以下、図面を参照して本発明の一実施形態における吐水ヘッド及びそれを備えた水栓装置について説明する。
図1(a)は本発明の一実施形態における水栓装置を示す外観斜視図、(b)は本発明の一実施形態における水栓装置の水路を示すブロック図である。
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態における水栓装置1は、図示しない給水源から水が供給される水栓本体2と、水栓本体2からの水を吐水するカラン3と、水栓本体2からカラン3への流路とは異なる流路で水栓本体2から水を導水するホース4と、ホース4により導水された水を吐水する吐水ヘッドとしてのシャワーヘッド6とを有する。
水栓本体2は、ホース4への給水または止水を行う開閉弁8を内蔵する。ホース4は、シャワーヘッド6に給水を行う。シャワーヘッド6は、上流側に水栓本体2を有しホース4に連通する通水路15の中途に、押しボタン14により開閉される弁機構30を介設する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯や、冷水とお湯とを混合したものも含むものとする。
水栓本体2は、ホース4もしくはカラン3への給水の開始またはホース4及びカラン3への給水の停止を行う開閉弁8と、給水源(図示なし)から供給された水の温度を調節するための温調ハンドル9と、開閉弁8を作動させる切り替えハンドル10とを有する。
本実施形態では、図1(a)に示すように、水栓本体2は、円筒状の外形を有する本体部2aを有する。本体部2aは、その円筒状の外形における中心軸方向が左右方向(水平方向)となる姿勢で設けられる。本体部2aの内部に、開閉弁8が設けられる。また、本体部2aの中心軸方向の一端側(図1(a)では左端側)に温調ハンドル9が設けられ、本体部2aの中心軸方向の他端側(同図右端側)に切り替えハンドル10が設けられる。
また、水栓本体2の本体部2aの下側に、カラン3及びホース4が接続される。カラン3及びホース4は、水栓本体2の本体部2aの左右略中央部分における下側に設けられるカラン接続管2bと図示しないホース接続管をそれぞれ介して、本体部2aに接続される。つまり、給水源から水栓本体2に供給された水は、本体部2aからカラン接続管2bを介してカラン3へ、本体部2aからホース接続管(図示せず)を介してホース4に導かれる。そして、水栓本体2からカラン3への給水と、水栓本体2からホース4(シャワーヘッド6)への給水とが、上記のとおり開閉弁8を作動させる切り替えハンドル10の操作によって切り替えられる。
シャワーヘッド6は、内部に水を通過させる通水路15を備えたシャワーヘッド本体7と、このシャワーヘッド本体7に嵌着され水を吐出する散水板12と、シャワーヘッド6の止水状態と吐水状態とを切り替えるために押圧操作される押しボタン14とを有する。
シャワーヘッド本体7は、略円板状の外形を有しシャワー水の吐出口が設けられる頭部と、この頭部の一端側から延設される略棒状の胴部とを有する。シャワーヘッド本体7において、通水路15は、胴部の先端側から頭部にかけて設けられる。また、シャワーヘッド本体7においては、上述したとおり一端が水栓本体2の本体部2aに接続されるホース4の他端が胴部の先端側に接続される。つまり、シャワーヘッド本体7においては、胴部の先端側から供給された水が、通水路15を通って頭部側から吐出される。
具体的には、シャワーヘッド本体7は、その頭部において、通水路15の先端部に配置される円形の円形開口部7aを有する。円形開口部7aは、略円板状の外形を有する頭部において一方の板面側に開口するように設けられる。円形開口部7aには、シャワー水の吐出口を構成する散水板12が嵌着される。また、シャワーヘッド本体7は、頭部から突出した状態で設けられる胴部において、把持部7bを有する。つまり、円形開口部7aが設けられる頭部とともにシャワーヘッド本体7を構成する胴部の少なくとも一部は、使用者によって把持される把持部7bとして機能する。把持部7bの端部、即ち胴部の先端部に、通水路15とホース4とが連通するように、ホース4の一端側が接続されている。
押しボタン14は、外形が円柱状のボタンであり、円柱状の外形における中心軸方向が押圧操作される方向に沿うように、シャワーヘッド本体7の胴部から突出した状態で設けられる。本実施形態では、押しボタン14は、シャワーヘッド本体7における胴部の頭部に対する付け根部分において、頭部の円形開口部7aと同じ側に突出した状態で設けられる。押しボタン14は、シャワーヘッド本体7に設けられた開口部11からシャワーヘッド本体7の外部に臨むように設けられる。このように設けられた押しボタン14は、使用者によって把持部7bを把持した状態で押圧操作される。押しボタン14を押圧操作することにより、通水路15の中途に介設された弁機構30が開閉され、シャワーヘッド6の止水状態と吐水状態とが交互に切り替えられるようになっている。
次に、図2を参照して、本発明の実施形態におけるシャワーヘッドの内部構造を説明する。図2は本発明の一実施形態におけるシャワーヘッドの内部構造を示す断面図である。
図2に示すように、シャワーヘッド本体7の内部には、円形開口部7aに連通し、ホース4により導水された水が流れる通水路15が形成されている。通水路15は、ホース4から導水された水を弁機構30に向けて流入させる入水路16と、この入水路16の下流側の先端部16aに収納される弁機構30を介して入水路16と連通する出水路18とを有する。
またシャワーヘッド本体7には、出水路18の下流側の先端部に取り付けられた通水路連結部20と、この通水路連結部20に受け入れられた整流部22と、散水板12の裏面側に設けられた散水室24と、この散水室24と散水板12との間に設けられた散水ノズル部26と、この散水ノズル部26の中央に配置された拡散部28とが内蔵されている。また、散水板12においては、複数の散水孔12aが形成された円板状の本体部の裏面側に、散水板12を円形開口部7a内に取り付けるための、円筒状の取り付け部12bが連設されている。
入水路16は、その上流側となる基端部に、ホース4に接続される接続部16bが形成されている。また、入水路16の下流側の先端部16aには、押しボタン14により開閉する弁機構30が収納されている。弁機構30の詳細については後述する。さらに、入水路16における先端部16aよりも上流側には、安全弁17が設けられている。安全弁17は、入水路16と連通する空間に設けられ、過大な給水圧がかかった場合に入水路16から水をシャワーヘッド6の外部へと逃がし、ホース4への過大な付加が掛からないようにしている。
出水路18は、その上流側となる基端部にて、弁機構30を介して入水路16の下流側の先端部16aに連通する。また、出水路18の下流側の先端部には、通水路連結部20が受け入れられている。
通水路連結部20は、出水路18と散水板12とを連結する。通水路連結部20は、同心円状に形成された小口径円筒部20a及び大口径円筒部20bを備え、全体として略円環状に構成される。通水路連結部20は、小口径円筒部20aの内周側に整流部22を受け入れた状態で、出水路18の取り付け部18aに受け入れられる。これにより、出水路18と整流部22とが通水路連結部20を介して連結される。また、通水路連結部20の大口径円筒部20bは、散水板12の取り付け部12bの内周側に受け入れられる。これにより、出水路18と散水板12とが通水路連結部20を介して連結される。
整流部22は、略円筒状の外形を有し、その筒軸方向の一側の端部が窄まるように構成されている。そして、整流部22は、通水路連結部20の小口径円筒部20a内において、窄まる側が下流側、つまりシャワー水の吐水側を向くように設けられる。これにより、出水路18から流入した水が整流部22によって絞られ、水の流速が高くなる。
散水室24は、シャワーヘッド本体7の円形開口部7aの開口端面と略平行な偏平な空間である。散水室24の中央に、整流部22の窄まった先端部と拡散部28とが挿入される。
散水ノズル部26は、ゴム製の略円板状であり、散水室24と散水板12の円板状の本体部との間に配置される。散水ノズル部26には、多数の散水ノズル26aが設けられており、これらの散水ノズル26aは、散水板12に設けられた多数の散水孔12aを通ってシャワーヘッド6の外部へ突出している。
拡散部28は、略円形の円板部28aと、この円板部28aの中心から円板部28aに対して垂直に延びる軸部28bとを有する。軸部28bは整流部22の中心部に挿入されて固定される。円板部28aは、整流部22の先端との間に隙間を空けて、整流部22の中央の開口部を覆うように配置される。これにより、整流部22を通過した水は、整流部22の先端と円板部28aとの間を通って放射状に拡散しながら散水室24内に流入する。また、円板部28aは、散水ノズル部26の中央部に当接した状態で設けられ、散水ノズル部26を散水板12の本体部に押し付けている。
次に、図3〜図5を参照して本発明の実施形態による押しボタン14及び弁機構30について説明する。図3は本発明の一実施形態における吐水状態での押しボタン及び弁機構を示す断面図、図4は本発明の一実施形態におけるシャワーヘッドが止水状態且つ水栓本体では止水が行われていない状態での押しボタン及び弁機構を示す断面図、図5は本発明の一実施形態におけるシャワーヘッドが止水状態且つ水栓本体でも止水が行われている状態での押しボタン及び弁機構を示す断面図である。
図3〜図5に示すように、押しボタン14は、略円筒形状の部材であり、シャワーヘッド本体7の開口部11から突出する先端側が閉塞し、その反対側の基端側が開口した形状を有する。ここで、押しボタン14をシャワーヘッド本体7の外部に突出させる開口部11は、シャワーヘッド本体7の外周面部において隆起部分として設けられ、その隆起部分の上端側を開口端面とする。
また、押しボタン14には、マーキング14aが設けられている。マーキング14aは、押しボタン14の外周面に沿って全周に亘って設けられた、押しボタン14の他の部分とは異なる色の環状の領域である。マーキング14aは、押しボタン14の外周面に施された塗装でも良く、押しボタン14の外周面に溝を設け、この溝に環状部材を嵌め込む方法で形成しても良い。
また、押しボタン14は、シャワーヘッド本体7の内部に形成された押しボタン室29に設けられる。押しボタン室29は、シャワーヘッド本体7の内部において、入水路16の先端部16aを形成する壁部とシャワーヘッド本体7の把持部7bの外郭との間に形成された空間である。この押しボタン室29は把持部7bの外郭に隆起した状態で設けられた開口部11と連通している。押しボタン14は開口部11から進退自在に突出した状態で設けられる。さらに、隆起部分である開口部11の周縁部11aは、押しボタン14の位置に応じて、マーキング14aの露出状態、つまり使用者によってマーキング14aが視認可能な状態と、マーキング14aの非露出状態、つまりマーキング14aが隠れた状態とを切り替える。このように、本実施形態では、押しボタン14に設けられたマーキング14aと、押しボタン14の位置に応じてマーキング14aの露出状態・非露出状態を切り替える開口部11とを含む構成が、押しボタン14の位置を報知する報知手段として機能する。
図3〜図5に示すように、弁機構30は、弁孔31と、弁体32と、弁座34と、弁体バネ35と、操作軸36と、押しボタン機構38とを有する。
弁孔31は、入水路16の先端部16aにおいて、入水路16の下流端であって出水路18の上流端に位置する。つまり、弁孔31は、入水路16と出水路18との境界における通路部分を構成する。弁孔31は、シャワーヘッド本体7の内部において、入水路16の先端部16aを形成する部分と、出水路18の上流部分を形成する部分との間に介装された状態で設けられる円環状の弁座部材33により形成される。つまり、円環状の弁座部材33の中心の孔部分により弁孔31が形成される。
弁体32は、入水路16の先端部16a内に設けられ、押しボタン14の押圧操作に基づいて弁孔31を開閉する。弁体32は、略円筒形状の部材であり、弁座部材33により構成される弁座34に対して着座または離座する着座部32aと、弁体バネ35が取り付けられるバネ取り付け部32bと、操作軸36を受け入れる孔部32cとを有する。また、弁体32の両側面には図示しない摺動突起が設けられている。一方、入水路16の先端部16a内壁には、弁体32の摺動突起を受け入れる図示しないガイド溝が設けられている。これらの構成により、弁体32は、先端部16a内において、摺動突起をガイド溝に沿わせて移動することで、通水路15の通路方向(図3において左右方向)にガイドされた状態で往復移動する。
着座部32aは、弁体32の先端に設けられた断面円形状の部分である。この着座部32aが弁座34に着座することにより、弁体32によって弁孔31が閉鎖される。
バネ取り付け部32bは、弁体32の略円筒形状の基部に設けられた突起状の尾部である。バネ取り付け部32bは、弁体32の基部において、上流側(図3において右側)に設けられる。このバネ取り付け部32bが弁体バネ35の内側に嵌め込まれることにより、弁体バネ35が弁体32に取り付けられる。つまり、弁体バネ35は、突起状のバネ取り付け部32bに外嵌された状態で設けられる。また、バネ取り付け部32bは、入水路16の先端部16aを形成する壁部に設けられた孔部に挿入される。このバネ取り付け部32bの孔部に対する挿入方向は、弁体32の往復移動方向に沿う方向となる。
孔部32cは、弁体32の摺動方向に対して傾斜する傾斜平面32dにより上方(図3〜図5における上方向)に向けて拡開する孔部分である。
傾斜平面32dは、孔部32cを形成する面のうち上流側(図3において右側)の面に設けられる。傾斜平面32dは、弁体32に対して押しボタン14が設けられる側を上側とした場合、上流側から下流側(図3において左側)にかけて下る斜面である。
弁座34は、弁体32が着座または離座する部分であり、上述したとおり円環状の部材である弁座部材33により構成される。具体的には、弁体32の着座部32aは、その先端外周縁部に、弁座34に対する着座面となる球面形状の外周面を有する。これに対し、弁座34は、着座部32aの先端部を受け入れる座面として、弁座部材33の内周側に形成されるテーパ状の内周面を有する。即ち、弁体32は、その着座部32aの球面形状の外周面を、弁座34のテーパ状の内周面に接触させた状態で、弁座34に着座する。また、弁座34は、弁座部材33が入水路16の先端部16aを形成する部分と出水路18の上流部分を形成する部分との間に介装された状態で設けられることで、弁体32と対向するように位置決めされる。
弁体バネ35は、コイルバネであり、弁体32を弁座34に着座する方向へ付勢するように配置されている。弁体バネ35は、上述のとおり弁体32のバネ取り付け部32bに外嵌された状態で設けられる。そして、弁体バネ35は、その一端側(バネ取り付け部32bの先端側)を、バネ取り付け部32bが挿入される孔部を形成する壁部の壁面に当接させるとともに、他端側(バネ取り付け部32bの基端側)を、弁体32の基部においてバネ取り付け部32bが突出する側の面に対して当接させた状態で設けられる。つまり、弁体バネ35は、バネ取り付け部32bが挿入される孔部を形成する壁部と弁体32の基部との間に挟まれた状態で設けられ、弾性力により、弁体32を下流側(図3において左側)に押圧付勢する。ここで、弁体バネ35の一端側は、バネ取り付け部32bが挿入される孔部の周囲に形成された段差部に嵌合した状態で位置決めされる。
操作軸36は、下端側が開口した略円筒形状の部材である押しボタン14内において中心軸の位置にて下端開口から下側に突出した状態で、押しボタン14と一体的に設けられる円形断面の棒状の部材である。操作軸36は、押しボタン14の押圧操作にともなって押しボタン14と一体的に移動し、弁体32を移動させる。
操作軸36において、押しボタン14の下側から突出する下端部分は、入水路16の先端部16a内に突出し、先端部16a内に設けられた弁体32に当接する。具体的には、操作軸36は、その下端を、弁体32の孔部32c、詳細には孔部32cの傾斜平面32dに当接させた状態で設けられる。傾斜平面32dに当接する操作軸36の先端は、その中心軸線に対して回転対称な半球面状に構成されている。
また、操作軸36は、その中心軸線が、弁体32の移動方向に対して略直交する方向に向くように配置される。なお、上述したとおり操作軸36の先端は半球面状に構成されているため、弁機構30の組み立て時において、操作軸36が如何なる回転位置に組み付けられた場合においても、操作軸36の先端と弁体32の傾斜平面32dとの接触状態について一定の状態が得られる。このため、操作軸36の組み付け方向を管理する必要がなく、弁機構30の組み立てを容易にすることができる。また、操作軸36と入水路16との間にはパッキン40が配置され、部材間の水密性が確保されている。
このように設けられる操作軸36は、押しボタン14の押圧操作にともなって、先端側を入水路16の先端部16a内に突出させる方向に移動することで、弁体32の傾斜平面32dを押圧する。これにより、弁体32は、弁体バネ35の押圧付勢力に抗して、上流側に向かう方向、つまり着座部32aが弁座34から離座して弁孔31が開放される方向に移動する。このように、弁体32が有する傾斜平面32dは、操作軸36の軸方向に沿う縦方向(図3において上下方向)の移動を、弁体32についての通水路15の通路方向に沿う横方向(図3において左右方向)の移動に変換する。
押しボタン機構38は、押しボタン室29に設けられる押しボタン14と、押しボタン14内から突出した状態で設けられる操作軸36との間に設けられる。即ち、押しボタン機構38は、その中心部分に操作軸36を挿通させつつ、外側部分に押しボタン14を嵌合させた状態で設けられる。
押しボタン機構38は、押しボタン14に覆われたラッチ機構本体38aと、ラッチ機構本体38a内部にて回転する回転子38bと、ラッチ機構本体38aに固定され回転子38bを弁体32側(下側)に向けて付勢するコイルバネである押しボタン側バネ38cと、ラッチ機構本体38aに固定され回転子38bを押しボタン14側(上側)に向けて付勢するコイルバネである弁体側バネ38dとを有する。
押しボタン機構38は、押しボタン14が押圧操作される毎に、図3に示す弁機構30の通水を許容する開状態での操作軸36と押しボタン14の保持と、弁機構30が閉状態となるための操作軸36と押しボタン14の保持の解除とを交互に行うラッチ機構として機能する。つまり、押しボタン機構38は、押しボタン14の押圧操作毎に、弁機構30の開状態と閉状態とを切り替えるための構成である。本実施形態の押しボタン機構38で採用されるラッチ機構は、各種水栓装置、ノック式ボールペン等にも使用されている周知の機構である。
ラッチ機構本体38aは略円筒状で、このラッチ機構本体38aの内壁面(内周面)には図示しない軸線方向(上下方向)の溝が形成されている。このラッチ機構本体38aが有する軸線方向の溝(以下「ラッチ機構内周溝」という。)は、ラッチ機構本体38aの内周面の周方向に対して複数形成されている。つまり、ラッチ機構内周溝は、回転子38bの回転方向に対して複数形成されている。ラッチ機構内周溝としては、軸線方向の長さが長い溝と短い溝とが交互に設けられている。また、ラッチ機構本体38aの内部には回転子38bを介して操作軸36が挿入されている。操作軸36の下端部は、ラッチ機構本体38aの下方から入水路16の先端部16a内に突出している。また、下側が開口した略円筒形状の押しボタン14は、略円筒状のラッチ機構本体38aに対して上側から被さった状態で、押圧操作されることによってラッチ機構本体38aの外周面に対して摺動する態様で設けられる。
ラッチ機構本体38aは、押しボタン14の押圧操作によって互いに一体的に移動する押しボタン14及び操作軸36に対して、所定の位置に固定された状態で設けられる構成である。このため、回転子38bは、押しボタン14及び操作軸36の移動にともなってこれらに対して相対的に移動する。
回転子38bは略円筒状で、回転子38bの中心部(筒軸部分)に操作軸36が嵌合されている。回転子38bは、押しボタン側バネ38cにより下方向の付勢力を受け、弁体側バネ38dにより上方向の付勢力を受ける。回転子38bは、押しボタン14の押圧操作により押しボタン14及び操作軸36と一体的に軸線方向(上下方向)に往復移動するとともに、ラッチ機構本体38a内部で中心軸線方向を回転軸方向として所定角度回転する。また、回転子38bの外周側には、回転子38bの径方向に突出したガイド38eが形成されている。
ガイド38eは、押しボタン14が押圧操作される毎に、回転子38bの回転により、ラッチ機構内周溝のうち軸線方向の長さが短い溝への係合と長い溝への係合が、交互に行われるように形成されている。ガイド38eがラッチ機構内周溝のうち軸線方向の長さが短い溝へ係合した際、押しボタン14は、弁機構30の通水を許容する開状態となる。また、押しボタン14が開状態で、押しボタン14が押圧操作されると、押しボタン14の開状態の保持が解除される。この解除により、ガイド38eがラッチ機構内周溝のうち軸線方向の長さが長い溝へと係合し、押しボタン14は、弁機構30の止水を行うための図4または図5に示す閉状態となる。即ち、押しボタン14の開状態と閉状態とは、押しボタン14が押圧操作される毎に交互に切り替わる。なお、押しボタン14について、開状態とは、弁機構30の通水を許容する状態であり、閉状態とは、弁機構30の止水を行うための状態である。
図3に示すように、押しボタン14の開状態では、操作軸36は、下方に押し下げられ、その先端(下端)によって弁体32の傾斜平面32dを押圧する。このように操作軸36が押し下げられた状態では、操作軸36は、押しボタン機構38により、先端を傾斜平面32dの下端部に位置させた状態で保持される。下方に押し下げられる操作軸36は、弁体32の傾斜平面32dを押圧することで、弁体バネ35の付勢力に抗して、弁体32を上流側(図3において右側)に移動させる。上流側に移動した弁体32は、押しボタン機構38によって保持された状態の操作軸36により、弁孔31を開放する位置に保持される。
押しボタン14は、その閉状態で、弁機構30に作用する給水圧の有無によって、弁機構30に給水圧が作用することで弁機構30が止水される圧作用位置と、この圧作用位置とは異なる位置であり弁機構30に給水圧が作用しない圧解除位置との間で変位するよう構成されている。つまり、閉状態の押しボタン14は、開状態での位置との関係では押しボタン機構38によって押圧方向(上下方向)移動が規制されるものの、弁機構30に対する給水圧の作用の有無によって、押圧方向の位置について、開口部11の開口端からの突出量が比較的多い圧作用位置と、開口部11の開口端からの突出量が比較的少ない圧解除位置との間で変位する。
弁機構30に給水圧が作用した場合、弁体32に作用する給水圧に基づく力ならびに弁体バネ35の付勢力によって、弁体32は弁座34に着座する。この弁体32が弁座34に着座した状態は、弁機構30に給水圧が作用する限り保持される。この弁体32の着座する側への移動により、図4に示すように、操作軸36が、押しボタン側バネ38cの付勢力に抗して、操作軸36の先端が傾斜平面32dの上端部に位置する状態まで押し上げられる。このように操作軸36が押し上げられた状態は、弁機構30に作用する給水圧によって保持される。操作軸36の先端の位置が傾斜平面32dの上端部の位置に保持されることで、押しボタン14が圧作用位置に保持される。押しボタン14の圧作用位置は、開状態の押しボタン14(図3参照)と比べ、押しボタン14が開口部11からより突出した位置である。
弁機構30に給水圧が作用しない場合、操作軸36は、押しボタン側バネ38cと弁体側バネ38dとの付勢力の釣り合いにより弁体32の傾斜平面32dを押圧する。操作軸36による弁体32の押圧により、図5に示すように、操作軸36が、弁体バネ35の付勢力に抗して、操作軸36の先端が傾斜平面32dの中腹部に位置する状態で保持される。操作軸36がその先端を傾斜平面32dの中腹部に位置させた状態で保持されることで、押しボタン14が圧解除位置に保持される。押しボタン14の圧解除位置は、押しボタン14の開口部11からの突出量が、開状態での突出量よりも大きく、圧作用位置での突出量よりは小さくなる位置である。また、押しボタン14が圧解除位置にある状態では、弁体32は、弁孔31を開放する位置であって、押しボタン14の開状態での位置よりは弁孔31に近い位置に保持される。
なお、押しボタン14が有するマーキング14aは、押しボタン14の閉状態において、弁機構30に作用する給水圧が有る場合には、開口部11の周縁部11aの外部に位置して露出した状態となるように、押しボタン14の外周面に設けられている。従って、マーキング14aは、押しボタン14の閉状態において弁機構30に給水圧が作用することで、開口部11から露出して使用者によって視認可能な状態となり、使用者に対し、押しボタン14が圧作用位置に位置していることを報知する。即ち、マーキング14aは、押しボタン14の閉状態において、水栓本体2からホース4への給水が行われている状態であることを使用者に報知する。
一方、マーキング14aは、押しボタン14の閉状態において、弁機構30に作用する給水圧が無い場合には、開口部11の周縁部11aの内部に位置して非露出状態となるように設けられている。従って、マーキング14aは、押しボタン14の閉状態において弁機構30に給水圧が作用しないことで、開口部11内に隠れた状態となり、使用者に対し、押しボタン14が圧解除位置に位置していることを報知する。即ち、マーキング14aは、押しボタン14の閉状態において、水栓本体2からホース4への給水が行われていない状態であることを使用者に報知する。
このように、押しボタン14の閉状態においては、使用者は、露出した状態のマーキング14aの有無を視認することで、弁機構30に作用する給水圧の有無、つまりホース4によりシャワーヘッド6に給水する水栓本体2の開閉状態を判別することができる。すなわち、本実施形態に係るシャワーヘッド6においては、報知手段は、押しボタン14のマーキング14aの露出または非露出で報知を行う。
以下、本実施形態における水栓装置1の動作について説明する。
水栓本体2の切り替えハンドル10を使用者が操作することで、開閉弁8を開放すると、給水源(図示なし)から水栓本体2へ供給された水が、ホース4によりシャワーヘッド6へと導水される。ホース4に導水され入水路16の接続部16bから流入した水は、入水路16を通り弁体32が収容される先端部16aへと至る。
この際、シャワーヘッド6を吐水状態に切り替えるために押しボタン14を使用者が押圧操作し、操作軸36がその先端を図3に示す弁体32の傾斜平面32dの下端部の位置に位置させた状態で保持されている場合、弁体32は弁座34から離座した位置にある。そのため、弁体32に至った水は弁体32の周囲を通って弁孔31に流入し、出水路18に至る。出水路18に流入した水は、その先端部に接続された整流部22へと至る。整流部22に流入した水は、その先端部と拡散部28の円板部28aの間の隙間を通って、散水室24内に至る。散水室24内に流入した水は、散水ノズル部26に設けられた多数の散水ノズル26aを通って、散水板12の散水孔12aから吐出され、シャワーヘッド6は吐水状態となる。なお、この際、押しボタン14は開状態となり、押しボタン14の外周面に設けられたマーキング14aは、開口部11の周縁部11a内部に位置し、非露出状態となるため、使用者はマーキング14aを視認することができない。
次に、シャワーヘッド6を吐水状態から止水状態へと切り替えるために、使用者が押しボタン14を押圧操作すると、押しボタン14を開状態とする位置への操作軸36の保持が解除される。ただし、この際、水栓本体2の開閉弁8は開放されたままの状態、つまりホース4への給水が行われている状態であるとする。操作軸36の保持が解除されることで、弁体バネ35の付勢力と、水栓本体2及びホース4を介して弁体32のバネ取り付け部32bや基端部へと作用する給水圧とにより、弁体32は、操作軸36を介して傾斜平面32dに受ける押しボタン側バネ38cの付勢力に抗し、弁座34に着座する方向へと移動する。図4に示すように、弁座34に着座する方向へと移動した弁体32の着座部32aにより弁孔31は閉鎖され、シャワーヘッド6は止水状態となる。また、この際、弁体32の弁座34に着座する方向への移動により、傾斜平面32dに先端(下端)を当接させる操作軸36も、上方向へと移動し、先端を傾斜平面32dの上端部に位置させた状態で保持される。この操作軸36の上方への移動に伴い、押しボタン14は、シャワーヘッド6が吐水状態のとき(押しボタン14が開状態のとき)よりも、開口部11から突出した位置である圧作用位置に移動する。なお、この際、押しボタン14の移動により、押しボタン14の外周面に設けられたマーキング14aは、開口部11の周縁部11aの外部に位置し、露出した状態となる。このため、使用者はマーキング14aを視認することができる。つまり、使用者は、マーキング14aの視認により、押しボタン14が閉状態であって、水栓本体2からシャワーヘッド6へ繋がるホース4に対する給水が行われている状態を知ることができる。
次に、使用者が水栓本体2の切り替えハンドル10を操作して開閉弁8を閉止すると、給水源(図示なし)からの給水が停止し、水栓本体2及びホース4を介して弁体32に作用していた給水圧が無くなる。弁体32に作用していた給水圧が無くなることで、押しボタン機構38内部の押しボタン側バネ38cと弁体側バネ38dとの付勢力の釣り合いにより、操作軸36は、下向きに押し下げられ、弁体32の傾斜平面32dを押圧する。この操作軸36の下降により、操作軸36は、その先端を傾斜平面32d上を下方向へと移動させ、先端が傾斜平面32dの中腹部に位置した状態で保持される。この操作軸36の移動に伴い、押しボタン14は、圧作用位置より下方の位置であって、シャワーヘッド6が吐水状態のとき(押しボタン14が開状態のとき)よりは開口部11から突出した位置である圧解除位置へと移動される。また、押しボタン14が圧解除位置にある状態では、弁体32は、弁孔31を開放する位置であり、シャワーヘッド6が吐水状態のときよりは弁孔31に近い位置に保持される。なお、この際、押しボタン14の下方への移動により、押しボタン14の外周面に設けられたマーキング14aは、開口部11の周縁部11aの内部に移動し、非露出状態となるため、使用者はマーキング14aを視認することができない。
なお、図3に示すシャワーヘッド6の吐水状態において、使用者が押しボタン14を押圧操作せずに、水栓本体2の切り替えハンドル10を操作して開閉弁8を閉止すると、シャワーヘッド6は止水状態となる。この際、操作軸36は、その先端を弁体32の傾斜平面32dの下端部に位置させた状態で保持されたままとなる。続いて、使用者が押しボタン14を押圧操作すると、給水圧が作用しないため、操作軸36は、図5に示すように、先端を傾斜平面32dの中腹部に位置させた状態で保持される。
上述した本発明の一実施形態における水栓装置1においては、押しボタン14による弁機構30を閉じるための操作が行われた状態で、弁機構30に水栓本体2からの給水圧が作用していない状態と弁機構30に給水圧が作用している状態において押しボタン14の位置が変位する。具体的には、押しボタン14は、弁機構30を閉じるための操作が行われ、シャワーヘッド6が止水状態となっている場合、弁機構30に給水圧が作用している状態での位置である圧作用位置と、弁機構30に給水圧が作用していない状態での位置である圧解除位置との間で位置が変位する。そのため、押しボタン14の位置により、シャワーヘッド6が止水状態とされた際(押しボタン14が閉状態の際)に、弁機構30に給水圧が作用している、即ち、水栓本体2は通水状態であることを使用者に認識させ、注意喚起を行うことができる。
押しボタン14が閉じた状態において、弁機構30に水栓本体2からの給水圧が作用した状態は、長期間続くことで、弁機構30や押しボタン14のシール部材等の劣化を進行させる。そこで、上述したような押しボタン14の位置による注意喚起を行うことで、この注意喚起に従って使用者が水栓本体2の切り替えハンドル10にて開閉弁8を閉止することで、ホース4、シール部材であるパッキン40、弁機構30を構成する弁体32等に長期間に亘って給水圧による負荷がかかり続けることを防ぐことができ、これらの部材の劣化の促進を抑制することができる。そのため、これらの部材における止水不良による漏水を抑制することが可能となる。さらに、弁体32が給水圧により長期間に亘って弁座34に押し付けられることを防ぐことができ、弁座34のへたりや変形に起因する弁体32の弁座34への固着や食いつきを抑制することができる。そのため、弁体32の弁座34への固着や食いつきによる、押しボタン14の操作性の悪化を抑制することが可能となる。
また、ホース4、パッキン40や弁体32の劣化が抑制されるため、これら部材を耐久性の高い高価な材料で形成しなくともよく、より安価に製造することができる。さらに、耐久性向上のためにこれら部材の厚さや幅を増す必要もないため、これら部材の大型化を回避することができる。そのため、シャワーヘッド6が大型化して手に持ちにくくなり、使用者にとって使い勝手が悪いものとなってしまうことを防ぐことができる。
さらに、本発明の一実施形態における水栓装置1は、押しボタン14が圧作用位置に位置していることを、開口部11の周縁部11aから露出した状態か否かにより報知するマーキング14aを有する。そのため、このマーキング14aにより、押しボタン14が水栓本体2からの給水圧により移動した位置となっているか否かを、使用者が簡単に判別できる。よって、押しボタン14へのマーキングという簡単な加工によって、より確実に使用者に注意喚起を行うことができ、ホース4、パッキン40や弁体32の劣化をさらに生じにくくすることができ、止水不良に伴う漏水の発生をより確実に抑制することが可能となる。また、弁座34のへたりや変形に起因する弁体32の弁座34への固着や食いつきをさらに抑制することができ、弁体32の弁座34への固着や食いつきによる、押しボタン14の操作性の悪化をより確実に抑制することが可能となる。
また、本発明の一実施形態における水栓装置1によれば、弁体32は、押しボタン14が押圧操作される方向と略直交し、且つ通水路15の通路方向に沿う方向に往復移動可能に設けられ、押しボタン14が押圧操作されることで通路方向に沿う方向に往復移動して弁座34に離着座し、通水路15を開閉する。給水圧は通水路15の通路方向に沿った方向に作用するため、弁体32の移動方向が通水路15の通路方向に沿った方向でない場合に比べ、より簡単な構成で弁体32を弁座34に着座させて弁機構30を閉状態とし、押しボタン14を圧作用位置へと移動させることが可能となる。
なお、上述した本発明の一実施形態においては、押しボタン14は、シャワーヘッド6が止水状態であり、且つ弁機構30に給水圧が作用している間は、押しボタン14が押圧操作される方向とは逆方向(図2〜図5における上方向)へと移動した位置に保持されるように構成されている。本発明は、このような形態に限定されるものでなく、例えば、シャワーヘッド6が止水状態であり、且つ弁機構30に給水圧が作用している間は、押しボタン14が押圧操作される方向と同方向(図2〜図5における下方向)へと移動した位置に保持されるように構成しても良い。
さらに、上述した本発明の一実施形態においては、押しボタン14が圧作用位置に位置すること及び圧解除位置に位置することの少なくとも一方を報知するために、押しボタン14の外周面に沿って全周に亘って設けられた、押しボタン14の他の部分とは異なる色の環状の領域であるマーキング14aを用いている。本実施形態では、押しボタン14が圧作用位置にある状態でマーキング14aが露出し、押しボタン14が圧解除位置にある状態でマーキング14aが隠れる構成を採用することで、押しボタン14が圧作用位置にあることをマーキング14aの露出によって積極的に報知している。この点、例えば、押しボタン14の圧作用位置と圧解除位置との両方でマーキングを露出させ、各位置で表れるマーキングの形態や色等を互いに異ならせる構成を採用することで、押しボタン14が圧作用位置にあること及び圧解除位置にあることの両方をマーキング14aの露出によって積極的に報知してもよい。
本発明においては、マーキングは本実施形態に限定されるものでなく、マーキングは、環状に限らず、例えば、複数個所に設けられ押しボタン14の圧作用位置と圧解除位置との間の変位により露出状態が変化する丸状部材でも良い。マーキングに関しては、押しボタン14の外周面に塗装を施すことによって構成しても良い。例えば、施す塗装を反射塗料等として照明で反射するように構成しても良い。また、マーキングは、圧作用位置と圧解除位置とでそれぞれLED等の発光の有無や色を変化させても良く、スピーカ等を組み込んで押しボタン14が変位する毎に音声が流れるようにしても良い。さらに、マーキングとしては、押しボタン14の外周面において、押しボタン14の圧作用位置と圧解除位置との間の変位により露出状態が変化する位置に、シボ加工を施したり凹部や凸部を形成したりすること等により設けられる、使用者の触覚に訴えるものであっても良い。