以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の概略側面断面図である。図2は、インクジェットプリンター10の概略上面図である。
図1および図2に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印11で示す方向に延在するガイドレール21と、矢印11で示す方向に移動可能にガイドレール21に支持されているキャリッジ22と、記録媒体90に向けてインク10aを吐出するインクジェットヘッド25を備えていてキャリッジ22に搭載されているインクジェットヘッドユニット23とを備えている。
記録媒体90は、紙、布、多孔質メディア、Tシャツなどの縫製品など、インク10aが浸透する浸透性媒体であっても良い。また、記録媒体90は、PET(ポリエチレンテレフタラート)などのポリエステルやPC(ポリカーボネート)などのプラスチック、金属、ガラス、プラスチックフィルム、塩ビシートなど、インク10aが浸透しない非浸透性媒体であっても良い。また、記録媒体90は、糊剤などの滲み防止機能を持つ前処理剤をインク10aの受像層としてコートした布などの記録媒体であっても良いし、インク10aの受像層を備えていない記録媒体であっても良い。また、記録媒体90は、立体物に転写するなど、他の記録媒体に転写するための記録媒体であっても良い。
インク10aは、例えば、水、溶剤などの溶媒と、顔料、染料などの色材とを備えている。インク10aに含まれる色材は、顔料のみであっても良いし、染料のみであっても良いし、顔料および染料を混合したものであっても良い。インク10aは、例えば全体重量の50重量%以上が溶媒成分であり、主成分である溶媒の蒸発によって乾燥定着する蒸発乾燥型のインクである。インク10aとしては、水性顔料インク、水性染料インク、水性UVインク、溶剤希釈UVインク(SUVインク)、ラテックスインク、顔料を内包するなどした樹脂粒子の溶解型インク、顔料を内包するなどした樹脂粒子の分散型インクなど、様々なインクが採用されることが可能である。
インク10aは、赤外線26aを吸収する赤外線吸収剤を備えている。例えば、インク10a中の赤外線吸収剤は、フタロシアニン系、オニウム系、アントラキノン系、ジイオニューム塩系、ポリメタン系、ペリミジン系スクアリリウム、ナフタロシアニン系またはスクアリリウム系の何れかであって、後述の赤外線照射装置26の発光波長に相当する赤外波長に選択的に大きな吸収を持つ機能性色材である。インク10a中の赤外線吸収剤は、溶媒と、溶媒中のラテックス樹脂やバインダー樹脂などのインク10aの構成成分との何れかの中に、溶解されて添加されているか、固形物として分散して添加されている。
なお、インク10a中の赤外線吸収剤は、インク10aの印刷色に影響しないように、可視光域には強い吸収を持たない、すなわち、可視光でほぼ無色透明であることが好ましい。しかしながら、インク10aの印刷色が例えばブラックやブルーなどの濃色である場合には、インク10a中の赤外線吸収剤に可視光で色が多少付いていたとしても、インク10aの印刷色に大きく影響しない。したがって、インク10a中の赤外線吸収剤は、インク10aの印刷色が濃色である場合には、アンチモンドープ酸化錫など、可視光域の光も吸収する色材であっても良いし、可視光域には強い吸収を持たない色材と、可視光域の光も吸収する色材とを混在させたものであっても良い。
また、インク10a中の赤外線吸収剤は、有機色材と、無機色材とを混在させたものであっても良い。
インクジェットヘッドユニット23は、キャリッジ22に支持されている支持部材24と、支持部材24に支持されているインクジェットヘッド25とを備えている。インクジェットヘッドユニット23は、図2に示す例ではインクジェットヘッド25を4つ備えているが、インクジェットヘッド25を1つのみ備えていても良いし、4つ以外の個数のインクジェットヘッド25を備えていても良い。インクジェットヘッドユニット23が複数のインクジェットヘッド25を備えている場合、インクジェットヘッドユニット23に備えられている複数のインクジェットヘッド25は、矢印11に示す方向に並んで配置されている。
インクジェットヘッド25は、インク10aを吐出するためのノズル(図示していない。)が複数並んだノズル列(図示していない。)が形成されているノズル面25aを備えている。インクジェットヘッド25のノズル列は、矢印11で示す方向に直交する矢印12で示す方向に延在している。インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出方式は、任意の方式で良い。例えば、インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出方式は、ピエゾ方式であっても良いし、サーマル方式(バブルジェット(登録商標)方式)であっても良い。インクジェットヘッド25によって吐出されるインク10aの色は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのプロセスカラーの何れかであっても良いし、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、ホワイト、クリアー、パール、メタリックなどの特色の何れかであっても良い。インクジェットヘッドユニット23が複数のインクジェットヘッド25を備えている場合、インクジェットヘッドユニット23に備えられている複数のインクジェットヘッド25のそれぞれは、互いに異なる色のインク10aを吐出しても良い。
インクジェットプリンター10は、キャリッジ22に搭載されていて記録媒体90に向けて赤外線26aを照射する赤外線照射装置26を備えている。インクジェットプリンター10は、キャリッジ22の移動方向が矢印11で示す方向のうち、矢印11aで示す方向と、矢印11aで示す方向の反対である矢印11bで示す方向との何れであってもインクジェットヘッド25がインク10aを吐出するので、矢印11で示す方向において、インクジェットヘッド25を挟む位置に配置されている2つの赤外線照射装置26を備えている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、キャリッジ22の移動方向が矢印11aで示す方向と、矢印11aで示す方向とのうち何れか一方の場合のみにインクジェットヘッド25がインク10aを吐出するとき、インクジェットヘッド25がインク10aを吐出する場合のキャリッジ22の移動方向において、インクジェットヘッド25の上流側にのみ赤外線照射装置26を備えていれば良い。例えば、インクジェットプリンター10は、キャリッジ22の矢印11aで示す方向に移動する場合のみにインクジェットヘッド25がインク10aを吐出するとき、インクジェットヘッド25に対して矢印11bで示す方向側の赤外線照射装置26のみを備えていれば良い。
赤外線照射装置26は、記録媒体90に付着されたインク10aに赤外線26aを照射することによって、インク10a中の赤外線吸収剤に熱を発生させ、この熱によってインク10aの溶媒を蒸発させて、インク10aを乾燥定着させるためのものである。更に、赤外線照射装置26は、記録媒体90が布である場合、インク10a中の赤外線吸収剤に発生させる熱を、記録媒体90に付着されたインク10aの乾燥以外にも利用することができる。例えば、赤外線照射装置26は、記録媒体90が布であって、顔料と、この顔料を記録媒体90に接着させるためのバインダー樹脂とをインク10aが備えている場合、インク10a中の赤外線吸収剤に発生させる熱をインク10a中のバインダー樹脂の融解にも利用することができる。また、赤外線照射装置26は、記録媒体90が布であって、インク10aが染料を備えている場合、インク10a中の赤外線吸収剤に発生させる熱をインク10a中の染料の発色にも利用することができる。
赤外線照射装置26は、赤外線26aの照射によってインクジェットヘッド25のノズル面25aやノズル内のインク10aを加熱することが無いように、インクジェットヘッド25の方向への赤外線26aの照射強度が十分に小さくなるように指向性を有していることが好ましい。
赤外線照射装置26は、赤外線26aの照射の有無を切り替えるパルス発光を高速で実行可能なデバイスである。赤外線照射装置26は、例えば、キセノンフラッシュランプや赤外線LED(Light Emitting Diode)を使用して実現可能である。キセノンフラッシュランプは、赤外線LEDと比較して、赤外線26aの照射範囲の延在方向が長い赤外線照射装置26を容易に実現することができる。赤外線LEDは、赤外線26aの照射の指向性が高く照射範囲が絞り易いので、キセノンフラッシュランプと比較して、後述する周期的な照射を容易に実現することができる。また、赤外線LEDは、高出力のLEDが容易に入手可能であるので、キセノンフラッシュランプと比較して、高出力の赤外線照射装置26を容易に実現することができる。例えば、近赤外線の範囲、例えば700nm〜1000nmの範囲に強い発光を示すキセノンフラッシュランプや、近赤外線LEDを使用して赤外線照射装置26を実現した場合、インク10a中の上述した赤外線吸収剤は、赤外線26aとしての近赤外線を吸収する近赤外線吸収剤であることが好ましい。近赤外線について説明したが、中赤外線や、遠赤外線など、近赤外線以外の赤外線26aについても、赤外線照射装置26による赤外線26aの発光波長と、インク10a中の赤外線吸収剤による赤外線の吸収帯とは、互いに重複している必要がある。
なお、赤外線26aは、遠赤外線の場合、波長が長いので、近赤外線の場合と比較して、インク10aの中まで届き難い。したがって、赤外線26aは、遠赤外線の場合、照射強度を強くしたり、照射時間を長くしたりしなければならず、効率が悪い。一方、赤外線26aは、近赤外線の場合、波長が短いので、遠赤外線の場合と比較して、インク10aの中まで届き易く、インク10aを効率的に乾燥させ易い。しかしながら、赤外線26aは、近赤外線の場合、可視光の領域に近いので、インク10a中の赤外線吸収剤に色が付き易く、インク10aの印刷色の発色が悪く成り易い。
矢印12で示す方向における位置において、赤外線照射装置26による赤外線26aの照射範囲は、インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出範囲を含んでいる。なお、矢印12で示す方向における位置において、赤外線照射装置26による赤外線26aの照射範囲は、図2に示すように、インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出範囲に対して矢印12aで示す方向に存在している部分26bを備えていても良い。
記録媒体90に付着されたインク10aに対して赤外線照射装置26によって照射される赤外線26aは、記録媒体90にインク10aによって形成される画像を高品質にするために、同一パス内、すなわち、矢印11aで示す方向または矢印11bで示す方向におけるインクジェットヘッド25の1回分の移動内において、少なくともインクジェットヘッド25によるインク10aの吐出範囲においては、矢印12で示す方向に照射強度が均一であることが好ましい。
図3は、水の飽和蒸気圧の温度変化を示す図である。
図3に示すように、水の飽和蒸気圧の増加率は、温度の増加率と比較して大きい。ここで、水の蒸発速度は、水の飽和蒸気圧と、この水に接している気相の蒸気圧との差に比例する。すなわち、水の蒸発速度の増加率は、温度の増加率と比較して大きい。したがって、インク10aの溶媒が水である場合、記録媒体90に付着させられたインク10aは、温度が上昇させられるほど、溶媒の蒸発速度、すなわち、乾燥速度が飛躍的に向上する。なお、インク10aの溶媒が水である場合について説明したが、インク10aの溶媒が溶剤など、水以外の物質である場合も同様に、記録媒体90に付着させられたインク10aは、温度が上昇させられるほど、乾燥速度が飛躍的に向上する。
赤外線照射装置26による赤外線26aの照射強度が小さいと、赤外線照射装置26によって照射された赤外線26aによってインク10aにおいて発生した熱が記録媒体90を通して逃げるので、記録媒体90に付着されたインク10aの温度は上昇し難い。したがって、記録媒体90に付着されたインク10aの加熱のために、赤外線照射装置26は、例えば、赤外線26aの照射強度が少なくとも0.3W/cm2以上であるものが好ましい。ここで、記録媒体90を通して逃げる熱の伝達速度は、記録媒体90の熱時定数τCで決まる。したがって、記録媒体90の熱時定数τCより短い時間に赤外線照射装置26によって強い赤外線26aをインク10aに照射することによって、低エネルギーで効率良くインク10aのみを加熱することができる。なお、熱時定数τCは、例えば、1mm厚のポリ塩化ビニルの場合、約10秒である。熱時定数τCは、次の式の通り、記録媒体の熱容量と、記録媒体の熱抵抗とで決まる。
τC=熱容量×熱抵抗
以下、記録媒体90に付着されたインク10aの加熱に必要なエネルギーと、記録媒体90を通して逃げる熱のエネルギーとの具体例について説明する。
まず、記録媒体90に付着されたインク10aの加熱に必要なエネルギーの具体例について説明する。記録媒体90に付着されたインク10aのうち1cm2の面積の厚みD(cm)の層(以下「対象インク層」と言う。)の温度を100℃上昇させるために必要なエネルギーEiは、対象インク層による赤外線26aの吸収率をα、対象インク層の比熱を4.2(Joule/gr)とすると、次の式で求まる。
α×Ei=100×D×4.2
したがって、対象インク層の厚みDが0.002cm、αが1である場合、Eiは、約0.83(Joule/cm2)となる。なお、加熱時間が1秒、0.1秒の場合に必要な加熱強度は、それぞれ、0.83W、8.3Wである。
次に、記録媒体90を通して逃げる熱のエネルギーの具体例について説明する。記録媒体90の熱伝導率を0.25(W/mk)、記録媒体90の表裏の温度差を100℃、記録媒体90の厚みを1mmとすると、1cm2の面積の記録媒体90を通して逃げるエネルギーElは、時間をT(sec)とすると、次の式で求まる。
El=(0.25×100×T×0.0001÷0.001)×1
したがって、時間が1秒、0.1秒の場合に記録媒体90を通して逃げる熱のエネルギーは、それぞれ、2.5(Joule/cm2)、0.25(Joule/cm2)となる。
以上のことから、0.83Wで1秒間ゆっくり加熱した場合、対象インク層の加熱に必要なエネルギー、すなわち、対象インク層での発生エネルギーEiの約3倍ものエネルギーElが記録媒体90を通して逃げることが分かる。一方、8.3Wで0.1秒間、すなわち、瞬間的に加熱した場合、対象インク層での発生エネルギーEiの僅か約3分の1のエネルギーElのみが記録媒体90を通して逃げるため、対象インク層の温度が効率的に上昇することが分かる。したがって、記録媒体90に付着されたインク10aを赤外線照射装置26によって照射される赤外線26aによって効率的に加熱するためには、瞬間的、すなわち、記録媒体90の熱時定数より十分短い時間で、強い赤外線26aを照射することが極めて有効である。
図4(a)は、キセノンフラッシュランプ26cを使用して実現される赤外線照射装置26の一例の断面図である。図4(b)は、キセノンフラッシュランプ26cを使用して実現される赤外線照射装置26の、図4(a)に示す例とは異なる一例の断面図である。図4(c)は、キセノンフラッシュランプ26cを使用して実現される赤外線照射装置26の、図4(a)および図4(b)に示す例とは異なる一例の断面図である。図4(d)は、キセノンフラッシュランプ26cを使用して実現される赤外線照射装置26の、図4(a)〜図4(c)に示す例とは異なる一例の断面図である。
図4に示す赤外線照射装置26は、矢印12(図1参照。)で示す方向に延在するキセノンフラッシュランプ26cと、キセノンフラッシュランプ26cの周囲に配置されてキセノンフラッシュランプ26cによって照射された赤外線26aを記録媒体90側に反射するための反射板筐体26dとを備えている。反射板筐体26dの断面が台形である図4(a)に示す例と、反射板筐体26dの断面が方形である図4(b)に示す例とは、反射板筐体26dに曲面が存在しないので、製造が容易である。図4(a)に示す例と、反射板筐体26dの断面が半楕円形である図4(c)に示す例とは、反射板筐体26dに互いに向かい合っている平行な壁が存在しないので、キセノンフラッシュランプ26cによって照射された赤外線26aによる迷光が少ない。したがって、製造の容易さと、迷光の少なさとの観点からは、図4(a)〜(d)に示す例のうち、反射板筐体26dの断面が円形および方形を組み合わせた形状である図4(d)に示す例が最も好ましくなく、図4(a)に示す例が最も好ましい。
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド25に対してインクジェットヘッド25によるインク10aの吐出方向(矢印11で示す方向および矢印12で示す方向の両方に直交する矢印13で示す方向)側に配置されていて、記録媒体90を支持するプリントプラテン31と、プリントプラテン31に対して記録媒体90の搬送方向(矢印12で示す方向のうち矢印12aで示す方向)側とは反対方向に配置されていて、記録媒体90を支持するプリプラテン32と、プリントプラテン31に対して記録媒体90の搬送方向(矢印12aで示す方向)側に配置されていて、記録媒体90を支持するアフタープラテン33とを備えている。
インクジェットプリンター10は、プリントプラテン31に対してプリントプラテン31が記録媒体90を支持する側とは反対側に配置されていて、記録媒体90のうちプリントプラテン31に支持されている部分のインク10aを加熱するための電熱ヒーターであるプリントヒーター34と、プリプラテン32に対してプリプラテン32が記録媒体90を支持する側とは反対側に配置されていて、記録媒体90のうちプリプラテン32に支持されている部分のインク10aを加熱するための電熱ヒーターであるプリヒーター35と、アフタープラテン33に対してアフタープラテン33が記録媒体90を支持する側とは反対側に配置されていて、記録媒体90のうちアフタープラテン33に支持されている部分のインク10aを加熱するための電熱ヒーターであるアフターヒーター36とを備えている。
なお、インクジェットプリンター10は、記録媒体90のうちアフタープラテン33に支持されている部分のインク10aを加熱するためのデバイスとして、温風によって乾燥させるデバイスや、赤外線ヒーターなどのデバイスを、アフターヒーター36に追加して、または、アフターヒーター36に代えて、備えても良い。記録媒体90のうちアフタープラテン33に支持されている部分のインク10aを加熱するためのデバイスについて説明したが、記録媒体90のうちプリプラテン32に支持されている部分のインク10aを加熱するためのデバイスや、記録媒体90のうちプリントプラテン31に支持されている部分のインク10aを加熱するためのデバイスについても同様である。
図5は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
図5に示すように、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド25に対して記録媒体90を矢印12aで示す方向、すなわち、副走査方向に搬送する媒体搬送装置41と、矢印11で示す方向、すなわち、主走査方向にキャリッジ22を移動させるキャリッジ移動装置42と、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介さずに有線または無線で直接に、または、ネットワークを介して、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部43と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部44とを備えている。
制御部44は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行するようになっている。
制御部44は、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、インクジェットヘッド25にインク10aを記録媒体90に向けて吐出させるインク吐出手段44a、記録媒体90に付着したインク10aに向けて赤外線照射装置26に赤外線26aを照射させる赤外線照射手段44b、および、記録媒体90に対して、記録媒体90におけるインクジェットヘッド25によるインク10aの吐出範囲を相対移動させる相対移動手段44cとして機能する。
次に、記録媒体90が浸透性媒体である場合のインクジェットプリンター10の動作について説明する。
図6は、記録媒体90が浸透性媒体である場合に印刷を実行しているときのインクジェットプリンター10の一部の正面断面図である。図7は、図6に示すインクジェットプリンター10の一部の側面断面図である。なお、図6に示す状況は、キャリッジ22が矢印11bで示す方向に移動しながらインクジェットヘッド25が記録媒体90に向けてインク10aを吐出している状況である。
図6および図7に示すように、制御部44は、通信部43を介して入力された印刷データに基づいてインクジェットヘッド25、媒体搬送装置41およびキャリッジ移動装置42を駆動する。具体的には、相対移動手段44cは、キャリッジ移動装置42によって主走査方向にキャリッジ22を移動させる。そして、インク吐出手段44aは、キャリッジ移動装置42によって主走査方向にキャリッジ22が移動させられている場合に、インクジェットヘッド25によって記録媒体90に向けてインク10aを吐出する。そして、相対移動手段44cは、主走査方向における印刷が終わる度に、媒体搬送装置41によってインクジェットヘッド25に対する副走査方向における記録媒体90の位置を変更する。インク吐出手段44aおよび相対移動手段44cは、以上の処理を繰り返すことによって、記録媒体90に対して印刷データに基づいた画像をインク10aによって形成する。
また、制御部44は、記録媒体90に対して印刷データに基づいた画像をインク10aによって形成する場合、プリントヒーター34を加熱させる。したがって、インク10aは、記録媒体90に付着した時点で、プリントヒーター34によって例えば40℃〜60℃に加熱される。この加熱によって、インク10aは、溶媒が少し蒸発することによって少し乾燥するので、記録媒体90に対する滲みが少し抑えられる。しかしながら、記録媒体90に対するインク10aの滲みが完全に抑えられるわけではないので、インク10aは、記録媒体90の表面で滲むだけでなく、時間の経過に応じて記録媒体90の中に徐々に深く浸み込む。
なお、インク10aが記録媒体90に付着した時点でプリントヒーター34によって適切に加熱されるために、記録媒体90は、例えば記録媒体90の厚みが厚くてプリントヒーター34のみで記録媒体90を適切な温度にすることが困難である場合などに、プリヒーター35によって予め加熱されても良い。この場合、制御部44は、記録媒体90に対して印刷データに基づいた画像をインク10aによって形成するとき、プリヒーター35を加熱させる。
また、赤外線照射手段44bは、キャリッジ移動装置42によって主走査方向にキャリッジ22が移動されながらインクジェットヘッド25によって記録媒体90に向けてインク10aが吐出される場合、記録媒体90に向けて赤外線照射装置26によって赤外線26aを特定の周期で照射する。なお、照射時間は、上述したように、記録媒体90の熱時定数より十分短い時間である。照射強度も、上述したように強い強度である。例えば、照射強度は、インク10aや記録媒体90が加熱によって焦げる温度以下であって、インク10aの溶媒の主成分の沸点前後近くの温度に短時間で昇温することができる程度以上の強度である。
ここで、記録媒体90に向けて赤外線照射装置26によって赤外線26aを照射する周期(以下「照射周期」と言う。)について説明する。
図8(a)は、赤外線照射装置26による赤外線26aの1回の照射に関して、主走査方向における位置に対する赤外線26aの光量を示す図である。図8(b)は、赤外線照射装置26による赤外線26aの連続する複数回の照射に関して、主走査方向における位置に対する赤外線26aの光量を示す図である。
図8(a)に示すように、赤外線照射装置26による赤外線26aの1回の照射において、赤外線26aの光量は、主走査方向における位置によって異なる。具体的には、赤外線照射装置26による赤外線26aの主走査方向における照射範囲のうち、中央付近は最高の光量Pが得られるが、両端部は光量が落ちている。したがって、主走査方向における何れの位置においても最高の光量Pが得られるように、照射周期は、図8(b)に示すように、赤外線照射装置26による赤外線26aの主走査方向における照射範囲の端部が、連続する照射同士で重なるように設定されていることが好ましい。具体的には、赤外線照射装置26による赤外線26aの主走査方向における照射範囲の両端部において、最大の光量Pの2分の1となる位置の間の距離を有効照射幅Lとし、キャリッジ移動装置42によるキャリッジ22の移動速度をvとすると、実行照射時間Teは、次のようになる。
Te=L/v
したがって、照射周期は、Te以下の周期となるように設定される。例えば、Lが100mmで、vが500mm/secの場合、照射周期は、0.2秒以下の周期となるように設定される。
なお、プリントヒーター34の加熱温度を上昇させることによって、プリントヒーター34によるインク10aの乾燥速度を上昇させることが考えられる。しかしながら、インクジェットヘッド25によって記録媒体90に向けてインク10aを吐出している場合、インクジェットヘッド25が鉛直方向においてプリントヒーター34の上側に存在するので、プリントヒーター34の加熱温度を上昇させると、プリントヒーター34による輻射熱や対流熱によってインクジェットヘッド25のノズル面25aの温度も上昇する。したがって、プリントヒーター34の加熱温度を上昇させると、インクジェットヘッド25は、ノズルの近傍のインク10aが蒸発乾燥してノズル詰まりが発生し易くなるので、インク10aの吐出の安定性が妨げられる。
また、インク10a中の溶媒の沸点を下げることによって、プリントヒーター34によるインク10aの乾燥速度を上昇させることも考えられる。しかしながら、インクジェットヘッド25によって記録媒体90に向けてインク10aを吐出している場合、インクジェットヘッド25が鉛直方向においてプリントヒーター34の上側に存在するので、プリントヒーター34による輻射熱や対流熱によってインクジェットヘッド25のノズル面25aが加熱される。したがって、インク10a中の溶媒の沸点を下げると、インクジェットヘッド25は、ノズルの近傍のインク10aが蒸発乾燥してノズル詰まりが発生し易くなるので、インク10aの吐出の安定性が妨げられる。また、インク10a中の溶媒の沸点を下げると、記録媒体90上のインク10aから多量の溶媒が蒸発し、蒸発した溶媒が記録媒体90よりも温度が低いインクジェットヘッド25のノズル面25aで凝集付着することによって、インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出の安定性が妨げられる。
上述したように、プリントヒーター34によるインク10aの乾燥速度を上昇させると、インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出の安定性が妨げられるので、プリントヒーター34の加熱温度と、インク10a中の溶媒の沸点とは、それぞれの適切な上限温度以下に抑えられることが好ましい。
制御部44は、記録媒体90に対して印刷データに基づいた画像をインク10aによって形成した場合、アフターヒーター36を加熱させる。したがって、記録媒体90に付着しているインク10aは、アフターヒーター36によって更に乾燥させられる。
以上に説明したように、インクジェットプリンター10は、記録媒体90に付着したインク10aに赤外線26aを間欠的に照射するので、短時間の赤外線26aの照射でインク10a中の溶媒を蒸発させるために、照射強度が強い赤外線26aを照射する。ここで、インクジェットプリンター10は、インク10aが赤外線吸収剤を備えているので、インク10aおよび記録媒体90のうち主にインク10aを赤外線26aによって加熱することができる。インクジェットプリンター10は、照射強度が強い赤外線26aを短時間で照射するので、赤外線照射装置26によって照射された赤外線26aによってインク10aに発生した熱が記録媒体90を通して放熱され難く、インク10aを効率的に加熱することができる。したがって、インクジェットプリンター10は、消費電力を抑えつつ蒸発乾燥型のインク10aの乾燥速度を向上することができる。
インクジェットプリンター10は、記録媒体90においてインク10aの吐出範囲と、赤外線26aの照射範囲との位置関係が一定であるので、インクジェットヘッド25によって記録媒体90にインク10aによって印刷されて直ぐに、このインク10aを赤外線照射装置26によって加熱することが可能であるので、記録媒体90においてインク10aの滲みを抑えることができる。なお、記録媒体90におけるインク10aの滲みには、記録媒体90の表面における他のインク10aへの滲みなど、記録媒体90の表面における滲みが存在する。更に、記録媒体90が浸透性媒体である場合、記録媒体90におけるインク10aの滲みには、記録媒体90の内部への浸み込みによる滲みが存在する。これらの滲みは、インク10aが記録媒体90に付着してから例えば0.1〜1秒以下の短時間で発生する。したがって、インクジェットプリンター10による記録媒体90に対するインク10aの吐出範囲と、赤外線26aの照射範囲との位置関係は、インク10aが記録媒体90に付着してから短時間で、このインク10aに赤外線26aが照射される位置関係である必要がある。
インクジェットプリンター10は、インク10aの乾燥速度を向上することができるので、例えば1〜4パスなど、パス数が8パス以下のシリアル高速印刷を実行する場合や、濃いカラー印刷を実行する場合や、両面印刷する場合など、単位時間当たりのインク10aの吐出量が増える場合であっても、記録媒体90においてインク10aの滲みを抑えることができる。また、インクジェットプリンター10は、例えば接触角35度以下の記録媒体90など、滲み易い記録媒体90が使用された場合であっても、記録媒体90においてインク10aの滲みを抑えることができる。
インクジェットプリンター10は、インク10aが記録媒体90の表面近くで急速に乾燥されるので、記録媒体90が浸透性媒体である場合であっても、図6に示すように、記録媒体90の表面の近くに多くのインク10aが残り、高濃度の鮮明な画像を形成することができる。
また、インクジェットプリンター10は、記録媒体90が浸透性媒体である場合に、インク10aの溶媒が記録媒体90中に浸透することを抑えるので、記録媒体90が紙であるとき、記録媒体90中の水分残存率や水分残存時間を低下させることができる。したがって、インクジェットプリンター10は、記録媒体90が紙である場合、記録媒体90にコックリングやカールが発生することを抑えることができる。
また、インクジェットプリンター10は、インク10aの乾燥速度を向上して滲みを抑えるので、記録媒体90として、受像層の無い紙や、前処理をしていない布などに印刷することが可能である。したがって、インクジェットプリンター10は、印刷に必要な費用を大幅に低減することができる。特に、前処理が実行されるとすれば前処理を専門業者に依頼する必要がある布を記録媒体90として使用する場合、インクジェットプリンター10は、前処理をしていない布に印刷することができることによって、時間および費用を大幅に低減することができる。
また、インクジェットプリンター10は、ラベルやシールなどの乾燥性が悪い記録媒体90に印刷する場合や、乾燥性が悪いインク10aを使用して印刷する場合などであっても、記録媒体90に付着されたインク10aを高速に乾燥することができる。
なお、インクジェットプリンター10は、記録媒体90に付着された時点のインク10aが図9(a)に示すように略半球形であっても、インク10aの溶媒を蒸発させることによって図9(b)に示すようにインク10aの上面を平坦化する。したがって、インクジェットプリンター10は、光沢のある印刷を高速に実行することができる。
インクジェットプリンター10において、赤外線26aの照射範囲は、記録媒体90に対するインク10aの吐出範囲の相対移動の方向とは反対の方向に、インク10aの吐出範囲に対して配置されている。この構成により、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド25のノズル面25aの直下に赤外線照射装置26によって赤外線26aを照射しないので、赤外線照射装置26によって照射された赤外線26aに起因する輻射熱や対流熱がインクジェットヘッド25のノズル面25aに当たらず、インクジェットヘッド25のノズルの近傍のインク10aが蒸発乾燥しない。したがって、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド25においてノズル詰まりが発生し難いので、インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出の安定性を向上することができる。
また、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド25のノズル面25aの直下に赤外線照射装置26によって赤外線26aを照射しないので、インク10aから赤外線照射装置26によって蒸発させられた溶媒がインクジェットヘッド25のノズル面25aに当たらない。したがって、インクジェットプリンター10は、蒸発した溶媒がインクジェットヘッド25のノズル面25aで凝集付着し難いので、インクジェットヘッド25によるインク10aの吐出の安定性を向上することができる。
副走査方向における位置において、赤外線26aの照射範囲は、インク10aの吐出範囲に対する記録媒体90の副走査方向における相対移動の方向、すなわち、矢印12aで示す方向に、インク10aの吐出範囲に対して存在している部分26b(図2参照。)を備えている。この構成により、インクジェットプリンター10は、記録媒体90に対するインクジェットヘッド25の今回の主走査方向における相対移動によって記録媒体90に付着されたインク10aに対してだけでなく、記録媒体90に対するインクジェットヘッド25の今回より前の主走査方向における相対移動によって記録媒体90に付着されたインク10aに対しても、赤外線照射装置26によって赤外線26aを照射するので、インク10aを乾燥させる能力を向上することができる。部分26bは、インク10aの蒸発特性や、赤外線照射装置26による赤外線26aの照射強度などの各種の情報に基づいて、矢印12で示す方向における適切な長さが設定されることが可能である。なお、インクジェットプリンター10は、部分26bを備えている場合、部分26bによる乾燥能力によっては、記録媒体90の搬送方向におけるアフターヒーター36の長さを短縮したり、アフターヒーター36自体をなくしたりすることができるので、電力の消費量を大幅に低減することができる。
インクジェットプリンター10は、赤外線照射装置26だけでなく、プリントヒーター34によっても、インク10aを乾燥させるので、インク10aを乾燥させる能力を向上することができる。
また、インクジェットプリンター10は、プリントヒーター34を備えている場合、記録媒体90に付着されたインク10aを赤外線照射装置26によって加熱する前に、プリントヒーター34によって予め加熱することによって、赤外線照射装置26によって加熱を開始する際のインク10aの温度を、気温に関わらず略一定にすることができるので、赤外線照射装置26によって加熱されたインク10aの状態を、気温に関わらず略一定にすることができる。すなわち、インクジェットプリンター10は、気温に関わらず、略一定品質の印刷物を得ることができる。
図10は、追加の赤外線照射装置27を備えた状態のインクジェットプリンター10の概略上面図である。
図10に示す例では、図2に示す例とは異なり、インクジェットプリンター10は、追加の赤外線照射装置27と、矢印11で示す方向に延在するガイドレール28とを備えている。赤外線照射装置27は、ガイドレール28に沿って矢印11で示す方向に移動することができる。相対移動手段44cは、ガイドレール28に沿って赤外線照射装置27を矢印11で示す方向に移動する。また、赤外線照射手段44bは、記録媒体90に付着したインク10aに向けて赤外線照射装置26と同様に赤外線照射装置27に間欠的に赤外線を照射させる。図10に示すインクジェットプリンター10は、赤外線照射装置26および27という2種類の赤外線照射装置によってインク10aを乾燥させるので、インク10aを乾燥させる能力を向上することができる。なお、図10に示すインクジェットプリンター10は、赤外線照射装置27による乾燥能力によっては、記録媒体90の搬送方向におけるアフターヒーター36の長さを短縮したり、アフターヒーター36自体をなくしたりすることができるので、電力の消費量を大幅に低減することができる。
図11は、追加の赤外線照射装置29を備えた状態のインクジェットプリンター10の概略上面図である。
図11に示す例では、図2に示す例とは異なり、インクジェットプリンター10は、追加の赤外線照射装置29を備えている。赤外線照射装置29は、矢印11で示す方向に延在して設けられている。赤外線照射手段44bは、記録媒体90に付着したインク10aに向けて赤外線照射装置26と同様に赤外線照射装置29に間欠的に赤外線を照射させる。図11に示すインクジェットプリンター10は、赤外線照射装置26および29という2種類の赤外線照射装置によってインク10aを乾燥させるので、インク10aを乾燥させる能力を向上することができる。なお、図11に示すインクジェットプリンター10は、赤外線照射装置29による乾燥能力によっては、記録媒体90の搬送方向におけるアフターヒーター36の長さを短縮したり、アフターヒーター36自体をなくしたりすることができるので、電力の消費量を大幅に低減することができる。
なお、インクジェットプリンター10は、以上において、赤外線照射装置26がインクジェットヘッドユニット23に搭載されている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド25と、赤外線照射装置26との記録媒体90に対する副走査方向における位置が略同一であって、赤外線照射装置26がインクジェットヘッド25と同一または略同一の速度で主走査方向に移動する構成を備えることによって、赤外線照射装置26をインクジェットヘッドユニット23とは別体として設けることができる。
また、インクジェットプリンター10は、以上において、赤外線照射装置26自体または赤外線照射装置27自体を主走査方向に移動させている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、赤外線照射装置26自体または赤外線照射装置27自体を主走査方向に移動させず、赤外線照射装置26または赤外線照射装置27から導波管などで導いた赤外線の照射範囲を主走査方向に移動させても良い。
図12は、ライン型のインクジェットヘッドを備えた状態のインクジェットプリンター10の概略上面図である。
図12に示す例では、インクジェットプリンター10は、矢印11で示す方向に延在して設けられているライン型のインクジェットヘッドであるラインヘッド51と、矢印11で示す方向に延在して設けられている赤外線照射装置52とを備えている。相対移動手段44cは、媒体搬送装置41によって記録媒体90を矢印12aで示す方向に移動する。赤外線照射手段44bは、記録媒体90に付着したインク10aに向けて赤外線照射装置26と同様に赤外線照射装置52に間欠的に赤外線を照射させる。インクジェットプリンター10は、赤外線照射装置52を備えることによって、電力の消費量が大きいヒーターを備えなくても良くなるので、電力の消費量を大幅に低減することができる。また、インクジェットプリンター10は、赤外線照射装置52を備えることによって、ヒーターと、ヒーターの熱を放熱するためのファンなどの部材とを備えなくても良くなるので、小型化することができる。
本発明は、例えば、ソルベントインクやラテックスインクを用いることの多いワイドフォーマットプリンターやテキスタイルプリンター、高速のプリントオンデマンドプリンター、ラベルプリンター、シールプリンターなどに広く応用することができる。
例えば、インク10aがソルベントインクである場合について説明する。
インクジェットプリンターで使用されるソルベントインク中のソルベントは、一般的に、インクにおける80%〜85%程度がソルベントである。
図13は、ソルベントインクであるインク10a中のソルベントの量と、時間との関係の一例を示す図である。
図13において、グラフ201は、インクジェットプリンター10が図1に示す構成である場合に、記録媒体90に付着されたインク10aを赤外線照射装置26およびプリントヒーター34のうちプリントヒーター34のみによって加熱する場合のグラフである。グラフ202は、インクジェットプリンター10が図1に示す構成である場合に、記録媒体90に付着されたインク10aを赤外線照射装置26およびプリントヒーター34の両方によって加熱する場合のグラフである。時間Tが「0」である時点が、インクジェットヘッド25からの吐出時、すなわち、記録媒体90に付着されて加熱が開始される時点である。図13において、インク10a中のソルベントの量は、加熱の開始時点の量を100%として表している。図13に示すように、インク10a中のソルベントの量は、加熱されることによって時間とともに減少する。すなわち、インク10aは、加熱されることによって時間とともに乾燥する。
一般的に、ソルベントインクは、インクジェット印刷において、インク10a中のソルベントの量がインクジェットヘッド25からの吐出時の60%程度になると、記録媒体90上で滲みが発生しなくなる。グラフ201において、インク10a中のソルベントの量が当初の60%程度になるのは、加熱の開始からt1後である。グラフ202において、インク10a中のソルベントの量が当初の60%程度になるのは、加熱の開始からt2後である。t1は、例えば2秒である。t2は、t1の例えば10分の1から5分の1まで程度の時間であり、例えば0.2秒〜0.4秒である。
図13に示すように、記録媒体90に付着されたインク10aを赤外線照射装置26およびプリントヒーター34の両方によって加熱する場合は、赤外線照射装置26およびプリントヒーター34のうちプリントヒーター34のみによって加熱する場合と比較して、インク10a中のソルベントの量が短時間でインクジェットヘッド25からの吐出時の60%程度になり、記録媒体90上で滲みが発生し難く、印刷精度が高い。このように、インク10a中のソルベントの量を可能な限り短時間でインクジェットヘッド25からの吐出時の60%程度にすることが好ましい。
なお、赤外線照射装置26における赤外線26aの照射条件は、上述した通り、図14(a)に示すような照射条件である。
図14は、赤外線照射装置26における赤外線26aの照射条件の一例を示す図である。
図14(a)に示すように、赤外線照射装置26は、記録媒体90の熱時定数より十分短い時間t3の間だけ強い強度p1で、赤外線26aを照射することを、特定の周期t4で繰り返す。図14(b)は、単位時間当たりの平均の照射強度が図14(a)に示すものと同一になるように、連続して赤外線26aを照射した例を示す。図14(b)に示すように連続して赤外線26aを照射した場合、赤外線26aの照射強度p2が弱くなる上に、赤外線照射装置26によって照射された赤外線26aによってインク10aに発生した熱が記録媒体90を通して放熱され易く、インク10aを効率的に加熱することができない。しかしながら、実際には、赤外線照射装置26は、図14(a)に示すように、照射強度p1が強い赤外線26aを短時間t3で照射するので、照射した赤外線26aによってインク10aに発生した熱が記録媒体90を通して放熱され難く、インク10aを効率的に加熱することができる。したがって、インクジェットプリンター10は、消費電力を抑えつつ蒸発乾燥型のインク10aの乾燥速度を向上することができる。
なお、図14(a)に示す照射強度p1は、上述したように、例えば、インク10aや記録媒体90が加熱によって焦げる温度以下であって、インク10aの溶媒の主成分の沸点前後近くの温度に短時間で昇温することができる程度以上の強度である。特に、図14(a)に示す照射強度p1は、連続して照射されるとインク10aや記録媒体90が加熱によって焦げる照射強度である。
以上においては、溶媒の蒸発によって乾燥定着するインクを赤外線によって加熱する本発明について説明している。本発明の発明者は、溶媒の蒸発によって乾燥定着するインクをマイクロ波によって加熱する発明も行った。以下においては、参考発明として、溶媒の蒸発によって乾燥定着するインクをマイクロ波によって加熱する発明について説明する。
<参考発明>
[本参考発明の背景技術]
従来、蒸発乾燥型のインクによって記録媒体に印刷を実行するインクジェットプリンターとして、マイクロ波を吸収して加熱される溶媒を備えているインクを記録媒体に向けて吐出するシリアル方式のインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに対して記録媒体の搬送方向における下流側に固定されていて、記録媒体に付着したインクにマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置とを備えているインクジェットプリンターが知られている(例えば、特許第4633808号公報参照。)。このインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドによってインクが記録媒体に付着させられた後、記録媒体に付着したインクがマイクロ波照射装置の位置まで搬送された場合に、このインクにマイクロ波照射装置によってマイクロ波を照射してインクを加熱することによって、インクの溶媒を蒸発させてインクを乾燥定着する。
[本参考発明が解決しようとする課題]
記録媒体におけるインクの滲みが発生する場合、記録媒体におけるインクの滲みは、インクが記録媒体に付着してから例えば0.1〜1秒以下の短時間で発生する。しかしながら、特許第4633808号公報に記載されたインクジェットプリンターは、マイクロ波照射装置がインクジェットヘッドに対して記録媒体の搬送方向における下流側に固定されているので、シリアル方式のインクジェットヘッドによってインクが記録媒体に付着させられてから短時間でマイクロ波照射装置によってインクにマイクロ波を照射することができず、記録媒体におけるインクの滲みを十分に抑えることができないという問題がある。
そこで、本参考発明は、シリアル方式のインクジェット印刷において記録媒体における蒸発乾燥型のインクの滲みを抑えることができるインクジェットプリンターおよびインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。
[本参考発明の課題を解決するための手段]
本参考発明のインクジェットプリンターは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、マイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、前記インクジェットヘッドに前記インクを記録媒体に向けて吐出させるインク吐出手段と、前記記録媒体に付着した前記インクに向けて前記マイクロ波照射装置に前記マイクロ波を照射させるマイクロ波照射手段と、前記記録媒体における前記インクジェットヘッドによる前記インクの吐出範囲を、前記記録媒体に対して相対移動させる相対移動手段とを備えており、前記相対移動手段は、前記記録媒体における前記マイクロ波照射装置による前記マイクロ波の照射範囲を、前記記録媒体に対して相対移動させ、前記インクは、マイクロ波を吸収して加熱される溶媒を備えていて、前記溶媒の蒸発によって乾燥定着するインクであり、前記相対移動手段は、前記記録媒体に対して前記吐出範囲を、主走査方向と、前記主走査方向に直交する副走査方向とに相対移動させ、前記インク吐出手段は、前記記録媒体に対して前記吐出範囲が前記主走査方向に相対移動する場合、前記インクジェットヘッドに前記インクを前記記録媒体に向けて吐出させ、前記吐出範囲と、前記照射範囲との位置関係は、一定であることを特徴とする。
この構成により、本参考発明のインクジェットプリンターは、記録媒体においてインクの吐出範囲と、マイクロ波の照射範囲との位置関係が一定であるので、インクジェットヘッドによって記録媒体にインクによって印刷されて直ぐに、このインクをマイクロ波照射装置によって加熱することが可能である。ここで、本参考発明のインクジェットプリンターは、インクおよび記録媒体のうち主にインクをマイクロ波によって加熱することができるので、インクが付着した記録媒体に照射するマイクロ波の照射強度を強くすることができる。したがって、本参考発明のインクジェットプリンターは、シリアル方式のインクジェット印刷において記録媒体における蒸発乾燥型のインクの滲みを抑えることができる。
本参考発明のインクジェットプリンターにおいて、前記照射範囲は、前記記録媒体に対する前記吐出範囲の相対移動の方向とは反対の方向に、前記吐出範囲に対して配置されていても良い。
この構成により、本参考発明のインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドのノズル面の直下にマイクロ波照射装置によってマイクロ波を照射しないので、マイクロ波照射装置によって照射されたマイクロ波に起因する輻射熱や対流熱がインクジェットヘッドのノズル面に当たらず、インクジェットヘッドのノズルの近傍のインクが蒸発乾燥しない。したがって、本参考発明のインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドにおいてノズル詰まりが発生し難いので、インクジェットヘッドによるインクの吐出の安定性を向上することができる。また、本参考発明のインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドのノズル面の直下にマイクロ波照射装置によってマイクロ波を照射しないので、インクからマイクロ波照射装置によって蒸発させられた溶媒がインクジェットヘッドのノズル面に当たらない。したがって、本参考発明のインクジェットプリンターは、蒸発した溶媒がインクジェットヘッドのノズル面で凝集付着し難いので、インクジェットヘッドによるインクの吐出の安定性を向上することができる。
本参考発明のインクジェットプリンターにおいて、前記副走査方向における位置において、前記照射範囲は、前記吐出範囲を含み、前記吐出範囲に対する前記記録媒体の前記副走査方向における相対移動の方向に前記吐出範囲に対して存在している部分を備えていても良い。
この構成により、本参考発明のインクジェットプリンターは、記録媒体に対するインクジェットヘッドの今回の主走査方向における相対移動によって記録媒体に付着されたインクに対してだけでなく、記録媒体に対するインクジェットヘッドの今回より前の主走査方向における相対移動によって記録媒体に付着されたインクに対しても、マイクロ波照射装置によってマイクロ波を照射するので、インクを乾燥させる能力を向上することができる。
本参考発明のインクジェットプリンターにおいて、前記インクジェットプリンターは、マイクロ波を照射する追加のマイクロ波照射装置を備えており、前記副走査方向における位置において、前記記録媒体における前記追加のマイクロ波照射装置による前記マイクロ波の照射範囲は、前記記録媒体における前記マイクロ波照射装置による前記マイクロ波の前記照射範囲に対して、前記吐出範囲に対する前記記録媒体の前記副走査方向における相対移動の方向に存在していても良い。
この構成により、本参考発明のインクジェットプリンターは、2種類のマイクロ波照射装置によってインクを乾燥させるので、インクを乾燥させる能力を向上することができる。
本参考発明のインクジェットプリンターは、前記インクジェットヘッドによる前記インクの吐出方向に前記インクジェットヘッドに対して配置されていて、前記記録媒体に付着した前記インクを加熱するプリントヒーターを備えていても良い。
この構成により、本参考発明のインクジェットプリンターは、マイクロ波照射装置だけでなく、プリントヒーターによっても、インクを乾燥させるので、インクを乾燥させる能力を向上することができる。
本参考発明のインクジェット印刷方法は、インクを吐出するインクジェットヘッドと、マイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、前記インクジェットヘッドに前記インクを記録媒体に向けて吐出させるインク吐出手段と、前記記録媒体に付着した前記インクに向けて前記マイクロ波照射装置に前記マイクロ波を照射させるマイクロ波照射手段と、前記記録媒体における前記インクジェットヘッドによる前記インクの吐出範囲を、前記記録媒体に対して相対移動させる相対移動手段とを備えているインクジェットプリンターを使用したインクジェット印刷方法であって、前記相対移動手段は、前記記録媒体における前記マイクロ波照射装置による前記マイクロ波の照射範囲を、前記記録媒体に対して相対移動させ、前記インクは、マイクロ波を吸収して加熱される溶媒を備えていて、前記溶媒の蒸発によって乾燥定着するインクであり、前記相対移動手段は、前記記録媒体に対して前記吐出範囲を、主走査方向と、前記主走査方向に直交する副走査方向とに相対移動させ、前記インク吐出手段は、前記記録媒体に対して前記吐出範囲が前記主走査方向に相対移動する場合、前記インクジェットヘッドに前記インクを前記記録媒体に向けて吐出させ、前記吐出範囲と、前記照射範囲との位置関係は、一定であることを特徴とする。
この構成により、本参考発明のインクジェット印刷方法は、記録媒体においてインクの吐出範囲と、マイクロ波の照射範囲との位置関係が一定であるので、インクジェットヘッドによって記録媒体にインクによって印刷されて直ぐに、このインクをマイクロ波照射装置によって加熱することが可能である。ここで、本参考発明のインクジェット印刷方法は、インクおよび記録媒体のうち主にインクをマイクロ波によって加熱することができるので、インクが付着した記録媒体に照射するマイクロ波の照射強度を強くすることができる。したがって、本参考発明のインクジェット印刷方法は、シリアル方式のインクジェット印刷において記録媒体における蒸発乾燥型のインクの滲みを抑えることができる。
[本参考発明を実施するための形態]
以下、本参考発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
図15は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター110の概略側面断面図である。図16は、インクジェットプリンター110の概略上面図である。
図15および図16に示すように、インクジェットプリンター110の構成は、以下に述べる構成を除いて、インクジェットプリンター10(図1および図2参照。)の構成と同様である。
インクジェットプリンター110は、インクジェットプリンター10に使用されるインク10a(図1参照。)とは異なるインク110aが使用される。
インク110aの構成は、以下に述べる構成を除いて、インク10aの構成と同様である。インク110aは、赤外線吸収剤を備えていなくて良い。インク110aは、例えば30体積%以上が、水など、マイクロ波を吸収して加熱される溶媒である。
インクジェットプリンター110は、インクジェットプリンター10が備えている赤外線照射装置26(図1および図2参照。)を備えていない。その代り、インクジェットプリンター110は、キャリッジ22に搭載されていて記録媒体90に向けてマイクロ波126aを照射するマイクロ波照射装置126を備えている。インクジェットプリンター110は、図16に示す例では、キャリッジ22の移動方向が矢印11で示す方向のうち、矢印11aで示す方向と、矢印11aで示す方向の反対である矢印11bで示す方向との何れであってもインクジェットヘッド25がインク110aを吐出するので、矢印11で示す方向において、インクジェットヘッド25を挟む位置に配置されている2つのマイクロ波照射装置126を備えている。しかしながら、インクジェットプリンター110は、キャリッジ22の移動方向が矢印11aで示す方向と、矢印11aで示す方向とのうち何れか一方の場合のみにインクジェットヘッド25がインク110aを吐出するとき、インクジェットヘッド25がインク110aを吐出する場合のキャリッジ22の移動方向において、インクジェットヘッド25の上流側にのみマイクロ波照射装置126を備えていれば良い。
マイクロ波照射装置126は、記録媒体90に付着されたインク110aにマイクロ波126aを照射することによって、インク110aの溶媒に熱を発生させて蒸発させて、インク110aを乾燥定着させるためのものである。更に、マイクロ波照射装置126は、記録媒体90が布である場合、インク110aの溶媒に発生させる熱を、記録媒体90に付着されたインク110aの乾燥以外にも利用することができる。例えば、マイクロ波照射装置126は、記録媒体90が布であって、顔料と、この顔料を記録媒体90に接着させるためのバインダー樹脂とをインク110aが備えている場合、インク110aの溶媒に発生させる熱をインク110a中のバインダー樹脂の融解にも利用することができる。また、マイクロ波照射装置126は、記録媒体90が布であって、インク110aが染料を備えている場合、インク110aの溶媒に発生させる熱をインク110a中の染料の発色にも利用することができる。
マイクロ波照射装置126は、マイクロ波126aの照射によってインクジェットヘッド25のノズル面25aやノズル内のインク110aを加熱することが無いように、インクジェットヘッド25の方向へのマイクロ波126aの照射強度が十分に小さくなるように指向性を有していることが好ましい。
矢印12で示す方向における位置において、マイクロ波照射装置126によるマイクロ波126aの照射範囲は、インクジェットヘッド25によるインク110aの吐出範囲を含んでいる。なお、矢印12で示す方向における位置において、マイクロ波照射装置126によるマイクロ波126aの照射範囲は、図16に示すように、インクジェットヘッド25によるインク110aの吐出範囲に対して矢印12aで示す方向に存在している部分126bを備えていても良い。
記録媒体90に付着されたインク110aに対してマイクロ波照射装置126によって照射されるマイクロ波126aは、記録媒体90にインク110aによって形成される画像を高品質にするために、同一パス内、すなわち、矢印11aで示す方向または矢印11bで示す方向におけるインクジェットヘッド25の1回分の移動内において、少なくともインクジェットヘッド25によるインク10aの吐出範囲においては、矢印12で示す方向に照射強度が均一であることが好ましい。
図17は、インクジェットプリンター110のブロック図である。
図17に示すように、インクジェットプリンター110の制御部44は、インクジェットプリンター10と異なり、赤外線照射手段44b(図5参照。)として機能しない。その代り、インクジェットプリンター110の制御部44は、記録媒体90に付着したインク110aに向けてマイクロ波照射装置126にマイクロ波126aを照射させるマイクロ波照射手段144bとして機能する。
次に、記録媒体90が浸透性媒体である場合のインクジェットプリンター110の動作について説明する。
インクジェットプリンター110の動作は、以下に述べる動作を除いて、インクジェットプリンター10の動作と同様である。
図18は、記録媒体90が浸透性媒体である場合に印刷を実行しているときのインクジェットプリンター110の一部の正面断面図である。図19は、図18に示すインクジェットプリンター110の一部の側面断面図である。なお、図18に示す状況は、キャリッジ22が矢印11bで示す方向に移動しながらインクジェットヘッド25が記録媒体90に向けてインク110aを吐出している状況である。
図18および図19に示すように、マイクロ波照射手段144bは、キャリッジ移動装置42によって主走査方向にキャリッジ22が移動されながらインクジェットヘッド25によって記録媒体90に向けてインク110aが吐出される場合、記録媒体90に向けてマイクロ波照射装置126によってマイクロ波126aを照射する。なお、照射強度は、記録媒体90を通しての放熱によるインク110aの温度の低下やマイクロ波照射装置126の熱エネルギーのロスを小さくするために、例えば、インク110aの溶媒の主成分の沸点以上の温度に短時間で昇温することができる程度以上の強度であることが好ましい。
以上に説明したように、インクジェットプリンター110は、記録媒体90においてインク110aの吐出範囲と、マイクロ波126aの照射範囲との位置関係が一定であるので、インクジェットヘッド25によって記録媒体90にインク110aによって印刷されて直ぐに、このインク110aをマイクロ波照射装置126によって加熱することが可能である。ここで、インクジェットプリンター110は、インク110aおよび記録媒体90のうち主にインク110aをマイクロ波によって加熱することができるので、インク110aが付着した記録媒体90に照射するマイクロ波の照射強度を強くすることができる。したがって、インクジェットプリンター110は、シリアル方式のインクジェット印刷において記録媒体90における蒸発乾燥型のインク110aの滲みを抑えることができる。
インクジェットプリンター110の作用効果は、以上に述べた作用効果を除いて、インクジェットプリンター10(図1および図2参照。)の作用効果と同様である。
図20は、追加のマイクロ波照射装置127を備えた状態のインクジェットプリンター110の概略上面図である。
図20に示す例では、図16に示す例とは異なり、インクジェットプリンター110は、追加のマイクロ波照射装置127と、矢印11で示す方向に延在するガイドレール128とを備えている。マイクロ波照射装置127は、ガイドレール128に沿って矢印11で示す方向に移動することができる。相対移動手段44cは、ガイドレール128に沿ってマイクロ波照射装置127を矢印11で示す方向に移動する。また、マイクロ波照射手段144bは、記録媒体90に付着したインク110aに向けてマイクロ波照射装置126と同様にマイクロ波照射装置127にマイクロ波を照射させる。図20に示すインクジェットプリンター110は、マイクロ波照射装置126および127という2種類のマイクロ波照射装置によってインク110aを乾燥させるので、インク110aを乾燥させる能力を向上することができる。なお、図20に示すインクジェットプリンター110は、マイクロ波照射装置127による乾燥能力によっては、記録媒体90の搬送方向におけるアフターヒーター36の長さを短縮したり、アフターヒーター36自体をなくしたりすることができるので、電力の消費量を大幅に低減することができる。
なお、インクジェットプリンター110は、以上において、マイクロ波照射装置126がインクジェットヘッドユニット23に搭載されている。しかしながら、インクジェットプリンター110は、インクジェットヘッド25と、マイクロ波照射装置126との記録媒体90に対する副走査方向における位置が略同一であって、マイクロ波照射装置126がインクジェットヘッド25と同一または略同一の速度で主走査方向に移動する構成を備えることによって、マイクロ波照射装置126をインクジェットヘッドユニット23とは別体として設けることができる。
また、インクジェットプリンター110は、以上において、マイクロ波照射装置126自体またはマイクロ波照射装置127自体を主走査方向に移動させている。しかしながら、インクジェットプリンター110は、マイクロ波照射装置126自体またはマイクロ波照射装置127自体を主走査方向に移動させず、マイクロ波照射装置126またはマイクロ波照射装置127から導波管などで導いたマイクロ波の照射範囲を主走査方向に移動させても良い。