本発明の第1の実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
塗布液塗布装置1は、図1〜図3に示すように、ベース2を有する。このベース2上には、矢印Y方向に沿って設けられた一対のガイドレール3を介して搬送テーブル4が移動可能に設けられる。
搬送テーブル4は、図示しない駆動機構によってガイドレール3の延設方向であるY軸方向(図示矢印Y方向)に沿って往復移動される。この搬送テーブル4の上面には、塗布対象物としての基板Wが真空吸着や静電チャック等の吸着手段によって吸着保持される。ここで、基板Wは、例えば、表示パネルを製造するための矩形状のガラス基板が用いられる。
ベース2の略中央位置には、Y軸方向に直交するX軸方向(図示矢印X方向)に沿って、搬送テーブル4を跨ぐ門型フレーム5が設けられる。この門型フレーム5は、一方の脚部と他方の脚部の間に掛け渡された平面視で矩形枠状の支持フレーム6を備る。この支持フレーム6には、複数、この実施形態においては3つの塗布ヘッド7がX軸方向に沿って千鳥状の配列で取り付けられる。
塗布ヘッド7は、インクジェット方式の塗布ヘッドであり、その下面である吐出口形成面7aには複数の吐出口7b(図5(B)参照)が矢印X方向に沿って直線状に配列されて設けられる。吐出口7bは、それぞれ、塗布ヘッド7内において塗布液を蓄える液室(不図示)に連通する。液室には、圧電素子等の駆動素子(不図示)によって変形される可撓性の隔壁(不図示)が設けられる。この圧電素子によって隔壁が撓み変形されることによって引き起こされる液室内の容積変化によって、吐出口7bから塗布液が液滴状となって吐出される。
このような塗布ヘッド7は、圧電素子に印加する駆動電圧の大きさ変えることで吐出口7bから吐出させる液滴の量を調整することができ、駆動電圧の印加間隔を変更することで吐出周波数(吐出時間間隔)を調整することができる。
なお、各塗布ヘッド7には、不図示の塗布液供給手段によって塗布液が供給される。この塗布液としては、例えば、配向膜を形成するための配向膜溶液やレジスト膜を形成するためのレジスト液等を用いることができる。
また、搬送テーブル4の移動方向(Y軸方向)における一方の端部(図1、2における右側の端部)には、吸引清掃装置8が設けられる。この吸引清掃装置8は、各塗布ヘッド7に対応して吸引清掃部材としての吸引清掃ノズル9を備える。
図4に示すように、各吸引清掃ノズル9は、上端に吸引面9aを備え、この吸引面9aにはスリット状の吸引孔9bが形成される。また、吸引面9aは、長方形状に形成されており、長辺方向を塗布ヘッド7の吐出口7bの配列方向に直交する方向であるY軸方向、言い換えれば、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aの短辺方向に沿わせて配置される。また、吸引面9aの長辺の長さは吐出口形成面7aの短辺の長さよりも所定長さ長く形成され、吸引面9aにその長辺方向に沿って形成される吸引孔9bの長さは吐出口形成面7aの短辺の長さと同等若しくは若干長く形成される(図5(B)参照)。
各吸引清掃ノズル9は、それぞれX軸方向移動装置10に支持される。これらのX軸方向移動装置10は、昇降駆動手段としてのエアシリンダ11の作動ロッド11aの先端に固定支持された昇降板12上に設けられる。エアシリンダ11は、搬送テーブル4の側壁に固定された略L字状断面を有するブラケット部材13に支持固定される。これにより、各吸引清掃ノズル9は、搬送テーブル4の移動によってY軸方向に移動可能とされ、X軸方向移動装置10の駆動によってX軸方向、すなわち、吐出口7bの配列方向に沿って移動可能とされる。
また、吸引清掃装置8は、吸引清掃ノズル9の吸引孔9bに吸引力を作用させるための負圧供給装置14を備える。負圧供給装置14は、負圧を発生させる真空ポンプ15と、真空ポンプ15と吸引清掃ノズル9とをつなぐ真空配管16と、吸引清掃ノズル9への負圧を供給/停止するための電磁開閉弁17(17a、17b)と、吸引清掃ノズル9に供給する負圧の大きさを調整する電空レギュレータ18(18a、18b)と、吸引清掃ノズル9によって吸引した気体と塗布液とを分離する気液分離器19とを備える。
すなわち、吸引清掃ノズル9の吸引孔9bには、第1の真空配管16aの一端部が接続される。第1の真空配管16aの他端部は気液分離器19に接続される。この気液分離器19は所定の容積を備えたタンクであり、第1の真空配管16aの他端部はこの気液分離器19の天井部を気密に貫通してタンク内の空間の上部に開口する。したがって、吸引孔9bから吸引された気体と塗布液の混合流体が、第1の真空配管16aの他端部(気液分離器19側の端部)から排出されると、気体に比べて充分に重い塗布液は気液分離器19の底部に落下して溜まる。これにより、気体と塗布液が分離される。気液分離器19の底部には、電磁開閉弁19aを備えた排液管19bが接続されており、気液分離器19内に溜まった塗布液を排出できるようになっている。
また、気液分離器19の天井部には、第2の真空配管16bの一端部が気密に接続される。第2の真空配管16bの他端部は、真空ポンプ15に接続される。この第2の真空配管16bは、中間部で第1の管路16b1と第2の管路16b2との2つの経路に分岐している。この2つの管路16b1、16b2には、真空ポンプ15側から順に電磁開閉弁17a、17bと電空レギュレータ18a、18bがそれぞれ配置される。なお、これら2つの電空レギュレータ18a、18bは、吸引清掃ノズル9に供給する負圧の大きさがそれぞれ異なる大きさとなるように調整量が設定されている。具体的には、第1の管路16b1の電空レギュレータ18aの調整圧力よりも第2の管路16b2の電空レギュレータ18bの調整圧力の方が低くなるように調整されている。言い換えれば、第1の管路16b1を介して供給される負圧(第1の真空吸引力)の大きさに比べて、第2の管路16b2を介して供給される負圧(第2の真空吸引力)の大きさの方が大きくなるようになっている。
また、塗布液塗布装置1は、制御装置20を備える。制御装置20は、搬送テーブル4の移動、塗布ヘッド7からの塗布液の吐出、X軸方向移動装置10の駆動、電磁開閉弁17a、17b、19aの開閉動作、電空レギュレータ18a、18bによる調整圧力を制御する。
また、制御装置20は、記憶部20aを備えており、この記憶部20aには塗布液の塗布に必要な各種データが記憶される。なお、各種データとは、例えば、吐出口7bから所定量の液滴を吐出させるために設定された圧電素子に対する駆動電圧、基板W上における塗布液の液滴の塗布位置を示す塗布パターンデータ、搬送テーブル4の移動速度、気泡やごみ等による吐出口7bの詰まりを回復させるために塗布液を強制排出させるための圧送条件などである。
次に、作動について説明する。
このような塗布液塗布装置1においては、基板Wに対する塗布液の塗布を行うにあたり、まず、制御装置20の制御によって搬送テーブル4がガイドレール3上における基板Wの搬入/搬出作業位置(図1において破線で示す左端側の位置)に位置付けられる。そして、この位置において、搬送テーブル4上には、不図示の搬送ロボットによって基板Wが供給される。
搬送テーブル4上に供給された基板Wは、搬送テーブル4が備える吸着手段によって吸着保持される。
搬送テーブル4に基板Wが保持されると、制御装置20の制御によって搬送テーブル4がガイドレール3の反対側の端部(右端部)へ向けて記憶部20aに記憶された移動速度での移動を開始する。
この搬送テーブル4の移動中、制御装置20はガイドレール3に付随して設けられたリニアエンコーダ等の位置検出器(不図示)の出力に基づいて搬送テーブル4の位置情報を取り込む。そして、制御装置20はこの位置情報に基づき、基板Wが塗布ヘッド7の下方を通過するタイミングに合せて各圧電素子に駆動電圧を印加することで塗布ヘッド7の各吐出口7bから予め設定された量の液滴を吐出させ、基板W上に所定の塗布パターンで塗布液の液滴を塗布する。
基板Wが塗布ヘッド7の下方を通過し、搬送テーブル4がガイドレール3の右側端部(図1において実線で示す位置)に到達したならば、搬送テーブル4の移動を停止させる。
次いで、搬送テール4を左側端部へ向けて移動させ、基板Wの搬入/搬出作業位置に位置付ける。
搬送テーブル4が、搬入/搬出作業位置に位置付けられたならば、不図示の搬送ロボットによって、塗布が完了した基板Wを搬送テーブル4上から取り出し、新たな基板Wを搬送テーブル4に供給する。
このような作業を繰返すことで、複数の基板Wに対する塗布液の塗布が順次行われる。
なお、基板Wに対する塗布液の塗布は、基板Wを塗布ヘッド7の下方を1回通過させることで行なう以外にも、2回以上の通過によって行なうようにしても良い。
このような塗布液塗布装置1では、吐出口7bから液滴の噴出特性を一定の特性に維持するために、吸引清掃装置8を用いて吐出口形成面7aの定期的な清掃を行っている。
次に、吸引清掃装置8による吐出口形成面7aの清掃動作について説明する。
吐出口形成面7aを清掃するに際しては、まず、搬送テーブル4を基板Wの搬入/搬出作業位置(図1において破線で示す左端側の位置)に位置付ける。この状態で、搬送テーブル4に一体的に支持された吸引清掃装置8が、各塗布ヘッド7との対向位置(真下)に位置付けられるようになっている。記憶部20aには清掃動作を行う条件が設定されており、制御装置20は、記憶部20aに設定された条件に該当したときに、吸引清掃部材8に清掃を行わせるべく、搬送テーブル4を搬入/搬出作業位置に位置付ける。ここで、清掃動作を行う条件としては、「上述した基板Wに対する塗布液の塗布を実行した後」、「気泡等による吐出口7bの詰まりなどを回復させるための塗布液の強制排出を実行した後」、或いは、「塗布液の吐出を休止させる待機時間が所定の時間以上継続したときに吐出口7bの塗布液の乾燥を防止するためのダミー吐出を実行した後」などがあげられる。
搬送テーブル4を搬入/搬出作業位置、すなわち、吸引清掃装置8が各塗布ヘッド7との対向位置に位置付けられると、制御装置20によってエアシリンダ11が駆動され、昇降板12が図1に示す状態の待機位置からその位置から上昇した作業位置まで移動される。昇降板12が作業位置へ位置づけられた状態において、吸引清掃ノズル9の吸引面9aと吐出口形成面7aとの間には、図5(A)に示すように、上下方向(Z軸方向)において僅かな隙間が形成される。またこの段階では、吸引清掃ノズル9は、図3に示す位置である、吐出口7bのX軸方向における塗布ヘッド7の一方の脇に位置する待機位置に位置づけられている。
なおここで、図5は、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに対する塗布液L1、L2の付着状態を示すものであり、1つの塗布ヘッド7とその塗布ヘッド7に対応する吸引清掃ノズル9を拡大して示したものである。図5(A)は、塗布ヘッド7を横方向から見た図であり、図5(B)は、塗布ヘッド7を下方向(吐出口形成面7aに対向する方向)から見た図であり、吸引清掃ノズル9の吸引面9aと吸引孔9bを2点鎖線で示している。
昇降板12が作業位置まで上昇されると、清掃吸引ノズル9の吸引孔9bに真空吸引力が付与される。すなわち、電磁開閉弁17aと電磁開閉弁17bのいずれかが開制御されて真空ポンプ15によって発生されて電空レギュレータ18a、18bで調整された真空吸引力が吸引孔9bに付与される。このとき、真空ポンプ15は、常時駆動していても良いし、制御装置20が記憶部20aに記憶された清掃動作を行う条件に該当すると判断したときに駆動させるようにしても良い。後者の場合には、清掃動作が完了した時点で、真空ポンプ15の駆動を停止させると良い。
吸引孔9bに真空吸引力が付与されると、X軸方向移動装置10が駆動され、吸引清掃ノズル9がX軸方向における塗布ヘッド7の一方の脇から他方の脇に向けて移動する。図5(A)に示す例においては、吸引清掃ノズル9は、塗布ヘッド7に対する実線で示される右側の脇から2点鎖線で示される左側の脇へと移動する。
吸引清掃ノズル9は、このX軸方向への移動中、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに付着した塗布液を吸引孔9bに作用する真空吸引力によって吸引除去する。吸引された塗布液は、第1の真空配管16aを通って気液分離器19へと送られる。気液分離器19へ送られた塗布液は、第1の真空配管16aから落下して気液分離器19の底部に溜められる。
吸引清掃ノズル9が塗布ヘッド7の他方の脇に達すると、電磁開閉弁17a、17bが閉制御されて吸引孔9bに付与されていた真空吸引力が停止される。
真空吸引力の停止後、エアシリンダ11が駆動されて昇降板12が待機位置まで下降する。昇降板12が待機位置に位置づけられると、X軸方向移動装置10が駆動されて吸引清掃ノズル9が待機位置へ戻される。
このような動作によって、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに付着した塗布液の除去が行われる。
しかして、本実施形態の塗布液塗布装置1においては、上述の清掃動作の際、吸引清掃ノズル9の吸引孔9bに作用させる吸引力の大きさを、その清掃動作の直前に行われた吐出口7bからの吐出動作に基づいて切り換えるようにしている。すなわち、直前に行われた吐出動作が、記憶部20aに設定されている清掃動作を行う条件のうちいずれに該当するかによって、第1の管路16b1と第2の管路16b2とを使い分けて吸引孔9bに真空吸引力を作用させる。
吐出口形成面7aへの塗布液の付着量は、吐出口7bから塗布液を液滴状にして噴出させる噴出動作では、図5に符号L1で示すように、比較的少なく、吐出口7bの詰まりなどを回復させるために塗布液を吐出口7bから流下させて強制的に排出する排出動作では、図5に符号L2で示すように、比較的多くなることが実験により認められた。そこで、記憶部20aに設定されている条件のうち、例えば、噴出動作に該当する、基板Wに対する塗布液の塗布を実行した後およびダミー吐出を実行した後は、第1の管路16b1を介して第1の真空吸引力を吸引孔9bに付与するようにする。一方、排出動作に該当する、塗布液の強制排出を実行した後は、第2の管路16b2を介して第2の真空吸引力を吸引孔9bに付与するようにする。
なおここで、噴出動作とは、圧電素子の駆動によって吐出口7bから塗布液を液滴状にして飛ばす吐出動作のことであり、排出動作とは、前記塗布液供給手段(不図示)側からポンプの駆動や気体圧力等によって塗布液を圧送して吐出口7bから流出させる吐出動作のことである。
このような第1の実施形態においては、清掃動作の直前に行われた吐出動作が吐出口形成面7aに対する塗布液の付着量が比較的少ない噴出動作であった場合には、吸引孔9bに作用させる真空吸引力を第1の真空吸引力とした。また、清掃動作の直前に行われた吐出動作が吐出口形成面7aに対する塗布液の付着量が比較的多い排出動作であった場合には、吸引孔9bに作用させる真空吸引力を第1の真空吸引力よりも大きな第2の真空吸引力とした。つまり、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに対する塗布液の付着状態としての付着量に応じて吸引孔9bに作用させる真空吸引力が切り換えられるようにした。そのため、吐出口形成面7aに付着した塗布液を良好に除去することができる。
すなわち、吐出口形成面7aに対する塗布液の付着量に対して吸引孔9bに作用させる真空吸引力が強すぎると、真空吸引によって引き起こされる吐出口形成面7aに沿う空気の流れによって吐出口形成面7aが過度に乾燥してしまう。反対に、吸引孔9bに作用させる真空吸引力が弱すぎて、吐出口形成面7aに付着した塗布液が充分除去できずに残ってしまう。吐出口形成面7aが乾燥しすぎると、吐出口7b内の塗布液が乾燥しやくなり吐出口7b内の塗布液が固化することによる吐出不良が生じやすくなる。また、吐出口形成面7aに付着した塗布液が充分除去できずに残ってしまうと、吐出口7bからの液滴の噴射量にばらつきが生じたり、噴射された液滴が真っ直ぐ飛ばずに曲がってしまったりという吐出不良が生じる。そこで、吐出口形成面7aに対する塗布液の付着量に応じて吸引孔9bに作用させる真空吸引力を切り換えるようにすることによって、上述のような吐出不良の原因を除去することができるので、吐出口形成面7aを液滴の吐出動作、特に、噴出動作に適した状態に保つことができ、吐出口7bからの液滴の噴出特性を良好な状態に維持することが可能となる。よって、基板Wに対する塗布液の塗布を良好に行うことができ、その結果、基板W上に形成される塗布膜などの塗布パターンの品質を向上させることが可能となる。
次に、第2の実施形態について図6、7を用いて説明する。
第2の実施形態においては、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに対する塗布液の付着状態を検出する検出手段としての検出装置21を備え、この検出手段の検出結果に基づいて吸引孔9bに付与する真空吸引力を切り換えるようにした点が第1の実施形態と異なる。
図6に示すように、検出装置21は、カメラ21a等の撮像手段と画像処理装置21bを備えて構成される。
カメラ21aは、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに対向する位置に、吐出口形成面7aを撮像可能な状態で配置される。カメラ21aは、例えば、ブラケット部材13を搬送テーブル4とは反対側に向けて水平方向に延長し、その延長部上に各塗布ヘッド7に対応させて1つずつ吸引清掃装置8と併設することができる。このように構成した場合、吸引清掃装置8による清掃に先立って、カメラ21aを塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに対向させて吐出口形成面7aの画像(図6(B)参照)を撮像する。このカメラ21aによる撮像画像Gは、画像処理装置21bに送信される。
画像処理装置21bは、カメラ21aの撮像画像Gを画像処理して、吐出口形成面7aに付着した塗布液L1、L2の画像を抽出する。このような抽出は、例えば、塗布液の付着していない吐出口形成面7aの画像をテンプレート画像として予め登録しておき、このテンプレート画像と撮像画像Gとの差分をとることで行うことが可能である。このようにして抽出された塗布液L1、L2の画像データに基づいて、画像処理装置21bは、塗布液L1、L2の付着量を求める。例えば、付着量として、塗布液の最大長さ(X軸方向の長さs1、s2)と最大幅(Y軸方向の長さd1、d2)を算出する。算出された長さs1、s2と幅d1、d2の情報は、制御装置20に送られる。
制御装置20は、送信された塗布液L1、L2の長さs1、s2と幅d1、d2の情報に基づいて、吸引孔9bに真空吸引力を、第1の管路16a1を介して付与するか、第2の管路16a2を介して付与するかを判別する。
すなわち、制御装置20は、送信された長さs1、s2と幅d1、d2を、記憶部20aに予め記憶されている長さと幅それぞれの設定値と比較する。そして、長さと幅が共に設定値以下である場合には、塗布液の付着量が少量であると判定して、第1の管路16a1を介して第1の真空吸引力を吸引孔9bに付与する。また、長さと幅のいずれかが設定値を越えた場合には、塗布液の付着量が多量(少量よりも多い量)であると判定して、第2の管路16a2を介して第2の真空吸引力を吸引孔9bに付与するようにする。
このようにすることによって、第1の実施形態と同様に、吐出口形成面7aに対する塗布液の付着量が多かったり少なかったりする場合においても、その付着量に応じて吸引孔9bに作用させる真空吸引力が切り換えられるので、吐出口形成面7aに付着した塗布液を良好に除去することが可能である。
また、図7に示すように、検出装置21は、塗布ヘッド7の吐出口形成面7aに光軸を沿わせた状態で、吐出口形成面7aを横方向(水平方向)から撮像可能にカメラ21aを配置するようにしても良い。このとき、カメラ21aは、例えば、塗布ヘッド7を支持する支持フレーム6に取り付け具等を介して、各塗布ヘッド7に対応させて1つずつ設けることができる。このように構成した場合、吸引清掃装置8による清掃に先立って、カメラ21aによって横方向から吐出口形成面7aの画像(図7(B)参照)を撮像する。
画像処理装置21bは、上述の図6を用いた説明と同様の手法にて、撮像画像Gから吐出口形成面7aに付着した塗布液L1、L2の画像を抽出し、抽出した塗布液L1、L2の画像データに基づいて、画像処理装置21bは、塗布液L1、L2の付着量を求める。例えば、付着量として、塗布液の最大厚み(Z軸方向の長さh1、h2)を算出する。算出された厚みh1、h2の情報は、制御装置20に送られる。
制御装置20は、送信された厚みh1、h2を、記憶部20aに予め記憶されている、例えば、厚みの設定値と比較する。そして、厚みが設定値以下である場合には、塗布液の付着量が少量であると判定して、第1の管路16a1を介して第1の真空吸引力を吸引孔9bに付与する。また、厚みが設定値を越えた場合には、塗布液の付着量が多量(少量よりも多い量)であると判定して、第2の管路16a2を介して第2の真空吸引力を吸引孔9bに付与するようにする。
このようにすることによっても、第1の実施形態と同様に、吐出口形成面7aに対する塗布液の付着量が多かったり少なかったりする場合においても、その付着量に応じて吸引孔9bに作用させる真空吸引力が切り換えられるので、吐出口形成面7aに付着した塗布液を良好に除去することが可能である。
なお、上述において、吸引孔9bに小さい真空吸引力(第1の真空吸引力)を付与する条件を、塗布液L1、L2の画像の長さ(X軸方向の長さs1、s2)と幅(Y軸方向の長さd1、d2)が共に設定値以下である場合としたが、これに限られるものではなく、例えば、長さと幅のうち予め選択した一方の値が設定値以下である場合や、長さと幅のうちいずれか一方の値が設定値以下である場合としても良い。また、塗布液のL1、L2の画像の長さと幅、或いは、長さまたは幅を複数個所において算出し、その平均値と設定値とを比較するようにしても良い。
また、塗布液L1、L2の画像の長さと幅を求めて設定値と比較したり、塗布液L1、L2の画像の厚みを求めて設定値と比較したりしたが、塗布液L1、L2の画像の面積を算出して、算出した面積と設定値とを比較するようにしても良い。このとき、塗布液L1、L2の画像の面積は、塗布液L1、L2の画像に対応する画素数に単位画素の面積を乗ずることで求めることが可能である。
さらにまた、図6に示すような、吐出口形成面7aに対向する方向から撮像した撮像画像に基づく判定結果と、図7に示すような、吐出口形成面7aの横方向から撮像した撮像画像に基づく判定結果とを総合して、吸引孔9bに作用させる真空吸引力の切り換えを行うようにしても良い。例えば、塗布液L1、L2の画像の長さ(X軸方向の長さs1、s2)と幅(Y軸方向の長さd1、d2)が共に設定値以下で、かつ厚みh1、h2が設定値以下である場合に、吸引孔9bに作用させる真空吸引力を小さい真空吸引力(第1の真空吸引力)とする。それ以外の場合には、吸引孔9bに作用させる真空吸引力を大きな真空吸引力(第2の真空吸引力)とするといった具合である。
このような第2の実施形態においては、吐出口形成面7aに対する塗布液の実際の付着量を検出して吸引孔9bに作用させる真空吸引力を切り換えるようにした。このため、塗布液の付着量が少ないときには小さな真空吸引力(第1の真空吸引力)に、塗布液の付着量が多いときには大きな真空吸引力(第1の真空吸引力よりも大きな第2の真空吸引力)に切り換えるので、吐出口形成面7aに対する塗布液の実際の付着量に適した真空吸引力で塗布液の除去が行える。そのため、第1の実施形態と同様に、吐出口形成面7aを液滴の吐出動作、特に、噴出動作に適した状態に保つことができ、吐出口7bからの液滴の噴出特性を良好な状態に維持することが可能となる。よって、基板Wに対する塗布液の塗布を良好に行うことができ、その結果、基板W上に形成される塗布膜などの塗布パターンの品質を向上させることが可能となる。
なお、上述の実施形態において、1回の清掃動作中、すなわち、吸引清掃ノズル9が塗布ヘッド7の一方の脇から他方の脇へ移動する間、吸引孔9bに作用させる真空吸引力を一定の値の例で説明したが、これに限られるものではなく、可変としても良い。例えば、図6、或いは図7に示すように、カメラ21aを用いて吐出口形成面7aに付着した塗布液L1、L2の画像を撮像する。次いで、吸引孔9bの移動方向に沿う複数の箇所において塗布液L1、L2の画像の幅、或いは厚みを算出する。算出した幅、或いは厚みを記憶部20aに予め記憶された設定値と比較し、幅、或いは厚みが設定値を超えた部分では吸引孔9bに作用させる真空吸引力の大きさをそれ以外の部分に比べて大きくするように制御しても良い。このようにすることによって、吐出口形成面7aにおいて塗布液の付着量の多い部分と少ない部分が存在する場合であっても、吸引孔9bに作用させる真空吸引力を部分的な付着量の違いに合わせて切り換えることができるので、吐出口形成面7aから良好に塗布液を除去することができる。
または、吐出口形成面7aに対する塗布液の付着形状の傾向として、付着量の多い少ないに関係なく、吐出口形成面7aの長手方向(吸引清掃ノズル9の移動方向)の中央部分において両端部分に比べて付着量が多くなる傾向があるような場合には、中央部分では吸引孔9bに作用させる真空吸引力の大きさを両端部分に比べて大きくするように制御しても良い。このようにした場合でも、上述と同様に、吐出口形成面7aから良好に塗布液を除去することが可能である。
また、吸引清掃ノズル9を吐出口形成面7aの長辺方向に移動可能とした例で説明したが、これに限られるものではなく、吸引清掃ノズル9を吐出口形成面7aの短辺方向に沿って移動させるようにしても良い。この場合、吸引清掃ノズル9の吸引孔9bの長さは、吐出口形成面7aの長辺方向の長さと同等、或いは若干長く形成すると良い。なお、このような配置とした場合であって、吐出口形成面7aにおける吐出口9bの形成部分に沿って塗布液の付着量(塗布液の厚み)が大きくなる傾向が生じうる場合には、吐出口形成面7aの短辺方向に沿う吸引清掃ノズル9の移動中に、吐出口9b形成部分では吸引孔9bに作用させる真空吸引力の大きさをそれ以外の部分に比べて大きくするように制御しても良い。
また、検出装置21は、カメラ21aを用いた構成のもので説明したが、これに限られるものではなく、例えば、ラインセンサや変位センサを用いる構成のものであっても良い。ラインセンサを用いる場合には、ラインセンサを吐出口形成面7aに沿って移動させることで吐出口形成面7aに付着した塗布液L1、L2の平面画像を得ると良い。また、変位センサを用いる場合には、変位センサを吐出口形成面7aに沿って格子状に移動させることで、吐出口形成面7aと塗布液L1、L2表面の高低差に基づいて吐出口形成面7aに付着した塗布液L1、L2の3次元情報を得ると良い。