JP6098266B2 - 多層フィルムおよび包装体 - Google Patents
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(1)結晶性樹脂Aを有する第1の層と、結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層とを交互に繰り返し積層してなる繰り返し部を含む多層フィルムであって、前記結晶性樹脂Aの重量平均分子量が40,000以上、200,000以下であり、前記第1の層と第2の層のそれぞれの平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であることを特徴とする多層フィルム。
(2)前記熱可塑性樹脂Bの重量平均分子量が10,000以上、400,000以下である上記(1)に記載の多層フィルム。
(3)前記繰り返し部の結晶性樹脂Aの結晶成分に由来するX線回折像が、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧状のいずれか1種以上の形状に出現するものである上記(1)または(2)に記載の多層フィルム。
(4)前記繰り返し部の熱可塑性樹脂Bの結晶成分に由来するX線回折像が、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧状のいずれか1種以上の形状に出現するものである上記(1)ないし(3)いずれかに記載の多層フィルム。
(5)前記繰り返し部の結晶性樹脂Aの結晶の分子鎖軸が、フィルム平面に対して傾斜、あるいは水平方向に配向した異方性結晶を有する上記(1)ないし(4)いずれかに記載の多層フィルム。
(6)上記(1)ないし(5)いずれかに記載の多層フィルムを2次成形することにより得られる成形体。
すなわち、本発明の多層フィルムは、結晶性樹脂Aを結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bで挟み込むことによって、結晶性樹脂Aの結晶成分の成長方向を制御でき、球晶を多く有する従来の高分子材料に比して、有利な配向状態を形成することが可能となる。
これにより、サイズ効果による高分子結晶の特異的な構造を形成し、結晶性樹脂Aの結晶成分の生長をより精密に制御できるため、従来の熱可塑性樹脂の特徴を損なうことなく多層フィルム100のガスバリア性を向上させることが出来ると考えられる。
第1の層1と第2の層2の平均層厚みが1000nmより厚い場合には、フィルム中に占める高分子結晶の構造制御が達成された部位の割合が極端に低下するため、ガスバリア性向上の効果が十分ではなくなる。
第1の層1と第2の層2の平均層厚みが10nmより薄い場合にも、また同様である。
第1の層1と第2の層2の平均層厚みが、前記範囲内にあることにより、結晶性樹脂Aの結晶成分の生長をより一層精密に制御できるため、ガスバリア性の高いフィルムを得ることができる。
また、第2の層2の平均層厚みとは、多層フィルム100に含まれる全ての第2の層2の厚さの和を多層フィルム100に含まれる第2の層の総数で除したものをいう。
また、多層フィルム100が有する繰り返し部10の数が前記範囲内であり、且つ、第1の層1と第2の層2の平均層厚みが前記範囲内であることにより、結晶性樹脂Aの結晶成分の生長を精密に制御できるため、ガスバリア性の高いフィルムを得ることができる。
特に、100nm以下の層が100層以上の場合にはガスバリア性を更に向上させることが出来る。また、100nm以下の層が1000層以上の場合にはガスバリア性を更に向上させることが出来る。上限値は特に設定されないが、10000層以下であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂Bの重量平均分子量が前記範囲内にあることにより、フィルム物性や成形性を阻害することなく結晶性樹脂Aの配向結晶化を達成する事が出来る。
「結晶性樹脂Aとは異なる」とは、結晶性樹脂Aと化学構造が異なるということであり、結晶性樹脂Aの化学構造が繰り返し構造を有する場合には、繰り返し構造が熱可塑性樹脂Bとは異なるものでなかったとしても、樹脂全体に対する繰り返し構造の重量比率または繰り返し構造以外の化学構造が熱可塑性樹脂Bと異なる場合には、熱可塑性樹脂Bは「結晶性樹脂Aとは異なる」ものである。
また、結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bが2種類以上の樹脂のブレンドである場合、結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bに含まれる樹脂が異なるものでなかったとしても、樹脂の配合比率が異なるものである場合、熱可塑性樹脂Bは「結晶性樹脂Aとは異なる」ものである。
これにより、より一層厳密な結晶生長制御、配向制御が可能となり、成形性、ガスバリア性に優れた多層フィルム100が得られる。
多層フィルム100全体に対する、第1の層1の重量比率が前記下限値未満の場合、結晶の配向制御が十分ではなく、ガスバリア性向上の効果が低減する場合がある。
尚、多層フィルム100全体に対する、第1の層1の重量比率が前記上限値より大きい場合でも同様である。
多層フィルム100における、結晶性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの少なくともいずれかの結晶成分に由来するX線回折像は、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧上のいずれか1種類以上の形状に出現することが好ましい。
上記結果が得られた場合、結晶性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの結晶成分が、球晶が極めて少なく、高い配向性を示していることを意味しており、主に、円周方向(Φ)に強度分布のある円状にX線回折像が出現する、球晶を多く有する従来の高分子材料よりも優れたガスバリア性が得られる。
尚、結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの結晶成分に由来するX線回折像が、いずれも円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧上のいずれか1種類以上の形状に出現することがより好ましい。これにより、球晶を多く有する従来の高分子材料よりもより一層優れたガスバリア性が得られる。
これにより、結晶ラメラ中の結晶面がフィルムの平面上に広範囲に分布することで、より一層ガスバリア性の高いフィルムを得ることができる。
尚、結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの結晶の分子鎖軸が、いずれもフィルム平面に対して傾斜、あるいは水平方向に配向した異方性結晶を有するものであることがより好ましく、水平方向に配向した異方性結晶を有するものであることがより一層好ましい。
これにより、結晶ラメラ中の結晶面がフィルムの平面上に広範囲に分布することで、さらに、より一層ガスバリア性の高いフィルムを得ることができる。
分子鎖軸とフィルム平面の成す最少角度が前記範囲内にあることで、分子鎖がフィルム平面に垂直である場合と同様に結晶ラメラ中の結晶面がフィルム平面に広範囲に分布するためガスバリア性向上の効果が著しく向上する。
配向結晶の傾きは、SAXS測定から得られた結晶性樹脂の結晶ラメラ由来の1次元データから角度を読み取ることで確認できる。
例えば、結晶性樹脂Aを有する第1の層1(A)、熱可塑性樹脂Bを有する第2の層2(B)、熱可塑性樹脂Cを有する第3の層(C)の3種類の層を有する場合には、(BAC)n、B(ACAB)nなどの様に規則的順列で積層されることがより好ましい。ここで、nは繰り返しの単位数である。また、2種の層からなる場合、それらが交互に積層された構造を有することが好ましい。
多層フィルム100全体の厚さが、前記下限値未満では、皺が入りやすいなど取り扱い性が悪くなるため好ましくなく、さらに積層数が1000層以上の場合には1層あたりの厚みが小さくなりすぎるため好ましくない。また、多層フィルム100全体の厚さが前記上限値より厚い場合には製膜が困難であったり、層の数が多くなりすぎるため生産効率が悪くなったり、厚みが大きすぎるため加工時等に取り扱い性が悪いため好ましくない。
(物性値の評価法)
(1)積層数
多層フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、日本電子(株)製のJSM‐7500FAを用いて、フィルム断面を1000〜100000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成及び層数を測定した。
(2)X線散乱測定による結晶構造
(株)リガク製のX線回折装置NANO Viewerを用いて評価した。
(3)水蒸気バリア性
水蒸気バリア性はMOCON製のPERMATRAN‐W(登録商標)3/33を用いて評価した。
結晶性樹脂Aを有する第1の層として高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、密度:940kg/m3、重量平均分子量:79,000)を用いた。また、熱可塑性樹脂Bを有する第2の層としてポリプロピレン樹脂(PP、密度:910kg/m3、重量平均分子量:214,000)を用いた。
結晶性樹脂Aを有する第1の層として高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、密度:950kg/m3、重量平均分子量:53,000)を、熱可塑性樹脂Bを有する第2の層としてポリプロピレン樹脂(PP、密度:910kg/m3、重量平均分子量:214,000)を用いた以外は、実施例1と同様の設備・条件でフィルムを作製した。得られたフィルムのポリ乳酸樹脂の結晶面(200)に由来するX線回折像が円弧を示しており、結晶の配向が確認された。また、水蒸気バリア性の向上が見られた。得られた結果を表1に示す。
結晶性樹脂Aを有する第1の層としてポリカプロラクトン樹脂(PCL、密度:1020kg/m3、重量平均分子量:84,500)を、熱可塑性樹脂Bを有する第2の層としてポリスチレン樹脂(PS、密度:1060kg/m3、重量平均分子量:210,000)を用いた以外は、実施例1と同様の設備・条件でフィルムを作製した。得られたフィルムのポリ乳酸樹脂の結晶面(110)に由来するX線回折像が円弧を示しており、結晶の配向が確認された。また、水蒸気バリア性の向上が見られた。得られた結果を表1および図2(b)に示す。
結晶性樹脂Aを有する第1の層としてポリカプロラクトン樹脂(PCL、密度:1020kg/m3、重量平均分子量:120,000)を、熱可塑性樹脂Bを有する第2の層としてポリスチレン樹脂(PS、密度:1060kg/m3、重量平均分子量:330,000)を用いた以外は、実施例1と同様の設備・条件でフィルムを作製した。
得られたフィルムのポリ乳酸樹脂の結晶面(110)に由来するX線回折像が円弧を示しており、結晶の配向が確認された。また、水蒸気バリア性の向上が見られた。得られた結果を表1に示す。
結晶性樹脂Aを有する第1の層として超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMWPE、密度:930kg/m3、重量平均分子量:530,000)を用いた。また、熱可塑性樹脂Bを有する第2の層としてポリプロピレン樹脂(PP、密度:910kg/m3、重量平均分子量:450,000)を用いた。
実施例3で結晶性樹脂Aとして用いたポリカプロラクトンを用いて実施例1と同様の条件で単層フィルムを作製した。得られたフィルムに所定温度での熱処理を行い、結晶化を促した。得られたフィルムは結晶の配向が確認できなかった。また、水蒸気バリア性は不十分なものであった。得られた結果を表1に示す。
2 第2の層
10 繰り返し部
100 多層フィルム
Claims (5)
- 結晶性樹脂Aを有する第1の層と、結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層とを交互に繰り返し積層してなる繰り返し部を含む多層フィルムであって、
前記結晶性樹脂Aの重量平均分子量が40,000以上、200,000以下であり、
前記熱可塑性樹脂Bの重量平均分子量が100,000以上、400,000以下であり、
前記第1の層と第2の層のそれぞれの平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であることを特徴とする多層フィルム。 - 前記繰り返し部の結晶性樹脂Aの結晶成分に由来するX線回折像が、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧状のいずれか1種以上の形状に出現するものである請求項1に記載の多層フィルム。
- 前記繰り返し部の熱可塑性樹脂Bの結晶成分に由来するX線回折像が、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧状のいずれか1種以上の形状に出現するものである請求項1または2に記載の多層フィルム。
- 前記繰り返し部の結晶性樹脂Aの結晶の分子鎖軸が、フィルム平面に対して傾斜、あるいは水平方向に配向した異方性結晶を有する請求項1ないし3いずれかに記載の多層フィルム。
- 請求項1ないし4いずれかに記載の多層フィルムを2次成形することにより得られる成形体。
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