JP5668203B2 - 機械部品、機械部品の製造方法、時計 - Google Patents

機械部品、機械部品の製造方法、時計 Download PDF

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Description

本発明は、機械部品、機械部品の製造方法、時計に関するものである。
従来から、小型の精密機械の1つである腕時計や懐中時計等の機械式時計には、機械部品である歯車等が非常に多く用いられている。
図11は、従来の腕時計のムーブメントに用いられている時計用歯車構造の一例を示す一部拡大断面図である。
同図に示すように、腕時計700のムーブメント701には、輪列702が組み込まれており、この輪列702を構成する歯車703は、回転軸704に圧入固定されている。また、回転軸704には、他の歯車703aに噛合するかな711が圧入されている他、軸方向両端に、回転軸704の軸径よりも段差により縮径されたほぞ705が一体形成されている。このように構成されている回転軸704は、輪列受706、及び地板707に設けられている軸受部708により、回転自在に支持されている。
ところで、上述した輪列702では、確実にトルクを伝達するために、歯車703にトルクが作用した場合に、歯車703が回転軸704に対して緩むことなく固定されている必要がある。
この場合、回転軸704と歯車703との圧入代が小さくすると、歯車703にトルクが伝達されることで、歯車703が回転軸704に対して回転してしまい、歯車703に噛合するかな711へトルクを効率的に伝達できないという問題がある。
一方で、回転軸704と歯車703との固定強度を強くするために、圧入代を大きくすると、圧入時に歯車703が変形し、偏心や振れが大きくなり、トルクの変動が大きくなる。その結果、計時精度が低下するという問題がある。
また、上述したかな711は、非常に小型な機械部品であるため、回転軸704が圧入される圧入孔と、かな711の歯底部と、の肉厚が非常に薄くなっている。そのため、かな711を回転軸704に圧入する場合に、かな711が径方向外側に向けて広がるように変形してしまい、他の歯車703aとの噛合いが変動する。その結果、トルクの変動が大きくなるとともに、さらにひどい場合には歯底部を起点にしてかな711が割れてしまうという問題がある。
上述したような問題は、特に歯車703やかな711の材料として塑性変形し難い脆性材料を用いた場合に生じやすい。
そこで、歯車703(またはかな711)を回転軸704に強固に固定する方法として、例えば以下の構成が知られている。
例えば、特許文献1には、互いに金属材料からなる歯車と回転軸とをレーザ溶接により固定する構成が開示されている。また、特許文献2には、互いに樹脂材料からなる歯車と回転軸とを溶着により固定する構成が開示されている。
特許文献3には、歯車の両面における径方向の異なる位置から厚さ方向の内側に向けて切り込まれた凹部を形成することで、歯車の内周縁に径方向に沿って弾性変形可能なクランピング装置を設け、このクランピング装置により回転軸をクランプする構成が開示されている。
実開昭63−116193号公報 実開平4−49894号公報 特開2010−217186号公報
上述した特許文献1,2のように、歯車と回転軸とが同一材料により構成されている場合には、溶接や溶着により簡単に固定できる。しかしながら、上述した輪列702では、回転軸704に高炭素鋼を焼き入れしたもの、歯車703やかな711に黄銅、ニッケル、ステンレス等の金属材料や、樹脂、シリコン等が用いられることがあり、このような異種材料同士を溶接、溶着することは困難である。
また、特許文献3の構成にあっては、歯車の内周縁(クランピング装置)を弾性変形させることで、歯車の割れを防ぐことはできるが、回転軸と歯車との固定強度が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、被挿入部材の割れや変形を抑制できるとともに、仮に異種材料の組付けであっても固定強度を確保できる機械部品、機械部品の製造方法、時計を提供するものである。
本発明は、上述した課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る機械部品は、挿入孔を有する被挿入部材が挿入部材に固定されてなる機械部品において、前記被挿入部材には、前記挿入孔に開口するスリットが形成されるとともに、前記スリット間の一部を架け渡す連結部が設けられ、前記連結部は、硬化収縮性を有する材料により構成されるとともに、前記スリット内で液体から固体に硬化してなることを特徴としている。
この構成によれば、被挿入部材の挿入孔に挿入部材を挿入した後、スリット内に設けた連結部をスリット内で液体から固体へ硬化させる。すると、硬化時における連結部の収縮により、被挿入部材がスリット間の幅が狭まるように変形することで、挿入孔の内径が縮径するため、被挿入部材を挿入部材に確実に固定できる。
したがって、被挿入部材と挿入部材とが異種材料であっても、両者の固定強度を確保できる。また、被挿入部材と挿入部材との固定強度を確保するために、被挿入部材と挿入部材とを圧入固定する場合であっても、圧入代を大きく確保する必要がないので、被挿入部材と挿入部材との組付時等に被挿入部材が変形したり、割れたりするのを抑制できる。
また、前記スリットは、狭幅部と、前記狭幅部に連なり、前記狭幅部よりも幅広に形成された広幅部と、を有し、前記狭幅部に前記連結部が設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、スリットの狭幅部内に連結部を設けることで、連結部の溶融時であっても、連結部の表面張力により連結部を狭幅部内に確実に留まらせることができる。したがって、溶融状態の連結部がスリットから漏れるのを抑制できるので、連結部の硬化収縮を確実に発揮させることができる。その結果、被挿入部材を挿入部材に確実に固定できる。
また、前記連結部は、接着剤からなることを特徴としている。
この構成によれば、スリット内に接着剤を充填するのみの作業で、被挿入部材を挿入部材に簡単に固定できる。
また、前記連結部は、ろう材からなることを特徴としている。
この構成によれば、上述した接着剤等に比べ融点が比較的高いろう材を用いているため、硬化時における収縮率が高い。そのため、被挿入部材を挿入部材に確実に固定できる。
また、前記連結部は、前記被挿入部材と同一材料により形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、連結部を被挿入部材と同一材料により構成することで、上述したろう材や接着剤を連結部に用いた場合に比べて連結部の融点が高い。そのため、連結部の硬化時における収縮率を向上させ、被挿入部材と挿入部材との固定強度を高めることができる。また、連結部と被挿入部材とを一体的に形成することで、被挿入部材とは別にろう材や接着剤を設ける場合に比べて、製造工数を削減できる。
また、本発明に係る機械部品の製造方法は、挿入孔を有する被挿入部材が挿入部材に固定されてなる機械部品の製造方法であって、前記被挿入部材には、前記挿入孔に開口するスリットが形成されるとともに、前記スリット間に硬化収縮性を有する材料からなる連結部が設けられ、前記被挿入部材の前記挿入孔内に前記挿入部材を挿入する工程と、溶融した前記連結部を前記スリット内で硬化させる硬化工程と、を有していることを特徴としている。
この構成によれば、被挿入部材の挿入孔に挿入部材を挿入した後、スリット内に設けた連結部をスリット内で液体から固体へ硬化させる。すると、硬化時における連結部の収縮により、被挿入部材がスリット間の幅が狭まるように変形することで、挿入孔の内径が縮径するため、被挿入部材を挿入部材に確実に固定できる。
したがって、被挿入部材と挿入部材とが異種材料であっても、両者の固定強度を確保できる。また、被挿入部材と挿入部材との固定強度を確保するために、被挿入部材と挿入部材とを圧入固定する場合であっても、圧入代を大きく確保する必要がないので、被挿入部材と挿入部材との組付時等に被挿入部材が変形したり、割れたりするのを抑制できる。
また、本発明に係る時計は、上記本発明の機械部品が、時計における少なくとも番車の歯車またはかな部に用いられていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の機械部品を用いているので、他の歯車にトルクを確実に伝達でき、計時精度に優れた時計を提供することができる。
本発明に係る機械部品、及び機械部品の製造方法によれば、被挿入部材の割れや変形を抑制できるとともに、仮に異種材料の組付けであっても固定強度を確保できる。
本発明に係る時計によれば、他の歯車にトルクを確実に伝達でき、計時精度に優れた時計を提供することができる。
本発明の実施形態における機械式時計のムーブメント表側の平面図である。 二番車を軸方向一端側から見た斜視図である。 二番車を軸方向他端側から見た斜視図である。 二番歯車の平面図である。 ハブ部、及びスポーク部を示す拡大平面図である。 二番かなの平面図である。 第2実施形態における二番歯車の平面図である。 第2実施形態におけるハブ部及びスポーク部の拡大平面図である。 第3実施形態における二番歯車の平面図である。 第3実施形態におけるハブ部及びスポーク部の拡大平面図である。 従来の腕時計のムーブメントに用いられている時計用歯車構造の一例を示す一部拡大断面図である。
次に、本実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、機械部品の一例として、機械式時計を構成する歯車の一つである二番車を例に挙げて説明する。
(第1実施形態)
(機械式時計)
図1は機械式時計のムーブメント表側の平面図である。なお、図1では一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している。
図1に示すように、機械式時計のムーブメント100は、このムーブメント100の基板を構成する地板102を有している。地板102の巻真案内穴102aには、巻真110が回転可能に組み込まれている。この巻真110は、おしどり190、かんぬき192、かんぬきばね194、裏押さえ196を含む切換装置によって、軸線方向の位置が決められている。きち車112は、巻真110の案内軸部に回転可能に設けられている。そして、巻真110が、回転軸線方向に沿ってムーブメント100の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真110を回転させると、図示しないつづみ車の回転を介してきち車112が回転する。丸穴車114は、きち車112の回転により回転する。また、角穴車116は、丸穴車114の回転により回転する。角穴車116が回転することにより、香箱車120に収容された図示しないぜんまいが巻き上げられる。
二番車124は、香箱車120の回転により回転する。がんぎ車130は、四番車128、三番車126、二番車124の回転を介して回転する。これら香箱車120、二番車124、三番車126及び四番車128は、表輪列を構成する。この表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置は、てんぷ140と、がんぎ車130と、アンクル142とで構成されている。
二番車124が回転すると、その回転に基づいて図示しない筒かなが同時に回転し、この筒かなに取り付けられた図示しない分針が「分」を表示するようになっている。更に、筒かなの回転に基づいて日の裏車の回転を介して図示しない筒車が回転し、この筒車に取り付けられた図示しない時針が「時」を表示するようになっている。
上述した香箱車120は、地板102及び香箱受160に対して回転可能に支持されている。また、二番車124、三番車126、四番車128及びがんぎ車130は、地板102及び輪列受162に対してそれぞれ回転可能に支持されている。また、アンクル142は、地板102及びアンクル受164に対して回転可能に支持されている。
(二番車)
次に、本実施形態の二番車124について、より詳細に説明する。図2は二番車を軸方向一端側から見た斜視図であり、図3は二番車を軸方向他端側から見た斜視図である。なお、以下の説明では、後述する軸部11の中心軸線Cに沿った方向を「軸方向」とし、中心軸線Cに直交する方向を「径方向」とし、中心軸線C回りの方向を「周方向」とする。
図2,図3に示すように、二番車124は、軸部11と、この軸部11に圧入固定された二番歯車12、及び二番かな13と、を備えている。
軸部11は、例えば高炭素鋼等からなり、上述した二番歯車12及び二番かな13が圧入固定された軸本体部14と、軸本体部14に対して地板102とは反対側(軸方向一端側)に突設されたほぞ15と、軸本体部14に対して地板102側(軸方向他端側)に設けられたそろばん玉部16と、を備えている。
ほぞ15は、段差を介して軸本体部14よりも縮径され、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。また、そろばん玉部16は、段差を介して軸本体部14よりも縮径され、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。
図4は二番歯車の平面図であり、図5はハブ部、及びスポーク部を示す拡大平面図である。
図4,図5に示すように、二番歯車12は、例えばニッケル等が電鋳加工によって一体的に形成されたものである。具体的に、二番歯車12は、両面が平坦面とされた板状に形成され、周囲のリム部21と、中央のハブ部22と、両者を連結する複数(例えば、3本)のスポーク部23と、を備えている。
ハブ部22は、円環状に形成され、その中央部分には、軸本体部14が圧入される圧入孔25が形成されている。
リム部21は、ハブ部22よりも大きい円環状に形成され、その外周部分には複数の歯部26が形成されている。これら歯部26は、上述した三番車126(図1参照)の三番かなに噛合するようになっている。この際、歯部26の側面は、三番車126の二番かなが接触して摺動する摺動面とされている。
各スポーク部23は、ハブ部22の外周縁からリム部21の内周縁に向かって放射状に延在しており、リム部21及びハブ部22を連結している。そのため、リム部21及びハブ部22間におけるスポーク部23以外の領域は、軸方向に沿って貫通する扇形状の孔27が形成されている。
ここで、本実施形態の二番歯車12における各スポーク部23には、径方向に沿って延在する第1スリット31がそれぞれ形成されている。これら第1スリット31は、径方向の内側端部がハブ部22の圧入孔25内に連通し、外側端部がスポーク部23の中途部まで延在しており、それぞれ径方向で同じ長さに形成されている。すなわち、各第1スリット31は、スポーク部23と同様に、ハブ部22から放射状に延在している。また、各第1スリット31は、周方向における幅が径方向に沿って一様に形成されている。
この場合、スポーク部23は、径方向の内側端部が第1スリット31により二股状に分かれている。具体的に、スポーク部23は、径方向の内側端部において第1スリット31を間に挟んで周方向で対向する一対の腕部23aと、径方向の外側端部において各腕部23aを連結する基部23bと、で構成されている。したがって、腕部23aは、基部23bとの連結部分を起点にして周方向(対向する腕部23aが接近、離間する方向)に沿って弾性変形可能に構成されている。そして、基部23bにおける径方向の外側端部がリム部21の内周縁に連結され、腕部23aにおける径方向の内側端部がハブ部22の外周縁に連結されている。
そして、上述した各第1スリット31内には、第1スリット31(一対の腕部23a間)を架け渡すようにろう材32が形成されている。このろう材32は、液体から固体に硬化することで、収縮する硬化収縮性を有する材料、例えば二番歯車12よりも融点が低い樹脂材料や金属材料等により構成され、第1スリット31における径方向の内側端部寄りに配置されている。この場合、ろう材32が硬化収縮することにより、腕部23aが基部23bとの連結部分(第1スリット31における径方向の外側端部)を起点にして変形する。具体的には、第1スリット31を間に挟んで周方向で対向する腕部23aが、互いに接近する方向(第1スリット31における周方向の幅が狭まる方向)に変形する。これにより、ハブ部22の内周縁が径方向の内側に向けて変位し、圧入孔25の内径が縮径することで、ハブ部22が軸本体部14に締め付けられている。
また、ハブ部22の外周縁には、径方向の内側に向けて延在する複数の第2スリット33が形成されている。これら第2スリット33は、ハブ部22における各スポーク部23間に形成されており、径方向の外側端部が孔27内に連通し、内側端部がハブ部22の中途部まで形成されている。これら各第2スリット33は、腕部23aの変形に伴い、径方向の内側端部を起点にして周方向における幅が拡大または縮小するようになっている。すなわち、第2スリット33は、腕部23aにおける周方向の変形を許容しうるように構成されている。
図6は、二番かなの平面図である。
図3,図6に示すように、二番歯車12とそろばん玉部16との間には、二番かな13が設けられている。二番かな13は、二番歯車12と同様にニッケル等が電鋳加工によって一体的に形成されたものであり、両面が平坦面とされた板状に形成されるとともに、外径が二番歯車12よりも小さく形成されている。二番かな13の中央部には、軸本体部14が圧入される圧入孔41が形成されている。また、二番かな13の外周部分には、複数の歯部42が形成されている。これら歯部42は、上述した香箱車120(図1参照)の香箱歯車に噛合し、これによって香箱歯車の回転力を軸部11に伝達して二番車124(二番歯車12)を回転させるようになっている。
ここで、二番かな13には、圧入孔41から放射状に延在する複数(例えば、3本)の第3スリット43が形成されている。これら第3スリット43は、平面視でT字状に形成され、径方向に沿って延在する径方向延在部44と、周方向に沿って延在する周方向延在部45と、で構成されている。
径方向延在部44は、径方向の内側端部が圧入孔41内に連通し、外側端部が二番かな13における径方向の中途部まで延在している。また、径方向延在部44は、周方向における幅が径方向に沿って一様に形成されている。
周方向延在部45は、周方向の中間部分で径方向延在部44の外側端部に連通している。また、周方向延在部45は、径方向における幅が周方向に沿って一様に形成されている。
また、二番かな13における各第3スリット43間には、第4スリット46が形成されている。これら第4スリット46は、径方向における長さが第3スリット43の径方向延在部44と同等に形成されている。具体的に、第4スリット46は、径方向の内側端部が圧入孔41内に連通し、径方向の外側端部が二番かな13の中途部まで延在している。
この場合、二番かな13の内周部分には、各スリット43,46によって区切られた複数の腕部51が周方向に沿って配されている。各腕部51は、平面視L字状に形成されており、径方向の内側に向けて延びる複数の径方向腕部52と、径方向腕部52における内側端部から周方向に沿って延びる周方向腕部53と、を備えている。各周方向腕部53は、周方向の一端側が径方向腕部52の内側端部に接続され、他端側が第3スリット43の径方向延在部44を間に挟んで対向している。この場合、径方向腕部52は、径方向の外側端部を起点にして周方向に沿って弾性変形可能に構成されるとともに、周方向腕部53は、周方向の一端側(径方向腕部52との接続部分)を起点にして径方向に沿って弾性変形可能に構成されている。
そして、上述した第3スリット43のうち、径方向延在部44内には、ろう材54が形成されている。このろう材54は、上述した第1スリット31内に形成されたものと同様の材料により構成されている。この場合、ろう材54の硬化収縮により、径方向延在部44が狭まる一方で、周方向延在部45が周方向の外側端部を起点にして径方向の幅が広がるようになっている。すなわち、腕部51のうち、径方向延在部44を間に挟んで周方向で対向する径方向腕部52同士が、径方向の外側端部を起点にして接近する方向に変形するとともに、周方向腕部53が周方向の一端側を起点に径方向の内側に向けて変形する。これにより、圧入孔41の内周部分が径方向の内側に向けて移動し、圧入孔41の内径が縮径することで、二番かな13が軸本体部14に締め付けられている。
また、上述したこれら各第4スリット46は、ろう材54の硬化収縮時において、径方向延在部44の幅が拡大または縮小するのに伴い、径方向の外側端部を起点にして周方向における幅が拡大または縮小するようになっている。すなわち、第4スリット46は、径方向腕部52の周方向への変位を許容しうるように構成されている。
(二番車の製造方法)
次に、上述した二番車124の製造方法について説明する。以下の説明では、軸部11に二番歯車12及び二番かな13を組み付ける際の組付方法について説明する。
まず図2〜図5に示すように、二番歯車12の圧入孔25内に軸部11を圧入する。この際、二番歯車12のスポーク部23に第1スリット31が形成されているため、スポーク部23の腕部23aが基部23bとの連結部分を起点にして変形する。具体的には、第1スリット31を間に挟んで周方向で対向する腕部23aが、互いに離間する方向(第1スリット31における周方向の幅が広がる方向)に向けて変形する。また、この際、腕部23aの変形に伴って第2スリット33が、径方向の内側端部を起点にして周方向における幅が狭まるようになっている。これにより、圧入孔41の内径が拡大して、二番歯車12の圧入孔41内に軸部11をスムーズに圧入できる。
その後、二番歯車12の第1スリット31内にろう材32を充填する。この際、液状(溶融状態)のろう材32を直接流し込んでも良いし、固体のろう材32を第1スリット31内に配置し、その後加熱することで、ろう材32を溶融させて液状としても良い。固体のろう材32を用いる場合には、ろう材32の融点より高く、二番歯車12(スポーク部23)の融点よりも低い温度で加熱し、ろう材32のみを溶融させる。
そして、ろう材32を冷却し、ろう材32を硬化させる。すると、ろう材32が収縮しながら硬化することで、ろう材32により、上述したようにスポーク部23の腕部23a同士が接近する方向に変形する。これにより、ハブ部22の内周縁が径方向の内側に向けて変位し、圧入孔41の内径が縮径することで、軸本体部14がハブ部22に締め付けられる。これにより、二番歯車12を軸本体部14に固定できる。
なお、ろう材32の硬化収縮時において、第1スリット31の幅が縮小するのに伴い、第2スリット33の周方向における幅が広がるようになっている。これにより、圧入時における二番歯車12の異変形を抑制できる。
次に、図2,図3,図6に示すように、二番かな13の圧入孔41内に軸部11を圧入する。この際、二番かな13に第3スリット部43及び第4スリット46が形成されているため、二番かな13の腕部51が圧入孔41の外径を拡大しうるように変形することになる。具体的には、腕部51のうち、第3スリット43を間に挟んで周方向で対向する径方向腕部52同士が、径方向の外側端部を起点にして離間する方向(第3スリット43及び第4スリット46における周方向の幅が広がる方向)に変形する。さらに、周方向腕部53が周方向の一端側を起点に径方向の外側に向けて変形する。これにより、圧入孔41の内径が拡大して、二番かな13の圧入孔41内に軸部11をスムーズに圧入できる。
その後、第3スリット43における径方向延在部44内にろう材54を充填した後、ろう材54を冷却し、ろう材54を硬化させる。すると、ろう材54が収縮しながら硬化することで、径方向延在部44が狭まる一方で、周方向延在部45が周方向の端部を起点にして広がるように、腕部51が変形する。具体的には、上述したように腕部51のうち、径方向延在部44を間に挟んで周方向で対向する径方向腕部52同士が、径方向の外側端部を起点にして接近する方向に変形するとともに、周方向腕部53が周方向の一端側を起点に径方向の内側に向けて変形する。これにより、圧入孔41の内周縁が径方向の内側に向けて変位し、圧入孔41が縮径されることで、二番かな13を軸本体部14に固定できる。
以上により、軸部11に二番歯車12及び二番かな13が圧入固定され、二番車124が完成する。
このように、本実施形態では、二番歯車12及び二番かな13に圧入孔25,41に連通するスリット31,43,46を形成し、これらスリット31,43,46のうち、スリット31,43間をそれぞれ架け渡すようにろう材32,54が設けられている構成とした。
この構成によれば、二番歯車12及び二番かな13を軸部11に圧入する際、スリット31,43,46の幅が広がるように変形することで、圧入孔25,41の内径が拡径されるため、二番歯車12及び二番かな13を軸部11にスムーズに圧入できる。
しかも、スリット31,43内に設けたろう材32,54をスリット31,43内で硬化させることで、硬化時におけるろう材32,54の収縮により、スリット31,43,46間の幅が狭まるように変形することで、圧入孔25,41の内径が縮径するため、二番歯車12及び二番かな13を軸部11に確実に固定できる。
したがって、本実施形態によれば、二番歯車12及び二番かな13と、軸部11とが異種材料であっても、両者の固定強度を確保できる。また、軸部11と二番歯車12及び二番かな13との固定強度を確保するために、圧入代を大きく確保する必要がないので、圧入時等に二番歯車12及び二番かな13が変形したり、割れたりするのを抑制できる。その結果、他の歯車にトルクを確実に伝達でき、計時精度に優れた時計を提供することができる。
また、本実施形態では、スリット31,41間を架け渡す連結部として、例えば樹脂系の接着剤等に比べ融点が比較的高いろう材32,54を用いているため、硬化時における収縮率が高い。そのため、二番歯車12及び二番かな13と、軸部11との固定強度を確実に高めることができる。
さらに、本実施形態では、二番かな13の第3スリット43に周方向延在部45を形成したため、ろう材54の硬化収縮時における二番かな13の内周縁の変位量(周方向腕部53の径方向への変位量)を確保できる。したがって、二番かな13のように非常に小型な部品で、歯底部から圧入孔41までの距離が短い場合であっても、軸部11との固定強度を確実に高めることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7は第2実施形態における二番歯車の平面図であり、図8はハブ部及びスポーク部の拡大平面図である。本実施形態では、本発明の連結部を二番歯車と同一材料により形成する点で上述した第1実施形態と相違している。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
図7,図8に示すように、本実施形態の二番歯車112は、上述した各第1スリット31間を架け渡すように連結部101が形成されている。これら連結部101は、二番歯車112と同一材料(例えば、ニッケル)からなり、電鋳加工等により二番歯車112と一体的に形成されている。
本実施形態では、二番歯車112を軸部11に圧入後、レーザ等により連結部101を局所的に溶融させ、その後連結部101を冷却する。すると、連結部101が収縮しながら硬化することで、連結部101により、スポーク部23の腕部23a同士が接近する方向に変形する。これにより、ハブ部22の内周縁が径方向の内側に向けて変位し、圧入孔25の内径が縮径することで、ハブ部22が軸本体部14に締め付けられる。
本実施形態によれば、連結部101を二番歯車112と同一材料により構成しているため、上述したろう材32を連結部に用いた場合に比べて融点が高い。そのため、連結部101の硬化時における収縮率を向上させ、ハブ部22と軸本体部14との固定強度を高めることができる。また、連結部101と二番歯車112とを一体的に形成することで、二番歯車112とは別にろう材32等を充填する場合に比べて、製造工数を削減できる。なお、上述した実施形態では、連結部101と二番歯車112とを一体的に形成する場合について説明したが、これに限らず、二番歯車112を軸部11に圧入後、二番歯車112と同一材料からなる連結部を第1スリット31内に形成しても構わない。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9は第3実施形態における二番歯車の平面図であり、図10はハブ部及びスポーク部の拡大平面図である。本実施形態では、上述した第1スリットにおける一部の領域を他の領域に比べて狭く形成している点で上述した実施形態と相違している。なお、以下の説明では、上述した各実施形態と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
図9,図10に示すように、本実施形態の二番歯車212は、周囲のリム部21と、中央のハブ部22と、両者を連結する複数(例えば、2本)のスポーク部210,211と、を備えている。
各スポーク部210,211のうち、一方のスポーク部211には、径方向に沿って延在するスリット213が形成されている。このスリット213は、径方向の内側端部がハブ部22の圧入孔25内に連通し、外側端部がスポーク部211の中途部まで延在している。また、スリット213は、狭幅部213a(図10参照)と、狭幅部213aの径方向両側に連なり、狭幅部213aよりも周方向における幅が広く形成された広幅部213b(図10参照)と、を有している。
本実施形態によれば、スリット213の狭幅部213a内にろう材32を充填することで、ろう材32の溶融時であっても、ろう材32の表面張力によりろう材32を狭幅部213a内に確実に留まらせることができる。したがって、溶融状態のろう材32がスリット213から漏れるのを抑制できるので、ろう材32の収縮を確実に発揮させることができる。その結果、二番歯車212を確実に軸部11(図2参照)に固定することができる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した第1,3実施形態では、連結部にろう材32,54を用いる場合について説明したが、これに限らず、樹脂系の接着剤(例えば、熱硬化性接着剤、UV硬化性接着剤、二液混合接着剤等)等を用いても構わない。これらのような樹脂系の接着剤を用いることで、スリット内に接着剤を充填するのみの作業で、二番歯車12及び二番かな13を簡単に軸部11に固定することができる。
また、上述した実施形態では、二番歯車12及び二番かな13と軸部11との組み付け時に二番歯車12及び二番かな13を軸部11に圧入する場合について説明したが、これに限らず、二番歯車12及び二番かな13を挿入しても構わない。この場合、二番歯車12及び二番かな13と軸部11とのはめ合いは、連結部の収縮により二番歯車12及び二番かな13と軸部11とが十分な固定強度で固定されうる程度に設定することが好ましい。
上述した第2,第3実施形態では、二番歯車112,212を例にして説明したが、二番かな13についても適用可能である。また、スポーク部23の本数やスリットの数等は、適宜設計変更が可能である。
また、上述した実施形態では、二番車124の二番歯車12(及び二番かな13)に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、その他の時計部品(各歯車や、アンクル等)に適用しても構わない。
さらに、本発明に係る機械部品は、上述した機械式時計用の部品に限定されるものではなく、小型な精密機械等、挿入部材に被挿入部材を挿入する機械部品全般に適用可能である。
11…軸部(挿入部材) 12,112,212…二番歯車(被挿入部材) 13…二番かな(被挿入部材) 25,41…圧入孔(挿入孔) 31…第1スリット(スリット) 32,54…ろう材 43…第3スリット(スリット) 101…連結部 124…二番車 213a…狭幅部 213b…広幅部

Claims (7)

  1. 挿入孔を有する被挿入部材が挿入部材に固定されてなる機械部品において、
    前記被挿入部材には、前記挿入孔に開口するスリットが形成されるとともに、前記スリット間の一部を架け渡す連結部が設けられ、
    前記連結部は、硬化収縮性を有する材料により構成されるとともに、前記スリット内で液体から固体に硬化してなることを特徴とする機械部品。
  2. 前記スリットは、狭幅部と、前記狭幅部に連なり、前記狭幅部よりも幅広に形成された広幅部と、を有し、
    前記狭幅部に前記連結部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の機械部品。
  3. 前記連結部は、接着剤からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の機械部品。
  4. 前記連結部は、ろう材からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の機械部品。
  5. 前記連結部は、前記被挿入部材と同一材料により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の機械部品。
  6. 挿入孔を有する被挿入部材が挿入部材に固定されてなる機械部品の製造方法であって、
    前記被挿入部材には、前記挿入孔に開口するスリットが形成されるとともに、前記スリット間に硬化収縮性を有する材料からなる連結部が設けられ、
    前記被挿入部材の前記挿入孔内に前記挿入部材を挿入する工程と、
    溶融した前記連結部を前記スリット内で硬化させる硬化工程と、を有していることを特徴とする機械部品の製造方法。
  7. 請求項1から請求項5の何れか1項に記載の機械部品が、時計における少なくとも番車の歯車またはかな部に用いられていることを特徴とする時計。
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