JP6111422B2 - 流量計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、超音波信号の伝搬時間を計測することにより流速を検出し、気体の流量を計測する流量計測装置に関するものである。
従来この種の流量計測装置は、図4に示すようなものが一般的であった。図4において、流路41の途中に超音波を送信する第1振動子42と受信する第2振動子43が流れ方向に角度θで対向するように配置されている。
また、第1振動子42、第2振動子43の送受信を切り換える切換手段44、第1振動子2へ駆動信号を出力する送信手段45、受信側の振動子で受信した信号を一定振幅となるよう増幅率を調整する増幅手段46、増幅手段46の出力と予め定められた基準電圧とを比較する基準比較手段47、基準比較手段47に基準電圧を出力する電圧設定手段48、受信信号が基準電圧を超えた後の最初のゼロクロス点で信号を出力する判定手段49で主要部が構成されている。
図5は、送信信号の出力から受信信号の検出までの一連の動作を説明するタイムチャートで、図で示す様に、送信手段45の駆動信号出力により送信側に設定された振動子から送信された超音波信号が、受信側に設定された振動子で受信されて増幅手段46で増幅されて受信信号Aとして出力され、基準比較手段47は、受信信号Aが基準電圧Vrを超えた時に信号Cを出力し、判定手段49は、信号Cの出力後の最初のゼロクロス点aで信号Dを出力する。このように、送信手段45の駆動信号出力から判定手段49の信号Dの出力までが1回の超音波信号の送受信の流れである。
更に、判定手段49の信号Dの出力回数をカウントする繰り返し手段50とそれを制御する制御手段51を備えており、制御手段51は信号Dを受けると送信手段45に超音波駆動信号を出力するように指令し、これにより超音波信号の送受信が再開される。そして、繰り返し手段50は予め定められた回数の信号Dのカウントが終わるまで同様の動作を繰り返す。
また、繰り返し手段50により繰り返される複数回の超音波送受信の所要時間を計時する計時手段52と、計時手段52の計時した時間に応じて流路の大きさや流れの状態を考慮して流量を算出する流量演算手段53とを備えている。
以上のように構成された流量計測装置では、まず、送信手段45から出力される駆動信号により第1振動子42より超音波信号が送信される。第1振動子42より送信された超音波信号を第2振動子43が受信し、その受信信号が増幅手段46で増幅された後、基準比較手段47および判定手段49に出力され、判定手段49から出力される信号Dを以って1回の送受信が完了する。
そして、繰り返し手段50により予め定められた送受信の回数N回が完了するとここまでの所要時間を計時手段52が計時する。このように流れの上流側に配置された第1振動子42から下流側に配置された第2振動子43へ向けての超音波伝搬時間計測を以降、順方向の伝搬時間計測と呼ぶ。
順方向の伝搬時間計測が完了すると、制御手段51は切換手段44を駆動し、第1振動子42と増幅手段46、第2振動子43を送信手段45に接続することにより超音波伝搬
の方向を切換えて先と同様の方法で定められたN回の繰り返し計測を行い、その所要時間を計時手段52が計時する。以降、これを流れの逆方向の伝搬時間計測と呼ぶ。
以上のように流れの順方向の伝搬時間の計時結果と流れの逆方向の伝搬時間の計時結果から得られた1回当りの順方向の伝搬時間Tu、逆方向の伝搬時間Tdを用いて、流量演算手段53では以下の算出式を用いて流量Qを求めている。
Q=S×L/2cosθ(1/Tu−1/Td)・・・(式1)
なお、(式1)においてLは第1振動子42と第2振動子43の中心部を結ぶ直線距離、θは両振動子を結ぶ直線と流れの方向とがなす角度、Sは流路断面積である。
実際の計測において真の伝搬時間は図5で示す受信波形の立ち上がり点bであるためTu、Tdは真の伝搬時間に対して遅れ時間を含んだ数値となっている。しかし、超音波の受信波形の周波数が予めわかっていれば、この遅れ時間を補正することにより真の伝搬時間を計測することが可能であり、実際の数式ではTu、Tdを直接使わずに、この遅れ時間を補正した値を用いている。
このような計測方式において、遅れ時間による補正が計測精度を担保する上で重要な要素となる。そのため判定手段49が常に受信波形の同じ位置で信号Dを検出する必要がある。仮に、順方向と逆方向の計測において信号Dの出力タイミングが1周期ずれたと仮定すると大きな計測誤差を生じる。
そこで、常に同一のゼロクロス点を検出するため、制御手段51は増幅手段46の増幅率を調整して受信波形の最適化を行っている。例えば、繰り返し手段50による計測を開始する前、もしくは終了した後に、増幅手段46により波形振幅が常に同じ電圧レベルになるように増幅率を調整している。
すなわち、図5で示す様な増幅後の受信波の最大電圧(5波目のピーク電圧)に一定の制限範囲位を定め、受信波の最大電圧がこの範囲内に入るように増幅率を変化させる。具体的にはコンパレータ(図示せず)の基準電圧として、制限範囲の上限値と下限値を設定し、基準電圧と受信波の比較結果を見ながら増幅率を変化させる方法、或いは、ピークホールド回路を設けて、AD変換回路でピークホールド回路で保持された電圧を読み取り、この値が制限範囲内に入るように増幅率を変化させる方法などが考えられる。
このように増幅手段46に適正な増幅率を設定すれば、受信波形の最大電圧(5波目のピーク電圧)は常にほぼ一定に保たれるばかりか、1波目から4波目のピーク電圧もほぼ一定に保たれる。
実際には、温度、流量などによって受信波形は微妙に異なるが、予め受信波形を観測しておき、これら条件の違いを考慮に入れ上で、なおかつ、隣合うピーク電圧の差分の比較的大きな位置に基準電圧を定める。図5においては、2波目と3波目のピーク電圧差が大きいので、ふたつの電圧の間の任意の点に基準電圧Vrを定める。5波目のピーク電圧が大きくずれることさえなければ、判定手段49は常に3波目の立下りゼロクロスで信号Dを出力できる。
また、別の方法として、工場出荷時に、基準電圧を最小値から最大値に向けて徐々に変化させながら、計時手段52で信号Cと信号Dの出力タイミングの時間差Δtを計測し、基準電圧対時間差ΔTの関係から1波目から5波目のまでの各ピーク電圧を推定し、その結果を基に2波目のピーク電圧と3波目のピーク電圧に相当する電圧の中間点に基準電圧を設定する方法も提案されている。これは基準電圧が上昇するにしたがって、ΔTが小さ
くなり、各波のピークに達すると極小値を取る性質を利用している。この性質を用いれば、ΔTが最初の極小値に達する電圧が1波目のピーク電圧となり、以降、2波目から5波目までの各ピーク電圧が特定できる。そのため、先に説明した固定電圧を基準電圧として使用する場合と違って、個体間のばらつきをも吸収できるので、より計測の信頼性を高めることが可能である。
特許第3468233号公報
しかしながら、前記従来の構成では、本来の受信波形にノイズ成分が重畳することで波形歪を生じゼロクロス点において出力される信号Dの出力タイミングが1周期分ずれる場合がある。
例えば、ノイズにより2波目のピーク電圧が理想の波形より大きくなって、2波目のピーク電圧が基準電圧Vrを超えた時には、2波目のゼロクロス点で信号Dが出力されることになり結果として1周期分の計測誤差が発生する。
このような場合、繰り返し計測がすべて終わった後に流量値を求めているので、繰り返しの途中で発生したノイズを判別することは難しい。
本来はこのようなノイズが発生しない様に、バンドパスフィルターなどを使うのが常道であるが、特に問題となるのが、超音波の受信信号と同一周波数のノイズである。この種のノイズとしては、振動子そのものの振動が固体である筐体(例えば、振動子が配置されている流路)を直接伝わって到達する伝搬波(以降、筐体伝搬波と言う)、受信振動子を増幅手段に電気接続する際に受信振動子の両極間に加えられるわずかな電位差によって振動子が振動することで発生する電気振動ノイズなどが挙げられる。
これらのノイズは受信信号と同一周波数であるため電気的フィルターで除去することは不可能であり、本来の受信波形の到達タイミングまでノイズが残存し、本来の理想的な受信波形をゆがめてしまうことがある。そのため1波目から5波目までの各ピーク電圧の相対位置関係が崩れてしまい、信号Dの出力タイミングが1周期分前もしくは後ろに移動することにより、測定誤差の要因となっていた。
本発明は前記従来の課題を解決するもので、常に基準電圧レベルを最適位置に調整し計測の信頼性の向上を目的としたものである。
前記従来の課題を解決するために、本発明の流量計測装置は、変化量演算手段で求めた前回の単位計測工程の計時値と、今回の単位計測工程の計時値の変化量が増幅手段で増幅された受信信号の周期と等しければ、誤計測判定手段が誤計測と判定し、制御手段が今回の単位計測工程の計時結果を無効として基準電圧を再調整するようになっている。
これによって、振動ノイズなどの影響で受信波形に歪が生じゼロクロスタイミングを誤って計時した場合であっても、その結果を無効とした上で基準電圧を修正して再計測できるので、信頼性の高い流量計測が可能となる。
本発明の流量計測装置は、筐体伝搬波や電気振動ノイズ等の影響で受信波形に歪が生じた場合であっても、基準電圧の最適化が可能となるので、信頼性の高い流量計測が可能となる。
本発明の実施の形態1における流量計測装置のブロック図 同装置の動作を説明するタイムチャート 同装置の動作を説明する別のタイムチャート 従来の計測装置のブロック図 同装置の動作を説明するタイムチャート
第1の発明は、流体流路に設けられ超音波信号を送受信する第1振動子及び第2振動子と、前記第1、第2振動子の送受信を切り替える切換手段と、前記第1、第2振動子に駆動信号を出力する送信手段と、前記第1、第2振動子の受信信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段から出力される受信信号が予め定められた基準電圧を超えた時点で受信検知信号を出力する受信検知手段と、前記基準電圧を設定する電圧設定手段と、前記受信検知手の信号出力後に受信信号のゼロクロスタイミング毎にゼロクロス検知信号を出力するゼロクロス検知手段と、前記送信手段の送信開始から計時を開始し前記ゼロクロス検知手段から出力されるゼロクロス検知信号までの経過時間をそれぞれ計時する計時手段と、前記計時手段の計時結果を基に超音波信号の伝搬時間を算出する伝搬時間演算手段と、前記伝搬時間演算手段の算出結果を基に流量を算出する流量演算手段と、前記第1、第2振動子の送受信方向を切り換て前記計時手段による順方向と逆方向の計時を実行し、その順・逆方向の一対の計時を単位計測工程とし、前記単位計測工程の実行毎に前記計時手段の出力を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前回の単位計測工程の計時値と今回の前記計時手段の計時値との差分を算出する変化量演算手段と、前記変化量演算手段で算出された差分が前記増幅手段で増幅された受信信号の周期と等しければ誤計測と判定する誤計測判定手段と、前記誤計測判定手段が誤計測と判定した場合に、今回の単位計測工程の計時値を無効とすると共に前記基準電圧を再調整する制御手段を備えたことにより、振動ノイズなどの影響で受信波形に歪が生じゼロクロス検知時間を誤って計時した場合であっても、その結果を無効とした上で基準電圧を修正して再計測できるので、信頼性の高い流量計測が可能となる。
第2の発明は、特に第1の発明において、前記制御手段は、前記誤計測判定手段が誤計測と判断した時、前記変化量演算手段で今回の単位計測工程で計時された計時値が前回の単位計測工程で計時された計時値よりも大きい場合には前記基準電圧を低下させ、小さい場合には前記基準電圧を上昇させて再計測を実行するので、基準電圧の修正が短時間で完結でき、応答性の高い計測が可能となる。
第3の発明は、特に第1または2の発明において、前記誤計測判定手段は、前記変化量演算手段の順逆双方向の計時値の合計値を用いて誤計測判定を行うので、流量変動に伴う伝搬時間変化と波形歪による時間変化の選別ができるので、より信頼性の高い流量計測が可能となる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における流量計測装置のブロック図である。図1において、流路1の途中に、超音波信号を発信する第1振動子2と超音波信号を受信する第2振動子3が流れ方向に対向して配置されている。第1振動子2と第2振動子3の送受信の役割を切換える切換手段4を介して、第1振動子2と駆動信号を出力する送信手段5とが接続され、第2振動子3は受信信号を増幅する増幅手段6と接続されている。
増幅手段6で増幅された受信信号は受信検知手段7で電圧設定手段8から出力される基準電圧と比較処理され、受信信号の方が大きくなるとゼロクロス検知手段9に受信検知信号を出力する。
ゼロクロス検知手段9は、受信検知信号が出力された後の受信信号のゼロクロスタイミング毎にゼロクロス検知信号を予め決められた回数だけ出力する。本実施の形態ではこの回数を4回として説明する。
計時手段10は送信手段5の駆動信号出力タイミングから計時を開始し、ゼロクロス検知手段からゼロクロス検知信号が出力される毎にそれらの経過時間を計時する。すなわち、1回の送受信に付き、4つの計時値が出力されることになる。
そして、この4つの計時値は最新の計時値として記憶手段11へ出力されると共に、伝搬時間演算手段12へも出力される。
以上述べてきた第1振動子2を送信側、第2振動子3を受信側とする計測方法を順方向の計測と呼ぶ。
次に、順方向の計測が完了すると制御手段13がふたつの振動子の送受信の役割を切換えるように切換手段4に切換信号を出力し、これによって、第1振動子2が増幅手段6、第2振動子3が送信手段5に接続される。そして、両振動子の送受信の役割を反転させた後、先に述べた方法と同様の計時処理を行う。これを逆方向の計測と呼ぶ。
以上、順方向、逆方向それぞれ1回ずつの計測を単位計測工程と呼び、この単位計測工程が決められた回数(本実施の形態では32回とする。)だけ実行されると、伝搬時間演算手段12がトータル32回の単位計測工程毎の計測結果をまとめて順逆双方向のそれぞれの平均伝搬時間を算出し、更にその結果を用いて流量演算手段14で流量を算出する。
また、変化量演算手段15は、単位計測工程が終わる毎に、記憶手段11に記憶されている前回の単位計測工程の計時値と今回の単位計測工程の計時値の差分を順逆双方向についてそれぞれ算出し、その算出結果を基に誤計測判定手段16で誤計測判定が後述する方法で実行される。誤計測判定手段16で誤計測判定がなされるとその単位計測工程の計測は無効とされると共に、必要な後処理が実行される。
また、制御手段13は先に説明した切換手段4のみならず、増幅手段6に設定する増幅率、電圧設定手段8が出力する基準電圧の制御など、この流量計測装置全般の制御を行うように構成されている。
図2は、流量計測装置の動作を説明するタイムチャートである。図2において、送信手段5の出力信号21、増幅手段6により増幅された受信信号22、電圧設定手段8の出力信号である基準電圧23、受信検知手段7の出力信号24(H/Lの2値信号)、ゼロクロス検知手段9に出力されるイネーブル信号25(H/Lの2値信号)、ゼロクロス検知手段9の出力信号26(H/Lの2値信号)の電圧レベルの時系列変化を示している。
横軸は送信手段5の出力信号21の送信開始タイミングを原点とする時間軸、縦軸は互いに原点の異なる電圧軸である。ただし、増幅手段6の出力信号である受信信号22と電圧設定手段8の出力信号である基準電圧23は同一原点の信号である。また、増幅手段6の出力はバイアス電圧Vbに超音波受信信号の増幅信号波形が重畳された電圧信号波形となっている。また、基準電圧23は理想の受信波形の3波目のピーク電圧と4波目のピー
ク電圧の中点付近に設定されているものとする。
以上のように構成された流量計測装置について、以下その動作、作用を説明する。
送信手段5から図2に示すような矩形上の出力信号21が第1振動子2に印加される。本実施の形態において出力信号21は周波数500kHzの3周期分の波形とする。
そして、出力信号21により第1振動子2から超音波信号が出力され、やがて第2振動子3で受信される。第2振動子3が受信した受信信号は増幅手段6からの出力振幅が一定になるように制御手段13が定めた増幅率によって増幅されている。増幅手段6の増幅率の決定方法は背景技術で述べた方法と同様であるため説明は省略する。増幅手段6により増幅された受信信号22は受信検知手段7とゼロクロス検知手段9に出力される。
受信検知手段7は例えばコンパレータとラッチ回路(共に図示せず)により構成されている。まず、コンパレータによって基準電圧23と受信信号22の比較処理が実行され、受信信号22の方が小さい場合には、コンパレータ出力はH、受信信号22の方が大きい場合には、コンパレータ出力はLとなる。
そのため、受信信号22が第2振動子3に到達する以前にはコンパレータ出力はHとなっている。その後、受信信号22が基準電圧23を超えた時点、すなわち受信信号22と基準電圧23が最初にクロスする点r(時間軸上のTr)にてコンパレータの出力はLに反転する。この反転タイミング受信検知信号に相当する。更に、ラッチ回路の作用により以降の出力信号24はLレベルを維持する。
ゼロクロス検知手段9はイネーブル信号25がHの期間のみ受信信号22とバイアス電圧Vbの比較処理を行うコンパレータとなっており、イネーブル信号25がLの期間はゼロクロス検知手段9の出力はLとなる。時間Trにおいて受信検知手段7の出力信号24がLに変化すると同時にイネーブル信号25はLからHに反転する。この時点でゼロクロス検知手段9の出力信号26はLであるが受信信号22とバイアス電圧Vbがクロスする点、すなわちゼロクロス点aでLからHに反転する。
以後、受信信号22のゼロクロス点b〜dにおいてゼロクロス検知手段9の出力信号26は反転を繰り返す。これら出力信号26の反転タイミングがそれぞれゼロクロス検知信号に相当する。そして、予め定められた4点のゼロクロス検知信号の取り込みが完了すると、イネーブル信号25はLとなり、以後、ゼロクロス検知手段9の出力信号26はLを維持する。
計時手段10は、タイマーカウンターで構成されていて時間原点にて計時を開始する。そして、ゼロクロス検知手段9で検出される4つのゼロクロス検知信号が発生する毎にその時点での計時値であるTa、Tb、Tc、Tdを一旦、記憶手段11に記憶する。
以上が流れの順方向の計測であり、順方向の計時が完了すると、制御手段13から、切換手段4に対して送受信の切換えタイミング信号が出力される。このタイミング信号を受けて切換手段4は第1振動子2を増幅手段6に、第2振動子3を送信手段5に接続し、逆方向の計時が開始される。
逆方向でのゼロクロスの判定方法および各ゼロクロス点の計時方法、更には計時値の記憶方法は先に説明した順方向の計時と同様であるので説明は省略する。
以上説明した、順方向と逆方向を一対とする計測が単位計測工程であり、最初の単位計
測工程を第1計測工程とし、以降、第2、第3と続き、最終の第32計測工程が終了するまで同様の処理が繰り返される。
続いて、第2計測工程以降の動作に関して、第1計測工程と異なる部分について説明する。第1計測工程が終わった時点で、記憶手段11には第1計測工程において計時手段10で計時された順方向の計測における計時値4点と、逆方向の計測における計時値4点が記憶されている。
ここで、図2の第1ゼロクロス点aに対応する順方向の計時値をTau1、第2ゼロクロス点bに対する順方向の計時値をTbu1、以下、第3ゼロクロスの計時値をTcu1、第4ゼロクロスの計時値をTdu1とする。同様に、逆方向の計時結果を第1ゼロクロスから順に、Tad1、Tbd1、Tcd1、Tdd1とする。以上が記憶手段11に記憶されている値となる。
同様に、第2計測工程の順方向の計測で、計時手段10で計時されたゼロクロス点a、b、c、dに対する計時値をそれぞれ順にTau2、Tbu2、Tcu2、Tdu2とする。第1計測工程と異なり第2計測工程以降では、これらの計時値は記憶手段11や伝搬時間演算手段12に出力される前に必要な前処理が施される。
まず、変化量演算手段15では、Tau1とTau2、Tbu1とTbu2、Tcu1とTcu2、Tdu1とTdu2の差分、すなわち第2計測工程の計時値から第1計測工程の計時値を引いた値を求める。そして、求めた差分がいずれもほぼ等しく、かつその値が振動子の受信波形の1周期に相当する値であるか否かを判定する。
本実施の形態では周波数を500kHzとしているので、判定値を2±0.1もしくは−2±0.1μsとする。変化量演算手段15で求めた4つの変化量がすべて判定値の範囲内にある場合には、誤計測と判断し、第2計測工程の計時値をすべて無効とし、判定値の範囲外の場合には、第2計測工程の計時値は有効とする。なお、ここで用いた2±0.1μsという判定値は、受信波形に大きなノイズ信号が重畳され、歪を発生した場合を想定した値である。
有効とされた場合の計時値は、記憶手段11に前回の計測値として記憶されると共に伝搬時間演算手段12にも正規の計時結果として出力される。逆に、無効と判断された場合の計時値は記憶手段11にも伝搬時間演算手段12も出力されない。
また、例えば、順方向のみの計時値が無効と判断された場合であっても、逆方向の計時値も無効とみなして、第2計測工程を最初からやり直す。
図3は、誤計測判定が行われる場合の波形の一例を示すタイムチャートである。図3は、送信手段5の出力信号31、増幅手段6により増幅された受信信号32、電圧設定手段8の基準電圧33、受信検知手段7の出力信号(H/Lの2値信号)34、ゼロクロス検知手段9に出力されるイネーブル信号35(H/Lの2値信号)、ゼロクロス検知手段9の出力信号36(H/Lの2値信号)の電圧レベルの時系列変化を示している。横軸は送信手段5の出力信号31の送信開始タイミングを原点とする時間軸、縦軸は互いに原点の異なる電圧軸である。ただし、増幅手段6の出力信号である受信信号32と電圧設定手段8の基準電圧33は同一原点の信号である。また、増幅手段6の出力はバイアス電圧Vbに超音波受信信号の増幅信号波形が重畳された電圧信号となっている。
図2と図3を比較すると、送信手段5の出力信号21と出力信号31、電圧設定手段8の出力信号である基準電圧23と基準電圧33は同一電圧である。一方、増幅手段6の受
信信号22と受信信号32は異なる波形であり、それに対応して、受信検知手段7の出力信号24と出力信号34、ゼロクロス検知手段9に出力されるイネーブル信号25とイネーブル信号35、ゼロクロス検知手段9の出力信号26と出力信号36は異なる波形となっている。
図3の受信信号32は図2の受信信号22に500kHzの振動ノイズが重畳し、特に受信波の3波目ピークや4波目ピークの電圧が図2の受信信号22よりも大きくなっている。そのため、受信信号32が電圧設定手段8の基準電圧33を超えるタイミングが図2に比べて早くなっている。
それに伴って、出力信号34、イネーブル信号35、出力信号36の出力が変化するタイミングも、図2の出力信号24、イネーブル信号25、出力信号26に比べて早くなっている。そのため、第1ゼロクロス点aも図3の方が、図2に比べて受信信号の1周期分早くなっており、以後の第2、第3、第4ゼロクロスであるゼロクロス点b〜dも同様である。
その結果、変化量演算手段15の求める4つの変化量(Tau1とTau2、Tbu1とTbu2、Tcu1とTcu2、Tdu1とTdu2のそれぞれの差分)はいずれも−2μs近傍の値となり、誤計測判定手段16の定める判定値を満足するので、計時手段10で求めた計時値はすべて無効となり、制御手段13により順方向の再計測が実行される。
基準電圧23の設定値は比較的ノイズマージンを大きく取れる受信波形の波に合わせて設定するのが一般的ではあり、本実施の形態では、4波目に合わせて設定しているが、温度、流量などの環境に応じて受信波形は若干異なることがあるため、その過渡期においてはノイズマージンが小さくなってしまう場合がある。そのような状況に振動ノイズが重なれば、ゼロクロスタイミングのずれが起こりやすくなる。
しかも、振動ノイズは一過性のものではなく、継続して発生することがしばしばである。したがって、電圧設定手段8で定める基準電圧23を同じに設定のままにした場合には、32回の計測工程のうち、何度かは第2計測工程と同様にゼロクロス点のタイミングが1周期だけずれてしまい再び誤計測と判断される可能性が極めて高い。
そこで、制御手段13は、誤計測判定手段16が誤計測と判定した際の変化量演算手段15の演算結果に応じて、電圧設定手段8が定める基準電圧の再調整を行う。
図3に示すように、第2計測工程で検出されたゼロクロス点a、b、c、dが図2に示す第1計測工程よりも1周期前にずれた場合には、変化量演算手段15の演算結果はおおよそ−2μsとなる。 この場合、基準電圧の位置が、3波目のピーク電圧V3と4波目のピーク電圧V4の間に位置するように高めにシフトさせる。反対に変化量演算手段15の演算結果が+2μsであれば、基準電圧を低めにシフトさせる。
以上のように基準電圧を微調整させて、変化量演算手段15の出力が誤計測判定値から外れるまで基準電位の変更を繰り返す。こうすることにより順方向、逆方向一対の計測が終わる毎に基準電位を変更させているので、波形歪に対して応答性の高い計測の実行が可能となる。
また、基準電圧を微調整する以外の、別の方法として背景技術で説明した通り、現在の設定値にかかわらず、基準電圧を徐々に変化させながら受信波形の第1から第5波までのピーク電圧を確認した上で、改めて正規の位置(3波目ピークと4波目ピークの間の電圧
)に設定する方法を用いても良い。この場合、応答性は劣るものの、基準電圧を適切な位置に設定できることに関しては同様の効果がある。
また、誤計測判定手段16は、流量変動時における誤計測判定の信頼性を高める為、順逆双方向の計時値の合計値を基に誤計測の有無を判断する方法を用いている。
例えば、第1計測工程と第2計測工程の計時値を比較する場合、第1ゼロクロスの計時値を比較判定するためには、(式2)を用いる。
ΔT=(Tau2+Tad2)−(Tau1+Tad1)・・・(式2)
これは、同一環境下において流量の値にかかわらず、順逆両方の伝搬時間の合計値が一定になる性質を利用して誤判定を行うことを意図したものであり、ΔTが0であれば誤計測ではないと判断できるもので、以下その原理を説明する。
まず、順方向の伝搬時間をTu、逆方向の伝搬時間をTd、音速をC、流速をV、第1振動子と第2振動子の中心部を結ぶ直線距離をL、両振動子を結ぶ直線と流れの方向とがなす角度をθとした場合、それぞれ以下の式で表せる。
Tu=L/(C+Vcosθ)・・・・(式3)
Td=L/(C−Vcosθ)・・・・(式4)
ここで、C>>V、即ち、流速Vに対して音速Cが十分に大きい場合、(式3)は(式5)の如く近似できる。
Tu=L/{C・(1+V/Ccosθ)}
≒L/C・(1−V/Ccosθ)・・・(式5)
同様に(式4)は(式6)の如く近似できる。
Td≒L/C・(1+V/Ccosθ)・・・(式6)
よって、TuとTdの合計値は(式7)で表せる。
Tu+Td=2L/C・・・(式7)
この(式7)は流速Vすなわち流量に依存しない値となるのが分かる。そして、この性質を用いれば、流量変化による伝搬時間の変動に影響を受けずに誤計測の判断ができる。
即ち、(式10)のように順逆双方向の計時値の合計値が一定になるという原理に基づくと、誤計測が発生していない場合には、(式5)で演算されるΔTの値はほぼ0となることから、流量変化に伴う伝搬時間の変動を誤計測と判断することを防止できるのである。
例えば、実際に流速が変化して、その変化に相当する伝搬時間の変化が誤計測判範囲の1.9μsであったと仮定する。この場合、順方向の伝搬時間変化が−1.9μsとすれば、逆方向の伝搬時間変化は+1.9μsとなる。従って、順方向、逆方向で個別に誤計測かどうかを判断すれば、いずれの方向でも誤計測と判断されることになるが、この方法によると、(式2)で求められるΔTの値は0となるので、誤計測ではないと判断できるのである。
以上述べてきた方法により予め定められた32回の計測工程がすべて終了した時点で伝搬時間演算手段12で順方向、逆方向それぞれの伝搬時間を求める。そして、伝搬時間演算手段12では有効と判断された4点の計時値を個別に積算していく。
このようにして、32回の単位計測工程が完了した時点で第1から第4ゼロクロス、それぞれの計時結果の積算値が保持されている。ゼロクロス点aの計時値の積算値をΣTaとし、ゼロクロス点b、c、dに関しても同様にそれぞれの積算値をΣTb、ΣTc、ΣTdとして、それらの値を単位計測工程のトータル回数32で割ることによって、各ゼロクロスの計時値の平均値が求まる、そして、その4つの平均値を更に平均する。数式化すれば、(式2)の通りとなる。
Tm=(ΣTa+ΣTb+ΣTc+ΣTd)/(32×4)・・・(式8)
この数式で求められるTmは4つのゼロクロス点a〜dの計時値の平均値すなわち、第2ゼロクロス点bと第3ゼロクロス点cの中点、すなわち5波目のピークの時間を求めていることに等しい。
この5波目ピークは、波形の立ち上がり点wから4.25周期分遅れた位置にあるので、(式8)で求めた値から受信波形の4.25周期分を引くことによって、正確な伝搬時間の算出が可能となり、伝搬時間演算手段12で順逆双方向の伝搬時間TuおよびTdが求まれば(式1)を用いて流量演算手段14が流体流量を求める。
このようにトータル32回の計測工程が実行される毎に流量演算手段14が流量を算出することになる。この一連の流れを単位流量算出工程とする。制御手段13は決められた時間(例えば2秒)毎に単位流量算出工程を実行するように流量計測装置全体の時間管理を行っている。
以上のように、本発明にかかる流量計測装置は、基準電圧常に最適化することが可能となり、長期間にわたって、正確な流量計測が可能となるので、家庭用から業務用に至る大型のガスメータまで幅広い用途に適用できる。また、水道メータなどの液体用流量計への適用も可能である。
1 流路
2 第1振動子
3 第2振動子
4 切換手段
5 送信手段
6 増幅手段
7 受信検知手段
8 電圧設定手段
9 ゼロクロス検知手段
10 計時手段
11 記憶手段
12 伝搬時間演算手段
13 制御手段
14 流量演算手段
15 変化量演算手段
16 誤計測判定手段

Claims (3)

  1. 流体流路に設けられ超音波信号を送受信する第1振動子及び第2振動子と、
    前記第1、第2振動子の送受信を切り替える切換手段と、
    前記第1、第2振動子に駆動信号を出力する送信手段と、
    前記第1、第2振動子の受信信号を増幅する増幅手段と、
    前記増幅手段から出力される受信信号が予め定められた基準電圧を超えた時点で受信検知信号を出力する受信検知手段と、
    前記基準電圧を設定する電圧設定手段と、
    前記受信検知手の信号出力後に受信信号のゼロクロスタイミング毎にゼロクロス検知信号を出力するゼロクロス検知手段と、
    前記送信手段の送信開始から計時を開始し前記ゼロクロス検知手段から出力されるゼロクロス検知信号までの経過時間をそれぞれ計時する計時手段と、
    前記計時手段の計時結果を基に超音波信号の伝搬時間を算出する伝搬時間演算手段と、
    前記伝搬時間演算手段の算出結果を基に流量を算出する流量演算手段と、
    前記第1、第2振動子の送受信方向を切り換て前記計時手段による順方向と逆方向の計時を実行し、その順・逆方向の一対の計時を単位計測工程とし、前記単位計測工程の実行毎に前記計時手段の出力を記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に記憶された前回の単位計測工程の計時値と今回の前記計時手段の計時値との差分を算出する変化量演算手段と、
    前記変化量演算手段で算出された差分が前記増幅手段で増幅された受信信号の周期と等しければ誤計測と判定する誤計測判定手段と、
    前記誤計測判定手段が誤計測と判定した場合に、今回の単位計測工程の計時値を無効とすると共に前記基準電圧を再調整する制御手段を備えた流量計測装置。
  2. 前記制御手段は、前記誤計測判定手段が誤計測と判断した時、前記変化量演算手段で今回の単位計測工程で計時された計時値が前回の単位計測工程で計時された計時値よりも大きい場合には前記基準電圧を低下させ、小さい場合には前記基準電圧を上昇させて再計測を実行する請求項1に記載の流量計測装置。
  3. 前記誤計測判定手段は、前記変化量演算手段の順逆双方向の計時値の合計値を用いて誤計測判定を行う請求項1または2に記載の流量計測装置。
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