以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における現像装置の構成を示す断面図、図2は本発明の実施の形態における画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図2において、10は本実施の形態における画像形成装置であり、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、複写機、各種の機能を併せ持つ複合機等であるが、いかなる種類のものであってもよい。ここでは、前記画像形成装置10が、電子写真方式によって画像を形成する電子写真式プリンタであるものとして説明する。なお、前記画像形成装置10は、カラー画像を形成する装置であってもよいが、説明の都合上、モノクロ画像を形成する装置であるものとする。
この場合、前記画像形成装置10の内部には、画像形成ユニット28及び定着器27が媒体としての記録媒体21の搬送路に沿って配設されている。そして、用紙カセット等に積層されてセットされた記録媒体21は、給紙ローラ31によって1枚ずつ分離された状態で給紙され、矢印Aで示される方向に搬送されて用紙搬送ローラ32に送り込まれる。続いて、記録媒体21は、用紙搬送ローラ32によって所定のタイミングで矢印Bで示される方向に送り出され、搬送路に沿って搬送される途中で、画像形成ユニット28によって形成された現像剤像であるトナー像が転写ローラ25により、転写される。
そして、記録媒体21が定着器27に送り込まれると、該定着器27によって定着プロセスが行われ、トナー像が記録媒体21上に定着される。続いて、トナー像が定着された記録媒体21は、矢印Cで示される方向に搬送され、用紙排出ローラ33によって矢印Dで示される方向に排出され、画像形成装置10の外部におけるスタッカに収容される。
ここで、画像形成ユニット28は、現像装置20を有する。該現像装置20は、図1に示されるように、現像剤収容器としてのトナー収容部22と、該トナー収容部22から補給された現像剤としてのトナー17を内部に収容するケーシング23とを備える。また、現像装置20は、静電潜像担持体としての感光体ドラム13、該感光体ドラム13に対向させて配設された現像剤担持体としての現像ローラ11、該現像ローラ11にトナー17を供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ12、前記感光体ドラム13を帯電させる帯電部材としての帯電ローラ14、前記現像ローラ11上に供給されたトナー17を薄層に形成するトナー層厚規制ブレードとしての現像ブレード15、ケーシング23内のトナー17の流動性を維持するための攪拌(かくはん)部材24a、24b及び24c、並びに、前記感光体ドラム13上の転写残トナーを掻き落として回収するためのクリーニングブレード16を備える。
前記現像ローラ11、トナー供給ローラ12、感光体ドラム13及び帯電ローラ14は、それぞれ、矢印で示される方向に回転する。前記攪拌部材24a、24b及び24cは、クランク形状の捧体であり、図に示される破線上を矢印で示される方向に回転する。
また、26は、発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)を備え、イメージデータに基づいて感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成するための露光装置としてのLEDヘッドである。
次に、前記画像形成装置10の制御装置について説明する。
図3は本発明の実施の形態における画像形成装置の制御ブロック図である。
図において、30は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等を備える印刷制御部であり、図示されない上位装置からインターフェイス(I/F)制御部36を介して印刷データ及び制御コマンドを受信し、画像形成装置10の全体のシーケンスを制御して印刷動作を行わせる。
また、37は、前記上位装置からインターフェイス制御部36を介して入力された印刷データを一時的に記録する受信メモリである。さらに、41は、該受信メモリ37に記録された印刷データを受け取るとともに、該印刷データを編集処理することによって形成された画像データ、すなわち、イメージデータを記録する画像データ編集メモリである。
そして、42は、画像形成装置10の状態を表示するためのLED等の表示手段、及び、画像形成装置10に操作者からの指示を与えるためのスイッチ等の入力手段を備える操作部である。さらに、43は、センサ群であり、画像形成装置10の動作状態を監視するための各種のセンサ、例えば、用紙位置検出センサ、温湿度センサ、印刷濃度センサ、トナー残量検知センサ等を含んでいる。
また、46は、帯電ローラ用電源であり、印刷制御部30の指示によって帯電ローラ14に電圧を印加し、感光体ドラム13の表面を帯電させる。そして、44は、静電潜像にトナー17を付着させるために現像ローラ11に所定の電圧を印加する現像ローラ用電源である。また、45は、前記現像ローラ11にトナー17を供給するためのトナー供給ローラ12に所定の電圧を印加するトナー供給ローラ用電源である。
さらに、47は、前記現像ローラ11の表面にトナー17の薄層を形成するための現像ブレード15に所定の電圧を印加する現像ブレード用電源である。そして、51は、前記感光体ドラム13に形成されたトナー像を記録媒体21に転写するための転写ローラ25に所定の電圧を印加する転写ローラ用電源である。
なお、前記帯電ローラ用電源46、現像ローラ用電源44、トナー供給ローラ用電源45、現像ブレード用電源47及び転写ローラ用電源51は、印刷制御部30の指示によって各部材に印加する電圧を変更することができるようになっている。
そして、52は、前記画像データ編集メモリ41に記録されたイメージデータをLEDヘッド26に送り、該LEDヘッド26を駆動するヘッド駆動制御部である。また、53は、転写されたトナー像を記録媒体21に定着するために、定着手段としての定着器27に電圧を印加する定着制御部である。なお、前記定着器27は、記録媒体21上のトナー像を構成するトナー17を溶融させるための図示されないヒータ、温度を検出する図示されない温度センサ等を備える。前記定着制御部53は、前記温度センサのセンサ出力を読み込み、該センサ出力に基づいてヒータを通電させ、定着器27が一定の温度になるように制御を行う。
そして、54は、前記記録媒体21を搬送するための用紙搬送モータ34の制御を行う搬送モータ制御部である。該搬送モータ制御部54は、印刷制御部30の指示によって所定のタイミングで記録媒体21を搬送したり停止させたりする。なお、前記給紙ローラ31、用紙搬送ローラ32及び用紙排出ローラ33は、用紙搬送モータ34によって回転させられる。そして、記録媒体21は矢印A〜Dで示される方向に搬送される。
また、55は、前記感光体ドラム13を動作させるための駆動モータ35を駆動する駆動制御部である。そして、該駆動制御部55によって駆動モータ35が駆動されると、図2に示されるように、感光体ドラム13が矢印で示される方向に回転させられるとともに、帯電ローラ14、現像ローラ11及びトナー供給ローラ12が、それぞれ、矢印で示される方向に回転させられる。
次に、前記現像装置20の主な構成要素について詳細に説明する。
図4は本発明の実施の形態における現像ローラの断面図である。
本実施の形態におけるトナー17は、粉砕法で製造され、バインダーとしてポリエステル樹脂を用いた非磁性一成分の負帯電性トナーである。トナー17の粒子の体積平均粒径は、5.7〔μm〕、円形度は、0.92、ブローオフ帯電量は、−36〔μC/g〕である。なお、体積平均粒径の測定には、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を使用した。また、円形度の測定には、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000(シスメックス株式会社製)を使用した。ブローオフ帯電量の測定には、粉体帯電量測定装置TYPE TB−203(京セラ株式会社製)を使用した。0.5〔g〕のトナー17と、9.5〔g〕のフェライトキャリア(F−60)(パウダーテック株式会社製)とを混合し、30分攪拌した後、ブロー圧7.0〔kPa〕、吸引圧−4.5〔kPa〕の条件で飽和帯電量を測定した。
図4に示されるように、現像ローラ11は、導電性の芯金61、該芯金61上に配設された弾性層62、及び、該弾性層62の表面を被覆する表面層63を備える。
前記弾性層62の材料は、例えば、シリコーンゴム、ウレタン、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴム(ECO)との混合物等の一般的なゴム材料である。
前記弾性層62のゴム硬度は、一般的に、アスカーC硬度で60〜80度であることが好ましい。前記弾性層62のアスカーC硬度が60度より低いと、現像装置20を長期間に亘(わた)って動作させない場合、現像ローラ11における感光体ドラム13及び現像ブレード15との当接部に凹みが発生し、印刷画像上に横スジが発生してしまうという問題がある。また、前記弾性層62のアスカーC硬度が80度より高いと、現像ローラ11にかかる負荷が大きくなり、該現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生しやすくなるだけでなく、感光体ドラム13との当接圧が高くなるため、微細なパターンを印刷する際の再現性が低下するという問題がある。なお、本実施の形態においては、弾性層62の材料として、アスカーC硬度が65度のシリコーンゴムを用いている。
また、前記弾性層62には、必要に応じて、導電剤、充填(てん)剤、硬化剤、加硫促進剤等の各種添加剤を適宜添加することもできる。導電剤としては、カーボンブラック等の電子導電剤、第4級アンモニウム塩等のイオン導電剤等、一般的な導電剤を用いることができる。
前記表面層63の材料は、耐摩耗性、トナー17への電荷付与性等を考慮して選ぶ必要がある。一般的には、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等が用いられるが、本実施の形態においては、ウレタン樹脂を用い、その層厚は約10〔μm〕である。
前記表面層63にウレタン樹脂を用いる場合、ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとの混合物、ポリエーテルポリオールとポリカーボネートジオールとの混合物等が好ましい。ポリウレタンのポリイソシアネート成分は、MDI、HDI等が好ましい。ウレタンには、ポリイソシアネート及びポリオールに加え、触媒、充填剤、可塑剤等を適宜配合して用いることも可能である。
次に、前記現像ローラ11の抵抗値測定方法について説明する。
図5は本発明の実施の形態における現像ローラの抵抗値測定方法を示す図である。
現像ローラ11の抵抗値の測定には、ハイレジスタンスメータ(型番:4339B)(ヒューレット・パッカード社製)64を使用した。現像ローラ11は、両端にW=500〔g〕の荷重をかけて、直径30〔mm〕のステンレス鋼(SUS)材の金属ローラ65に接触させた。該金属ローラ65を50〔rpm〕の速度で回転させ、現像ローラ11の芯金61に−100〔V〕の電圧を印加し、現像ローラ11の1周につき100ポイントで抵抗値を測定し、その平均値を現像ローラ11の抵抗値とした。
該現像ローラ11の抵抗値は、1×104 〜1×108 〔Ω〕の範囲が好ましく、本実施の形態においては、抵抗値が1×105 〔Ω〕の現像ローラ11を用いる。
現像ブレード15は、ステンレス鋼製で、板厚が0.08〔mm〕であり、現像ローラ11との当接部に曲げ加工が施されており、曲げ部(当接部)の曲率半径は0.18〔mm〕であり、現像ローラ11に対する圧力(線圧)は40〔gf/cm〕である。
前記現像ブレード15の設定条件に鑑み、現像ローラ11上のトナー層厚、トナー帯電量等を所望の量にするため、現像ローラ11の表面粗さ、抵抗値等を検討する必要がある。本実施の形態において使用する現像ローラ11の表面粗さは、周方向における十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が2〜10〔μm〕、凹凸の平均間隔Sm(JIS B0601−1994)が50〜200〔μm〕であることが適当である。なお、表面粗さの測定は、サーフコーダSEF3500(小坂研究所製)を用いて行い、測定器の触針半径は2〔μm〕、触針圧は0.7〔mN〕、触針の送り速さは0.1〔mm/sec〕、測定長さは2.5〔mm〕である。
なお、十点平均粗さRzが2〔μm〕より小さいと、現像ローラ11上に形成されるトナー層が薄くなり、トナー17の粒子1個当たりに加わるストレスが大きくなる。そのため、トナー17から離脱する外添剤の量が増え、該外添剤が、現像ローラ11と現像ブレード15との当接部に詰まって、該現像ブレード15にトナーフィルミングが発生しやすいという問題がある。
また、十点平均粗さRzが10〔μm〕より大きいと、現像ローラ11上のトナー層厚が大きくなるため、トナー供給ローラ12によるトナー17の掻き取りが十分に行えず、現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生しやすいという問題がある。
一方、凹凸の平均間隔Smが50〔μm〕より小さいと、谷の幅が狭くなるため、トナー供給ローラ12によるトナー17の掻き取りが十分に行えず、現像ローラ11の表面にトナー17の搬送量増大に起因する汚れとトナーフィルミングとが発生しやすいという問題がある。
また、凹凸の平均間隔Smが200〔μm〕より大きいと、トナー17の搬送性が低下するため、印刷濃度が低くなるという問題がある。
トナー供給ローラ12は、図示されない導電性の芯金、及び、該芯金上に配設された図示されないシリコーンゴムスポンジを備える。
該シリコーンゴムスポンジは、未加硫のシリコーンゴムコンパウンドを押し出し等の方法で成形し、加熱によって、加硫発泡することにより得られる。前記シリコーンゴムコンパウンドは、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルフェニルシリコーン生ゴム等の各種生ゴムに、補強性シリカ充填剤、加硫硬化に必要な加硫剤及び発泡剤を添加することによって得られる。該発泡剤としては、重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤、及び、ADCA等の有機発泡剤が用いられる。なお、半導電性を持たせる場合は、アセチレンブラック、カーボンブラック等を添加する。また、トナー供給ローラ12の硬度の調整は、加硫剤の添加量によって調整される。
本実施の形態におけるトナー供給ローラ12のセル目(発泡によって生じた微細な孔(あな))の直径は、200〜500〔μm〕であり、アスカーF硬度は35〜65度のものが適当である。
また、トナー供給ローラ12の抵抗値は、図5に示される測定方法において、荷重W=200〔g〕、印加電圧を−300〔V〕としたとき、1×104 〜1×108 〔Ω〕の範囲が好ましく、本実施の形態においては、1×105 〔Ω〕である。
前記トナー供給ローラ12は、現像ローラ11に対して、それぞれ0.5〜1.5〔mm〕程度食い込むように配置され、その接触部において現像ローラ11とは逆方向に回転する。
トナー供給ローラ12のアスカーF硬度が低く、かつ、トナー供給ローラ12の現像ローラ11に対する食い込み量が小さい場合、現像ローラ11上の未現像トナーの掻き取り性が低下するために、現像ローラ11上の未現像トナーが当接部材からストレスを受け続け、現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生しやすくなる。
また、トナー供給ローラ12のアスカーF硬度が高く、かつ、トナー供給ローラ12の現像ローラ11に対する食い込み量が大きい場合、現像ローラ11に対するトナー供給ローラ12の当接圧が高く、現像ローラ11上のトナー17に加わる機械的なストレスが大きくなるため、現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生しやすくなる。
以上のことから、現像ローラ11の表面のトナーフィルミングの発生を抑制するには、現像ローラ11上のトナー17に加わるストレスを軽減すること、及び、トナー供給ローラ12による現像ローラ11上の未現像トナーの掻き取り性を向上させることが必要になる。
現像ローラ11として、上記の条件を満たすには、現像ローラ11の表面の硬度を局所的に高くしすぎないこと、及び、現像ローラ11の周方向の表面粗さの形状をトナー17が掻き取られやすいものにすることが挙げられる。
次に、前記構成の現像装置20の画像形成時の動作について説明する。
感光体ドラム13の回転に伴い、現像ローラ11及びトナー供給ローラ12が、図1において矢印で示される方向に回転すると、芯金上にスポンジ状の弾性体が配設されたトナー供給ローラ12は、ローラの表面及びセル目内にトナー17を担持しながら回転し、該トナー17は、現像ローラ11との接触部に至る。なお、トナー供給ローラ12には、トナー供給ローラ用電源45によって、直流電圧−300〔V〕が印加される。また、現像ローラ11には、現像ローラ用電源44によって、直流電圧−200〔V〕が印加される。
現像ローラ11とトナー供給ローラ12との間に生じた電位差によって、負に帯電したトナー17は、現像ローラ11に供給される。また、該現像ローラ11とトナー供給ローラ12とが接触部において互いに逆方向に回転するため、トナー供給ローラ12は、現像ローラ11上の未現像トナーの掻き取りも行う。
現像ローラ11の表面に担持されたトナー17は、現像ブレード用電源47によって直流電圧−300〔V〕が印加された現像ブレード15により、薄層化された後、感光体ドラム13上に形成された静電潜像に付着して、該静電潜像を現像する。
次に、本実施の形態における効果を確認するために本発明の発明者が行った試験について説明する。
図6は本発明の実施の形態における連続印刷パターンを示す図、図7は本発明の実施の形態における現像ローラの表面にトナーフィルミングが発生していないときのベタ画像を示す図、図8は本発明の実施の形態における現像ローラの表面にトナーフィルミングが発生したときのベタ画像を示す図、図9は本発明の実施の形態における1by1パターンを示す図である。
本発明の発明者は、図2に示されるような画像形成装置10と同様の構成の実機を使用して、試験を行った。具体的には、温度25〔℃〕及び相対湿度50〔%〕の環境下において、前述の画像形成条件にて、30000枚の連続印刷試験を行った。
連続印刷時の印刷パターンは、図6に示されるような、記録媒体21の印刷方向すなわち現像ローラ11の周方向に平行な罫(けい)線71a及び71bを配したパターンとした。現像ローラ11の周上における前記罫線71a及び71bに対応する部分には、現像ローラ11上に未現像トナーがほとんど残らないため、トナーフィルミングは発生しないことになる。一方、現像ローラ11の周上における前記罫線71a及び71bに対応する部分以外の部分には、トナー17による現像が全く行われず、未現像トナーが現像ローラ11上に滞留し続けることとなるため、該現像ローラ11の表面粗さの形状、トナー供給ローラ12の当接条件等が適切でないと、トナーフィルミングが発生する。
30000枚の連続印刷後に、現像ローラ11の表面へのトナーフィルミングが発生したか否かは、記録媒体21にベタパターンを印刷して確認した。
現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生しなかった場合は、図7に示されるように、均一なベタ画像72を印刷することができる。一方、現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生した場合、図8に示されるように、罫線71a及び71bを印刷していない部分のベタ部73の印刷濃度は、トナーフィルミングによる現像ローラ11の表面の抵抗値上昇に伴う現像効率の低下によって、罫線71a及び71bを印刷した部分である罫線印刷部74a及び74bの印刷濃度より薄くなる。
連続印刷後のベタ画像72において、罫線印刷部74a及び74bと、罫線非印刷部であるベタ部73との濃度差を目視で確認することができなかった場合は、トナーフィルミングは発生していないと判定し、前記濃度差を目視で確認することができた場合は、トナーフィルミングが発生していると判定した。
前記連続印刷後に、トナーフィルミング発生の有無を確認するためのベタパターンに加えて、1by1パターンを記録媒体21に印刷した。前記1by1パターンは、図9に示されるように、600〔dpi〕における1ドットのパターンを1ドット間隔で配列したものである。前記1by1パターンを印刷することによって、微細なパターンの印刷再現性を確認することができる。なお、600〔dpi〕の1ドットの大きさの理論値は、0.042〔mm〕となる。
現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生した場合、現像ローラ11上に形成されたトナー層の帯電量ばらつきが大きくなり、また、現像ローラ11の表面粗さの形状が適切でない場合、トナー17の搬送むらが大きくなることによって、感光体ドラム13上に形成された1by1パターンのような微細な静電潜像のトナー17による現像が正常に行われなくなる。
印刷された1by1パターンの画像を顕微鏡で拡大観察し、画像解析ソフトSALT(レーザーテック株式会社製)を使用して、記録媒体21上に形成されたドットを100個抽出した。次に、各ドットの面積を測定し、該面積に対する円相当直径〔mm〕を算出した。そして、算出された100個の円相当直径データの標準偏差σによって、ドット再現性の良し悪しを判定した。
σ≦0.007のときは、ドット欠けが目立たないレベル、0.007<σ≦0.01のときは、ドット欠けを所々確認することができるが実使用上影響ないレベル、0.01<σのときは、観察領域において、広範囲でドット欠けを確認することができるレベルであり、拡大観察しなくても、ドットの抜け又は欠けを目視で確認することができる。
本試験においては、σ≦0.01のときを合格とし、0.01<σのときを不合格とした。
次に、前記試験すなわち連続印刷試験を行った現像ローラ11について説明する。
図10は本発明の実施の形態における凸と凹とによって表面粗さを形成した現像ローラの拡大断面図、図11は本発明の実施の形態における凸によって表面粗さを形成した現像ローラの拡大断面図、図12は本発明の実施の形態における凹によって表面粗さを形成した現像ローラの拡大断面図、図13は本発明の実施の形態における表面層に添加した樹脂微粒子によって表面粗さを形成した現像ローラの拡大断面図、図14は本発明の実施の形態における型転写と樹脂微粒子の添加とによって粗さを形成した現像ローラの表面を示す拡大図、図15は本発明の実施の形態における研磨によって粗さを形成した現像ローラの表面を示す拡大図、図16は本発明の実施の形態における負荷長さ率tp を説明する図、図17は本発明の実施の形態における仮定の粗さ曲線に対応する負荷長さ率tp を示す図、図18は本発明の実施の形態における現像ローラの表面粗さを示す表、図19は本発明の実施の形態における実施例1〜9の試験結果を示す表、図20は本発明の実施の形態における比較例1〜6の試験結果を示す表、図21は本発明の実施の形態における負荷長さ率tp (20〔%〕)及びtp (90〔%〕)並びに切断レベル10〔%〕当たりの負荷長さ率の変化量の最大値を示す表である。
現像ローラ11の弾性層62及び表面層63については、前述の通りであるが、本発明の発明者は、表面粗さの大きさ、表面粗さの形状及び表面粗さの形成方法が異なる現像ローラ11を実験例として用いて連続印刷試験を行った。
現像ローラ11の粗さ形成手段、すなわち、表面粗さを形成する方法としては、2通りとした。1つは、弾性層62の外周面に粗さを形成し、前記弾性層62に表面層63を被覆する方法である。もう1つは、外周面が平滑な弾性層62に、図13に示されるように、粗さ形成用の樹脂微粒子75を添加した表面層63を被覆する方法である。
弾性層62の表面に粗さを形成する方法としては、研磨による方法と、型転写による方法とを用いた。
粗さ形成手段が研磨である場合、すなわち、研磨による方法では、湿式で行い、耐水研磨ペーパ、例えば、耐水性のサンドペーパを用い、これに研磨液を供給しながら、ロールを回転させた状態で当接させることで、弾性層62の外周面に粗さを形成する。それにより、現像ローラ11の断面は、図10に示されるような形状になり、表面には、図15に示されるように、現像ローラ11の周方向に微細な縦溝が多数形成される。
粗さ形成手段が型転写である場合、すなわち、型転写による方法では、微小な凹若しくは凸、又は、凹及び凸の両方が、内面に特定の面積割合で存在している成形用の金型を用い、該金型の中空部に芯金61をセットし、前記金型と芯金61との間の空隙(げき)部にゴム材料を注型して加熱架橋させた後、前記金型から脱型することによって、弾性層62の外周面に粗さを形成する。それにより、現像ローラ11の断面は、図10〜12に示されるような形状になり、表面は、図14に示されるように、微小な凸若しくは凹、又は、凸及び凹が均一に多数存在する形状になる。
粗さ形成手段が粒子である場合、すなわち、表面層63に樹脂微粒子75を添加して表面粗さを形成する方法では、現像ローラ11の断面は、図13に示されるような形状になり、表面は、図14に示されるように、凸が均一に多数存在した形状になる。今回の実験例では、樹脂微粒子75として、球状のポリウレタン樹脂粒子を用いた。また、前記樹脂微粒子75の粒径は、2〜8〔μm〕とした。さらに、樹脂微粒子75の粒子単体の微小硬度は、マルティンス硬度で、0.6〔N/mm2 〕以下とした。
また、表面粗さの大きさについては、凹凸の平均間隔Sm、及び、十点平均粗さRzを指標とし、表面粗さの形状については、負荷長さ率tp (JIS B0601−1994)を指標とした。
負荷長さ率tp について、図16を参照して説明する。負荷長さ率tp (c〔%〕)は、ある切断レベルcで粗さ曲線を切断したときの、切断部分長さの測定長さLに対する百分率であり、次の式(1)で表される。このとき、切断レベルcは、粗さ曲線の最高山頂が0〔%〕、最深谷底が100〔%〕となり、切断レベル0〔%〕のときの負荷長さ率tp (0〔%〕)は0〔%〕、切断レベル100〔%〕のときの負荷長さ率tp (100〔%〕)は100〔%〕となる。
このように、負荷長さ率tp は、粗さ曲線の凸部の幅(凹部の幅)と粗さの高さ方向の情報とを含んでいるので、表面粗さの範囲規定には有用である。
具体的には、切断レベルcが10〔%〕及び20〔%〕のときの、負荷長さ率tp (10〔%〕)及びtp (20〔%〕)が小さいと、粗さ曲線の山の部分が尖(とが)った形状になり、切断レベルcが80〔%〕及び90〔%〕のときの、負荷長さ率tp (80〔%〕)及びtp (90〔%〕)が小さいと、粗さ曲線の谷の部分の幅が広い形状となる。また、切断レベルc1 〔%〕からc2 〔%〕の範囲で、負荷長さ率の変化量tp (c2 )−tp (c1 )が大きいと、切断レベルc1 〔%〕からc2 〔%〕の範囲で、粗さ曲線の傾きが緩やかな部分があることを意味する。
粗さ曲線の山の先端部分が尖った形状になっていると、その部分に乗ったトナー17に当接部材から加えられる圧力が局所的に高くなるため、トナーフィルミングが発生しやすくなる。また、粗さ曲線において、傾きがフラットに近い緩やかな部分や、谷の部分の幅が広すぎると、トナー供給ローラ12によるトナー17の掻き取り性が低下するため、トナーフィルミングが発生しやすくなる。
したがって、負荷長さ率tp は、トナー供給ローラ12による現像ローラ11上のトナー17の掻き取り性を向上させるためには、把握しておくべき指標である。
また、凹凸の平均間隔Smは、粗さ曲線が山から谷になる点を変化点として、ある変化点から次の変化点までの間隔の平均値である。そして、凹凸の平均間隔Smは、十点平均粗さRz及び負荷長さ率tp と同じ測定方法及び測定条件で測定することができる。
ここで、図17に示されるような粗さ曲線の形態1及び形態2を仮定すると、負荷長さ率tp の値が両方の形態で同一になることが分かる。つまり、表面粗さを正確に規定するためには、凹凸の平均間隔Smも必要であることが分かる。
前述のように、本実施の形態において使用する現像ローラ11の場合、凹凸の平均間隔Smが50〜200〔μm〕である。
図18は、連続印刷試験において実験例として使用した現像ローラ11の表面粗さの形状、粗さ形成手段、十点平均粗さRz、及び、負荷長さ率tp を示す表である。ここでは、前記実験例のうちで現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生せずに良好な結果が得られたものを実施例1〜9とし、その他のものを比較例1〜6とした。また、前記実験例の現像ローラ11に対し、トナー供給ローラ12のアスカーF硬度を30〜70度とし、前記現像ローラ11に対する食い込み量を0.4〜1.6〔mm〕の間で変量させて連続印刷試験を行った結果が、図19及び20に示されている。
図19及び20中の判定記号「○」、「□」、「△」及び「×」は、以下の判定結果を表している。
○:トナーフィルミング未発生、1by1パターンのドット径のばらつきσが0.007以下
□:トナーフィルミング未発生、1by1パターンのドット径のばらつきσが0.007より大きく、0.01以下
△:トナーフィルミング未発生、1by1パターンのドット径のばらつきσが0.01より大きい
×:トナーフィルミング発生
なお、以上の判定結果においては、「○」及び「□」を合格とし、「△」及び「×」を不合格とした。
実施例1〜9では、トナー供給ローラ12のアスカーF硬度が35〜65度、及び、トナー供給ローラ12の現像ローラ11に対する食い込み量が0.5〜1.5〔mm〕の範囲であれば、トナーフィルミングは発生せず、1by1パターンのドット径のばらつきσが0.01以下となった。また、実施例1〜6では、前記トナー供給ローラ12の設定範囲においては、1by1パターンのドット径のばらつきσが0.007以下であり、実施例7〜9より良好な結果となった。
一方、比較例1〜6では、ほとんどの条件においてトナーフィルミングが発生した。
比較例2においてトナーフィルミングが発生したのは、表面層63に比べて硬度の高い樹脂微粒子75を前記表面層63に添加したことによって、当接部材から現像ローラ11の表面に加わる圧力が局所的に高くなったためと考えられる。
比較例2を除く他の実験例の現像ローラ11の場合、トナーフィルミングが発生するか否かは、表面粗さの負荷長さ率tp に依る。本発明の発明者は、図18の表に示される負荷長さ率tp のうちから、tp (20〔%〕)及びtp (90〔%〕)、並びに、次の式(2)で示される切断レベル10〔%〕当たりの負荷長さ率の変化量に着目した。図21に示される表は、これらの数値を抜粋したものを示している。
tp ((n+1)×10〔%〕)−tp (n×10〔%〕) ・・・式(2)
図21の表から、現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生しなかった実施例1〜9は、以下の条件のすべてを満足していることが分かる。
十点平均粗さRz:2〜10〔μm〕
負荷長さ率tp (20〔%〕):30〔%〕以上65〔%〕以下
負荷長さ率tp (90〔%〕):80〔%〕以上
tp ((n+1)×10〔%〕)−tp (n×10〔%〕):20〔%〕以下(n:2〜8の整数)
ここで、負荷長さ率tp (20〔%〕)が30〔%〕以上65〔%〕以下というのは、表面粗さの山の部分が尖りすぎていない方がよいことを示しており、負荷長さ率tp (90〔%〕)が80〔%〕以上というのは、表面粗さの谷の部分の幅が広すぎない方がよいことを示している。また、切断レベル10〔%〕当たりの負荷長さ率の変化量が20〔%〕以下というのは、表面粗さの山と谷との間の傾斜が緩やかすぎない方がよいことを示している。
一方、現像ローラ11の表面にトナーフィルミングが発生した比較例1、及び、比較例3〜6は、上記条件のすべてを満足するものではない。
以上の結果から、弾性層62と該弾性層62の表面を覆う表面層63とを有する現像ローラ11においては、該現像ローラ11の表面粗さが弾性層62の表面に形成された凹凸によって発現したもの(表面層63に微粒子を添加することによって発現したものでないもの)であって、かつ、JIS B−0601−1994で測定される現像ローラ11の周方向の表面粗さが上記の条件のすべてを満足するものであれば、現像ローラ11の表面のトナーフィルミングの発生が抑制される、と言える。
また、1by1パターンのドット径のばらつきσについて、実施例1〜6が、実施例7〜9より小さくなったのは、現像ローラ11の表面粗さの形状が、微細な縦溝形状よりも、微小な凸と凹とが多数存在した形状である方が、現像ローラ11上に形成されるトナー層厚のばらつきを小さく抑えることができるからである、と考えられる。
さらに、上記条件を満足するような粗さの形状を型転写で形成するには、凸のみ又は凹のみよりも、凸と凹とを混在させた方が容易であると思われる。
このように、本実施の形態においては、弾性層62と、弾性層62の外周面を覆う表面層63であって微粒子を含有しない表面層63とを有する現像ローラ11は、表面粗さが弾性層62の外周面に形成された凹凸によって発現し、かつ、JIS B0601−1994で測定される現像ローラ11の周方向の表面粗さが以下の条件を満足することによって、現像ローラ11の表面へのトナーフィルミングの発生を抑制することができる。
凹凸の平均間隔Sm=50〜200〔μm〕
十点平均粗さRz=2〜10〔μm〕
負荷長さ率tp (20〔%〕):30〔%〕以上65〔%〕以下
負荷長さ率tp (90〔%〕):80〔%〕以上
tp ((n+1)×10〔%〕)−tp (n×10〔%〕):20〔%〕以下(n:2〜8の整数)
また、トナー供給ローラ12のアスカーF硬度を35〜65度とし、現像ローラ11に対するトナー供給ローラ12の食い込み量を0.5〜1.5〔mm〕とすることが好ましい。
さらに、弾性層62の外周面に形成される粗さの形状は、研磨によって現像ローラ11の周方向に延在する微細な溝を多数形成するよりも、型転写によって半球に近い形状の凸と凹とを形成した方が、1by1パターンのような微細なパターンを印刷する場合、感光体ドラム13に現像されるトナー像の大きさのばらつきを抑制することができる。
なお、本実施の形態においては、画像形成装置10が1台の現像装置20を有する直接転写方式のモノクロ画像を形成するプリンタである場合について説明したが、本発明は、画像形成装置10が複数台の現像装置20を有するカラー画像を形成する装置や、中間転写方式の装置である場合にも、適用可能である。
さらに、本発明は、画像形成装置10がMFP、ファクシミリ機及び複写機である場合にも適用することができる。
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。