JP6091931B2 - 機械部品、時計用ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Description
また、樹脂材料の射出成形においては、溶融した樹脂材料がキャビティ内で固化するときに熱収縮する。さらに、可動金型と固定金型との間には、金型の製造誤差が少なからず存在する。したがって、成形された凹部とコアピンとの間には、偏心が発生するため、凹部とコアピンとが相対的にスライド移動したとき、コアピンには応力が作用する。そして、コアピンに大きな応力が作用した場合は、コアピンの強度不足によりコアピンが損傷するおそれがある。
特許文献1によれば、コアピンの両端部をそれぞれ固定金型と可動金型とにより支持し、コアピンが軸周りに高速で回転する構成として、コアピンに真直性の維持および曲げに対する真直矯正力を付与したので、コアピンが振動や揺らぐことが無く、また曲がり偏芯も生じなくなるとされている。
また、コアピンの損傷を防止する他の手段として、例えばコアピンを大径化することにより、コアピン自体の剛性を高くすることが考えられる。しかし、時計用の地板や輪列受等の小型精密部品にあっては、凹部を極めて小径に形成する必要があるため、コアピンの大径化にも限界がある。
したがって、機械部品の射出成形時において、コアピンの損傷を防止しつつ凹部を形成するという点で課題が残されている。
さらに、ガイド壁面の線分の長さは、凹部の深さよりも長いので、コアピンが凹部から完全に抜けるまで、コアピンに応力が作用するのを抑制できる。
したがって、射出形成においてコアピンの損傷を防止できる。
また、本発明の時計は、上述の時計用ムーブメントを備えていることを特徴としている。
本発明によれば、生産性に優れた低コストなムーブメントおよび時計を得ることができる。
さらに、ガイド壁面の線分の長さは、凹部の深さよりも長いので、コアピンが凹部から完全に抜けるまで、コアピンに応力が作用するのを抑制できる。
したがって、射出形成においてコアピンの損傷を防止できる。
以下では、まず実施形態に係る機械式の腕時計(請求項の「時計」に相当。)およびこの腕時計に組み込まれたムーブメント(請求項の「時計用ムーブメント」に相当。)について説明したあと、実施形態に係る地板(請求項の「機械部品」に相当。)について説明する。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
図1に示すように、本実施形態の時計1のコンプリートは、図示しないケース裏蓋、およびガラス2からなる時計ケース3内に、ムーブメント100と、時に関する情報を示す目盛り等を有する文字板11と、時を示す時針12、分を示す分針13および秒を示す秒針14を含む指針と、を備えている。文字板11には、日付を表す数字を明示させる日窓11aが開口している。これにより、時計1は、時刻に加え、日付を確認することが可能とされている。
機械式時計のムーブメント100は、基板を構成する地板20を有している。地板20の巻真案内穴102には、巻真110が回転可能に組み込まれている。この巻真110は、おしどり103、かんぬき105、かんぬきばね107および裏押さえ109を含む切換装置によって、巻真110の軸線方向の位置が決められている。
そして巻真110を回転させると、つづみ車(不図示)の回転を介してきち車112が回転する。きち車112の回転により丸穴車114および角穴車116が順に回転し、香箱車120に収容されたぜんまい(不図示)が巻き上げられる。
ぜんまいの復元力により香箱車120が回転すると、香箱車120の回転により二番車124、三番車126、四番車128およびがんぎ車130が順に回転する。これら香箱車120、二番車124、三番車126および四番車128は、表輪列を構成する。
がんぎ車130の外周には歯132が形成されている。アンクル142は、地板20とアンクル受138との間で回転可能に支持されており、一対のつめ石142a,142bを備えている。アンクル142の一方のつめ石142aが、がんぎ車130の歯132に係合した状態で、がんぎ車130は一時的に停止している。
てんぷ144は、一定周期で往復回転することにより、がんぎ車130の歯132に、アンクル142の一方のつめ石142aおよび他方のつめ石142bを、交互に係合および解除させている。これにより、がんぎ車130を一定速度で脱進させている。
図3は、地板20の斜視図である。なお、図3における上側は、ムーブメント100(図2参照)の表側に相当する。
図3に示すように、地板20は、例えば、ポリカーボネート等を主成分とする樹脂材料を射出成形することにより形成される機械部品であり、円盤状に形成されている。なお、以下では、地板20の両主面のうち、ムーブメント100(図2参照)の表側の主面を第一主面21といい、第一主面21とは反対側のムーブメント100(図2参照)の裏側の主面を第二主面22という。
図4に示すように、凹部30は、例えばムーブメント100(図2参照)を構成する各歯車のほぞ(不図示)等を枢支可能なように、有底の円柱状に形成されている。なお、以下の説明において、凹部30の中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、中心軸Oに直交する方向を径方向といい、中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
図5に示すように、凹部30は、軸方向に沿って、所定の深さD1を有するように形成されている。凹部30の開口縁部31は、全周にわたって面取りされている。これにより、各歯車のほぞは、凹部30の開口縁部31に引っ掛かることなく、凹部30内に容易に挿入可能とされる。
外壁42は、凹部30の中心軸Oに面するガイド壁面43を含んでいる。図4に示すように、本実施形態おいては、外壁42の全面が中心軸Oに面するガイド壁面43となっている。
また、ガイド壁面43は、凹部30の中心軸Oと平行な線分Lを含んでいる。線分Lは、ガイド壁面43上の仮想線である。線分Lは、ガイド壁面43の全周にわたって、平行に無数本並んでいる。また、線分Lは、ガイド壁面43の深さ方向の全体にわたって延在しており、線分Lの長さは、ガイド凹部40の深さと一致している。なお、図4および図5においては、線分Lを二点鎖線にて1本のみ図示している。
ここで、図5に示すように、凹部30の深さをD1とし、線分Lの長さ(本実施形態ではガイド凹部40の深さに相当)をD2としたとき、線分Lの長さD2は、凹部30の深さD1よりも長くなるように設定されている。線分Lの長さD2を凹部30の深さD1よりも長くなるように設定したときの作用および効果については、後述する。
続いて、実施形態に係る地板20を射出成形により形成するときの作用について説明する。
図6は、射出成形により地板20を形成するときの説明図であり、図4のA−A線に沿った断面に相当する断面図である。
図6に示すように、地板20を成形するための射出成形用金型50は、主に地板20の第二主面22側を成形する固定金型51と、主に地板20の第一主面21側を成形する可動金型56と、を備えている。可動金型56は、固定金型51に対して接近離反するように移動可能となっている。固定金型51および可動金型56を型締めして合わせたとき、閉じた射出成形用金型50の内部には、地板20の形状に対応するキャビティ53が形成される。
また、可動金型56は、ガイド凹部40を成形するとともに、可動金型56を固定金型51から離型する際にガイド凹部40のガイド壁面43に沿わせるための金型側ガイド部58を備えている。金型側ガイド部58は、地板20のガイド凹部40の形状に対応した円筒状に形成されており、軸方向から見て、コアピン57の中心軸(すなわち射出成形時における凹部30の中心軸O)と同軸上に配置されている。
まず、不図示のインジェクション成形機により固定金型51および可動金型56の型締めを行い、閉じた射出成形用金型50の内部に形成されたキャビティ53に、溶融した樹脂材料を不図示のゲートから加圧注入する。このとき、溶融した樹脂材料の温度は、例えば250℃程度となっており、射出成形用金型50の温度は、例えば100℃程度に設定されている。これにより、キャビティ53に注入された樹脂材料は、キャビティ53内を流動しながら広がるとともに、射出成形用金型50により冷却されて固化する。
また、凹部30の周辺に形成される支持部33の径方向における厚さKは、全周にわたって均一となっている。したがって、支持部33は、樹脂材料が冷却されて固化する際に、凹部30の全周にわたって均等に熱収縮する。
次いで、図7に示すように、可動金型56と固定金型51とを離型し、成形された地板20を射出成形用金型50から取り出す。
このとき、可動金型56のコアピン57が凹部30に沿ってスライド移動するとともに、可動金型56の金型側ガイド部58がガイド凹部40に沿ってスライド移動する。ここで、ガイド凹部40のガイド壁面43には、凹部30の中心軸Oと平行な線分Lを含んでいるので、線分Lに沿うように(すなわち凹部30の軸方向に沿うように)、ガイド壁面43が金型側ガイド部58の外面59に密接した状態で、金型側ガイド部58がガイド凹部40に対してスライド移動する。さらに、ガイド壁面43の線分Lの長さD2は、凹部30の深さD1よりも長いので、コアピン57が凹部30から完全に抜け出るまで、ガイド凹部40のガイド壁面43に金型側ガイド部58が沿いながら、可動金型56が固定金型51から離型する。これにより、可動金型56は、固定金型51に対して凹部30の径方向への位置ズレが抑制された状態で離型するので、コアピン57に作用する応力が抑制される。
そして、ガイド凹部40から金型側ガイド部58が完全に抜け出た後、成形された地板20を不図示のイジェクタピン等により押圧して固定金型51から取り出した時点で、地板20の射出成形が終了する。
本実施形態によれば、射出成形により形成される地板20の凹部30の周囲に、ガイド凹部40を設けているので、地板20を形成するための可動金型56に、凹部30を成形するためのコアピン57と、ガイド凹部40を成形するための金型側ガイド部58とを設けることができる。これにより、可動金型56が固定金型51から離型したとき、凹部30内をコアピン57がスライド移動するとともに、ガイド凹部40内を金型側ガイド部58がスライド移動できる。ここで、ガイド凹部40の側壁は、ガイド壁面43を含み、ガイド壁面43は、凹部30の中心軸Oと平行な線分Lを含んでいるので、この線分Lに沿うように凹部30の軸方向に、ガイド凹部40内を金型側ガイド部58がスライド移動できる。また、ガイド凹部40が凹み形成されるため、ガイド凹部40の形成部分は、ガイド凹部40の外側部分よりも薄肉となる。このため、地板20におけるガイド凹部40の形成部分は、ガイド凹部40の外側部分よりも先に固化および熱収縮する。このとき、ガイド壁面43は、樹脂材料の熱収縮にともない、ガイド凹部40の内側、すなわち凹部30の中心軸O側に向かって移動する。ここで、ガイド壁面43は、凹部30の中心軸Oに面しているので、凹部30の中心軸O側に向かって移動することにより、金型側ガイド部58に密接できる。これにより、凹部30とコアピン57との偏心を抑制できるとともに、ガイド凹部40に金型側ガイド部58を沿わせることができるので、凹部30内をコアピン57がスライド移動する際にコアピン57に応力が作用するのを抑制できる。
さらに、ガイド壁面43の線分Lの長さD2は、凹部30の深さD1よりも長いので、コアピン57が凹部30から完全に抜けるまで、コアピン57に応力が作用するのを抑制できる。
したがって、射出形成においてコアピン57の損傷を防止できる。
また、生産性に優れた低コストなムーブメント100および時計1を得ることができる。
図8は、実施形態の変形例に係る地板20の説明図であり、凹部30の軸方向から見た平面図である。
続いて、実施形態の変形例に係る地板20について説明する。
実施形態の地板20では、ガイド凹部40は、軸方向から見て、凹部30の中心軸Oと同軸のリング状となっており、凹部30を囲繞するように1箇所に設けられていた(図4参照)。
これに対して、実施形態の変形例に係る地板20では、ガイド凹部40は、軸方向から見て略矩形状に形成されるとともに、凹部30の中心軸Oの周りに複数設けられている点で、実施形態とは異なっている。なお、以下では、実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
ガイド壁面43a〜43cの各線分La〜Lcは、それぞれ三角形Tの頂点となる位置に配置されている。さらに、凹部30の中心軸Oは、軸方向から見て、3本の線分La〜Lcを結んで形成された三角形Tの内側に配置されている。
図9に示すように、可動金型56は、凹部30を成形するためのコアピン57を備えている。また、可動金型56は、ガイド凹部40a〜40c(図9では、ガイド凹部40aのみ図示)を3箇所に成形するとともに、可動金型56を固定金型51から離型する際に、ガイド凹部40a〜40cのガイド壁面43a〜43c(図9では、ガイド壁面43aのみ図示)に沿わせるための金型側ガイド部58(図9では、ガイド凹部40aに対応する金型側ガイド部58aのみ図示)を備えている。金型側ガイド部58は、地板20のガイド凹部40の形状に対応した直方体状に形成されており、軸方向から見て、ガイド凹部40a〜40cに対応するように、コアピン57の中心軸の周りに約120°ピッチで等間隔に設けられている。
また、ガイド凹部40の形状や個数等は、実施形態および実施形態の変形例に限定されない。すなわち、ガイド凹部40は、凹部30の中心軸Oに面するガイド壁面43を少なくとも一部に含み、かつガイド壁面43は、凹部30の中心軸Oと平行な線分Lを少なくとも1本含み、線分Lの長さが凹部30の深さよりも長くなるように設定されていればよい。したがって、例えば、ガイド凹部40は、円柱状に形成されて凹部30の径方向の外側に1箇所のみ設けられていてもよい。
また、実施形態のガイド凹部40は、凹部30の中心軸Oと同軸のリング状に形成されていたが、例えば、凹部30の中心軸Oと同軸の円弧状に形成されていてもよい。なお、円弧状に形成されたガイド凹部40は、軸方向から見たとき、ガイド凹部40の両端と中心軸とを結んで形成された扇形の中心角が、例えば240°以上となっているのが好ましい。
Claims (9)
- 柱状の凹部を有し、
前記凹部の周囲に、ガイド凹部を少なくとも1箇所設け、
前記ガイド凹部の側壁は、前記凹部の中心軸に面するガイド壁面を少なくとも一部に含み、
前記ガイド壁面は、前記凹部の前記中心軸と平行な線分を少なくとも1本含み、
前記線分の長さは、前記凹部の深さよりも長い射出成形により形成され、
前記ガイド壁面に対向する内壁には、前記凹部の前記中心軸と平行な他の線分を少なくとも1本含み、前記線分と前記他の線分の長さが一致することを特徴とする機械部品。 - 前記ガイド凹部は、前記中心軸の軸方向から見て、前記凹部を囲繞するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の機械部品。
- 前記凹部は、円柱状に形成され、
前記ガイド凹部は、前記軸方向から見て、前記凹部の前記中心軸と同軸のリング状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の機械部品。 - 前記凹部と前記ガイド凹部との離間距離は、前記凹部の全周にわたって均一であることを特徴とする請求項2または3に記載の機械部品。
- 前記ガイド凹部が複数形成されて前記線分を3本以上備え、
複数の前記線分のうちいずれか3本の前記線分は、前記中心軸の軸方向から見て、それぞれ三角形の頂点となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の機械部品。 - 前記凹部の前記中心軸は、前記軸方向から見て、複数の前記線分のうちいずれか3本以上の前記線分を結んで形成された多角形の内側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の機械部品。
- 前記機械部品は、時計用の地板であることを特徴とする請求項1に記載の機械部品。
- 請求項7に記載の機械部品が、前記地板として組み込まれていることを特徴とする時計用ムーブメント。
- 請求項8に記載の時計用ムーブメントを備えていることを特徴とする時計。
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