JP6093678B2 - 非対称膜の製造方法 - Google Patents

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本発明は、空調システムに用いられる非対称膜の製造方法に関する。
近年、技術の進歩に伴い、例えば自動車等の気密性を高めることが難しかった空間においても気密性を高めることが可能となった。このような気密性の高い自動車に多くの乗員が長時間の乗車をした場合には、酸素濃度の低下や二酸化炭素濃度の上昇が起こり、乗員に頭痛や不快感をもたらすおそれがあるため、適度に外気を導入する必要がある。
しかしながら、都会の道路や幹線道路等は粉塵等の汚染物質により汚染されているため、乗員の健康を考えると外気をそのまま車内に導入することは大きな問題であった。この問題を解決するための1つの方法としては、大気中の汚染物質、例えば浮遊物質を除去するためのフィルタを、外気導入のための取り入れ口に設置する方法がある。
このようなフィルタとして高分子材料によって形成された非対称膜からなるガス透過膜を用いた空調システムが提案されている(特許文献1参照)。これは、ナノメートルサイズの孔が形成されたガス透過膜を空気の取り入れ口にフィルタとして用い、SPM(大気中の浮遊物質のうち粒子径が10μm以下のもの)を遮断するとともに、外気を導入することができるように構成されている。
特開2011−12114号公報
しかしながら、特許文献1に記載された非溶媒誘起相分離法によってガス透過膜を製造する場合には、ガス透過膜の孔径および開口率が小さくなる。また、相分離によってガス透過膜を製造する方法として熱誘起相分離法もあるが、この熱誘起相分離法にガス透過膜を製造する場合も、ガス透過膜の孔径および開口率が小さくなる。
このようにガス透過膜の孔径および開口率が小さいと、ガス透過膜の単位面積当たりのガス透過性能が低くなる。この結果、充分なガス透過性能を得るために必要な面積が大きくなり、ガス透過膜の体格が大きくなってしまうという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空調システムに用いられるガス透過膜の孔径および開口率を向上させることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、空調システムに用いられる非対称膜の製造方法であって、
オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを第1の溶媒に溶解させてポリマー溶液を生成する工程と、ポリマー溶液を膜化する工程と、ポリマー溶液より低温となっている第2の溶媒に膜化したポリマー溶液を浸漬して冷却し、ポリマー溶液から第1の溶媒を除去して非対称膜を生成する工程とを備え、
第1の溶媒は、前記オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを溶解させることが可能であり、下記(1)で示される1種類以上のケトン化合物及び/又は下記式(2)で示される1種類以上のアルコール化合物からなり、第2の溶媒は、ポリマーを溶解させず、第1の溶媒を溶解させることが可能であり、炭素原子を1以上含む1種類以上の有機溶媒、又は炭素原子を1以上含む1種類以上の有機溶媒と水との混合溶媒であることを特徴としている。
(式中、R1、R2、R3は、炭素数1〜3のアルキル基である。)
(式中、R4は炭素数8〜12のアルキル基、炭素数8〜12の不飽和結合を有する炭化水素鎖、又は1〜3のエーテル結合を有する炭素数7〜12の炭化水素鎖である。)
本発明によれば、膜状のポリマー溶液層を第2の溶媒に浸漬して冷却することで、ポリマー溶液層では熱変化による相分離が起こる。熱変化による相分離で成膜を行うことで、瞬時に成膜を完了させることができ、ポリマー溶液層からの孔の消滅を抑制することができる。また、第1の溶媒を溶かすことができる第2の溶媒にポリマー溶液層を浸漬することで、ポリマー溶液層における第1の溶媒が第2の溶媒に置き換わる。このことによっても相分離が起きるため、熱変化による相分離との相乗効果により、より多くの孔が形成される。さらに、第1の溶媒が第2の溶媒に置き換わることで、緻密層と多孔質層からなる非対称膜を形成することができる。
ポリマーには、シリカ系フィラーが分散されていることが好ましい。また、23±2℃、膜間の圧力差がない条件における、非対称膜の酸素透過係数P(O2)及び二酸化炭素透過係数P(CO2)の比が下記式(3)を満足することが好ましい。
1.0<P(O2)/P(CO2)<1.70 …(3)
また、本発明によれば、非対称膜の開口率を大きくすることができるので、単位面積当たりのガス透過性能を向上させることができる。この結果、非対称膜の体格を小さくすることができ、搭載スペースに制約がある車両用空調システムに好適に用いることができる。
第1実施形態の非対称膜の断面図である。 第2実施形態の住宅用空調システムを適用した家屋の断面図である。 第3実施形態の車両用空調システムを搭載した車両の模式図である。 第4実施形態の車両用空調システムを搭載した車両の模式図である。 第5実施形態の車両用空調装置の断面図である。 第5実施形態の透過膜モジュールの斜視図である。 第6実施形態の車両用空調装置の断面図である。 第7実施形態の車両用空調装置の断面図である。 第8実施形態の車両用空調装置のフローチャートである。 第9実施形態の車両用空調装置のフローチャートである。 第10実施形態のコンテナ用空調システムを示す概念図である。 透過部材の変形例を示す斜視断面図である。 透過部材の変形例を示す斜視断面図である。 成膜装置の模式図である。 実施例4で製造された非対称膜のSEM画像である。 実施例4のメッシュと非対称膜の分析結果を示す図である。 比較例4で製造された非対称膜のSEM画像である。
以下、図面を用いて本発明を適用した実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
(第1実施形態)
〔非対称膜〕
本発明で製造される非対称膜は、透過膜を介して空調対象空間への気体の供給及び/又は空調対象空間からの気体の排出を行う空調方法において、透過膜として好適に用いることができる。本実施形態に係る空調システムは、空調対象空間への気体の供給及び/又は空調対象空間からの気体の排出を行う透過膜と、透過膜が設けられている開口を形成しながら空調対象空間を形成している隔壁とを備える。隔壁は、気体の透過が遮断されるように形成された単一又は複数の部材から構成される。
透過膜は、例えば、外気導入のための取り入れ口に設置される。空調対象空間は、空間内の気体と外気とを交換することが必要な空間である。空調対象空間の具体例としては、住宅、車両(自動車)、コンテナ、新幹線及び飛行機等の内部空間がある。これらの具体例については第2実施形態以降で説明し、本実施形態では透過膜の構成について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の非対称膜を示す断面図である。図1に示す非対称膜13は、多孔質層3と、多孔質層3に隣接する緻密層5とから構成される。緻密層5は、当該技術分野において一般に「スキン層」と称される場合がある。多孔質層3及び緻密層5は、同じ高分子材料によって一体に形成されている。緻密層5には、ナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの孔があいている(例えば、20〜100ナノメートル)。非対称膜13の厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。なお、第2実施形態以降の各実施形態においても、本実施形態と同様の非対称膜13が用いられる。
また非対称膜13内にはフィラーを分散することもできる。非対称膜13は、多孔質層3及び緻密層5を有する非対称構造を形成している高分子材料のみ、あるいは高分子材料とフィラーとを主成分として含むことができるが、他の成分をさらに含んでいてもよい。
緻密層5は、SPMの透過を防ぎながら、窒素及び酸素等の気体を選択的に透過させる機能を有する。そのために、緻密層5は、SPMの透過を十分に防止できる程度の緻密性を有していればよい。具体的には、緻密層5表面にナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの孔を形成している。ただし、緻密層5内には、多孔質層3よりも細孔容積が小さくなる程度の細孔が、連泡あるいは半連泡状態で形成されている場合もある。
気体の透過性を十分に確保するために、緻密層5の膜厚は1μm以下であることが好ましい。また、緻密層5の膜厚は好ましくは0.005μm以上であり、より好ましくは0.01μm以上である。
多孔質層3は、気体の透過性を高いレベルに維持しつつ緻密層5の支持体として機能する。気体の透過性を十分に確保するために緻密層5の膜厚を薄くすると、緻密層5単独では膜全体の強度等が不足するおそれがあるが、多孔質層3が緻密層5を支持する支持体として機能することにより、非対称膜13全体としては十分な機械的強度や取扱い性が維持される。このような点から、多孔質層3の膜厚は1〜500μmであることが好ましい。
本発明の目的を特に高いレベルで達成するために、非対称膜13は、ガスの透過速度がガスの分子量に依存するような膜であることが好ましい。言い換えると、非対称膜13中の気体の流れにおいてクヌーセン流(Knudsen flow)が支配的であることが好ましい。なお、「クヌーセン流」とは、分子の動きが問題となるほどの希薄な気体の流れをいい(化学大辞典3、化学大辞典編集委員会編、縮刷版44頁参照)、クヌーセン流が支配的であるとき、ガスの透過速度はその分子量の平方根の逆数に依存する。
理想的なクヌーセン流によって気体が透過する膜においては、気体の透過係数Pはその分子量の平方根に逆比例する。例えば、透過するガス成分が酸素及び二酸化炭素である場合、それらの分離比αは、下記式(4)に示されるように1.17となる。式(4)において、P(O2)及びP(CO2)はそれぞれ酸素及び二酸化炭素の透過係数を示し、M(O2)及びM(CO2)はそれぞれ酸素及び二酸化炭素の分子量を示す。
一方、「溶解拡散流」と呼ばれる気体の流れがある。溶解拡散流とは、膜に対する気体の溶解度と膜内での気体の拡散係数との積に依存する流れをいい、溶解拡散流による膜中の気体の透過速度はクヌーセン流に比べて一般に遅い。従来の高分子系の膜においては、膜を透過する気体の流れにおいて溶解拡散流が支配的である場合が多い。溶解拡散流が支配的である膜においては、一般的に二酸化炭素の透過速度が酸素の透過速度に対して大きいことから、酸素及び二酸化炭素の分離比αが、1.0未満(高分子によって異なるが、0.3〜0.7程度)であることが知られている。
以上のように、分離比αの値を指標として、膜を透過する気体の流れの状態を評価することが可能である。実際の膜においてはそれぞれの種類の流れが複合して生じていると考えられるものの、分離比α(=P(O2)/P(CO2))が下記式(3)を満足するような範囲内にあれば、クヌーセン流が支配的であるとみなすことができる。酸素透過係数P(O2)及び二酸化炭素透過係数P(CO2)は、23±2℃、膜間の圧力(全圧)差が実質的にない条件で測定される。
1.0<P(O2)/P(CO2)<1.70 …(3)
非対称膜13においてクヌーセン流が支配的である理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らは以下のように考えている。
まず、非対称膜13の気体透過係数は緻密層5の透過性に依存し、多孔質層3の影響は少ないと考えられる。ここで、緻密層5の表面に形成された孔及び/又は緻密層5の内部の空間でクヌーセン流が生じ、その他の緻密層5においては溶解拡散流が生じていると考えられる。このとき、気体がクヌーセン流により透過する流路が溶解拡散流により透過する流路よりも多いためにクヌーセン流が支配的となり、気体の透過性が飛躍的に向上すると推察される。また、溶解拡散流により気体が透過する部分においてSPMがブロックされることから、SPM等の大気中の浮遊物質を除去することが可能となると考えられる。
また、上述のように非対称膜13内にフィラーを分散した場合には、緻密層5の表面に形成された孔及び/又は緻密層5の内部の空間に加えて、フィラーとポリマーとの界面の隙間でもクヌーセン流が生じるため、非対称膜13の気体透過性がさらに向上する。
〔高分子材料〕
本実施形態では、非対称膜13を構成する高分子材料として、オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを用いている。オルガノシロキサン骨格は、珪素原子と酸素原子が交互に結合し、珪素原子の少なくとも一部に有機基が結合している構造である。オルガノシロキサン骨格において珪素原子に結合している有機基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜30のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜30のアラルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜30のアルケニル基であることが好ましい。
オルガノシロキサン骨格を有するポリマーとしては、ポリオルガノシロキサン、及び、ポリオルガノシロキサン骨格を有しないポリマーにオルガノシロキサン骨格をブロック共重合またはグラフト重合の形で分子鎖に導入させたシリコーン変性ポリマーがある。シリコーン変性ポリマーとしては、シリコーン変性シクロオレフィンポリマー(例えば、特開2011−012114号公報に記載のもの)、シリコーン変性プルランポリマー(例えば、特開平8−208989号公報に記載のもの)及びシリコーン変性ポリイミドポリマー(例えば特開2002−232305号公報に記載のもの)が挙げられる。これらのうち、好ましくはシリコーン変性シクロオレフィンポリマーであるシロキサン系ポリノルボルネンを使用することができる。
〔非対称膜の製法〕
上記非対称膜13は、例えば、オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを第1の溶媒に溶解させてポリマー溶液を生成する工程と、ポリマー溶液を基材上に塗布して膜状のポリマー溶液層を形成する工程と、ポリマー溶液層より低温となっている第2の溶媒にポリマー溶液層を浸漬して冷却することでポリマー溶液層から第1の溶媒を除去し、非対称膜を形成させる工程とを備える方法によって得ることができる。
オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを第1の溶媒に溶解させてポリマー溶液を生成する工程では、オルガノシロキサン骨格を有するポリマーと第1の溶媒を所定温度(例えば160〜200℃)に加熱することが望ましいが、オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを第1の溶媒に溶解させてポリマー溶液を生成でき、かつ、ポリマー溶液の温度が第2の溶媒の温度より高くなっていれば、オルガノシロキサン骨格を有するポリマーと第1の溶媒を必ずしも加熱する必要はない。
第1の溶媒としては、オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを高温時に溶解し、低温時に相分離させる溶媒を用いる。第1の溶媒として、下記式(1)で示される1種類以上のケトン化合物及び/又は下記式(2)で示される1種類以上のアルコール化合物からなる有機溶媒を用いる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
(式中、R1、R2、R3は、炭素数1〜3のアルキル基である。)
(式中、R4は炭素数8〜12のアルキル基、炭素数8〜12の不飽和結合を有する炭化水素鎖、又は1〜3のエーテル結合を有する炭素数7〜12の炭化水素鎖である。)
第1の溶媒としては、例えば1−オクタノール、イソホルン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ラウリルアルコール、ネロールを用いることができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
第2の溶媒としては、ポリマー膜を固化させるとともに第1の溶媒との親和性が高い溶媒、つまり、オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを溶かさず、第1の溶媒を溶かすことが可能な溶媒を用いる。第2の溶媒として、炭素原子を1以上含む1種類以上の有機溶媒、又は1種以上の有機溶媒と水との混合溶媒を用いる。第2の溶媒は、Fedors法によるSP値(溶解パラメーター)が「2〜23」の有機溶媒を好適に用いることができる。また、1種類以上の有機溶媒と水との混合溶媒の場合は、有機溶媒の比率が5%以上となっていることが好ましい。
第2の溶媒としては、エタノール、エチレングリコール等の1種類以上のアルコール化合物又は1種類以上のアルコール化合物と水との混合溶媒を用いることができる。
本実施形態の非対称膜の製造方法では、高温となっている膜状のポリマー溶液層を低温の第2の溶媒に浸漬することで、ポリマー溶液層では熱変化による相分離が起こる。熱変化による相分離は、溶媒移動による相分離よりも3倍程度速く進行する。このため、熱変化による相分離で成膜を行うことで、瞬時に成膜を完了させることができ、ポリマー溶液層からの孔の消滅を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1の溶媒を溶かすことができる第2の溶媒にポリマー溶液層を浸漬することで、ポリマー溶液層における第1の溶媒が第2の溶媒に置き換わる。このことによっても相分離が起きるため、熱変化による相分離との相乗効果により、より多くの孔が形成される。さらに、第1の溶媒が第2の溶媒に置き換わることで、緻密層と多孔質層からなる非対称膜を形成することができる。
このように、本実施形態によれば、非溶媒誘起相分離法と熱誘起相分離法の特徴を兼ね備えた非対称膜の製造方法を提供することができ、非対称膜13の孔径及び開口率を大きくすることができる。
上記非対称膜13は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変形が可能である。例えば、非対称膜13がメッシュ体(支持体)をさらに有していてもよい。この場合、多孔質層及び緻密層のうち少なくとも一方がメッシュ体に含浸していてもよい。あるいは、メッシュ体が多孔質層上若しくは緻密層上に積層されていてもよい。メッシュ体を有する非対称膜13は、例えば、上述の混合液をメッシュ体に含浸させるか、又はメッシュ体上に塗布することにより作製できる。
メッシュ体により、ガス透過性を向上させるとともに、膜の機械的強度を向上させ、外部応力による膜の破壊を防ぐことができる。メッシュ体は金属製でも樹脂製でもよいが、特に樹脂製が好ましい。メッシュ体を形成する樹脂としてはポリエステルテレフタレート(PET)及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。メッシュ体の織り方としては平織、綾織、平畳織、及び綾畳織が挙げられる。
メッシュ体の表面は、非対称膜13の強度を向上させるために、密着向上剤(プライマー)で処理されていることが好ましい。密着向上剤としては、市販されているものを用いることができる。
また、非対称膜13が支持体上に形成されていてもよいし、非対称膜13が中空糸状の膜であってもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を住宅用空調システムに適用した第2実施形態について説明する。図2は、二階建て家屋110における住宅用空調システム100を家屋110の高さ方向に切断した概略断面図である。
住宅用空調システム100は、家屋110の一階の室内(空調対象空間)の側壁103及び天井104、二階の室内(空調対象空間)の側壁107及び天井108に、上述の非対称膜からなる透過膜13を備える。また、住宅用空調システム100は、各階の室内に、ファン112を備える。さらに、住宅用空調システム100は、一階床102の下方、一階天井104と二階床106との間、及び二階天井108の上方に、家屋110の幅方向に対向する一対の通気口114を備える。また、住宅用空調システム100は、各階の室内(空調対象空間内)に暖房機器(石油ファンヒーター)を備える(図示省略)。
各階の室内は、透過膜13以外の部分では、実質的に外気と遮断されている。すなわち、各階の室内の空気は、透過膜13のみを介して、通気口114から家屋110内へ取り込まれた外気と接する。各通気口114の間には気流F1、F2、F3、F4が形成され、これらの気流によって外気が室内へ供給されるとともに、室内から排出された空気が室外へ排出される。
各階の室内で石油ファンヒーターを作動させると、石油の燃焼に伴って室内のO2濃度が減少して、CO2濃度が増加する。また、石油の不完全燃焼によって発生したCOや、家屋110を構成する建材又は内装材から放散されたVOCが室内に存在する。したがって、室内の空気では、外気に比べて、O2濃度が低く、CO2、CO、及びVOCの濃度が高くなる。このような室内の空気と外気との濃度差に起因して、外気中のO2が透過膜13を介して室内へ導入されるとともに、CO2、CO、及びVOCが透過膜13を介して室外へ排出される。このような透過膜13を介したO2の導入、CO2、CO、及びVOCの排出(ガス交換)は、O2、CO2、CO、及びVOCの各濃度差が解消されるまで行われる。その結果、室内の空気と外気とで、CO2、CO、及びVOCの各濃度を均一にすることができる。
住宅用空調システム100では、ファン112で室内の空気を循環させることによって、上述のガス交換の効率を向上させることができる。また、各通気口114の間に流れる気流F1、F2、F3、F4によって上述のガス交換を促進することができる。
また、住宅用空調システム100では、室内に存在するガスのうち、外気との間で濃度差が生じたガスのみを透過膜13を介して選択的に交換し、且つ膜を透過するガスの量は、透過膜13の両側間のガスの濃度差を解消するために要する量に限られ、それより多くのガスが膜を透過することがない。すなわち、住宅用空調システム100では、余分な換気が行われない。その結果、換気による住宅用空調システム100の熱損失を抑えることができる。例えば、石油ファンヒーターに起因するCO2、COや、建材又は内装材が放散するVOC等の室内で発生する有害ガス(室内空気質組成の悪化分)は、多めに見積もっても室内の空気全体の3%である。ここで、室内と外気との間で交換するガスの総量が室内空気全体の3%であると仮定すると、熱損失は3%となり、従来の住宅用の24時間換気システムに比べて熱損失を抑えることができる。なお、住宅用空調システム100が各階の室内(空調対象空間内)に冷房機器を備える場合においても、換気による住宅用空調システム100の熱損失を抑えることができる。
さらに、住宅用空調システム100では、上述の非対称膜からなる透過膜13を介して気体の排出及び導入が行われるので、SPM、nSPM等の大気中の浮遊物質の室内への流入を防止することができる。
透過膜13の設置面積は、例えば、室内と外気との間で必要とされる交換量が最も多いO2の交換を十分に達成できる程度に設定すればよい。例えば、住宅用空調システム100の空調対象空間が、6畳(10.94m2)×天井高2.4mの大きさである場合、空調対象空間の容積は26.26m3となる。石油ファンヒーターによるO2の消費量が1時間当たり1.2%とすると、空調対象空間内で石油ファンヒーターが1時間当たりに消費するO2全量は、26.26m3×1.2%/h=0.315m3/hとなる。また、一人当たりのO2消費量は0.0244m3/h程度である。したがって、6畳の空調対象空間内に4人が存在する状態で石油ファンヒーターを作動させた時の、空調対象空間内での一時間当たりのO2消費量は、0.315m3/h+0.0244m3/h×4=0.4126m3/hとなる。ここで、透過膜13におけるO2の透過率を、0.5×10-2cm3/sec/cm2=0.18m3/h/m2とすると、上記空調対象空間内での1時間当たりのO2消費量に相当する量のO2を透過させるために必要となる透過膜13の設置面積は、0.4126m3/h÷0.18m3/h/m2=2.29m2(約1.5m×1.5m)となる。このサイズの透過膜13を設置するだけの面積を確保できる点において、透過膜13の設置場所は室内(空調対象空間)の側壁又は天井であることが好ましい。なお、室内においてO2より低濃度であるCO2、VOCは上記面積を有する透過膜13で十分に交換可能である。
透過膜13の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。
(第3実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を車両用空調システムに適用した第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態の車両用空調システムを搭載した車両10の模式的な断面図である。図3において前後左右の矢印は車両10の各方向を示し、矢印Fwは車両10の前進方向を示している。
乗員が搭乗する車室11(図3中、太実線で囲んで示した領域)の前端部には、車室11とエンジンルーム12とを仕切る隔壁(ファイヤーウォール)27が設けられている。この隔壁27の一部には車室11側からエンジンルーム12側に貫通する貫通穴が形成されており、この貫通穴は透過膜13によって塞がれている。
エンジンルーム12には、外気が流れる外気流路20を形成する外気ダクト21が隔壁27に沿って配置されている。車室11には、内気が流れる内気流路22を形成する内気ダクト23が隔壁27に沿って配置されている。
外気ダクト21及び内気ダクト23の壁面の一部には貫通穴が形成されており、この貫通穴が透過膜13と重なるように外気ダクト21及び内気ダクト23が隔壁27に配置されている。
換言すれば、透過膜13は、その一方の面(エンジンルーム12側の面)13aが外気流路20に露出して外気と接触し、その他方の面(車室11側の面)13bが内気流路22に露出して内気と接触するように外気流路20と内気流路22との境目に配置されている。
外気流路20には、外気の流れを発生させて透過膜13の一方の面13aに外気を供給する外気送風機24が配置されている。内気流路22には、内気の流れを発生させて透過膜13の他方の面13bに内気を供給する内気送風機25が配置されている。
外気送風機24及び内気送風機25は、気体に運動エネルギーを与えたり圧力を高めたりする流体機械のうち圧縮比が2未満のものであり、具体的にはファンやブロア等である。
外気ダクト21には、外気流路20に外気を流入させる外気入口部20aと、外気を外気流路20の外部に流出させる外気出口部20bとが形成されている。
外気入口部20a及び外気出口部20bは、外気入口部20aにおける圧力(全圧)P1、外気出口部20bにおける圧力(全圧)P2、及び外気送風機24の送風圧力Pvが次の圧力関係を満たすように構成されている。
すなわち、出口部圧力P2から入口部圧力P1を引いた圧力差(P2−P1)が車両停止時及び車両走行時の両方において送風圧力Pv以下になるように外気入口部20a及び外気出口部20bが構成されている。換言すれば、入口部圧力P1、出口部圧力P2及び送風圧力Pvは車両停止時及び車両走行時の両方においてP2−P1≦Pvの関係を満たしている。
図3の例では、外気入口部20aを車両前方側に向けて開口させ、かつ外気出口部20bを車両左方側に向けて開口させることによって、外気出口部20bでは外気入口部20aよりも車両走行時の走行風(動圧)を受けにくくなるようにし、その結果として上記圧力関係を満たすようにしている。
外気送風機24及び内気送風機25の作動は図示しない空調用制御装置(ECU)により制御される。空調用制御装置は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。空調用制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算と処理とを行って外気送風機24及び内気送風機25等の電気機器の作動を制御する。
次に上記構成における作動を説明する。空調用制御装置が外気送風機24及び内気送風機25を作動させると外気流路20に外気の流れが発生するとともに内気流路22に内気の流れが発生する。
このとき、内気流路22の内気中のある成分の濃度が外気流路20の外気中のその成分の濃度と比較して低ければ、その成分の濃度差により外気中のその成分が透過膜13を透過して内気と混ざる。このため内気中のその成分の濃度が上昇する。
逆に、内気流路22の内気中のある成分の濃度が外気流路20の外気中のその成分の濃度と比較して高ければ、その成分の濃度差により内気中のその成分の気体が透過膜13を透過して外気と混ざる。このため内気中のその成分の濃度が低下する。
例えば、車室11内の乗員の呼吸により酸素が消費されて内気中の酸素濃度が低下すると、外気流路20の外気中の酸素が透過膜13を透過して内気流路22の内気と混ざるので内気中の酸素濃度が上昇する。
また、車室11内の乗員の呼吸により二酸化炭素が発生して内気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、内気流路22の内気中の二酸化炭素が透過膜13を透過して外気流路20の外気と混ざるので内気中の二酸化炭素濃度が低下する。このため、車室11内の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を乗員にとって快適な濃度に維持することができる。同様に体臭などの臭気ガスも抑制できる。
一方、外気流路20の外気中の液体や固体は透過膜13を全く透過しないか僅かに透過するだけであるので、これらの液体や固体の内気流路22への侵入を透過膜13によって抑制できる。
また、従来の車両では車室11内の乗員の呼吸により水蒸気が発生して内気中の湿度が上昇すると冬場など車室外の気温が低い場合に窓が曇り運転に支障をきたすため外気を導入して防曇していたので換気による暖房の熱損失が発生していたが、本実施形態では内気流路22の内気中の水蒸気が透過膜13を透過して外気流路20の外気と混ざるので内気中の湿度を低下させることができ、ひいては窓の曇りを抑制することができる。このため、外気導入の必要性が少なくなって換気による熱損失を低減できるので省エネルギー化や空調装置の小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、外気送風機24及び内気送風機25を備えているので、透過膜13近傍に外気及び内気が滞留することなく透過膜13に新鮮な外気及び内気を供給することができる。
さらに本実施形態では、入口部圧力P1、出口部圧力P2及び送風圧力Pvの圧力関係が車両停止時及び車両走行時の両方においてP2−P1≦Pvの関係を満たしているので、外気流路20における外気の流れ方向を車両停止時及び車両走行時の両方において外気入口部20aから外気出口部20bに向かう方向にすることができる。
換言すれば、外気流路20における外気の流れ方向を車両停止時及び車両走行時の両方において一定にすることができるので、外気流路20における外気の滞留及び逆流を防止することができ、ひいては透過膜13に新鮮な外気を安定して供給することができる。
これらの結果、外気及び内気が透過膜13近傍に滞留することによる透過膜13の透過性能の低下を車両停止時及び車両走行時の両方において防止することができるので、透過膜13の透過性能を安定して発揮することができる。
また、自車両の出す排気ガスに含まれる臭気及び有害ガスやエンジン周辺の臭気等が外気流路20に流れ込んで長時間滞留するとこれらの臭気及び有害ガスが透過膜13を透過して車室11内に侵入しやすくなるが、本実施形態では透過膜13に新鮮な外気が供給されるので、これらの臭気及び有害ガスの車室11内への侵入を低減できる。
ちなみに図3の例では、入口部圧力P1、出口部圧力P2及び送風圧力Pvの圧力関係が車両走行時でもP2−P1≦Pvの関係を満たすようにするために、外気流路20の外気入口部20aを車両前方側に向け、外気流路20の外気出口部20bを車両左方側に向けているが、上記圧力関係を満たすための外気入口部20a及び外気出口部20bの構成はこれに限定されるものではない。
例えば、車両前進方向Fwと外気入口部20aの開口方向とがなす角度を入口開口角度とし、車両前進方向Fwと外気出口部20bの開口方向とがなす角度を出口開口角度としたとき、入口開口角度が出口開口角度以下になる配置関係で外気入口部20a及び外気出口部20bを構成すれば入口部圧力P1を出口部圧力P2よりも所定量高くすることができ、ひいては上記圧力関係を満たすようにすることができる。
ここで、外気入口部20a及び外気出口部20bが複数個ずつ設けられ、それらの開口方向が各々異なっているような場合には、入口開口角度の平均角度と出口開口角度の平均角度とを比較すればよい。
ちなみに平均角度とは次のように算出されるものである。すなわち、例えば入口開口角度の平均角度とは、まず複数個の外気入口部20aの各々における開口角度と開口面積との積を求め、この積を足し合わせた後に全開口面積で除した値のことである。出口開口角度の平均角度も同様である。
また、上記圧力関係を満たすための外気入口部20a及び外気出口部20bの構成としては例えば、外気入口部20aの開口面積が外気出口部20bの開口面積以上になる面積関係で外気入口部20a及び外気出口部20bを構成したものであってもよい。
この構成によると、外気入口部20aでの圧力損失を外気出口部20bでの圧力損失よりも小さくすることができるので、入口部圧力P1を出口部圧力P2よりも所定量高くすることができ、ひいては上記圧力関係を満たすようにすることができる。
なお、上記した外気入口部20a及び外気出口部20bの配置関係と面積関係とを組み合わせてもよい。
ちなみに本実施形態は以上の説明からわかる通り、透過膜13の外気側と内気側との間に真空ポンプ等の差圧発生手段により大きな圧力差を設けることなく透過膜13による透過機能を実現するものである。
具体的には、一般的な大気圧力に、車両走行風によって生じる圧力(ラム圧)、及び圧縮比2未満の送風機23の圧力を加えた程度の圧力変動の範囲で作動するものである。より具体的には、透過膜13の外気側と内気側との間の圧力差が5kPa以下の範囲で作動するものである。
(第4実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を車両用空調システムに適用した第4実施形態について説明する。
図4は、本第4実施形態の車両用空調システムを搭載した車両の模式図である。図4において前後左右の矢印は車両の各方向を示し、矢印Fwは車両の前進方向を示している。
図4に示す第4実施形態は、上記第3実施形態に対して、車両走行時における出口部圧力P2と入口部圧力P1との差(P2−P1)を小さくしたものである。具体的には、外気出口部20bにおける走行風の受け度合いを外気入口部20aにおける走行風の受け度合いに近づけている。
例えば、図4に示す第1の範囲R1内又は第2の範囲R2内に外気出口部20bの開口方向を設定することによって、外気出口部20bにおける走行風の受け度合いを外気入口部20aにおける走行風の受け度合いに近づけることができる。
ここで、第1の範囲R1とは、外気入口部20aの開口方向D1となす角度が車両側面側、車両上面側及び車両正面側のいずれからから見ても90度以下になる方向の範囲のことである。
また、第2の範囲R2とは、外気入口部20aの開口方向D1に対して左右対称な方向D2となす角度が車両側面側、車両上面側及び車両正面側のいずれからから見ても90度以下になる方向の範囲のことである。なお、図4では理解を容易にするために、車両上面側から見たときの第1の範囲R1及び第2の範囲R2を示している。
上記第3実施形態では、出口部圧力P2と入口部圧力P1との差(P2−P1)が走行風の有無によってある程度変動するので、車両停止時と車両走行時とで外気流路20に流れる風量がある程度変動し、ひいては透過膜13による気体透過性能も車両停止時と車両走行時とである程度変動することとなる。
この点に鑑みて本実施形態では、車両走行時における出口部圧力P2と入口部圧力P1との差(P2−P1)を小さくしているので、車両停止時と車両走行時とで出口部圧力P2と入口部圧力P1との差(P2−P1)が変動することを抑制することができ、ひいては透過膜13による気体透過性能をより安定して発揮することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を車両用空調システムに適用した第5実施形態について説明する。
図5は、本第5実施形態の車両用空調装置の断面図である。本第5実施形態は、図5に示すように、透過膜13が組み込まれた透過膜モジュール33を用い、内気送風機25を車両用空調装置30の空調用送風機と兼用させている。
車両用空調装置30の空調ケース31は車室11の最前部に配置される計器盤(図示せず)の内側に配置されており、その内部に空気が流れる流路を形成している。
空調ケース31は、ポリプロピレンのようなある程度の弾性を有し機械的強度に優れた樹脂にて成形されている。
空調ケース31の上流部には、矢印A1〜A3のように外気がUターンして流れる略U字状の外気流路32と、外気流路32に外気を流入させる外気入口部32aと、外気を外気流路32の外部に流出させる外気出口部32bとが形成されている。
外気流路32のうちU字状に屈曲する部位よりも下流側(外気出口部32b側)の部位には、外気送風機24が配置されている。
外気流路32のうちU字状に屈曲する部位には、透過膜が組み込まれた透過膜モジュール33が配置されている。空調ケース31内において透過膜モジュール33よりも外気入口部32a及び外気出口部32bと反対側(図5の下方側)の部位には、内気送風機(空調用送風機)25が配置されている。
図6は、透過膜モジュール33の斜視図である。図6に示すように、透過膜モジュール33は全体として直方体状に形成されている。透過膜モジュール33には、矢印A4、A5のように外気が流れる外気流通空間33aが形成されている。より具体的には、外気流通空間33aは、仕切り板33bによって第1、第2の2つの空間33c、33dに仕切られている。
第1の空間33cでは矢印A4のように外気が外気入口部32a側から外気入口部32aと反対側(図6の上方側から下方側)に貫通して流れる。第1の空間33cから流出した外気は、矢印A2のようにUターンした後に矢印A5のように第2の空間33dを外気出口部32bと反対側から外気出口部32b側(図6の下方側から上方側)に貫通して流れる。
さらに、透過膜モジュール33には、矢印B1のように内気が外気流通空間33aと直交する方向(図6の左右方向)に貫通して流れる内気流通空間33eが形成されている。この内気流通空間33eは外気流通空間33aと隣り合うように形成されている。図6の例では、透過膜モジュール33に外気流通空間33aと内気流通空間33eとが交互に複数個ずつ形成されている。
透過膜モジュール33は、外気流通空間33aと内気流通空間33eとの仕切り部が透過膜13で構成され、残余の部分が樹脂等の材料で形成されている。
空調ケース31において透過膜モジュール33の側方側には、透過膜モジュール33の内気流通空間33eに内気を導入させる第1内気導入口34と、内気流通空間33eから流出した内気が矢印B2のようにUターンして流れる内気流路35とが形成されている。
空調ケース31において内気流路35の下流側部位には、矢印B3のように空調用送風機25に内気を導入する第2内気導入口36が形成されている。
空調ケース31内には、内気循環モードと外気導入モードとを切り替える内外気切替ドア37が配置されている。図5の例では内外気切替ドア37としてロータリードアを用いている。
この内外気切替ドア37は、内気循環モードでは図5の実線位置に回転操作され、外気流路32を閉じて内気流路35を開ける。これにより、空調用送風機25に第1、第2内気導入口34、36からの内気が導入される。
この内気循環モードでは、矢印A1のように外気入口部32aを通じて外気流路32に流入した外気が矢印A4のように透過膜モジュール33の外気流通空間33aの第1の空間33cを通過した後に矢印A2のように内外気切替ドア37の外面側でUターンし、さらに矢印A5のように透過膜モジュール33の外気流通空間33aの第2の空間33dを通過した後に矢印A3のように外気出口部32bに向かって流れて外気流路32の外部に流出する。
また、内外気切替ドア37は、外気導入モードでは図5の2点鎖線位置に回転操作され、外気流路32を開けて内気流路35を閉じる。これにより、外気入口部32aを通じて外気流路32に流入した外気は、矢印A4のように透過膜モジュール33の外気流通空間33aの第1の空間33cを通過した後に、Uターンすることなく空調用送風機25に向かって流れて空調用送風機25に導入される。
図示を省略しているが、内外気切替ドア37は、空調用制御装置により制御されるサーボモータ、又は乗員によって操作される手動操作機構によって駆動される。
図5の例では、空調ケース31内において空調用送風機25の直ぐ上流側に、空気中の塵埃や臭気等を除去するフィルタ38が配置されている。
空調ケース31内において空調用送風機25の下流側には、空調用送風機25からの送風空気の冷却及び加熱の少なくとも一方を行う熱交換器39が配置されている。本例では、熱交換器39として、送風空気を冷却する冷却用熱交換器及び送風空気を加熱する加熱用熱交換器が空調ケース31内に配置されている。
図示を省略しているが本例では、加熱用熱交換器を通過する温風と加熱用熱交換器をバイパスして流れる冷風との風量割合を調節することにより車室11への吹出空気温度を調節するエアミックスドア等が空調ケース31内に配置されている。
また、図示を省略しているが、空調ケース31の最下流部には、空調空気を車室11内の所定領域へ吹き出すための複数個の吹出開口部が形成され、この複数個の吹出開口部を開閉する吹出モードドアが空調ケース31内に配置されている。
本実施形態によると、内気循環モードでは、透過膜モジュール33の外気流通空間33aを外気が流通するので透過膜13の一方の面に外気を供給することができ、内気流通空間33eを内気が流通するので透過膜13の他方の面に内気を供給することができる。このため上記各実施形態と同様に、車室11の酸素濃度と二酸化炭素濃度を快適濃度に保つことができる。
また、内気送風機25を車両用空調装置30の空調用送風機と兼用させているので車両用空調装置30の小型化とコスト低減とを図ることができる。
さらに、外気流路32は、内気循環モードでは透過膜13に外気を供給する役割を果たし、外気導入モードでは空調用送風機25に外気を導入させる外気導入通路としての役割を果たすので、透過膜13に外気を供給する通路と空調用送風機25に外気を導入させる外気導入通路とを別個に設ける場合に比べて車両用空調装置30の小型化とコスト低減とを図ることができる。
また、空調ケース31内にフィルタ38を配置しているので、透過膜13を通じて車室11内に侵入してくる臭気を効果的に除去することができる。
(第6実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を車両用空調システムに適用した第6実施形態について説明する。
図7は、本第6実施形態の車両用空調装置の断面図である。上記第5実施形態では、透過膜が透過膜モジュール33に組み込まれているが、本第6実施形態では、図7に示すように、透過膜が内外気切替ドア37と一体化されている。具体的には、内外気切替ドア(ロータリードア)37の円弧面が透過膜13で構成されている。これに伴い、本実施形態では第1内気導入口34が廃止されている。
この構成によると、内気循環モードでは透過膜13の一方の面(内外気切替ドア37の外面)に外気入口部32aから導入された外気が供給され、透過膜13の他方の面(内外気切替ドア37の内面)に第2内気導入口36から導入された内気が供給される。
本実施形態では、透過膜を内外気切替ドア37と一体化しているので、車両用空調装置30の小型化とコスト低減とを図ることができる。
(第7実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を車両用空調システムに適用した第7実施形態について説明する。図8は、本第7実施形態の車両用空調装置の断面図であり、(a)は内気循環モードを示し、(b)は外気導入モードを示している。
本第7実施形態は、上記第6実施形態に対して、外気導入モードのときに外気送風機24を停止するか、外気送風機24の回転方向を内気循環モードのときと逆にするものである。すなわち、図8(a)に示す内気循環モードでは空調用制御装置(ECU)40が外気送風機24を正回転させて矢印A3のように外気出口部32bから外気を流出させ、図8(b)に示す外気導入モードでは空調用制御装置40が外気送風機24を停止又は逆回転させて矢印A6のように外気出口部32bから外気を流入させる。
これにより、外気導入モードにおいて外気入口部32a及び外気出口部32bの両方から外気を導入することができるので、車両用空調装置30の外気導入通路を従来よりも大型化することなく車両用空調装置30に透過膜13を設けることができる。
(第8実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を車両用空調システムに適用した第8実施形態について説明する。
本第8実施形態は、外気中の臭気濃度が高い場合に臭気が透過膜13を通じて車室11に侵入することを抑制するために、上記第3実施形態に対して、外気送風機24及び空調用送風機25の少なくとも一方を停止する送風機停止手段を設けたものである。ここで、外気中の臭気濃度が高い場合とは例えばトンネル内を走行している場合等のことである。
送風機停止手段は、外気臭気濃度に応じて外気送風機24及び空調用送風機25の少なくとも一方のオン・オフを制御する。本例では、車両のグリルや外気流路20等に設けられた臭気濃度センサ(図示せず)によって外気臭気濃度を検出し、上述の空調用制御装置(図示せず)が外気送風機24及び空調用送風機25の少なくとも一方のオン・オフを制御する。
図9は、空調用制御装置による外気送風機24のオン・オフ制御の概要を示すフローチャートである。空調用制御装置は、まずステップS100にて外気送風機24をオンする。次にステップS110にて、臭気濃度センサが検出した外気臭気濃度が所定値よりも大きいか否かを判定する。
ステップS110にて外気臭気濃度が所定値よりも大きいと判定した場合には、ステップS120にて外気送風機24をオフする。そして、ステップS130にて外気臭気濃度が所定値よりも小さいか否かを判定し、外気臭気濃度が所定値よりも小さいと判定した場合には、ステップS100に戻る。
ステップS130にて外気臭気濃度が所定値以上であると判定した場合にはステップS130を繰り返す。なお、ステップS110にて外気臭気濃度が所定値以下であると判定した場合にはステップS110を繰り返す。
空調用制御装置による空調用送風機25のオン・オフ制御も図9と同様であるので、空調用送風機25のオン・オフ制御については説明を省略する。
本実施形態によると、外気中の臭気濃度が高い場合に透過膜13への外気及び内気の少なくとも一方の供給を抑制することができるので、透過膜13による気体透過量を抑制して車室11への臭気の侵入を抑制することができる。
したがって、外気中の臭気濃度が高い場合に透過膜13を閉塞する手段を設けて車室11への臭気の侵入を抑制する場合に比べて車両用空調装置の小型化とコスト低減とを図ることができる。
なお、送風機停止手段を、例えば乗員によって操作される送風機停止スイッチのような手動停止手段で構成することもできる。
(第9実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜を車両用空調システムに適用した第9実施形態について説明する。
本第9実施形態は、上記第5〜第7実施形態に対して、窓の曇り量を検知又は推定して内外気切替ドア37を外気導入モードの位置に切り替えるドア切り替え手段を設けることによって、窓の曇りを防止するものである。
ドア切り替え手段は、窓の曇り量が所定値よりも大きくなった場合に内外気切替ドア37を外気導入モードの位置に切り替える。本例では上述の空調用制御装置(図示せず)が内外気切替ドア37を切り替えるようになっている。窓の曇り量の推定は例えば、内気温度センサ及び内気湿度センサによって検出される内気温度及び内気湿度に基づいて空調用制御装置が窓の曇り量を算出することで行うことができる。
図10は、空調用制御装置による内外気切替ドア37の切り替え制御の概要を示すフローチャートである。空調用制御装置は、まずステップS200にて内外気切替ドア37を内気循環モード(内気循環側)の位置にする。次にステップS210にて窓の曇り量が所定値よりも大きいか否かを判定する。
ステップS210にて窓の曇り量が所定値よりも大きいと判定した場合には、ステップS220にて内外気切替ドア37を外気導入モード(外気導入側)の位置に切り替える。そして、ステップS230にて窓の曇り量が所定値よりも小さいか否かを判定し、窓の曇り量が所定値よりも小さいと判定した場合には、ステップS200に戻る。
ステップS230にて窓の曇り量が所定値以上であると判定した場合にはステップS230を繰り返す。なお、ステップS210にて窓の曇り量が所定値以下であると判定した場合にはステップS210を繰り返す。
本実施形態によると、車室11内の水蒸気濃度が高くなって窓が曇った場合に外気を導入して車室11内の水蒸気濃度を低下させることができるので、窓の曇りを防止することができる。
(第10実施形態)
次に、本発明で製造された非対称膜をコンテナ用空調システムに適用した第10実施形態について説明する。図11は、本第10実施形態のコンテナ用空調システム200の構成を示す概念図である。
図11に示すように、コンテナ用空調システム200は、内部に被収納物を収納可能な筐体210を備えている。本実施形態の筐体210は、青果物を貯蔵する冷蔵庫、冷凍庫あるいは冷凍コンテナとして構成されており、図示を省略しているが、内気を所望温度に調整するための空調装置が設けられている。空調装置は、空調風の冷却には周知の冷凍サイクルを用いることができ、空調風の加熱には周知のヒータ(電気式や燃焼式等)を用いることができる。
筐体210には、筐体210の内部全体に内気を循環させるための内気循環送風機11が設けられている。また、筐体210には、内気中の酸素濃度を検出するためのO2センサ212、内気中の二酸化炭素濃度を検出するためのCO2センサ213、内気中の湿度を検出するための湿度センサ214が設けられている。
また、筐体210には、透過膜ユニット220が設けられている。透過膜ユニット220は、外気流路222と内気流路223を形成する流路形成部材221が設けられている。流路形成部材221は、筐体210の壁面を境界にして、筐体210の外部と内部に跨るように設けられている。外気流路222と内気流路223との境界には、透過膜13が設けられている。つまり、筐体210の壁面の一部が透過膜13になっている。外気流路222では、筐体210の外部に存在する外気が透過膜13の表面に沿って流れることができ、内気流路223では、筐体210内に存在する内気が透過膜13の表面に沿って流れることができる。
外気流路222には、外気の流れを発生させるための外気送風機225が設けられている。また、内気流路223には、内気の流れを発生させるための内気送風機226が設けられている。これらの送風機225、226は、気体に運動エネルギーを与えたり圧力を高めたりする流体機械のうち圧縮比が2未満のものであり、具体的にはファンやブロア等である。これらの送風機225、226は、送風ファンとこれを回転駆動するモータとを備えている。
図11に示す例では、外気流路222の外気は左から右に向かって流れ、内気流路213の内気は右から左に向かって流れるようになっている。なお、筐体210の内部では、内気循環送風機211によって内気が循環する流れが発生しているが、内気送風機226が作動していない場合には、内気流路223には内気の流れが発生しないようになっている。
外気送風機225または内気送風機226の非作動時には、透過膜13の表面近傍で気体が滞留し、外気と内気とで気体の濃度差が小さくなって、気体の透過が進行しなくなる。このため、外気送風機225または内気送風機226の少なくとも一方を作動させることで、透過膜224の表面近傍での気体の滞留を解消させ、気体の透過を進行させることができる。
コンテナ用空調システム200には、制御装置250が設けられている。制御装置250は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。制御装置250は、O2センサ212、CO2センサ213、湿度センサ214のセンサ信号が入力する。そして、制御装置250は、これらのセンサ信号に基づいて、外気送風機225と内気送風機226に制御信号を出力して送風制御を行う。
青果物は、筐体210内に収納された後にも呼吸するため、筐体210内は大気と比較して酸素濃度が低く二酸化炭素濃度が高い状態になる。青果物は、酸素濃度が低く二酸化炭素濃度が高い状態で呼吸を抑制でき、鮮度を長期間保持できることが知られている。一方、過度に酸素濃度が低くなると、青果物の代謝異常が起きて、異味や異臭を生じたり、腐敗するおそれがある。また、青果物は多量の水分を含有しており、筐体210内に収納された状態では、青果物から放出された水分で、筐体210内の相対湿度が高くなることが多い。筐体210内の相対湿度は、高すぎると結露が発生し、低すぎると青果物が萎れ、どちらの状態も青果物の鮮度の保持する上で好ましくない。以上のことから、筐体210内の酸素濃度と二酸化炭素濃度と湿度を、青果物の貯蔵に適した所望の範囲内に調整する必要がある。本実施形態では、制御装置250がO2センサ212、CO2センサ213、湿度センサ214のセンサ信号に基づいて外気送風機25と内気送風機26の風量を制御することで、酸素濃度、二酸化炭素濃度、相対湿度を調整している。
以上説明した本実施形態によれば、透過膜13を用いることで、外気と内気とで濃度差が発生した気体(O2、CO2、H2O)のみを移動させることができる。これにより、外気と内気との間で濃度差がない気体(例えばN2)の移動が生じないので、温度調整(本実施形態では冷却)された内気が必要以上に外気に放出されることを防止でき、コンテナ用空調システム200の熱負荷を小さくすることができる。
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は本発明で製造された非対称膜の具体的配置位置の一例を示したものであり、これに限定されることなく非対称膜をトランクルームや車両の側壁部等に配置することができる。
また、上記第5実施形態では、空調用送風機25に外気を導入する外気導入通路として外気流路32のみを設け、この外気流路32に透過膜モジュール33を配置しているが、外気導入通路として外気流路32とは別個の通路を外気流路32と並列に設け、この別個の通路には透過膜モジュール33を配置しないようにしてもよい。
また、上記各実施形態の構成を適宜組み合わせてもよいことはもちろんである。
(透過膜構造体)
上述の住宅用空調システム、車両用空調システム及びコンテナ用空調システムにおいては、透過膜13の代わりに、図12に示す透過膜構造体50a、又は図13に示す透過膜構造体50bを用いても良い。
図12の透過膜構造体50aは、透過膜13c及び支持体42aを備える。透過膜13cは平面状であり、その片面に密着する平面状の支持体42aによって支持されている。なお、支持体42aは、例えば透過膜13cの外周部等、透過膜13cの一部のみに密着していてもよく、透過膜13cに完全に密着していてもよい。
図13の透過膜構造体50bは、透過膜13d及び支持体42bを備える。透過膜13dは襞状であり、その片面に密着する襞状の支持体42bによって支持されている。なお、支持体42bは、透過膜13dの一部のみに密着していてもよく、透過膜13dに完全に密着していてもよい。
透過膜13c及び13dは、上述の高分子材料から形成される膜により構成されており、その厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。支持体42a及び42bは、気体を透過するものであればよく、例えば、紙状の繊維部材、並びに孔径が0.1〜500μmの多孔質体及びメッシュが挙げられる。支持体の厚さは50〜500μmであることが好ましい。また、支持体42a及び42bは断熱材であることが好ましい。これにより、住宅用空調システム100における熱効率を向上させ易くなる。
これらの透過膜構造体50a及び50bによれば、透過膜13c及び13dが支持体により支持されているため、透過膜13c及び13dを薄くして透過する気体量を増加させるとともに、透過膜構造体の強度を確保することができる。さらに、透過膜構造体50bによれば、透過膜13c及び13dの表面積が大きくなるため、気体の透過量をさらに増加させることができる。
なお、上述の透過膜構造体は、例えば、後工程で除去可能なフィルム上に上述の成膜加工方法により透過膜を形成し、形成された透過膜上に支持体を転写した後に、上記フィルムを除去することにより製造することができる。後工程で除去可能なフィルムとしては、水、溶剤、薬品等による洗浄により除去されるフィルムや、UV、EB等の照射により改質した後に除去されるフィルムが挙げられる。また、透過膜上に支持体を転写する方法としては、透過膜と支持体との間に接着剤や粘着剤を介在させ接着する方法や、加熱や溶剤による溶解等によって透過膜と支持体とを接着する方法が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各実施例及び各比較例で得られた膜について、その表面(非対称膜については緻密層側)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析計測ソフトウェアWinROOFバージョン5.8.0(三谷商事株式会社)を用いて膜の孔径及び開口率を計測した。膜の開口率は、画像内の全部の孔の合計面積を画像面積で除した値を百分率で表している。膜の開口率は、1サンプルについて5箇所で計測した平均値を用いている。膜の孔径は、画像内の全部の孔を検出し、それぞれの孔径を計測して算出した平均値を用いている。
(実施例1)
本実施例1では、シロキサン骨格を有するポリマーとしてシロキサン系ポリノルボルネンを用い、シロキサン骨格を有するポリマーを溶かす第1の溶媒としてイソホロンを用い、シロキサン骨格を有するポリマーを溶かさず、第1の溶媒を溶かす第2の溶媒としてエチレングリコールを用いて非対称膜を製造した例について説明する。ポリマーと第1の溶媒の比は、2:98〜4:96として用いた。
図14は、実施例1で用いる成膜装置300を示している。成膜装置300は、加熱機構を有する加熱部301と加熱機構を有する成膜バー302を備えている。
メッシュ体14を載せた金属板15(SUS)を成膜装置300の加熱部301の上に配置し、金属板15を上方から成膜バー302で押さえて金属板15を固定する。加熱部301と成膜バー302を160〜200℃まで加熱する。ポリマーと第1の溶媒も160〜200℃まで加熱し、ポリマーを第1の溶媒に溶かしてポリマー溶液を生成し、金属板15上にポリマー溶液を滴下する。
金属板15を後方から押し出し、メッシュ体14上にポリマー溶液をキャストし、金属板15上に膜状のポリマー溶液層を生成する。金属板15の押し出しを継続し、金属板15上のポリマー溶液層を常温の第2の溶媒に浸漬させて冷却する。第2の溶媒への浸漬は5分間継続する。膜が生成された金属板15を第2の溶媒から取り出し、エタノール又はアセトンで膜を洗浄する。生成された膜を1日放置して乾燥させる。
実施例1によって得られた膜は、孔径が20nmであり、開口率が10%であり、下記の比較例1(熱誘起相分離法)で得られた膜に対して、孔径及び開口率が大きくなっていることが確認できた。また、比較例4(非溶媒誘起相分離法)で得られた膜に対して、開口率が大きくなっていることが確認できた。
また、実施例1で熱誘起相分離法と非溶媒誘起相分離法を用いて作製された膜は、GC−MSによる定性分析により、膜内部に第1の溶媒および第2の溶媒が含まれていることが確認できた。これは、以下の実施例2から実施例4で作成された膜についても同様であった。
(実施例2)
本実施例2では、上記実施例1の構成において、第1の溶媒としてイソホロンを用い、第2の溶媒としてエタノールと水の混合溶液を用いて非対称膜を製造した例について説明する。この実施例2で得られた膜は、孔径が20nmであり、開口率が9%であり、下記の比較例1(熱誘起相分離法)で得られた膜に対して、孔径及び開口率が大きくなっていることが確認できた。また、比較例4(非溶媒誘起相分離法)で得られた膜に対して、開口率が大きくなっていることが確認できた。
(実施例3)
本実施例3では、上記実施例1の構成において、第1の溶媒としてネロールを用い、第2の溶媒としてエチレングリコールを用いて非対称膜を製造した例について説明する。この実施例3で得られた膜は、孔径が20nmであり、開口率が9%であり、下記の比較例2(熱誘起相分離法)で得られた膜に対して、孔径及び開口率が大きくなっていることが確認できた。また、比較例4(非溶媒誘起相分離法)で得られた膜に対して、開口率が大きくなっていることが確認できた。
(実施例4)
本実施例4では、上記実施例1の構成において、第1の溶媒として1−オクタノールを用い、第2の溶媒としてエタノールと水の混合溶液を用いて非対称膜を製造した例について説明する。この実施例4で得られた膜は、孔径が90nmであり、開口率が15%であり、下記の比較例3(熱誘起相分離法)や比較例4(非溶媒誘起相分離法)で得られた膜に対して、開口率が大きくなっていることが確認できた(図15のSEM像を参照)。
実施例4で、熱誘起相分離法と非溶媒誘起相分離法を用いて作製された非対称膜と、非対称膜の作製に用いたメッシュ体14を、GC−MSにより分析した結果について図16を用いて説明する。この分析では、加熱装置として「Agilent,TDS/CIS」を用い、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)として「Agilent, HP6890plus/HP5973」を用いた。
メッシュ体(PET)1.47mg(約0.5cm2)と非対称膜1.76mg(約0.5cm2)をそれぞれガラス管に入れ、GC−MSに直結した加熱装置にて200℃で30分間加熱した。また、加熱中は注入口部分(CIS)を液体窒素で冷却し、発生成分をコールドトラップした後、注入口を急速加熱し、発生成分をカラムに導入して分析を行った。
図16に示すように、GC−MSによる分析の結果、メッシュ体14からは、1−オクタノールが0.41μg/g検出され、エタノールが1.2μg/g検出された。また、非対称膜からは、1−オクタノールが520μg/g検出され、エタノールが27μg/g検出された。このように、非対称膜において、1−オクタノールおよびエタノールともに顕著に多く検出された。
非対称膜から検出された1−オクタノールおよびエタノールのうち、メッシュ体14から検出された1−オクタノールおよびエタノールを超える量は、第1の溶媒として用いられた1−オクタノールおよび第2の溶媒として用いられたメタノールであると推測される。つまり、実施例4で作製された非対称膜において、1−オクタノール(第1の溶媒)およびメタノール(第2の溶媒)が含まれていることが確認できた。
(比較例1)
比較例1は、上記実施例1及び実施例2に対する比較例である。比較例1では、熱誘起相分離法によって膜を製造しており、上記実施例1の構成において、第1の溶媒としてイソホロンを用い、第2の溶媒に代えて、シロキサン骨格を有するポリマー及び第1の溶媒を溶かさない溶媒として水を用いている。この比較例1で得られた膜は、孔径が15nmであり、開口率が5%であった。
(比較例2)
比較例2は、上記実施例1及び実施例2に対する比較例である。比較例2では、熱誘起相分離法によって膜を製造しており、上記実施例3の構成において、第1の溶媒としてネロールを用い、第2の溶媒に代えて、シロキサン骨格を有するポリマー及び第1の溶媒を溶かさない溶媒として水を用いている。この比較例2で得られた膜は、孔径が15nmであり、開口率が5%であった。
(比較例3)
比較例3は、上記実施例4に対する比較例である。比較例3では、熱誘起相分離法によって膜を製造しており、上記実施例4の構成において、第1の溶媒として1−オクタノールを用い、第2の溶媒に代えて、シロキサン骨格を有するポリマー及び第1の溶媒を溶かさない溶媒として水を用いている。この比較例3で得られた膜は、孔径が90nmであり、開口率が13%であった。
(比較例4)
比較例4では、非溶媒誘起相分離法によって膜を製造している。比較例4では、シロキサン径ポリノルボルネンを溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、常温(25℃)でシロキサン系ポリノルボルネンをテトラヒドロフランに溶かしてポリマー溶液を生成している。そして、シロキサン骨格を有するポリマーを溶かさず、テトラヒドロフランを溶かす溶媒として水を用い、ポリマー溶液を水に浸漬した。この比較例4で得られた膜は、孔径が20nmであり、開口率が4%であった(図17のSEM像を参照)。
3 多孔質層
5 緻密層
10 車両
13 非対称膜(透過膜)
30 車両用空調装置
33 透過膜モジュール
37 内外気切替ドア
38 フィルタ
40 空調用制御装置
40a 透過膜構造体
40b 透過膜構造体
42a 支持体
42b 支持体
100 住宅用空調システム
200 コンテナ用空調システム
300 成膜装置

Claims (3)

  1. 空調対象空間への気体の供給及び/又は空調対象空間からの気体の排出を行う空調システムに用いられる非対称膜の製造方法であって、
    オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを第1の溶媒に溶解させてポリマー溶液を生成する工程と、
    前記ポリマー溶液を膜化してポリマー溶液層を生成する工程と、
    前記溶液層より低温となっている第2の溶媒に前記膜化したポリマー溶液層を浸漬して冷却し、前記ポリマー溶液層から前記第1の溶媒を除去して前記非対称膜を生成する工程とを備え、
    前記第1の溶媒は、前記オルガノシロキサン骨格を有するポリマーを溶解させることが可能であり、下記(1)で示される1種類以上のケトン化合物及び/又は下記式(2)で示される1種類以上のアルコール化合物からなり、
    前記第2の溶媒は、前記ポリマーを溶解させず、前記第1の溶媒を溶解させることが可能であり、炭素原子を1以上含む1種類以上の有機溶媒、又は炭素原子を1以上含む1種類以上の有機溶媒と水との混合溶媒であることを特徴とする非対称膜の製造方法。
    (式中、R1、R2、R3は、炭素数1〜3のアルキル基である。)
    (式中、R4は炭素数8〜12のアルキル基、炭素数8〜12の不飽和結合を有する炭化水素鎖、又は1〜3のエーテル結合を有する炭素数7〜12の炭化水素鎖である。)
  2. 23±2℃、膜間の圧力差がない条件における、前記非対称膜の酸素透過係数P(O2)及び二酸化炭素透過係数P(CO2)の比が下記式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の非対称膜の製造方法。
    1.0<P(O2)/P(CO2)<1.70 …(3)
  3. 前記空調システムが車両用空調システムであることを特徴とする請求項1または2に記載の非対称膜の製造方法。
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