JP6093593B2 - 工程紙基材用キャスト塗被紙 - Google Patents
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Description
そこで、本発明が解決しようとする課題は、工程紙、特に合成皮革製造用の工程紙の基材として使用されるキャスト塗被紙において、溶剤に対するバリア性や堅牢性が良好で繰り返しの使用性に優れることに加えて、工程紙の光沢発現性に優れたキャスト塗被紙を提供することである。
具体的には以下の通り。
1.原紙の少なくとも一方の面に、アンダー層及びキャスト層を順に設けたキャスト塗工紙であって、アンダー層が無機顔料100重量部に対して有機顔料を1〜50重量部配合してなり、キャスト層が有機顔料を含有しない工程紙基材用のキャスト塗被紙。
2.有機顔料が密実型有機顔料である1に記載の工程紙基材用キャスト塗被紙。
3.キャスト塗工層が湿潤状態の塗工層を凝固液でゲル化させて鏡面ドラムに圧着・乾燥して形成されたことを特徴とする1又は2に記載の工程紙基材用キャスト塗被紙。
4.該キャスト層は接着剤としてカゼイン顔料100重量部に対して3〜30重量部含有する1〜3のいずれかに記載の工程紙基材用キャスト塗工紙。
5.1〜4のいずれかに記載の工程紙基材用キャスト塗被紙のキャスト塗工層表面に剥離層が設けられた工程紙基材用キャスト塗工紙。
本発明のキャスト塗工紙について以下に説明する。
(原紙)
本発明において使用される原紙としては、一般の印刷用塗被紙やキャスト塗被紙であれば良く、坪量50〜400g/m2の原紙であり、目的により上質紙、中質紙を選択して使用する。また、原紙の片面あるいは両面に、一般の顔料と接着剤を有する塗被層を設けた塗被紙も原紙として使用できる。
本発明にてアンダー層に使用される材料としては、樹脂からなる有機顔料、無機顔料、塗膜形成成分が使用される。
有機顔料としては、顔料内に空隙のない密実型、顔料内に空隙を有する中空型、またはコア−シェル型等を必要に応じて単独または2種類以上混合して使用することができる。中でもキャストドラム上で溶融させ、バインダー効果により皮膜を形成し、かつ溶剤の浸透を抑制するバリア効果による耐溶剤性を発現し、さらに光沢発現性を得る上では、中空型有機顔料ではなく、熱効率に優れた密実型であることがより好ましい。
本発明において、アンダー層にプラスチックピグメント等の有機顔料を含有させることにより優れた効果が得られる理由としては、アンダー層を形成させる場合、後述の接着剤として使用されるカゼインやスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス等は、100nm以下の微粒子であるため乾燥によるマイグレーションの影響を受けやすく、本来原紙内部に移動しやすい性質を有するので、結果的に接着剤の効果が低くなる。これに対し、本発明においてアンダー層にプラスチックピグメント等の有機顔料を含有させることにより、該有機顔料がカゼインやスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス等の接着剤成分に比べて粒子が比較的大きいために、該接着剤成分と共に原紙内部に移動することなく塗工層内に留まって、キャスト塗工層の機能を維持すると考えられる。
さらにキャスト層中に該有機顔料を含有させると、有機顔料の粒子径を反映してキャスト層表面に凹凸を発生しかねないが、有機顔料をアンダー層に含有させることにより、その上に設けたキャスト層によって、キャスト層表面に凹凸が発生しない。
そして、プラスチックピグメントは共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びこれらと共重合可能な他の単量体よりなる単量体混合物を乳化共重合して得られるものである。
無機顔料の含有量としては、アンダー層の固形分100重量部あたり、50〜94重量部が好ましく、さらに 好ましくは、58〜92重量部である。
本発明におけるキャスト層は、有機顔料を含有せず、無機顔料及び接着剤としては、上記アンダー層にて使用される無機顔料及び接着剤と同様のものから選択して使用することができ、キャスト層の固形分100重量部当たり無機顔料を60〜85重量部含有することができる。
また、顔料100重量部に対してカゼインを3〜30重量部を含有させることができ、好ましくは5〜20重量部である。カゼインをこの範囲で含有させることにより、工程紙基材用キャスト塗被紙としてより光沢発現性を改善させることができる。
キャスト層を形成するための塗工方式及び塗被量も、上記のアンダー層を形成させるための方式及び塗被量と同じでよい。塗被量が5g/m2未満の場合は、耐溶剤性が低下し、35g/m2より多い場合は乾燥負荷が大きくなるため塗工速度が低下し、生産性が低下する。
本発明のキャスト塗被紙は、工程紙用の基材であり、工程紙の中でも特に合成皮革製造用の工程紙の基材に適しているが、セラミックグリーンシート、マジックフィルム等の工程紙の基材にも利用できる。
本発明のキャスト塗被紙のキャスト層の上にさらに下記のように剥離層を設ける。さらにその上に、例えばポリウレタン層、接着剤層及び基布層を設けて、乾燥・硬化させる。その後、該剥離層とポリウレタン層の間で剥離することにより、合成皮革を得ることができる。
さらに、本発明では、キャスト塗工紙に簡易的に剥離層を設けて有機溶剤に浸透させた後に堅牢性を測定することにより、合成皮革等の製造における工程紙の繰り返し使用性を予測評価できることを見出した。すなわち、溶剤に対する堅牢性を高くすることにより、工程紙の使用回数を増加させることができる。本発明においては、手塗りした工程紙をジメチルホルムアミド(DMF)に浸漬した後、乾燥させて透明粘着テープを貼りゴムロールで20回擦り180度の方向に剥がしたとき、塗工層の白点取られが生じない最長の浸漬時間が3日以上であることが望ましい。
原料として広葉樹晒クラフトパルプ100%のパルプを使用し、フリーネスを370mlとした。絶乾パルプ100部に対して、カチオン化澱粉を0.5部、サイズ剤0.2部、填料として軽質炭酸カルシウムを灰分10%となるよう内添した。長網抄紙機で抄造・乾燥後、サイズプレスを用いて、酸化澱粉100部とサイズ剤0.02部とを混合した塗工液を、片面あたり乾燥質量で1.0g/m2となるよう塗工した。さらにブレードコーターで、クレー50部、軽質炭酸カルシウム50部、スチレン系のラテックス5部、酸化澱粉3部からなる塗被液を、片面13g/m2塗布し、スーパーカレンダー(SC)で平坦化処理して、坪量150g/m2の本発明のキャスト塗被紙原紙となる塗工紙を得た。
(キャスト塗被紙原紙)
LBKP100%、フリーネスが370mlのパルプ100重量部を使用し、カチオン化澱粉0.5重量部、サイズ剤0.2重量部、填料として軽質炭酸カルシウムを10重量%となるように該パルプに添加し、さらに外添サイズ剤として酸化澱粉100重量部とサイズ剤0.2部を使用して、外添サイズ剤が1g/m2付着した坪量127g/m2のキャスト塗被紙原紙を得た。
クレー(商品名:)50部、軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP121−7C、奥多摩工業社製)50部、有機顔料として密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製、融点:80℃)1部の顔料スラリーを調製した。これに、接着剤としてスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:PA0330、日本A&L社製)5部、澱粉3部を加えてアンダー層用塗被液を調製した。
カオリン(商品名:ウルトラホワイト90、エンゲルハルド社製)50部、軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP121−7C、奥多摩工業社製)50部の顔料スラリーを調製した。これに、接着剤としてアンモニアを用いて溶解したカゼイン水溶液(固形分濃度17%)6部及び、スチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:PA0330、日本A&L社製)16部を加え、離型剤(SN−3035、サンノプコ社製)2部配合し、最後に水、アンモニアを加えて固形分濃度51%、pHを10に調製してキャスト層用塗被液を得た。
凝固液として、固形分濃度として10%のギ酸カルシウム、1%の酸化亜鉛、1%の離型剤(SN−3035、サンノプコ社製)を混合し水溶液を調製した。
上記の方法により調製したアンダー層用塗被液を用い、キャスト塗被紙原紙の片面に、乾燥塗被量が13g/m2となるようにアンダー層用塗被液をロールコーターで塗被し、乾燥させた。
アンダー層用塗被液に含有させる密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製)を10部としてアンダー層を得た以外は実施例1と同様にアンダー層用塗被液及びキャスト層用塗被液を得た。
アンダー層用塗被液に含有させる密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製)を20部としてアンダー層を得た以外は実施例1と同様にアンダー層用塗被液及びキャスト層用塗被液を得た。
アンダー層用塗被液に含有させる密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製)を50部としてアンダー層とした以外は実施例1と同様にアンダー層用塗被液及びキャスト層用塗被液を得た。
キャスト層用塗被液に含有されるカゼイン水溶液(固形分濃度17%)を3部とした以外は実施例3と同様にキャスト層用塗被液及びアンダー層用塗被液を得た。
キャスト層用塗被液に含有されるカゼイン水溶液(固形分濃度17%)を15部とした以外は実施例3と同様にキャスト層用塗被液及びアンダー層用塗被液を得た。
キャスト層用塗被液に含有されるカゼイン水溶液(固形分濃度17%)を30部とした以外は実施例3と同様にキャスト層用塗被液及びアンダー層用塗被液を得た。
アンダー層用塗被液に有機顔料を使用しない他は実施例1と同様にアンダー層用塗被液及びキャスト層用塗被液を得た。
キャスト層用塗被液に有機顔料として密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製)を20部含有させた他は比較例1と同様にキャスト層用塗被液及びアンダー層用塗被液を得た。
キャスト層用塗被液に有機顔料として密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製)を10部含有させた他は実施例2と同様にキャスト層用塗被液及びアンダー層用塗被液を得た。
キャスト層用塗被液に有機顔料として密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製)を20部含有させた他は実施例2と同様にキャスト層用塗被液及びアンダー層用塗被液を得た。
アンダー層用塗被液に含有させる密実型のプラスチックピグメント(商品名:Nipol V1004 ゼオン社製)を55部としてアンダー層を得た以外は実施例1と同様にアンダー層用塗被液及びキャスト層用塗被液を得た。
以上のようにして製造した各塗被紙について、以下のとおり評価を行った。結果は、表1に示した。
(剥離層形成方法)
工程紙としての品質評価として、公知の下記剥離剤処方にてキャスト層表面に、乾燥後の付着量が2g/m2となるように塗布・乾燥して、評価サンプルを作製した。
(剥離剤処方)
ヤシ油アルキッド樹脂(テスラック2052−60)60部、水酸基含有メチルフェニルシリコーン(KNS902)5部、メチル化メラミン樹脂(サイメル350)35部、50%パラトルエンスルホン酸メタノール溶液5部を混合
(工程紙の品質評価)
1)溶剤に対する耐久性(耐リピート性)
試料をジメチルホルムアミド(DMF)に所定時間浸漬後、熱風乾燥した。得られた試料の光沢面に、幅18mmの透明粘着テープ(商品名セロハンテープ)を貼り、ゴムロールで20回強く擦った後、180度の方向に剥がし、塗工層の白点取られを目視で評価した。塗工層の白点取られが生じない最長の溶剤浸漬時間が長いほど溶剤に対する堅牢性に優れ、繰り返し使用性に優れる。
◎=塗工層の白点取られが生じない最長の溶剤浸漬時間が7日間以上
○=塗工層の白点取られが生じない最長の溶剤浸漬時間が3日以上7日未満
△=塗工層の白点取られが生じない最長の溶剤浸漬時間が1日以上3日未満
×=塗工層の白点取られが生じない最長の溶剤浸漬時間が1日未満
試料を180℃で10分間処理を行った。処理直後(30秒以内)に光沢度計(Gloss Meter VG7000:日本電色社製)を用い、JIS−P8741に準じ、入反射角度20度で測定した。光沢度が高いほど合成皮革のレザー面の光沢発現性に優れる。
◎=光沢度(20°)が90以上
○=光沢度(20°)が70以上90未満
△=光沢度(20°)が50以上70未満
×=光沢度(20°)が50未満
キャスト塗被紙の表面にチカチカ(ピンホール様の微小な凹状欠陥)の有無を目視で評価した。チカチカが多い場合、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の剥離層を付与した際のピンホールの原因となり、合成皮革を製造する際の表面欠陥や耐溶剤性の低下等の品質低下を引き起こす。
○=キャスト塗被紙の表面にチカチカは見られず、面感に優れる。
△=キャスト塗被紙の表面にチカチカが散見され、面感に劣る。
×=キャスト塗被紙の表面にチカチカが多く見られ、面感の低下と光沢度の低下が見られる。
本発明の実施例、及び比較例の塗被液をキャスト塗工紙原紙に塗被し、キャストドラム上で乾燥させ、テークオフロールでキャストドラムから剥離した際の操業性を目視で評価した。操業性の劣るものは、剥離性に劣りドラムピックが発生、蒸気が抜け難くなるとブリスターが発生などを簡易的に評価。
○=剥離性および蒸気の抜けに優れ、良好な面感が得られる。
×=剥離性もしくは蒸気の抜けが劣り、製造が困難となる。
さらに、比較例3及び4の結果からみても明らかなように、キャスト層に有機顔料が含有されていると、アンダー層に有機顔料を含有させても、光沢発現性は改善しない。
また、無機顔料100重量部に対して有機顔料が55重量部含有された比較例5によると、面感とキャスト操業性が悪化する。これは、有機顔料が過剰に含有されることによって、表面の凹凸が目立つためと考えられる。
Claims (4)
- 原紙の少なくとも一方の面に、アンダー層及びキャスト層を順に設けたキャスト塗工紙であって、アンダー層が無機顔料100重量部に対して密実型有機顔料を1〜50重量部配合してなり、キャスト層が有機顔料を含有しない工程紙基材用キャスト塗工紙。
- キャスト塗工層が湿潤状態の塗工層を凝固液でゲル化させて鏡面ドラムに圧着・乾燥して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の工程紙基材用キャスト塗工紙。
- 該キャスト層は接着剤としてカゼイン顔料100重量部に対して3〜30重量部含有する請求項1又は2に記載の工程紙基材用キャスト塗工紙。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の工程紙基材用キャスト塗工紙のキャスト塗工層表面に剥離層が設けられた工程紙基材用キャスト塗工紙。
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