以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
<システム概要>
図1は、本願記載の情報処理システムの概要の一例を模式的に示す説明図である。本発明に係る情報処理システムは、複数の建物Bに対する地震被害に係る情報を出力する情報処理システムであって、各建物Bは、一戸建又は集合住宅であり、センサSと、入出力装置2とを戸別に備え、各建物B外に情報処理装置1を備えている。
具体的に図1は、本願記載の情報処理システムを、建物等の構造物に加速度センサ等の測定装置を配設し、地震、常時微動等の揺れに対する応答波形を解析して構造性能を診断する構造ヘルスモニタリングシステムに適用した例を示している。例えば、構造ヘルスモニタリングシステムでは、柱、梁、外壁等の部位に対する加速度、変形量等の測定値に基づいて、構造物全体の揺れ、変形の大きさ、損傷、劣化等の状況を推定することができる。
図1に例示する情報処理システムでは、戸建て住宅、集合住宅等の建物が地震等の災害にあった場合に、災害に関する情報、災害の対応に関する情報等の様々な情報を、建物の居住者に提供する。このようなサービスは、例えば、住宅、建築、情報提供等の様々な事業を展開する管理事業体により、建物に居住する居住者等の顧客を対象に提供される。
例えば、地震等の災害が発生した場合、管理事業体は、測定装置の測定結果等の様々な情報から、災害状況、被害状況等の状況を診断し、建物の居住者に対して診断結果及び診断結果に基づく災害・被害情報等の様々な情報を提供する。また、管理事業体は、建物内の各戸から、それぞれの被害状況を示す戸別の被害情報を収集し、収集した戸別の被害情報をも加味して、より正確で緻密な状況把握を行うと共に、より有益な災害・被害情報等の情報を居住者に提供する。
このようなサービスを提供するために管理事業体は、サーバコンピュータ等のコンピュータを用いた情報処理装置1を管理しており、情報処理装置1は、専用網、VPN(Virtual Private Network )、インターネット等のネットワークNWに接続されている。情報処理装置1は、ネットワークNWを介して、様々な地域の様々な建物から様々な情報を受信し、受信した情報を記録し、また、記録された情報は、構造性の診断等の目的のため管理事業体により適切に利用される。
図1では、居住者が居住する建物Bとして集合住宅Bが例示されており、集合住宅Bの柱、梁、内装等の部位に、建物に対する加速度、変形状況等の物理量を検出して地震の強度、建物の変形量等の測定項目を測定するセンサSを用いた測定装置が配設されている。また、建物B内の各戸には、災害・被害情報等の情報を出力する液晶ディスプレイ等の入出力装置2が配設されており、入出力装置2は、受信した災害・被害情報等の情報を画像として表示出力する。センサS及び入出力装置2は、ネットワークNWに接続されており、情報処理装置1と通信することができる。
また、管理事業体は、オペレータが操作する端末装置3を管理しており、端末装置3は、ネットワークNWを介して情報処理装置1並びにセンサS及び入出力装置2と通信することができる。
このような入出力装置2としては、必ずしも専用のディスプレイを用いる必要は無く、例えば、HEMS(Home Energy Management System )と呼ばれる家庭内エネルギー管理システムに用いられるディスプレイと併用することが可能である。即ち、本願出願人らは、構造ヘルスモニタリングシステムと家庭内エネルギー管理システムとを融合させたスマートハウスを提唱している。
<各装置の構成>
図2は、本願記載の情報処理システムの居住者側で用いられる入出力装置2の一例を示す外観概略図である。図2に外観概略図を例示した入出力装置2は、例えば、HEMS用のディスプレイを備えるコンピュータを用いて構成されており、様々な画像を表示する出力を行い、また、居住者の操作に基づく入力を受け付ける。入出力装置2は、薄板状の被接触面21aを有する入力部21及び画像を表示出力する薄板状の表示部(画像出力部)22を積層したタッチパネル式ディスプレイを備えている。更に入出力装置2は、各種押しボタン等の操作部23、スピーカ等の音声出力部24等の様々な機構を備えている。なお、図2に例示した入出力装置2は、タッチパネル式ディスプレイとは別に制御本体となるコンピュータを備えている。
図3は、本願記載の情報処理システムの居住者側で用いられる装置の構成例を概略的に示す説明図である。集合住宅Bの戸毎に配設される入出力装置2は、前述した入力部21、表示部(画像出力部)22、操作部23、音声出力部24等の構成の他、制御部20、記録部25、記憶部26、通信部27等の各種機構を備えている。
制御部20は、情報処理回路、計時回路、レジスタ回路等の各種回路を備え、装置内の各部を制御する処理を実行するCPU(Central Processing Unit )等の回路である。
記録部25は、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の不揮発性メモリ、及び各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される回路であり、様々な情報を記録している。記録部25には、基本プログラム(OS:Operating System)、基本プログラム上で動作する応用プログラム(アプリケーションプログラム)等のプログラムを記録している。
記憶部26は、揮発性メモリを用いて構成される回路であり、各種プログラムの実行に際して発生するデータを一時的に記憶する。なお、便宜上、記録部25及び記憶部26を異なる構成として示しているが、一の回路で構成しても良く、また相互にその機能を補完することも可能である。
通信部27は、アンテナ及びその付属回路を用いて構成される無線通信回路、又はLANアダプタ及びその付属回路を用いて構成される有線通信回路であり、図示しないルータ等の通信装置を介してネットワークNWと接続する。
また、集合住宅Bに配設されたセンサSを用いた測定装置は、柱、梁、外壁等の部位に対する加速度、変形量等の各種物理量を測定し、測定した物理量をネットワークNWを介して情報処理装置1へ送信する。
図4は、本願記載の情報処理システムの管理者側で用いられる装置の構成例を概略的に示す説明図である。情報処理装置1は、制御部10、記録部11、記憶部12、通信部13等の各種機構を備えている。
情報処理装置1が備える記録部11は、ハードディスクドライブ等の磁気記録媒体、半導体記録媒体等の不揮発性メモリにて構成される回路であり、各種プログラム及びデータ等の様々な情報が記録されている。また、記録部11の記録領域の一部は、各種情報を記録する戸情報データベース11a、修繕情報データベース11b、被災情報データベース11c、対応情報データベース11d等のデータベースとして用いられている。なお、これらのデータベースは、情報処理装置1からアクセス可能な他の記録装置を用いるようにしても良い。また、これらのデータベースに対しては、アクセス権限のある端末装置3から情報処理装置1を介してアクセスすることも可能である。
戸情報データベース11aは、サービスの被提供者となる居住者の戸毎の情報を記録するデータベースであり、戸を識別する戸識別情報に対応付けて、戸の名称を示す邸名、住所、階数、引渡日等の様々な情報が記録されている。
修繕情報データベース11bは、各戸が過去に受けた被害等の事由に基づく変形に対して修繕した結果を数値にて示した修繕量を、戸識別情報に対応付けて記録するデータベースである。
被災情報データベース11cは、地震の震度、住居の診断結果等の情報を、戸識別情報に対応付けて記録するデータベースである。地震の震度は、センサSにより計測される地震の強度であり、加速度に基づいて算出される。また、震度と共に、東西、南北及び上下の各方向に対する地動加速度をガル単位で記録する。診断結果は、東西及び南北の方向毎に各階の損傷の状況を、健全、損傷(小)、損傷(中)、損傷(大)等の複数のランクに分級して記録する。
対応情報データベース11dは、異変情報、対応状況情報等の情報を戸識別情報に対応付けて記録するデータベースである。異変情報とは、居住者から戸毎に収集した情報であり、受付日及び異変発生箇所等の情報が記録されている。対応状況情報とは、管理事業体による対応の状況を示す情報であり、居住者への連絡日、調査日、復旧日等の情報が記録されている。
また、記録部11には、サーバコンピュータを本発明の情報処理装置1として動作させるための情報処理装置用プログラム等の応用プログラムが記録されている。そして、サーバコンピュータは、制御部10の制御により、記録部11に記録されている情報処理装置用プログラムを読み取り、記憶部12に各種情報を記録して、各種手順を実行することにより、情報処理装置1として動作する。
端末装置3は、制御部30、記録部31、記憶部32、入力部33、出力部34、通信部35等の各種機構を備えている。
<各装置の処理>
次に情報処理システムにて用いられる各装置の処理について説明する。図5A及び図5Bは、本願記載の情報処理システムにて用いられる情報処理装置1の基幹処理の一例を示すフローチャートである。地震の際、センサSは、揺れを検出し、検出した揺れを加速度、変形量等の物理量を示す計測データとして、ネットワークNWを介して情報処理装置1へ送信する。情報処理装置1は、通信部13にて計測データの受信を契機として、制御部10の制御により、基幹処理を実行する。
制御部10は、受信した計測データを取り込み(S101)、取り込んだ計測データに基づき地震の強度として震度を判定する(S102)。ステップS102において、震度は、取り込んだ計測データの東西、南北及び上下方向の加速度に基づき所定の計算式を用いた計算により判定される。なお、センサS側に演算回路を設け、センサSが震度計算をし、計算した震度を計測データに含めて送信するようにしても良い。
制御部10は、居住者に通知すべき状況であると判定した場合、通信部13から入出力装置2へ初期画面を表示させる初期画面表示命令を出力する(S103)。ステップS102において、通知するほどではない程度の微弱な震度であると判定した場合、ステップS103以降の処理は行われない。これにより、居住者に対する不要なメッセージ出力を制限し、警戒感が希釈化されることを防止する。なお、センサSが、微弱な揺れである場合、計測データを送信しないようにしても良い。
図6は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。図6は、入出力装置2が初期画面表示命令を受信した場合に表示される画像を示しており、「建物の揺れを検知しました。ただいま、分析中です」という文言が表示される。
図5Aのフローチャートに戻り、制御部10は、修繕情報データベース11bから、計測データの送信元の戸を識別する戸識別情報に対応付けて記録されている修繕量を示す修繕情報を読み取り(S104)、読み取った修繕情報にて示される修繕量により計測データとして取り込んだ変形量を補正する(S105)。建物は、ある程度の変形量であれば弾性変形として元の状態に戻るが、ある程度以上の変形量となると、傷、歪み等の状態として建物に蓄積する。修繕量は、このような蓄積した変形量を数値化したものであり、変形量に基づいて損傷の程度を判定するに当たり、蓄積した歪み等の状態に基づいて変形量を補正する必要が生じる。ステップS105は、このような損傷の程度を判定するための前処理として行われる。
制御部10は、変形量に基づいて躯体の状態を診断する(S106)。ここで、情報処理装置1の記録部11には、予め建物毎の震災による変形量と躯体に対する損傷との関係を分析してデータベース化されている。よって、当該データベースを利用し、センサSから取得した変形量から躯体に対する損傷を推測することで、躯体の状態診断することができる。なお、ステップS105において、過去の損傷により変形量を補正している場合、補正した変形量に基づいて躯体の状態が診断される。
図7は、本願記載の情報処理システムにおいて、躯体の損傷状態の一例を示す図表である。躯体の状態は、損傷の程度が高いランク「A」から低いランク「E」まで分級される。なお、後述する地盤異変の状態により、更にランクは細かく分級される。損傷の程度は、変形量に基づいて診断されるものであり、地盤異変を考慮しない場合、ランク「A」の「躯体損傷(大)」からランク「D」及び「E」の「躯体健全」まで5段階に分級される。
図5Aのフローチャートに戻り、制御部10は、ステップS106の診断結果に基づいて躯体損傷の有無を判定する(S107)。ステップS107では、ランク「A」、「B」及び「C」が「躯体損傷有り」と判定され、ランク「D」及び「E」は「躯体損傷無し」と判定される。
ステップS107において、ランク「D」又は「E」で「躯体損傷無し」と判定された場合(S107:NO)、制御部10は、例えばステップS102にて加速度から地震の強度として判定された震度を、予め設定されている基準強度以上であるか否かを判定する(S108)。基準強度としては、例えば、建物に異変が生じうるとされる「震度5強」に相当する強度が設定される。
ステップS108において、震度が基準強度より小さいと判定した場合(S108:NO)、制御部10は、取得した加速度、変形量、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S109)。躯体に損傷が無く、震度が基準強度より小さい場合、ランクは「E」に該当するため、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて地震被害に係る情報を提供するための被害情報を生成し(S110)、生成した被害情報を入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S111)。そして、制御部10は、地震の震度、住居の診断結果等の情報を戸識別情報に対応付けて被災情報データベース11cに記録し、基幹処理を終了する。
図8は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。図8は、入出力装置2が、ステップS111に出力される被害情報表示命令を受信した場合に表示される画像を示している。被害情報表示命令により入出力装置2の表示部22に表示される画像には、震度を示す「4」との文言及び躯体(建物)の損傷状況を示す「健全」との文言が表示される。また、東西及び南北方向の揺れの程度を階毎に棒グラフとして表示される。画像内の下方には、「OK」との文言が表示されたアイコン画像が表示され、居住者がアイコンを指示する操作を行うことにより、表示された画像は更新され、通常状態の画像に戻る。
図5Aのフローチャートに戻り、ステップS108において、震度が基準強度以上と判定した場合(S108:YES)、制御部10は、非常時処理を実行する(図5BのS112)。非常時処理とは、躯体に損傷が有る場合又は震度が基準強度以上の場合に、非常事態であるとして実行する処理であり、戸別の異変の発生状況を居住者から収集することにより、センサSの誤検出の防止、計測項目以外の異変の考慮等の利点を見込むことができる。情報処理装置1は、このような非常時処理をサブルーチンとして呼び出し、実行する。
ここで、非常時処理について説明する。図9は、本願記載の情報処理システムにて用いられる情報処理装置1の非常時処理の一例を示すフローチャートである。なお、図9(a)では、情報処理装置1の非常時処理の例を示し、図9(b)として、情報処理装置1の非常時処理の対象となる入出力装置2の処理の例について示している。
情報処理装置1の制御部10は、非常時処理として、外部情報を取得する(S201)。ステップS201にて取得する外部情報とは、電気、水道、ガス等のライフラインの供給状況を示すライフライン情報、その他公的機関からの災害、避難指示等の外部から得られる情報である。また、ライフライン情報のうち、例えば、電気については、建物に太陽光発電等の発電設備を有している場合、発電量、蓄電量、消費量等の情報も外部情報として取得する。
制御部10は、取得した加速度、変形量、外部情報、その他様々な診断結果に基づいて被害情報を生成する(S202)。ステップS202にて生成した初期被害情報は、被害に関する情報を居住者に提供するだけでなく、居住者が居住する建物の戸別の異変の情報の入力を要求する文言をも含む。制御部10は、生成した初期被害情報を、被害に関する情報の提供及び戸別異変情報の入力要求として、入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ、初期被害情報出力命令を出力する(S203)。
図9(b)のフローチャートに示すように、入出力装置2の制御部20は、通信部27により、戸別異変情報入力要求を含む初期被害情報の出力命令を受信し(S301)、初期被害情報(戸別異変情報入力要求)を表示部22から画像表示として出力する(S302)。
図10は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。図10は、ステップS302において、入出力装置2の表示部22に表示される画像を示している。初期被害情報として表示される画像には、上方の領域には、「建物に損傷はありません。壁紙に損傷が生じている可能性がありますが、安全上の問題はありません。」との概況を示す文言が表示されている。また、概況の下方の左側の領域には、震度を示す文言、躯体(建物)を示す文言及び揺れの程度を示す棒グラフが示されており、右側には、ライフライン情報に基づく情報が表示されている。
下方の中央の領域は、主として管理事業体の対応状況を表示する領域である。対応状況は、「構造モニタリング診断」、「お住まいの状況報告受付」、「お客様へのご連絡」等の状況を示す文言が、日時を示す情報と共に、その時系列の順序に従って上から下へと配列した一覧として表示される。各状況を示す文言に対応付けて、経過を示す四角の画像「□」が示されており、その状況が経過する都度、その状況の経過を示す四角の画像の色が変化し、その時の時刻が示される。図10に表示する例では、「構造モニタリング診断」が済んで「住まいの状況報告受付」の段階であることが示されている。居住者は、経過を示す四角の画像の色及び時刻によって、対応状況を認識することができる。また、対応状況の一覧の上方には、「お住まいの状況をお知らせ下さい。」という文言と共に「クリック」という文言により操作を要求する画像が表示されている。操作の要求に従って、「クリック」と示された画像を指示する入力をすることにより、戸別異変情報である「お住まいの状況報告」を行うことが可能となる。
図11は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。図11は、図10に示す画像から要求された操作(クリック)を行った場合に、ポップアップ表示されるウィンドウの画像であり、戸別異変情報の入力要求が表示されている。戸別異変情報の入力要求は、「お住まいに変化はございますか?以下の質問にご回答下さい」という入力を要求する文言と共に、「建物の地盤の傾きや沈下が生じている」、「基礎にひび割れが生じている」等の複数の質問、及び各質問に対するそれぞれの回答となる「はい」及び「いいえ」の選択肢が示されている。また、下方には、「入力完了」という文言が示された入力を完了したことを示す画像が表示されている。使用者は、各質問に対し、「はい」又は「いいえ」を指示する入力を行う。なお、異変が生じている場合、管理事業体は、その異変の状況を更に詳しく収集する必要があるため、入力を要求する項目は階層的に関連付けて構成されている。
図12は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。図12は、図11に示す画像から「開閉しにくい窓や扉がある」という項目に対して「はい」を指示する操作を行った場合に、ポップアップ表示されるウィンドウの画像であり、階層的に関連付けられた下位の要求項目を示す画像が表示されている。図12に例示された項目は、窓の開閉状況について更に詳細な入力を要求する項目であり、窓の状態を示す画像と共に、「窓や扉は開けられるが開けにくくなった」等の文言が示されている。このように、戸別異変情報の入力要求は、複数の要求項目を階層的に関連付けてあり、一の要求に対して受け付けた内容に基づいて、一の要求に関連付けられている他の要求に対する入力を更に要求するように構成されている。なお、このような階層構造は、必要に応じて何段階にでも構成することが可能である。
階層的に構成されている複数の要求に対する入力を行った後、図11に例示したウィンドウから、「入力完了」と示された画像を指示する入力を行うことにより、戸別異変情報の入力が完了する。入出力装置2は、戸別異変情報の入力が完了するとポップアップ表示した入力要求のウィンドウを閉じる。
このように、本願記載の情報処理システムでは、居住者に戸別異変情報の入力を要求し、要求に対して入力された戸別異変情報を取得して様々な判断に活用する。これにより、本願記載の情報処理システムでは、センサS等の測定装置が配設されていない箇所の異変、測定装置では測定できない異変等の様々な異変に係る情報を収集することができる。更に、収集した異変に係る情報と、センサSによる計測データと比較することにより、センサSの誤計測等の異常を発見することもできる。また、階層構造をなす戸別異変情報の入力要求として、質問の方法及び順序を工夫することにより、例えば、簡単な答えやすい質問を最初に行ったり、火元の確認等の危険回避のための質問をも含めたりすることにより、居住者を落ち着かせ、回答の精度を向上させると共に、安全な初期対応をとるように誘導することが可能となる。
図9(b)のフローチャートに戻り、入出力装置2の制御部20は、戸別異変情報の入力を受け付け(S303)、受け付けた戸別異変情報を通信部27から情報処理装置1へ送信する(S304)。
図9(a)のフローチャートに示すように、情報処理装置1の制御部10は、入出力装置2から送信された戸別異変情報を、通信部13から取得し(S204)、取得した戸別異変情報に基づいて異変有無の判定を行う(S205)。そして、情報処理装置1は、サブルーチンとしての非常時処理を終了し、基幹処理に戻る。
図5Bのフローチャートに戻り、制御部10は、非常時処理の結果に基づいて異変の有無を判定する(S113)。ステップS113の判定は、非常時処理のステップS204にて判定した結果を受け渡すことにより行われる。
ステップS113において、異変が生じていないと判定した場合(S113:NO)、制御部10は、取得した加速度、変形量、異変、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S114)。震度が基準強度以上であるが異変が生じていない場合、ランクは「E」に該当するため、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて被害情報を生成し(S115)、生成した被害情報を入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S116)。そして、制御部10は、地震の震度、住居の診断結果等の情報を戸識別情報に対応付けて被災情報データベース11cに記録し、基幹処理を終了する。
図13は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。図13は、入出力装置2が、ステップS116にて出力される被害情報表示命令を受信した場合に表示される画像を示している。上方の領域には、「建物に損傷はありません。壁紙に損傷が生じている可能性がありますが、安全上の問題はありません。」との概況を示す文言が表示されている。また、下方の中央の領域は、「住まいの状況報告受付」が完了して、完了日付が表示されるとともに、対応状況が完了されている。
図5Bのフローチャートに戻り、ステップ113において、異変が生じていると判定した場合(S113:YES)、制御部10は、第1診断処理及び被害情報生成出力処理を実行する(S117)。第1診断処理及び被害情報生成出力処理とは、異変が生じている場合に、管理事業体のオペレータに状況を通知して、管理事業体が状況の調査、復旧等の作業を行い、また居住者を安全にサポートするために実行する処理である。情報処理装置1は、このような第1診断処理及び被害情報生成出力処理をサブルーチンとして呼び出し、実行する。
ここで、第1診断処理及び被害情報生成出力処理について説明する。図14は、本願記載の情報処理システムにて用いられる情報処理装置1の第1診断処理及び被害情報生成出力処理の一例を示すフローチャートである。
情報処理装置1の制御部10は、第1診断処理及び被害情報生成出力処理として、高レベル異変の有無を判定する(S401)。判定の対象となる異変とは、非常時処理にて居住者から受け付けた戸別異変情報に基づく異変である。異変は、建物の変形量と相関が高く、変形量が比較的小さい段階でも壁紙等の内装の異変が生じ易い。そして、変形量が大きくなるに従い、躯体についての異変が生じ始め、変形量が相当大きい場合は、窓、扉等の開口の異変が発生する。なお、異変のうちでも地盤に関する異変は変形量との相関が低いため、ステップS401の判定には用いない。ステップS401では、開口の異変を高レベル異変として取り扱い、開口の異変が発生しているか否かを判定するものとする。
ステップS401において、高レベル異変が発生していないと判定した場合(S401:NO)、制御部10は、地盤異変の有無を判定する(S402)。
ステップS402において、地盤異変が発生していないと判定した場合(S402:NO)、制御部10は、取得した加速度、変形量、異変、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S403)。低レベルの異変が発生しているものの、高レベルの異変及び地盤異変が発生していない場合、ランクは「D」に該当するため、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて被害情報を生成し(S404)、生成した被害情報を入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S405)。
図15は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。図15は、入出力装置2が、ステップS405にて出力される被害情報表示命令を受信した場合に表示される画像を示している。ステップS405にて表示される画像では、対応状況として、居住者(お客様)から異変を状況報告として受け付けたことが示されている。また、上方に「管理事業体からご連絡致します。」との文言が追加されており、管理事業体から更なる連絡があることを示している。
図14のフローチャートに戻り、制御部10は、管理事業体の対応が完了したか否かを判定する(S406)。総合診断の結果は、端末装置3へも通知されており、端末装置3を操作するオペレータは、管理事業体の対応が完了した場合、対応完了したことを示す操作を行う。操作を受け付けた端末装置3は、対応完了したことを示す命令を情報処理装置1へ送信する。情報処理装置1は、ステップS406において、当該命令を受信しているか否かにより対応完了の判定を行う。
ステップS406において、対応が完了していないと判定した場合(S406:NO)、制御部10は、端末装置3から送信される対応情報の受付待ちとなる。
ここで、端末装置3にて行われる処理について説明する。図16は、本願記載の情報処理システムにて用いられる端末装置3の対応処理の一例を示すフローチャートである。オペレータの操作に従い、端末装置3の制御部30は、対応支援情報を出力部34から出力する(S501)。対応支援情報とは、管理事業体のオペレータが対応を検討する際に、検討を支援するための情報であり、ステップS501において、端末装置3は、モニタ、プリンタ等の出力部34による出力として対応支援情報の表示、印刷等の処理を実行する。
図17及び図18は、本願記載の情報処理システムにて用いられる端末装置3が備える出力部34から出力される画像の一例を示す説明図である。図17及び図18は、ステップS501の出力として、対応支援情報をモニタに表示した例を示している。
図17に示す対応支援情報は、建物情報、モニタリング情報等の様々な情報を戸毎に表示するものであり、情報処理装置1の戸情報データベース11a及び被災情報データベース11cから読み取った情報に基づいて生成され表示される。建物情報としては、邸名、住所、階数、引渡日等の情報が表示されている。モニタリング情報としては、地震に関する情報、診断に関する情報等の情報が表示される。地震に関する情報としては、震度、並びに東西、南北及び上下方向の地動加速度が表示される。診断に関する情報としては、健全又は小、中及び大に分級された損傷の程度、並びに階毎及び方向毎の損傷の状況が表示される。なお、「詳細」と示されたアイコンをクリックすることにより更に詳しい情報が表示される。
図18に示す対応支援情報は、建物情報、モニタリング情報、地震後対応状況との様々な情報を戸別に表示するものであり、戸情報データベース11a、被災情報データベース11c及び対応情報データベース11dから読み取った情報に基づいて生成され表示される。地震後対応状況としては、戸別の異変情報(住まいの状況報告)、居住者(お客様)への連絡内容、調査日、復旧日等の情報が表示される。戸別の異変情報としては、受付日、並びに地盤、基礎、床、開口、内装等の箇所毎の異変発生の有無(Y/N)が表示される。なお、「詳細」と示されたアイコンをクリックすることにより更に詳しい情報が表示される。
端末装置3は、オペレータの操作に従い、図17及び図18に例示するように様々な情報を戸毎の一覧として表示することが可能である。また、オペレータは、表示された情報に基づいて、調査、対応、連絡等の様々な作業の計画及び指示を行う。そして作業計画の立案に際し、端末装置3に表示された情報の並び替えを行うことにより、優先順位の決定等の作業を効果的に支援することができる。また、端末装置3は、図17及び図18に示すように一覧として表示するだけでなく、震度、異変等の情報を、戸情報に示された住所(位置情報)に基づき地図上にマッピングして表示することも可能である。震度、異変等の情報をマッピングした地図を表示することにより、作業計画の立案を効果的に支援することができる。
オペレータは、出力された対応支援情報、その他、電話、ファクシミリ等の様々な手段で入手した情報に基づいて作業を行い、端末装置3を操作し、対応の進捗に応じて、戸を指定して対応の状況を示す対応情報の入力を行う。
図16のフローチャートに戻り、制御部30は、マウス、キーボード等の入力部33から、対応情報の入力を受け付け(S502)、受け付けた対応情報を通信部35から情報処理装置1へ送信する(S503)。
図14のフローチャートに戻り、制御部10は、端末装置3から送信された対応情報を通信部13にて受け付け(S407)、受け付けた対応情報に基づいて更新被害情報を生成し(S408)、生成した更新被害情報を入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ更新被害情報表示命令を出力する(S409)。更新被害情報とは、入出力装置2に表示されている画像を更新するための情報であり、対応情報に基づいて入出力装置2に表示されている画像において、連絡事項の更新、対応状況の更新、ライフライン状況の更新等の様々な情報が更新される。
そして、ステップS406に戻り、制御部10は、対応が完了するまで、ステップS407〜S409の処理を繰り返す。ステップS406において、対応が完了していると判定した場合(S406:YES)、制御部10は、サブルーチンとしての第1診断処理及び被害情報生成出力処理を終了し、基幹処理に戻る。
ステップS402において、地盤異変が発生していると判定した場合(S402:YES)、制御部10は、取得した加速度、変形量、異変、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S410)。低レベルの異変が発生しているものの、高レベルの異変は発生していないが、地盤異変が発生している場合、ランクは「D*」に該当するため、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて被害情報を生成し(S411)、生成した被害情報を入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S412)。そして、管理事業体としての対応が完了するまで、ステップS406〜S409の処理を繰り返す。
ステップS401において、高レベル異変が発生していると判定した場合(S401:YES)、制御部10は、センサSから取り込んだ変形量に基づく建物の損傷の程度と、入出力装置2から受け付けた戸別異変情報に基づく建物の損傷の程度に相違があると判定する。即ち、基幹処理のステップS107(図5A)にてセンサSから取り込んだ変形量に基づき推測される建物の損傷の程度が、「損傷無し」と判定されているにも関わらず、ステップS401にて高レベル異変が発生していると判定されていることから、判定結果に相違があると判定するのである。このような場合、センサSから取得した計測データ及び居住者から受け付けた異変のうちの少なくとも一方に誤りがあると推測される。このような判定をすることにより、センサSの異常を発見し、また場合によっては居住者の状況を判断するために活用することもできる。なお、ここでは、変形量の判定結果と、高レベル異変の発生とを単純に比較する形態を例示したが、様々な測定データと様々な戸別異変情報とを比較することにより、高精度に相違の有無を判定することが可能となる。
センサSによる損傷の程度と、戸別異変情報に基づく損傷の程度とに相違があると判定した制御部10は、相違があることを示す相違情報を、端末装置3の出力部34から出力させるべく、通信部13から端末装置3へ、相違情報を出力する(S413)。
ここで、端末装置3にて行われる処理について説明する。図19は、本願記載の情報処理システムにて用いられる端末装置3の相違確認処理の一例を示すフローチャートである。端末装置3の制御部30は、通信部35にて相違情報を受信し(S601)、受信した相違情報を出力部34から出力し(S602)、更に対応支援情報を出力する(S603)。
相違情報を確認したオペレータは、対応支援情報を確認する。ステップS502にて出力される対応支援情報とは、対応処理として例示したステップS501にて出力される対応支援情報等の情報である。オペレータは、対応支援情報を確認し、また必要に応じて作業者を手配してセンサS、建物等の現場の状況を確認することにより、実際の状況を認識する。そして、オペレータは、状況認識に基づいて実際の被害の状況等の情報を含む実被害情報を端末装置3に入力する。
制御部30は、入力部33から実被害情報の入力を受け付け(S604)、受け付けた実被害情報を通信部35から情報処理装置1へ送信する(S605)。
図14のフローチャートに戻り、制御部10は、端末装置3から送信された実被害情報を通信部13にて受け付け(S414)、受け付けた実被害情報を、被害情報として入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ実被害情報表示命令を出力する(S415)。そして、管理事業体としての対応が完了するまで、ステップS406〜S409の処理を繰り返す。
このようにして、制御部10は、サブルーチンとしての第1診断処理及び被害情報生成出力処理を実行し、終了後、基幹処理に戻る。そして、当該サブルーチンを実行後、制御部10は、基幹処理として、地震の震度、住居の診断結果等の情報を戸識別情報に対応付けて被災情報データベース11cに記録し、基幹処理を終了する。
図5BのステップS118に戻り、震度が基準強度より小さいと判定した場合(S118:NO)、制御部10は、非常時処理を実行する(図5BのS119)。ステップS119にて実行する非常時処理は、ステップS112にて実行した非常時処理と実質的に同様であり、制御部10は、非常時処理により異変の有無を判定する。
そして、制御部10は、第2診断処理及び被害情報生成出力処理を実行する(図5BのS120)。第2診断処理及び被害情報生成出力処理とは、非常時処理により判定した異変の有無に基づき、管理事業体のオペレータに状況を通知して、管理事業体が状況の調査、復旧等の作業を行い、また居住者を安全にサポートするために実行する処理である。情報処理装置1は、このような第2診断処理及び被害情報生成出力処理をサブルーチンとして呼び出し、実行する。
ここで、第2診断処理及び被害情報生成処理について説明する。図20は、本願記載の情報処理システムにて用いられる情報処理装置1の第2診断処理及び被害情報生成処理の一例を示すフローチャートである。
情報処理装置1の制御部10は、非常時処理の実行結果に基づいて、異変の有無を判定する(S701)。
ステップS701において、異変が発生していないと判定した場合(S701:NO)、制御部10は、センサSから取り込んだ変形量に基づく建物の損傷の程度と、入出力装置2から受け付けた戸別異変情報に基づく建物の損傷の程度に相違があると判定する。即ち、躯体に損傷が生じる程度の変形量であるにも関わらず、異変が発生していないと判定されていることから、判定結果に相違があると判定する。
センサSによる損傷の程度と、戸別異変情報に基づく損傷の程度とに相違があると判定した制御部10は、端末装置3の出力部34から出力させるべく、通信部13から端末装置3へ、相違情報を出力する(S702)。
そして、管理事業体のオペレータは、出力された相違情報に対し、様々な確認を行い、実被害情報を端末装置3に入力し、情報処理装置1へ送信する。
制御部10は、端末装置3から送信された実被害情報を通信部13にて受け付け(S703)、受け付けた実被害情報を、被害情報として入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ実被害情報表示命令を出力する(S704)。
そして、制御部10は、管理事業体の対応が完了するまで(S705:NO)、端末装置3から送信された対応情報を受け付け(S706)、更新被害情報を生成し(S707)、入出力装置2へ更新被害情報表示命令を出力する(S708)処理を繰り返す。ステップS705において、対応が完了していると判定した場合(S705:YES)、制御部10は、サブルーチンとしての第2診断処理及び被害情報生成出力処理を終了し、基幹処理に戻る。
ステップS701において、異変が発生していると判定した場合(S701:YES)、制御部10は、地盤異変の発生の有無を判定する(S709)。
ステップS709において、地盤異変が発生していないと判定した場合(S709:NO)、制御部10は、取得した加速度、変形量、異変、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S710)。躯体に損傷があり、震度が基準強度より小さく、地盤異変が発生していない場合、ランクは「A」、「B」、「C」及び「D」のいずれかに該当し、加速度、変形量、異変等の情報に基づいて最終的なランクが決定され、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて被害情報を生成し(S711)、生成した被害情報を入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S712)。そして、管理事業体としての対応が完了するまで、ステップS705〜S708の処理を繰り返す。
ステップS709において、地盤異変が発生していると判定した場合(S709:YES)、制御部10は、取得した加速度、変形量、異変、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S713)。躯体に損傷があり、震度が基準強度より小さく、地盤異変が発生している場合、ランクは「A*」、「B*」、「C*」及び「D*」のいずれかに該当し、加速度、変形量、異変等の情報に基づいて最終的なランクが決定され、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて被害情報を生成し(S714)、生成した被害情報を入出力装置2に表示させるべく、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S715)。そして、管理事業体としての対応が完了するまで、ステップS705〜S708の処理を繰り返す。
このようにして、制御部10は、サブルーチンとしての第2診断処理及び被害情報生成出力処理を実行し、終了後、基幹処理に戻る。そして、当該サブルーチンを実行後、制御部10は、基幹処理として、地震の震度、住居の診断結果等の情報を戸識別情報に対応付けて被災情報データベース11cに記録し、基幹処理を終了する。
図5BのステップS118に戻り、震度が基準強度以上と判定した場合(S118:YES)、制御部10は、非常時処理を実行する(S121)。ステップS121にて実行する非常時処理は、ステップS112にて実行した非常時処理と実質的に同様であり、制御部10は、非常時処理により異変の有無を判定する。
そして、制御部10は、第3診断処理及び被害情報生成出力処理を実行する(S122)。第3診断処理及び被害情報生成出力処理とは、非常時処理により判定した異変の有無に基づき、管理事業体のオペレータに状況を通知して、管理事業体が状況の調査、復旧等の作業を行い、また居住者を安全にサポートするために実行する処理である。情報処理装置1は、このような第3診断処理及び被害情報生成出力処理をサブルーチンとして呼び出し、実行する。
ここで、第3診断処理及び被害情報生成処理について説明する。図21は、本願記載の情報処理システムにて用いられる情報処理装置1の第3診断処理及び被害情報生成処理の一例を示すフローチャートである。
情報処理装置1の制御部10は、非常時処理の実行結果に基づいて、異変の有無を判定する(S801)。
ステップS801において、異変が発生していないと判定した場合(S801:NO)、制御部10は、センサSによる損傷の程度と、戸別異変情報に基づく損傷の程度とに相違があると判定し、通信部13から端末装置3へ、相違情報を出力する(S802)。
そして、管理事業体のオペレータは、出力された相違情報に対し、様々な確認を行い、実被害情報を端末装置3に入力し、情報処理装置1へ送信する。
制御部10は、端末装置3から送信された実被害情報を通信部13にて受け付け(S803)、受け付けた実被害情報に基づいて、通信部13から入出力装置2へ実被害情報表示命令を出力する(S804)。
そして、制御部10は、管理事業体の対応が完了するまで(S805:NO)、端末装置3から送信された対応情報を受け付け(S806)、更新被害情報を生成し(S807)、入出力装置2へ更新被害情報表示命令を出力する(S808)処理を繰り返す。ステップS805において、対応が完了していると判定した場合(S805:YES)、制御部10は、サブルーチンとしての第3診断処理及び被害情報生成出力処理を終了し、基幹処理に戻る。
ステップS801において、異変が発生していると判定した場合(S801:YES)、制御部10は、地盤異変の発生の有無を判定する(S809)。
ステップS809において、地盤異変が発生していないと判定した場合(S809:NO)、制御部10は、取得した加速度、変形量、異変、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S810)。躯体に損傷があり、震度が基準強度以上で、地盤異変が発生していない場合、ランクは「A」、「B」及び「C」のいずれかに該当し、加速度、変形量、異変等の情報に基づいて最終的なランクが決定され、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて被害情報を生成し(S811)、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S812)。そして、管理事業体としての対応が完了するまで、ステップS805〜S808の処理を繰り返す。
ステップS809において、地盤異変が発生していると判定した場合(S809:YES)、制御部10は、取得した加速度、変形量、異変、その他様々な診断結果に基づいて総合診断を行う(S813)。躯体に損傷があり、震度が基準強度以上で、地盤異変が発生している場合、ランクは「A*」、「B*」及び「C*」のいずれかに該当し、加速度、変形量、異変等の情報に基づいて最終的なランクが決定され、当該ランクに応じた総合診断が行われる。
制御部10は、総合診断の結果に基づいて被害情報を生成し(S814)、通信部13から入出力装置2へ被害情報表示命令を出力する(S815)。そして、管理事業体としての対応が完了するまで、ステップS805〜S808の処理を繰り返す。
このようにして、制御部10は、サブルーチンとしての第3診断処理及び被害情報生成出力処理を実行し、終了後、基幹処理に戻る。そして、当該サブルーチンを実行後、制御部10は、基幹処理として、地震の震度、住居の診断結果等の情報を戸識別情報に対応付けて被災情報データベース11cに記録し、基幹処理を終了する。
次に、躯体に損傷があり、震度が基準強度以上の場合(図5BのステップS118においてYESの場合)に入出力装置2から表示される画像の例について説明する。図22乃至図25は、本願記載の情報処理システムにて用いられる入出力装置2が備える表示部22に表示される画像の一例を示す説明図である。
図22は、非常時処理において、初期被害情報(戸別異変情報入力要求)として出力される画像を示している。表示される内容は、図10に例示した画像の例と同様であるが、診断結果等の情報が異なっている。また、対応状況は、地震発生後、戸別異変情報(住まいの状況報告)の受付待ちであることを示している。
図23は、情報処理装置1が、戸別異変情報の入力を受け付け、第3診断処理及び被害情報生成出力処理の例えばステップS812において、被害情報を出力し、出力された被害情報に基づいて、入出力装置2の表示部22に表示される画像の一例を示している。この段階で表示される画像では、対応状況として、居住者(お客様)から異変を状況報告として受け付けたことが示されている。また、上方に「管理事業体からご連絡致します。」との文言が追加されており、管理事業体から更なる連絡があることを示している。
図24は、情報処理装置1が、第3診断処理及び被害情報生成出力処理のステップS808において、更新被害情報を出力し、出力された被害情報に基づいて、入出力装置2の表示部22に表示される画像の一例を示している。図24は、管理事業体の対応により調査が完了した段階で表示される画像の例を示している。対応状況として、調査が完了したことが示されており、また、下方右側の領域に調査が行われた日時が示されている。
図25は、情報処理装置1が、第3診断処理及び被害情報生成出力処理のステップS808において、更新被害情報を出力し、出力された被害情報に基づいて、入出力装置2の表示部22に表示される画像の一例を示している。図25は、管理事業体の対応により復旧が完了した段階で表示される画像の例を示している。対応状況として、復旧が完了したことが示されており、また、下方右側の領域に復旧作業が行われた日時が示されている。このように復旧がなされた段階で、基幹処理及び全てのサブルーチンの処理が終了する。
以上のように本願記載の情報処理システムでは、センサSが計測した測定データに基づいて災害の状況を判定すると共に、震度及び建物の損傷の少なくとも一方が大きい場合に、居住者から状況を収集する非常時処理を実施する。これにより、センサSだけでは把握しきれない状況を把握することが可能となる。なお、非常時処理は、地震の強度が基準強度以上の場合、又は変形量が基準変形量より大きい場合に実施する。即ち、基準強度より地震の強度が弱い場合であって、基準変形量より被災による変形量が小さいときに、建物の戸別の異変を示す戸別異変情報の入力の要求を制限する。ここでいう制限とは、非常時処理としての入力の要求を行わず、戸別異変情報の入力の要求を行わないか、又は一部或いは簡略的な処理のみを実行することをいう。
また、本願記載の情報処理システムでは、センサSの測定結果と、居住者から受け付けた異変とが相違する場合、管理事業体の担当者が適宜対応する。これにより、誤検出、誤操作等の異常による不適切な対応を防止することが可能となる。
さらに、本願記載の情報処理システムでは、管理事業体の対応に応じて、入出力装置2に表示される内容を適宜更新することにより、居住者に安心感を与え、適切な行動を促すサービスを提供することができる。
<他のシステム構成(1)>
図26は、本願記載の情報処理システムの概要の一例を模式的に示す説明図である。図26は、情報処理システムの他の構成例を示している。前述の実施形態では、ネットワークNWを介して、情報処理装置1、入出力装置2、センサS及び端末装置3が接続される形態を示した。これに対し、図26に例示する情報処理システムでは、情報処理装置1及び端末装置3をネットワークNWを介さずに接続している。なお、情報処理装置1及び端末装置3を1台の装置にて構成することも可能である。このように構成される他のシステム構成(1)であるが、各装置の処理については、図1を用いて示した情報処理システムと実質的に同様である。
<他のシステム構成(2)>
図27は、本願記載の情報処理システムの概要の一例を模式的に示す説明図である。図27は、情報処理システムの更に他の構成例を示している。図27に示す構成例では、情報処理装置1を、集合住宅毎に又は戸毎に配設する。即ち図1と比べて少数の戸単位毎に情報処理装置1を設ける形態である。このように構成することにより、システム全体の冗長性を向上させ、ネットワークNWの一部に障害が生じた場合でも、影響を最小限に抑えることが可能である。
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
例えば、前記実施形態では、一のセンサSの測定データに基づいて震度及び変形量を算出する形態を示したが、本発明はこれに限るものでは無く、それぞれ異なるセンサSにより震度及び変形量を測定及び算出するようにしても良く、更には複数のセンサSの測定結果を総合的に判断して震度及び変形量を算出するようにしても良い等、様々な形態に展開することが可能である。
また、前記実施形態において示した震度及び被害の判定及び分級はあくまでも一例であり、更に細分化することも可能である。