JP6102067B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録装置に関する。
インクジェットプリンティング技術は、広幅・高速化が容易であることから、近年、印刷分野においてシェアを大きく伸ばしている。
このインクジェット印刷では、インクが乾く前に用紙を重ねたり、連続用紙であれば巻き取ったりすると、裏写りなどのトラブルが発生することから、インクの乾燥工程が必須である。一般的なインクの乾燥方法としては、例えば、温風乾燥、ラジエーター乾燥などが挙げられる。
上記のようなインクジェット印刷を可能とするインクジェット記録装置としては、例えば、エネルギー線硬化インクを吐出するためのノズルを複数個有し、記録媒体に向けてエネルギー線硬化インクを吐出するインクジェットヘッドと、記録媒体上のインクドットが形成された領域にエネルギー線(例えばレーザー光)を照射するエネルギー線照射手段と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、記録媒体の全幅に対応する長さにわたってインク吐出用の複数のノズルを配列させたノズル列を有するフルライン型のインクジェットヘッドを複数色のインクの色別に複数配置して成るインク吐出手段と、色別に設けられた各インクジェットヘッドに、それぞれ対応する色の紫外線硬化型インクを供給するインク供給手段と、線状に配列された発光素子群から成る紫外線光源を含んで構成されるとともに、色別のインクジェットヘッド間に配置され、インクジェットヘッドに対する記録媒体の相対的搬送方向の上流側にあるインクジェットヘッドから吐出されたインク液滴と相対的搬送方向の下流側にある後続のインクジェットヘッドによって吐出されるインク液滴とが記録媒体表面上で混合しない程度に、上流側のインクジェットヘッドによる着弾インク液滴を半硬化させる紫外線を照射する第1の硬化手段と、複数のインクジェットヘッドのうち最下流に配置されているヘッドの後段に配置され、記録媒体上のインク液滴を、硬化インク液滴がハンドリングによって画像劣化が起こらない程度に本硬化させる紫外線を照射する第2の硬化手段と、を備えたものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2003−326691号公報 特開2005−280346号公報
本発明は、記録媒体の乾燥ジワを抑制しつつ画像の変質を防止するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
即ち、請求項1に係る発明は、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体の搬送方向に沿って並んで配置され、着色剤及び赤外線吸収剤を含有する色別のインクを搬送された当該記録媒体上に吐出する複数のインクジェットヘッドと、
前記複数のインクジェットヘッドと同数存在し、該複数のインクジェットヘッドの各々より前記記録媒体の搬送方向下流側に配置され、当該複数のインクジェットヘッドによって前記記録媒体上に吐出された色別のインクの各々に対し赤外線レーザーを照射させる複数のレーザー照射手段と、
を備え、下記条件(1)〜(3)を全て満たインクジェット記録装置である。
(1):前記色別のインクに含有される赤外線吸収剤が、当該インクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長と同一又は近似した極大吸収波長を有するものであること
(2):(a)前記色別のインク中には、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクが存在し、(b)該インクにおいて、当該インクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長に対する赤外線吸収率が、前記記録媒体の搬送方向の上流側から下流側にかけて前記インクジェットヘッドにより吐出される順に大きくなる
(3):(a)前記複数のレーザー照射手段中には、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段が存在し、(b)該レーザー照射手段の赤外線レーザーによる照射エネルギーが、前記記録媒体の搬送方向上流側のものから下流側のものにかけて順に小さくな
請求項2に係る発明は、
前記色別のインクにおいて、該色別のインクに含有される赤外線吸収剤により生じる色にごりが小さいものほど、前記記録媒体の搬送方向の上流側にて吐出される請求項1に記載のインクジェット記録装置である。
請求項3に係る発明は、
前記赤外線レーザーが、780nm以上1100nm以下の領域に発振波長を有する請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置である。
請求項1〜3に係る発明によれば、搬送手段、複数のインクジェットヘッド、及び複数のレーザー照射手段を備え、条件(1)〜(3)の少なくとも1つを満たさない場合比較して、記録媒体の乾燥ジワを抑制しつつ画像の変質を防止するインクジェット記録装置が提供される。
本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。 化合物(1)の吸収スペクトルを示す図である。 化合物(2)の吸収スペクトルを示す図である。 化合物(1)にイエロー、マゼンタ、及びシアンの各インクに添加した場合の色にごり(無添加と添加した際との色差:ΔE)について測定結果を示す図である。 化合物(2)にイエロー、マゼンタ、及びシアンの各インクに添加した場合の色にごり(無添加と添加した際との色差:ΔE)について測定結果を示す図である。
以下、本発明に係るインクジェット記録装置の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向に沿って並んで配置され、着色剤及び赤外線吸収剤を含有する色別のインクを搬送された当該記録媒体上に吐出する複数のインクジェットヘッドと、前記複数のインクジェットヘッドと同数存在し、該複数のインクジェットヘッドの各々より前記記録媒体の搬送方向下流側に配置され、当該複数のインクジェットヘッドによって前記記録媒体上に吐出された色別のインクの各々に対し赤外線レーザーを照射させる複数のレーザー照射手段と、を備え、下記条件(1)〜(3)を満たす、又は、下記条件(1)及び(4)を満たすインクジェット記録装置である。
(1):前記色別のインクに含有される赤外線吸収剤が、当該インクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長と同一又は近似した極大吸収波長を有するものであること
(2):(a)前記色別のインク中には、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクが存在し、(b)該インクにおいて、当該インクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長に対する赤外線吸収率が、前記記録媒体の搬送方向の上流側から下流側にかけて前記インクジェットヘッドにより吐出される順に大きくなる
(3):(a)前記複数のレーザー照射手段中には、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段が存在し、(b)該レーザー照射手段の赤外線レーザーによる照射エネルギーが、前記記録媒体の搬送方向上流側のものから下流側のものにかけて順に小さくなる
(4):前記複数のレーザー照射手段中には、異なる発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段が存在する
上記のような構成を有する本実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体の乾燥ジワを抑制しつつ過加熱による画像の変質を防止する。
その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
インクジェット記録装置において、記録媒体(紙)にインクが十分にしみ込んでしまった後に乾燥すると、乾燥後はカックルと呼ばれる乾燥ジワが発生することがある。
この乾燥ジワ(カックル)を抑制するためには、インク、特にインク中の水が記録媒体にしみこむ前に乾燥する必要があり、そのための手段の1として、レーザーを用いてインク着弾直後に瞬時にインクを乾燥する方法がある。
しかしながら、上記のようなインク着弾直後に乾燥する構成においては、仮にYMCKの順にて4色で画像を構成するなら、YMCKの各色のマーキングごとにレーザーを照射・乾燥することになる。ここで、Yがマーキングされ乾燥した画像部は、インクが乾燥した状態で、M、C、Kのインクの乾燥用のレーザー光を照射されることになる。すると、インクが乾燥していないM、C、Kの画像部は、インクが乾くまでは100℃を超えないのに対して、Yの画像部は100℃を大きく超えて過剰に加熱されることになる。それは、早い順でマーキングされる色ほど顕著で、画像部の温度はY>M>C>Kとなり、仮にYMCKのレーザー光の吸収率が同じだとすると、YはKの4倍のエネルギーを吸収することになる。
その結果、乾燥ジワ(カックル)は抑制されるものの、形成された画像の一部において、変色が発生したりして変質してしまう問題があった。
対して、本実施形態に係るインクジェット記録装置では、インク着弾直後にレーザーによる乾燥を行う装置であって、前述のように、条件(1)〜(3)の全てを満たす、又は、条件(1)及び(4)を満たしていることで、記録媒体のカックル(乾燥ジワ)の発生を抑制しつつも、過加熱による画像の変質を防止することができる。
これは、条件(1)〜(3)の全てを満たす、又は、条件(1)及び(4)を満たすことで、記録媒体の乾燥ジワを抑制すると共に、各色のインクが乾燥に用いられる赤外線レーザーの吸収するエネルギーを平均化することができ、特定の色のインクのみがレーザー光を多く吸収し、過加熱されることが抑制されるためと考えられる。条件(1)〜(3)の全てを満たす、又は、条件(1)及び(4)を満たすことで得られる具体的な作用については、後述する。
以下、図面を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置100は、記録媒体Pを搬送する搬送手段10と、記録媒体P上に複数色のインクを色別に吐出する4つのインクジェットヘッド20a,20b,20c,20dと、記録媒体P上に吐出された色別のインクに対し赤外線レーザーを照射する4つのレーザー照射手段30a,30b,30c,30dと、を備えている。
搬送手段10は、無端状のベルト12がローラ14a,14bにより張架されたものである。
ローラ14a,14bにより張架されたベルト12は、少なくとも、各インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dのノズル面に対向する領域(インクの吐出領域)、及び、レーザー照射手段30a,30b,30c,30dによる赤外線レーザーの照射領域が、水平になるように構成されている。
また、ベルト12は、インクジェット記録装置100が対象とする記録媒体Pの最大幅よりも大きな幅を有するものである。
ローラ14a,14bの一方又は両方にベルト駆動用のモータ(不図示)が接続されており、そのモータによる動力によりベルト12は図1中の矢印方向に回転移動する。
上記のようなベルト12の回転移動に伴い、ベルト12上に供給された記録用紙等の記録媒体Pが図1の右側から左側へと搬送される。
4つのインクジェットヘッド20a,20b,20c,20dは、記録媒体Pの搬送方向上流側から下流側に沿って配置されており、複数色のインクを色別に収納するインクタンク22a,22b,22c,22dと、管路24a,24b,24c,24dを介して連通している。
各インクタンク22a,22b,22c,22dから供給された色別のインクは、搬送手段10により搬送された記録媒体Pに対し、各インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dからその順に吐出される。
インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dは、例えば、記録媒体Pの搬送方向上流側から、イエローインクを吐出するヘッド20aと、マゼンタインクを吐出するヘッド20b、シアンインクを供給するヘッド20c、ブラックインクを吐出するヘッド20dと、含んで構成される。
無論、各インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dから吐出されるインクの組み合わせについては、上記の構成に限られず、複数色のインクを色別に吐出させる構成であればよく、上記の4色以外に更に別の色相を有するインクを吐出するヘッドを更に有する構成(つまりヘッドが5つ以上存在する構成)であってもよいし、吐出するインクの色相や順(吐出順)が上記の構成とは異なるものであってもよい。
なお、色別のインクの吐出順としては、赤外線吸収剤の添加によってインクとして求められている色相が変化してしまう、つまり、色にごりを考慮して決定されることが好ましい。色別のインクの吐出順と色にごりとの関係については、後述する。
各インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dには、例えば、インクジェット記録装置100が対象とする記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェットヘッドが適用される。なお、従来のスキャン型インクジェットヘッドが適用されてもよい。
また、各インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dからのインクの吐出方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等の従来公知の方式が適用される。
4つのレーザー照射手段30a,30b,30c,30dは、インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dの各々に対し、記録媒体Pの搬送方向の下流側に配置されている。
各レーザー照射手段30a,30b,30c,30dは、赤外線レーザーを照射する機能を備え、レーザー制御部32によりその照射エネルギーや照射のタイミング等が制御される構成を有する。
レーザー制御部32により、前述した条件(3)を満たすように赤外線レーザーのインクに対する照射エネルギーが制御される。
また、前述した条件(4)を満たすようにする場合には、レーザー照射手段30a,30b,30c,30dのうち少なくとも1つから照射される赤外線レーザーは、その他から照射される赤外線レーザーとは異なる発振波長を有するものであることになる。
ここで、本実施形態において、異なる発振波長とは、10nm以上発振波長が異なることを意味する。
各レーザー照射手段30a,30b,30c,30dには、780nm以上1100nm以下の領域に発振波長を有する赤外線レーザーであれば制限なく適用される。
かかるレーザー照射手段には、半導体レーザー、固体レーザー、気体レーザー、色素レーザー等の赤外線レーザーが適用され、集光光学系が付属していれば高出力LEDを用いることもできる。
なお、より具体的には、発振波長900nmの半導体アレイレーザー、発振波長810nmの半導体アレイレーザー、発振波長840nmの半導体アレイレーザー、発振波長940nmの半導体アレイレーザー、発振波長980nmの半導体アレイレーザー、発振波長1060nmの半導体アレイレーザー、発振波長800nmのチタンサファイアレーザー等が適用される。
各レーザー照射手段30a,30b,30c,30dによる赤外線レーザーの照射条件は、前述した条件(3)を満たす他、インクを乾燥しうるものであれば特に制限はないが、記録媒体P上に吐出されたインクに対して満遍なくエネルギーを照射しうるようにすることが望ましい。
例えば、赤外線レーザーは、記録媒体の搬送方向に直行する方向にライン状に並んでいるものであってもよいし、記録媒体の搬送速度とレーザの出力によっては、スキャン型であってもよい。
また、赤外線レーザーの照射条件として、例えば、以下のようなものが挙げられる。
即ち、記録媒体上にライン状のビーム照射を行う場合、記録媒体の搬送方向と搬送方向に直行する方向との幅(即ち、記録媒体の長さと幅)により、このライン状の照射領域を決定しうる。具体的には、記録媒体の搬送方向に直行する方向の幅(記録媒体の幅は、紙幅もしくはインクが吐出されている領域の幅であって、搬送方向の幅(記録媒体の長さ)は搬送速度と目的の照射時間によって設定される(幅=搬送速度×照射時間)。
また、赤外線レーザーによる照射エネルギーは、インクの吐出量に応じて決定されればよい。例えば、一般的なインクの吐出量が1g/cm以上30g/cm以下の範囲にあるとするならば、インクが吸収するエネルギーで、0.3J/cm以上10J/cm以下程度となるように照射エネルギーを調整すればよく、インクのレーザー光の吸収率をAとするなら、0.3/A(J/cm)以上10/A(J/cm)以下の範囲となる。なお、かかる吸収率Aは、吐出(乾燥)される順序によって変わるが、10%以上100%以下の範囲から選択されることが好ましい。
また、記録媒体Pにおける乾燥ジワの発生を抑制する点からは、記録媒体Pへインクが着弾した後、直ぐに、各レーザー照射手段30a,30b,30c,30dによる赤外線レーザーの照射が行われることが望ましい。
例えば、インクの吐出開始後100ミリ秒以内に赤外線レーザーが照射されることが望ましい。より具体的には、記録媒体の種類によりインクが記録媒体に染み込み易さが変化することから、例えば、記録媒体がコート紙であればインクの吐出開始後100ミリ秒以内、ラフ紙であればインクの吐出開始後数ミリ秒以下に、赤外線レーザーが照射されることが好ましい。
上記のためには、レーザー照射手段30a,30b,30c,30dとインクジェットヘッド20a,20b,20c,20dとが、近接配置されることが望ましい。
また、インクジェット記録装置100とは異なり、レーザー照射手段とインクジェットヘッドとが各色毎に一体化したものであってもよいし、ミラーなどの光学系の使用により、レーザー照射部とインク着弾部とが近接するような態様であってもよい。
続いて、前述した条件(1)〜(4)について、インクジェット記録装置100に適用させた場合の具体例を示し、説明する。
まず、条件(1)について説明する。
インクジェット記録装置100において、各インクタンク22a,22b,22c,22dに収納されているインクは、前述した条件(1)を満たすものである。
即ち、例えば、インクタンク22aに収納されたインクであれば、そのインクに含有される赤外線吸収剤が、かかるインクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザー(つまり、図1に示すインクジェット記録装置100では、インクが吐出されるインクジェットヘッド20aの直近に配置されたレーザー照射手段30aにより照射される赤外線レーザー)の発振波長に同一又は近似した極大吸収波長を有するものである。
このように、各インクタンク22a,22b,22c,22dに収納されているインクのそれぞれが条件(1)を満たすことにより、含有される赤外線吸収剤が効果的に機能し、記録媒体P上に吐出された後、レーザー照射手段30a,30b,30c,30dから照射された赤外線レーザー(吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザー)を効率よく吸収しうるため、インクの乾燥が容易となる。
なお、本明細書において、波長における「同一又は近似した」とは、比較する波長の差、即ち、条件(1)においては、赤外線レーザーの発振波長と赤外線吸収剤の極大吸収波長との差が、50nm以下であることを意味する。
次に、条件(2)の(a)及び(b)について説明する。
インクジェットヘッド20a,20b,20c,20dが、例えば、記録媒体Pの搬送方向上流側から、イエローインクを吐出するヘッド20aと、マゼンタインクを吐出するヘッド20b、シアンインクを供給するヘッド20c、ブラックインクを吐出するヘッド20dと、含んで構成されている場合の条件(2)について説明する。
即ち、上記のような構成の場合、条件(2)の(a)を満たすためには、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つのインク中には、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクが存在していることが必須である。つまり、上記の4つのインク中の2色以上のインク、例えば4色全てのインクが、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクであることを意味する。
なお、この条件(2)の(a)に加え、前述した条件(1)及び条件(3)を満たすためには、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクを乾燥するための、かかるインクが吐出された後最も先んじて赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段は、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するものとなる。
その上、条件(2)の(b)では、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクにおいて、かかるインクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長に対する赤外線吸収率が、記録媒体の搬送方向上流側から下流側にかけてインクジェットヘッドにより吐出される順に大きくなる、ことを満たす。つまり、具体的に言えば、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つのインクの全てが、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクであれば、これらのインクは、かかるインクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長(前述の通り、4つ全て同一の発振波長となる)に対する赤外線吸収率が「イエロー<マゼンタ<シアン<ブラック」の関係となる。
その結果、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順でインクが吐出され、イエローインクは4回、マゼンタインクは3回、シアンインクは2回と、レーザー照射手段により赤外線レーザーが照射されることになるが、上記のように赤外線吸収率の大小関係を満たすことで、イエローインク、マゼンタインクは、及びシアンインクにおける過加熱が抑制される。
次に、条件(3)の(a)及び(b)について説明する。
インクジェット記録装置100において、条件(3)の(a)によれば、4つのレーザー照射手段30a,30b,30c,30d中には、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段が存在することが必須である。つまり、上記の4つのレーザー照射手段30a,30b,30c,30d中の2つ以上のインク照射手段(例えば4つ全てのレーザー照射手段)が、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段であることを意味する。
上記の条件(3)の(a)を満たすことで、複数のレーザー照射手段のうち同一のものを用いることができることになるため、コストや入手容易性、更には、装置設計等に優れるとの利点がある。
その上、条件(3)の(b)では、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段において、かかるレーザー照射手段の赤外線レーザーによる照射エネルギーが、記録媒体の搬送方向上流側のものから下流側のものにかけて順に小さくなる、ことを満たす。
つまり、具体的に言えば、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つのインクの各々に対して、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段を適用するのであれば、かかるレーザー照射手段の赤外線レーザーによる照射エネルギーが「イエロー>マゼンタ>シアン>ブラック」の関係となる。
この態様の場合、インクの赤外線レーザーに対する赤外線級収率がイエロー<マゼンタ<シアン<ブラックとなっていたとしても、十分な照射エネルギーを付与しうるため、インクの乾燥が可能となる。
更に、条件(4)について説明する。
インクジェット記録装置100において、条件(4)によれば、4つのレーザー照射手段30a,30b,30c,30d中には、異なる発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段が存在することが必須である。つまり、上記の4つのレーザー照射手段30a,30b,30c,30d中の少なくとも1つのインク照射手段が、その他のレーザー照射手段とは異なる発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段であることを意味する。
つまり、レーザー照射手段30a,30bに、発振波長が810nmの半導体アレイレーザーが適用され、また、レーザー照射手段30c,30dに、発振波長900nmの半導体アレイレーザーが適用される、といった態様となる。
前述したように、条件(1)を満たしている場合、レーザー照射手段30aによって照射される発振波長が810nmの赤外線レーザーによってインクタンク22a,22bに収納されたインクや(例えばイエローインク、マゼンタインク)は効果的に乾燥される。しかし、上記のように、レーザー照射手段30aとは異なる発振波長(900nm)を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段30c,30dによっては、かかるイエローインクやマゼンタインクは、赤外線吸収剤がその機能が発現され難いことから、過加熱されることがない。
このように、条件(1)及び(4)を満たすようにすることで、マゼンタインクは全く過加熱されることがなく、また、イエローインクにおいても、レーザー照射手段30c,30dにより発振波長810nmの赤外線レーザーが照射される場合と比較して、過加熱が抑制されることになる。
上記のように、810nmと900nmのような2種の発振波長を有する赤外線レーザーを適用する態様の場合、レーザー照射手段30a,30cに、発振波長が810nmの半導体アレイレーザーが適用され、また、レーザー照射手段30b,30dに、発振波長900nmの半導体アレイレーザーが適用される、といった態様としてもよい。つまり、交互に、発振波長が異なる赤外線レーザーを適用する態様である。
この交互にする態様の場合、レーザー照射手段30aにより加熱・乾燥されたインクが、次の、レーザー照射手段30bにより加熱・乾燥され難い状態となり、放熱による冷却がなされることから、過加熱の抑制には有効であることがある。
前述したインクジェット記録装置100は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示したものであって、前述の条件(1)〜(3)の全てを満たす、又は、条件(1)及び(4)を満たすものであれば、この構成に限定されるものではない。
また、インクジェット記録装置100において、搬送手段10への記録媒体Pの供給手段、各種の制御手段、装置内の環境保持手段等については、特に制限はなく、従来公知の各手段が適用される。
続いて、インクジェット記録装置100による画像形成プロセスについて説明する。
インクジェット記録装置100では、まず、回転駆動しているベルト12上に、図示されない供給手段により記録媒体Pが供給される。
続いて、供給された記録媒体P上には、所定の画像情報に基づき、インクジェットヘッド20aによりインク(例えば、イエローインク)の液滴が吐出され、かかるインクが記録媒体P上に着弾する。
そして、記録媒体P上に着弾したインクには、すぐさまレーザー照射手段30aにより赤外線レーザーが照射される。これにより、インクが速やかに乾燥することから、記録媒体Pに発生する乾燥ジワが抑制される。
上記と同様にして、インクジェットヘッド20b,20c,20dによるインクの吐出と、レーザー照射手段30b,30c,30dによる赤外線レーザーの照射と、がそれぞれ行われ、各色のインク(例えば、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク)による画像が形成される。この際にも、インクが速やかに乾燥することから、記録媒体Pに発生する乾燥ジワが抑制される。
以上のようにして、本実施形態に係るインクジェット記録装置100では、画像形成が行われる。
〔インク〕
続いて、本実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられるインクについて説明する。
かかるインクは、前述のように、条件(1)を満たすべく、赤外線吸収剤及び着色剤を含有するものであればよく、それ以外は特に限定されず、水性インク、油性インク、溶媒系インク、UV硬化型インク等、種々のインクより選択される。
中でも、本発明の効果を効率よく発現しうるものとして、水性インクが挙げられる。
(赤外線吸収剤)
本実施形態におけるインクは、赤外線吸収剤を含有する。
この赤外線吸収剤としては、本実施形態に係るインクジェット記録装置に備わる赤外線レーザーの波長に応じた赤外領域に吸収を有するものであればよく、また、インクとして求められている色相を変化させ難い、つまり、色にごりを発生しにくいものが選択される。例えば、イエローインクの場合には、黄色の色相を呈する領域に(大きな)吸収を有しない赤外線吸収剤が好適である。
本実施形態に係るインクに適用しうる赤外線吸収剤としては、従来公知の赤外線吸収剤が用いられるが、例えば、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アミニウム系色素等が挙げられる。
また、以下に示す構造の赤外線吸収剤(化合物(1)及び化合物(2))についても、好適に用いることもできる。
Figure 0006102067
Figure 0006102067
上述のような赤外線吸収剤の添加量を調整することで、インクジェット記録装置に備わる赤外線レーザーに対するインク赤外線吸収率を制御することができる。
また、前述のように、色にごりを発生しにくい赤外線吸収剤は、インク中の添加量を多くすることが可能となることから、前述した条件(2)の場合には、記録媒体の搬送方向のより下流側にてインクジェットヘッドにより吐出されるインクに対して適用することが望ましい。
前記した化合物(1)及び化合物(2)を用いた場合のインクの色にごりについて具体的に説明する。
化合物(1)は、極大吸収波長が901nmであって、可視域に吸収が少ない不可視性の高い赤外線吸収剤である。図2に、化合物(1)の吸光スペクトルを示す。
また、化合物(2)は、極大吸収波長が817nmであって、可視域に吸収が少ない不可視性の高い赤外線吸収剤である。図3に、化合物(2)の吸光スペクトルを示す。
これらの化合物(1)及び(2)について、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各インクに添加した場合の色にごり(無添加と添加した際との色差:ΔE)について測定した。結果を図4(a)〜(c)及び図5(a)〜(c)に示す。
なお、図4(a)〜(c)には、波長900nmの赤外線レーザー光の吸収率も合わせて記載した。また、図5(a)〜(c)には、波長810nmの赤外線レーザー光の吸収率も合わせて記載した。
ここで用いたイエロー、マゼンタ、及びシアンの各インクは以下の通りである。
イエローインク:ピグメントイエロー74:6.5質量%+分散剤(Triton-X)0.5質量%+水の水系インク
マゼンタインク:ピグメントレッド122:4.5質量%+ピグメントレッド238:4.5質量%+分散剤(Triton-X)0.5質量%+水の水系インク
シアンインク:ピグメントブルー15:3:5.5%+分散剤(Triton-X)0.5質量%+水の水系インク
上記の各水系インクは、吐出量(塗布量)5g/cmで記録媒体上に付与した。
また、色差:ΔE及び赤外線レーザー光の吸収率の測定方法は、以下の通りである。
色差:ΔEは、赤外線吸収剤が無添加のインク、添加されているインクをそれぞれ前述した塗布量で吐出させ、自然乾燥した後の乾燥サンプルについて、X−rite(939JP)でLを測定し、以下の式により算出する。
式・・・〔(L1−L2+(a1−a2+(c1−c20.5
〔上記式中、無添加のインクの値がL1,a1,b1であり、添加されているインクの値がL2,a2,b2である。〕
また、赤外線レーザー光の吸収率は、上記の乾燥サンプルの反射スペクトルを測定することで求められる。
図4(a)〜(c)に明らかなように、化合物(1)の場合、同一添加量の場合の色にごりは、イエローインクが最も強く発現し、マゼンタインク及びシアンインクは同程度である。
一般的に、イエローインクは最も明るい(L値)を有するため、赤外線吸収剤が可視域に少しでも吸収を有すると、他の色相のインクよりも色にごりが目立ち易い。図4(a)〜(c)では、このような状況を示している。
そのため、イエローインクは赤外線吸収剤の添加量を少なくし、色にごりを生じにくくすることが望ましい。そのため、前述したインクジェット記録装置100の場合には、吐出順が最も早く、高い赤外線級収率が求められない、インクジェットヘッド20aにより吐出されるインクとしてイエローインクが用いられることが望ましい。
また、図5(a)〜(c)に明らかなように、化合物(2)の場合、同一添加量の場合の色にごりは、シアンインクが最も強く発現し、マゼンタインク、イエローインクとその程度が低くなる。
上記のような赤外線吸収剤を用いた場合には、そのため、前述したインクジェット記録装置100の場合には、吐出順が最も早く、高い赤外線級収率が求められない、インクジェットヘッド20aにより吐出されるインクとしてシアンインクが用いられることが望ましい。
なお、ブラックインクは着色剤兼赤外線吸収剤としてカーボン顔料を用いることができ、かかるカーボン顔料がほとんどの赤外領域に100%に近い吸収を有し、色にごりについても考慮する必要がないことから、前述したインクジェット記録装置100の場合には、吐出順が最も遅く、高い赤外線級収率が求められる、インクジェットヘッド20dにより吐出されるインクとして用いられることが望ましい。
このように、赤外線吸収剤の添加による色にごりの程度によって、インクジェット記録装置における各色のインクの吐出順が決定されることが好ましい。
赤外線吸収剤の添加量(含有量)としては、所望の赤外線吸収率と、色にごりの程度、装置によるインク吐出量等に応じて適宜決定されればよい。一般的には、インク全体に対して、0.01質量%以上10質量%以下であり、0.05質量%以上5質量%以下が望ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより望ましい。
なお、インクの赤外線レーザーに対する赤外線吸収率は、測定対象であるインクの乾燥サンプルを、前述した、赤外線レーザー光の吸収率と同様の方法(即ち、反射スペクトルを測定すること)で求められる。
(着色剤)
本実施形態におけるインクは、着色剤を含有する。
この着色剤としては、各種のインクに適用される顔料、染料が用いられるが、耐光性、耐熱性等の観点からは、顔料が好適である。
具体的な顔料としては、例えば、シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同23、同60、同65、同73、同83、同180、C.I.バットシアン1、同3、同20等や、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーの部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCのシアン顔料が挙げられる。マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同48、同49、同50、同51、同52、同53、同54、同55、同57、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同163、同184、同202、同206、同207、同209等、ピグメントバイオレット19のマゼンタ顔料が挙げられる。
また、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40等のマゼンタ染料等、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ロータミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなども用いられる。イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー2、同3、同15、同16、同17、同97、同180、同185、同139等のイエロー顔料が挙げられる。
なお、ブラックインクには、カーボン顔料を用いられるが、このカーボン顔料は優れた赤外線吸収能を有しているため、このカーボン顔料とは別に赤外線吸収剤を添加する必要がない。このような場合には、カーボン顔料は着色剤と赤外線吸収剤を兼ねた成分となる。
着色剤の含有量としては、インクの種類に応じて決定されるが、一般的には、インク全体に対して、0.1質量%以上30質量%以下であり、0.5質量%以上20質量%以下が望ましく、1質量%以上10質量%以下がより望ましい。
(その他の成分)
本実施形態におけるインクは、前述した赤外線吸収剤及び着色剤以外に、かかる着色剤を分散するための分散剤や、各種のインクに対応した溶媒(水系インクなら水)、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分については、従来公知の各種成分を、公知の添加割合にて用いることができる。
以上のようなインクを本実施形態に係るインクジェット記録装置は適用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
[実施例1、比較例1]
(インクの作製)
(高分子の調製)
反応容器に、メチルエチルケトン120部を入れ、窒素雰囲気下攪拌しながら還流するまで昇温した。次いで、メチルメタクリレート66.2部、2−フェノキシエチルアクリレート72.0部、アクリル酸8.8部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.7部、メチルエチルケトン11部からなる混合溶液を2時間かけて徐々に滴下した。
滴下終了から2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部をメチルエチルケトン2部に溶解した溶液を加え、更に還流状態で2時間撹拌した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2部をメチルエチルケトン2部に溶解した溶液を加え、更に還流状態で3時間撹拌した後、メチルエチルケトン55部を添加し、高分子B−01の溶液を得た。固形分は44%、原料仕込みより算出した酸価は47であった。また、ガラス転移温度は31℃であった。
(赤外吸収剤分散液の調製)
得られた高分子の溶液を固形分換算で5.0g、赤外吸収剤として前記化合物(2)で表されるスクアリリウム色素10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が10%になるまで濃縮し、赤外吸収剤分散液A1を調製した。得られた赤外吸収剤分散液A1の赤外線吸収剤の平均粒径は67nmであった。
(インク組成物の調製)
得られた赤外吸収剤分散液A1を用いて、下記組成になるように各添加剤を添加した後、調液後5μmフィルターで粗大粒子を除去し、インク組成物を調製した。
−組成−
・赤外吸収剤分散液A1: それぞれ表1の濃度にするための必要量
・グリセリン: 20部
・ジエチレングリコール: 10部
・オルフィンE1010(日信化学): 1.5部
・カラー顔料分散液:各色、発色に必要量
・イオン交換水: インク組成物の合計が100部となるように添加
(インクジェット記録装置)
前述のようにして得られた4色のインクを用いたインクジェット記録装置を準備した。
より具体的には、図1に示すインクジェット装置100中のインクタンク22aにイエローインクを、インクタンク22bにマゼンタインクを、インクタンク22cにシアンインクを、インクタンク22dにブラックインクを収納した。
また、図1に示すインクジェット装置100中のレーザー照射手段30a,30b,30c,30dは、発振波長900nmの半導体アレイレーザーを備えたものである。
(画像形成)
上記のようなインクジェット記録装置を用い、王子製紙社製 OKトップコート紙(坪量127g/cm)(紙)に対し、以下のようにして画像を形成した。
まず、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクを、一色当たり5ml/cmで、50(mm)×50(mm)の領域に吐出させた。
吐出させたインクに対し、下記表1に記載の照射エネルギーとなるように、1ms以上100ms以下の範囲で赤外線レーザーを照射した。
上記のようにして画像形成を行った際の各条件(赤外線吸収剤の極大吸収波長、赤外線吸収率、及び添加濃度、各インクにおける色にごり(ΔE)、赤外線レーザーの発振波長、及び照射強度(照射エネルギー))について、下記表1に示す。
また、上記のようにして画像形成を行った際の、各インクの吸収エネルギーについて、下記表1に併記した。
Figure 0006102067
上記表1に示すように、比較例1のように、イエロー、マゼンタ、シアンの全てのインクに等量の赤外線吸収剤(0.35%)を添加し、同一の照射強度(照射エネルギー:1.6J/cm)にて赤外線レーザーを照射すると、本来は1.5J/cmの照射エネルギーさえあればインク中の水分が乾くところに、イエローインクのみが塗布されているエリアは5.9J/cm、マゼンタインクであれば4.4J/cmものエネルギーを吸収してしまうことが分かる。これにより、記録用紙における乾燥ジワを抑制されるものの、イエローインクやマゼンタインクは過加熱されていることが分かる。
このイエローインクについて観察したところ、着色剤の吹き飛びによる画像欠陥や紙裏面の変色が見られ、画質の劣化も見られた。
また、比較例1では、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクに赤外線吸収剤を多量に添加していることで、色にごり(ΔE)が1.6〜3.9と大きな値となっている。
対して、実施例1では、イエローインクの吸収エネルギーが3.7J/cm、マゼンタインクであれば3.8J/cmとなっており、比較例1に比べてイエローインク及びマゼンタインクが吸収するエネルギーが大幅に削減されている。
このイエローインクについて観察したところ、坪量の小さい紙や耐熱性の低い紙では、わずかな裏面の変色が見られるものの、着色剤の吹き飛びによる画像欠陥がなく、画質の劣化は確認されなかった。
更には、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクにおける色にごり(ΔE)も0.7〜1.5と低減されていることも分かった。
[実施例2、実施例3]
(インクの作製)
(高分子の調製)
反応容器に、メチルエチルケトン120部を入れ、窒素雰囲気下攪拌しながら還流するまで昇温した。次いで、メチルメタクリレート66.2部、2−フェノキシエチルアクリレート72.0部、アクリル酸8.8部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.7部、メチルエチルケトン11部からなる混合溶液を2時間かけて徐々に滴下した。
滴下終了から2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部をメチルエチルケトン2部に溶解した溶液を加え、更に還流状態で2時間撹拌した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2部をメチルエチルケトン2部に溶解した溶液を加え、更に還流状態で3時間撹拌した後、メチルエチルケトン55部を添加し、高分子B−01の溶液を得た。固形分は44%、原料仕込みより算出した酸価は47であった。また、ガラス転移温度は31℃であった。
(赤外吸収剤分散液の調製)
得られた高分子の溶液を固形分換算で5.0g、赤外吸収剤として前記化合物(1)で表されるスクアリリウム色素10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が10%になるまで濃縮し、赤外吸収剤分散液A1を調製した。得られた赤外吸収剤分散液B1の赤外線吸収剤の平均粒径は50nmであった。
得られた高分子の溶液を固形分換算で5.0g、赤外吸収剤として前記化合物(2)で表されるスクアリリウム色素10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が10%になるまで濃縮し、赤外吸収剤分散液A1を調製した。得られた赤外吸収剤分散液B2の赤外線吸収剤の平均粒径は67nmであった。
(インク組成物の調製)
得られた赤外吸収剤分散液A1を用いて、下記組成になるように各添加剤を添加した後、調液後5μmフィルターで粗大粒子を除去し、インク組成物を調製した。
−組成−
・赤外吸収剤分散液B1: それぞれ表2の濃度にするための必要量
・赤外吸収剤分散液B2: それぞれ表2の濃度にするための必要量
・グリセリン: 20部
・ジエチレングリコール: 10部
・オルフィンE1010(日信化学): 1.5部
・カラー顔料分散液:各色、発色に必要量
・イオン交換水: インク組成物の合計が100部となるように添加
(インクジェット記録装置)
前述のようにして得られた4色のインクを用いたインクジェット記録装置を準備した。
より具体的には、図1に示すインクジェット装置100中のインクタンク22aにイエローインクを、インクタンク22bにマゼンタインクを、インクタンク22cにシアンインクを、インクタンク22dにブラックインクを収納した。
また、図1に示すインクジェット装置100中のレーザー照射手段30a,30bは、発振波長810nmの半導体アレイレーザーを備え、レーザー照射手段30c,30dは、発振波長900nmの半導体アレイレーザーを備えたものである。
(画像形成)
上記のようなインクジェット記録装置を用い、王子製紙社製 OKトップコート紙(坪量127g/cm2、73g/cm2)(紙)に対し、以下のようにして画像を形成した。
まず、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクを、一色当たり5ml/cmで、50(mm)×50(mm)の領域に吐出させた。
吐出させたインクに対し、下記表2に記載の照射エネルギーとなるように、1ms以上100ms以下の範囲で赤外線レーザーを照射した。
上記のようにして画像形成を行った際の各条件(赤外線吸収剤の極大吸収波長、赤外線吸収率、及び添加濃度、各インクにおける色にごり(ΔE)、赤外線レーザーの発振波長、及び照射強度(照射エネルギー))について、下記表2に示す。
また、上記のようにして画像形成を行った際の、各インクの吸収エネルギーについて、下記表2に併記した。
Figure 0006102067
上記表2に示すように、実施例3の場合、イエローインクでは3.0J/cm、シアンインクでは2.9J/cmものエネルギーを吸収してしまうことが分かる。これにより、記録用紙における乾燥ジワを抑制されるものの、イエローインクやシアンインクは過加熱されていることが分かる。
このイエローインクについて観察したところ、紙裏面の変色が見られた。
上記表2に示すように、実施例3の場合、イエローインクでは3.0J/cm、シアンインクでは2.9J/cm程度の吸収エネルギーであることが分かる。
これらの吸収エネルギーは、前述した比較例1におけるイエローインクやマゼンタインクの吸収エネルギーよりも低く、過加熱が抑えられていることがわかる。
このイエローインクについて観察したところ、裏面の変色が発生しやすい薄い紙(坪量73g/cm2)でも裏面の変色は発生しなかった。
また、実施例2では、イエローインク及びシアンインクの吸収エネルギーがいずれも2.3J/cmとなっており、実施例3に比べてイエローインク及びシアンインクが吸収するエネルギーが大幅に削減されている。
このイエローインクについて観察したところ、紙裏面の変色もなく、画質の劣化は確認されなかった。
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置では、記録媒体の乾燥ジワを抑制すると共に、過加熱による画像の変質をも防止しうることが分かる。
10 搬送手段
20a,20b,20c,20d インクジェットヘッド
30a,30b,30c,30d レーザー照射手段
100 インクジェット記録装置

Claims (3)

  1. 記録媒体を搬送する搬送手段と、
    前記記録媒体の搬送方向に沿って並んで配置され、着色剤及び赤外線吸収剤を含有する色別のインクを搬送された当該記録媒体上に吐出する複数のインクジェットヘッドと、
    前記複数のインクジェットヘッドと同数存在し、該複数のインクジェットヘッドの各々より前記記録媒体の搬送方向下流側に配置され、当該複数のインクジェットヘッドによって前記記録媒体上に吐出された色別のインクの各々に対し赤外線レーザーを照射させる複数のレーザー照射手段と、
    を備え、下記条件(1)〜(3)を全て満たインクジェット記録装置。
    (1):前記色別のインクに含有される赤外線吸収剤が、当該インクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長と同一又は近似した極大吸収波長を有するものであること
    (2):(a)前記色別のインク中には、同一又は近似した極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するインクが存在し、(b)該インクにおいて、当該インクが吐出された後最も先んじて照射される赤外線レーザーの発振波長に対する赤外線吸収率が、前記記録媒体の搬送方向の上流側から下流側にかけて前記インクジェットヘッドにより吐出される順に大きくなる
    (3):(a)前記複数のレーザー照射手段中には、同一の発振波長を有する赤外線レーザーを照射するレーザー照射手段が存在し、(b)該レーザー照射手段の赤外線レーザーによる照射エネルギーが、前記記録媒体の搬送方向上流側のものから下流側のものにかけて順に小さくな
  2. 前記色別のインクにおいて、該色別のインクに含有される赤外線吸収剤により生じる色にごりが小さいものほど、前記記録媒体の搬送方向の上流側にて吐出される請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記赤外線レーザーが、780nm以上1100nm以下の領域に発振波長を有する請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
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