROID(Abbott Laboratories)、LEVOTHROID(Forest Pharmaceuticals, Inc.)、およびLEVOXYL(King Pharmaceuticals, Inc.)の商品名で販売されているものなど、市場にはいくつかT4を含む製剤がある。T3も甲状腺機能低下症の治療に使用され(例えば、King Pharmaceuticalsが販売するCYTOMEL)、T4およびT3の併用も利用されている(例えば、Forest Pharmaceuticals, Incが販売するTHYROLAR)。これらのT3含有製剤はいずれも広くは使用されていないが、甲状腺機能低下状態およびそれに伴う気分障害を治療する、T4/T3併用製剤の潜在的価値はますます理解されてきている。
T4のみを用いて甲状腺疾患を治療する従来からの知識が最近、再検討された。身体はT4をT3に変換することができるため、T4はT4とT3をいずれも提供すると、長年考えられてきた。しかし、通常血清にみられるすべてのT3がT4に由来するわけではなく、ヒトの循環血液中にあるT3の約20%は正常な甲状腺から直接分泌される。甲状腺が機能していない場合、投与量をT4の正常濃度まで漸増しても、T4投与後、循環血液中のT3濃度は正常な生理学的濃度に達しない。それに反して、投与が血清T3により正常化される場合、T4濃度は過剰に高くなる。甲状腺を切除したラットの血清および様々な組織の正常な甲状腺状態(甲状腺機能正常性)には、T3とT4が協調していることが必要である。
気分障害および臨床的甲状腺機能低下症の他の症状を治療する方法にT3を含めることの重要性が検討された。T3およびT4を含める必要性を示したエビデンスは、一部は、すべての患者が完全にT4のみに反応するわけではないという所見に認められる。さらに、T3が欠損すると気分障害になることが予想される、脳の変換メカニズムは、肝臓など他の組織と同じではない。主観的な理由から併用を好む患者もいるが、この患者の嗜好は、T3含有製剤を接種後に血清T3濃度が急増することに由来する、T3の使用に伴うと考えられるリスクの上昇と比較される。T3に起因するさらなるリスクは、(T4と比較して)その半減期が短く、治療指数が低いことと関連する。したがって、研究者は、1日1回のT3投与では深在性の甲状腺機能低下症が予防されないことを観察し、Cmaxの急上昇を回避し、24時間かけて着実に血清T3濃度を提供するT3のCR製剤が、T3/T4併用療法を十分検討するために必要であることを示した。実際、多くの医師は、T3が比較的低用量でも毒性濃度に急上昇するリスクがあるため、T3療法を処方することを嫌がる。そのような急上昇は、前記薬物が急速に吸収され、投与後すぐに血流中で(治療濃度を超える)高濃度となるために起こる。
心血管系、特に冠動脈の統合性が疑われる状況が多いため、甲状腺ホルモンは慎重に使用される。そのような場合、比較的作用発現が速いと考えられるため(T3の急上昇と急速な吸収)、低用量のリオチロニンナトリウム療法を開始する。CYTOMELの一般的な開始用量は、例えば1日5mcgであり、通常は2週間間隔で5mcg以上ずつ増量される。心血管疾患が悪化した場合にのみ甲状腺機能正常状態になることができる患者では、甲状腺ホルモンの投与量を減少させるか、完全に中止する。結果として、T3薬は十分活用されておらず、そのような治療の利益を大きく受けることのできる患者が奪われている。
上述のとおり、T3は有効性が高く、同時に小腸で急速に吸収されるため、甲状腺関連疾患の主要な治療法ではない。T3の急激な吸収は、一部は、腸管腔におけるその分解動力学、および腸上皮細胞の内側を覆う非常に効率の高いT3トランスポーターの存在に由来する。したがって、T3のCR製剤が望ましく、本教示にしたがって提供することができる。一部の実施形態では、T3のみの吸収薬物動態が調節され、長期間治療濃度が維持されつつ、毒性濃度に達しないような、T3:金属錯体が提供される。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。一部の実施形態では、本教示に従いCR製剤で(例えば、ビスマス:T3錯体として)T3が提供される、T4とT3の併用製剤が甲状腺機能低下症の治療に使用される。
tmaxを十分長くし、T3のCmaxを低下させると、CYTOMELの安全性プロフィールは大幅に改善するはずである。本教示に従い、T3を金属配位錯体に変換すると、薬物の安全性改善を目的として薬物動態を調節するために必要な柔軟性が提供されることが予想される。金属は一般に6個の配位子を配位することができるため、本教示に従う金属配位では、前記T3:金属配位錯体にアジュバントを組み込むことができる。例として、T3が4つの配位子の部位を占めている場合、まだ2つの配位部位にアジュバントが配位することができる。さらに、アミノ酸、ペプチド、炭水化物、および/または脂質などの代表的なアジュバントは、金属−T3化合物に配位し、さらに望みの血漿濃度−時間曲線を高めることもできる。一部の実施形態では、金属配位化学と胃保持(gastroretentive)技術とを組み合わせると、T3の薬物動態を劇的に変化させることができる。
第3の一連の実施形態では、金属に配位した前記生理活性物質がメサラミン(5−アミノサリチル酸または5−ASA)である。導入として、潰瘍性大腸炎は主に結腸粘膜に影響する慢性炎症性疾患である。メサラミンなどのアミノサリチル酸は、まだ軽度から中等度のUCを誘導および寛解するための第一選択の治療法であるが、前記疾患を効果的に管理するため、毎日数回の大量投与を必要とすることが多い。これらの治療法は罹患している患者に厄介な負担をかけ、服薬不履行と、大量直腸出血、感染、腸閉塞、および穿孔など、回避可能な悪化および合併症に至ることが多い。UCの後期には、結腸癌が発生する可能性がある。FDAに承認されているか、治験中の最新治療介入には、小分子(例えば、アミノサリチル酸およびコルチコステロイドなどの抗炎症薬、シクロスポリン、メトトレキセート、およびメルカプトプリンなどの免疫抑制剤、ロシグリタゾンおよびアミノサリチル酸などのPPAR活性化剤、抗フゾバクテリウム薬などの抗生物質、ICAM−1阻害剤、および経皮的ニコチン)、生物製剤(例えば、CD−3抗体、インテグリン、イソ型トロポミオシン、およびTNFなどの抗体、インターフェロン、結腸内皮タンパク質(colonic endothelial protein:CEP)、hTM5相互作用タンパク質、インターロイキン受容体タンパク質、および低分子量ヘパリン)、および天然抽出物(例えば、芍薬)を含む。
メサラミンの投与必要要件の重要な要素は、回腸および結腸終端部の上皮、つまり典型的にはUCで粘膜が炎症している領域に一貫して利用できないことに起因する。結腸を標的としたメサラミンの約80%が最終的に糞便中に排泄され、望まない体内吸収のほとんどは回腸終端部に近接して起こる。さらに、メサラミンは結腸にあまり吸収されず、標的粘膜で抗炎症作用を発揮しやすくなっている。遅延放出性メサラミンは消化管のpH勾配を利用して炎症上皮への5−ASAの送達を促し、患者によって消化管のpHが大きくばらつき、活動性UCによる炎症のため、また、患者によっては結腸のpHが低くなっているため、効果が低くなる患者もいる。さらに、メサラミン製剤は錠剤負荷が重く、投与法が不便であるため、患者の遵守が低下する。このように5−ASAの有効治療濃度の送達にばらつきがあるため、薬物の効果と全体的な疾患管理が低下し、臨床的再発の可能性が上昇する。
5−ASA投与に伴い患者のコンプライアンスが低いことを克服する試みとして、様々な薬物送達製剤が開発された。例えば、pH依存性放出型800mg錠剤、マイクロペレット、およびShire US Inc.によって商品名LIALDAで販売されている製剤に使用されているものなどのマルチ・マトリックス・システム(Multi Matrix System:MMX)は、高力価錠剤を1日1回または2回投与するようにデザインされている。しかし、これらの送達製剤では錠剤サイズが大きいため、まだ、時折より小さな錠剤を数回投与する方法に戻したいと考えている患者には課題となっている。
UC治療におけるこれらの進歩にも関わらず、まだ(例えば、投与回数を減らし、治療送達を改善することで)薬物の性能を改善する必要性がある。早期の積極的管理によりUCの長期的挙動を修正することで、疾患の進行を止め、結腸癌のリスクを低下させることに成功する可能性がある。他の自己免疫疾患と同様、炎症カスケードを早期抑制すると、疾患の寛解が誘導および維持され、これによって粘膜の統合性と機能の保存に役立つため、患者の生活の質が改善する可能性がある。
細胞接着分子の発現は、TNF、IL、またはIFNによる刺激など、炎症事象に反応して上皮細胞では高くなる。例えば、UCでは結腸上皮細胞がIL−1を合成した。さらに、粘膜アドレシン細胞接着分子−1(mucosal addressin cell adhesion molecule−1:MAdCAM−1)の発現は、結腸上皮細胞におけるTNF刺激に反応して誘導された。ICAMが炎症に果たしている役割は、インテグリンおよび他の生体接着試薬がICAMを発現している細胞に結合できるようにし、二次的炎症事象を引き起こすことである。以下にさらに説明するとおり、この特性は金属配位化学により利用することができる。
本教示に従い、結腸に5−ASAを送達してその有効性を高めることで、必要投与量を減少させる新規方法が提供される。前記薬物の標的を炎症性結腸粘膜とすることで、疾患に変化が起こる可能性がある。一部の実施形態では、これらの特性が5−ASAが金属イオンに結合し、金属が配位した医薬品を形成することで与えられ、この医薬品は十二指腸膜を貫通する薬物の輸送を最小限にし、結腸内の望みの居所作用部位に薬物を送達するように構成されている。したがって、一部の実施形態では、血流中へのメサラミンの吸収が金属に結合したために阻害される。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。
一部の実施形態では、前記金属−メサラミン錯体が生体接着性を有し、結腸内でのメサラミンの滞留時間を延長し、それによって投与頻度を減少させることで、効果を増強させる作用を有する。さらに、必要投与量を減少させることで、全身のメサラミン量が同様に濃度依存的に減少する。
特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、金属−メサラミンの生体接着性は、いくつかの結合力(例えば、親油性相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールス力、金属−配位子結合など)の組み合わせにより結腸上皮細胞に接着する生物膜を形成することで与えられると考えられている。一部の実施形態では、金属−メサラミン錯体の接着特性が、前記金属−メサラミン錯体の重合体構造によって促進される。一部の実施形態では、有機配位子に配位した場合、前記金属がビスマスであり、重合体構造の形成を助ける。
一部の実施形態では、生体接着剤が前記5−ASA:金属錯体にアジュバントとして含まれている。一部の実施形態では、前記生体接着剤がICAMに結合する化合物群から選択され、前記金属:メサラミン・生体接着錯体の送達がICAMを発現する細胞を標的とすることで、疾患に変化が起こるようにする。一部の実施形態では、メサラミンの有効性向上が(生体接着アジュバントの有無に関わらず)前記メサラミンの前記金属への配位により起こり、これによって結腸内のメサラミンの滞留時間延長および/または前記薬物のICAM発現細胞への標的化された送達を提供する。一部の実施形態では、前記金属がビスマスであり、ビスマス:メサラミンの重合体構造により十分な生体接着性が与えられるため、ビスマスは不必要な生体接着補助配位子(例えば、ICAM結合剤)を取り込むことができる。
Bi、Al、Zn、Ba、Cu、Mg、およびCaのメサラミン配位錯体を作成した。前記金属には複数の配位部位があるため、グルコサミンまたはマンヌロン酸などの生体接着アジュバントを前記配位錯体に加え、図1に示すように、前記メサラミン錯体がICAMに結合できるようにすることができる。
生体接着強度は結合部位の数と関連している。したがって、合成またはデザインされた生体接着試薬では、重合体の単量体単位が重合体とほぼ同じ生体接着性は有していない。例えば、キトサンおよびアルギン酸は、それぞれグルコサミンおよびマンヌロン酸よりもはるかに強い生体接着性を有する。したがって、一部の実施形態では、重合体生体接着試薬が前記金属配位錯体に取り込まれることで、生体接着性が増し、次に図2に示すとおり、前記錯体に結合したメサラミンの有効性が向上し、滞留時間が長くなる。生体接着のため、この製剤に伴う有効性は、分子量の希薄化による有効性低下と交換される。
合成方法によって、本教示に従う金属配位化合物は単量体または重合体とすることができる。したがって、単量体生体接着アジュバント(例えば、グルコサミン、マンヌロン酸など)およびポリ−メタロメサラミン(poly−metallo mesalamine:PMM)を適切に選択することで、図3に示すとおり、重合体生体接着性と最大投与濃度の最適な組み合わせを達成することができる。
一部の実施形態では、前記金属:メサラミン錯体の金属がビスマスである。金属としてビスマスを使用する第一の利益は、結腸炎の治療に直接活性を有することである。例えば、ビスマス含有浣腸を用いて治療すると、小規模な臨床試験では、左側に結腸炎および嚢炎を有する患者で効果があることが分かった。第二の利益は、特定の有機酸との錯体として適用すると、ビスマスは三次元重合体に凝集する構成要素を形成することが知られている点であり、この構造が結腸炎へのメサラミンの適用と滞留を改善する可能性がある。したがって、一部の実施形態では、ビスマスおよびメサラミン含有高分子生物膜を形成することで、結腸上皮組織に接着被膜が形成し、生理学的細菌性生物膜の再確立を促し、UC患者において既存の製剤よりも良好な炎症抑制および結腸炎管理を行うことができる。
第4の一連の実施形態では、金属に配位した前記生理活性物質がジクロロ酢酸である。導入として、酢酸は、例えば、ビール、リンゴ酒、およびワインの細菌発酵により得られる周知の食用酢の成分である。アセチル基は一般に多くの生物分子に見られるため、酢酸は基本的な生化学的構成要素である。さらに、分子間のアセチル基の移動は多くの生命プロセスに関与する。したがって、酢酸のジクロロ化誘導体、つまりDCAは薬効を有する可能性がある。特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、DCAはすべての細胞内で代謝によりエネルギーを移動する生化学的プロセスを変化させるため、癌の治療に有用である可能性があると考えられている。「ワールブルク効果」(つまり、酸素が自由に利用できる場合でも、腫瘍細胞が嫌気的解糖に依存すること)を逆転させる癌細胞を誘導することで、現在、DCAは腫瘍における選択的細胞死につながるアポトーシスを促進すると考えられている。しかし、DCAは投与に伴い末梢性ニューロパシーを生じ、この分子の薬剤開発は遅々としていた。
ミトコンドリアは、ワールブルク効果によって説明することができる特徴である、癌発症時の単なる第三者的器官とは対照的に、癌治療の主要ターゲットであることを示したエビデンスは増加しつつある。ワールブルク効果の概念を理解するため、体内の細胞がどのように食物(例えば、グルコース)を生化学的通貨として使用される化学的エネルギー形態に変換するかを理解することは有用である。細胞は、通常、前記ミトコンドリア内で酸化的リン酸化を利用し(クレブス回路および電子伝達鎖)、サイトゾルで開始するグルコースの分解を完了する。これにより、特定の酸化還元反応の効率、および体内のエネルギー通貨として機能するATPなどの分子における高エネルギー結合の形成が最大限となる。酸素がない状態では、細胞は、乳酸を最終代謝物とし、サイトゾルで解糖を終了させる、はるかに効率の低い過程により、グルコースのエネルギーを抽出する。前記酸化的過程ははるかに効率が高いが、酸素が欠乏している時には嫌気的解糖が有用である。
効率の低い解糖に過度に依存することで、癌細胞は好気的過程で失われた効率を補うため、より効率の高いグルコース取り込み機構を発達させる。この「代謝リモデリング」は、通常の細胞増殖調節因子とは無関係に、細胞形成に関与すると考えられる。したがって、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の正常なメカニズムは、この場合無効になる可能性があるため、正常な細胞が癌細胞に変換するためにはワールブルク効果が必要である。むしろ、前記細胞は栄養の取り込み環境から独立し、着実にエネルギーを産生し、コントロールされない増殖を促進する。
特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、DCAの作用機序には細胞質解糖の重要な代謝物であるピルビン酸が関与し、これは酸化的に前記過程を終了するため、ミトコンドリアに入る必要がある。(ピルビン酸の脱炭酸を触媒する)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)酵素複合体が活性化されると、より多くのピルビン酸がサイトゾルからミトコンドリアに入る。PDHの活性は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)によって触媒されるリン酸化反応によって制御される。PDKIIアイソザイムを阻害することで、DCAは前記酵素複合体をリン酸化されていない活性型に固定する。
DCAは多量の経口投与で100%吸収されるが、より少量の投与では、DCAの生物学的利用能に大きな個体差(例えば、27%〜100%)があることを観察した研究者もいる。さらに、DCAは幅広い濃度範囲で、齧歯類およびヒトにおいてそれ自体の代謝を阻害することができ、この効果は小児よりも成人で顕著である。同時に、成獣の齧歯類、イヌ、および成人ヒトは、DCA投与後、より若年の個体よりも可逆的末梢ニューロパシーの発生率が高い。したがって、明らかにその代謝の自己抑制の結果としてDCAの血中濃度が高くなり、このため、末梢ニューロパシーが増加する。特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、この神経毒性作用は、ニューロンに毒性を示すことが知られているDCA代謝生成物であるモノクロロ酢酸(MCA)が年齢依存的に形成、蓄積することと関連していると考えられている。
DCAの臨床試験で末梢ニューロパシーが観察されたことから、一部の研究者は実現可能な薬物候補としてDCAを認めていないが、本教示に従うDCAの金属配位は、その好ましくないPK特性を改善する可能性があるため、治療への応用に有益となっている。
本教示に従うDCAの金属配位は、前記薬物の吸収を改善するメカニズムを提供し、前記薬物の血漿濃度が一定し、予測できるようにする。抗腫瘍活性に最適な濃度、および末梢ニューロパシーを誘導するために必要な濃度未満に血漿DCA濃度を維持することで、前記薬物の治療可能性が向上するはずである。一部の実施形態では、小児および成人において、金属:DCA錯体がよりゆっくりと吸収され、最大血清濃度をより大幅に管理することで、末梢ニューロパシーの発生率が低くなり、本薬物のリスク/利益比のバランス回復に役立つ。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。
ビスマス配位化合物は、典型的にはほとんどの有機溶媒および水で溶解性が低く、明確な構造帰属は利用できる血漿サンプルのX線回折研究に基づいていることが多い。しかし、Biは利用できる配位数の範囲が大きく(例えば、2〜10)、多くの有機配位子は多座であるという特徴のため、比較的単純な化学量論化合物であるように見えても、ビスマス錯体では複雑な三次元分子配列およびクラスターが得られることが多い。さらに、ビスマス化合物の多くは、水中で容易に加水分解を受け、Bi(O)の機能性を取り込んだ化合物を提供する。例として、ヘリコバクターピロリ感染の治療に臨床的に使用されている、コロイド次クエン酸ビスマス(colloidal bismuth subcitrate:CBS、Astellas Pharma Europe BVによって商品名DE−NOLとして販売されているものなど)は、結晶化の条件によって少なくとも6種類の構造が知られている。
HSAB(酸・塩基の硬さ・軟らかさ)則によれば、Bi(III)は柔らかい金属イオンであり、それ自体水溶液中では酸素および窒素配位子の両方に高い親和性を有する。本教示に従い、配位子として利用される生理活性物質には、これに限定されるものではないが、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸が含まれ、それぞれがビスマスと錯体を形成することが知られている。ビスマス配位化合物を調製するための5種類の代表的汎用合成法を以下の(1)〜(5)に示す。興味の問題として、以下の例にさらに説明するとおり、反応(2)はBi(ドーパ)3を調製するために採用された。
BiCl3+3M(O2CR)→Bi(O2CR)3+3MCl(沈殿);式中、M=Ag,Tl (1)
Ph3Bi+3RCO2H→Bi(O2CR)3+3PhH(蒸発) (2)
Bi(OAc)3+3RCO2H→Bi(O2CR)3+3HOAc(蒸発) (3)
Bi(NO3)3+3RCO2H→Bi(O2CR)3+3HNO3(洗浄) (4)
Bi2O3+6RCO2H→2Bi(O2CR)3+3H2O(蒸発) (5)
様々なビスマスおよび生理活性物質の組み合わせから予想されるより単純な配位錯体に加え、本教示には、混合配位子または三元配位錯体の例が含まれ、2種類若しくはそれ以上の配位子が最初の配位圏を占めている。そのような化合物では、上記の式(1)〜(5)に示した製剤において、3つの薬物分子のうち少なくとも1つとアジュバントが置換される。一部の実施形態では、前記アジュバントが、これに限定されるものではないが、脂質、アミノ酸、炭水化物、生体接着ポリマ―、ペプチドなどを含む生物学的に安全なキレート化剤の群から選択される。代表的なアジュバントの分子構造を図4に示す。一部の実施形態では、これらのアジュバントが胃貯留を亢進し、および/またはビスマスに配位した薬物の定常状態でのPK特性を改善する。
本教示に従い、ビスマス、LD、および脂質、炭水化物、アミノ酸、生体接着ポリマー、およびペプチドから成る群から選択されるアジュバントを含むビスマス含有化合物が提供される。本教示に従いLD含有配位錯体の調製では、LDの特定の特徴を念頭に置くことは有用である。まず、LDが酸化的に不安定であるため、LDと酸素分子との反応により望まないキノン副生成物が形成する可能性があり、この反応は反応溶媒中に存在する不純物によって触媒される可能性がある。第二に、図5に示すとおり、LDは3つのプロトン化部位を有し、それぞれカルボン酸、メタ−フェノール、およびアミノ基に対応する。したがって、図6に示すとおり、2種類のキレート化部位としてアミノ酸とカテコールが考えられ、これらの部位に配位することで生じた生成物は、1H−NMR分光法で区別することができる。実際のキレート化部位は金属に強く依存し(例えば、Mgはカテコールキレートを優先することが示され、一方、Znはアミノ酸配位化合物を形成することを好む)、キレートしていないLDの実際のpKa値にはあまり依存しない(配位子のpKa値は、プラスの金属イオンによって初期アニオン電荷が安定化するため、配位が起こると2〜3ログ単位下方シフトする可能性がある)。
典型的には、金属は6個の配位子に対応できるが、ビスマスでは、配位数が2〜10の範囲である。そのカテコールおよびアミノ酸部分のおかげで、LDは二座配位子となる可能性があるため、金属の2〜4配位部位を占めるように構成されることで、他の配位子またはアジュバントと結合できる、さらに2〜4箇所の配位部位が残る。一部の実施形態では、これらのアジュバントが金属:LD配位錯体の特性を高めるようにデザインされ、一部の実施形態では、脂質、炭水化物、アミノ酸、生体接着ポリマー、およびペプチドなどから選択される。図7は、本教示に従う金属:LD:アジュバントの配位錯体で使用される、単量体アジュバントの代表的な例を示している。一部の実施形態では、前記アジュバントおよびLDの両方が同じ金属に結合している。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。
一部の実施形態では、前記アジュバントがアミノ酸である。強力なキレート能があり、市販品が利用でき、このアジュバントグループの物理化学的特性が多様であるため、アミノ酸は、本教示に従う金属:LD錯体に組み込むことができる、万能の候補である。さらに、アミノ酸アジュバントは、本教示に従い、配位錯体の両親媒性および安定性を高めると予想することができる。本発明の教示に従い、アジュバントとして使用できる代表的なアミノ酸を図7に示しており、脂肪族、芳香族、カチオン性、アニオン性、および極性化合物を含む。一部の実施形態では、本教示に従う化合物が、配位錯体内で一緒に結合するアミノ酸、金属、およびLDを含む。一部の実施形態では、前記アミノ酸アジュバントがアルギニンまたはグリシンである。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。
一部の実施形態では、前記アジュバントが脂質または脂肪酸である(図7ではFAと略している)。一部の実施形態では、本教示に従う化合物が、配位錯体内で一緒に結合する脂質、金属、およびLDを含む。一部の実施形態では、前記脂質アジュバントがフェルラ酸である(図7では「fer」と略している)。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。
一部の実施例では、前記アジュバントが生体接着ポリマーである。特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、本教示に従う金属:LD錯体に生体接着ポリマーアジュバントを組み込むことで、投与量の一部が十二指腸より上流に保持される可能性があると考えられている(例えば、胃貯留(gastroretention))。そのような方法で、LDは吸収相を長くするように前記錯体からゆっくりと解離し、吸収部位を通過し、それによってCDSの目的に従い、後で血漿LD濃度の維持を助ける。一部の実施形態では、本教示に従う化合物が、配位錯体内で一緒に結合する生体接着ポリマー、金属、およびLDを含む。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。本教示に従うアジュバントとして使用される代表的な生体接着ポリマーには、これに限定されるものではないが、アルギン酸/アルギン酸ナトリウム、キトサン、キチン、ポリアクリル酸、ペクチン、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などを含む。一部の実施形態では、前記生体接着ポリマーアジュバントがキチンまたはキトサンであり、これらは特に金属との親和性が高く、化学的修飾により容易に修飾される。
本教示に従い、LDとの配位に使用される代表的金属には、これに限定されるものではないが、すべての遷移金属、pブロック金属、およびsブロック金属を含む。一部の実施形態では、前記金属が鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、およびビスマスから成る群から選択される。一部の実施形態では、前記金属がビスマスである。
特定の理論に縛られる、またはいかなる方法でも添付の請求項またはその同等物の範囲を制限することは望まないが、現在、脳でのLD利用能を上昇させ、被験者間および被験者内のばらつきを抑制することで、本教示に従う金属:LD錯体は、脳以外での脱炭酸に耐性を示すと考えられている。さらに、脱炭酸を受けにくいLD製剤を提供することで、進行PD患者で同時に投与する必要があるカルビドパの量を減量させ、それによって、CNS機能の考えられるBBB機能障害の影響を抑制することができる。
抗PD治療を十分に最適化するため、血漿LD濃度−時間曲線に影響するすべての変量を「調整する」ことが必要である。これには、末梢血漿中LD(つまり、まだ脳に入っていない)が早期に脱炭酸されるのを連続的に保護するため、血漿中に十分なカルビドパが存在するようにすることを含む。つまり、LDが体循環に吸収されたら、脳に入る前にドパミンへの変換を阻害することが望ましい。末梢での脱炭酸を阻害する標準的方法には、典型的にはカルビドパの使用を含み、これはLDと同時に経口投与される。最近の研究では、カルビドパの血漿濃度と酵素阻害期間には個体差がある可能性があるため、この方法は必ずしも最適ではないことが示されている。したがって、一部の実施形態では、持続放出作用を達成するためにカルビドパを金属と配位させ、それによってLDが血漿に存在するが、カルビドパ濃度が有効ではないという状況を防ぐ。一部の実施形態では、前記金属配位錯体からの放出の関数としてのカルビドパの持続的薬物動態が、血流でカルビドパ濃度を定常状態とし、LD脱炭酸の阻害が最適化されるようにする。一部の実施形態では、他の金属が配位した芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤が提供される。
以下の例にさらに説明するとおり、様々なLDの金属配位錯体が作成されてきた。これらのホモ結合(homoligated)金属キレートを調製する代表的な一般的方法では、(これに限定されるものではないが、水、メタノール、DMSO、およびDMACを含む)適切な溶媒中、L−DOPA溶液に(これに限定されるものではないが、NaHCO3、K2CO3、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OCH3)2、カリウムtert−ブトキシド、およびEt3N)塩基および(これに限定されるものではないが、塩化物、酢酸塩、および金属酸化物を含む)金属塩を処理する工程を含む。得られた化合物は、プロトン核磁気共鳴(proton nuclear magnetic resonance:1H NMR)分光法、質量分析法、および/または金属分析を用いて、信頼性を検討する。
アジュバントを含む配位錯体を調製する際、化学量論、試薬の追加順序、溶媒、温度、濃度、溶媒および/または試薬の純度などのパラメーターをコントロールする必要がある。これらのパラメーター内では、アジュバントを含む配位錯体の調製は、これに限定されるものではないが、以下の対応する反応(6)〜(9)で式に示したとおりのものなどを含め、合成経路により達成することができ、それぞれの反応は、(6)生理活性物質(L)とアジュバント(L’)の同時併用、(7)配位子LとL’の連続的組み合わせ、(8)2つの二成分ビス−リガンド(またはホモレプティック)錯体間の再均化(reproportionation)反応、および(9)金属錯体内の配位子が第2の配位子によって置換される置換反応(この反応は、金属イオンと結合している配位子の熱力学的安定性および反応機序に依存する)である。
金属イオンおよび配位子LおよびL’を含む溶液において、前記混合配位子錯体MLL’の形成は、統計的には二成分の錯体ML2およびML’2の形成よりも優位である。前記混合配位子錯体の形成における平衡定数は、対応する再均化反応(上記の反応8)の平衡定数Krepropと関連している。統計的な要因のみが前記混合配位子錯体の形成に関与していたのであれば、Krepropは4に等しくなる。しかし、Krepropの実験値は統計値とは異なるため、他の要因が混合配位子錯体の形成に関与している。これらの要因には、前記錯体を安定化または不安定化することで製剤の形成に影響する可能性がある、電気的、静電気的、および立体的作用を含む。
前記合成プロトコールの最初の試験として、上記の反応スキーム(6)〜(9)の4つすべてを利用した金属:LD:アミノ酸錯体の調製に成功した。一部の実施形態では、反応(6)(すなわち、2つの配位子の同時併用)による方法が現在好ましい。一般に、LDとアミノ酸の水溶液は1当量のBa(OH)2と反応させる。次に、金属硫酸塩が追加される。Ba(SO4)2沈殿物をろ過し、溶液を濃縮すると、粗金属:LD:アミノ酸錯体が残る。LD酸化の問題を最小限にするため、完全に脱気した試薬級の水のみを使用する。
生体接着ポリマーアジュバントが前記錯体に組み込まれる実施形態では、前記金属とLDが経時的に配位し、その後前記生体接着ポリマーに配位する、反応7による方法が現在好ましい。LDの血漿濃度−時間曲線は、前記生体接着ポリマーアジュバント(これに限定されるものではないが、アセチル化、pH、前記ポリマーの分子量分布など、およびその組み合わせを含む)および調製方法(例えば、内圏と外圏の配位、溶媒、温度、使用した試薬、濃度などおよびその組み合わせ)の様々な化学的変更により「微調整」することができる。一部の実施形態では、前記生体接着ポリマーがキトサンであり、その遊離アミノ基はかなりの柔軟性を提供する。例えば、親油性はより長い脂肪酸無水物を加えることでコントロールすることができ、または前記アミノ基は無水コハク酸を加えてカルボキシル基に変換することができる。さらに、前記生体接着ポリマーの浸透性は、その剛性をコントロールすることで、例えば、前記アジュバントに二重結合を含めることで調節することができる。末端カルボン酸基については、無水マレイン酸を加えることで、これを達成することができる。
血漿濃度対時間曲線としてプロットしたラットにおけるPK研究の結果からは、トリス(LD)ビスマス酸化物[Bi(O)(ドーパ)3]はLD/カルビドパよりもCmaxが低く、tmaxが遅く、仮想的治療濃度域内の時間が長いことが明らかとなった。これらの研究は、おそらく初めて、前記親薬物の共有結合修飾および/または製剤化技術に頼らずとも、LDの薬物動態が分子レベルで有意に向上する可能性があることを証明している。
上述の説明から理解されるとおり、本教示に従う重要な長所は、前記配位錯体の合成が比較的簡単であることである。したがって、合成プロトコールをキログラム規模のロットにスケールアップすることは、現在、過度に困難であることから期待されない。
一部の実施形態では、本教示に従う配位ポリマーが、金属イオンと適切な機能性を有する生理活性物質(つまり、有機配位子)との自己集合により調製される。金属と前記生理活性物質との配位強度、前記生理活性物質の立体化学、前記金属が関連した配位数と構造、および/または様々な他の分子間相互作用(例えば、ファン・デル・ワールスの相互作用、水素結合、π結合、脂質−脂質相互作用など)は、以下、「配位ポリマー」と呼ばれ、金属有機構造体(metal organic frameworks:MOFs)としても知られる1、2、および3次元ネットワークの多様な超分子構造につながる可能性がある。
これらの配位ポリマーの金属中心は、金属原子、イオン、またはクラスターである可能性がある。一部の実施形態では、前記金属中心がBi(III)またはBiO(I)である。一部の実施形態では、ビスマスの配位数が2〜10の範囲である。一部の実施形態では、前記配位ポリマーの前記生理活性物質が、これに限定されるものではないが、LDを含む有機配位子である。例えば、図5に示すとおり、LDは、カルボン酸、メタ−フェノール、およびアミノ基の3つのプロトン化部位を有する。結果として、金属と配位するため、2種類のキレート化部位(すなわち、アミノ酸とカテコール)が利用できる。ビスマスはこれらの官能基の両方と錯体を形成することが知られているため、複雑な三次元分子配列はLDを含むビスマス化合物に由来する可能性がある。
以下の例および代表的な手順は本教示に従う特徴を説明しており、説明の目的でのみ提供している。これらは、添付の請求項またはその同等物の範囲を制限する意図はない。
一般的な合成プロトコールおよび分光法:安定な金属錯体は、以下に示すとおり調製した。提案された化学構造は1H NMRスペクトルに基づいており、キレート化の位置は、化学シフトと線幅拡大に観察された変化、同様の組成を有する既知配位錯体から理論的に計算された値、および質量分析データから決定した。比較の目的で、DOPAのプロトンNMRスペクトルは、(1H NMR、D2O):δ6.90(d;J=8.2Hz;1H),6.82(d;J=2.2Hz,1H),6.74(dd;J=8.2Hz,J=2.2Hz;1H),3.92(dd;J=7.8Hz,J=5.2Hz;1H),3.16(dd;J=14.6Hz,5.2Hz;1H),2.99(dd;J=14.6Hz,7.8Hz;1H)である。前記金属配位錯体は、固相抽出(solid phase extraction:SPE)カラムで観察された安定性から示されるとおり、塩または混合物のいずれでもない。マグネシウム塩および亜鉛塩はSPEカラムに保持されないが、LDは前記金属配位錯体よりもSPEカラムにはるかに強く保持される。
Mg(ドーパ)2の合成:マグネチックスターラおよびN2吸気口を備えた100mL丸底フラスコに、レボドパ(1.00g、5.07mmol)および無水ジメチルアセトアミド(DMAC、50mL)を加えた。カリウムtert−ブトキシドのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran:THF)溶液(1.00M、5.07mL、5.07mmol)をシリンジで1滴ずつ加えた。前記溶液を15分間攪拌し、固体MgCl2(243mg、2.54mmol)を一度に加えた。攪拌は一晩続けた。溶媒を減圧留去し、残った黄褐色固体は20cc(1g)Oasis HLBカートリッジ(Waters)を用いてSPEにより精製した。水およびメタノールSPE溶媒の両方を脱気し、前記キレートの酸化を防止した。前記製剤は5% MeOH/H2Oで溶出した(レボドパは20% MeOH/H2Oで溶出)。溶媒を減圧留去すると、オフホワイトの固体1.022g(2.44mmol、96%)が残った。本物質の1H NMRを入手し、以下に示すとおり、カテコールキレートが形成していることを示していた。1H−NMR(D2O):δ6.78(br d;1H),6.71(br s;1H),6.61(br m;1H),3.85(dd;J=8.0Hz;J=5.0Hz;1H),3.11(dd;J=14.4Hz;J=5.0Hz;1H),2.91(dd;J=14.4Hz;J=8.0Hz;1H)。
Zn(ドーパ)2の合成:N2吸気口およびマグネチックスターラを備えた500mL丸底フラスコに、K2CO3(67mg、0.44mmol)、H2O(使用前にアスピレーターで減圧下1時間脱気した、200mL)、およびレボドパ(1.00g、5.07mmol)を加えた。前記混合物を穏やかに加熱し、溶解させた。亜鉛酸化物(208mg、2.54mmol)を加え、一晩連続して攪拌した。前記反応は混濁した。精製は上述のとおり、SPEにより行った。前記生成物は5% MeOH/H2Oにより溶出した。溶媒をロータリーエバポレーターで留去すると、淡褐色の固体650mg(1.41mmol、56%)が残った。本物質の1H NMRを入手し、以下に示すとおり、(アミノ酸)キレートが形成していることを示していた。1H−NMR(D2O):δ6.87(d;J=8.4Hz;1H),6.80(s;1H),6.70(d;J=8.4Hz;1H),3.87(br s;1H),3.14(dd;J=14.4Hz;J=5.0Hz;1H),2.95(dd;J=14.4Hz;J=8.0Hz;1H)。注:芳香族領域および前記キレートのH3でわずかに線が広がっていることが観察された。H2では線が大きく広がっていることが観察された(ピーク高の1/2で約12Hz)。
Mg(ドーパ)(gly)の合成:マグネチックスターラ、加熱マントル、還流冷却器、およびN2吸気口を備えた二口200mL丸底フラスコに、レボドパ(500mg、2.54mmol)およびLグリシン(190mg、2.54mmol)を加えた。水(100mL)を加え、固体が溶解するまで前記混合物を加熱した。水酸化バリウム(478mg、2.54mmol)を一度に加えた。橙色の溶液を室温で15分間攪拌し、MgSO4(335mg、2.54mmol)を一度に加えた。BaSO4の沈殿物が直ちに形成した。淡灰色の懸濁液をさらに1時間攪拌し、1.5時間加熱還流した。前記混合物を冷却し、気孔率が中間のろ紙を用いて減圧ろ過した。溶媒を減圧留去すると、淡黄褐色の固体が残った(638mg、2.17mmol、85%)。1H−NMR(D2O):δ6.68(br d;J=7.2Hz;1H),6.61(br s;1H),6.51(br d;J=5.6Hz;1H),3.81(dd;J=8.2Hz,J=5.0Hz;1H),3.49(s,2H),3.07(dd;J=14.3Hz,5.0Hz;1H),2.86(dd;J=14.3Hz,8.2Hz;1H)。
Zn(ドーパ)(thr)の合成:マグネチックスターラ、加熱マントル、還流冷却器、およびN
2吸気口を備えた二口200mL丸底フラスコに、レボドパ(500mg、2.54mmol)およびLトレオニン(302mg、2.54mmol)を加えた。水(100mL)を加え、固体が溶解するまで前記混合物を加熱した。水酸化バリウム(478mg、2.54mmol)を一度に加えた。橙色の溶液を室温で15分間攪拌し、ZnSO
4(728mg、2.54mmol)を一度に加えた。BaSO
4の沈殿物が直ちに形成した。淡灰色の懸濁液をさらに1時間攪拌し、1.5時間加熱還流した。前記混合物を冷却し、気孔率が中間のろ紙を用いて減圧ろ過した。溶媒を減圧留去すると、淡灰色の固体が残った(542mg、1.09mmol、86%)。
1H−NMR(D
2O):δ6.88(br d;J=7.8Hz;1H),6.81(br s;1H),6.71(br d;J=7.8Hz;1H),4.36(br m;1H),3.82(br s;1H),3.44(br s;1H),3.13(br dd;J=14.0Hz,4.0Hz;1H),2.94(br dd;J=14.0Hz,7.2Hz;1H),1.31(d,J=6.4Hz,3H)。
Zn(ドーパ)(arg)の合成:マグネチックスターラ、加熱マントル、還流冷却器、およびN
2吸気口を備えた二口200mL丸底フラスコに、レボドパ(500mg、2.54mmol)およびLアルギニン(440mg、2.54mmol)を加えた。水(100mL)を加え、固体が溶解するまで前記混合物を加熱した。水酸化バリウム(478mg、2.54mmol)を一度に加えた。橙色の溶液を室温で15分間攪拌し、ZnSO
4(335mg、2.54mmol)を一度に加えた。BaSO
4の沈殿物が直ちに形成した。淡橙色の懸濁液をさらに1時間攪拌し、1.5時間加熱還流した。前記混合物を冷却し、気孔率が中間のろ紙を用いて減圧ろ過した。溶媒を減圧留去すると、褐色の固体が残った(685mg、1.58mmol、62%)。
1H−NMR(D
2O):δ6.75(br d;J=7.6Hz;1H),6.68(br s;1H),6.55(br δ;J=5.6Hz;1H),3.80(br m;1H),3.61(t;J=5.6Hz;1H),3.21(t;J=6.8Hz;2H),3.08(dd;J=14.0Hz,3.2Hz;1H),2.88(dd;J=14.0Hz,9.2Hz;1H),1.87−1.78(m;2H),1.71−1.60(m;2H)。
Sr(ドーパ)2の合成:マグネチックスターラおよびN2吸気口を備えた500mL丸底フラスコに、レボドパ(90mg、0.46mmol)を加えた。水(25mL)を加え、固体が溶解するまで前記混合物を加熱した。水酸化ストロンチウム(27.8mg、0.23mmol)を一度に加えた。橙色の溶液を室温で30分間撹拌した。1H−NMR(D2O):δ6.77(d;J=8.0Hz;1H),6.68(d;J=2.2Hz;1H),6.56(dd;J=8.0Hz;J=2.2Hz;1H),3.70(dd;J=7.8Hz;J=5.0Hz;1H),3.02(dd;J=14.4Hz;J=5.0Hz;1H),2.82(dd;J=14.4Hz;J=7.8Hz;1H)。
Ca(ドーパ)2の合成:マグネチックスターラおよびN2吸気口を備えた100mL丸底フラスコに、レボドパ(250mg、1.27mmol)を加えた。水(50mL)を加え、固体が溶解するまで前記混合物を加熱した。カルシウムメトキシド(65mg、0.634mmol)を一度に加えた。橙色の溶液を室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧留去すると褐色固体が残った。1H−NMR(D2O):δ6.75(d;J=7.8Hz;1H),6.67(d;J=1.8Hz;1H),6.56(dd;J=7.8Hz;J=1.8Hz;1H),3.72(dd;J=7.8Hz;J=4.8Hz;1H),3.02(dd;J=14.0Hz;J=4.8Hz;1H),2.82(dd;J=14.0Hz;J=7.8Hz;1H)。
ビスマスジクロロ酢酸の合成:ジクロロ酢酸(200mg、1.56mmol)およびトルエン(15mL)をガラス管に加えた。溶解後、トリフェニルビスマス(229mg、0.52mmol)を一度に加えた。前記溶液を100℃に加熱し、18時間攪拌した。溶媒を減圧留去すると褐色固体が残った。1H NMR(DMSO):δ6.36(s;1H)。ジクロロ酢酸1H NMR(DMSO):δ6.70(s:1H)。
ビスマスドペート、Bi(ドーパ)3の合成:N2吸気口およびマグネチックスターラを備えた500mL丸底フラスコに、dopaH(3.00g、15.2mmol)および無水DMSO(300mL)を加えた。前記混合物を加熱して溶解させ、まだ溶液が熱いうちに、粉末Bi(NO3)3・5H2O(2.46g、5.08mmol)を一度に加えた。前記溶液を室温に冷却後、カリウムtert−ブトキシドのブタノール溶液(15.2mL、15.2mmol、1N)を加えた。直ちに沈殿物が形成した。前記混合物を室温で16時間撹拌した。前記反応は中等度の粒度のガラスフリットでろ過し、前記生成物を無水メタノール(2×50mL)で洗い、黄褐色固体が得られた。この物質を減圧乾固すると(25℃、2torr)、3.32g(4.16mmol、82%)のBi(ドーパ)3が得られた。この物質の約3mgを濃HNO3に溶解し、H2O(20mL)で希釈し、指示薬としてキシレノールオレンジ四ナトリウムを用いてEDTA(0.001M)で滴定し、ビスマス含有量を決定した。判明したビスマスの量は25.6%(Bi(ドーパ)3に基づき、26.2%)であった。サンプルを元素分析に提出した。実測値:Bi(46.8),C(23.26),H(2.68),N(2.71)。計算値:Bi(47.6),C(24.61),H(2.75),N(3.19)。
Bi(O)(ドーパ)3の合成:窒素吸気口およびマグネチックスターラを備えた1000mL丸底フラスコに、レボドパ(2.00g、10.2mmol)および脱気したばかりの水(400mL)を加えた。酢酸ビスマス(1.31g、3.38mmol)を乳鉢および乳棒で粉末とし、攪拌しながら一度に加えた。前記混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧留去すると淡黄色の固体が残り、これを24時間減圧(2torr、室温)乾固した。Biの分析結果を入手した。実測値:23.1%。 Bi(O)(ドーパ)3−4H2Oの計算値、23.5%。
メサラミン亜鉛、Zn(mes)2の合成:10mLの丸底フラスコにメサラミン(mesH)(1g、6.53mmol)を加えた。ピペットで水酸化ナトリウム水溶液(6.53ml、1M、6.53mmol)を加え、固体を溶解した。マグネチックスターラを備えた別の25ml丸底フラスコに塩化亜鉛(445mg、3.27mmol)および水(1ml)を加えた。前記塩化亜鉛溶液にピペットでメサラミン水溶液を加えた。前記褐色溶液を16時間攪拌した。前記溶液を減圧ろ過すると、褐色固体が得られ、これを減圧乾固すると1.084g(2.92mmol、収率89.1%)が得られた。1H NMR(DMSO−d6):δ12.01(br s;1H),7.11(br d;J=2.2Hz;1H),6.66(dd;J=8.6Hz,2.2Hz;1H),6.41(br d;J=8.6Hz;1H);4.56(br s;2H)。
メサラミンカルシウム、Ca(mes)2の調製:10mLの丸底フラスコにメサラミン(1.00g、6.53mmol)を加えた。ピペットで水酸化ナトリウム水溶液(6.53ml、1M、6.53mmol)を加え、固体を溶解した。マグネチックスターラを備えた別の25ml丸底フラスコに塩化カルシウム(362mg、3.27mmol)および水(1ml)を加えた。前記塩化マグネシウム溶液にピペットでメサラミン水溶液を加えた。紫色/茶色の溶液を16時間攪拌した。前記溶液を減圧ろ過し、茶色のろ液および少量の黒色固体が得られた。前記ろ液から溶媒を減圧留去し、茶色の固体が得られた。1H NMR(DMSO−d6):δ13.96(br s;1H),7.05(br d;J=3.0Hz;1H),6.53(dd;J=8.4Hz,3.0Hz;1H),6.42(br d;J=8.4Hz;1H);4.29(s;2H)。
メサラミンマグネシウム、Mg(mes)2の調製:10mLの丸底フラスコにメサラミン(1.00g、6.53mmol)を加えた。ピペットで水酸化ナトリウム水溶液(1M、6.53ml、6.53mmol)を加え、固体を溶解した。マグネチックスターラを備えた別の25ml丸底フラスコに塩化マグネシウム(310mg、3.27mmol)および水(1ml)を加えた。前記塩化マグネシウム溶液にピペットでメサラミン水溶液を加えた。前記茶色溶液を16時間攪拌した。前記溶液を減圧ろ過し、ろ液および少量の黒色固体が得られた。前記ろ液から溶媒を減圧留去し、暗黒色の固体が得られた。1H NMR(DMSO−d6):δ7.04(br d;J=2.6Hz;1H),6.51(br dd;J=8.2Hz,2.6Hz;1H),6.41(br d;J=8.2Hz;1H);4.27(br s;2H).。
メサラミンバリウム、Ba(mes)2の調製:10mLの丸底フラスコに、脱気した水(6.5mL)およびメサラミン(1.00g、6.53mmol)を加えた。水酸化バリウム(618mg、3.26mmol)を加え、前記茶色溶液を16時間攪拌した。前記溶液を減圧ろ過し、赤/茶色のろ液および少量の暗黒色固体が得られた。前記ろ液から溶媒を減圧留去し、暗赤/茶色の固体が得られた(1.397g、96.5%)。1H NMR(DMSO−d6):δ7.03(br d;J=2.6Hz;1H),6.53(br dd;J=8.4Hz,2.6Hz;1H),6.42(br d;J=8.4Hz;1H)。
メサラミン銅、Cu(mes)2の調製−方法1:25mL丸底フラスコにメサラミン(1.00g、6.53mmol)および水酸化ナトリウム(6.53ml、6.53mmol、1M)を加え、半透明褐色溶液が得られた。塩化銅(439mg、3.26mmol)と水を別のフラスコに加え、半透明の緑色溶液を得た。前記銅溶液をピペットで前記メサラミン溶液に加え、粘度の高い黒色沈殿物を得た。前記溶液を16時間攪拌した。前記溶液をろ紙2枚で減圧ろ過し、褐色のろ液と黒色固体を得た。前記ろ液から溶媒を減圧留去し、茶色の固体が得られた。沈殿物は減圧乾固した。銅は常磁性体であるため、NMRデータは収集しなかった。
メサラミン銅、Cu(mes)2の調製−方法2:200mLの丸底フラスコにメサラミン(1.00g、6.53mmol)およびメタノール(80ml)を加えた。酢酸銅(593mg、3.26mmol)を加えると、緑色の懸濁液が生成した。前記緑色の懸濁液を16時間攪拌した。前記混合物を減圧ろ過すると、青/緑色のろ液と黒色固体が得られた。前記ろ液から溶媒を減圧留去し、前記固体は減圧乾固した。銅は常磁性体であるため、NMRデータは収集しなかった。
メサラミンアルミニウム、Al(mes)3の調製:25mLの丸底フラスコにメサラミン(1.00g、6.53mmol)を加えた。水酸化ナトリウム(6.53ml、6.53mmol、1.0N)の水溶液を一度に加えると、半透明の褐色溶液が得られた。塩化アルミニウム(4.35ml、2.18mmol、THF中0.5M)をシリンジで加えると、粘度の高い白色沈殿物が形成した。水(7ml)を加え、攪拌しやすくした。前記不透明の懸濁液を16時間攪拌した。前記混合物をろ紙で減圧ろ過すると固体が得られ、これを減圧乾固した。収量0.86g(94%)。1H NMR(DMSO−d6):δ7.03(br d;J=2.6Hz;1H),6.53(br dd;J=8.4Hz,2.6Hz;1H),6.42(br d;J=8.4Hz;1H)。
メサラミンビスマス、Bi(mes)3の調製:メサラミン(1.00g、6.53mmol)を200mL丸底フラスコに加えた。無水メタノール(80mL)を加えると、黄褐色懸濁液が形成した。酢酸ビスマス(840mg、2.18mmol)を前記フラスコに加えた。前記溶液を加熱還流し、16時間攪拌した。不透明の黄色溶液を減圧ろ過すると黄色の固体が得られ、これを減圧加熱乾固した。1H NMR(DMSO−d6):δ7.04(br s;1H),6.53(br dd;J=8.8Hz,3.2Hz;1H),6.42(br s;1H)。
ビスマスメサラミンフェニル(Bi2mes3(C6H5))の合成:ガラス管にメサラミン(200mg、1.30mmol)およびDMSO(15mL)を加えた。トリフェニルビスマス(211mg、0.43mmol)をこの溶液に一度に加えた。前記溶液を3時間100℃に加熱し、室温で15分間攪拌した。溶媒を減圧留去すると赤色固体が残った。1H NMR(DMSO−d6):δ8.78(d;J=7.8Hz;2H),7.90(t;J=7.8Hz;2H),7.37(s;1H),7.02(ブロードs;3H),6.72(dd;J=8.2Hz,2.6Hz;3H),6.60(d;J=8.2Hz,3H)。メサラミン1H NMR(DMSO−d6):δ7.14(d;J=2.8Hz;1H),6.86(dd;J=8.6Hz,2.8Hz;1H),6.68(d;J=8.6Hz;1H)。
ビスマスサブドペート、Bi(O)(ドーパ)の調製:H2O(Baker、HPLC分析用)をアスピレーターを用いて4時間脱気し、使用直前までN2下で保存した。N2吸気口およびマグネチックスターラを備えた1000mL丸底フラスコに、dopaH(2.00g、10.2mmol)およびH2O(450mL)を加えた。前記混合物を穏やかに加熱して溶解させ、室温に冷却後、粉末Bi(OAc)3(2.00g、5.18mmol)を一度に加えた。直ちに黄色の沈殿物が生成し、前記混合物を室温で16時間攪拌した。前記反応は中等度の粒度のフリットでろ過し、前記生成物をH2O(3×50mL)で洗い、黄色固体が得られた。この物質を減圧乾固すると(25℃、2torr)、2.05g(4.67mmol、90%)のBi(O)(ドーパ)が得られた。この物質約3mgを濃HNO3に溶解し、H2O(20mL)で希釈し、指示薬としてキシレノールオレンジ四ナトリウムを用いてEDTA(0.001M)で滴定し、ビスマス含有量を決定した。判明したビスマスの量は50.9%(Bi(O)(ドーパ)に基づき、49.6%)であった。サンプルを元素分析に提出した。実測値:Bi,46.8;C,23.26;H,2.68;N,2.71。計算値:Bi,47.6;C,24.61;H,2.75;N,3.19。IR(cm−1):3333,2973,2901,1593,1484,1407,1256,1047。XRD(theta):8.0,13.9,18.4,20.9,23.6,26.6,31.1,32.0,33.0,36.4,43.2,45.9,46.6,48.6。
ビスマストリヨードサイロニンの合成:マグネチックスターラを備えた25mL丸底フラスコに、T3ナトリウム(253mg、0.376mmol)およびDMSO(15mL)を加えた。この溶液に硝酸ビスマス五水和物(60.8mg,0.125mmol)を一度に加えた。前記溶液を室温で18時間撹拌した。水(120mL)を加えると、ビスマストリヨードサイロニンが沈殿した。黄褐色固体をろ過し、水(2x25mL)で洗い、減圧乾固させると(50℃、2 torr)、254mg(0.12mmol、91%)のBi(C15H11I3NO4)3が得られた。元素分析を入手した。実測値:Bi,8.39;C,24.34;H,1.82;N,2.05。計算値:Bi,9.68;C,25.01;H,1.67;N,1.95。
生体接着ポリマー合成プロトコール:レボドパおよびアジュバントから成る生体接着ポリマーの合成には、前記ポリマーのいくつかのヘテロ原子を前記金属にキレートする工程が関与する。アルギン酸の場合、レボドパを重量で20%入れ、ヘテロ原子はアルコールの官能基またはカルボン酸部分の一部である。このポリマーでは、わずかに過剰なカルシウムメトキシドを加えてCa(ドーパ)(アルギン酸)を生成することで、アルギン酸のカルボン酸部分を前記金属の電荷安定化に関与させる選択肢がある。代わりに、過剰のレボドパを前記反応混合物に加え、Ca(ドーパ)(アルギン酸)を生成させることもでき、この場合、前記アルギン酸は前記金属の電荷安定化に関与することができない。ストロンチウム−レボドパ−キチンビーズを調製するために使用した条件は、酢酸無水物を加えてキチンに変換させる前に、キトサンの窒素を前記金属とキレートさせるように選択した。脱着実験のコントロールとしてレボドパ含浸ビーズを調製した。
Ca(ドーパ)(アルギン酸)の合成:マグネチックスターラおよびN2吸気口を備えた100mL丸底フラスコに、レボドパ(100mg、0.507mmol)を加えた。水(30mL)を加え、固体が溶解するまで前記混合物を加熱した。カルシウムメトキシド(51.8mg、0.52mmol)を一度に加えた。前記橙色溶液を1時間攪拌した。アルギン酸(440mg)を一度に加えると、懸濁液が生成した。前記懸濁液を12時間攪拌した。溶媒を減圧留去すると茶色固体が残った。
Ca(ドーパ)2(アルギン酸)の合成:マグネチックスターラおよびN2吸気口を備えた100mL丸底フラスコに、レボドパ(100mg、0.507mmol)を加えた。水(30mL)を加え、固体が溶解するまで前記混合物を加熱した。カルシウムメトキシド(25.9mg、0.26mmol)を一度に加えた。前記淡橙色溶液を1時間攪拌した。アルギン酸(440mg)を一度に加えると、懸濁液が生成した。前記懸濁液を12時間攪拌した。溶媒を減圧留去すると、茶色固体が残った。
レボドパ含浸キチンビーズの合成:キトサン(1.00g、5.88mmol)を、機械的攪拌により5%酢酸(100mL)に溶解した。レボドパ(115mg、0.588mmol)を加え、前記溶液を40℃に加熱した。酢酸エチル(100mL)を加え、前記混合物を300rpmで攪拌し、この時点でTween 85(4.62mL)を加え、温度を45℃に上昇させた。無水酢酸(18.2mL)を加え、前記混合物を30分間攪拌した後、さらに無水酢酸(18.2mL)を加え、前記キチンビーズが形成するまで30分間、前記混合物を攪拌した。前記ビーズをろ過し、水、次にメタノールで洗った。前記ビーズは淡灰色で均一な球形をしており、直径は約100μmであった。脱着速度論(以下のプロトコール参照)から、18時間後にレボドパは放出されていないことが明らかとなり、レボドパが100%キチンビーズに取り込まれたことを示していた。
Sr(ドーパ)2(キチン)ビーズの合成:マグネチックスターラを備えた100mL丸底フラスコに、キトサン(780mg)を加えた。酢酸(5%)を加え、前記キトサンが溶解するまで前記混合物を攪拌した。次に前記溶液を42℃に加熱し、Sr(ドーパ)2を一度に加えた。酢酸エチル(78mL)の後にTween 85(3.6mL)を加え、前記溶液を40℃に戻した。一定分量の無水酢酸(7.1mL)を一度に加え、前記溶液を30分間300rpmで攪拌した。キチンビーズが形成するまで、もう一度一定量の無水酢酸(7.1mL)を加えた。前記ビーズはブフナー漏斗でろ過し、水およびメタノールで洗った。
ラット薬物動態試験の方法:ラット「摂食および出血(feed and bleed)」研究はLDおよび合成により調製したLD:金属錯体を用いて行い、ここで、コントロール薬物であるLDに対して、最大濃度(Cmax)、AUC、および最大濃度到達時間(tmax)などの重要なPKパラメーターを測定した。
各実験において、頸静脈にカテーテルを挿入した雄Sprague−Dawleyラット(250〜300g、n=5〜10)を用いた。これらのラットは市販されているものを入手し(Harlan Laboratory Animals、米国バージニア州Dublin)、1匹ずつ飼育した。水は自由に摂取させた。ラットには認定された齧歯類用固形飼料を自由に摂取させた。到着後、ラットの健康状態を評価し、最低5日間隔離して、この間に全身の健康状態を評価した。隔離期間終了時に、ラットを利用および研究用の永久的な動物飼育場に移動した。
すべての研究で、Torpac(米国ニュージャージー州Fairfield)のサイズ9の齧歯類用ゼラチンカプセルを用いた経口投与を採用した。一晩絶食した後、0時間の時点でラットに投与し、カテーテルから定期的に採血する(0〜24時間の間に5〜8時点)。血液(200〜300μL)を採取し、ヘパリン添加した試験管に回収する。血漿は遠心分離し、検査まで−20℃で保存する。次に、開発された方法(例えば、FEBS Lett., 2002, 524 (1−3), 199−203)により血漿サンプルを処理し、薬物濃度を分析した(LC/MS/MS)。各時点の血漿値の平均(±SEM)を計算し、標準的なソフトウェアを用いてCmax、tmax、および吸収された総量(AUC0−6h)を含むPKパラメーターを決定した。
各試験ではクロスオーバーデザインを採用しており、LDおよび金属:LD錯体は同じラットで検討し、5日間のウォッシュアウト期間で2つの実験を分けている。
結果は以下に説明する図8〜15に示す。
図8は、LD、Mg(ドーパ)2およびZn(ドーパ)2の血漿濃度対時間曲線を示している。前記データからは、金属と錯体を形成したLD検査薬の血漿濃度−時間曲線が実際はLD自体とは異なるが、前記金属−LD化合物のCmax値およびAUCはLDよりも低いことを示している。これは、ただLDが金属に配位しているだけでは、LD血漿濃度−時間曲線の大幅な改善につながることはないことを証明している。
続くラットPK実験では、LD(10mg/kg)および一連のLDとアジュバントから成る金属錯体を用いて等モル量で化合物を検討した。各試験で平均値をプロットする。図9は、前記金属−LD配位錯体に異なるアジュバントを組み込んだ、マグネシウムまたは亜鉛の錯体数種類から得た結果を示している。Zn(ドーパ)(トレオニン)およびMg(ドーパ)(アルギニン)は、いずれもLDよりも大きく吸収された。しかし、CDSを達成するため、経時的に一定のLD濃度となる安定期が好ましい。Zn(ドーパ)(リジン)およびMg(ドーパ)(カルノシン)で観察された結果は、これが1〜2時間の間で濃度が比較的一定のままの場合に可能であることを示している。実際、Zn(ドーパ)(リジン)ではCDSの血漿濃度−時間曲線が好ましいことが明らかになっただけでなく、LDよりもAUCが大きいことが示された。
図10に示すとおり、Mg(ドーパ)(リジン)をラットPK試験で検討した場合、急速かつ広範なLD吸収は最初の40分間で発生した。このタイプの血漿濃度−時間曲線は、そのような製剤でLDの急増が必要な状況(つまり次の投与までの「休薬」期間)で有用となるだろう。この錯体は、Mg(ドーパ)(リジン)錯体のばらつきがLDと比較して減少していることも示している。Cmaxが44μMでは標準偏差(standard deviation:SD)が3.8であったが、LDでは17μMでSDが9.0であった。
図11に示すとおり、Zn(ドーパ)(カルノシン)は曲線タイプを示しており、CDSを提供するように構成されたLD製剤に適した、減弱「パルス性」の特徴を示している。これは、Mg(ドーパ)(カルノシン)で観察されたPKプロフィールと同様であり、カルノシンがLD吸収の時間を延長させるアジュバントであることを示している。
図12に示したカルノシン(ドーパ)(アルギン酸)の血漿濃度−時間曲線は2つのラットPK試験の平均である(すなわち、n=10)。ラットにカルシウム(ドーパ)(アルギン酸)を経口投与すると、20分以内に治療用量が得られることが示された。さらに、この化合物は持続放出プロフィールを示し、LDコントロールよりも大きいか、同等のAUCを示した。驚くべきことに、また予想外に、金属がない状態では、持続放出効果が有意に低下し、これによって、金属の錯体化がLDの吸収相延長に重要な役割を果たしていることが示唆される。カルシウム:LD:アルギン酸化合物で観察された血漿濃度−時間曲線は、好ましい血漿濃度−時間曲線を示す可能性がある。
LDコントロールと比較したLD:ビスマスの血漿濃度−時間曲線は、図13および14に示す。いずれの研究でも、LD−ビスマスのLD 20mg/kgに相当する用量を、カルビドパ(10 mg/kg)カプセルで経口投与した。図13は、LDコントロールの用量が10mg/kg、カルビドパの用量が5mg/kgの場合の相対血漿濃度−時間曲線を示している。
ヒト血漿中の最小および最大濃度に基づき、治療濃度域を定義することは有用である。臨床現場では、治療濃度を患者のドパミン状態に関連した特定の徴候および症状に基づき、個別に定義する必要があることは広く認知されている。しかし、動物モデルにおいてLD製剤をスクリーニングする目的では、個体集団に適用される値を含めるため、下限および上限は広く定義される。このため、長期的ジスキネジーが観察されない濃度(4mcg/mL、20nmol/mL)未満として定義した上限が使用される。下限(0.6mcg/mL、3nmol/mL)は、"off" periodを回避するために必要なLD濃度である。そのため、LD血漿濃度の「目標範囲」は一般的な用語で定義され、臨床現場で利用される個々の決定と混同すべきではない。本発明者は、ラットモデルにおける目標として、ヒトに基づく薬物濃度の値を使用することは、一般的な臨床成績を予測する上で価値があることを見出した。
驚くべきことに、また予想外に、図13に示すとおり、2倍の投与量で投与したにもかかわらず、Bi(O)(ドーパ)3はLDよりもCmaxが有意に低い。さらに、Bi(O)(ドーパ)3のLD血漿濃度は、研究期間中、ピーク濃度またはその付近に留まった。したがって、前記ビスマス錯体は、前記薬物をLDよりもはるかに特定の治療濃度域に留まりやすくすることができる。この改善は、ジスキネジーおよび"off" periodの可能性を有意に軽減することが予想される。別のBi(O)(ドーパ)3ロットを作成し、当モル量(つまり、20mg/kg)のLDと比較するために検討した。この研究でのサンプリング時間は3時間から6時間に延長し、血漿濃度−時間曲線を図14に示している。この実験では、LDのtmax後の時間(20分)およびLD血漿濃度が最小有効臨床血漿濃度3nmol/mL未満に低下する時間を追跡した。図14に示すとおり、データは、Bi(O)(ドーパ)3の仮想的な治療濃度域にかかる時間がLD/カルビドパで観察された時間よりも長いことを明らかに示している。したがって、後の時点でLD血漿濃度が高いことから、臨床的な作用時間が長くなると予想される。最初の実験セット同様、Bi(O)(ドーパ)3は3時間で血漿濃度10nmol/mLを示し、これによって、ロット間で一貫していることが確認される。したがって、本教示と一致し、ラットではLD/カルビドパと比べてCmaxが低く、Bi(O)(ドーパ)3の作用持続時間が長くなる。
図15では、血漿濃度対時間曲線をLDおよび3種類の錯体について示している。3種類の錯体はすべてCmaxが有意に低下したが、いずれのBi(O)を含む錯体も仮想的な治療濃度域で経過する時間が延長することが示された。
上述の詳細な説明、例、および添付の図は、説明および図示のために提供されており、添付の請求項の範囲を制限する意図はない。本明細書に示された現在好ましい実施形態は、多くの変形形態が当業者の1人に明らかであり、添付の請求項およびその同等物の範囲内である。