JP6099852B2 - 電動機の診断装置 - Google Patents
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Description
ただし、数百〜数千台のモータを集中管理するモータコントロールセンタへの適用は配線の数が多くなることから、その適用は現実的ではない。そのため、特殊なセンサを用いずにモータコントロールセンタで計測される電流と電圧の情報から電動機の状態を簡易的に診断し、信頼性、生産性、安全性を向上する装置が必要である。
以下、この発明の実施の形態1に係る電動機の診断装置を図1から図7に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態1における電動機の診断装置を示す構成回路図で、主に閉鎖配電盤であるコントロールセンタで使用されるものである。
図1において、電力系統から引き込まれた電源の主回路1には、配線用遮断器2、電磁接触器3、主回路1の負荷電流を検出する計器用変成器4、主回路1の電圧を検出する計器用変圧器5が設けられ、さらに、負荷である電動機6が接続され、電動機6により機械設備7が運転駆動される。
電圧検出回路8は、電動機に接続される電源の主回路1の線間電圧を検出して、電動機の相電圧や大きさなど所定の信号に変換して電動機の電圧を検出し、論理演算回路10と記憶回路11に出力する。電流検出回路9は、電動機に接続される電源の主回路1の負荷電流を検出して、電動機の相電流や大きさなど所定の信号に変換して電動機の電流を検出し、論理演算回路10と記憶回路11に出力する。
設定回路12は、記憶回路11に接続され、セットキーを有し、そのセットキーを押す(例えば長押しする)ことによって、初期の正常状態のデータを記憶回路11に記憶保持させる。セットキーを解除するまでの間のデータを記憶させることができる。
この発明では、動作開始前に、電動機6の定格情報を入力する必要がない。
電流電圧変換部21は、逆相電流・逆相電圧算出部22と正相電流・正相電圧算出部23で構成され、電圧検出回路8と電流検出回路9で検出した三相の電圧および電流から、対称座標変換処理によって式(1)〜式(4)の計算式により、逆相電流Isnおよび逆相電圧Vsnと正相電流Ispおよび正相電圧Vspに変換する。
逆相アドミタンス特性解析部25は、巻線短絡を判定する前に正常時の逆相アドミタンス値Ynを記憶させる。逆相アドミタンスYnはすべりによって変化する。すなわち、負荷トルクの大きさで値が異なる。負荷トルクに依存しない判定方法を確立するために、正常時の正相電流値に対する逆アドミタンス特性を記憶させる。記憶させるタイミングは、電動機稼働時が好ましい。なぜなら無負荷時から有負荷時に至る逆相アドミタンスのデータを取得できるためである。
巻線短絡判定の評価として用いる正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量を、正常時のデータを基に最小二乗法等の統計処理からしきい値を決定する。このとき、正相電流Ispが変化しなければ増加量を計算できない。通常、負荷設備は常にトルクが発生している状態のため問題ないと考えられる。正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加値で、巻線短絡判定方法が変わる。接触不良で抵抗成分が存在すると正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加値が大きくなる。
評価値の解析部28は、評価値A=|Isn―Yn*Vsn|の値を算出する。
評価値Aの計算について説明する。電圧検出回路8と電流検出回路9から電流(Iu、Iv、Iw)電圧(Vuv、Vvw、Vwu)が更新される。巻線短絡はコイル素線間の短絡現象で、巻線短絡が発生すると3相固定子電流は非対称となるため、逆相成分により検出できる。3相誘導電動機の固定子巻線の一部が巻線短絡した場合の短絡率をμ(=Nf/N。各相の巻数NのうちNfターン分が短絡)とすると、μ≪1を仮定して、正相電圧Vspと逆相電圧Vsn、正相電流Ispと逆相電流Isnの間に以下の関係式が導かれる。
アドミタンスYの非対角成分Ypnは巻線短絡の指標にできるが、実フィールドにおいて非対角成分Ypnを算出することは容易ではない。ここでは逆相電流Isn と逆相電圧Vsn の両方をモニタする方法を採用する。巻線短絡が発生しないとき(μ=0)はアドミタンスYの非対角成分Ypnはゼロであるため、
Isn=Yn・Vsn ・・・(8)
である。巻線短絡が発生すると、
Isn=Yn・Vsn+Ypn・Vsp ・・・(9)
とIsnが変化する。IsnとVsnの両方をモニタすることで、
評価値A=|Isn−Yn・Vsn| ・・・(10)
を指標とすれば、巻線短絡発生と電源電圧の不平衡発生(Vsnの変化)とを区別できると考えられる。導入初期は巻線短絡未発生として初期化(Ynを計算)した後、式(10)の評価値Aを監視することで巻線短絡を判定する。
逆相アドミタンスYnは、逆相アドミタンス特性解析部25で算出されたデータを利用する。そして、評価値解析部28による評価値解析の際に、各正相電流における逆相アドミタンス値を代入することで、評価値を解析できる。
電圧不平衡率Vunbalは、例えば線間電圧から算出する場合は次の式で求める。
電圧不平衡率=((各線間電圧と平均電圧との最大差)/平均電圧)×100%
即ち (Vuv−Vavg)/Vavg×100%
(Vvw−Vavg)/Vavg×100%
(Vwu−Vavg)/Vavg×100% の最大値
但し、平均電圧Vavg=(Vuv+Vvw+Vwu)/3
表示回路13は電動機6の巻線短絡や接触不良などの異常を検出したときに異常状態、警告等を表示する。駆動回路14は電動機6の異常を検出したときに電磁接触器3を開閉する。外部出力回路(外部出力部)15は上記した電動機6の異常状態や警告等を外部に出力する。
ステップS5は、逆相電流―逆相電圧特性から逆相アドミタンスYnを計算し、逆相アドミタンスYnの正相電流特性を記憶する。ステップS6は、逆相電流―正相電流特性から正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量△Isn/△Ispを計算し、増加量のしきい値δ2を設定する。その後STARTに戻る。
一方、電圧不平衡率Vunbalがしきい値5%未満であった場合(Yes)、ステップS8に進む。ステップS8は、評価値A=|Isn―Yn*Vsn|をしきい値δ1と比較する。評価値Aがしきい値δ1以上であった場合(Yes)、ステップS9に進み、正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量△Isn/△Ispをしきい値δ2と比較する。ステップS9において、逆相電流△Isn/正相電流△Ispがしきい値δ2未満の場合(Yes)、巻線短絡と判定し、逆相電流△Isn/正相電流△Ispがしきい値δ2以上であった場合(No)、接触不良と判定する。
次に、この発明の実施の形態2に係る電動機の診断装置を図8に基づいて説明する。
図8は実施の形態2における診断処理のフローチャートを示し、ステップS1からステップS7までは実施の形態1と同じであるので、説明を省略する。
図8において、ステップS8は正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量をしきい値δ2と比較する。ステップS8において、正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量がしきい値δ2未満であった場合(Yes)、ステップS9に進む。
ステップS8において、正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量がしきい値δ2以上であった場合(No)、ステップS10に進む。ステップS10は、評価値Aの正相電流Ispに対する特性を計算し、正相電流Ispが0Aに近似して切片を求め(複数の計測プロットから最小二乗法で切片を求め)、その値をしきい値δ3と比較する。その値が、しきい値δ3以上であった場合(Yes)、巻線短絡と判定し、しきい値δ3未満であった場合(No)、接触不良と判定する。
次に、この発明の実施の形態3に係る電動機の診断装置について説明する。
実施の形態1、2では、個々の電動機6に対して1つずつ論理演算部10を備えていたが、実施の形態3では複数の電動機を1つの論理演算部10で電圧および電流信号を解析し異常判定するようにしたものである。
実施の形態1の欠点として、初回の正常値記憶時に仮にすでに不具合の電動機であった場合に、初回に異常値を記憶させてしまう。そこで、複数台の電動機の情報を一括処理することで、例えば同じ電動機の場合には、初回の判定で正常か異常かを判定可能となる。
次に、この発明の実施の形態4に係る電動機の診断装置を図9から図11に基づいて説明する。
実施の形態1では、電動機の電流と電圧を用いた診断判定であった。実施の形態4では、電動機の電流のみで巻線短絡を判定する手法としたものである。図9はこの発明の実施の形態4における電動機の診断装置を示す構成回路図で、図1の構成から計器用変圧器5と電圧検出回路8を取り除いたものである。図9において、図1と同じまたは相当部分の構成には同じ符号を付して説明を省略する。
図10において、論理演算回路10は、電流変換部21a、初期解析部24、解析部27、判定部31で構成されている。
電流変換部21aは逆相電流算出部22aと正相電流算出部23aを備え、対称座標変換処理によって式(1)(2)の計算式により、逆相電流Isnおよび正相電流Ispに変換する。初期解析部24は逆相電流―正相電流特性解析を行なう逆相電流―正相電流特性解析部26を備え、接触不良判定を行う。接触不良で抵抗成分が存在すると正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加値が大きくなる。接触不良判定を行うためのしきい値δ2を実施の形態1と同じ要領で予め決定する。
正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量がしきい値δ2以上であった場合(No)に、接触不良と判定する。正相電流Ispに対する逆相電流Isnの増加量がしきい値δ2未満であった場合(Yes)に、ステップS6に進んで、逆相電流Isnの値をしきい値δ4と比較する。なお、しきい値δ4は実際の試験などで所定値に決める。ステップS6において、逆相電流Isnがしきい値δ4以上であった場合(Yes)に巻線短絡と判定し、しきい値δ4未満であった場合(No)に正常と判定する。
Claims (7)
- 電動機に接続される電源の主回路に流れる電流から前記電動機の電流を検出する電流検出回路と、前記電源の主回路の電圧から前記電動機の電圧を検出する電圧検出回路と、前記電流検出回路および前記電圧検出回路の出力を入力して、前記電動機の巻線短絡異常を判定する論理演算部と、前記論理演算部が電動機の異常を検出したときに異常であること表示する表示部と、前記論理演算部が電動機の異常を検出したときに異常であることを外部に知らせる外部出力部を備え、
前記論理演算部は、前記電動機の電圧および電流の解析による逆相電流、逆相電圧、正相電流、逆相アドミタンスから、電動機稼働中で負荷トルクが変動する際にも電源不平衡を区別して巻線短絡を判定して検出を行うと共に、逆相電流と逆相電圧と逆相アドミタンスから求めた評価値の評価値解析部、逆相電流と正相電流の増加量の解析部、および電源の電圧不平衡率の解析部を備え、前記電動機の巻線短絡と前記電源の電圧不平衡と接触不良を区別して判定することを特徴とする電動機の診断装置。 - 前記論理演算部は、巻線短絡の判定を実施する前に、正常時の逆相アドミタンスの正相電流特性を記憶し、前記評価値解析部による評価値解析の際に、各正相電流における逆相アドミタンス値を代入することを特徴とする請求項1に記載の電動機の診断装置。
- 前記論理演算部の評価値解析部は、評価値A=|逆相電流―逆相アドミタンス*逆相電圧|を算出し、この評価値Aが所定のしきい値δ1を超えた時に前記電動機の巻線短絡と判定するようにした請求項1または請求項2に記載の電動機の診断装置。
- 前記論理演算部の逆相電流と正相電流の増加量の解析部は、判定を実施する前に、正常時の逆相電流―正相電流特性の増加量を記憶して、統計処理によりしきい値δ2を決定し、正相電流に対する逆相電流の増加量が前記しきい値δ2よりも大きいか小さいかにより前記電動機の巻線短絡と接触不良を判別するようにした請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動機の診断装置。
- 前記論理演算部の電圧不平衡率の解析部は、電源の電圧不平衡率が所定の値より大きい時に電圧不平衡と判定するようにした請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動機の診断装置。
- 前記論理演算部は、複数台の前記電動機の異常判定を集約して行い、前記電動機の異常判定をすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動機の診断装置。
- 電動機に接続される電源の主回路に流れる電流から前記電動機の電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路の出力を入力して、前記電動機の巻線短絡異常を判定する論理演算部と、前記論理演算部が電動機の異常を検出したときに異常であることを表示する表示部と、前記論理演算部が電動機の異常を検出したときに異常であることを外部に知らせる外部出力部を備え、
前記論理演算部は、前記電動機の電流解析による逆相電流、正相電流から、電動機稼働中で負荷トルクが変動する際にも電源不平衡を区別して巻線短絡を判定して検出を行うと共に、逆相電流と正相電流の増加量の解析部を備え、判定を実施する前に、正常時の逆相電流―正相電流特性の増加量を記憶して、統計処理によりしきい値δ2を決定し、正相電流に対する逆相電流の増加量が前記しきい値δ2よりも大きいか小さいかにより前記電動機の巻線短絡と接触不良を判別するようにしたことを特徴とする電動機の診断装置。
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