以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
(画像形成システム)
図1は、本発明に係る画像形成装置100と画像送信装置101の接続を示す画像形成システムの一実施例の概略図である。
本実施例の画像形成装置100は、図1に示すように、画像送信装置としてのPCなどの情報機器101とケーブル102を介して接続される。情報機器101から画像信号が画像形成装置100に送信されると、画像形成装置100内の画像処理部103によって受信した信号の解析が行われた後、制御部104へ送信される。制御部104は、画像処理部103で解析された情報に従い、画像形成装置100の各部を制御する。
(画像形成装置の動作)
図2は、画像形成装置100の概略構成断面図である。図2を用いて本実施例の画像形成装置100の構成及び動作を説明する。尚、本実施例の画像形成装置100は、第1(Sa)〜第4(Sd)の画像形成ステーションSを有する。これら4つの画像形成ステーションSa〜Sdは図2に示す様に、ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト10の画像送り方向である回転移動方向に概直線状に並置されている。第1画像形成ステーションSaはイエロー(Y)、第2画像形成ステーションSbはマゼンタ(M)、第3画像形成ステーションScはシアン(C)、第4画像形成ステーションSdはブラック(Bk)の画像形成部である。
画像形成装置100に配設された画像形成ステーションSは、像担持体であるドラム状の電子写真感光体(以下、「感光体ドラム」という。)1(1a、1b、1c、1d)を備えている。この感光体ドラム1は矢印の方向に100mm/secの周速度(プロセススピード)で回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)、像露光手段3(3a、3b、3c、3d)、現像器4(4a、4b、4c、4d)が配設されている。
それぞれの画像形成ステーションSでの画像形成動作は同一であるので、ここでは画像形成動作は第1画像形成ステーションSaを用いて説明する。
感光体ドラム1aは所定の周速度で回転駆動する回転過程で、帯電ローラ2aにより所定の極性・電位に表面を一様に帯電処理される。次いで像露光手段3aにより画像信号に従った像露光を受ける。感光体ドラム1a上の露光された部分の電位(明部電位VL)は露光されていない部分の電位(暗部電位Vd)よりも極性が小さくなる。これにより目的のカラー画像のイエロー色成分像に対応した静電潜像が感光体ドラム1a上に形成される。次いで、その静電潜像は現像位置において第1の現像器(イエロー現像器)4aにより現像され、イエロートナー像として可視化される。
中間転写ベルト10は、張架部材11、12、13とで回転移動可能に張架され、感光体ドラム1aと当接した対向部で同方向に移動する向きに、感光体ドラム1aと略同一の周速度で回転駆動される。感光体ドラム1aは中間転写ベルト10を挟んで対向位置に1次転写部材である1次転写ローラ14aと当接している。1次転写ローラ14aは1次転写電源15aに接続している。感光体ドラム1a上に形成されたイエロートナー像は、1次転写部である感光体ドラム1aと中間転写ベルト10との当接部(以下、「1次転写ニップ」という。)T1aを通過する過程で、1次転写電源15aより1次転写ローラ14aに印加した1次転写電圧によって、中間転写ベルト10の上(中間転写体上)に転写される(1次転写)。感光体ドラム1a表面に残留した1次転写残トナーは、クリーニング装置5aにより清掃、除去された後、感光体ドラム1aは帯電以下の画像形成プロセスに供せられる。
以下、同様にして、第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写されて、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像が得られる。
中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、中間転写ベルト10と2次転写部材である2次転写ローラ20との2次転写部である2次転写ニップT2を通過する。その過程で、2次転写電源21により、2次転写ローラ20に印加した2次転写電圧によって、給紙手段50により給紙された記録材Pの表面に一括転写される(2次転写)。その後、4色のトナー像を担持した記録材Pは定着器30に導入され、そこで加熱および加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して記録材Pに固定される。以上の動作により、フルカラーのプリント画像が形成される。
また、2次転写後に中間転写ベルト10表面に残留した2次転写残トナーは、2次転写残トナーの帯電手段の帯電部材である導電性ブラシ16により均一に散らされ、かつ帯電される。その後、ローラ17により電荷が付与され、1次転写ニップで感光体ドラム1aに逆転写される。感光体ドラム1aに付着した2次転写残トナーは感光体クリーニング装置5aによって除去される。
(転写構成)
中間転写ベルト10は、厚さ100μmで、導電剤としてカーボンを混合することにより体積抵抗率を1×109Ω・cmに調整した無端状のポリイミド樹脂を用いている。中間転写ベルト10は、駆動ローラ11、テンションローラ12、2次転写対向ローラ13の3軸で張架され、テンションローラ12により総圧60Nの張力で張架されている。
なお、本実施例では、中間転写ベルト10の材料としてポリイミド樹脂を使用したものの、熱可塑性樹脂であれば、他の材料でもよく、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の材料を使用しても良い。
1次転写ローラ14a〜14dは、外径6mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗率107Ω・cm、厚み3mmに調整したNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体で覆った外径12mmのものを用いている。中間転写ベルト10を介して感光体ドラム1a〜1dに対し、9.8Nの加圧力で当接させ、中間転写ベルト10の回転に伴い、従動して回転する。また、感光体ドラム1a〜1dのトナーを1次転写している時には、1次転写ローラ14a〜14dには1500Vの電圧が印加されている。
2次転写ローラ20は外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗率108Ω・cm、厚み5mmに調整したNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体で覆った外径18mmのものを用いている。また、2次転写ローラ20は、中間転写ベルト10に対して、50Nの加圧力で当接させ、中間転写ベルト10に対して従動回転する。また、中間転写ベルト10上のトナーを紙等の記録材Pに2次転写している時には、2次転写ローラ20には2500Vの電圧が印加されている。
(2次転写残トナーの帯電手段)
2次転写残トナーの帯電手段として、ブラシ部材である導電性ブラシ16と導電性ローラ17を用いている。
導電性ブラシ16を構成する導電性繊維はナイロンを主成分とし、導電剤としてカーボンを使用している。導電性繊維の1本の単位長さあたり抵抗値は1×1012Ω/cmであり、単糸繊度300T/60F(5dtex)である。導電性ブラシ16の密度は100kF/inch2である。導電性ブラシ16は、高圧電源60から所定の電圧が印加され、2次転写残トナーを帯電する構成となっている。導電性繊維16aの抵抗測定方法は、図4に示されるように、測定対象の導電性繊維16aを幅10mm(D)で配置された2本のφ5金属ローラ83で張架し、片側100gの錘84にて荷重をかける。この状態で、電源81から200Vの電圧を、金属ローラ83を介して導電性繊維16aに印加し、その時の電流値を電流計82で読み取り、10mm(1cm)あたりの導電性繊維16aの抵抗値(Ω/cm)を算出している。
導電性ローラ17としては、体積抵抗率109Ω・cmのウレタンゴムを主成分とする弾性ローラを使用している。導電性ローラ17は、中間転写ベルト10を介して2次転写対向ローラ13に対し総圧9.8Nで不図示のバネにより加圧され、中間転写ベルト10の回転に伴い、従動して回転する。また、導電性ローラ17には、高圧電源70から、1500Vの電圧が印加され、2次転写残トナーを帯電する構成となっている。尚、本実施例では導電性ローラ17としてウレタンゴムを用いたが特に限定されるものではなく、NBR、EPDM、エピクロルヒドリンなどであっても良い。
(中間転写ベルトクリーニング方法)
次に、中間転写ベルト10のクリーニング方法について図3を用いて説明する。
本実施例において、上述したように現像器4a〜4dでトナーは負極性に帯電された後、感光体ドラム1a〜1d上の静電潜像は負極性に帯電したトナーによってトナー像として現像される。現像されたトナー像は、1次転写電源15a〜15dにより正極性の電圧を印加された1次転写ローラ14a〜14dにより中間転写ベルト10に順次1次転写され、重畳したフルカラートナー画像が形成される。中間転写ベルト10上に形成されたトナー画像は2次転写電源21より正極性の電圧を印加された2次転写ローラ20により紙等の記録材Pに2次転写して画像形成を行っている。
図3に示すように、2次転写後に中間転写ベルト10上に残留した2次転写残トナーは、2次転写ローラ20に印加した正極性の電圧の影響により正、負両方の極性が混在する。また、記録材P表面の凹凸の影響を受け、2次転写残トナーは局所的に複数層に重なって中間転写ベルト10上に残留する(図3中A)。
中間転写ベルト10の回転方向上流側に位置する導電性ブラシ16は回転移動する中間転写ベルト10に対して固定配置され、かつ中間転写ベルト10に対して所定の侵入量で配置されている。そのため、中間転写ベルト10上に複数層に堆積していた2次転写残トナーは、導電性ブラシ16通過時に、導電性ブラシ16と中間転写ベルト10の周速差により機械的に略一層の高さに散らされる(図3中B)。
また、導電性ブラシ16には高圧電源60より正極性の電圧を印加し、定電流制御を行うことで2次転写残トナーを導電性ブラシ16通過時に画像形成時である現像時のトナー極性と逆極性である正極性に帯電する。正極性に帯電しきれなかった負極性トナーは、導電性ブラシ16に1次回収される。
その後、導電性ブラシ16を通過した2次転写残トナーは、中間転写ベルト10の回転方向に移動し、回転方向下流側の導電性ローラ17に到達する。導電性ローラ17には、ローラ高圧電源70により正極性の電圧(本実施例では1500V)が印加されている。導電性ブラシ16を通過し、正極性に帯電された2次転写残トナーは、導電性ローラ17通過時に更に帯電され、転写同時クリーニングを実現させるために最適な正電荷を付与することができる(図3中C)。最適な電荷が付与された2次転写残トナーは、1次転写部T1aにおいて1次転写ローラ14aに印加された正極性の電圧により感光体ドラム1aに逆転写され、感光体ドラム1a上(像担持体上)に配置されたクリーニング装置5aへ回収される。導電性ブラシ16に1次回収されたトナー及び導電性ローラ17に付着したトナーは印刷動作終了時の後回転動作により、定期的に吐き出される。
尚、本実施例では導電性ブラシ16の中間転写ベルト10の回転方向下流側に導電性ローラ17を配置しているが、その目的とするところは、導電性ブラシ16通過後の帯電量をより均一にすることである。従って、導電性ローラ17が無くても2次転写残トナーの帯電量が所定の範囲内であれば、導電性ブラシ16のみで2次転写残トナーは帯電することができる。2次転写残トナーの帯電量は、2次転写時の温度、湿度などの環境、中間転写ベルト10上のトナー帯電量、紙等の記録材の種類などで変化することが多く、導電性ローラ17を用いることで、前述の2次転写残トナーの帯電量のバラツキに対応することができる。
(本実施例の特徴)
本実施例は、中間転写ベルト10上の2次転写残トナーを導電性ブラシ16により帯電することで転写同時クリーニングを行う画像形成装置100に関するものである。印字動作中の1次転写工程が全て終了した後に、導電性ブラシ16の設定電流を第1の設定電流からそれよりも小さな第2の設定電流に変更する。次に、第2の設定電流が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーを逆転写させるように感光体ドラム1aの表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することを特徴とする。
具体的には、印字動作中の導電性ブラシ16の動作について、図2の構成図および図5のフローチャートに沿って説明する。
図5のフローチャートのS1において、画像形成装置100にPCなどの情報機器101より画像信号が送られると処理部103で信号が解析され、制御部104によって各部に指示が送られて印字動作を開始する。次にS2において、感光体ドラム1a〜1d上に現像されたトナー像を中間転写ベルト10上に順次1次転写を行う。
この時の第1画像形成ステーションSaの感光体ドラム1aの表面電位は、画像部である露光された明部電位VL部と非画像部である露光されていない暗部電位Vd部との比率によって決まる。したがって、S2における感光体ドラム1aの表面の平均電位をV1とすると、|VL|≦|V1|≦|Vd|という関係が成り立ち、画像の印字率によってV1は変化する。
次にS3において、導電性ブラシ16に制御部104で制御された第1の設定電流Ib1を印加する。S4においては、第4画像形成ステーションSdの1次転写工程の終了を判定する。1次転写工程が終了していない場合は、上記のS2およびS3の工程が繰り返される。第4画像形成ステーションSdの1次転写工程が全て終了した場合は、S5において、制御部104によって導電性ブラシ16の設定電流をIb2に変更し、感光体ドラム1aの表面の平均電位をV2になるように制御する。S6においては、2次転写残トナーが導電性ブラシ16を通過し、中間転写ベルト10上より除去された後に、導電性ブラシ16への電流印加を停止する。S7において、印字動作を終了する。
本実施例のS2において、感光体ドラム1aの表面の明部電位VLは−100〔V〕、暗部電位Vdは−500〔V〕である。仮に、VLとVdの各部分の比率が50%であるとした時、感光体ドラム1aの表面の平均電位V1は−300〔V〕となる。また、導電性ブラシ16に印加する第1の設定電流Ib1は20〔μA〕としている。S2およびS3において、第1の設定電流Ib1が印加されている導電性ブラシ16を通過する際に2次転写残トナーは、正極性に帯電され、帯電しきれなかったトナーは導電性ブラシ16に1次回収される。その後、帯電された2次転写残トナーは、表面電位がV1である感光体ドラム1aに逆転写され、クリーニング装置5aで感光体ドラム1a上から除去され、回収される。この時、第1の画像形成ステーションSaでは、感光体ドラム1a上のトナー像は中間転写ベルト10上に転写されており、同時に2次転写残トナーを回収する転写同時クリーニングが行われている。
S5において、感光体ドラム1aの表面の平均電位V2は例えば画像露光を行わない暗部電位Vdと同じ−500〔V〕とし、導電性ブラシ16に印加する第2の設定電流Ib2は5〔μA〕としている。S5およびS6において、設定電流Ib2が印加されている導電性ブラシ16を通過した2次転写残トナーは、正極性に帯電され、帯電しきれなかったトナーは、導電性ブラシ16に1次回収される。その後、帯電された2次転写残トナーは、表面電位がV2に制御された感光体ドラム1aに逆転写され、クリーニング装置5aで感光体ドラム1a上から除去され、回収される。この時、感光体ドラム1a上にはトナー像は無く、中間転写ベルト10上へのトナー像の転写は行われていないため、転写同時クリーニングで中間転写ベルト10上より除去されるわけではない。したがって、本実施例において、第1画像形成ステーションSaを2次転写残トナーの回収ステーションとして説明したものの、第2画像形成ステーションSbから第4画像形成ステーションSdのいずれかで2次転写残トナーを回収しても良い。
(本実施例の作用)
次に本実施例の作用について説明をする。
導電性ブラシ16の設定電流と2次転写残トナーの付着量の関係について、図6および図7を使用して説明する。図6の模式図に示すように、導電性ブラシ16は電源60より、所定の電流が印加され、電流経路としては中間転写ベルト10を介して、対向ローラ13に向かって流れている。図7は、上述の構成を等価回路にしたものであり、電源60からI〔A〕の定電流制御されている様子を示している。
導電性ブラシ16と中間転写ベルト10が接触する領域での抵抗値がそれぞれRb〔Ω〕、Ri〔Ω〕であったとき、図7の等価回路上では、それぞれの部材を抵抗値Rb〔Ω〕の抵抗体16b、Ri〔Ω〕の抵抗体10bとみなしている。この時、導電性ブラシ16にかかる電位差Vb〔V〕はVb=Rb×I、中間転写ベルト10にかかる電位差Vi〔V〕は、Vi=Ri×Iとなり、電位差はそれぞれ、中間転写ベルト10と導電性ブラシ16の抵抗値と流れる電流値に依存する。導電性ブラシ16には、正極性の電圧が印加されているため、正、負両方の極性が混在した2次転写残トナーが導電性ブラシ16へ突入する際には、負極性のトナーが静電的に導電性ブラシ16に付着する。導電性ブラシ16に流す電流値が大きいと、導電性ブラシ16の先端と根元の電位差Vbが大きくなり、トナーを静電的に引き付ける力が強く、導電性ブラシ16の毛先から根元にまで2次転写残トナーは付着する。反対に、導電性ブラシ16に流す電流値が小さいと電位差Vbは小さくなり、トナーを静電的に引きつける力が弱まって、導電性ブラシ16の根元のトナー付着量は少なくなる。
図8は導電性ブラシ16の設定電流とトナー付着量の関係について実験を行った結果である。導電性ブラシ16の設定電流としてそれぞれ5〔μA〕、25〔μA〕を印加した状態で印字動作を繰り返すと、5〔μA〕を印加した導電性ブラシ16は、25〔μA〕を印加した導電性ブラシ16に対して、トナー付着量が半分程度となり、導電性ブラシ16の設定電流と2次転写残トナーの付着量の関係が確認された。したがって、印字動作中に導電性ブラシ16の設定電流をIb1からそれよりも小さいIb2に変えると、設定電流をIb2に低下した分だけ導電性ブラシ16のトナー付着量を低減することが可能となる。また、導電性ブラシ16と中間転写ベルト10の抵抗値Rb〔Ω〕、Ri〔Ω〕が、Rb≧Riの関係であるとき、導電性ブラシ16にかかる電位差Vb〔V〕は、中間転写ベルト10にかかる電位差Vi〔V〕より大きくなり、2次転写残トナーは導電性ブラシ16に付着しやすくなるため、本実施例における導電性ブラシ16の設定電流低下によるトナー付着低減の効果は大きくなる。
次に導電性ブラシ16に印加する各設定電流に対して、クリーニングの動作を説明する。導電性ブラシ16を通過した2次転写残トナーが感光体ドラム1aから逆転写される際に受ける力は、2次転写残トナーの電荷量と、感光体ドラム1aと中間転写ベルト10との間に生じる電位差によって決まる。第1の設定電流Ib1が印加されている導電性ブラシ16を通過し正極性に帯電された2次転写残トナーは、平均表面電位がV1である感光体ドラム1aに逆転写される。この時の感光体ドラム1aの平均表面電位V1は、明部電位VLと暗部電位Vdの各部分の比率によって決まり、感光体ドラム1aと中間転写ベルト10との間の電位差が最も小さくなるのは、感光体ドラム1aの全面がVLとなった場合である。感光体ドラム1aと中間転写ベルト10の電位差が最少である状態で、感光体ドラム1aに逆転写できるように、導電性ブラシ16は2次転写残トナーに電荷を与え十分に帯電させなければならない。そのため、設定電流Ib1は上述の状態を満たす値を設定しなければならず、本実施例では20〔μA〕としている。一方、第2の設定電流Ib2が印加されている導電性ブラシ16を通過し、正極性に帯電された2次転写残トナーは、1次転写工程が全て終了し平均表面電位がV2に制御された感光体ドラム1aに逆転写される。この時、設定電流がIb2<Ib1であるため、設定電流Ib1を導電性ブラシ16に印加した場合に比べて2次転写残トナーの帯電量が小さい。そのため、感光体ドラム1aと中間転写ベルト10との間に生じる電位差を大きくして逆転写される際に受ける力を補う必要がある。本実施例では感光体ドラム1aの表面電位V2を−500〔V〕として中間転写ベルト10との間に生じる電位差を大きくしている。
図9は感光体ドラム1aの各表面電位に対する導電性ブラシ16の設定電流とゴースト濃度の関係について実験を行った結果である。ゴースト濃度とは、導電性ブラシ16において、2次転写残トナーの帯電が不十分で逆転写されずに中間転写ベルト10上に残り画像不良となった2次転写残トナーの濃度を0から4のランク付けを行い評価したものである。ゴースト濃度の各ランクの画像不良の状態を説明すると、ランク0は画像上に2次転写残トナーが全くない状態、ランク1は画像によらず2次転写残トナーが気にならない状態、ランク2は画像の種類によって2次転写残トナーが気になることがある状態、ランク3以降はどの画像でも2次転写残トナーが気になる状態である。ゴースト濃度の評価方法は、評価者の目視による判断に加えて、グレタグマクベス社製の反射濃度計を使用した画像不良の濃度測定結果を加味して小数点1桁までランク評価を行っている。本実施例においては、ゴースト濃度1以下であれば十分なクリーニング性能を有すると判断している。
感光体ドラム1aの表面電位が−100〔V〕の場合、導電性ブラシ16の設定電流は20〔μA〕であればゴースト濃度が0.9となりクリーニングの性能を満たす。一方、感光体ドラム1aの表面電位が−500〔V〕の場合、導電性ブラシ16の設定電流は5〔μA〕であればゴースト濃度が0.8となりクリーニングの性能を満たす。したがって、導電性ブラシの設定電流が小さい場合でも、感光体ドラム1aの表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することでクリーニング性能を維持することが可能である。
以上説明したように、印字動作中の1次転写工程が全て終了した時に導電性ブラシ16の設定電流をIb1からそれよりも小さいIb2に変更することで、導電性ブラシ16のトナー付着量を低減して耐久による導電性ブラシ16の見かけ上の抵抗上昇を抑制できる。さらに、設定電流Ib2が印加されている導電性ブラシ16を通過した帯電が不十分な2次転写残トナーを、感光体ドラム1aの表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することで逆転写可能にする。このことで、帯電量の小さい2次転写残トナーを感光体ドラムに逆転写できる。このため、安定してクリーニング性能を維持できる画像形成装置を提供することができる。
[実施例2]
本実施例で適用する画像形成装置の構成において、前記実施例の1と同様のものには、同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。
本実施例は1次転写全工程が終了してから導電性ブラシ設定電流を第二の設定電流に変更した実施例1とは異なり、1次転写工程中に設定電流を変更し、1次転写工程が終了してから感光体ドラムの電位を変更する。
以下に更に詳しく説明する。
(本実施例の特徴)
本実施例は、中間転写ベルト10上の2次転写残トナーを導電性ブラシ16により帯電することでクリーニングを行う画像形成装置100において、導電性ブラシ16の設定電流として第1の設定電流とそれよりも小さい第2の設定電流を持つ。1次転写工程中に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは、第1の設定電流が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーである。そして、1次転写工程が終了した後に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは第2の設定電流が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーとなる。上述のようになるように印字動作中に導電性ブラシ16の設定電流を第1の設定電流から第2の設定電流に変更する。そして、第2の設定電流が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーを逆転写させるように感光体ドラム1aの表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することを特徴とする。
具体的には、印字動作中の導電性ブラシ16の動作について、図2の構成図および図10のフローチャートに沿って説明する。
図10のフローチャートのS8において、画像形成装置100にPCなどの情報機器101より画像信号が送られると処理部103で信号が解析され、制御部104によって各部に指示が送られて印字動作を開始する。次にS9において、感光体ドラム1a〜1d上に現像されたトナー像を中間転写ベルト10上に順次1次転写を行う。この時の第1画像形成ステーションSaの感光体ドラム1aの表面電位は、画像部である露光された明部電位VL部と非画像部である露光されていない暗部電位Vd部との比率によって決まる。したがって、S9における感光体ドラム1aの表面の平均電位をV1とすると、|VL|≦|V1|≦|Vd|という関係が成り立ち、画像の印字率によってV1は変化する。S10において、導電性ブラシ16に制御部104で制御された第1の設定電流Ib1を印加する。S11において、導電性ブラシ16を通過中の2次転写残トナーが1次転写工程中の感光体ドラム1aに逆転写されるかどうかを判定する。具体的には、導電性ブラシ16と感光体ドラム1aの間の距離が50mmであり、中間転写ベルト10の周速度が100mm/secである時、導電性ブラシ16を通過中の2次転写残トナーが感光体ドラム1aに到達するまで0.5secの時間を要する。残りの印刷範囲から、感光体ドラム1aが0.5sec後に1次転写工程を行っているかどうか判定する。0.5sec後に1次転写工程を行っており、導電性ブラシ16を通過中の2次転写残トナーは1次転写工程中の感光体ドラム1aに逆転写されると判定されると、上記のS9およびS10の工程が繰り返される。0.5sec後に1次転写工程が終了しており、導電性ブラシ16を通過中の2次転写残トナーが1次転写工程後の感光体ドラム1aに逆転写されると判定されると、S12において、制御部104によって導電性ブラシ16の設定電流をIb2に変更する。S13において、第1画像形成ステーションSaの1次転写工程が終了し、S14において、感光体ドラム1aの表面の平均電位をV2になるように制御する。S15においては、全ての2次転写残トナーが導電性ブラシ16を通過し、中間転写ベルト10上より除去された後に、導電性ブラシ16への電流印加を停止する。S16においては、印字動作を終了する。
ここで、S9において、感光体ドラム1aの表面の明部電位VLは−100〔V〕、暗部電位Vdは−500〔V〕である。仮に、VLとVdの各部分の比率が50%であるとした時、感光体ドラム1aの表面の平均電位V1は−300〔V〕となる。また、導電性ブラシ16に印加する第1の設定電流Ib1は20〔μA〕としている。S9およびS10において、第1の設定電流Ib1が印加されている導電性ブラシ16を通過する際に2次転写残トナーは、正極性に帯電され、帯電しきれなかったトナーは導電性ブラシ16に1次回収される。その後、帯電された2次転写残トナーは、表面電位がV1である感光体ドラム1aに逆転写され、クリーニング装置5aで感光体ドラム1a上から除去され、回収される。この時、第1の画像形成ステーションSaでは、感光体ドラム1a上のトナー像は中間転写ベルト10上に転写されており、同時に2次転写残トナーを回収する転写同時クリーニングが行われている。
S14において、感光体ドラム1aの表面の平均電位V2は暗部電位Vdと同じ−500〔V〕とし、導電性ブラシ16に印加する第2の設定電流Ib2は5〔μA〕としている。S14およびS15において、設定電流Ib2が印加されている導電性ブラシ16を通過した2次転写残トナーは、正極性に帯電され、帯電しきれなかったトナーは、導電性ブラシ16に1次回収される。その後、帯電された2次転写残トナーは、表面電位がV2に制御された感光体ドラム1aに逆転写され、クリーニング装置5aで感光体ドラム1a上から除去され、回収される。この時、感光体ドラム1a上にはトナー像は無く、中間転写ベルト10上へのトナー像の転写行われていないため、転写同時クリーニングで中間転写ベルト10上より除去されるわけではない。したがって、本実施例において、第1画像形成ステーションSaを2次転写残トナーの回収ステーションとして説明したものの、第2画像形成ステーションSbから第4画像形成ステーションSdのいずれかで2次転写残トナーを回収しても良い。
(本実施例の作用)
次に本実施例の作用について説明をする。
本実施例において、導電性ブラシ16の設定電流を低下することでトナーのブラシ付着量を低減させる作用と、感光体ドラム1a表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することで安定したクリーニング性能を維持する作用については、実施例1で説明した内容と同一である。このため、説明を省略する。
実施例1においては、1次転写工程が全て終了した時に導電性ブラシ16の設定電流を変える。そのため、第4画像形成ステーションSdの下流側から導電性ブラシ16の上流側までの中間転写ベルト10の距離が短いほど導電性ブラシ16に設定電流Ib2を印加する時間が短くなり、トナーのブラシ付着量を低減する作用が弱まる。対して本実施例は、1次転写工程中に設定電流を第一の設定電流から第二の設定電流に変更する。そのため、1次転写工程中に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは、第1の設定電流が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーである。そして、1次転写工程が終了した後に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは、第2の設定電流が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーとなる。このように印字動作中に導電性ブラシ16の設定電流を第1の設定電流から第2の設定電流に変更するため、第4画像形成ステーションSdと導電性ブラシ16の配置によらず、導電性ブラシ16に設定電流Ib2を印加する時間を長くすることが可能となる。
以上説明したように、1次転写工程中に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは、設定電流Ib1が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーである。そして、1次転写工程が終了した後に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは、設定電流Ib2が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーとなる。このように導電性ブラシ16の設定電流をIb1からそれよりも小さいIb2に変えることで、導電性ブラシ16のトナー付着量を低減して耐久による導電性ブラシ16の見かけ上の抵抗上昇を抑制する。また、設定電流Ibが印加されている導電性ブラシ16を通過した帯電が不十分な2次転写残トナーを、感光体ドラム1aの表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することで逆転写可能にすることで、帯電量の小さい2次転写残トナーを感光体ドラムに逆転写できる。そのため、安定してクリーニング性能を維持できる画像形成装置を提供することができる。
[実施例3]
本実施例で適用する画像形成装置の構成において、前記実施例の1と同様のものには、同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。
本実施例は、導電性ブラシ16へは設定電圧を印加するという点で設定電流を印加する実施例1とは異なる。
(本実施例の特徴)
本実施例は、中間転写ベルト10上の2次転写残トナーを導電性ブラシ16により帯電することで転写同時クリーニングを行う画像形成装置100に関する。画像形成装置100において、印字動作中の1次転写工程が全て終了した後に、導電性ブラシ16の設定電圧を第1の設定電圧Vb1からそれよりも小さな第2の設定電圧Vb2に変更する。そして、第2の設定電圧が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーを逆転写させるように感光体ドラム1aの表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することを特徴とする。
具体的には、印字動作中の導電性ブラシ16の動作について、図2の構成図および図11のフローチャートに沿って説明する。
図11のフローチャートのS17においては、画像形成装置100にPCなどの情報機器101より画像信号が送られると処理部103で信号が解析され、制御部104によって各部に指示が送られて印字動作を開始する。S18においては、感光体ドラム1a〜1d上に現像されたトナー像を中間転写ベルト10上に順次1次転写を行う。この時の第1画像形成ステーションSaの感光体ドラム1aの表面電位は、画像部である露光された明部電位VL部と非画像部である露光されていない暗部電位Vd部との比率によって決まる。したがって、S18における感光体ドラム1aの表面の平均電位をV1とすると、|VL|≦|V1|≦|Vd|という関係が成り立ち、画像の印字率によってV1は変化する。S19においては、導電性ブラシ16に制御部104で制御された第1の設定電圧Vb1を印加する。S20においては、第4画像形成ステーションSdの1次転写工程の終了を判定する。1次転写工程が終了していない場合は、上記のS18およびS19の工程が繰り返される。第4画像形成ステーションSdの1次転写工程が全て終了した場合は、S21において、制御部104によって導電性ブラシ16の設定電圧をVb2に変更し、感光体ドラム1aの表面の平均電位をV2になるように制御する。S22においては、2次転写残トナーが導電性ブラシ16を通過し、中間転写ベルト10上より除去された後に、導電性ブラシ16への電圧印加を停止する。S23においては、印字動作を終了する。
ここで、S18において、感光体ドラム1aの表面の明部電位VLは−100〔V〕、暗部電位Vdは−500〔V〕である。仮に、VLとVdの各部分の比率が50%であるとした時、感光体ドラム1aの表面の平均電位V1は−300〔V〕となる。また、導電性ブラシ16に印加する第1の設定電圧Vb1は1500〔V〕としている。S18およびS19において、第1の設定電圧Vb1が印加されている導電性ブラシ16を通過する際に2次転写残トナーは、正極性に帯電され、帯電しきれなかったトナーは導電性ブラシ16に1次回収される。その後、帯電された2次転写残トナーは、表面電位がV1である感光体ドラム1aに逆転写され、クリーニング装置5aで感光体ドラム1a上から除去され、回収される。この時、第1の画像形成ステーションSaでは、感光体ドラム1a上のトナー像は中間転写ベルト10上に転写されており、同時に2次転写残トナーを回収する転写同時クリーニングが行われている。
S21において、感光体ドラム1aの表面の平均電位V2は暗部電位Vdと同じ−500〔V〕とし、導電性ブラシ16に印加する第2の設定電圧Vb2は1000〔V〕としている。S21およびS22において、設定電圧Vb2が印加されている導電性ブラシ16を通過した2次転写残トナーは、正極性に帯電され、帯電しきれなかったトナーは、導電性ブラシ16に1次回収される。その後、帯電された2次転写残トナーは、表面電位がV2に制御された感光体ドラム1aに逆転写され、クリーニング装置5aで感光体ドラム1a上から除去され、回収される。この時、感光体ドラム1a上にはトナー像は無く、中間転写ベルト10上へのトナー像の転写が行われていないため、転写同時クリーニングで中間転写ベルト10上より除去されるわけではない。したがって、本実施例において、第1画像形成ステーションSaを2次転写残トナーの回収ステーションとして説明したが、第2画像形成ステーションSbから第4画像形成ステーションSdのいずれかで2次転写残トナーを回収しても良い。
また、導電性ブラシ16の設定電圧を第1の設定電圧から第2の設定電圧に変更するタイミングは、1次転写工程中に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは第1の設定電圧が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーであるようにする。そして、1次転写工程が終了した後に感光体ドラム1aに逆転写される2次転写残トナーは第2の設定電圧が印加された導電性ブラシ16によって帯電された2次転写残トナーとなるように設定してもかまわない。
(本実施例の作用)
次に本実施例の作用について説明をする。
導電性ブラシ16の設定電圧と2次転写残トナーの付着量の関係について説明する。実施例1で示したように、導電性ブラシ16の先端と根元の電位差Vb〔V〕が大きいほどトナーを静電的に引き付ける力が強くなり、導電性ブラシ16の毛先から根元にまで2次転写残トナーは付着する。反対に、導電性ブラシ16にかかる電位差Vbが小さいほど、トナーを静電的に引きつける力が弱まって、導電性ブラシ16の根元のトナー付着量は少なくなる。したがって、印字動作中に導電性ブラシ16の設定電圧をVb1からそれよりも小さいVb2に変えると、設定電圧をVb2に低下した分だけ導電性ブラシ16のトナー付着量を低減することが可能となる。
次に導電性ブラシ16に印加する各設定電圧に対して、クリーニングの動作を説明する。第1の設定電圧Vb1が印加されている導電性ブラシ16を通過し正極性に帯電された2次転写残トナーは、感光体ドラム1aと中間転写ベルト10の電位差が最少である状態でも感光体ドラム1aに逆転写されなければならない。そのため、設定電圧Vb1は上述の状態を満たす値を設定しなければならず、本実施例では1500〔V〕としている。一方、第2の設定電圧Vb2は1000〔V〕であり、Vb1よりも小さいため、設定電圧Vb1を導電性ブラシ16に印加した場合に比べて2次転写残トナーの帯電量が小さい。そのため、感光体ドラム1aと中間転写ベルト10との間に生じる電位差を大きくして逆転写される際に受ける力を補う必要がある。本実施例では感光体ドラム1aの表面電位V2を−500〔V〕として中間転写ベルト10との間に生じる電位差を大きくしている。
以上説明したように、印字動作中の1次転写工程が全て終了した時に導電性ブラシ16の設定電圧をVb1からそれよりも小さいVb2に変更する。このことで、導電性ブラシ16のトナー付着量を低減して耐久による導電性ブラシ16の見かけ上の抵抗上昇を抑制する。そして、設定電圧Vb2が印加されている導電性ブラシ16を通過した帯電が不十分な2次転写残トナーを、感光体ドラム1aの表面電位を中間転写ベルト10との間に生じる電位差が大きくなる所定の電位に制御することで逆転写可能にすることで、帯電量の小さい2次転写残トナーを感光体ドラムに逆転写できる。このため、安定してクリーニング性能を維持できる画像形成装置を提供することができる。
[実施例4]
本実施例で適用する画像形成装置100の構成において、前記実施例の1と同様のものには、同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。本実施例は、導電性ブラシ16によって帯電される画像の印字率を考慮して導電性ブラシ16の設定電流を決定するという点で実施例1〜3と異なる。
(印字率算出手段)
本実施例では印字率算出手段を用いて、画像の印字率を算出し、その印字率算出結果を制御に用いる。具体的には1ページの画像内において主走査方向のラインで印字画素数が最も多いものを算出する。
処理部103は情報機器101から送信された印刷データに基づき、主走査方向の1ラインごとの画素信号として制御部104に信号を出力すると同時に画素数情報も制御部104に対して送信する。
図12は本実施例を実現する処理部103のブロック図である。処理部103は情報機器101から受信した印刷データを画像展開部201で主走査ライン毎の画素データに変換する。印字率算出部202は画像展開部201から受け取った画素データに基づいて、当該ページのライン毎の印字画素数を算出する。印字画素数とは画素データの内、印字部(実際に感光体ドラム1に露光される部分)の画素をカウントしたものである。処理部103は出力部203からラインごとに、画像信号と印字画素数を制御部104に対して送信する。
図13は本実施例における、印字率算出時の制御部104のフローチャートである。制御部104は当該画像の印字制御を開始する前に不図示のCPU内部メモリ(変数Aとする)に0をセットする(S25)。制御部104は処理部103から、1ライン分の画像信号を受信すると同時に1ラインの印字画素数αを受信する(S26)。
受信した印字画素数αが変数Aの値よりも大きい場合(S27のYes)、印字画素数αの値を最大値として変数Aにセットする(S28)。1ページ画像の全ラインの画素数情報を受信していれば印字率算出処理を終了し、未受信の画素数情報が残っていれば再び印字画素数受信処理に戻る(S29)。1ページ画像の印字率算出処理が終了する(S30)と、当該ページ画像の中で最も印字画素数の多いラインの画素数(最大印字画素数)が算出される。
(本実施例の特徴)
本実施例は、印字率算出手段によって算出された最大印字画素数に基づいて、実施例1で述べた前記第1の設定電流Ib1を画像ごとに決定することを特徴とする。なお第2の設定電流Ib2については実施例1と同様とする。
制御部104は、1次転写、2次転写において、2次転写残トナーの帯電制御と同様に定電流制御を実施している。そのため、制御思想としては常に一定の転写効率を実現しようとしており、図14に示す様に理論的にはトナーの載り量に比例して転写されるトナー量も決定される。即ち、転写残トナーの量も決まる。以下に2次転写残トナー量を推測し、実施例1で述べた前記第1の設定電流Ib1を決定する制御詳細について述べる。
図15は本実施例における、前記第1の設定電流決定及び設定電流変更時の制御部104のフローチャートである。制御部104は印字画像を処理部103から受信して(S32)、最大印字画素数を算出する(S33)。最大印字画素数が算出されると制御部104はその値に応じた第1の設定電流を決定する(S34)。設定電流決定の考え方は、画像内の全走査ラインが最大印字画素数と同等の画素数であったとしても、導電性ブラシ16にて充分残トナーを帯電できるだけの電流設定とする。最大印字画素数に合わせた設定電流としておけば、当該画像内の他の箇所で帯電が不充分となることはない。設定電流の決定方法としては、最大印字画素数が多いほど高い設定とし、画素数が低いほど低い設定電流とする。例えば実施例1で述べた第1の設定電流Ib1(20〔μA〕)から第2の設定電流Ib2(5〔μA〕)の間で正比例させて決定する(図16)。図15のS35において、導電性ブラシ16に対する設定電流を切り替えるタイミングを判断している。設定電流を変更してから、当該画像の2次転写残トナーが導電性ブラシ16に到達する前に、導電性ブラシ16への出力電流が所望の値に到達している必要がある。従って、出力電流が所望の値に達するまでに必要な時間を確保する必要があり、本実施例では200msecとした。具体的には印字画像の露光開始タイミングで、不図示の(例えばCPUに内蔵されている)タイマーの起動処理を行い、画像先端が導電性ブラシ16に到達する時間を計算する。タイマーの値と計算結果から、導電性ブラシ16に到達する200msec前になったら、設定電流をS34で決定した電流値に変更する(S36)。本制御は印字画像毎に実施する。
設定電流変更後の制御は実施例1と同一であるため省略する。
なお本実施例では処理部103で印字画像の印字率を算出する構成としたが、印字率を算出する機構を制御部104に設けて、例えば露光手段3の露光時間をカウントすることで実現してもよい。
(本実施例の作用)
本実施例の作用について説明する。
導電性ブラシ16の設定電流と2次転写残トナーの付着量の関係については実施例1及び実施例3で説明した通りである。すなわち、設定電流が高いほど導電性ブラシ16に2次転写残トナーが付着する。従って、どのような画像でも導電性ブラシ16で残トナーを帯電可能な電流(20μA)を流すことに比べて、本実施例で述べたように画像に応じた設定電流(より低い電流)を流すことで、設定電流が低下した分だけ導電性ブラシ16のトナー付着量を低減することが可能となる。
以上説明したように、印字画像毎に導電性ブラシ16の設定電流を印字画像に応じた設定電流とすることで、導電性ブラシ16のトナー付着量を低減して耐久による導電性ブラシ16の見かけ上の抵抗上昇を抑制し、安定してクリーニング性能を維持できる画像形成装置を提供することができる。
[実施例5]
本実施例で適用する画像形成装置の構成において、前記実施例の1と同様のものには、同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。本実施例は、導電性ブラシ16によって帯電された残トナーが転写同時クリーニングされる時に1次転写される画像の印字率を考慮して導電性ブラシ16の設定電流を決定する点が実施例4とは異なる。
(印字率算出手段)
図12は本実施例を実現する処理部103のブロック図である。処理部103は情報機器101から受信した印刷データを画像展開部201で主走査ライン毎の画素データに変換する。印字率算出部202は画像展開部201から受け取った画素データに基づいて、当該ページのラインの中で最大印字画素数を算出する。処理部103は出力部203から最大印字画素数を送信した後、画素データをラインごとに制御部104に対して送信する。
図17は印字率算出処理時の処理部103のフローチャートである。情報機器101から画像情報である印刷データを受信した際、1ページ毎に印字率算出処理を実施する。S39において、処理部103は1ページ分の画像を不図示のメモリに展開する。メモリに展開された画像データから、1ラインずつの画素データを形成する(S40)。処理部103はメモリ(変数Aとする)に0をセットする(S41)。処理部103は、画像展開部201が展開した1ライン分の画像信号を参照し(S42)、1ラインの中で印字される画素数αと変数Aの値を比較する(S43)。
印字画素数αが変数Aの値よりも大きい場合(S43のYes)、印字画素数αの値を最大値として変数Aにセットする(S44)。1ページ画像の全ラインの画素データを参照し終わっていれば印字率算出処理を終了(S45のYes)し、未参照の画素データが残っていれば(S45のNo)、再びライン画素データ参照に戻る(S42)。1ページ画像の印字率算出処理が終了する(S46)と、当該ページ画像の中で最も印字画素数の多いラインの画素数(最大印字画素数)が算出される。
(本実施例の特徴)
本実施例は、印字率算出手段によって算出された次に1次転写工程対象となっている画像の、最大印字画素数に基づいて、実施例1で述べた前記第1の設定電流Ib1を画像ごとに決定することを特徴とする。なお第2の設定電流Ib2については実施例1と同様とする。
図18は本実施例における、前記第1の設定電流決定及び設定電流変更時の制御部104のフローチャートである。制御部104は次に印字予定の画像の最大印字画素数を処理部103から受信し(S48)、その値に応じた第1の設定電流Ib1を決定する(S49)。次に印字予定の画像(画像2とする)は露光、1次転写工程という順で処理が進み、実施例1で述べたように、帯電された2次転写残トナーの回収と同時に1次転写される(転写同時クリーニング)。この時の感光体ドラム1の表面電位は、画像部である露光された明部電位VL部と非画像部である露光されていない暗部電位Vd部との比率によって決まるため、感光体ドラム1の表面平均電位は画像の印字率によって変化する。感光体ドラム1の表面平均電位をV1とすると、|VL|≦|V1|≦|Vd|という関係が成り立つ。V1がVdに近いほど、すなわち印字率が低いほど、導電性ブラシ16で帯電された2次転写残トナーは回収が容易になるため、より低い設定電流でもクリーニングが可能である。従ってS49においては、次に1次転写する予定の画像(画像2)の最大印字画素数が少ないほど、導電性ブラシ16の設定電流を低くし、逆に最大印字画素数が多いほど導電性ブラシ16の設定電流を高くする(図16)。S50において、導電性ブラシ16が次に帯電する画像(画像1とする)が、導電性ブラシ16に到達する200msec前まで搬送されているか確認する。画像1が導電性ブラシ16に到達する200msec前まで搬送されたら、設定電流をS49で決定した電流値に変更する(S51)。本制御は印字画像毎に実施する。
設定電流変更後の制御は実施例1と同一であるため省略する。
(本実施例の作用)
本実施例の作用について説明する。
導電性ブラシ16の設定電流と2次転写残トナーの付着量の関係については実施例4で説明した通り、設定電流が高いほど導電性ブラシ16に2次転写残トナーが付着する。従って、本実施例で述べたようにどのような画像でも導電性ブラシ16で残トナーを帯電可能な電流(20μA)を流すことに比べて、次に1次転写予定の画像に応じた設定電流を流すことで、設定電流が低下した分だけ導電性ブラシ16のトナー付着量を低減することが可能となる。
以上説明したように、印字画像毎に導電性ブラシ16の設定電流を印字画像に応じた設定電流とすることで、導電性ブラシ16のトナー付着量を低減して耐久による導電性ブラシ16の見かけ上の抵抗上昇を抑制し、安定してクリーニング性能を維持できる画像形成装置を提供することができる。