実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における電力変換装置1000の構成を示す図である。電力変換装置1000は、交流電源1の交流電力を直流電力に変換して出力する主回路500と、制御部である制御回路10aとを備えて構成される。主回路500は、交流電源1からの入力である交流電圧を整流するダイオードブリッジ4と、限流回路を構成するリアクトル2と、ハーフブリッジ型のインバータ回路100と、コンバータ回路200と、出力電圧を平滑する平滑コンデンサ3とを備える。
交流電源1は、電力変換装置1000の第1の入力端子t1と第2の入力端子t2との間に接続される。第1の入力端子t1および第2の入力端子t2は、ダイオードブリッジ4に接続される。ダイオードブリッジ4の一方の出力端子は、リアクトル2に接続される。リアクトル2は、ハーフブリッジ型のインバータ回路100に直列に接続される。
インバータ回路100は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの2個の半導体スイッチ素子(第1の半導体スイッチに相当)101a、半導体スイッチ素子(第2の半導体スイッチに相当)102aと、直流コンデンサ103とによって構成されるハーフブリッジ型のインバータである。半導体スイッチ素子101aがインバータ回路100の正電位側の半導体スイッチ素子であり、半導体スイッチ素子102aがインバータ回路100の負電位側の半導体スイッチ素子である。半導体スイッチ素子101aと半導体スイッチ素子102aとは、直列に接続され、その接続点(交流側端子)がリアクトル2に接続されている。
また、半導体スイッチ素子101aのドレインと、半導体スイッチ素子102aのソースには、それぞれ直流コンデンサ103の正極および負極が接続されている。半導体スイッチ素子101a、102aのそれぞれのソース・ドレイン間には、ダイオード101b、102bが逆並列に接続されている。以下の説明において、ダイオード101b、102bを区別して示す場合には、第1ダイオード101b、第2ダイオード102bという。第1ダイオード101bおよび第2ダイオード102bは、半導体スイッチ素子101a、102aにそれぞれ内蔵された構成であってもよい。また、半導体スイッチ素子101aを省略して、第1ダイオード101bのみで構成してもよい。
コンバータ回路200は、MOSFETなどの2個の半導体スイッチ素子(第3の半導体スイッチに相当)201a、半導体スイッチ素子(第4の半導体スイッチに相当)202aによって構成されるハーフブリッジ型のコンバータである。半導体スイッチ素子201aは、インバータ回路100の正電位側の半導体スイッチ素子101aと平滑コンデンサ3の正極側の直流母線3aとの間に接続されている。半導体スイッチ素子202aは、インバータ回路100の負電位側の半導体スイッチ素子102aと平滑コンデンサ3の負極側の直流母線3bとの間に接続されている。平滑コンデンサ3の負極側の直流母線3bは、ダイオードブリッジ4の他方の出力端子に直接接続されている。
半導体スイッチ素子201a、202aのそれぞれのソース・ドレイン間には、ダイオード201b、202bが逆並列に接続されている。以下の説明において、ダイオード201b、202bを区別して示す場合には、第1ダイオード201b、第2ダイオード202bという。第1ダイオード201bおよび第2ダイオード202bは、半導体スイッチ素子201a、202aにそれぞれ内蔵された構成であってもよい。また、半導体スイッチ素子201aを省略して、第1ダイオード201bのみで構成してもよい。
半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202aは、MOSFET以外にも、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor;略称:IGBT)などを用いてもよく、その場合も、それぞれダイオード101b、102b、201b、202bを逆並列に接続した構成とする。
また、図示は省略するが、電力変換装置1000は、インバータ回路100の直流コンデンサ103の直流電圧Vsubを測定する電圧計(第3の電圧検出器に相当)、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを測定する電圧計(第2の電圧検出器に相当)、交流電源1からの交流電圧Vinを測定する電圧計(第1の電圧検出器に相当)、および交流電源1からの交流電流Iinを測定する電流計を備えている。
制御回路10aは、インバータ回路100の直流コンデンサ103の直流電圧Vsubと、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcと、電力変換装置1000の入力端子t1、t2間に印加される交流の入力電圧Vinと、交流電流Iinとに基づいて、インバータ回路100およびコンバータ回路200の出力制御を行う。具体的には、制御回路10aは、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが一定の目標電圧Vdc*になるように、また、交流電源1からの交流電流Iinの力率がほぼ「1」となるように、さらに直流コンデンサ103の直流電圧Vsubが一定の目標電圧(電圧指令値Vsub*)となるように、インバータ回路100の半導体スイッチ素子101a、102aと、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aに与えるゲート信号11、12を生成して、インバータ回路100およびコンバータ回路200の出力制御を行う。
さらに具体的には、制御回路10aは、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubが直流コンデンサ103の電圧指令値Vsub*に追従するように、半導体スイッチ素子202aのオン、オフを制御すると共に、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが平滑コンデンサ3の目標電圧Vdc*に追従し、交流電源1からの入力力率を調整し、入力力率が改善するように、半導体スイッチ素子101a、102aのオン、オフを制御する。
平滑コンデンサ3には、不図示の負荷が接続されている。制御回路10aは、交流電源1からの交流電力を変換して平滑コンデンサ3に直流電力を供給するように、インバータ回路100およびコンバータ回路200の出力制御を行う。
このように構成される電力変換装置1000の動作、すなわち平滑コンデンサ3に直流電力を出力する動作について、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態における電力変換装置1000の動作を説明するための主回路500の電流経路を示す図である。図2では、電流が流れる経路を太線で示している。図3は、本発明の第1の実施の形態における電力変換装置1000の各部の波形とインバータ回路100の直流コンデンサ103の充放電状態とを示す図である。図3(a)は交流電圧Vinの電圧波形、(b)は半導体スイッチ素子101a、102aのオン、オフの状態、(c)は半導体スイッチ素子202aのオン、オフの状態、(d)は直流コンデンサ103の充放電の状態を示す。なお、半導体スイッチ201aは、202aとは相補的にオン、オフ動作するため、図示していない。
出力段の平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcは、交流電源1の交流電圧Vinのピーク電圧Vpより高く、図3では、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが一定の目標電圧Vdc*に制御されている状態を示す。
制御回路10aは、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcの目標電圧Vdc*を、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubより常に高く設定する。このように設定することによって、インバータ回路100の直流コンデンサ103から、平滑コンデンサ3への電力流出を防ぎ、電力変換装置の安定した制御を行うことができる。
交流電源1から出力される交流電圧Vinは、ダイオードブリッジ4で全波整流されるため、交流電源1の交流周期の2倍周期で動作する。インバータ回路100は、交流電源1からの入力力率がほぼ「1」になるように、PWM制御によって交流電流Iinを制御して出力し、交流側の発生電圧を交流電源1から出力される交流電圧Vinに重畳する。以下の説明では、交流電源1からの入力力率がほぼ「1」になるように交流電流Iinを制御することを、単に「電流制御」という。
図3に示すように、交流電源1の電圧位相をθとし、まず、交流電圧Vinが正極性である0≦θ<πの場合について説明する。交流電圧Vinが負極性であるπ≦θ<2πの場合も、交流入力はダイオードブリッジ4で整流されるため、制御回路10aは、前述の0≦θ<πの場合と同様の制御を実行する。
図2(a)に示すように、半導体スイッチ素子102a、202aがオン状態、半導体スイッチ素子101a、201aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103をスルーするように流れる。
図2(b)に示すように、半導体スイッチ素子101a、202aがオン状態、半導体スイッチ素子102a、201aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103を充電するように流れる。
図2(c)に示すように、半導体スイッチ素子102a、201aがオン状態、半導体スイッチ素子101a、202aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103を放電するように流れる。
図2(d)に示すように、半導体スイッチ素子101a、201aがオン状態、半導体スイッチ素子102a、202aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103をスルーするように流れる。
制御回路10aは、このような4種の半導体スイッチ素子の制御の組み合わせによって、半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202aを制御して、インバータ回路100をPWM制御する。これによって、直流コンデンサ103を充放電させ、電流制御を行う。
なお、半導体スイッチ素子101a、201aに流れる電流が、ソースからドレインへ流れる場合は、その半導体スイッチ素子をオフして、逆並列接続されたダイオード101b、201bに電流を流すように制御してもよい。
図3に示すように、交流電源1の交流電圧Vinのゼロクロス位相(θ=0、π)を中央とした±θ1(以下、θ1を「短絡位相」と称する)の位相範囲(短絡期間)では、半導体スイッチ素子202aをオン状態(オンに固定)、半導体スイッチ素子201aをオフ状態(オフに固定)として、平滑コンデンサ3をバイパスさせる。
この場合、図2(a)、(b)に示すように、交流電源1からの交流電流Iinはリアクトル2で限流されてインバータ回路100に入力され、半導体スイッチ素子202aを通り、交流電源1に戻る。このとき、図2(a)の動作モードによって、リアクトル2が励磁されるが、図2(b)の動作モードによって、リアクトル2の励磁がリセットされる。
また、図2(a)の動作モードの場合は、直流コンデンサ103をスルーし、図2(b)の動作モードの場合は、直流コンデンサ103が充電される。したがって、図2(a)の動作モードと図2(b)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を充電させ、かつ電流制御を行うことができる。
次に、図3に示すように、交流電源1の交流電圧Vinのゼロクロス位相を中央とした±θ1以外の位相範囲(開放期間)では、半導体スイッチ素子202aをオフ状態、半導体スイッチ素子201aをオン状態として、平滑コンデンサ3に直流電力を出力する。
この場合、図2(c)、(d)に示すように、交流電源1からの交流電流Iinはリアクトル2で限流されてインバータ回路100に入力され、半導体スイッチ素子201aを通り、平滑コンデンサ3を充電して、交流電源1に戻る。
このとき、インバータ回路100は、電圧(Vdc*−Vin)を出力するよう、図2(c)と(d)の動作モードとを繰り返す。これによって、交流電源1にインバータ回路100の出力電圧(Vdc*−Vin)を加算して、交流電源1のピーク電圧より高い目標電圧Vdc*に達するように、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを制御する。ここで、図2(c)の動作モードによってリアクトル2が励磁され、図2(d)の動作モードによってリアクトル2の励磁がリセットされる。
また、図2(c)の動作モードの場合、直流コンデンサ103が放電され、図2(d)の動作モードの場合、直流コンデンサ103をスルーする。したがって、図2(c)の動作モードと図2(d)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を放電させ、かつ電流制御を行うことができる。
以上で説明したように、交流電源1の交流電圧Vinの電圧位相θのゼロクロス位相(θ=0、π)±θ1の位相で、半導体スイッチ素子201aと半導体スイッチ素子202aとの制御を切り替え、このゼロクロス位相を中央とする±θ1の位相範囲でのみ、半導体スイッチ素子202aをオン状態、半導体スイッチ素子201aをオフ状態として、平滑コンデンサ3をバイパスさせる。
この場合、制御回路10aは、インバータ回路100が交流電圧Vinの逆極性にほぼ等しい電圧を発生するように制御しつつ、入力力率がほぼ「1」になるように交流電流Iinを制御して出力し、直流コンデンサ103を充電する。
一方、このゼロクロス位相を中央とする±θ1以外の位相範囲では、制御回路10aは、半導体スイッチ素子201aをオン状態、半導体スイッチ素子202aをオフ状態として、インバータ回路100が平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを目標電圧Vdc*に維持するように制御しつつ、入力力率がほぼ「1」になるように交流電流Iinを制御して出力する。
この場合、インバータ回路100は、平滑コンデンサ3の直流電圧と交流電源の差電圧(Vdc*−Vin)を発生し、直流コンデンサ103は放電される。
なお、半導体スイッチ素子202aがオンとなる短絡期間は、ゼロクロス位相(θ=0、π)が短絡期間の中央となるものとして説明したが、ゼロクロス位相を含む位相範囲で、いずれかに偏るように短絡期間を設定してもよい。
短絡位相θ1に関して、インバータ回路100の直流コンデンサ103の充電と放電のエネルギーが等しくなるように半導体スイッチ素子202aのオン期間を設定し、直流コンデンサ705の直流電圧Vsubを一定に保つような短絡位相θ1を決定することができる。
すなわち、インバータ回路100の直流コンデンサ103の充電と放電のエネルギーが等しいとすると、以下の式(1)が成り立つ。ただし、Vpは、入力電圧Vinのピーク電圧であり、Ipは、入力電流Iinのピーク電流であり、Vin=Vp・sinθ、Iin=Ip・sinθとする。
式(1)より、Vdcは式(2)で定義される。
Vdc=Vp・π/(4cosθ1)・・・(2)
式(2)より、直流電圧Vdcの下限値はθ1が0となる場合に得られ、値は(π/4)Vpとなる。ただし、回路の構成上、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcがピーク電圧Vp以下となると短絡電流を生じるため、直流電圧Vdcがピーク電圧Vp以下となるような短絡位相θ1を設定すると、高力率制御が不可能となる。
このように、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcは、短絡位相θ1によって決まり、短絡位相θ1を変化させて制御できる。そして、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcは、目標電圧Vdc*に追従するように制御される。
また、インバータ回路100の直流コンデンサ103の直流電圧Vsubを、0〜θ1およびθ1〜π/2の各位相範囲におけるインバータ回路100の所望の発生電圧の大きさ以上に設定する。この場合、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを目標電圧Vdc*に維持することができ、また、入力力率がほぼ「1」になるように交流電流Iinを制御するインバータ回路100の電流制御を、交流電源1の全位相において、信頼性良く行うことができる。
なお、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubが以下の式(3)および式(4)を満たすことで、図2の動作モードにて電流制御することができる。
Vsub≧|Vp・sinθ1|・・・(3)
Vsub≧Vdc−|Vp・sinθ1|・・・(4)
直流コンデンサ103の直流電圧Vsubは、交流電源1からの交流電圧Vinのピーク電圧Vp以下に設定する。PWM制御を行うインバータ回路100では、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubが大きくなると損失が増大するため、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubは式(3)、式(4)を満たす条件で小さく設定することが望ましい。
ここで、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubを、式(3)、式(4)の制約を満たさないほど低い電圧に設定した場合においても、電流制御を継続する方法について述べる。
上述の説明では、ゼロクロス位相を中央とした±θ1の短絡期間において、図2(a)と図2(b)の動作モードとを組み合わせてインバータ回路100をPWM制御するとしたが、式(3)を満たさない場合、図2(a)と(b)の動作モードのいずれにおいてもリアクトル2の励磁がリセットされる状態となり、電流制御を行うことができない。
また、短絡期間以外の期間(開放期間)において、図2(c)と(d)の動作モードとを組み合わせてインバータ回路100をPWM制御するとしたが、式(4)を満たさない場合、図2(c)と(d)の動作モードのいずれにおいてもリアクトル2の励磁がリセットされる状態となり、電流制御を行うことができない。
このように式(3)、式(4)を満たさない場合には、電流制御をインバータ回路100からコンバータ回路200へ切り替えることで、直流電圧Vsubの値に関わらず電流制御を継続可能とすることができる。この動作について、図4を用いて説明する。
図4は、式(3)、式(4)の制約を満たさない場合の各部の波形と直流コンデンサ103、平滑コンデンサ3の充放電状態とを示す図である。図4(a)は交流電圧Vinの電圧波形、(b)は半導体スイッチ素子101a、(c)は半導体スイッチ素子102aのオン、オフの状態、(d)は半導体スイッチ素子202aのオン、オフの状態、(e)は直流コンデンサ103の充放電の状態、(f)は平滑コンデンサの充放電の状態を示す。なお、半導体スイッチ201aは、202aとは相補的にオン、オフ動作するため、図示していない。また、(f)に関して、平滑コンデンサ3から図示しない負荷への出力のみの状態を放電と表している。
短絡期間において、直流電圧Vsubが交流電圧Vinより低い場合(図4のθa〜θ1およびπ−θ1〜π−θa)、すなわち式(3)を満たさない場合には、半導体スイッチ素子101aをオン、半導体スイッチ素子102aをオフとし、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aをPWM制御することにより、図2(b)、(d)の動作モードの組み合わせによって電流制御を行う。このとき、図2(b)の動作モードにてリアクトル2が励磁され、図2(d)の動作モードにてリアクトル2の励磁がリセットされる。また、直流コンデンサ103は充電される。
このとき、電流制御するための制約は以下の式(5)であり、すなわち式(3)の不等号を反転させた条件となる。
Vsub≦|Vp・sinθ1|・・・(5)
開放期間において、直流電圧Vsubが直流電圧Vdc−交流電圧Vinより低い場合(図4のθ1〜θbおよびπ−θb〜π−θ1)、すなわち式(4)を満たさない場合には、半導体スイッチ素子101aをオフ、半導体スイッチ素子102aをオンとし、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aをPWM制御することにより、図2(a)、(c)の動作モードの組み合わせによって電流制御を行う。このとき、図2(a)の動作モードにてリアクトル2が励磁され、図2(c)の動作モードにてリアクトル2の励磁がリセットされる。また、直流コンデンサ103は放電される。
このとき、電流制御するための制約は以下の式(6)であり、すなわち式(4)の不等号を反転させた条件となる。
Vsub≦Vdc−|Vp・sinθ1|・・・(6)
ここで、式(3)と式(5)の制約について見比べると、上述のとおり不等号が反転した式となっており、すなわち一方の制約が満足できなくなったときに、他方の制約を満足することができるようになる。式(4)と式(6)の制約についても同様である。このため、インバータ回路100による電流制御とコンバータ回路200による電流制御を切り替える場合、式(3)〜式(6)の電圧条件に厳密に一致した状態で制御を切り替えなければ、電流制御できない条件で動作することとなり、電流波形に歪みを生じる原因となる。
しかし、実際の制御においては、電圧計で検出した電圧値を用いて式(3)〜式(6)の電圧条件に基づいた動作判定を行い、制御演算し、その結果を反映するまでに遅延を生じるため、制御演算時と実行時の電圧に誤差を生じてしまう。また、回路導通時に生じる電圧降下による誤差や、電流制御に必要な制御電圧を出力可能であるかも考慮しなければ、電流制御できない条件での動作に陥ってしまい、電流制御性が低下してしまう。この対策として、補正値用いて制御することが本特許の特徴である。この制御については後述する。
次に、コンバータ回路200およびインバータ回路100の制御の詳細について、図5および図6に基づいて説明する。図5および図6は、本発明の第1の実施の形態における電力変換装置1000の制御回路10aの構成を示すブロック図である。さらに具体的には、図5は、制御回路10aによるインバータ回路100およびコンバータ回路200の出力制御に関係する部分の構成を示すブロック図であり、図6は、制御回路10aにおいて4種類の動作状態を判定する部分のブロック図である。なお4種類の動作状態とは、短絡期間において式(3)を満足する/しないの2種類と、開放期間において式(4)を満足する/しないの2種類から定まる動作状態である。
図5より、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubの制御を行う場合の制御回路10aは、減算器40、比例積分(PI)制御器41、PWM制御部42、三角波生成部43を備えて構成され、インバータ回路100の直流コンデンサ103の直流電圧Vsubを電圧指令値Vsub*に追従させる制御を行う。
具体的には、まず、制御回路10aにおいて、減算器40は、設定された電圧指令値Vsub*と検出された直流電圧Vsubとの差分を取り、得られた値を差分電圧ΔVsubの値として出力する。減算器40から出力された差分電圧ΔVsubの値は、PI制御器41に与えられる。
PI制御器41は、減算器40から与えられた差分電圧ΔVsubの値について比例積分(PI)制御を行う。PI制御器41は、PI制御によって得られた値を、短絡位相目標値θ1*として出力する。
また、PI制御器41で求められた短絡位相目標値θ1*は、PWM制御部42に与えられる。PWM制御部42では、三角波生成部43において生成された交流電源1の周波数の2倍の周期に同期した三角波をキャリア波として用いて比較演算し、交流電源1の交流電圧Vinがゼロクロスする位相をほぼ中央としてオン信号となる短絡/開放信号44を生成する。短絡/開放信号44は、交流電源1の周波数の2倍の低周波スイッチング信号となる。
このような制御により、短絡/開放信号44によって直流コンデンサ103の充放電が制御される。具体的には、直流電圧Vsubが低下すると、短絡期間は長くなるように制御され、直流電圧Vsubが増加すると、短絡期間は短くなるように制御される。
短絡/開放信号44はコンバータ回路駆動信号選択器45に与えられる。コンバータ回路駆動信号選択器45は動作判定信号51を受けて、短絡/開放信号44によりコンバータ回路200を駆動するか、入力電流制御のための電流制御PWM信号29によりコンバータ回路200を駆動するかを決定し、出力する。この詳細については後述する。
また、図5より、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcおよび入力電流Iinの制御を行う場合の制御回路10aは、第1減算器20、第1比例積分(PI)制御器21、交流電源同期正弦波生成部22、乗算器23、第2減算器24、第2比例積分(PI)制御器25、デューティ演算器26、スイッチングキャリア生成部27およびPWM制御部28を備えて構成される。
制御回路10aは、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを目標電圧Vdc*に維持し、交流電源1の力率が、力行動作時にはほぼ「1」になるように入力電流Iinを制御する。
具体的には、制御回路10aにおいて、第1減算器20は、平滑コンデンサ3の目標電圧Vdc*と平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcとの差分を取り、得られた値を差分電圧ΔVdcとして出力する。第1減算器20から出力された差分電圧ΔVdcは、第1PI制御器21に与えられる。
第1PI制御器21は、減算器20から与えられた差分電圧ΔVdcの値について比例積分(PI)制御を行う。PI制御器21は、PI制御によって得られた値を、入力電流実効値(Root Mean Square value;略称:RMS)目標値IinRMS*として出力する。
交流電源同期正弦波生成部22は、交流電源1に同期した周波数および位相を有する正弦波を生成する。交流電源同期正弦波生成部22によって生成される正弦波の振幅は、√2とする。
乗算器23は、PI制御器21から出力される入力電流実効値目標値IinRMS*と、交流電源同期正弦波生成部22で生成された正弦波(振幅√2)とを乗算して、入力電圧Vinである交流電源1からの交流電圧に同期した正弦波の電流指令値を、入力電流目標値Iin*として生成する。これによって、力率がほぼ「1」となるように制御することができる。入力電流目標値Iin*は、第2減算器24に与えられる。
第2減算器24は、乗算器23から与えられた入力電流目標値Iin*と、入力電流Iinの値との差分を取り、得られた値を差分電流ΔIinとして出力する。差分電流ΔIinは、第2PI制御器25に与えられる。
第2PI制御器25は、第2減算器24から与えられた差分電流ΔIinについて比例積分(PI)制御を行う。第2PI制御器25は、PI制御を行うことによって得られた値を、限流回路であるリアクトル2への印加電圧目標値となる電圧目標値VL*として出力する。電圧目標値VL*はデューティ演算器26に与えられる。
デューティ演算器26は、第2PI制御器25から与えられた電圧目標値VL*に基づき、入力電流制御するためのPWMデューティDを生成する。ただし、動作判定信号51を受けて、PWMデューティDの計算方法は適宜切り替わる。この詳細については後述する。
PWM制御部28は、デューティ演算器26から与えられるPWM制御デューティDを用いて、入力電流制御を行う半導体スイッチ素子への電流制御PWM信号29を出力する。この電流制御PWM信号29は、インバータ回路駆動信号選択器30とコンバータ回路駆動信号選択器45に与えられ、インバータ回路100またはコンバータ回路200のいずれかの駆動に用いられる。この詳細については後述する。
次に、図6に示す動作判定器50による4種類の動作状態の判定について説明する。この動作判定器50による動作判定に用いる電圧値の補正方法が、本実施の形態1における特徴的な部分である。
動作判定器50は、交流電源1の交流電圧Vin、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdc、直流コンデンサ103の直流電圧Vsubと、図5の直流電圧Vsubの制御により求まる短絡/開放信号44を入力として、動作判定信号51を出力する。また、動作状態の判定遅延による影響を最小限とするため、動作判定器50による判定処理は、図5の入力電流制御の演算と同じ制御周期にて実施する。
具体的には、動作判定器50は、短絡/開放信号44と式(3)および式(4)の条件に基づいて求めた4種類の動作状態を表す動作判定信号51を出力するが、制御遅延等により生じる動作状態の判定誤差を抑えるため、式(3)、式(4)に対して電圧補正値を加えた式(7)、式(8)により、動作状態を判定する。
Vsub補正後値≧|Vin補正後値−VL*|・・・(7)
Vsub補正後値≧Vdc補正後値−|Vin補正後値−VL*|・・・(8)
式(7)、式(8)のVin補正後値、Vdc補正後値、Vsub補正後値は、式(9)〜式(11)のように求める。なお、式(9)〜式(11)のVin、Vdc、Vsubは電圧計で検出した瞬時電圧を表しており、それぞれに対して電圧補正値を加えている。
Vin補正後値=Vin+Vin補正+Vin位相補正+電圧降下補正・・・(9)
Vdc補正後値=Vdc+Vdc補正+Vdc位相補正・・・(10)
Vsub補正後値=Vsub+Vsub補正+Vsub位相補正・・・(11)
動作判定器50は入力電流制御を行う制御周波数と同じタイミングにて、式(7)、式(8)の判定を実施する。
短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たす場合は、動作状態は『a.インバータ回路にて電流制御する短絡期間』となる。
短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たす場合は、動作状態は『b.インバータ回路にて電流制御する開放期間』となる。
短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たさない場合は、動作状態は『c.コンバータ回路にて電流制御する短絡期間』となる。
短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たさない場合は、動作状態は『d.コンバータ回路にて電流制御する開放期間』となる。
動作判定器50は、上記a.〜d.の動作状態を動作判定信号51として出力する。
式(9)〜式(11)の各電圧補正値について説明する。
式(9)〜式(11)のVin補正、Vdc補正、Vsub補正は、制御演算と制御実行のタイミングのズレにより生じる電圧誤差を補正する電圧値である。
式(9)のVin補正について、電圧計にて交流電圧Vinの瞬時値を検出してから、その値を用いて式(7)、式(8)の判定を行い、その判定結果を反映した動作が実際に実行されるまでには遅延時間があり、また交流電圧Vinは系統からの50Hz/60Hzの交流信号であるため、この遅延時間での交流電圧Vinの推定変化量をVin補正として加味する。デジタル制御系であれば、交流電圧Vinのサンプリングと制御実行されるタイミングはほぼ一定であり、また高力率制御を行うために交流電圧Vinとの同期正弦波を生成しているため、遅延時間により交流電圧Vinがどの程度変化するか推定することができる。
なお、同期正弦波を生成していない場合においても、交流電圧Vinの瞬時値から位相を推定し、所定の遅延によりどの程度交流電圧Vinが変化するか推定可能である。
式(10)のVdc補正について、平滑コンデンサ3は短絡期間(インバータ回路100による電流制御時)において放電、開放期間において充電されるため、厳密には直流電圧Vdcは電圧値が増減する交流となっており、上述Vin補正と同様に、電圧値検出から制御実行までの遅延時間に変化する直流電圧Vdcの推定変化量をVdc補正として加味する。図4からも分かるように、交流電圧Vinの2倍の周波数にて平滑コンデンサ3の充放電が正確に切り替わるため、直流電圧Vdcはほぼ直線的に変化する鋸波状の電圧波形となり、電圧値の前回検出値と今回検出値の比較によって、直流電圧Vdcの傾きを容易に推定可能であり、適切なVdc補正値を設定できる。
式(11)のVsub補正について、直流コンデンサ103は短絡期間において充電、開放期間において放電されるため、厳密には直流電圧Vsubは短絡期間・開放期間にて電圧値が増減する交流となっており、上述Vin補正と同様に、電圧値検出から制御実行までの遅延時間に変化する直流電圧Vsubの推定変化量をVsub補正として加味する。図4からも分かるように、交流電圧Vinの2倍の周波数にて直流コンデンサ103の充放電が正確に切り替わるため、直流電圧Vsubはほぼ直線的に変化する鋸波状の電圧波形と見なすことができ、電圧値の前回検出値と今回検出値の比較によって、直流電圧Vsubの傾きを容易に推定可能であり、適切なVsub補正値を設定できる。
なお、Vin補正、Vdc補正、Vsub補正について、電圧計での検出から制御実行までの電圧変化量の推定値を補正値としているが、詳細には、電圧計での検出から制御実行される制御周期における電圧平均値までの電圧変化量を推定して電圧補正値とすることにより、誤差の少ない電流制御が可能となる。
式(9)のVin位相補正は、電圧計の帯域幅の影響による位相の遅延を考慮した電圧補正である。交流電圧Vinの電圧計では、通常エリアシング防止のため標本化定理に基づいたフィルタが挿入され、制御周波数が低い条件のときには、電流制御の安定化のためにさらにカットオフ周波数の低いフィルタが追加され、電圧計の帯域幅が制限される。そのため、設計した電圧計のフィルタ性能から、交流電圧Vinの基本波成分に生じる位相遅れを読み取り、この位相遅れを基に、電圧計で検出した交流電圧Vinの瞬時値が実際の電圧値からどの程度誤差を生じているか算出可能であり、この誤差分をVin位相補正として設定する。
式(10)のVdc位相補正、および式(11)のVsub位相補正は、上記Vin位相補正と同様に、電圧系の帯域幅の影響による位相の遅延を考慮した電圧補正である。Vdcは短絡期間で減少、開放期間で増加し、Vsubは短絡期間で増加、開放期間で減少するため、VdcとVsubは厳密には交流電圧Vinの2倍の周波数にて変化する交流電圧となる。そのため、設計した電圧計のフィルタ性能から、VdcおよびVsubの基本波成分に生じる位相遅れを読み取り、この位相遅れを基に、電圧計で検出した瞬時値が実際の電圧値からどの程度誤差を生じているか算出可能であり、この誤差分をVdc位相補正およびVsub位相補正として設定する。
式(9)の電圧降下補正は、回路の導通により生じる電圧降下を考慮した電圧補正である。図2に示した各動作モードについて、少なくともダイオードブリッジ4において2つのダイオードを通り、2V程度の電圧降下を生じる。各動作条件において生じる電圧降下を見積もり、電圧降下補正として加えることにより、より正確に電流制御可能な動作状態の判定が可能となる。
式(7)、式(8)のVL*は、図5の入力電流Iin制御のPI演算により求まるリアクトル2の電圧目標値VL*である。式(3)〜式(6)にて示した制約は電流制御に必要な条件であることに間違いないが、電流制御のためにリアクトル2に所望の電圧目標値VL*を印加することが可能であるかについては考慮できていない。電圧目標値VL*を電圧補正値として加味して動作状態を判定することにより、所望の電流制御が可能となる適切な動作状態に切り替えることができる。
このような電圧補正値を加味して式(7)、式(8)の判定を行うことにより、より正確に電流制御が可能な電圧条件にて動作状態を切り替えることが可能となり、入力電流Iinに歪みを生じることなく連続的に電流制御を継続可能となる。
次に、図5のデューティ演算器26について説明する。デューティ演算器26では、電圧目標値VL*に基づいてPWMデューティDを生成するが、入力される動作判定信号51で示される動作状態に応じて、PWMデューティDの計算式を切り替える。PWMデューティDの計算式は、4種類の動作状態に合わせて以下の式(12)〜式(15)から選択される。
D=(VL*−Vin補正後値+Vsub補正後値)/Vsub補正後値・・・(12)
D=(VL*−Vin補正後値+Vdc補正後値)/Vsub補正後値・・・(13)
D=(VL*−Vin補正後値+Vdc補正後値)/(Vdc補正後値−Vsub補正後値)・・・(14)
D=(VL*−Vin補正後値−Vsub補正後値+Vdc補正後値)/(Vdc補正後値−Vsub補正後値)・・・(15)
なお、式(12)〜式(15)のVin補正後値、Vdc補正後値、Vsub補正後値は、式(9)〜式(11)に示したものと同様である。
また、ダイオードブリッジ4を備えているため、交流電圧Vinが負極性の場合には式(12)〜式(15)の電圧目標値VL*に−1を乗算して演算する。
動作判定信号51が『a.インバータ回路にて電流制御する短絡期間』(短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たす)のときは、式(12)にてPWMデューティDを計算する。
動作判定信号51が『b.インバータ回路にて電流制御する開放期間』(短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たす)のときは、式(13)にてPWMデューティDを計算する。
動作判定信号51が『c.コンバータ回路にて電流制御する短絡期間』(短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たさない)のときは、式(14)にてPWMデューティDを計算する。
動作判定信号51が『d.コンバータ回路にて電流制御する開放期間』(短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たさない)のときは、式(15)にてPWMデューティDを計算する。
このように電圧補正値を加味した式(12)〜式(15)によりPWMデューティDを演算して電流制御実行することにより、定常偏差を抑えて電流制御性を向上することができる。
なお、式(12)、式(13)は半導体スイッチ素子102aのオンデューティについて求めた式であり、式(14)、式(15)は半導体スイッチ素子202aのオンデューティについて求めた式である。
また、式(12)〜式(15)の分母について、いずれも電圧目標値VL*に対して動作状態に応じた電圧値を加算している。これは、動作状態により予め定まる電圧値をフィードフォワード項として補正する計算を行っており、制御応答性を高める効果がある。
次に、図5のインバータ回路駆動信号選択器30、およびコンバータ回路駆動信号選択器45について説明する。インバータ回路駆動信号選択器30とコンバータ回路駆動信号選択器45では、入力される動作判定信号51で示される4種類の動作状態に応じて、インバータ回路100に与えるゲート信号11と、コンバータ回路200に与えるゲート信号12を選択する。
動作判定信号51が『a.インバータ回路にて電流制御する短絡期間』(短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たす)の場合、インバータ回路駆動信号選択器30は電流制御PWM信号29をゲート信号11として出力し、半導体スイッチ素子101a、102aにて入力電流Iinの制御を行う。また、コンバータ回路駆動信号選択器45は短絡/開放信号44をゲート信号12として出力し、半導体スイッチ素子201aをオフ、半導体スイッチ素子202aをオンとして動作させる。
動作判定信号51が『b.インバータ回路にて電流制御する開放期間』(短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たす)の場合、インバータ回路駆動信号選択器30は電流制御PWM信号29をゲート信号11として出力し、半導体スイッチ素子101a、102aにて入力電流Iinの制御を行う。また、コンバータ回路駆動信号選択器45は短絡/開放信号44をゲート信号12として出力し、半導体スイッチ素子201aをオン、半導体スイッチ素子202aをオフとして動作させる。
動作判定信号51が『c.コンバータ回路にて電流制御する短絡期間』(短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たさない)の場合、インバータ回路駆動信号選択器30はオン/オフ信号をゲート信号11として出力し、半導体スイッチ素子101aをオン、半導体スイッチ素子102aをオフとして動作させる。また、コンバータ回路駆動信号選択器45は電流制御PWM信号29をゲート信号12として出力し、半導体スイッチ素子201a、202aにて入力電流Iinの制御を行う。
動作判定信号51が『d.コンバータ回路にて電流制御する開放期間』(短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たさない)の場合、インバータ回路駆動信号選択器30はオン/オフ信号をゲート信号11として出力し、半導体スイッチ素子101aをオフ、半導体スイッチ素子102aをオンとして動作させる。また、コンバータ回路駆動信号選択器45は電流制御PWM信号29をゲート信号12として出力し、半導体スイッチ素子201a、202aにて入力電流Iinの制御を行う。
以上に述べたように、第1の実施の形態における電力変換装置1000によれば、インバータ回路100のPWM制御による入力電流制御と、コンバータ回路200のPWM制御による入力電流制御の切り替えにより、インバータ回路100の直流コンデンサ103の電圧を低く維持しつつ電流制御可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、切り替え判定での誤差を少なくし、入力電流Iin制御が不可能な電圧条件にて動作することによる入力電流Iinの歪みを抑制することができる。
また、短絡期間において式(3)を満たさない場合に、半導体スイッチ素子101aをオン、半導体スイッチ素子102aをオフとし、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aをPWM制御することにより、短絡期間における直流コンデンサ103の充電を維持しつつ、入力電流Iin制御が可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、コンバータ回路200でのPWM制御への切り替え判定の誤差による入力電流Iinの歪みを抑制できる。
また、開放期間において式(4)を満たさない場合に、半導体スイッチ素子101aをオフ、半導体スイッチ素子102aをオンとし、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aをPWM制御することにより、開放期間における直流コンデンサ103の放電を維持しつつ、入力電流Iin制御が可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、コンバータ回路200でのPWM制御への切り替え判定の誤差による入力電流Iinの歪みを抑制できる。
また、動作状態の判定を入力電流Iinの制御周期にて実施することにより、各電圧の変化量を細かく推定した補正や、電流制御の制御を受けての補正が可能であり、これにより切り替え判定での誤差を抑制することができる。
また、入力電流Iin制御におけるPI制御演算結果(電圧目標値VL*)を用いて動作状態を判定する電圧条件の補正を行うことにより、所望の電流制御が可能となる適切な動作状態に切り替えることができる。詳細には、比例制御の演算結果により補正を行うことで所望の電流制御が可能な動作状態への切り替えを判定可能としており、積分制御の演算結果により補正を行うことで、積分にて補償している定常偏差を加味することができ、切り替え判定の誤差を抑制可能としている。
また、入力電流Iin制御でのPWMデューティD演算(デューティ演算器26)にて用いる電圧値について、実際の制御においては電圧計でのサンプリングと制御実行のタイミングに誤差があるため、制御の演算と実行にて電圧誤差を生じることとなり、これが定常偏差となって入力電流Iinの制御性が低下する原因となる。そのため、電流制御に用いる電圧値に対して推測可能な誤差を予め電圧補正値として加味することで、電流制御性を向上させることができている。コンバータ回路200においてPWM制御するよう切り替えた場合においても、同様に電流制御性を向上可能である。
また、交流電圧Vin、直流電圧Vdc、直流電圧Vsubについて、電圧計でのサンプリングから制御実行までに生じると推定される電圧変化量を電圧補正値として加味して電流制御および動作状態の判定を実施することにより、入力電流Iinの歪みを抑え、電流制御性を向上させることができる。
また、交流電圧Vin、直流電圧Vdc、直流電圧Vsubに対し、電圧計の帯域幅の影響による位相の遅延を考慮した電圧補正を加味して電流制御および動作状態の判定を実施することにより、入力電流Iinの歪みを抑え、電流制御性を向上させることができる。
また、回路の導通により生じる電圧降下を考慮した電圧補正を加味して電流制御および動作状態の判定を実施することにより、入力電流Iinの歪みを抑え、電流制御性を向上させることができる。
なお、上記実施の形態1では、入力電流Iin制御におけるPI制御演算結果(電圧目標値VL*)を用いて動作状態を判定する電圧条件の補正を行っていたが、P制御、I制御の演算結果に限らず、例えばD制御など、制御演算によって算出されたリアクトル2への印加電圧目標値であれば同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態1では、式(3)および式(4)を満たさない場合に、半導体スイッチ素子101a、102aをオンまたはオフに固定し、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aをPWM制御する方法について示したが、半導体スイッチ素子102a、202aをオン/オフ同期させてPWM制御することによっても電流制御を継続させることができる。この場合、一般的な昇圧チョッパと同様の動作となる。これにより、入力電流Iin制御が可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、コンバータ回路200でのPWM制御への切り替え判定の誤差による入力電流Iinの歪みを抑制できる。
実施の形態2.
上記実施の形態1では電力変換装置の入力にダイオードブリッジを持ち力行機能のみ備えた構成について示したが、この実施の形態2では、ダイオードブリッジを削除し、ハーフブリッジ型のインバータ回路を2段に接続し、力行・回生機能を備えた構成について示す。以下、この発明の実施の形態2における電力変換装置について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2における電力変換装置2000の構成を示す図である。電力変換装置2000は、交流電源1の交流電力を直流電力に変換して出力する主回路600と、制御部である制御回路10bとを備えて構成される。主回路600は、限流回路を構成するリアクトル2と、ハーフブリッジ型の2つのインバータ回路100、300と、ハーフブリッジ型の2つのコンバータ回路200、400と、出力電圧を平滑する平滑コンデンサ3とを備える。なお、図1に示した電力変換装置1000と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
交流電源1は、電力変換装置2000の第1の入力端子t1と第2の入力端子t2との間に接続され、第1の入力端子t1はリアクトル2に接続され、その後段にハーフブリッジ型のインバータ回路100の交流側端子が接続される。また、第2の入力端子t2はハーフブリッジ型のインバータ回路300の交流側端子が接続される。
インバータ回路100は、2個の半導体スイッチ素子101a、102aと、直流コンデンサ103とによって構成されるハーフブリッジ型のインバータである。半導体スイッチ素子101aがインバータ回路100の正電位側の半導体スイッチ素子であり、半導体スイッチ素子102aがインバータ回路100の負電位側の半導体スイッチ素子である。半導体スイッチ素子101aと半導体スイッチ素子102aとは、直列に接続され、その接続点(交流側端子)がリアクトル2に接続されている。
インバータ回路300は、2個の半導体スイッチ素子301a、302aと、直流コンデンサ303とによって構成されるハーフブリッジ型のインバータである。半導体スイッチ素子301aがインバータ回路300の正電位側の半導体スイッチ素子であり、半導体スイッチ素子302aがインバータ回路300の負電位側の半導体スイッチ素子である。半導体スイッチ素子301aと半導体スイッチ素子302aとは、直列に接続され、その接続点(交流側端子)がリアクトル2に接続されている。
コンバータ回路200は、半導体スイッチ素子(第5の半導体スイッチに相当)201a、半導体スイッチ素子(第6の半導体スイッチに相当)202aから構成される。半導体スイッチ素子201aは、インバータ回路100の正電位側の半導体スイッチ素子101aと平滑コンデンサ3の正極側の直流母線3aとの間に接続される。半導体スイッチ素子202aは、インバータ回路100の負電位側の半導体スイッチ素子102aと平滑コンデンサ3の負極側の直流母線3bとの間に接続される。
コンバータ回路400は、半導体スイッチ素子401a、402aから構成される。半導体スイッチ素子401aは、インバータ回路300の正電位側の半導体スイッチ素子301aと平滑コンデンサ3の正極側の直流母線3aとの間に接続される。半導体スイッチ素子402aは、インバータ回路300の負電位側の半導体スイッチ素子302aと平滑コンデンサ3の負極側の直流母線3bとの間に接続される。
半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202a、301a、302a、401a、402aのそれぞれのソース・ドレイン間には、ダイオード101b、102b、201b、202b、301b、302b、401b、402bが逆並列に接続されている。ダイオードは半導体スイッチ素子にそれぞれ内蔵される構成であっても良い。
また、回生動作を行わない場合には、半導体スイッチ素子101a、201a、301a、401aを省略して、ダイオード101b、201b、301b、401bのみで構成してもよい。
また、図示は省略するが、電力変換装置2000は、インバータ回路100の直流コンデンサ103の直流電圧Vsub1を測定する電圧計(第3の電圧検出器に相当)、インバータ回路300の直流コンデンサ303の直流電圧Vsub2を測定する電圧計(第3の電圧検出器に相当)、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを測定する電圧計(第2の電圧検出器に相当)、交流電源1からの交流電圧Vinを測定する電圧計(第1の電圧検出器に相当)、および交流電源1からの交流電流Iinを測定する電流計を備えている。
制御回路10bは、インバータ回路100の直流コンデンサ103の直流電圧Vsub1と、インバータ回路300の直流コンデンサ303の直流電圧Vsub2と、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcと、電力変換装置2000の入力端子t1、t2間に印加される交流の入力電圧Vinと、交流電流Iinとに基づいて、インバータ回路100、300およびコンバータ回路200、400の出力制御を行う。具体的には、制御回路10bは、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが一定の目標電圧Vdc*になるように、また、交流電源1からの交流電流Iinの力率が力行時にはほぼ「1」、回生時にはほぼ「−1」となるように、さらに直流コンデンサ103、303の直流電圧Vsub1、Vsub2が一定の目標電圧(電圧指令値Vsub*)となるように、インバータ回路100、300の半導体スイッチ素子101a、102a、301a、302aと、コンバータ回路200、400の半導体スイッチ素子201a、202a、401a、402aに与えるゲート信号13、14を生成して、インバータ回路100、300およびコンバータ回路200、400の出力制御を行う。
さらに具体的には、制御回路10bは、直流電圧Vsub1、Vsub2が電圧指令値Vsub*に追従するように、半導体スイッチ素子201a、202a、401a、402aのオン、オフを制御すると共に、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが平滑コンデンサ3の目標電圧Vdc*に追従し、交流電源1からの入力力率を調整し、入力力率が改善するように、半導体スイッチ素子101a、102a、301a、302aのオン、オフを制御する。
また、制御回路10bは、交流電圧Vinの極性に応じて、インバータ回路100の半導体スイッチ素子101a、102aをオン、オフする制御と、インバータ回路300の半導体スイッチ素子301a、302aをオン、オフする制御とを切り替える。
平滑コンデンサ3には、図示しない負荷が接続されている。制御回路10bは、交流電源1からの交流電力を変換して平滑コンデンサ3に直流電力を供給するように、インバータ回路100、300およびコンバータ回路200、400の出力制御を行う。
このように構成される電力変換装置2000の動作について、力行動作、回生動作に分けて説明する。力行動作は交流電源1からの交流電力を直流に変換して平滑コンデンサ3に出力する動作であり、逆に回生動作は平滑コンデンサ3から交流電源1に対して交流電力を出力する動作である。
<力行動作>
図8、図9は、電力変換装置2000の力行動作を説明するための主回路600の電流経路を示す図である。図8は交流電圧Vinが正極性の場合、図9は負極性の場合の電流経路図を示しており、電流が流れる経路を太線で示している。また、図10は、電力変換装置2000の各部の波形とインバータ回路100、300の直流コンデンサ103、303の充放電状態とを示す図である。図10(a)は交流電圧Vinの電圧波形、(b)は半導体スイッチ素子102aのオン、オフの状態、(c)は半導体スイッチ素子202aのオン、オフの状態、(d)は半導体スイッチ素子302aのオン、オフの状態、(e)は半導体スイッチ素子402aのオン、オフの状態、(f)は直流コンデンサ103の充放電の状態、(g)は直流コンデンサ303の充放電の状態を示す。なお、半導体スイッチ101a、201a、301a、401aはそれぞれ半導体スイッチ102a、202a、302a、402aとは相補的にオン、オフ動作するため、図示していない。
出力段の平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcは、交流電源1の交流電圧Vinのピーク電圧Vpより高く、図10では、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが一定の目標電圧Vdc*に制御されている状態を示す。
制御回路10bは、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcの目標電圧Vdc*を、直流コンデンサ103の直流電圧Vsub1、Vsub2より常に高く設定する。このように設定することによって、インバータ回路100、300の直流コンデンサ103、303から、平滑コンデンサ3への電力流出を防ぎ、電力変換装置の安定した制御を行うことができる。
インバータ回路100、300は、交流電源1からの入力力率がほぼ「1」になるように、PWM制御によって交流電流Iinを制御して出力し、交流側の発生電圧を交流電源1から出力される交流電圧Vinに重畳する。以下の説明では、交流電流Iinを制御することを、単に「電流制御」という。
図10に示すように、交流電源1の電圧位相をθとし、まず、交流電圧Vinが正極性である0≦θ<πの場合について説明する。交流電圧Vinの極性が正極性の場合には、半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202aをオン、オフ制御し、半導体スイッチ素子301a、302a、401a、402aをオフとする。
図8(a)に示すように、半導体スイッチ素子102a、202aがオン状態、半導体スイッチ素子101a、201aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103をスルーするように流れる。
図8(b)に示すように、半導体スイッチ素子101a、202aがオン状態、半導体スイッチ素子102a、201aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103を充電するように流れる。
図8(c)に示すように、半導体スイッチ素子102a、201aがオン状態、半導体スイッチ素子101a、202aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103を放電するように流れる。
図8(d)に示すように、半導体スイッチ素子101a、201aがオン状態、半導体スイッチ素子102a、202aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103をスルーするように流れる。
制御回路10bは、このような4種の半導体スイッチ素子の制御の組み合わせによって、半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202aを制御して、インバータ回路100をPWM制御する。これによって、直流コンデンサ103を充放電させ、電流制御を行う。
次に、交流電圧Vinが負極性であるπ≦θ<2πの場合について説明する。交流電圧Vinの極性が負極性の場合には、半導体スイッチ素子301a、302a、401a、402aをオン、オフ制御し、半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202aをオフとする。
図9(a)に示すように、半導体スイッチ素子302a、402aがオン状態、半導体スイッチ素子301a、401aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303をスルーするように流れる。
図9(b)に示すように、半導体スイッチ素子301a、402aがオン状態、半導体スイッチ素子302a、401aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303を充電するように流れる。
図9(c)に示すように、半導体スイッチ素子302a、401aがオン状態、半導体スイッチ素子301a、402aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303を放電するように流れる。
図9(d)に示すように、半導体スイッチ素子301a、401aがオン状態、半導体スイッチ素子302a、402aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303をスルーするように流れる。
制御回路10bは、このような4種の半導体スイッチ素子の制御の組み合わせによって、半導体スイッチ素子301a、302a、401a、402aを制御して、インバータ回路300をPWM制御する。これによって、直流コンデンサ303を充放電させ、電流制御を行う。
なお、半導体スイッチ素子に流れる電流が、ソースからドレインへ流れる場合は、その半導体スイッチ素子をオフして、逆並列接続されたダイオードに電流を流すように制御してもよい。
交流電圧Vinが正極性である場合、図10に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相(θ=0、π)を中央とした±θ1(以下、θ1を「短絡位相」と称する)の位相範囲(短絡期間)では、半導体スイッチ素子202aをオン状態(オンに固定)、半導体スイッチ素子201aをオフ状態(オフに固定)として、平滑コンデンサ3をバイパスさせる。
この場合、図8(a)、(b)に示すように、交流電源1からの交流電流Iinはリアクトル2で限流されてインバータ回路100に入力され、半導体スイッチ素子202aを通り、交流電源1に戻る。このとき、図2(a)の動作モードによって、リアクトル2が励磁されるが、図2(b)の動作モードによって、リアクトル2の励磁がリセットされる。
また、図8(a)の動作モードの場合は、直流コンデンサ103をスルーし、図8(b)の動作モードの場合は、直流コンデンサ103が充電される。したがって、図8(a)と(b)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を充電させ、かつ電流制御を行うことができる。
次に、図10に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相を中央とした±θ1以外の位相範囲(開放期間)では、半導体スイッチ素子202aをオフ状態、半導体スイッチ素子201aをオン状態として、平滑コンデンサ3に直流電力を出力する。
この場合、図8(c)、(d)に示すように、交流電源1からの交流電流Iinはリアクトル2で限流されてインバータ回路100に入力され、半導体スイッチ素子201aを通り、平滑コンデンサ3を充電して、交流電源1に戻る。
このとき、インバータ回路100は、電圧(Vdc*−Vin)を出力するよう、図8(c)と(d)の動作モードとを繰り返す。これによって、交流電源1にインバータ回路100の出力電圧(Vdc*−Vin)を加算して、交流電源1のピーク電圧より高い目標電圧Vdc*に達するように、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを制御する。ここで、図8(c)の動作モードによってリアクトル2が励磁され、図8(d)の動作モードによってリアクトル2の励磁がリセットされる。
また、図8(c)の動作モードの場合、直流コンデンサ103が放電され、図8(d)の動作モードの場合、直流コンデンサ103をスルーする。したがって、図8(c)と(d)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を放電させ、かつ電流制御を行うことができる。
交流電圧Vinが負極性である場合、図10に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相(θ=π、2π)を中央とした±θ2(以下、θ2を「短絡位相」と称する)の位相範囲(短絡期間)では、半導体スイッチ素子402aをオン状態(オンに固定)、半導体スイッチ素子401aをオフ状態(オフに固定)として、平滑コンデンサ3をバイパスさせる。
正極性の場合と同様にして、図9(a)の動作モードと図9(b)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路300をPWM制御することによって、直流コンデンサ303を充電させ、かつ電流制御を行うことができる。
次に、図10に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相を中央とした±θ2以外の位相範囲(開放期間)では、半導体スイッチ素子402aをオフ状態、半導体スイッチ素子401aをオン状態として、平滑コンデンサ3に直流電力を出力する。
正極性の場合と同様にして、図9(c)の動作モードと図9(d)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を放電させ、かつ電流制御を行うことができる。
<回生動作>
図11、図12は、電力変換装置2000の回生動作を説明するための主回路600の電流経路を示す図である。図11は交流電圧Vinが正極性の場合、図12は負極性の場合の電流経路図を示しており、電流が流れる経路を太線で示している。また、図13は、電力変換装置2000の各部の波形とインバータ回路100、300の直流コンデンサ103、303の充放電状態とを示す図である。図13(a)は交流電圧Vinの電圧波形、(b)は半導体スイッチ素子102aのオン、オフの状態、(c)は半導体スイッチ素子202aのオン、オフの状態、(d)は半導体スイッチ素子302aのオン、オフの状態、(e)は半導体スイッチ素子402aのオン、オフの状態、(f)は直流コンデンサ103の充放電の状態、(g)は直流コンデンサ303の充放電の状態を示す。なお、半導体スイッチ101a、201a、301a、401aはそれぞれ半導体スイッチ102a、202a、302a、402aとは相補的にオン、オフ動作するため、図示していない。
出力段の平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcは、交流電源1の交流電圧Vinのピーク電圧Vpより高く、図13では、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが一定の目標電圧Vdc*に制御されている状態を示す。
制御回路10bは、上記力行時の動作と同様に、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcの目標電圧Vdc*を、直流コンデンサ103の直流電圧Vsub1、Vsub2より常に高く設定する。
インバータ回路100、300は、交流電源1からの入力力率がほぼ「-1」になるように、PWM制御によって交流電流Iinを制御して出力し、交流側の発生電圧を交流電源1から出力される交流電圧Vinに重畳する。
図13に示すように、交流電源1の電圧位相をθとし、まず、交流電圧Vinが正極性である0≦θ<πの場合について説明する。交流電圧Vinの極性が正極性の場合には、半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202aをオン、オフ制御し、半導体スイッチ素子301a、401aをオフ、302a、402aをオンとする。
図11(a)に示すように、半導体スイッチ素子102a、202aがオン状態、半導体スイッチ素子101a、201aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103をスルーするように流れる。
図11(b)に示すように、半導体スイッチ素子101a、202aがオン状態、半導体スイッチ素子102a、201aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103を放電するように流れる。
図11(c)に示すように、半導体スイッチ素子102a、201aがオン状態、半導体スイッチ素子101a、202aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103を充電するように流れる。
図11(d)に示すように、半導体スイッチ素子101a、201aがオン状態、半導体スイッチ素子102a、202aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ103をスルーするように流れる。
制御回路10bは、このような4種の半導体スイッチ素子の制御の組み合わせによって、半導体スイッチ素子101a、102a、201a、202aを制御して、インバータ回路100をPWM制御する。これによって、直流コンデンサ103を充放電させ、電流制御を行う。
次に、交流電圧Vinが負極性であるπ≦θ<2πの場合について説明する。交流電圧Vinの極性が負極性の場合には、半導体スイッチ素子301a、302a、401a、402aをオン、オフ制御し、半導体スイッチ素子101a、201aをオフ、102a、202aをオンとする。
図12(a)に示すように、半導体スイッチ素子302a、402aがオン状態、半導体スイッチ素子301a、401aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303をスルーするように流れる。
図12(b)に示すように、半導体スイッチ素子301a、402aがオン状態、半導体スイッチ素子302a、401aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303を放電するように流れる。
図12(c)に示すように、半導体スイッチ素子302a、401aがオン状態、半導体スイッチ素子301a、402aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303を充電するように流れる。
図12(d)に示すように、半導体スイッチ素子301a、401aがオン状態、半導体スイッチ素子302a、402aがオフ状態の場合には、交流電流Iinは直流コンデンサ303をスルーするように流れる。
制御回路10bは、このような4種の半導体スイッチ素子の制御の組み合わせによって、半導体スイッチ素子301a、302a、401a、402aを制御して、インバータ回路300をPWM制御する。これによって、直流コンデンサ303を充放電させ、電流制御を行う。
なお、半導体スイッチ素子に流れる電流が、ソースからドレインへ流れる場合は、その半導体スイッチ素子をオフして、逆並列接続されたダイオードに電流を流すように制御してもよい。
交流電圧Vinが正極性である場合、図13に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相(θ=0、π)を中央とした±θ1の位相範囲(短絡期間)では、半導体スイッチ素子202aをオン状態(オンに固定)、半導体スイッチ素子201aをオフ状態(オフに固定)として、平滑コンデンサ3をバイパスさせる。
この場合、図11(a)、(b)に示すように、交流電源1へ回生する交流電流Iinはリアクトル2で限流される。このとき、図2(a)の動作モードによってリアクトル2の励磁がリセットされ、図2(b)の動作モードによってリアクトル2が励磁される。
また、図11(a)の動作モードの場合は直流コンデンサ103をスルーし、図11(b)の動作モードの場合は直流コンデンサ103が放電される。したがって、図11(a)と(b)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を放電させ、かつ電流制御を行うことができる。
次に、図13に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相を中央とした±θ1以外の位相範囲(開放期間)では、半導体スイッチ素子202aをオフ状態、半導体スイッチ素子201aをオン状態として、平滑コンデンサ3から交流電源1へ直流電力を回生する。
この場合、図11(c)、(d)に示すように、交流電源1へ回生する交流電流Iinはリアクトル2で限流される。このとき、図8(c)の動作モードによってリアクトル2は励磁がリセットされ、図8(d)の動作モードによってリアクトル2が励磁される。
また、図11(c)の動作モードの場合、直流コンデンサ103が充電され、図11(d)の動作モードの場合、直流コンデンサ103をスルーする。したがって、図8(c)と(d)の動作モードとを組み合わせてインバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を充電させ、かつ電流制御を行うことができる。
交流電圧Vinが負極性である場合、図13に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相(θ=π、2π)を中央とした±θ2(以下、θ2を「短絡位相」と称する)の位相範囲(短絡期間)では、半導体スイッチ素子402aをオン状態(オンに固定)、半導体スイッチ素子401aをオフ状態(オフに固定)として、平滑コンデンサ3をバイパスさせる。
正極性の場合と同様にして、図12(a)の動作モードと図12(b)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路300をPWM制御することによって、直流コンデンサ303を放電させ、かつ電流制御を行うことができる。
次に、図13に示すように、交流電圧Vinのゼロクロス位相を中央とした±θ2以外の位相範囲(開放期間)では、半導体スイッチ素子402aをオフ状態、半導体スイッチ素子401aをオン状態として、平滑コンデンサ3から交流電源1へ直流電力を回生する。
正極性の場合と同様にして図12(c)の動作モードと図12(d)の動作モードとを組み合わせて、インバータ回路100をPWM制御することによって、直流コンデンサ103を充電させ、かつ電流制御を行うことができる。
上記のように、交流電圧Vinが正極性の場合には、半導体スイッチ素子202aのオン期間(短絡期間)をθ1で調整することによって、インバータ回路100の直流コンデンサ103の直流電圧Vsub1を目標電圧に保つことができる。また、交流電圧Vinが負極性の場合には、半導体スイッチ素子402aのオン期間(短絡期間)をθ2で調整することによって、インバータ回路300の直流コンデンサ303の直流電圧Vsub2を目標電圧に保つことができる。
なお、ゼロクロス位相(θ=0、π、2π)が短絡期間の中央となるものとしてθ1、θ2を用いて説明したが、ゼロクロス位相を含む位相範囲で、いずれかに偏るように短絡期間を設定してもよい。
このような駆動方法における、交流電源1の交流電圧Vinと、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcとの関係は、実施の形態1と同様に、式(1)のように表される(ただし交流電圧Vinが負極性のときはθ1をθ2に置き換えて考える)。そして、電流制御の成立条件も、実施の形態1の式(3)、式(4)と同様に、交流電圧Vinが正極性のときにインバータ回路100で電流制御を行う場合には式(16)、式(17)、交流電圧Vinが負極性のときにインバータ回路300で電流制御を行う場合には式(18)、式(19)を満たす必要がある。
Vsub1≧|Vp・sinθ1|・・・(16)
Vsub1≧Vdc−|Vp・sinθ1|・・・(17)
Vsub2≧|Vp・sinθ2|・・・(18)
Vsub2≧Vdc−|Vp・sinθ2|・・・(19)
なお、直流コンデンサ103、303の直流電圧Vsub1、Vsub2は、交流電源1の交流電圧Vinのピーク電圧Vp以下に設定する。PWM制御を行うインバータ回路100、300では、直流コンデンサ103、303の直流電圧Vsub1、Vsub2が大きくなると損失が増大するため、直流電圧Vsub1、Vsub2は式(16)〜(19)を満たす条件で小さく設定することが望ましい。
ここで、直流コンデンサ103、303の直流電圧Vsub1、Vsub2を、式(16)〜(19)の制約を満たさないほど低い電圧に設定した場合においても、電流制御を継続する方法について述べる。
上述の説明では、力行時にはゼロクロス位相を中央とした±θ1の短絡期間において、図8(a)と(b)および図9(a)と(b)動作モードを組み合わせてインバータ回路100、300をPWM制御するとしたが、式(16)を満たさない場合、リアクトル2の励磁が常にリセットされる状態となり、電流制御を行うことができない。また、回生時においてもゼロクロス位相を中央とした±θ2の短絡期間において、図11(a)と(b)および図12(a)と(b)動作モードを組み合わせてインバータ回路100、300をPWM制御するとしたが、式(18)を満たさない場合、リアクトル2が励磁され続け、電流制御を行うことができない。
また、短絡期間以外の期間(開放期間)において、力行時には図8(c)と(d)および図9(c)と(d)の動作モードとを組み合わせてインバータ回路100、300をPWM制御するとしたが、式(17)を満たさない場合、リアクトル2の励磁が常にリセットされる状態となり、電流制御を行うことができない。また、回生時には、図11(c)と(d)および図12(c)と(d)動作モードを組み合わせてインバータ回路100、300をPWM制御するとしたが、式(19)を満たさない場合、リアクトル2が励磁され続け、電流制御を行うことができない。
このように式(16)〜(19)を満たさない場合には、電流制御をインバータ回路100、300からコンバータ回路200、400へ切り替えることで、直流電圧Vsub1、Vsub2の値に関わらず電流制御を継続可能とすることができる。この動作について、図14を用いて説明する。
図14は、式(16)〜(19)の制約を満たさない場合の各部の波形と直流コンデンサ103、303、平滑コンデンサ3の充放電状態とを示す図である。図14(a)は交流電圧Vinの電圧波形、(b)は半導体スイッチ素子102a、(c)は半導体スイッチ素子202aのオン、オフの状態、(d)は半導体スイッチ素子302aのオン、オフの状態、(e)は半導体スイッチ素子402aのオン、オフの状態、(f)はは直流コンデンサ103の充放電の状態、(g)は直流コンデンサ303の充放電の状態、(h)は平滑コンデンサの充放電の状態を示す。また、力行時と回生時のスイッチング波形(b)〜(e)は同一であり、コンデンサの充放電状態(f)〜(h)に関して力行/回生を区別して記載している。なお、半導体スイッチ101a、201a、301a、401aはそれぞれ半導体スイッチ102a、202a、302a、402aとは相補的にオン、オフ動作するため、図示していない。また、(h)に関して、平滑コンデンサ3から図示しない負荷への力行時の出力のみの状態を放電、回生時の負荷から入力のみの状態を充電と表している。
交流電圧Vinが正極性での短絡期間において、直流電圧Vsub1が交流電圧Vinより低い場合(図14のθa〜θ1、π−θ1〜π−θa)、すなわち式(16)を満たさない場合には、半導体スイッチ素子101a、302a、402aをオン、半導体スイッチ素子102a、301a、401aをオフとし、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aをPWM制御することにより、力行時は図8(b)と(d)、回生時は図11(b)と(d)の動作モードの組み合わせによって電流制御を行う。
交流電圧Vinが負極性での短絡期間において、直流電圧Vsub2が交流電圧Vinより低い場合(図14のπ+θc〜π+θ2、2π−θ2〜2π−θc)、すなわち式(18)を満たさない場合には、半導体スイッチ素子102a、202a、301aをオン、半導体スイッチ素子101a、201a、302aをオフとし、コンバータ回路400の半導体スイッチ素子401a、402aをPWM制御することにより、力行時は図9(b)と(d)、回生時は図12(b)と(d)の動作モードの組み合わせによって電流制御を行う。
このとき、電流制御するための制約は以下の式(20)、(21)であり、すなわち式(16)、(18)の不等号を反転させた条件となる。
Vsub1≦|Vp・sinθ1|・・・(20)
Vsub2≦|Vp・sinθ2|・・・(21)
交流電圧Vinが正極性での開放期間において、直流電圧Vsub1が直流電圧Vdc−交流電圧Vinより低い場合(図14のθ1〜θbおよびπ−θb〜π−θ1)、すなわち式(17)を満たさない場合には、半導体スイッチ素子101a、301a、401aをオフ、半導体スイッチ素子102a、302a、402aをオンとし、コンバータ回路200の半導体スイッチ素子201a、202aをPWM制御することにより、力行時は図8(a)と(c)、回生時は図11の(a)と(c)の動作モードの組み合わせによって電流制御を行う。
交流電圧Vinが負極性での開放期間において、直流電圧Vsub2が直流電圧Vdc−交流電圧Vinより低い場合(図14のπ+θ2〜π+θdおよび2π−θd〜2π−θ2)、すなわち式(19)を満たさない場合には、半導体スイッチ素子101a、201a、402aをオフ、半導体スイッチ素子102a、202a、401aをオンとし、コンバータ回路400の半導体スイッチ素子401a、402aをPWM制御することにより、力行時は図9(a)と(c)、回生時は図12の(a)と(c)の動作モードの組み合わせによって電流制御を行う。
このとき、電流制御するための制約は以下の式(22)、(23)であり、すなわち式(17)、(19)の不等号を反転させた条件となる。
Vsub1≦Vdc−|Vp・sinθ1|・・・(22)
Vsub2≦Vdc−|Vp・sinθ2|・・・(23)
ここで、式(16)〜(19)と式(20)〜(23)の制約について見比べると、上述のとおり不等号が反転した式となっており、すなわち一方の制約が満足できなくなったときに、他方の制約を満足することができるようになる。このため、インバータ回路100、300による電流制御とコンバータ回路200、400による電流制御を切り替える場合、式(16)〜式(23)の電圧条件に厳密に一致した状態で制御を切り替えなければ、電流制御できない条件で動作することとなり、電流波形に歪みを生じる原因となる。
この電流波形の歪みを抑制する制御方法に関しては、実施の形態1と同様の方法が適用可能であるため、ここでは記載を省略する。具体的には、図14および式(16)〜(23)より、交流電圧Vinが正極性の場合のインバータ回路100およびコンバータ回路200の動作は、実施の形態1で示した動作と同様であり、同様の制御にて動作可能である。また、交流電圧Vinが負極性の場合のインバータ回路300およびコンバータ回路400の動作は、実施の形態1のインバータ回路100およびコンバータ回路200と同様であり、これに関しても同様の制御を適用可能である。
以上に述べたように、第2の実施の形態における電力変換装置2000によれば、平滑コンデンサ3から交流電源1へ電力を回生可能な回路構成および制御とした場合であっても、インバータ回路100、300のPWM制御による入力電流制御と、コンバータ回路200、400のPWM制御による入力電流制御の切り替えにより、インバータ回路100、300の直流コンデンサ103、303の電圧を低く維持しつつ電流制御可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、切り替え判定での誤差を少なくし、入力電流Iin制御が不可能な電圧条件にて動作することによる入力電流Iinの歪みを抑制することができる。
なお、上記実施の形態2では、交流電圧Vinが正極性の場合には直流コンデンサ103を充放電、負極性の場合は直流コンデンサ303を充放電する動作としたが、このような動作に限るものではなく、インバータ回路100、300のPWM制御による入力電流制御と、コンバータ回路200、400のPWM制御による入力電流制御の切り替えをする制御であれば、補正値の適用により、入力電流の歪みを低減可能である。
実施の形態3.
この実施の形態3では、フルブリッジ型のインバータ回路を有し、力行・回生機能を備えた電力変換装置について示す。以下、この発明の実施の形態3における電力変換装置について説明する。
図15は本発明の実施の形態3による電力変換装置3000の概略構成図である。電力変換装置3000は、交流電源1の交流電力を直流電力に変換して出力するための主回路900と制御部である制御回路10cとを備えて構成される。主回路900は、限流回路としてのリアクトル2と、インバータ回路700と、コンバータ回路800と、平滑コンデンサ3とを備える。交流電源1は電力変換装置の第1の入力端子t1と第2の入力端子t2の間に接続され、第1の入力端子t1はリアクトル2に接続され、その後段に単相インバータにて構成されたインバータ回路700の交流側が直列接続される。
コンバータ回路800は、一方の交流端子がインバータ回路700の後段の交流出力線に接続され、他方の交流端子が第2の入力端子t2に接続され、コンバータ回路800の直流母線3a、3b間に接続された平滑コンデンサ3に直流電力を出力する。
インバータ回路700内の単相インバータは、ソース・ドレイン間にダイオード701b〜704bが内蔵された複数個のMOSFET等の半導体スイッチ素子701a〜704a、および直流コンデンサ等から成る直流コンデンサ705にて構成されるフルブリッジ構成のインバータである。
コンバータ回路800は、直流母線3a、3b間に接続される半導体スイッチ素子801a〜804aを有し、この場合、ダイオード801b〜804bを内蔵したMOSFET等の半導体スイッチ素子801a〜804aをそれぞれ2個直列接続した2つのブリッジ回路を直流母線3a、3b間に並列接続して構成する。
インバータ回路700の後段の交流出力線にはコンバータ回路800の半導体スイッチ素子801aのエミッタと半導体スイッチ素子802aのコレクタとの接続点が接続される。また半導体スイッチ素子803aのエミッタと半導体スイッチ素子804aのコレクタとの接続点が交流電源1の上記第2の端子t2に接続される。
なお、半導体スイッチ素子701a〜704a、801a〜804aはMOSFET以外にも、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等でもよい。また、リアクトル2はインバータ回路700とコンバータ回路800との間や、コンバータ回路800と第2の入力端子t2の間に直列接続しても良い。
また、図示は省略するが、電力変換装置は3000、インバータ回路700の直流コンデンサ705の直流電圧Vsubを測定する電圧計(第3の電圧検出器に相当)、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを測定する電圧計(第2の電圧検出器に相当)と、交流電源1からの交流電圧Vinを測定する電圧計(第1の電圧検出器に相当)、および交流電流Iinを測定する電流計を備える。
制御回路10cは、インバータ回路700の直流コンデンサ705の電圧Vsubと、平滑コンデンサ3の電圧Vdcと、電力変換装置の入力端子t1、t2間へ印加される入力電圧Vin、入力端子へ流れる入力電流Iinとに基づいて、平滑コンデンサ3の電圧Vdcが一定の目標電圧Vdc*になるように、また、交流電源1からの交流電流Iinの力率が力行時にはほぼ「1」、回生時にはほぼ「−1」となるように、さらに直流コンデンサ705の直流電圧Vsubが一定の目標電圧(電圧指令値Vsub*)となるように、インバータ回路700およびコンバータ回路800内の各半導体スイッチ素子701a〜704a、801a〜804aへのゲート信号15、16を生成してインバータ回路700およびコンバータ回路800を出力制御する。
さらに具体的には、制御回路10cは、直流電圧Vsubが電圧指令値Vsub*に追従するように、半導体スイッチ素子801a〜804aのオン、オフを制御すると共に、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcが目標電圧Vdc*に追従し、交流電源1からの入力力率を調整し、入力力率が改善するように、半導体スイッチ素子701a〜704aのオン、オフを制御する。
平滑コンデンサ3には図示しない負荷が接続され、制御回路10cは、交流電源1からの交流電力を変換して平滑コンデンサ3に直流電力を供給するようにインバータ回路700およびコンバータ回路800を出力制御する。
このように構成される電力変換装置3000の動作について以下で説明する。なお力行動作は交流電源1からの交流電力を直流に変換して平滑コンデンサ3に出力する動作であり、逆に回生動作は平滑コンデンサ3から交流電源1に対して交流電力を出力する動作である。また、出力段の平滑コンデンサ3の電圧Vdcが、交流電源1からの入力電圧Vinのピーク電圧Vpより高い場合を昇圧と称し、出力段の平滑コンデンサ3の電圧Vdcが、交流電源1からの入力電圧Vinのピーク電圧Vpより低い場合を降圧と称す。
図16は力行動作、図17は回生動作を説明するための主回路900の電流経路、図18はインバータ回路700の電流経路を示す図であり、電流が流れる経路を太線で示している。また、図19は昇圧動作、図20は降圧動作に関して、電力変換装置2000の各部の波形とインバータ回路700の直流コンデンサ705および平滑コンデンサ3の充放電状態とを示す図である。
図19、図20(a)は交流電圧Vinの電圧波形、(b)は半導体スイッチ素子702aのオン、オフの状態、(c)は半導体スイッチ素子704aのオン、オフの状態、(d)は半導体スイッチ素子802aのオン、オフの状態、(e)は半導体スイッチ素子804aのオン、オフの状態、(f)は直流コンデンサ705の充放電の状態、(g)は平滑コンデンサ3の充放電の状態を示す。また、力行時と回生時のスイッチング波形(b)〜(e)は同一であり、コンデンサの充放電状態(f)〜(g)に関して力行/回生を区別して記載している。なお、半導体スイッチ701a、703a、801a、803aはそれぞれ半導体スイッチ素子702a、704a、802a、804aとは相補的にオン、オフ動作するため、図示していない。また、(g)に関して、平滑コンデンサ3から図示しない負荷への力行時の出力のみの状態を放電、回生時の負荷から入力のみの状態を充電と表している。
インバータ回路700では、図18(a)に示すように、半導体スイッチ素子701a、704aがオン、半導体スイッチ素子702a、703aがオフの時には、交流電流Iinが正極性(Vin正極性での力行、またはVin負極性での回生)であれば直流コンデンサ705を充電、負極性(Vin負極性での力行、またはVin正極性での回生)であれば放電するように電流が流れる。
図18(b)に示すように、半導体スイッチ素子702a、703aがオン、半導体スイッチ素子701a、704aがオフの時には、交流電流Iinが正極性であれば直流コンデンサ705を放電、負極性であれば充電するように電流が流れる。
図18(c)に示すように、半導体スイッチ素子701a、703aがオン、半導体スイッチ素子702a、704aがオフの時には、直流コンデンサ705をスルーして電流が流れる。
図18(d)に示すように、半導体スイッチ素子702a、704aがオン、半導体スイッチ素子701a、703aがオフの時には、直流コンデンサ705をスルーして電流が流れる。
制御回路10cは、このような4種の制御の組み合わせにて半導体スイッチ素子701a〜704aを制御して、インバータ回路700をPWM動作させることで直流コンデンサ705を充放電させ、交流電源1からの入力力率が力行時におおよそ1、回生時におおよそ−1になるように電流制御を行う。
交流電源1の電圧位相をθとし、まず、電圧Vinが正極性である0≦θ<πの場合について説明する。
図19、図20において、交流電源1からの電圧Vinのゼロクロス位相を中央として±θ1の位相範囲(短絡期間T)では、図16(b)(回生時は図17(b))に示すように、制御回路10cは、コンバータ回路800の制御において短絡スイッチとなる半導体スイッチ素子802aをオン状態として平滑コンデンサ3をバイパスさせる。このとき、半導体スイッチ素子804aをオン、半導体スイッチ素子801a、803aをオフさせる。交流電源1からの電流はリアクトル2にて限流され、インバータ回路700に入力されて直流コンデンサ705を充電(回生時に放電)し、コンバータ回路800内の半導体スイッチ素子802a、804aを経て交流電源1に戻る。このとき、制御回路10cは、上記の4種の制御の組み合わせのうち、直流コンデンサ705を充電(回生時に放電)する制御とスルーさせる制御の組み合わせによりインバータ回路700をPWM動作させることで直流コンデンサ705を充電(回生時は放電)させ、電流制御を行う。図19、図20では、図18(b)、(c)の組み合わせにより、半導体スイッチ素子702aをオフ、半導体スイッチ素子704aをPWM制御する方法を示しているが、これに限る
ものではない。
短絡期間T以外(開放期間)で|Vin|≦Vdcの条件に一致する位相範囲(図19のθ1〜π−θ1、図20のθ1〜θ3およびπ−θ3〜π−θ1)では、図16(a)(回生時は図17(a))に示すように、制御回路10cは、コンバータ回路800の制御において短絡スイッチとなる半導体スイッチ素子802aをオフ状態として、平滑コンデンサ3を充電(回生時には放電)する。このとき、半導体スイッチ素子801a、804aをオン、半導体スイッチ素子803aをオフさせる。交流電源1からの電流はリアクトル2にて限流され、インバータ回路700に入力されて直流コンデンサ705を放電(回生時に充電)し、コンバータ回路800内の半導体スイッチ素子801a、804aおよび平滑コンデンサ3を経て交流電源1に戻る。このとき、制御回路10cは、上記の4種の制御の組み合わせのうち、直流コンデンサ705を放電(回生時に充電)する制御とスルーさせる制御の組み合わせによりインバータ回路700をPWM動作させることで直流コンデンサ705を放電(回生時は充電)させ、電流制御を行う。図19、図20では、図18(a)、(d)の組み合わせにより、半導体スイッチ素子702aをオン、半導体スイッチ素子704aをPWM制御する方法を示しているが、これに限るものではない。
また、短絡期間T以外(開放期間)で|Vin|>Vdcの条件に一致する位相範囲(図20のθ3〜π−θ3)では、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子は上記と同様に図16(a)(回生時は図17(a))に示すように制御される。ただし、インバータ回路700に関しては、制御回路10cは上記の4種の制御の組み合わせのうち、直流コンデンサ705を充電(回生時に放電)する制御とスルーさせる制御の組み合わせによりインバータ回路700をPWM動作させることで直流コンデンサ705を充電(回生時は放電)させ、電流制御を行う。図20では、図18(b)、(c)の組み合わせにより、半導体スイッチ素子702aをオフ、半導体スイッチ素子704aをPWM制御する方法を示しているが、これに限るものではない。
次に、電圧Vinが負極性であるπ≦θ<2πの場合について説明する。
図19、図20において、交流電源1からの電圧Vinのゼロクロス位相を中央として±θ1の位相範囲(短絡期間T)では、図16(d)(回生時は図17(d))に示すように、制御回路10cは、コンバータ回路800の制御において短絡スイッチとなる半導体スイッチ素子804aをオン状態として平滑コンデンサ3をバイパスさせる。このとき、半導体スイッチ素子802aをオン、半導体スイッチ素子801a、803aをオフさせる。交流電源1からの電流はコンバータ回路800内の半導体スイッチ素子802a、804aを経てインバータ回路700に入力され、直流コンデンサ705を充電(回生時に放電)し、リアクトル2にて限流されて交流電源1に戻る。このとき、制御回路10cは、上記の4種の制御の組み合わせのうち、直流コンデンサ705を充電(回生時に放電)する制御とスルーさせる制御の組み合わせによりインバータ回路700をPWM動作させることで直流コンデンサ705を充電(回生時は放電)させ、電流制御を行う。図19、図20では、図18(a)、(c)の組み合わせにより、半導体スイッチ素子704aをオフ、半導体スイッチ素子702aをPWM制御する方法を示しているが、これに限るものではない。
短絡期間T以外(開放期間)で|Vin|≦Vdcの条件に一致する位相範囲(図19のπ+θ1〜2π−θ1、図20のπ+θ1〜π+θ3および2π−θ3〜2π−θ1)では、図16(c)(回生時は図17(c))に示すように、制御回路10cは、コンバータ回路800の制御において短絡スイッチとなる半導体スイッチ素子804aをオフ状態として、平滑コンデンサ3を充電(回生時には放電)する。このとき、半導体スイッチ素子802a、803aをオン、半導体スイッチ素子801aをオフさせる。交流電源1からの電流はコンバータ回路800内の半導体スイッチ素子802a、803aおよび平滑コンデンサ3を通り、インバータ回路700に入力されて直流コンデンサ705を放電(回生時に充電)し、リアクトル2にて限流され交流電源1に戻る。このとき、制御回路10cは、上記の4種の制御の組み合わせのうち、直流コンデンサ705を放電(回生時に充電)する制御とスルーさせる制御の組み合わせによりインバータ回路700をPWM動作させることで直流コンデンサ705を放電(回生時は充電)させ、電流制御を行う。図19、図20では、図18(b)、(d)の組み合わせにより、半導体スイッチ素子704aをオン、半導体スイッチ素子702aをPWM制御する方法を示しているが、これに限るものではない。
また、短絡期間T以外(開放期間)で|Vin|>Vdcの条件に一致する位相範囲(図20のπ+θ3〜2π−θ3)では、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子は上記と同様に図16(c)(回生時は図17(c))に示すように制御される。ただし、インバータ回路700に関しては、制御回路10cは上記の4種の制御の組み合わせのうち、直流コンデンサ705を充電(回生時に放電)する制御とスルーさせる制御の組み合わせによりインバータ回路700をPWM動作させることで直流コンデンサ705を充電(回生時は放電)させ、電流制御を行う。図20では、図18(a)、(c)の組み合わせにより、半導体スイッチ素子704aをオフ、半導体スイッチ素子702aをPWM制御する方法を示しているが、これに限るものではない。
なお、半導体スイッチ素子に流れる電流が、ソースからドレインへ流れる場合は、その半導体スイッチ素子をオフして、逆並列接続されたダイオードに電流を流すように制御してもよい。
以上のように制御回路10cは、交流電源1の電圧位相θのゼロクロス位相(θ=0、π)を中央として±θ1の位相範囲である短絡期間Tでのみ、Vin正極性での短絡スイッチである半導体スイッチ素子802a、およびVin負極性での短絡スイッチである半導体スイッチ素子804aをオン状態として平滑コンデンサ3をバイパスさせる。このとき、制御回路10cは、電圧Vinの逆極性にほぼ等しい電圧がインバータ回路700から発生されるようPWM制御し、入力力率がおおよそ1(回生時はおおよそ−1)になるように電流Iinを制御する。このとき直流コンデンサ705は充電(回生時は放電)される。
そして、短絡期間T以外の位相では、制御回路10cは、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを目標電圧Vdc*に維持し、また入力力率がおおよそ1(回生時はおおよそ−1)になるように電流Iinを制御してインバータ回路700を出力制御する。このとき、電圧Vinの絶対値が平滑コンデンサ3の直流電圧Vdc以下の時、直流コンデンサ705は放電(回生時は充電)され、電圧Vinの絶対値が直流電圧Vdc以上の時は、直流コンデンサ705は充電(回生時は放電)される。
なお、短絡期間Tは、ゼロクロス位相(θ=0、π)が短絡期間Tの中央としたが、ゼロクロス位相を含む位相範囲で、いずれかに偏るものであっても良い。
短絡位相θ1に関して、インバータ回路700の直流コンデンサ705の充電と放電のエネルギーが等しくなるように半導体スイッチ素子802a、804aのオン期間を設定し、直流コンデンサ705の直流電圧Vsubを一定に保つような短絡位相θ1を決定することができる。
すなわち、インバータ回路700の直流コンデンサ705の充電と放電のエネルギーが等しいとすると、以下の式(24)が成り立つ。ただし、Vpは、入力電圧Vinのピーク電圧であり、Ipは、入力電流Iinのピーク電流であり、Vin=Vp・sinθ、Iin=Ip・sinθとする。
式(24)より、Vdcは式(25)で定義される。
Vdc=Vp・π/(4cosθ1)・・・(25)
式(2)より、直流電圧Vdcの下限値はθ1が0となる場合に得られ、値は(π/4)Vpとなる。このように、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcは、短絡位相θ1によって決まり、短絡位相θ1を変化させて制御できる。そして、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcは、目標電圧Vdc*に追従するように制御される。
また、インバータ回路700の直流コンデンサ705の直流電圧Vsubを、0〜θ1、θ1〜θ3、θ3〜π/2の各位相範囲におけるインバータ回路100の所望の発生電圧の大きさ以上に設定する。この場合、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを目標電圧Vdc*に維持することができ、また、入力力率がほぼ「1」(回生時はほぼ「−1」)になるように交流電流Iinを制御するインバータ回路100の電流制御を、交流電源1の全位相において、信頼性良く行うことができる。
すことで、図16、図17の動作モードにて電流制御することができる。
Vsub≧|Vp・sinθ1| (26)
Vsub≧Vdc−|Vp・sinθ1| (27)
Vsub≧Vp−Vdc (28)
直流コンデンサ705の直流電圧Vsubは、交流電源1からの交流電圧Vinのピーク電圧Vp以下に設定する。PWM制御を行うインバータ回路700では、直流コンデンサ705の直流電圧Vsubが大きくなると損失が増大するため、直流コンデンサ705の直流電圧Vsubは式(26)〜式(28)を満たす条件で小さく設定することが望ましい。
ここで、直流コンデンサ705の直流電圧Vsubを、式(26)(27)の制約を満たさないほど低い電圧に設定した場合においても、電流制御を継続する方法について述べる。なお、式(28)を満たさない場合は交流入力側から突入電流を生じて制御不可能となるため、式(28)については必須条件となる。
上述の説明では、ゼロクロス位相を中央とした±θ1の短絡期間において、インバータ回路700の直流コンデンサ705を充電(回生時は放電)する制御とスルーさせる制御をPWM制御するとしたが、式(26)を満たさない場合、図19、図20に示したスイッチング方法では常にリアクトル2の励磁がリセットされる状態となり、電流制御を行うことができない。
また、短絡期間以外の期間(開放期間)において、式(27)を満たさない場合、図19、図20に示したスイッチング方法では常にリアクトル2の励磁がリセットされる状態となり、電流制御を行うことができない。
このように式(26)、式(27)を満たさない場合には、電流制御をインバータ回路700からコンバータ回路800へ切り替えることで、直流電圧Vsubの値に関わらず電流制御を継続可能とすることができる。この動作について、図21を用いて説明する。
図21は、式(26)、式(27)の制約を満たさない場合の各部の波形と直流コンデンサ705、平滑コンデンサ3の充放電状態とを示す図である。図21(a)は交流電圧Vinの電圧波形、(b)は半導体スイッチ素子702aのオン、オフの状態、(c)は半導体スイッチ素子704aのオン、オフの状態、(d)は半導体スイッチ素子802aのオン、オフの状態、(e)は半導体スイッチ素子804aのオン、オフの状態、(f)は直流コンデンサ705の充放電の状態、(g)は平滑コンデンサ3の充放電の状態を示す。なお、半導体スイッチ701a、703a、801a、803aはそれぞれ半導体スイッチ素子702a、704a、802a、804aとは相補的にオン、オフ動作するため、図示していない。また、(g)に関して、平滑コンデンサ3から図示しない負荷への出力のみの状態を放電と表している。
まず、電圧Vinが正極性である0≦θ<πの場合について説明する。
短絡期間において、直流電圧Vsubが交流電圧Vinの絶対値より低い場合(図21のθa〜θ1、π−θ1〜π−θa)、すなわち式(26)を満たさない場合には、直流コンデンサ705を充電(回生時に放電)するようインバータ回路700の半導体スイッチ素子を図18(b)のように制御する。そして、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子804aをオン、803aをオフとし、半導体スイッチ素子801a、802aをPWM制御することにより、電流制御を行う。ここで、半導体スイッチ素子802aがオンの時にリアクトル2が励磁され、半導体スイッチ素子801aがオンの時にリアクトル2の励磁がリセットされる。
このとき、電流制御するための制約は以下の式(29)であり、すなわち式(26)の不等号を反転させた条件となる。
Vsub≦|Vp・sinθ1| (29)
開放期間において、直流電圧VsubがVdc−|Vin|より低い場合(図21のθ1〜θbおよびπ−θb〜π−θ1)、すなわち式(27)を満たさない場合には、直流コンデンサ705を放電(回生時に充電)するようインバータ回路700の半導体スイッチ素子を図18(a)のように制御する。そして、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子804aをオン、803aをオフとし、半導体スイッチ素子801a、802aをPWM制御することにより、電流制御を行う。ここで、半導体スイッチ素子802aがオンの時にリアクトル2が励磁され、半導体スイッチ素子801aがオンの時にリアクトル2の励磁がリセットされる。
このとき、電流制御するための制約は以下の式(30)であり、すなわち式(27)の不等号を反転させた条件となる。
Vsub≦Vdc−|Vp・sinθ1| (30)
電圧Vinが負極性であるπ≦θ<2πの場合について、式(26)、式(27)を満足しない場合には、正極性の場合と同様にして直流コンデンサ705が充放電されるようインバータ回路700の半導体スイッチ素子を制御する。詳細なスイッチング方法については図21に示しているため、負極性については説明を省略する。
ここで、式(26)と式(29)の制約について見比べると、上述のとおり不等号が反転した式となっており、すなわち一方の制約が満足できなくなったときに、他方の制約を満足することができるようになる。式(27)と式(30)の制約についても同様である。このため、インバータ回路700による電流制御とコンバータ回路800による電流制御を切り替える場合、式(26)、式(27)、式(29)、式(30)の電圧条件に厳密に一致した状態で制御を切り替えなければ、電流制御できない条件で動作することとなり、電流波形に歪みを生じる原因となる。
しかし、実際の制御においては、電圧計で検出した電圧値を用いて式(26)、式(27)、式(29)、式(30)の電圧条件に基づいた動作判定を行い、制御演算し、その結果を反映するまでに遅延を生じるため、制御演算時と実行時の電圧に誤差を生じてしまう。また、回路導通時に生じる電圧降下による誤差や、電流制御に必要な制御電圧を出力可能であるかも考慮しなければ、電流制御できない条件での動作に陥ってしまい、電流制御性が低下してしまう。この対策として、補正値用いて制御することが本特許の特徴である。この制御については後述する。
次に、インバータ回路700およびコンバータ回路800の制御の詳細について、図22および図23に基づいて説明する。図22および図23は制御回路10cの構成を示すブロック図である。さらに具体的には、図22は、制御回路10cによるインバータ回路700およびコンバータ回路800の出力制御に関係する部分の構成を示すブロック図であり、図23は、制御回路10cにおいて4種類の動作状態を判定する部分のブロック図である。なお4種類の動作状態とは、短絡期間において式(26)を満足する/しないの2種類と、開放期間において式(27)を満足する/しないの2種類から定まる動作状態である。
なお、図22および図23の制御ブロックは、図5および図6に示す実施の形態1の制御ブロックと基本的な構成は同じであるため、共通のブロックについては同じ番号を割り振り、説明を省略する。
図22より、直流コンデンサ705の直流電圧Vsubの制御について説明する。なお、短絡/開放信号44を求めるまでの過程については、実施の形態1と同じであるため説
明を省略する。
短絡/開放信号44はコンバータ回路駆動信号選択器45bに与えられる。コンバータ回路駆動信号選択器45bは動作判定信号51を受けて、短絡/開放信号44によりコンバータ回路800を駆動するか、入力電流制御のための電流制御PWM信号29によりコンバータ回路800を駆動するかを決定し、出力する。この詳細については後述する。
次に、図22より、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcおよび入力電流Iinの制御について説明する。実施の形態1と同じ箇所については適宜説明を省略する。
交流電源同期正弦波生成部22bは、交流電源1に同期した周波数および位相を有する正弦波を生成する。交流電源同期正弦波生成部22によって生成される正弦波の振幅は、√2とする。なお、力行動作の場合には力率がほぼ「1」となるよう、交流電圧Vinと相似形の正弦波、回生動作の場合には力率がほぼ「−1」となるよう、交流電圧Vinと相似形の正弦波を正負反転した正弦波を生成する。
デューティ演算器26bは、第2PI制御器25から与えられた電圧目標値VL*に基づき、入力電流制御するためのPWMデューティDを生成する。ただし、動作判定信号51を受けて、PWMデューティDの計算方法は適宜切り替わる。この詳細については後述する。
PWM制御部28は、デューティ演算器26bから与えられるPWM制御デューティDを用いて、入力電流制御を行う半導体スイッチ素子への電流制御PWM信号29を出力する。 この電流制御PWM信号29は、インバータ回路駆動信号選択器30bとコンバータ回路駆動信号選択器45bに与えられ、インバータ回路700またはコンバータ回路800のいずれかの駆動に用いられる。この詳細については後述する。
次に、図23に示す動作判定器50bによる4種類の動作状態の判定について説明する。
動作判定器50bは、交流電源1の交流電圧Vin、平滑コンデンサ3の直流電圧Vdc、直流コンデンサ705の直流電圧Vsubと、図22の直流電圧Vsubの制御により求まる短絡/開放信号44を入力として、動作判定信号51を出力する。また、動作状態の判定遅延による影響を最小限とするため、動作判定器50bによる判定処理は、図22の入力電流制御の演算と同じ制御周期にて実施する。
ここで、動作判定器50bによる演算処理は、実施の形態1の動作判定器50の処理を本実施の形態の構成に置き換える。すなわち、実施の形態1のインバータ回路100の直流コンデンサ103を、本実施の形態のインバータ回路700の直流コンデンサ705と置き換える。
なお、式(9)の電圧降下補正は、回路の導通により生じる電圧降下を考慮した電圧補正である。本実施の形態では、図16、図17の各動作モードにおいて4つの半導体スイッチ素子を通るため、これら各動作条件において生じる電圧降下を見積もり、電圧降下補正として加えることにより、より正確に電流制御可能な動作状態の判定が可能となる。
次に、図22のデューティ演算器26bについて説明する。デューティ演算器26bでは、電圧目標値VL*に基づいてPWMデューティDを生成するが、入力される動作判定信号51で示される動作状態に応じて、PWMデューティDの計算式を切り替える。PWMデューティDの計算式については記載しないが、PWMデューティDは交流電圧Vin、直流電圧Vdc、直流電圧Vsubおよび電圧目標値VL*を用いて表され、式(9)〜式(11)で示したVin補正後値、Vdc補正後値、Vsub補正後値を適用することにより、電流制御性を向上することができる。
次に、図22のインバータ回路駆動信号選択器30b、およびコンバータ回路駆動信号選択器45bについて説明する。インバータ回路駆動信号選択器30bとコンバータ回路駆動信号選択器45bでは、入力される動作判定信号51で示される4種類の動作状態に応じて、インバータ回路700に与えるゲート信号15と、コンバータ回路800に与えるゲート信号16を選択する。
動作判定信号51が『a.インバータ回路にて電流制御する短絡期間』(短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たす)の場合、および『b.インバータ回路にて電流制御する開放期間』(短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たす)の場合、インバータ回路駆動信号選択器30bは電流制御PWM信号29をゲート信号15として出力し、インバータ回路700の半導体スイッチ素子にて入力電流Iinの制御を行う。また、コンバータ回路駆動信号選択器45bは短絡/開放信号44をゲート信号16として出力し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子を制御する。
動作判定信号51が『c.コンバータ回路にて電流制御する短絡期間』(短絡/開放信号44が短絡、かつ式(7)を満たさない)の場合、および『d.コンバータ回路にて電流制御する開放期間』(短絡/開放信号44が開放、かつ式(8)を満たさない)の場合、インバータ回路駆動信号選択器30bはオン/オフ信号をゲート信号15として出力し、インバータ回路700の半導体スイッチ素子を制御する。また、コンバータ回路駆動信号選択器45bは電流制御PWM信号29をゲート信号16として出力し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子にて入力電流Iinの制御を行う。
以上に述べたように、第2の実施の形態における電力変換装置2000によれば、単相インバータを備えた構成においても、インバータ回路700のPWM制御による入力電流制御と、コンバータ回路800のPWM制御による入力電流制御の切り替えにより、インバータ回路700の直流コンデンサ705の電圧を低く維持しつつ電流制御可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、切り替え判定での誤差を少なくし、入力電流Iin制御が不可能な電圧条件にて動作することによる入力電流Iinの歪みを抑制することができる。
また、短絡期間において式(26)を満たさない場合に、インバータ回路700の交流出力を交流電圧Vinと逆極性として、直流コンデンサ705が力行時に充電、回生時に放電されるよう、インバータ回路700の半導体スイッチ素子701a〜704aを制御し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子801a〜804aをPWM制御することにより、短絡期間における直流コンデンサ705の充電を維持しつつ、入力電流Iin制御が可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、コンバータ回路800でのPWM制御への切り替え判定の誤差による入力電流Iinの歪みを抑制できる。
また、開放期間において式(27)を満たさない場合に、インバータ回路700の交流出力を交流電圧Vinと同極性として、直流コンデンサ705が力行時に放電、回生時に充電されるよう、インバータ回路700の半導体スイッチ素子701a〜704aを制御し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子801a〜804aをPWM制御することにより、開放期間における直流コンデンサ705の放電を維持しつつ、入力電流Iin制御が可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、コンバータ回路800でのPWM制御への切り替え判定の誤差による入力電流Iinの歪みを抑制できる。
なお、上記実施の形態3では、短絡期間において式(26)を満たさない場合に、インバータ回路700の出力が交流電圧Vinと逆極性となるように半導体スイッチ701a〜704aを制御し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子801a〜804aをPWM制御したが、このようなスイッチング方法に限らず、入力電流Iin制御できるものであれば、電圧補正値の適用による入力電流Iinの歪み抑制は可能である。例えば、交流電圧Vinが正極性における短絡スイッチである半導体スイッチ802a、または負極性における短絡スイッチである半導体スイッチ素子804aがオンの時に、インバータ回路700の出力が交流電圧Vinと逆極性となるように半導体スイッチ701a〜704aを制御し、短絡スイッチがオフの時には直流コンデンサ705をスルーするように半
導体スイッチ701a〜704aを制御して、短絡スイッチをPWM制御するようにしても、式(26)を満足しない場合の電流制御を継続可能である。
さらに、例えば、短絡スイッチがオンの時には直流コンデンサ705をスルーするように半導体スイッチ701a〜704aを制御し、短絡スイッチがオフの時にはインバータ回路700の出力が交流電圧Vinと逆極性となるように半導体スイッチ701a〜704aを制御することによっても、式(26)を満足しない場合の電流制御を継続可能である。
また、上記実施の形態3では、開放期間において式(27)を満たさない場合に、インバータ回路700の出力が交流電圧Vinと同極性となるように半導体スイッチ701a〜704aを制御し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子801a〜804aをPWM制御したが、このようなスイッチング方法に限らず、入力電流Iin制御できるものであれば、電圧補正値の適用による入力電流Iinの歪み抑制は可能である。例えば、交流電圧Vinが正極性における短絡スイッチである半導体スイッチ802a、または負極性における短絡スイッチである半導体スイッチ804aがオンの時に、直流コンデンサ705をスルーするように半導体スイッチ701a〜704aを制御し、短絡スイッチがオフの時にはインバータ回路700の出力が交流電圧Vinと同極性となるように半導体スイッチ701a〜704aを制御して、短絡スイッチをPWM制御するようにしても、式(27)を満足しない場合の電流制御を継続可能である。
さらに、例えば、短絡スイッチがオンの時にはインバータ回路700の出力が交流電圧Vinと同極性となるように半導体スイッチ701a〜704aを制御し、短絡スイッチがオフの時には直流コンデンサ705をスルーするように半導体スイッチ701a〜704aを制御することによっても、式(27)を満足しない場合の電流制御を継続可能である。
また、上記実施の形態3では、式(26)および式(27)を満たさない場合に、直流コンデンサ705が充電または放電されるようにインバータ回路700の半導体スイッチ素子をオンまたはオフに固定し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子をPWM制御する方法について示したが、充放電しないよう直流コンデンサ705をスルーするようにインバータ回路700を制御し、コンバータ回路800の半導体スイッチ素子をPWM制御制御することによっても、電流制御を継続させることができる。この場合、一般的な昇圧チョッパと同様の動作となる。これにより、入力電流Iin制御が可能な入出力電圧範囲を拡大すると共に、切り替え判定に用いる電圧条件に対して所定の電圧補正値を加えて判定を実施することにより、コンバータ回路800でのPWM制御への切り替え判定の誤差による入力電流Iinの歪みを抑制できる。
また、上記実施の形態3では、インバータ回路700が単相インバータを1つ備える構成について示したが、複数の半導体スイッチ素子と直流コンデンサとから成る単相インバータを複数直列接続して構成されるものあっても同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態1〜3では、電力変換装置にて平滑コンデンサ3の直流電圧Vdcを制御する例について記載したが、必ずしも電力変換装置にて直流電圧Vdcを目標値に追従させる制御を実行する必要は無い。例えば、本発明の電力変換装置の後段に直流電圧Vdcを制御するコンバータが接続されている場合には、電力変換装置は直流電圧Vdcの制御を実行せず、入力電流Iinを所定の指令値に従って制御する、というものであっても良い。
また、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせることが可能である。また、各実施の形態の任意の構成要素を適宜、変更または省略することが可能である。