JP6094264B2 - 植物栽培用容器及び植物の栽培方法 - Google Patents
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- Cultivation Receptacles Or Flower-Pots, Or Pots For Seedlings (AREA)
Description
発泡合成樹脂製容器は、一般に、その断熱性及び緩衝性の高さから、魚箱、野菜箱、その他の保管、運搬又は輸送用容器として重用されている。
このような発泡合成樹脂製容器を植物栽培用容器として用い、土を使用しない養液栽培ではなく、少量の土を培地として使用して土の緩衝能(環境や肥料の急激な変化に対応できる力)を利用する養液栽培、例えば、発泡合成樹脂製魚箱などを利用する、いわゆるトロ箱養液栽培などにおいては、(1)限られた狭い発泡合成樹脂製容器内の土は水分を保つことにより常に一定量の養水分を保つことが容易であるため、植物の生育が安定すること、(2)発泡合成樹脂製容器は断熱性が高いため植物や土が環境変化による影響を受けにくいこと、(3)根域量が小さくなるため良品収穫のための効率的な草勢管理が可能になること、(4)軽量で取り扱いが簡単であるため設置が容易であること、(5)イニシャルコスト及びランニングコストが低く抑えられるため収益性が高いこと、等の利点があることから、新しい農業技術として注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
よって、多くの利点があるトロ箱養液栽培及びそれに用いられる発泡合成樹脂製の植物栽培用容器ではあるが、前記課題を解決してトロ箱養液栽培により適した発泡合成樹脂製の植物栽培用容器(容器本体及び蓋体)にするという観点からは、改良の余地がある。
このように、堰を越えた余剰の培養液を排液穴から排液して排液性を高めながら、底板の堰により仕切られた一対の貯液部に培養液が溜まるので、底板上に充填したパーライト等の土壌改良材に、土壌改良材上に充填した培養土から下方へ流れる培養液とともに、前記貯液部から吸い上げられた培養液が保持されるため、培養液の保液性を高めることができる。
その上さらに、排液穴の位置が2条の突条の端部間の2箇所であるので、特に排液穴が側壁に形成された場合に排液量の観察が容易であることから、給液量の調節が容易になるため、培養液を過不足なく供給することができる。
その上、蓋体の定植穴、底板上面の堰及び傾斜面、並びに側壁又は底板の排液穴は、簡素な形状であり、発泡合成樹脂製の植物栽培用容器を金型で成形する際に形成することができるため、運搬又は輸送用の既製蓋付き発泡合成樹脂製容器を用いる場合のように排液穴及び定植穴をあける手間が掛からない。
このような構成によれば、最初(一作目)の栽培が終了して二作目の栽培をする際に、蓋体を裏返して容器本体に嵌合した状態では、蓋体を裏返す前における定植穴が形成されていない対角線上に定植穴が位置するので、最初に栽培していた位置とは異なる位置に新しい苗を植え付けることができるため、最初に栽培した植物の根に邪魔されて新しい苗の成長が阻害されることがない。
その上、二作目の栽培が終了して三作目の栽培をする際に、さらに蓋体を裏返すと、最初の栽培時の定植穴の位置に戻ることになるが、時間の経過により最初の栽培位置の根は腐敗が進んでいるため、最早新たに栽培する苗の成長が妨げられることはない。
よって、二作目以降の植え付け時に培地に残っている前作の根が新たな苗の生育の邪魔をしない状態にしながら、植物の栽培を連続して行うことができる。
このような構成によれば、培養土への培養液の供給を、最初は植栽用の丸穴から行い、次いで、給液用切欠きから行うことにより、培養液の供給範囲が広がるので、根をより広範囲にわたって深く伸張させることができるため、品質の優れた植物の収穫量が増加する。
このような構成によれば、培養土への培養液の供給を、植栽用の丸穴から行い、次に給液用切欠きから行った後、植栽用の丸穴から離間した給液用穴から行うことにより、培養液の供給範囲がさらに広がるので、根をさらに広範囲にわたって深く伸張させることができるため、品質の優れた植物の収穫量がさらに増加する。
前記底板又は前記側壁に第2排液穴を形成するための凹部を形成してなり、排液量を多くする必要がある場合には前記底板又は前記側壁の一方又は両方を前記凹部に繋がるように切除できると好ましい(請求項5)。
このような構成によれば、植物に過不足なく培養液を供給するために、培養土への給液量及び容器からの排液量を多くする必要がある植物を栽培する際に、第2排液穴を塞いでいる栓体を外すこと、又は第2排液穴を形成するための凹部に繋がるように側壁又は底板を切除することにより、前記給液量及び排液量を多くする必要がある植物の栽培に容易に適合させることができる。
前記容器本体の底板上に培養液を保持する土壌改良材を充填し、
前記土壌改良材上に培養土を充填・鎮圧し、
前記培養土全体に灌水した後に前記蓋体により前記容器本体の開口を被い、
育苗した苗を前記蓋体の定植穴から定植し、
前記定植穴内に挿入される、前記苗を育苗した育苗ポット内、
前記給液用切欠き内
又は前記給液用穴から
培養液を給液し、
前記排液穴から前記培養液を回収して、回収した前記培養液を前記植物栽培用容器が設置された場所以外の適宜の場所に廃棄するか、あるいは、回収した前記培養液を循環させながら前記苗を生育することを特徴とする(請求項6)。
このような植物の栽培方法によれば、前記植物栽培用容器と同様の作用効果を奏する。
ここで、容器本体2及び蓋体3は、軽量であるとともに断熱性に優れた発泡合成樹脂製であり、発泡合成樹脂としては、例えば、発泡ポリスチレン系樹脂、発泡ポリエチレン系樹脂、発泡ポリプロピレン系樹脂等の発泡ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン変性発泡ポリエチレン等のポリスチレン変性発泡ポリオレフィン系樹脂、硬質発泡ウレタン系樹脂等を用いることができるが、中でも発泡ポリスチレンが強度やコスト等の点から好ましい。
容器本体2及び蓋体3が断熱性に優れた発泡合成樹脂製であり、図1及び図2のように、植物PLを栽培している状態で蓋体3は容器本体2に嵌合しているとともに、開口部(後述する給液用切欠き12及び給液用穴13)が小さいので、容器本体2内に充填した培養土Cの季節における地温、あるいは一日の昼夜における地温の変動幅を小さくできるため、植物PLへの影響が小さくなるとともに、無駄な水分の蒸散を防止できる。
図3及び図4(a)に示すように、底板4の上面には、その中央部に2条の突条7,8からなる平面視X字状の堰Bが形成されており、突条7,8の端部7A,8A及び7B,8Bは、一対の対向する側壁(底板4の長辺から立起する側壁)5A,5Bの下部内面に繋がり、側壁5Bの突条7,8の端部7A,8A間には排液穴10Aが、壁5Aの突条7,8の端部7B,8B間には排液穴10Bが形成される。
なお、排水穴10A,10Bは、2条の突条7,8の端部7A,8A間及び端部7B,8B間の底板4に形成してもよい。
よって、堰Bにより堰き止められた培養液は、堰Bへ向かう下り傾斜面S1,S1上に貯液され(図2の一対の貯液部R1,R2参照。)、堰Bを越えた培養液は排液穴10A,10Bへ向かう下り傾斜面S2,S2に沿って流れ、排液穴10A,10Bから確実に排液される。
なお、堰Bには、切欠き9A,9Bが形成されているので、切欠き9Aから堰B内の平面視三角形状の部分に入った培養液は排液穴10Aから排液され、切欠き9Bから堰B内の平面視三角形状の部分に入った培養液は排液穴10Bから排液されるが、切欠き9A,9Bは必須のものではなく、貯液部R1,R2に貯液する培養液の量(容積)及び堰Bの突条7,8の高さ等により、必要に応じて適宜の大きさで形成される。
なお、給液用穴13,13の直径は比較的小さい(例えば50mm以下)ため、対角線D2上でなく、対角線D2の近傍に形成してもよい。
また、図2に示すように、蓋体3には、容器本体2の上端部に嵌合する、下面の段部3Aとともに、上面にも、容器本体2の上端部に嵌合する段部3Bが形成されているため、段部3Aが容器本体2の上端部に嵌合した図7(a)の斜視図に示す状態から、蓋体3を裏返して段部3Bが容器本体2の上端部に嵌合した図7(b)の斜視図に示す状態にすることができる。
先ず、容器本体2の底板4上に、培養液を保持する土壌改良材Eを容器本体2の容量の1/4程度充填する。
この土壌改良材Eとしては、パーライト、鹿沼土又は軽石等の、凹凸した表面に多くの培養液や空気を含ませることができる、排水性の高い多孔質の培土を用いることができる。
次に、土壌改良材E上に培養土Cを充填・鎮圧した後、培養土C全体に灌水し、散水性や水みちを無くすようにする。
次に、蓋体3を容器本体2の上端部に嵌合し、蓋体2により容器本体2の開口を被う。
次に、育苗ポットPで育苗した苗(植物PL)を、育苗ポットPとともに蓋体3の定植穴A,Aから定植する。
この状態で、定植穴Aの丸穴11内に挿入される育苗ポットP内、給液用切欠き12内又は給液用穴13から、給液チューブTにより、濃度や給液量の調節を行った培養液をドリップで培養土Cに給液する。なお、定植穴A,Aに育苗ポットPとともに定植する例を示したが、必ずしもそのように定植する必要はなく、育苗ポットPなしの苗、あるいは育苗ポットPを除いた苗を定植することも当然であるが可能である。
また、排液穴10A,10B(図3及び図4(a)参照。)から排出された培養液は、排液穴10A,10Bの下方位置に配置した樋又は樹脂製波板等の簡素で低コストな構成により容易に回収できる。
このように回収された培養液は、植物栽培用容器1,1,…が設置された場所以外の適宜の場所に廃棄するか、あるいは、培養液を循環させながら苗(植物PL)を生育する。
特に夏場は根を冷やすことが求められるので、給液量が多いため排液量も多くなることから前記被害は深刻となる。
このような一般的な構成と比較して、本発明では、排液穴10A,10Bから排出された培養液を垂れ流さずに回収して、上述のとおり廃棄するか、循環させるため、前記被害が生じることがない。
これらの第2排液穴用凹部14,14,…は、植物PLに過不足なく培養液を供給するために、培養土Cへの給液量及び容器1からの排液量を多くする必要がある植物PLを栽培する際に用いる。
すなわち、図8の要部拡大縦断面図に示すように、側壁6B(6A)及び底板4の一方又は両方を第2排液穴用凹部14に繋がるように切除して第2排液穴15,15,…を形成し、排液穴10A,10Bに加えて第2排液穴15,15,…からも排液することにより、前記排液量を多くする必要がある植物PLの栽培に容易に適合させることができる。
なお、容器本体2の底板4に第2排液穴15,15,…を最初から形成しておき、第2排液穴15,15,…を栓体で塞いだ状態にしておいて、前記排液量を多くする必要がある植物PLを栽培する際に栓体を外すようにしてもよい。
また、第2排液穴用凹部14,14,…又は第2排液穴15,15,…は、底板4ではなく、側壁5A,5B,6A,6Bの下端部に形成してもよい。
すなわち、堰Bは図9(a)の平面図に示すように、2条の平行な突条7,8の長手方向中央を突条16で繋いだ平面視H字状である構成、図9(b)の平面図に示すように、図9(a)の構成において突条16がない、平面視II字状である構成等であってもよい。
ただし、図4(a)のような平面視X字状の堰Bの方が、堰Bにより仕切られた一対の貯液部R1,R2(図2参照。)の平面積が大きくなるので、底板4上に充填したパーライト等の土壌改良材Eに対して、培養液をより効率的に保持させることができるため、より好ましい実施態様である。
このように、堰Bを越えた余剰の培養液を排液穴10A,10Bから排液して排液性を高めながら、底板4の堰Bにより仕切られた一対の貯液部R1,R2に培養液が溜まるので、底板4上に充填したパーライト等の土壌改良材Eに、土壌改良材E上に充填した培養土Cから下方へ流れる培養液とともに、貯液部R1,R2から吸い上げられた培養液が保持されるため、培養液の保液性を高めることができる。
さらに、排液穴10A,10Bの位置が側壁5B,5A又は底板4の2箇所であるので、特に排液穴10A,10Bが側壁5B,5Aに形成された場合に排液量の観察が容易であることから、給液量の調節が容易になるため、培養液を過不足なく供給することができる。
さらにまた、蓋体3の定植穴A,A、底板2上面の堰B及び傾斜面S1,S2、並びに側壁5B,5A又は底板4の排液穴10A,10Bは、簡素な形状であり、発泡合成樹脂製の植物栽培用容器1(蓋体3,容器本体2)を金型で成形する際に形成することができるため、運搬又は輸送用の既製蓋付き発泡合成樹脂製容器を用いる場合のように排液穴及び定植穴をあける手間が掛からない。
その上、二作目の栽培が終了して三作目の栽培をする際に、さらに蓋体3を裏返すと、最初の栽培時の定植穴A,Aの位置に戻ることになるが、時間の経過により最初の栽培位置の根は腐敗が進んでいるため、最早新たに栽培する苗の成長が妨げられることはない。
よって、二作目以降の植え付け時に培地に残っている前作の根が新たな苗の生育の邪魔をしない状態にしながら、植物の栽培を連続して行うことができる。
B 堰
C 培養土
D1,D2 対角線
E 土壌改良材
P 育苗ポット
PL 植物
R1,R2 貯液部
S1,S2 下り傾斜面
T 給液チューブ
1 植物栽培用容器
2 容器本体
3 蓋体
3A,3B 段部(嵌合部)
4 底板
5A,5B,6A,6B 側壁
7,8 突条
7A,7B,8A,8B 端部
9A,9B 切欠き
10A,10B 排液穴
11 丸穴
12 給液用切欠き
13 給液用穴
14 第2排液穴用凹部
15 第2排液穴
16 突条
Claims (6)
- 平面視矩形状の底板及びこの底板の端縁から立起する4側壁により構成される、上面を開口した容器本体、並びに、前記開口を塞ぐように前記容器本体に嵌合する、定植穴が形成された平面視矩形状の蓋体からなる、発泡合成樹脂製の植物栽培用容器であって、
一対の対向する側壁の下部内面に端部が繋がる、前記底板の上面に形成された2条の突条からなる、平面視X字状の堰を前記底板の中央部に備え、前記2条の突条の端部間の前記側壁又は前記底板に排液穴を形成し、前記底板の上面に、前記堰へ向かう下り傾斜面と、前記排液穴へ向かう下り傾斜面を形成してなることを特徴とする植物栽培用容器。 - 前記蓋体の定植穴が、前記底板の堰により仕切られる一対の貯液部の上方に1つずつ、前記蓋体の2つの対角線の一方の対角線上に2個形成されるとともに、前記蓋体は、裏返した状態でも前記容器本体に嵌合する請求項1記載の植物栽培用容器。
- 前記蓋体の定植穴が、植栽用の丸穴及び前記丸穴の周壁の一部を平面視円弧状に切り欠いた給液用切欠きにより形成される瓢箪状のものである請求項2記載の植物栽培用容器。
- 前記一対の貯液部の上方に1つずつ、前記2つの対角線の他方の対角線上又はその近傍に給液用穴を形成してなる請求項2又は3記載の植物栽培用容器。
- 前記底板又は前記側壁に第2排液穴を形成するとともに前記第2排液穴を栓体で塞いだ状態としてなり、排液量を多くする必要がある場合には前記栓体を外すことができ、又は、
前記底板又は前記側壁に第2排液穴を形成するための凹部を形成してなり、排液量を多くする必要がある場合には前記底板又は前記側壁の一方又は両方を前記凹部に繋がるように切除できる請求項1〜4の何れか1項に記載の植物栽培用容器。 - 請求項1〜5の何れか1項に記載の植物栽培用容器を用い、
前記容器本体の底板上に培養液を保持する土壌改良材を充填し、
前記土壌改良材上に培養土を充填・鎮圧し、
前記培養土全体に灌水した後に前記蓋体により前記容器本体の開口を被い、
育苗した苗を前記蓋体の定植穴から定植し、
前記定植穴内に挿入される、前記苗を育苗した育苗ポット内、
前記給液用切欠き内
又は前記給液用穴から
培養液を給液し、
前記排液穴から前記培養液を回収して、回収した前記培養液を前記植物栽培用容器が設置された場所以外の適宜の場所に廃棄するか、あるいは、回収した前記培養液を循環させながら前記苗を生育することを特徴とする植物の栽培方法。
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