JP6106702B2 - 揺動型車両 - Google Patents

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Description

本発明は、揺動型車両に関する。
従来、揺動型車両において、車体フレームに対する揺動アームの変位を抑えるロールダンパを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のロールダンパでは、揺動型車両が右側に傾斜する際はロールダンパが伸び、揺動型車両が左側に傾斜する際はロールダンパが圧縮される。
国際公開第2014/065381号
しかしながら、上記従来の揺動型車両では、揺動型車両の左右の傾斜方向によってロールダンパに作用する荷重の方向が異なっている。このため、左右の揺動時のダンパー特性を同じにするために、伸び側と圧縮側とのダンパー特性を同じにする必要があり、揺動型車両の旋回性が制限されてしまう。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ダンパー特性の設定の自由度を向上し、揺動型車両の旋回性を向上できるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、車体フレーム(11)に揺動可能に支持されるアッパーアーム(29)と、当該アッパーアーム(29)の下方に配置され、前記車体フレーム(11)に揺動可能に支持されるロアアーム(30)と、前記アッパーアーム(29)の端部(62,63)と前記ロアアーム(30)の端部(52,52)とをそれぞれ回動可能に連結するサイド部材(34,34)と、前記アッパーアーム(29)及び前記ロアアーム(30)からなる揺動アーム(28)と前記サイド部材(34,34)とによって構成される揺動機構(64)と、前記車体フレーム(11)に対する前記揺動アーム(28)の変位を抑えるロールダンパ(31)とを備える揺動型車両において、前記ロールダンパ(31)は、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、同方向の荷重が当該ロールダンパ(31)に発生するように配置され、前記ロールダンパ(31)は、左右の車幅中心(C)に沿って配置され、前記ロールダンパ(31)は、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、当該ロールダンパ(31)が伸びる荷重が発生するように配置されることを特徴とする。
本発明によれば、車体フレームに対する揺動アームの変位を抑えるロールダンパは、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、同方向の荷重がロールダンパに発生するように配置される。これにより、車両が左右のいずれに倒れて傾斜する際にも、同方向の荷重がロールダンパに発生し、車両が起き上がる際にロールダンパに発生する荷重は、左右の両方の起き上がり時において倒れ込み時とは反対の同方向となる。このため、倒れ込み時と起き上がり時とで個別にダンパー特性を設定でき、ダンパー特性の設定の自由度を向上して揺動型車両の旋回性を向上できる。また、ロールダンパは、左右の車幅中心に沿って配置されるため、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、ロールダンパに同方向の荷重を発生させることができるとともに、ロールダンパをコンパクトに配置できる。また、ロールダンパが左右の車幅中心に沿って配置されるため、車両の左右の重量バランスを最適化できる。
さらに、ロールダンパは、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、ロールダンパが伸びる荷重が発生するように配置される。この場合、ロールダンパの上側の支点はアッパーアームの揺動中心の下側に配置されるので、アッパーアームの揺動中心の上側にロールダンパの上側の支点が配置される場合よりも、より短いロールダンパの全長でロールダンパのストローク量を大きく取ることができる。従って、ロールダンパの設定の自由度を向上できる。
さらに、本発明は、前記アッパーアーム(29)はその揺動中心(58)から下方に延びる延出部(75)を備え、前記ロールダンパ(31)は、その一端(72)が前記延出部(75)に支持されることを特徴とする。
本発明によれば、アッパーアームはその揺動中心から下方に延びる延出部を備え、ロールダンパは、その一端が延出部に支持されるため、アッパーアームの揺動中心の上側にロールダンパの上側の支点が配置される場合よりも、より短いロールダンパの全長でロールダンパのストローク量を大きく取ることができる。
また、本発明は、前記ロールダンパ(31)は前記車体フレーム(11)のヘッドパイプ(13)の前方に配置され、前記揺動機構(64)の揺動をロックする揺動ロック機構(90)は、前記ヘッドパイプ(13)の後方に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、ロールダンパは車体フレームのヘッドパイプの前方に配置され、揺動機構の揺動をロックする揺動ロック機構は、ヘッドパイプの後方に配置されるため、ロールダンパ及び揺動ロック機構を車体の前後方向にバランス良く配置できる。
また、本発明は、前記ロールダンパ(31)を前記アッパーアーム(29)に取り付ける支持ステー(77)は、下から上方向に挿通されるボルト(78)で締結されることを特徴とする。
本発明によれば、ロールダンパをアッパーアームに取り付ける支持ステーは、下から上方向に挿通されるボルトで締結されるため、ロールダンパをボルトの軸力で伸ばしながら支持ステーをアッパーアームに取り付けでき、ロールダンパを容易に取り付けできる。
本発明に係る揺動型車両では、倒れ込み時と起き上がり時とで個別にダンパー特性を設定でき、ダンパー特性の設定の自由度を向上して揺動型車両の旋回性を向上できる。
また、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、ロールダンパに同方向の荷重を発生させることができるとともに、ロールダンパをコンパクトに配置できる。また、車両の左右の重量バランスを最適化できる。
また、ロールダンパのストローク量を大きく取ることができ、ロールダンパの設定の自由度を向上できる。
さらに、ロールダンパ及び揺動ロック機構を車体の前後方向にバランス良く配置できる。
また、ロールダンパを容易に取り付けできる。
本発明の実施の形態に係る揺動型車両を前方から見た図である。 揺動型車両の前部の左側面図である。 揺動アームの周辺部を前方側から見た図である。 揺動アームの周辺部を左前方側から見た斜視図である。 揺動アームの周辺部を後方側から見た図である。 揺動機構及びタイロッドの幾何学的形状を説明する正面図である。 揺動型車両が左に揺動した際の揺動機構及び前輪の状態を示す正面図である。 揺動型車両の旋回前後の状態を示す図であり、(a)は直立状態であり、(b)は傾斜状態である。 比較例の揺動型車両の旋回前後の状態を示す図であり、(a)は直立状態であり、(b)は傾斜状態である。 車両の傾斜角と前輪の転舵角との関係を示す図表である。 揺動型車両の傾斜動作に伴うロールダンパの変位を示す図である。 比較例におけるロールダンパの変位を示す図である。 図2のXII−XII断面図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車両に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車両前方を示し、符号UPは車両上方を示し、符号LHは車両左方を示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る揺動型車両を前方から見た図である。図2は、揺動型車両の前部の左側面図である。なお、図1では、車両の前部の構造が示されており、後部の構造の図示は省略されている。
揺動型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11の前部の下方で左右にそれぞれ設けられる一対の前輪12L,12R(車輪)と、揺動型車両10の後部の車幅方向の中央に設けられる1つの後輪(不図示)と、駆動輪である前記後輪を駆動するパワーユニット(不図示)とを備える3輪車両である。
揺動型車両10は、乗員が跨るようにして着座するシート(不図示)を後部側に備える鞍乗り型車両である。
車体フレーム11は、前端のヘッドパイプ13と、ヘッドパイプ13から後下がりに後方へ延びるメインフレーム14と、メインフレーム14から後方に延出される後部フレーム(不図示)とを備える。
前記パワーユニットは、例えばエンジンであり、メインフレーム14の後方に配置される。車体フレーム11の後部には、前端部を軸支されて後方に延びるとともに上下に揺動自在なスイングアーム(不図示)が設けられ、前記後輪は、スイングアームの後端部に軸支される。ここで、スイングアームは、スイングアームとパワーユニットとが一体に設けられるいわゆるユニットスイング型であっても良い。
筒状のヘッドパイプ13は、側面視でその軸線C(左右の車幅中心)が後傾するように傾斜して配置される。ヘッドパイプ13は、揺動型車両10の車幅方向の中心に位置する。
メインフレーム14は、ヘッドパイプ13の上部の後面から後下がりに延びる上側メインフレーム15と、ヘッドパイプ13の下部の後面から後下がりに延びる下側メインフレーム16と、下側メインフレーム16の後端から下方に延びる後側メインフレーム17とを備える。下側メインフレーム16は、ヘッドパイプ13に略直交する姿勢で配置される。後側メインフレーム17は、下側メインフレーム16よりも大きな傾斜で後下方に下る。
上側メインフレーム15は、ヘッドパイプ13から下側メインフレーム16と略平行に後方に延びるフレーム上端部18と、フレーム上端部18の後端部から左右に二股に分かれて下方に延びる左右一対の二股フレーム19,19とを備える。
二股フレーム19,19は、下側メインフレーム16と略同一の傾斜で後下がりに配置され、ヘッドパイプ13の後面に対向する。二股フレーム19,19は、上端部がフレーム上端部18の後端の側部に接続され、下端部が後側メインフレーム17の上端部の側部に接続されている。二股フレーム19,19は、ヘッドパイプ13よりも車幅方向の外側に位置するように側方に広がる中間部19a,19aを備え、中間部19a,19aは、互いに略平行に延びる。
すなわち、側面視においてヘッドパイプ13とメインフレーム14との間には、ヘッドパイプ13、上側メインフレーム15及び下側メインフレーム16で囲まれたヘッドパイプ後方空間Kが形成されている。
ヘッドパイプ13の上部の前面には、前方に突出する柱状の支持部21が設けられ、支持部21には、ボルト状の上側揺動軸22(アッパーアームの揺動中心)が締結固定される。上側揺動軸22は、側面視では後下がりの姿勢で配置され、先端部が支持部21に螺合される。詳細には、側面視において、上側揺動軸22の軸線22aは、ヘッドパイプ13の軸線Cに直交する平面(不図示)よりもわずかに後下がりの傾斜が小さい。なお、図1は、揺動型車両10の前部を上側揺動軸22の軸線22aの軸方向に見た正面図である。
ヘッドパイプ13の下部には、ヘッドパイプ13から前方及び後方に延びる下側揺動軸23(ロアアームの揺動中心、ロアアーム支持部)が設けられる。下側揺動軸23及び上側揺動軸22は、車幅方向の中央に配置される。下側揺動軸23は、上側揺動軸22と平行に配置されて後下がりに延びる。詳細には、下側揺動軸23は、ヘッドパイプ13の前面から前上方に斜めに延びる第1の下側揺動軸23aと、ヘッドパイプ13の後面から後下方に斜めに延びる第2の下側揺動軸23bとを備える。第1の下側揺動軸23aと第2の下側揺動軸23bとは同軸に配置される。
ヘッドパイプ13の下部の前面には、前方に突出する柱状の前側支持部24が設けられる。第1の下側揺動軸23aは、ボルト状に形成されており、先端部が前側支持部24に前方から締結固定される。
ヘッドパイプ13の下部の後面には、後方に突出する柱状の後側支持部25が設けられる。第2の下側揺動軸23bは、ボルト状に形成されており、先端部が後側支持部25に後方から締結固定される。
ヘッドパイプ13の前方には、左右に揺動可能な揺動アーム28が設けられる。
揺動アーム28は、上側揺動軸22を中心に左右に揺動可能なアッパーアーム29と、下側揺動軸23を中心に左右に揺動可能なロアアーム30とを備える。
揺動アーム28の前方には、揺動アーム28の上側揺動軸22及び下側揺動軸23回りの変位(ロール方向の変位)を抑えるロールダンパ31(ダンパ)が設けられる。
アッパーアーム29及びロアアーム30は、車幅方向の中央から左右方向(車幅方向)に延在しており、アッパーアーム29及びロアアーム30の左右端部には、左右の前輪12L,12Rを回動可能に支持する左側前輪支持部材33L及び右側前輪支持部材33Rがそれぞれ支持されている。
左側前輪支持部材33L及び右側前輪支持部材33Rは、アッパーアーム29及びロアアーム30に連結されるパイプ状のサイド部材34,34と、サイド部材34,34内に軸支されるステアリングシャフト35,35(図1)と、ステアリングシャフト35,35の下端に固定されるボトムブリッジ36,36と、ボトムブリッジ36,36に連結されるリンク式サスペンション機構37,37とをそれぞれ備える。
各ボトムブリッジ36は、ステアリングシャフト35を軸として左右に回動自在である。ボトムブリッジ36は、車幅方向内側かつ後方に延びる後方延出部36aと、後方延出部36aの後部から下方に延びる支持アーム36bとを備える。ボトムブリッジ36,36の前部には、前輪12L,12Rの上方を前方に延びるタイロッド連結アーム38,38がそれぞれ取り付けられる。
リンク式サスペンション機構37は、支持アーム36bの下端から前方に延びるリンク37aと、リンク37aの前端部と後方延出部36aとの間に架け渡される筒状の緩衝器37bとを備える。リンク37aは、後端部を中心に上下に揺動自在に支持されており、前輪12L,12Rは、リンク37aの前端に設けられる車軸40によってそれぞれ軸支される。
ヘッドパイプ13内には、ハンドルシャフト41(図8)が軸支されている。ハンドルシャフト41の上端には、乗員が操作するハンドル42がハンドルポスト43を介して取り付けられる。
ハンドルシャフト41はヘッドパイプ13を貫通して下方に延び、ハンドルシャフト41の下端には、ハンドルシャフト41と一体に回転するタイロッド支持アーム44が固定されている。タイロッド支持アーム44は、車幅方向に延びる左右一対のタイロッド45L,45Rによってタイロッド連結アーム38,38に連結される。
ハンドル42が転舵されると、タイロッド支持アーム44、タイロッド45L,45R及びタイロッド連結アーム38,38を介してボトムブリッジ36,36がステアリングシャフト35,35を軸に回動され、これに伴い、前輪12L,12Rは、ハンドル42が転舵された方向に操作される。
図3は、揺動アーム28の周辺部を前方側から見た図である。図4は、揺動アーム28の周辺部を左前方側から見た斜視図である。図5は、揺動アーム28の周辺部を後方側から見た図である。詳細には、図3は上側揺動軸22の軸線22aの軸方向に見た正面図である。
図1〜図5を参照し、サイド部材34,34は、ヘッドパイプ13の左右の側方にそれぞれ位置し、ヘッドパイプ13と平行に配置される。
サイド部材34,34は、上部の前面から前方に延びる上側連結軸47,47(支軸)と、下部の前面及び後面から前方及び後方に延びる下側連結軸48,48(支軸)とを備える。上側連結軸47,47及び下側連結軸48,48は、上側揺動軸22及び下側揺動軸23と平行に配置される。
上側連結軸47,47は、ボルト状に形成されており、先端部がサイド部材34,34の上部に前方から締結固定される。
各下側連結軸48は、サイド部材34の前面に設けられる第1の下側連結軸48aと、サイド部材34の後面に設けられる第2の下側連結軸48bとを備える。第1の下側連結軸48aは、ボルト状に形成されており、先端部がサイド部材34に前方から締結固定される。第2の下側連結軸48bは、ボルト状に形成されており、先端部がサイド部材34に後方から締結固定される。第1の下側連結軸48aと第2の下側連結軸48bとは同軸に設けられる。
ロアアーム30は、下側揺動軸23に軸支される下側揺動中心部50と、下側揺動中心部50から左右にそれぞれ延びてサイド部材34,34に連結される下側アーム部51L,51R(左右のアーム)とを一体に備える。下側アーム部51L,51Rは、下側揺動中心部50を中心に左右対称に形成される。
下側揺動中心部50は、円筒状に形成されており、内周部に嵌合されるベアリングを介して下側揺動軸23に軸支される。下側揺動中心部50の外周部の下端50a(図4)は、車幅方向の中心に位置する。
下側アーム部51L,51Rは、筒状の端部52,52を、車幅方向の外端に備える。下側アーム部51L,51Rは、端部52,52の内周部に嵌合されるベアリングを介して下側連結軸48,48に軸支される。
下側アーム部51L,51Rは、下側揺動中心部50から車幅方向の外側に行くほど下方に位置するように傾斜して形成されており、端部52,52は、下側揺動中心部50の下方に位置する。すなわち、ロアアーム30は、正面視では逆V字状に形成される。
また、ロアアーム30は、ヘッドパイプ13の前方に配置される前側ロアアーム53と、ヘッドパイプ13の後方に配置される後側ロアアーム54とを備える。ロアアーム30は、前側ロアアーム53と後側ロアアーム54とでヘッドパイプ13を前後から挟むようにして設けられる。前側ロアアーム53と後側ロアアーム54とは、後側ロアアーム54に後方から挿通される複数のボルト55(図5)によって結合される。
詳細には、前側ロアアーム53は、第1の下側連結軸48aに軸支される前側揺動中心部53aと、前側揺動中心部53aからサイド部材34,34の前面側へ延びる左右の前側アーム部53b,53bと、第1の下側連結軸48a,48aに軸支される前側端部53c,53cとを備える。
後側ロアアーム54は、第2の下側連結軸48bに軸支される後側揺動中心部54aと、後側揺動中心部54aからサイド部材34,34の後面側へ延びる左右の後側アーム部54b,54bと、第2の下側連結軸48b,48bに軸支される後側端部54c,54cとを備える。
下側揺動中心部50は、前側揺動中心部53a及び後側揺動中心部54aによって構成される。下側アーム部51L,51Rは、前側アーム部53b,53b及び後側アーム部54b,54bによって構成される。端部52,52は、前側端部53c,53c及び後側端部54c,54cによって構成される。
アッパーアーム29は、左右に分割されて構成されており、上側揺動軸22から右側(一側)のサイド部材34へ延びる右側アッパーアーム56と、上側揺動軸22から左側(他側)のサイド部材34へ延びる左側アッパーアーム57とを備える。
右側アッパーアーム56は、上側揺動軸22に軸支される第1の上側揺動中心部58と、第1の上側揺動中心部58から右側へ延びて右側のサイド部材34に連結される上側前アーム部59とを備える。
左側アッパーアーム57は、第1の上側揺動中心部58の後方で上側揺動軸22に軸支される第2の上側揺動中心部60と、第2の上側揺動中心部60から左側へ延びて左側のサイド部材34に連結される上側後アーム部61とを備える。
すなわち、右側アッパーアーム56と左側アッパーアーム57とは、上側揺動軸22上に前後に並べて配置される。
第1の上側揺動中心部58は、円筒状に形成されており、内周部に嵌合されるベアリングを介して上側揺動軸22に軸支される。第1の上側揺動中心部58の外周部の下端58aは、車幅方向の中心に位置する。
上側前アーム部59は、筒状の端部62を、車幅方向の外端に備える。上側前アーム部59は、端部62の内周部に嵌合されるベアリングを介して右側のサイド部材34の上側連結軸47に軸支される。
上側後アーム部61は、筒状の端部63を、車幅方向の外端に備える。上側後アーム部61は、端部63の内周部に嵌合されるベアリングを介して左側のサイド部材34の上側連結軸47に軸支される。
右側アッパーアーム56及び左側アッパーアーム57は、上側揺動軸22から車幅方向の外側に行くほど下方に位置するように傾斜して形成されており、端部62,63は、それぞれ第1の上側揺動中心部58及び第2の上側揺動中心部60の下方に位置する。端部62,63の上下の位置は同一である。すなわち、右側アッパーアーム56及び左側アッパーアーム57が合わさって構成されるアッパーアーム29は、正面視では逆V字状に形成される。
また、右側アッパーアーム56は、車幅方向の外側に行くほど後方に位置するように湾曲して形成され、左側アッパーアーム57は、車幅方向の外側に行くほど前方に位置するように湾曲して形成されており、端部62,63の前後の位置は同一となっている。
本実施の形態では、ロアアーム30を下側揺動軸23でヘッドパイプ13に揺動自在に支持し、右側アッパーアーム56及び左側アッパーアーム57を上側揺動軸22でヘッドパイプ13に揺動自在に支持し、上側連結軸47,47及び下側連結軸48,48によってサイド部材34,34をロアアーム30及びアッパーアーム29に対しそれぞれ回動自在に連結することで、ヘッドパイプ13の近傍に揺動機構64を構成している。
すなわち、揺動機構64は、ヘッドパイプ13、ロアアーム30、右側アッパーアーム56、左側アッパーアーム57、及び、サイド部材34,34のそれぞれを節(リンク)とし、下側揺動軸23、上側揺動軸22、上側連結軸47,47及び下側連結軸48,48を回動軸(揺動軸)とした多節リンク機構である。
ヘッドパイプ13は、アッパーアーム29の上方を通って前方に延びる棒状の前方延出部65を上端に備え、前方延出部65の前端には、右側アッパーアーム56の第1の上側揺動中心部58の前面側へ向かって下方に延びる板状のステー部66が設けられる。
ボルト状の上側揺動軸22は、ステー部66に前方から挿通されて頭部がステー部66の前面に当接し、第1の上側揺動中心部58及び第2の上側揺動中心部60は、ステー部66と支持部21との間に挟まれる。すなわち、上側揺動軸22は、ステー部66と支持部21とによって両持ちで支持される。このため、アッパーアーム29の支持剛性を高くできる。
ロールダンパ31は、上下方向に長い筒状に形成された液圧式のダンパーである。ロールダンパ31は、両端が塞がれた円筒状のシリンダ部68と、シリンダ部68の下端からシリンダ部68内に挿通され、シリンダ部68内の上端にピストン(不図示)を備えるピストンロッド69と、前記ピストンの下面側とシリンダ部68の底面との間に圧縮状態で介装されるスプリング(不図示)と、ロールダンパ31のダンパー作用の大きさを調整する調整機構部70とを備える。
シリンダ部68内には、上記ピストンの動きを減衰する流体としてのオイルが封入されている。シリンダ部68内は、ピストンによって、第1流体室と第2流体室とに軸方向に仕切られている。
上記ピストンは、ピストンの軸方向にオイルが通過可能なオイル流路を備える。ロールダンパ31は、ピストンの移動に伴ってオイル流路で生じるオイルの抵抗によって、ピストンの動きが抑制されることでダンパーとして機能する。
調整機構部70は、例えば、第1流体室と第2流体室とを繋ぐ油路の面積を可変とし、オイルの抵抗を可変とする機構である。
シリンダ部68とピストンロッド69とを相対変位させてロールダンパ31を伸ばす方向にストロークさせる際には、前記スプリングを圧縮していく荷重が必要となる。
ロールダンパ31は、ヘッドパイプ13の下端部に接続される筒状の下側支点部71(下側の支点)と、アッパーアーム29に接続される筒状の上側支点部72(上側の支点、一端)とを備える。
下側支点部71は、ピストンロッド69の下端に設けられる。上側支点部72は、シリンダ部68の上端に設けられる。
ヘッドパイプ13は、前面において下側揺動軸23の下方の位置から前方に延びる棒状のダンパーステー73を備える。ダンパーステー73の前端は、ロアアーム30の前端よりも前方に位置する。ダンパーステー73の前端には、下側揺動軸23と平行に前方に延びる下側ダンパー支持軸74(ダンパー支持部)が設けられる。下側ダンパー支持軸74は、ボルト状に形成されており、先端部がダンパーステー73の前端に締結固定される。
ロールダンパ31の下側支点部71は、内周部に嵌合されるベアリングを介して下側ダンパー支持軸74に軸支される。
右側アッパーアーム56は、第1の上側揺動中心部58から下方に延出する延出部75を備え、延出部75には、ロールダンパ31の上側支点部72を支持する上側ダンパー支持軸76が取り付けられる。
詳細には、上側ダンパー支持軸76は、ボルト状に形成されており、延出部75の下面に取り付けられる支持ステー77に先端部が締結固定されている。支持ステー77は、下方から支持ステー77に挿通されるステー固定ボルト78(下から上方向に挿通されるボルト)によって延出部75の下面に固定される。上側ダンパー支持軸76は、右側アッパーアーム56と一体に揺動する。
上側ダンパー支持軸76は、下側ダンパー支持軸74と平行に前方に延び、上側ダンパー支持軸76の前端部は、右側アッパーアーム56の前端よりも前方に位置する。
ロールダンパ31の上側支点部72は、内周部に嵌合されるベアリングを介して上側ダンパー支持軸76に軸支される。
ロールダンパ31は、ロアアーム30の前方に配置され、上側支点部72及び下側支点部71がロアアーム30を上下に跨ぐように設けられる。
ロールダンパ31は、正面視では、その軸線がヘッドパイプ13の軸線Cに重なるとともに、側面視では、その軸線が軸線22a及び第1の下側揺動軸23aと略直交するように配置される。
ロールダンパ31は、右側アッパーアーム56が揺動すると、下側ダンパー支持軸74を中心に左右に揺動するとともに、シリンダ部68が上側ダンパー支持軸76を介してストロークさせられることで、軸方向に伸縮する。
ロールダンパ31の上側支点部72を右側アッパーアーム56に接続する際には、上側ダンパー支持軸76を上側支点部72に挿通するとともに支持ステー77に締結し、その後、支持ステー77を、ステー固定ボルト78で延出部75の下面に下方から締結することで行うことができる。これにより、ステー固定ボルト78を締結していく際の軸力によってロールダンパ31を所定の長さに伸ばして組み付けでき、作業者が手でロールダンパ31の前記スプリングに抗してロールダンパ31を伸ばしながら作業する必要がないため、作業性が良い。
タイロッド45L,45Rは、タイロッド支持アーム44に連結される内側端部80,80(タイロッドの上端)と、タイロッド連結アーム38,38に連結される外側端部81,81(タイロッドの下端)と、内側端部80,80と外側端部81,81とを繋ぐロッド本体82,82とを備える。ロッド本体82,82は、直線的に延びる棒である。
タイロッド支持アーム44は、ヘッドパイプ13の下端の位置からダンパーステー73の下方を前方に延びる前方延出部83と、前方延出部83の前端から上方に立ち上がってロールダンパ31の下端部の前方まで延びる上方延出部84とを備える。
上方延出部84の上端には、タイロッド45L,45Rの内側端部80,80が連結される内端連結部85,85が左右一対で設けられている。内端連結部85,85は、ヘッドパイプ13の軸線Cを基準に左右に均等に振り分けて配置されており、下側揺動中心部50よりも外側方に位置する。内端連結部85,85は、上方延出部84から上方に突出する軸状部材であり、正面視では、上端側ほど車幅方向の外側に位置するように傾斜して配置される。また、内端連結部85,85は、側面視では、上端側ほど後方に位置するように傾斜して配置される。
タイロッド45L,45Rの内側端部80,80は、ボールジョイント等を介して、内端連結部85,85に回動自在に連結される。
ボトムブリッジ36,36に設けられるタイロッド連結アーム38,38の前端は、タイロッド支持アーム44の上方延出部84の前端よりも下方且つ前方に位置する。タイロッド連結アーム38,38の前端には、タイロッド45L,45Rの外側端部81,81が連結される外端連結部86,86がそれぞれ設けられる。外端連結部86,86は、タイロッド連結アーム38,38の前端から上方に突出する軸状部材であり、正面視及び側面視において、内端連結部85,85と略平行に配置される。タイロッド45L,45Rの外側端部81,81は、ボールジョイント等を介して、外端連結部86,86に回動自在に連結される。
外端連結部86,86は、内端連結部85,85の車幅方向外側に位置するとともに、内端連結部85,85の前方且つ下方に位置する。また、外端連結部86,86は、正面視において、ロアアーム30の下側連結軸48,48よりも下方且つ車幅方向の外側に位置する。
従って、内端連結部85,85と外端連結部86,86とを直線的に繋ぐタイロッド45L,45Rは、正面視では、車幅方向の外側下方へ向けて斜めに傾斜して配置される。詳細には、タイロッド45L,45Rは、正面視では車幅方向の外側ほど低い位置に位置するとともに、側面視では、前方側ほど低い位置に位置する。
図6は、揺動機構64及びタイロッド45L,45Rの幾何学的形状を説明する正面図である。詳細には、図6は、左右に揺動していない直立状態の揺動型車両10を上側揺動軸22の軸線22aの方向に見た正面図である。
上述のようにロアアーム30は、正面視では逆V字状に形成されており、下側揺動軸23は、サイド部材34,34の下側連結軸48,48を左右に結ぶ仮想の直線L1の上側に配置される。また、下側連結軸48,48は、下側揺動中心部50の下端50aを通る水平線L2よりも下方に位置する。
また、ロアアーム30は、下側揺動軸23を中心とした左側の下側アーム部51Lと右側の下側アーム部51Rとの間の開き角θ1(V字の内角)が、180°(水平)よりも小さい所定の角度に設定されている。ここで、開き角θ1は、下側揺動軸23と左右の下側連結軸48,48とをそれぞれ結ぶ直線同士が交わる角度である。
アッパーアーム29は、正面視では逆V字状に形成されており、上側揺動軸22は、サイド部材34,34の上側連結軸47,47を左右に結ぶ仮想の直線L3の上側に配置される。また、上側連結軸47,47は、第1の上側揺動中心部58の下端58aを通る水平線L4よりも下方に位置する。
また、アッパーアーム29は、上側揺動軸22を中心とした左側アッパーアーム57と右側アッパーアーム56との間の開き角θ2(V字の内角)が、180°(水平)よりも小さい所定の角度に設定されている。ここで、開き角θ2は、上側揺動軸22と左右の上側連結軸47,47とをそれぞれ結ぶ直線同士が交わる角度である。
下側連結軸48,48の間の距離D1と、上側連結軸47,47の間の距離D2とは等しいとともに、開き角θ1と開き角θ2とは等しい。このため、下側揺動軸23と仮想の直線L1と間の距離と、上側揺動軸22と仮想の直線L3との間の距離とも等しい。すなわち、ロアアーム30とアッパーアーム29とは、中央の揺動軸23,22に対する左右端の連結軸48,48,47,47の配置の位置関係が同一である。
下側揺動軸23及び上側揺動軸22は、車幅方向の中心に配置されている。下側揺動軸23と上側揺動軸22との間の距離は、各下側連結軸48と各上側連結軸47との間の距離と等しい。
タイロッド45L,45Rは、図6の正面視では、外端からヘッドパイプ13側に向かって上方へ傾斜して配置され、一対で逆V字を形成している。
タイロッド45L,45Rは、左側のタイロッド45Lと右側のタイロッド45Rとの間の開き角θ3(V字の内角)が、180°(水平)よりも小さい所定の角度に設定されている。ここで、開き角θ3は、タイロッド45L,45Rの内側端部80,80の回動中心と外側端部81,81の回動中心とをそれぞれ結ぶ直線(タイロッド45L,45Rの軸線)同士が交わる角度である。
詳細には、タイロッド45L,45Rの開き角θ3は、ロアアーム30の開き角θ1よりも小さい。本実施の形態では、タイロッド支持アーム44の上方延出部84がロールダンパ31の下端部に前方から重なる高さに位置し、タイロッド45L,45Rの内側端部80,80が高い位置に設けられている。このため、簡単且つコンパクトな構成で開き角θ3を小さくできる。
また、図2に示すように、タイロッド45L,45Rは、上端に位置する内側端部80,80と、下端に位置する外側端部81,81とが、下側連結軸48,48の軸線48c(支軸の中心線)を上下で挟むように配置されており、外側端部81,81よりも車幅方向内側の部分は、正面視(図3)でロアアーム30の下縁部に前方から重なるように配置されている。このため、開き角θ3を備えて上下の配置スペースを要するタイロッド45L,45Rであっても、コンパクトに配置できる。
ロールダンパ31は、上側支点部72及び下側支点部71が軸線Cに沿って上下方向に配置される。上側支点部72は、上側揺動軸22の下方且つアッパーアーム29の上側連結軸47,47の上方に配置され、下側支点部71(図2)は、下側揺動軸23の下方且つ下側連結軸48,48及びロアアーム30の左右の端部52,52の上方に配置される。下側連結軸48,48の後端は、下側支点部71よりも下方に位置しており、全体としては、下側支点部71は下側連結軸48,48よりも上方に位置している。これにより、アッパーアーム29とロアアーム30との上下の幅内のスペースを利用してロールダンパ31を車体中心に沿って配置できるため、ロールダンパ31の長さを確保しながらロールダンパ31をコンパクトに設けることができる。
図7は、揺動型車両10が左に揺動した際の揺動機構64及び前輪12L,12Rの状態を示す正面図である。ここで、図7では、比較例の揺動型車両210が揺動した際の状態が2点鎖線で共に図示されている。
揺動型車両10は、ハンドル42の転舵操作、及び、乗員による重心移動等により、傾斜した状態で左右に旋回する。詳細には、図7に示すように、揺動型車両10が傾斜する際には、下側揺動軸23を中心にしてヘッドパイプ13が傾斜するとともに、アッパーアーム29及びロアアーム30を介してサイド部材34,34が傾斜させられ、前輪12L,12Rは傾斜した状態で地面に密着する。すなわち、前輪12L,12Rは、車体フレーム11の揺動に合わせて、アッパーアーム29及びロアアーム30を介して揺動させられる。この状態では、アッパーアーム29及びロアアーム30は、地面に対して略水平を保ったまま傾斜方向にずれ、ヘッドパイプ13は、サイド部材34,34と略同一の角度で傾斜している。つまり、揺動型車両10が傾斜する状態では、揺動型車両10の前部は、アッパーアーム29及びロアアーム30を除く全体が一体に傾斜する。
比較例の揺動型車両210は、ヘッドパイプ13、サイド部材34,34、アッパーアーム229及びロアアーム230を備える。アッパーアーム229及びロアアーム230は、サイド部材34,34との連結軸が水平な同一直線上にそれぞれ設けられている。すなわち、アッパーアーム229及びロアアーム230の開き角は、それぞれ180°である。
また、比較例における左右の上記連結軸の間の距離Dcは、本実施の形態のロアアーム30及びアッパーアーム29の距離D1,D2と同一である。また、ヘッドパイプ13に対するアッパーアーム229及びロアアーム230の取り付け位置は本実施の形態のものと同一である。すなわち、揺動型車両10で開き角θ1,θ2が設けられることで、上側連結軸47,47及び下側連結軸48,48の位置が下方に移動している点を除き、揺動型車両10と比較例の揺動型車両210とは同一である。
図7に示すように、ヘッドパイプ13の傾斜角度が同一である場合、揺動型車両10の前輪12L,12Rは、比較例の揺動型車両210の前輪212L,212Rよりも旋回方向の内側に位置する。これは、180°よりも小さな開き角θ1,θ2が設定されていることによってもたらされる。
すなわち、本実施の形態では、ヘッドパイプ13の位置が比較例と同一であっても前輪12L,12Rが比較例の前輪212L,212Rよりも旋回方向の内側に位置するため、旋回性が高い。また、本実施の形態では、旋回方向の前輪(図7では左側の前輪212L)の位置が比較例に比して車幅方向の外側に位置するため、旋回中において、車両の部品(例えば車体フレーム11)と前輪212Lとのクリアランスを大きく確保できる。
また、図7には、ヘッドパイプ13の下方に位置する車両の重心Mと、重心Mから下方に降ろした垂線Vに対する前輪12L及び前輪212Lの距離W1,W2が図示されている。ここで、距離W1,W2は、前輪12L及び前輪212Lの下面の中心と垂線Vとの距離である。
本実施の形態では、重心Mと前輪12Lとの車幅方向の距離W1が、比較例の距離W2よりも小さく、前輪12Lの接地点と重心Mとが近いため、揺動型車両10が傾斜する際の倒れ方向のモーメントが比較例のものよりも小さくなる。このため、揺動型車両10の傾斜の動作が急になることを抑制でき、乗員に安心感を与えることができる。また、倒れ方向のモーメントが小さいため、乗員が揺動型車両10を押して歩く際に、乗員が揺動型車両10を傾斜方向に支えるために要する力を小さくできる。このため、揺動型車両10の押し歩きが容易となる。
図8は、揺動型車両10の旋回前後の状態を示す図であり、(a)は直立状態であり、(b)は傾斜状態である。図9は、比較例の揺動型車両310の旋回前後の状態を示す図であり、(a)は直立状態であり、(b)は傾斜状態である。なお、図8(b)及び図9(b)では、車両は水平な路面Gを走行しているが、紙面の都合上、路面Gの方を傾斜して図示している。
揺動型車両10では、図8(a)に示すように、タイロッド45L,45Rの開き角θ3は、ロアアーム30の開き角θ1よりも小さい。
比較例の揺動型車両310では、図9(a)に示すように、タイロッド45L,45Rの開き角θ3´は、ロアアーム30の開き角θ1と略同一である。詳細には、揺動型車両310では、タイロッド45L,45Rの外側端部81,81の位置を上方にずらすことで開き角θ3´が開き角θ3よりも大きく設定されている。揺動型車両310は、開き角θ3´が異なる点以外は、揺動型車両10と同一に構成されている。
図8(b)に示すように、揺動型車両10を路面Gに対して左側に傾斜させると、前輪12L,12Rは、自動的に左側に転舵される。この動作は、タイロッド45L,45Rの開き角θ3がロアアーム30の開き角θ1よりも小さいことで、傾斜動作の際にタイロッド45L,45Rが前輪12L,12Rを左側(傾斜方向)に転舵するように移動することで生じる。詳細には、図8(b)の傾斜角では、前輪12L,12Rは共に左側に転舵されるが、傾斜方向の側である左側の前輪12Lは右側の前輪12Rよりも大きく転舵される。
図9(b)に示すように、比較例の揺動型車両310を路面Gに対して左側に傾斜させると、前輪312L,312Rは、ほとんど転舵されない。これは、タイロッド45L,45Rの開き角θ3´がロアアーム30の開き角θ1と略同一であることで、傾斜動作の際にタイロッド45L,45Rが前輪312L,312Rに転舵するようにほとんど移動しないためである。詳細には、図9(b)の傾斜角では、前輪12L,12Rは共に車幅方向の外側にわずかに転舵され、左右の転舵角を平均すると、転舵角はほぼゼロとなる。すなわち、前輪12Lは正の転舵であり、前輪12Rは負の転舵であり、両者を平均すると転舵角はほぼゼロとなる。
図10は、車両の傾斜角と前輪の転舵角との関係を示す図表である。ここで、図10の車両の傾斜角は、ヘッドパイプ13(ハンドルシャフト41)の傾斜角度であり、前輪の転舵角は、左右の前輪の転舵角の平均値である。
図10に示すように、本実施の形態の転舵角Sは、車両の傾斜角が大きくなるほど、傾斜方向への転舵角が略線形に増加する。
これに対し、比較例の揺動型車両310の転舵角Scは、車両の傾斜角が大きくなっても転舵角はほとんど変化しない。
このように、本実施の形態では、タイロッド45L,45Rの開き角θ3をロアアーム30の開き角θ1よりも小さくしたため、揺動型車両10の傾斜に伴って、前輪12L,12Rを自動的に傾斜方向と同方向に転舵させることができる。このため、揺動型車両10の旋回性が良い。
図11は、揺動型車両10の傾斜動作に伴うロールダンパ31の変位を示す図である。
揺動型車両10の直立状態では、図8(a)のようにロールダンパ31はヘッドパイプ13の軸線Cに沿っている。
図8(b)のように揺動型車両10が左側に傾斜すると、図11に示すように、右側アッパーアーム56は上側揺動軸22を中心に反時計回り(左回り)に揺動し、これに伴い、上側揺動軸22の下方に位置していた上側ダンパー支持軸76も、右側アッパーアーム56と一体に左上方に変位する。上側ダンパー支持軸76は、上側揺動軸22を中心に変位するため、上側揺動軸22の変位の軌跡は円弧状となる。これにより、ロールダンパ31は、上側ダンパー支持軸76によって引っ張られ、下側ダンパー支持軸74を中心に左側へ揺動するとともに、上方へ引っ張られて軸方向に伸びる。この際のロールダンパ31のストローク量R1は、ストロークの前後における下側ダンパー支持軸74と上側ダンパー支持軸76と間の距離の差である。
図11では、揺動型車両10が左側に傾斜した場合の動作が図示されているが、揺動型車両10が右側に傾斜した場合の動作は、軸線Cを中心に左右対称であり、ロールダンパ31は、下側ダンパー支持軸74を中心に右側へ揺動するとともに、上方へ引っ張られて軸方向に伸びる。
すなわち、本実施の形態では、揺動型車両10が左右のいずれに傾斜する際にも、伸びる方向の荷重がロールダンパ31に発生する。また、揺動型車両10が左右のいずれの傾斜状態から直立状態に戻る際にも、縮む方向の荷重がロールダンパ31に発生する。
これにより、揺動型車両10が左右のいずれに傾斜してもロールダンパ31によって左右で同様の減衰力が発生するため、揺動型車両10の旋回性能が良い。また、揺動型車両10が傾斜する倒れ込み時にはロールダンパ31を左右ともに伸び側で動作させ、直立状態に戻る起き上がり時にはロールダンパ31を左右ともに縮み側で動作させるため、倒れ込み時と起き上がり時とで個別にロールダンパ31のダンパー特性を設定できる。このため、ダンパー特性の設定の自由度が向上し、揺動型車両10の旋回性を向上できる。
図12は、比較例におけるロールダンパ231の変位を示す図である。
ロールダンパ231は、ピストンロッド269が延長された点を除きロールダンパ31と同一に構成されている。
ロールダンパ231の上側支点部272を支持する上側ダンパー支持軸276は、右側アッパーアーム56の第1の上側揺動中心部58から上方に延出した支持部277に設けられている。比較例の下側ダンパー支持軸74の位置は本実施の形態と同一である。ここで、上側揺動軸22と比較例の上側ダンパー支持軸276との間の距離と、上側揺動軸22と本実施の形態の上側ダンパー支持軸76との間の距離とは同一である。また、比較例と本実施の形態との揺動型車両の傾斜角度は同一である。
比較例では、揺動型車両が左側に傾斜すると、図12に示すように、上側揺動軸22の上方に位置していた上側ダンパー支持軸276は、右側アッパーアーム56と一体に右下方に変位する。これにより、ロールダンパ31は、上側ダンパー支持軸76によって圧縮され、下側ダンパー支持軸74を中心に右側へ揺動するとともに、下方へ押されて軸方向に縮む。この際のロールダンパのストローク量R2は、ストロークの前後における下側ダンパー支持軸74と上側ダンパー支持軸276と間の距離の差である。ストローク量R2は、本実施の形態のストローク量R1よりも小さい。図11の状態では、ストローク量R1はストローク量R2の約1.5倍である。
このため、本実施の形態では、ロールダンパ31のストローク量を大きく確保でき、揺動型車両10の傾斜動作を効果的に減衰させることができる。
なお、比較例のように上側揺動軸22の上方に上側ダンパー支持軸276を設けた場合、揺動型車両が左右のいずれに傾斜する際にも、圧縮する方向の荷重がロールダンパ31に発生し、左右のいずれの傾斜状態から直立状態に戻る際には、伸びる方向の荷重がロールダンパ31に発生する。
図1〜図6を参照し、揺動型車両10は、揺動機構64の揺動をロックする揺動ロック機構90を備える。
揺動ロック機構90は、ロアアーム30に固定されるディスクプレート91と、メインフレーム14に固定され、ディスクプレート91の移動をロック可能なキャリパ92とを備える。
揺動ロック機構90は、揺動型車両10の揺動機構64を直立状態にロックする機構であり、揺動型車両10が駐車される際の揺動機構64の揺動を防止するパーキングブレーキとして使用される。ディスクプレート91及びキャリパ92は、図2の側面視ではヘッドパイプ後方空間K内に配置され、正面視では車幅方向の中央に配置されている。
図13は、図2のXII−XII断面図である。
ディスクプレート91は、ロアアーム30の後側ロアアーム54に固定される。後側ロアアーム54は、図2の側面視では、ヘッドパイプ後方空間K内の前部の下部に配置され、ヘッドパイプ13の後面に沿うように設けられる。後側ロアアーム54の下側揺動中心部50は、後側アーム部54b,54bの後面よりも後方に突出する円筒状の突出部50b(図5)を備える。
ディスクプレート91は、略扇形に形成された板である。詳細には、ディスクプレート91は、中心角が略90°の略扇形に形成されている。ディスクプレート91は、その扇形状の外周部91aが上端となるように立てて配置されるとともに、幅方向の中心線91bがヘッドパイプ13の軸線Cに略一致するように配置される。
ディスクプレート91は、後側ロアアーム54の突出部50bの上部の外周部に沿うように円弧状に切りかかれた切り欠き部91cを下端に備える。
図5に示すように、ディスクプレート91は、下部の前面を後側ロアアーム54の後面に当接させるとともに、切り欠き部91cの下縁を後側ロアアーム54の突出部50bの外周部に上方から載せるようにして配置される。次いで、ディスクプレート91は、ディスクプレート91の下部に後方から挿通される複数のディスク固定ボルト93によって後側ロアアーム54の左右の中央部の上部に締結固定される。ディスクプレート91は、後側ロアアーム54の後面に沿って上方に延び、上端の外周部91aは、ヘッドパイプ後方空間K内の上部に位置する。ディスクプレート91は、ヘッドパイプ13の後面に対向する。
キャリパ92は、図2の側面視では、ヘッドパイプ後方空間K内の上部に配置されている。キャリパ92は、側面視で下方に開放する溝部を有するブロック状のキャリパ本体94と、キャリパ本体94の溝部内に支持される一対の板状のパッド95と、回動されることでパッド95を操作する操作レバー96とを備える。
キャリパ92は、板状のキャリパステー97を介して二股フレーム19,19に固定される。二股フレーム19,19は、前方に突出するステー部19bを上部の前面に備え、キャリパステー97は、ステー部19bにボルト98,98で固定され、ヘッドパイプ後方空間K内を下方に延びる。
キャリパステー97は、ステー部19bから車幅方向の内側且つ下方に延びる左右一対の支持アーム部97a,97a(図13)と、支持アーム部97a,97aの下端同士を左右に繋ぐ連結部97bとを備える。
ボルト98,98は、支持アーム部97a,97aの上端部をステー部19bに固定する。キャリパ本体94は、左右の支持アーム部97a,97aの間且つ連結部97bの上方に配置され、車幅方向の中央に位置する。キャリパ本体94は、キャリパ本体94の左右の端部に挿通されるキャリパ固定ボルト99,99(図5)によって支持アーム部97a,97aの上下の中間部に締結固定される。操作レバー96の回動軸96aは、キャリパ固定ボルト99,99の間で車幅方向の中央に位置する。
ディスクプレート91の上部は、キャリパ92の溝部内に配置され、一対のパッド95の間に挟まれる。キャリパ92の操作レバー96は、乗員が操作する操作部にケーブル等を介して接続されており、乗員によって操作部を介して操作レバー96が操作されると、パッド95の一方が押圧され、ディスクプレート91が一対のパッド95の間に挟持され、ディスクプレート91の下側揺動軸23回りの揺動が不能となる。これにより、ディスクプレート91の揺動がロックされ、ディスクプレート91が一体に固定された後側ロアアーム54の揺動がロックされることで、揺動機構64の全体の揺動がロックされる。
図5に示すように、後方から二股フレーム19,19を見ると、キャリパ固定ボルト99,99、操作レバー96の回動軸96a、ディスク固定ボルト93、及び、第2の下側揺動軸23bは、二股フレーム19,19の間に形成された後方開放部19c内に位置している。このため、キャリパ固定ボルト99,99、操作レバー96の回動軸96a、ディスク固定ボルト93、及び、第2の下側揺動軸23b及びこれらの着脱に使用する工具等を後方開放部19cに通して作業でき、組み立て等の作業性が良い。また、後方開放部19cを設けることで、作業スペースを確保できるため、二股フレーム19,19を前後方向においてヘッドパイプ13の近くに配置できる。このため、ヘッドパイプ13近傍の剛性を効果的に向上できる。
また、ヘッドパイプ13、上側メインフレーム15及び下側メインフレーム16で囲まれたヘッドパイプ後方空間Kにディスクプレート91及びキャリパ92を配置するため、揺動ロック機構90をコンパクトに配置できる。
本実施の形態では、ロアアーム30をヘッドパイプ13の前後に分割して設け、ヘッドパイプ後方空間K内の後側ロアアーム54にディスクプレート91を固定するため、ヘッドパイプ後方空間Kを利用して、揺動ロック機構90をコンパクトに配置できる。また、ロアアーム30が前後に広く設けられるため、ロアアーム30の剛性が向上する。
さらに、後側ロアアーム54をヘッドパイプ13の後方に設けたため、ロアアーム30の全体としてのヘッドパイプ13の前方への出っ張り量を小さくできる。このため、前側ロアアーム53の前方に形成されたスペースにロールダンパ31をコンパクトに配置できる。さらに、ロールダンパ31の上側支点部72を上側揺動軸22の下方で右側アッパーアーム56に接続したため、図11で説明したようにロールダンパ31のストローク量を大きく確保できるとともに、上側揺動軸22の上方に前方延出部65及び上側揺動軸22を支持するステー部66を設けることができ、上側揺動軸22の支持剛性を向上することができる。
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、揺動型車両10は、車体フレーム11に揺動可能に支持されるアッパーアーム29と、アッパーアーム29の下方に配置され、車体フレーム11に揺動可能に支持されるロアアーム30と、アッパーアーム29の端部62,63とロアアーム30の端部52,52とをそれぞれ回動可能に連結するサイド部材34,34と、アッパーアーム29及びロアアーム30からなる揺動アーム28とサイド部材34,34とによって構成される揺動機構64と、サイド部材34,34の下方に支持される前輪12L,12Rとを備え、アッパーアーム29の上側揺動軸22は、アッパーアーム29の左右の端部62,63をサイド部材34,34にそれぞれ連結する上側連結軸47,47を左右に結ぶ直線L3の上側に配置され、ロアアーム30の下側揺動軸23は、ロアアーム30の左右の端部52,52をサイド部材34,34にそれぞれ連結する下側連結軸48,48を左右に結ぶ直線L1の上側に配置される。これにより、旋回時に揺動型車両10を同じ傾斜角で揺動させた場合、アームの揺動中心と左右の支軸とが同一直線上に配置される構成に比して、車体中心を基準に、前輪12L,12Rの接地点が旋回方向のより内側に位置することになる。このため、旋回時に、車体フレーム11などの車体部品と前輪12L,12Rとのクリアランスを確保できるとともに、旋回性を向上できる。
また、アッパーアーム29の左右の上側連結軸47,47は、アッパーアーム29における車体中心の下端58aを通る水平線L4よりも下方に配置され、ロアアーム30の左右の下側連結軸48,48は、ロアアーム30における車体中心の下端50aを通る水平線L2よりも下方に配置される。これにより、前輪12L,12Rの接地点を大きく旋回方向の内側に寄せることができるため、車体部品と前輪12L,12Rとのクリアランスを確保できるとともに、旋回性を向上できる。
また、揺動機構64のロールダンパ31は、上側支点部72及び下側支点部71が車体中心である軸線Cに沿って配置され、上側支点部72は、アッパーアーム29の上側揺動軸22の下方かつアッパーアーム29の左右の上側連結軸47,47の上方に配置され、下側支点部71は、ロアアーム30の下側揺動軸23の下方かつロアアーム30の左右の下側連結軸48,48の上方に配置される。これにより、アッパーアーム29及びロアアーム30の形状によって形成される上下のスペースを利用してロールダンパ31を軸線Cに沿って配置できるため、ロールダンパ31の長さを確保しながらロールダンパ31をコンパクトに設けることができる。
さらに、操舵力を前輪12L,12Rに伝達するタイロッド45L,45Rを備え、ロアアーム30の左右の下側アーム部51L,51Rの開き角θ1は、左右のタイロッド45L,45Rの開き角θ3よりも大きい。これにより、揺動型車両10を揺動させて傾斜させると、ロアアーム30の開き角θ1とタイロッド45L,45Rの開き角θ3との関係により、前輪12L,12Rが自動的に旋回方向の内側に回動する。このため、旋回性を向上できる。
また、ロアアーム30を支持する下側揺動軸23は、車体フレーム11のヘッドパイプ13に設けられ、ロールダンパ31を支持する下側ダンパー支持軸74は、下側揺動軸23よりも下方に設けられる。これにより、下側揺動軸23の下方のスペースを利用して下側ダンパー支持軸74を設けることができ、下側ダンパー支持軸74及びロールダンパ31をコンパクトに配置できるため、前輪12L,12Rを転舵させるためのスペースを確保できる。
また、本発明を適用した実施の形態によれば、揺動型車両10は、車体フレーム11に揺動可能に支持されるアッパーアーム29と、アッパーアーム29の下方に配置され、車体フレーム11に揺動可能に支持されるロアアーム30と、アッパーアーム29の端部62,63とロアアーム30の端部52,52とをそれぞれ回動可能に連結するサイド部材34,34と、アッパーアーム29及びロアアーム30からなる揺動アーム28とサイド部材34,34とによって構成される揺動機構64と、操舵力を前輪12L,12Rに伝達するタイロッド45L,45Rとを備え、左右のタイロッド45L,45Rの開き角θ3は、ロアアーム30の左右の下側アーム部51L,51Rの開き角θ1よりも小さい。これにより、揺動型車両10が旋回時に傾斜すると、左右のタイロッド45L,45Rの開き角θ3とロアアーム30の開き角θ1との関係により、前輪12L,12Rが自動的に旋回方向の内側に回動する。このため、揺動型車両10の旋回性を向上できる。
また、車体フレーム11のヘッドパイプ13の下端に、前方に向かって上方に延びるタイロッド支持アーム44が設けられる。このため、タイロッド45L,45Rに開き角θ3を持たせることができるとともに、タイロッド45L,45Rを上方に寄せて配置して下方にスペースを確保できる。
また、ロアアーム30は、端部52,52からヘッドパイプ13に向かって上方へ傾斜して配置され、タイロッド45L,45Rとロアアーム30とは、正面視で重なるように配置されるため、開き角θ3,θ1をそれぞれ備えるタイロッド45L,45R及びロアアーム30をコンパクトに配置できる。
さらに、タイロッド支持アーム44は、ロアアーム30の前方に配置されるロールダンパ31と正面視で重なるように設けられるため、ロアアーム30の前方に配置されるロールダンパ31の配置スペースをタイロッド支持アーム44によって確保できるとともに、タイロッド45L,45Rをヘッドパイプ13の近くにコンパクトに配置できる。
また、タイロッド45L,45Rの上端である内側端部80,80と下端である外側端部81,81とが、ロアアーム30の端部52,52をサイド部材34,34に連結する下側連結軸48,48の軸線48c(図2)を上下で挟むように配置される。これにより、タイロッド45L,45Rとロアアーム30とを正面視で重なるようにしてコンパクトに配置しながら、タイロッド45L,45Rの開き角θ3は小さくできる。
また、本発明を適用した実施の形態によれば、揺動型車両10は、車体フレーム11に揺動可能に支持されるアッパーアーム29と、アッパーアーム29の下方に配置され、車体フレーム11に揺動可能に支持されるロアアーム30と、アッパーアーム29の端部62,63とロアアーム30の端部52,52とをそれぞれ回動可能に連結するサイド部材34,34と、アッパーアーム29及びロアアーム30からなる揺動アーム28とサイド部材34,34とによって構成される揺動機構64と、車体フレーム11に対する揺動アーム28の変位を抑えるロールダンパ31とを備え、ロールダンパ31は、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、同方向の荷重がロールダンパ31に発生するように配置される。これにより、車両が左右のいずれに倒れて傾斜する際にも、同方向の荷重がロールダンパ31に発生し、揺動型車両10が起き上がる際にロールダンパ31に発生する荷重は、左右の両方の起き上がり時において倒れ込み時とは反対の同方向となる。このため、倒れ込み時と起き上がり時とで個別にロールダンパ31のダンパー特性を設定でき、ダンパー特性の設定の自由度を向上して揺動型車両10の旋回性を向上できる。
また、ロールダンパ31は、左右の車幅中心である軸線Cに沿って配置されるため、揺動型車両10が左右のいずれに傾斜する際にも、ロールダンパ31に同方向の荷重を発生させることができるとともに、ロールダンパ31をコンパクトに配置できる。また、ロールダンパ31が左右の車幅中心に沿って配置されるため、揺動型車両10の左右の重量バランスを最適化できる。
また、ロールダンパ31は、揺動型車両10が左右のいずれに傾斜する際にも、ロールダンパ31が伸びる荷重が発生するように配置される。この場合、ロールダンパ31の上側支点部72はアッパーアーム29の上側揺動軸22の下側に配置されるので、アッパーアーム29の上側揺動軸22の上側にロールダンパの上側の支点が配置される場合よりも、より短いロールダンパ31の全長でロールダンパ31のストローク量を大きく取ることができる。従って、ロールダンパ31の設定の自由度を向上できる。
さらに、アッパーアーム29は第1の上側揺動中心部58から下方に延びる延出部75を備え、ロールダンパ31は、上側支点部72が延出部75に支持されるため、第1の上側揺動中心部58の上側にロールダンパの上側支点部が配置される場合よりも、より短いロールダンパ31の全長でロールダンパ31のストローク量を大きく取ることができる。
また、ロールダンパ31はヘッドパイプ13の前方に配置され、揺動機構64の揺動をロックする揺動ロック機構90は、ヘッドパイプ13の後方に配置されるため、ロールダンパ31及び揺動ロック機構90を車体の前後方向にバランス良く配置できる。
また、ロールダンパ31をアッパーアーム29に取り付ける支持ステー77は、下から上方向に挿通されるステー固定ボルト78で締結されるため、ロールダンパ31をステー固定ボルト78の軸力で伸ばしながら支持ステー77をアッパーアーム29に取り付けでき、ロールダンパ31を容易に取り付けできる。
さらに、本発明を適用した実施の形態によれば、揺動型車両10は、ヘッドパイプ13及びヘッドパイプ13から後方に延出するメインフレーム14を備える車体フレーム11と、車体フレーム11に揺動可能に支持されるアッパーアーム29と、アッパーアーム29の下方に配置され、車体フレーム11に揺動可能に支持されるロアアーム30と、アッパーアーム29の端部62,63とロアアーム30の端部52,52とをそれぞれ回動可能に連結するサイド部材34,34と、アッパーアーム29及びロアアーム30からなる揺動アーム28とサイド部材34,34とによって構成される揺動機構64と、揺動機構64の揺動をロックする揺動ロック機構90とを備え、ヘッドパイプ13とメインフレーム14との間に、揺動ロック機構90が配置される。これにより、ヘッドパイプ13とその後方のメインフレーム14との間のヘッドパイプ後方空間Kを利用して、揺動ロック機構90をコンパクトに配置できる。
また、揺動ロック機構90は、揺動アーム28に固定されるディスクプレート91と車体フレーム11に固定されるキャリパ92とを備え、ディスクプレート91が、ヘッドパイプ13とメインフレーム14との間に配置されるため、揺動アーム28に固定されて揺動するディスクプレート91を、その揺動スペースを確保してコンパクトに配置できる。
また、メインフレーム14は、ヘッドパイプ13の上部に接続される上側メインフレーム15とヘッドパイプ13の下部に接続される下側メインフレーム16とを備え、揺動ロック機構90は、上側メインフレーム15と下側メインフレーム16との間に配置される。これにより、上側メインフレーム15と下側メインフレーム16とによってメインフレーム14の剛性を向上できるとともに、上側メインフレーム15と下側メインフレーム16との間のスペースを利用して揺動ロック機構90をコンパクトに配置できる。
さらに、ロアアーム30は、上側メインフレーム15と下側メインフレーム16との間に配置される後側ロアアーム54を備え、後側ロアアーム54にディスクプレート91が取り付けられる。このため、ロアアーム30及びディスクプレート91を、上側メインフレーム15と下側メインフレーム16との間のスペースを利用してコンパクトに配置できる。
また、ヘッドパイプ13の前方に、揺動アーム28の変位を抑えるロールダンパ31が配置されるため、揺動ロック機構90をヘッドパイプ13の後方に配置することでヘッドパイプ13の前方にできたスペースに、ロールダンパ31をコンパクトに配置できる。
また、ヘッドパイプ13に対向するメインフレーム14の一部である二股フレーム19,19は二股形状に形成されているため、二股形状の間の後方開放部19cを利用して揺動アーム28や揺動ロック機構90を容易に組み付けできる。また、後方開放部19cによって組み付けスペースを確保することで、二股フレーム19,19をヘッドパイプ13の近くに配置できる。このため、メインフレーム14近傍の車体フレーム11の剛性を向上できる。
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、ディスクプレート91及びキャリパ92がヘッドパイプ後方空間Kに配置されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、揺動ロック機構90は少なくとも一部がヘッドパイプ後方空間Kに配置されていれば良い。
また、上記実施の形態では、揺動ロック機構としてディスクプレート91及びキャリパ92を例に挙げて説明したが、揺動ロック機構は、揺動機構64の揺動をロックできるものであればどのようなものであっても良い。
また、揺動ロック機構90は、車幅方向の中央に配置されるものとして説明したが、これに限らず、揺動ロック機構90は、車幅方向の一方に寄せて配置されても良い。また、ディスクプレート91は、ロアアーム30に固定されるものとして説明したが、これに限らず、ディスクプレート91は、アッパーアーム29に固定されても良い。
また、上記実施の形態では、パワーユニットとしてエンジンを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、パワーユニットとして、バッテリーにより駆動される電動モーターを用いた構成としても良い。
さらに、上記実施の形態では、揺動型車両として前輪12L,12Rと1つの後輪とを備える3輪車両を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、後輪を2つ備えた4輪の揺動型車両に本発明を適用しても良い。
10 揺動型車両
11 車体フレーム
13 ヘッドパイプ
28 揺動アーム
29 アッパーアーム
30 ロアアーム
31 ロールダンパ
34,34 サイド部材
52,52 端部(ロアアームの端部)
58 第1の上側揺動中心部(その揺動中心)
62,63 端部(アッパーアームの端部)
64 揺動機構
72 上側支点部(一端)
75 延出部
77 支持ステー
78 ステー固定ボルト(下から上方向に挿通されるボルト)
90 揺動ロック機構
C 軸線(左右の車幅中心)

Claims (4)

  1. 車体フレーム(11)に揺動可能に支持されるアッパーアーム(29)と、当該アッパーアーム(29)の下方に配置され、前記車体フレーム(11)に揺動可能に支持されるロアアーム(30)と、前記アッパーアーム(29)の端部(62,63)と前記ロアアーム(30)の端部(52,52)とをそれぞれ回動可能に連結するサイド部材(34,34)と、前記アッパーアーム(29)及び前記ロアアーム(30)からなる揺動アーム(28)と前記サイド部材(34,34)とによって構成される揺動機構(64)と、前記車体フレーム(11)に対する前記揺動アーム(28)の変位を抑えるロールダンパ(31)とを備える揺動型車両において、
    前記ロールダンパ(31)は、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、同方向の荷重が当該ロールダンパ(31)に発生するように配置され
    前記ロールダンパ(31)は、左右の車幅中心(C)に沿って配置され、
    前記ロールダンパ(31)は、車両が左右のいずれに傾斜する際にも、当該ロールダンパ(31)が伸びる荷重が発生するように配置されることを特徴とする揺動型車両。
  2. 前記アッパーアーム(29)はその揺動中心(58)から下方に延びる延出部(75)を備え、前記ロールダンパ(31)は、その一端(72)が前記延出部(75)に支持されることを特徴とする請求項記載の揺動型車両。
  3. 前記ロールダンパ(31)は前記車体フレーム(11)のヘッドパイプ(13)の前方に配置され、前記揺動機構(64)の揺動をロックする揺動ロック機構(90)は、前記ヘッドパイプ(13)の後方に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の揺動型車両。
  4. 前記ロールダンパ(31)を前記アッパーアーム(29)に取り付ける支持ステー(77)は、下から上方向に挿通されるボルト(78)で締結されることを特徴とする請求項記載の揺動型車両。
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