JP2016179676A - 多層フィルムおよび包装体 - Google Patents
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放射性炭素(14C)を含む結晶性樹脂を有し、平均層厚みが10〜1000nmである第1のフィルムと、
前記結晶性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を有し、平均層厚みが10〜1000nmである第2のフィルムと、
を交互に繰り返し積層した繰り返し部を備える多層フィルムである。
前記結晶性樹脂に含まれる全炭素原子中、1950年時点の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準(100%)とした14C濃度の比率が、80〜100%である、請求項1に記載の多層フィルムである。
前記結晶性樹脂は、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の多層フィルムである。
前記植物由来のポリオレフィン系樹脂は、植物由来の高密度ポリエチレン樹脂、または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である、請求項3に記載の多層フィルムである。
前記結晶性樹脂の重量平均分子量が40,000〜200,000である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多層フィルムである。
前記結晶性樹脂の結晶成分に由来するX線回折像が、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧状のいずれか1種以上の形状に出現するものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多層フィルムである。
前記結晶性樹脂の結晶の分子鎖軸が、フィルム平面に対して傾斜または水平方向に配向した異方性結晶を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の多層フィルムである。
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の多層フィルムを備える包装体である。
先ず、本発明を適用した一実施形態である多層フィルム1の構成について説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態である多層フィルム1の断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の多層フィルム1は、第1のフィルム2と、第2のフィルム3と、を備え、第1のフィルム2と第2のフィルム3とが交互に繰り返し積層されて概略構成されている。本実施形態の多層フィルム1は、食品や医薬品などを包装するために用いられる包装袋、包装容器のような包装体の材料として用いることができる。
第1のフィルム2は、後述する第2のフィルム3と交互に積層されており、多層フィルム1に優れたガスバリア性を付与する。
第1のフィルム2は、放射性炭素(14C)を含む結晶性樹脂を有す。放射性炭素(14C)を含む結晶性樹脂としては、植物由来の結晶性樹脂であってもよいし、植物由来の結晶性樹脂と石油由来の結晶性樹脂とを組み合わせたものであってもよい。
なお、以下において、第1のフィルム2が有す結晶性樹脂を、「結晶性樹脂A」と記す。
なお、結晶成分の分子鎖軸の傾斜方向の測定については後述する。
第2のフィルム3は、上述した第1のフィルム2と交互に積層されている。第2のフィルム3で第1のフィルム2をはさむことにより、第1のフィルム2の厚みを維持し、第1のフィルム2中において、結晶性樹脂Aの結晶成分の分子鎖軸が、フィルム平面に対して傾斜方向に配向した状態または水平方向に配向した状態で、結晶性樹脂Aを結晶化することができる。すなわち、第2のフィルム3により、第1のフィルム2を延伸させることなく結晶化することができるため、第1のフィルム2の優れたガスバリア性を発揮させることができる。さらに、第1のフィルム2を延伸させる必要がないため、多層フィルム1に優れた成形加工性を付与することができる。
なお、以下において、第2のフィルム3が有す熱可塑性樹脂を、「熱可塑性樹脂B」と記す。
本実施形態の多層フィルム1は、上述の第1のフィルム2と第2のフィルム3とを交互に繰り返し積層した繰り返し部4を備える。繰り返し部4内に積層される第1のフィルム2および第2のフィルム3の積層数の上限値は、特に限定されないが、20000が好ましく、10000がより好ましい。積層数が上限値以下であることにより、優れたガスバリア性を維持しつつ、多層フィルム1を薄型化することができる。
本実施形態の多層フィルム1では、第1のフィルム2および第2のフィルム3において、それぞれ、結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bが結晶化することが好ましいが、これら結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの結晶成分の配向状態は、X線回折により評価する。また、配向結晶の傾きは広角散乱測定(wide angle X−ray scattering;WAXS)や小角散乱測定(small angle X−ray scattering;SAXS)により評価する。
なお、X線回折は、市販のX線回折装置(例えば、リガク社製、「NANO Viewer」など)を用いて測定することができる。
したがって、主に、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧上のいずれか1種類以上の形状に出現することがより好ましい。これにより、多層フィルム1が、球晶を多く有する従来の高分子材料よりも優れたバリア性を発揮することができる。
Π=(180−H)/180 ・・・(1)
次に、上述した多層フィルム1の製造方法について説明する。
多層フィルム1の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、数台の押出機により、原料となる樹脂などを溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法などの共押出Tダイ法、空冷式または水冷式共押出インフレーション法が挙げられ、なかでも、共押出Tダイ法で製膜する方法が各層の厚み制御に優れる点で特に好ましい。
次に、マルチプライヤーにより、フィルムの切断と積層を繰り返して、樹脂を交互に積層し、多層フィルムを成形する。
以上により、多層フィルム1を作製することができる。本実施形態により作製した多層フィルム1は、フィルムを延伸していないため、成形加工性に優れる。
次に、本発明を適用した一実施形態である包装体11の構成について、図2および図3を参照して説明する。図2は、本発明を適用した実施形態である包装体11の斜視図である。また、図3は、図2の包装体11のA−A線における模式断面図である。図3に示すように、本実施形態の包装体11は、第1のフィルム2と、第2のフィルム3と、を交互に繰り返し備え、さらにカバーフィルム12と、収納部13と、を備え概略構成されている。すなわち、本実施形態の包装体11は、上述した多層フィルム1と、カバーフィルム12と、収納部13と、を備えて概略構成されている。よって、重複する部分については説明を省略する。本実施形態の包装体11は、ブリスターパックとしてのPTPフィルム(包装容器)であり、収納部13に錠剤14を密封収納することができる。
多層フィルム1は、ガスバリア層として機能することにより、収納部13内に水蒸気などのガスが透過するのを防止することができる。
次に、上述した包装体11の製造方法について説明する。
包装体11の製造方法としては、特に限定されないが、一般的に使用されるPTP包装機が用いられる。
具体的には、先ず、真空成形、圧空成形、またはプラグ成形などにより、多層フィルム1に収納部13を成形する。
次に、多層フィルム1およびカバーフィルム12に、ミシン刃やハーフカット刃を用いてスリット15を入れる。
以上の工程により、包装体11が製造される。
(実施例1)
結晶性樹脂Aとして植物由来の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE樹脂)(ブラスケム社製、「SHC7260」、密度:959kg/m3、重量平均分子量:33,100)を用意した。
また、熱可塑性樹脂Bとしてポリプロピレン樹脂(PP樹脂)(プライムポリマー社製、「J106G」、密度:910kg/m3、重量平均分子量:214,000)を用意した。
結晶性樹脂Aに含まれる全炭素原子中、1950年時点の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準(100%)とした14C濃度の比率が、94.0%であった。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
積層厚み比が結晶性樹脂A:熱可塑性樹脂B=1:1になるように吐出量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
積層厚み比が結晶性樹脂A:熱可塑性樹脂B=7:3になるように吐出量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
積層厚み比が結晶性樹脂A:熱可塑性樹脂B=4:1になるように吐出量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
積層厚み比が結晶性樹脂A:熱可塑性樹脂B=3:7になるように吐出量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
積層厚み比が結晶性樹脂A:熱可塑性樹脂B=1:4になるように吐出量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
結晶性樹脂Aとして石油由来の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)(プライムポリマー社製、「2100J」、密度:953kg/m3、重量平均分子量:63000)を用意したこと以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
結晶性樹脂Aに含まれる全炭素原子中、1950年時点の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準(100%)とした14C濃度の比率が、0.0%であった。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
積層厚み比が結晶性樹脂A:熱可塑性樹脂B=3:2になるように吐出量を調整し、第1のフィルムおよび第2のフィルムの平均層厚みを厚くし、積層数を129層としたこと以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムの積層数は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM‐7500FA」)を用いて観察することにより求めた。また、各層の結晶構造について、上記電子顕微鏡を用いて観察することで、第1のフィルム、第2のフィルムにおける傾斜方向におよび水平方向に配向した異方性結晶の有無を観察した。具体的には、フィルム断面を1000〜100000倍に拡大観察した。
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムの第1のフィルムおよび第2のフィルムにおける配向度(Π)を、X線回折像を一次元化して得られる回折ピークの半値幅(H)を用いて下記式(1)により求めた。
Π=(180−H)/180 ・・・(1)
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムの水蒸気バリア性は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、「PERMATRAN‐W(登録商標)3/33」)を用いて、JIS K7126(B法、等圧法)に記載の方法に準拠して評価した。
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムを備えた包装体の水蒸気バリア性を評価した。具体的には、先ず、各実施例および各比較例の多層フィルムについて、それぞれ、ブリスタ包装機(CKD社製、「FBP−300E」)を用いて、長手方向に沿って5つ、短手方向に沿って2つずつ並ぶように計10つの収納部(φ10.0mm×4.5mm)を形成した。次に、10つの収納部にそれぞれゼオライト(φ7.0mm×7.0mm)を充填した状態で、アルミ製のカバーフィルムを用いて収納部の開口を密封することで包装体を作製した。
以上の各実施例および各比較例の評価結果を表1に示す。
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムを、X線回折装置(リガク社製、「NANO Viewer」)を用いて評価した。
2…第1のフィルム
3…第2のフィルム
4…繰り返し部
11…包装体
12…カバーフィルム
13…収納部
14…錠剤
15…スリット
Claims (8)
- 放射性炭素(14C)を含む結晶性樹脂を有し、平均層厚みが10〜1000nmである第1のフィルムと、
前記結晶性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を有し、平均層厚みが10〜1000nmである第2のフィルムと、
を交互に繰り返し積層した繰り返し部を備える多層フィルム。 - 前記結晶性樹脂に含まれる全炭素原子中、1950年時点の循環炭素中の放射性炭素(14C)濃度を基準(100%)とした14C濃度の比率が、80〜100%である、請求項1に記載の多層フィルム。
- 前記結晶性樹脂は、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
- 前記植物由来のポリオレフィン系樹脂は、植物由来の高密度ポリエチレン樹脂、または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である、請求項3に記載の多層フィルム。
- 前記結晶性樹脂の重量平均分子量が40,000〜200,000である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 前記結晶性樹脂の結晶成分に由来するX線回折像が、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧状のいずれか1種以上の形状に出現するものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 前記結晶性樹脂の結晶の分子鎖軸が、フィルム平面に対して傾斜または水平方向に配向した異方性結晶を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の多層フィルムを備える包装体。
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