JP6091397B2 - 電力系統の状態推定装置 - Google Patents

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Description

この発明は、電力系統の各地点に設置された計測器と位相計測器の計測情報を基に、電力系統の尤もらしい状態を推定する電力系統の状態推定装置に関するものである。
電力系統の状態推定装置では、対象の電力系統についてそのノード(母線)やブランチ(送電線や変圧器などのインピーダンス要素)における電圧、有効電力、無効電力等の計測値を、例えばテレメータのような計測器を用いて計測し、収集する。状態推定装置は、計測誤差が含まれたそれらの計測値を用いて電力系統の尤もらしい状態を推定する。推定された尤もらしい電力系統の状態は電力系統の需給制御装置や系統制御装置の初期値として利用される。
電力系統における状態推定装置の入力情報として、位相計測器PMU(Phasor Measurement Unit)からの計測情報を加え、計算精度の向上を可能としたものがある(例えば特許文献1)。特許文献1では、状態推定対象系統を2つ以上の部分系統に分離し、部分系統の分割箇所のノードに位相計測器を設置する。そして、各部分系統の状態推定計算を実施し、得られた各部分系統の状態推定計算結果と部分系統の分割箇所のノードに設置された位相計測器の計測情報を用いて状態推定対象系統全体の状態推定計算を行うことにより、高速に状態推定計算を行うことができる。
また、特許文献2では、有効電力Pは電圧位相角θと相関があり、電圧Vとは相関がなく、無効電力Qは電圧Vと相関があり、電圧位相角θと相関がないとして、状態推定計算に使用する偏微分行列を分離することにより(PQ分離法)、高速に状態推定計算を行っている。
特開2008−154362号公報 特開2012−16213号公報
特許文献1では、状態推定対象系統を分割するため、状態推定計算の冗長度が減少し、状態推定計算の計算精度の低下や計算不能に陥るという問題があった。また、位相計測器を基準として状態推定計算を行うため、位相計測器の計測情報に含まれている誤差は改善されないという問題があった。
特許文献2では、有効電力Pと電圧位相角θの相関、無効電力Qと電圧Vの相関を利用して、高速に状態推定計算を行うことができるが、位相計測器の計測情報を入力情報として加えた場合、PQ分離法が適用できないという問題があった。これは、位相計測器の計測情報は電圧(の絶対値)、電圧位相角、電流(の絶対値)、電流位相角であるが、電流と電流位相角には前記のような相関がないためである。
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、位相計測器の計測情報を入力情報として加えた場合も高速かつ高精度に、電力系統の状態推定計算を行うことができる電力系統の状態推定装置の提供を目的とする。
本発明に係る電力系統の状態推定装置は、電力系統の各地点に設置された計測器により計測された電圧、有効電力および無効電力並びに位相計測器により計測された電圧、電圧位相角、電流および電流位相角を含む計測値を入力する入力部と、位相計測器により計測された電圧、電圧位相角、電流および電流位相角を用いて、擬似的な有効電力および疑似的な無効電力である擬似計測値に変換する位相情報変換部と、計測値および擬似計測値に基づいて計測値行列を作成し、かつ、計測値行列に基づいて、有効電力と疑似的な有効電力と電圧位相角から構成される第1の偏微分行列および無効電力と疑似的な無効電力と電圧から構成される第2の偏微分行列を作成するモデル作成部と、計測値行列、第1の偏微分行列および第2の偏微分行列を用いてPQ分離法により状態推定計算を行う状態推定計算部と、状態推定計算部により計算された結果を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、位相情報変換部を有することにより、位相計測器の計測情報が入力情報として加わった場合においても、状態推定計算に使用する偏微分行列をPQ分離法により分離することができ、高速かつ高精度に状態推定計算を行うことができる。
実施の形態1に係る電力系統の状態推定装置の機能ブロック図である。 実施の形態1に係る電力系統の状態推定装置のハードウエア構成を示す図である。 電力系統のノードとブランチのπ型等価回路の模式図である。 実施の形態1に係る電力系統の状態推定装置の位相情報変換部の動作を模式的に示す図である。 実施の形態1に係る電力系統の状態推定装置の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1に係る電力系統の状態推定装置の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1に係る電力系統の状態推定装置の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1に係る電力系統の状態推定装置の動作を示すフローチャートである。 実施の形態2に係る電力系統の状態推定装置の位相情報変換部の動作を模式的に示す図である。
<実施の形態1>
<構成>
図1は、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1の機能ブロック図である。電力系統の状態推定装置1は、入力部11、位相情報変換部12、モデル作成部13、状態推定計算部14、出力部15および情報保管部16を備える。
電力系統2には、計測器21や位相計測器22が設置されており、計測器21および位相計測器22において計測された情報は、電力系統の状態推定装置1に送信される。
また、電力系統の状態推定装置1には電力系統制御装置3が接続されている。電力系統制御装置3は電力系統の状態推定装置1の計算結果に基づいて、電力系統2の制御を行う。
電力系統の状態推定装置1の入力部11には、計測器21で計測された電圧、有効電力、無効電力と、位相計測器22で計測された電圧、電圧位相角、電流、電流位相角が入力される。入力された計測値は、情報保管部16に保管される。
位相情報変換部12は、電流および電流位相角を、擬似的な計測値である擬似計測値に変換する。本実施の形態において擬似計測値とは、擬似的な有効電力および無効電力である(以下では、擬似有効電力、擬似無効電力とそれぞれ記載する)。位相情報変換部12の動作については後で詳しく述べる。
モデル作成部13は、入力部11に入力された計測値と位相情報変換部12で変換された擬似計測値に基づいて、計測値行列を作成する。モデル作成部13はさらに、計測値行列を基に偏微分行列を作成する。ここで、偏微分行列とは、電圧位相角および有効電力から構成される第1の偏微分行列と、電圧および無効電力から構成される第2の偏微分行列である。モデル作成部13の動作については後で詳しく述べる。
状態推定計算部14は、計測値行列と第1、第2の偏微分行列を用いて状態推定計算を行う。状態推定計算部14の動作については後で詳しく述べる。出力部15は、状態推定計算部14による計算結果を出力する。
図2は、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1のハードウエア構成を示す図である。状態推定装置1は、入力装置41、外部記憶装置42、主記憶装置43、中央処理装置44、出力装置45を備える。入力装置41は計測情報が入力されるインターフェースであり、機能的には入力部11に相当する。外部記憶装置42と主記憶装置43は情報を記憶するための装置であり、機能的には情報保管部16に相当する。外部記憶装置42は、例えばハードディスクであり、主記憶装置43は、例えばメモリーである。中央処理装置44はCPUであり、位相情報変換部12、モデル作成部13、状態推定計算部14の機能を担う。出力装置45は計算結果を外部に出力するためのインターフェースであり、機能的には出力部15に相当する。
図3は、電力系統2のノードi51、ノードj52とブランチij53のπ型等価回路の模式図である。ノードi51とノードj52はブランチij53により接続されている。ブランチij53は、線路間アドミタンス531、対地アドミタンス(From側)532、対地アドミタンス(To側)533により、表現される。
本明細書では、全ノード数をn、全ブランチ数をnと表記する。ブランチij53のFrom側の接続ノード番号をi、To側の接続ノード番号をjと表記する(1≦i≦n,1≦j≦n)。
また、ブランチij53の線路間コンダクタンスをgij、線路間サセプタンスをbijと表記する。ブランチij53のFrom側の対地コンダクダンス、対地サセプタンスをそれぞれgsi、bsiと表記する。ブランチij53のTo側の対地コンダクダンス、対地サセプタンスをそれぞれgsj、bsjと表記する。
また、ノードi51の電圧、電圧位相角、有効電力、無効電力をそれぞれV、θ、P、Qと表記する。ノードj52の電圧、電圧位相角、有効電力、無効電力をそれぞれV、θ、P、Qと表記する。また、ブランチij53のFrom側の有効電力、無効電力、電流、電流位相角をそれぞれPij、Qij、Iij、φijと表記する。ブランチij53のTo側の有効電力、無効電力、電流、電流位相角をそれぞれPji、Qji、Iji、φjiと表記する。
以上の表記を用いて、ブランチ有効電力Pij、Pjiおよびブランチ無効電力Qij、Qjiはそれぞれ式1、式2、式3、式4のように表される。
Figure 0006091397
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式1〜式4からわかるように、有効電力と無効電力は、電圧と電圧位相角により一意に決定することができる。すなわち、電力系統の状態推定装置1とは、全ノードの電圧と電圧位相角を推定することを目的とした装置である。
なお、ブランチij53の線路間アドミタンス531、対地アドミタンス(From側)532、対地アドミタンス(To側)533の線路定数と接続ノード情報は情報保管部16に保管されている。情報保管部16のメモリイメージは表1のようになる。
Figure 0006091397
<動作>
図5、図6、図7、図8は、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1の動作を示すフローチャートである。まず、図5のステップS1において、入力部11には、計測器21で計測された電圧V、有効電力P、Pij、Pji、無効電力Q、Qij、Qjiと位相計測器22で計測された電圧V、電圧位相角θ、電流Iij、Iji、電流位相角φij、φjiが入力される。入力された計測値は情報保管部16に保管される。情報保管部16のメモリイメージは表2および表3のようになる。この際、計測していないものについては空白を示すヌル(null)が格納される。電圧については、計測器の計測値と位相計測器の計測値の場合があるが、電圧位相角にnullが格納されている場合は計測器の計測値、電圧位相角に値が格納されている場合は位相計測器の計測値と判断できる。
Figure 0006091397
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次に、ステップS2において、位相情報変換部12は、電流Iij、Ijiと電流位相角φij、φjiを擬似有効電力と擬似無効電力に変換する。図4は、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1の位相情報変換部12の動作を模式的に示す図である。位相計測器22は、ブランチij53のFrom側であるノードi51に設置されているとする。
位相計測器22により計測された電流Iijと電流位相角φijは、同じく位相計測器22により計測された電圧Vと電圧位相角θを用いて、擬似計測値である擬似有効電力Pij,pseudoと擬似無効電力Qij,pseudoに変換される。擬似有効電力Pij,pseudoと擬似無効電力Qij,pseudoは、それぞれ式5、式6によって求められる。
Figure 0006091397
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また、位相計測器22が、ブランチij53のTo側であるノードj52に設置されている場合は、電流Ijiと電流位相角φjiは、電圧Vと電圧位相角θを用いて、擬似有効電力Pji,pseudoと擬似無効電力Qji,pseudoに変換される。擬似有効電力Pji,pseudoと擬似無効電力Qji,pseudoは、それぞれ式7、式8によって求められる。
Figure 0006091397
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計算した擬似有効電力と擬似無効電力は、情報保管部16に保管される。情報保管部16のメモリイメージは表4のようになる。なお、変換対象の電流、電流位相角の計測値が無い場合(すなわち、表3において電流および電流位相角の計測値がnullである場合)は、nullが格納される。
Figure 0006091397
次に、ステップS3において、モデル作成部13は計測値行列を作成する。具体的には、電圧位相角、有効電力の計測値から構成される計測値行列zpmと、電圧、無効電力の計測値から構成される計測値行列zqmを作成する。
計測値行列zpmは、表2、表3、表4のメモリイメージにおいて、nullではないノード電圧位相角θim、ノード有効電力Pim、ブランチ有効電力Pijm、Pjim、擬似有効電力Pijm,pseudo、Pjim,pseudoを(n×1)の配列に格納する。ここでnは該当計測値の個数である。また、nullではない計測値には添字mをつけて区別している。
計測値行列zqmは、表2、表3、表4のメモリイメージにおいて、nullではないノード電圧Vim、ノード無効電力Qim、ブランチ無効電力Qijm、Qjim、擬似無効電力Qijm,pseudo、Qjim,pseudoを(n×1)の配列に格納する。ここでnは該当計測値の個数である。
作成した計測値行列zpm、zqmは情報保管部16に保管される。情報保管部16のメモリイメージはそれぞれ表5、表6のようになる。
Figure 0006091397
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次に、ステップS4において、モデル作成部13は第1、第2の偏微分行列H、Hを作成する。第1の偏微分行列Hは、電圧位相角と有効電力から構成される。第2の偏微分行列Hは、電圧と無効電力から構成される。
第1の偏微分行列Hは、計測値行列zpmに対応する電気量の計算値行列z(V,θ)を用いて計算される。計算値行列z(V,θ)は式9のように表すことができる。なお、ブランチ有効電力Pij、擬似有効電力Pij,pseudo、それぞれ式1、式5により、ブランチ有効電力Pji、擬似有効電力Pji,pseudo、それぞれ式2、式7により計算できる。また、ノード有効電力Pは、ノードに接続された全ブランチのブランチ有効電力の和として計算できる。
Figure 0006091397
計算値行列z(V,θ)を全ノードの電圧位相角で偏微分することで第1の偏微分行列Hは式10のように計算できる。ただし、電圧は1.0、電圧位相角は0.0とする。
Figure 0006091397
第2の偏微分行列Hは、計測値行列zqmに対応する電気量の計算値行列z(V,θ)を用いて計算される。計算値行列z(V,θ)は式11のように表すことができる。なお、ブランチ無効電力Qij、擬似無効電力Qij,pseudo、それぞれ式3、式6により、ブランチ無効電力Qji、擬似無効電力Qji,pseudo、それぞれ式4、式8により計算できる。また、ノード無効電力Qは、ノードに接続された全ブランチのブランチ無効電力の和として計算できる。
Figure 0006091397
計算値行列z(V,θ)を全ノードの電圧で偏微分することで第2の偏微分行列Hは式12のように計算できる。ただし、電圧は1.0、電圧位相角は0.0とする。
Figure 0006091397
作成した第1、第2の偏微分行列H、Hは情報保管部16に保管される。情報保管部16のメモリイメージはそれぞれ表7、表8のようになる。
Figure 0006091397
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次に、ステップS5において、状態推定計算部14は状態推定計算の初期設定を行う。式13に示すように、状態推定計算の初期値として、推定電圧行列V(0)に1.0を代入する。また、式14に示すように、推定電圧位相角行列θ(0)に0.0を代入する。
Figure 0006091397
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次に、反覆回数rに1を、電圧収束フラグflag_Vおよび電圧位相角収束フラグflag_θに0を設定する。電圧収束フラグflag_V、電圧位相角収束フラグflag_θにおいて、0はフラグのオフを、1はフラグのオンを示す。
次に、計測値行列zpmに対応する重み行列Wと計測値行列zqmに対応する重み行列Wを作成する。重み行列に作成に必要な各計測値の重みは情報保管部16に保管されている。情報保管部16のメモリイメージは表9、表10のようになる。
Figure 0006091397
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この重みは計測器21、または、位相計測器22がどれくらい信用できるかを示す値であり、機器の仕様等を基に自由に設定ができる。特に、各計測値に重みを持たせる必要がない場合は全て1を設定する。ただし、一般的に、計測器21よりも位相計測器22のほうが高い精度の計測値を得ることができるので、位相計測器22の計測値の重みを大きくすることで状態推定計算の精度を高めることができる。
重み行列Wは、計測値行列zpmに対応する計測値の重みを対角要素に格納することで作成することができる。また、重み行列Wは、計測値行列zqmに対応する計測値の重みを対角要素に格納することで作成することができる。重み行列W、Wのメモリイメージはそれぞれ表11、表12のようになる。
Figure 0006091397
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次に、図6および図7のステップS6〜S16において、状態推定計算部14は、繰り返し状態推定計算を行う。図6のステップS6では、推定電圧位相角行列θの更新を行う。修正電圧位相角行列Δθ(r)は、式15により計算できる。ここで、rはr回目の反覆を示す。そして、推定電圧位相角行列θ(r)は式16により、更新される。
Figure 0006091397
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図6のステップS7では、推定電圧位相角行列の収束判定を行う。まず、修正電圧位相角行列Δθ(r)の無限大ノルム(修正電圧位相角行列Δθ(r)の各要素の絶対値の最大)||Δθ(r)||が収束判定値εθよりも小さいか判定する。小さい場合はステップS9において、flag_θに1を代入する。一方、小さくない場合はステップS8において、flag_θに0を代入する。ここで、無限大ノルムではなく、ユークリッドノルム等のノルムを用いても良い。また、この収束判定値εθは、10−5や10−6といった非常に小さい値を設定する。
flag_θが0の場合は図7のステップS11へ進む。一方、flag_θが1の場合は、ステップS10においてflag_Vが1かどうか判定を行う。flag_Vが1の場合は繰り返し計算を終了し図8のステップS17進む。一方、flag_Vが0の場合は図7のステップS11へ進む。
図7のステップS11では、推定電圧行列Vの更新を行う。修正電圧行列ΔV(r)は、式17により計算できる。ここで、rはr回目の反覆を示す。そして、推定電圧行列V(r)は式18により、更新される。
Figure 0006091397
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ステップS12では、推定電圧行列の収束判定を行う。まず、修正電圧行列ΔV(r)の無限大ノルム||ΔV(r)||が収束判定値εよりも小さいか判定する。小さい場合はステップS14においてflag_Vに1を代入する。一方、小さくない場合はステップS13においてflag_Vに0を代入する。この収束判定値εは、10−5や10−6といった非常に小さい値を設定する。
flag_Vが0の場合はステップS16において、r=r+1として図6のステップS6へ戻る。一方、flag_Vが1の場合は、ステップS15においてflag_θが1かどうか判定を行う。flag_θが1の場合は繰り返し計算を終了し図8のステップS17へ進む。一方、flag_θが0の場合はステップS16において、r=r+1として図6のステップS6へ戻る。
次に、図8のステップS17において、状態推定計算部14は、推定電圧と推定電圧位相角から各電気量を計算する。繰り返し計算において、計算が収束したときの推定電圧行列Vと推定電圧位相角行列θが状態推定計算の解となる。ステップS17では、有効電力と無効電力を式1、式2、式3、式4を用いて計算し、推定電圧と推定電圧位相角と共に、状態推定計算結果として、情報保管部16に保管する。情報保管部16のメモリイメージは表13および表14のようになる。ただし、全ノードの電圧と電圧位相角がわかれば、有効電力と無効電力は一意に計算することができるため、電圧と電圧位相角のみを状態推定計算結果としてもよい。また、用途に合わせて、有効電力と無効電力のみを状態推定計算結果とするといったことも可能である。
Figure 0006091397
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最後に、ステップS18において、出力部15は、情報保管部16に保管された状態推定計算結果を外部装置(例えば電力系統制御装置3)に出力する。
以上で述べたように、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1は、位相情報変換部12を有することにより、位相計測器22の計測情報が入力情報として加わった場合においても、状態推定計算に使用する偏微分行列をPQ分離法により分離することができ、高速かつ高精度に状態推定計算を行うことが可能である。
<効果>
本実施の形態における電力系統の状態推定装置1は、電力系統2の各地点に設置された計測器21により計測された電圧、有効電力および無効電力並びに位相計測器22により計測された電圧、電圧位相角、電流および電流位相角を含む計測値を入力する入力部11と、位相計測器22により計測された電流および電流位相角を擬似的な計測値である擬似計測値に変換する位相情報変換部12と、計測値および擬似計測値に基づいて計測値行列を作成し、かつ、計測値行列に基づいて、有効電力および電圧位相角から構成される第1の偏微分行列並びに無効電力および電圧から構成される第2の偏微分行列を作成するモデル作成部13と、計測値行列、第1の偏微分行列および第2の偏微分行列を用いて状態推定計算を行う状態推定計算部14と、状態推定計算部14により計算された結果を出力する出力部15と、を備えることを特徴とする。
従って、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1において、位相情報変換部12が位相計測器22の計測値(電流、電流位相角)を擬似計測値に変換する。よって、位相計測器22の計測値が入力情報として加わった場合においても、状態推定計算に使用する偏微分行列をPQ分離法により分離することができるため、高速かつ高精度に状態推定計算を行うことが可能である。
また、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1において、擬似計測値は、擬似的な有効電力および無効電力であることを特徴とする。
従って、位相情報変換部12が、位相計測器22の計測値(電流、電流位相角)を有効電力と無効電力に変換することによって、PQ分離法を用いた電力系統2の状態推定に、位相計測器22の計測値を利用することが可能となる。
<実施の形態2>
<構成>
実施の形態1においては、位相情報変換部12は、電流と電流位相角を擬似的な有効電力と無効電力に変換した。本実施の形態では、位相情報変換部12は、電流と電流位相角を隣接ノードの電圧と電圧位相角に変換する。つまり、本実施の形態において、擬似計測値とは、隣接ノードの擬似的な電圧と電圧位相角である(以下では、擬似隣接ノード電圧、擬似隣接ノード電圧位相角とそれぞれ記載する)。なお、機能ブロック図およびハードウエア構成は実施の形態1(図1、図2)と同じため、説明を省略する。
<動作>
まず、入力部11には、実施の形態1と同様に、計測器21で計測された電圧V、有効電力P、Pij、Pji、無効電力Q、Qij、Qjiと位相計測器22で計測された電圧V、電圧位相角θ、電流Iij、Iji、電流位相角φij、φjiが入力される。この動作は実施の形態1における図5のステップS1に対応する。
次に、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1の位相情報変換部12は、電流Iij、Ijiと電流位相角φij、φjiを擬似隣接ノード電圧と擬似隣接ノード電圧位相角に変換する。この動作は実施の形態1における図5のステップS2に対応する。図9は、本実施の形態における電力系統の状態推定装置1の位相情報変換部12の動作を模式的に示す図である。位相計測器22は、ブランチij53のFrom側であるノードi51に設置されているとする。
位相計測器22により計測された電流Iijと電流位相角φijは、同じく位相計測器22により計測された電圧Vと電圧位相角θと表1に示す線路定数を用いて、擬似計測値である擬似隣接ノード電圧Vj,pseudoと擬似隣接ノード電圧位相角θj,pseudoに変換される。擬似隣接ノード電圧Vj,pseudoと擬似隣接ノード電圧位相角θj,pseudoは、それぞれ式19、式20によって求められる。
Figure 0006091397
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また、位相計測器22が、ブランチij53のTo側であるノードj52に設置されている場合は、電流Ijiと電流位相角φjiは、電圧Vと電圧位相角θと表1に示す線路定数を用いて、擬似隣接ノード電圧Vi,pseudoと擬似隣接ノード電圧位相角θi,pseudoに変換される。擬似隣接ノード電圧Vi,pseudoと擬似隣接ノード電圧位相角θi,pseudoは、それぞれ式21、式22によって求められる。
Figure 0006091397
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計算した擬似隣接ノード電圧と擬似隣接ノード電圧位相角は、情報保管部16に保管される。情報保管部16のメモリイメージは表15のようになる。なお、変換対象の電流、電流位相角の計測値が無い場合(すなわち、表3において電流および電流位相角の計測値がnullである場合)は、nullが格納される。
Figure 0006091397
次に、モデル作成部13は計測値行列を作成する。この動作は実施の形態1における図5のステップS3に対応する。
計測値行列zpmは、表2、表3、表15のメモリイメージにおいて、nullではないノード電圧位相角θim、ノード有効電力Pim、ブランチ有効電力Pijm、Pjim、擬似隣接ノード電圧位相角θjm,pseudo、θim,pseudoを(n×1)の配列に格納する。ここでnは該当計測値の個数である。また、nullではない計測値には添字mをつけて区別している。
計測値行列zqmは、表2、表3、表15のメモリイメージにおいて、nullではないノード電圧Vim、ノード無効電力Qim、ブランチ無効電力Qijm、Qjim、擬似隣接ノード電圧Vjm,pseudo、Vim,pseudoを(n×1)の配列に格納する。ここでnは該当計測値の個数である。
作成した計測値行列zpm、zqmは情報保管部16に保管される。情報保管部16のメモリイメージはそれぞれ表5、表6のようになる。
次に、モデル作成部13は第1、第2の偏微分行列H、Hを作成する。この動作は実施の形態1における図5のステップS4に対応する。第1の偏微分行列Hは、計測値行列zpmに対応する電気量の計算値行列z(V,θ)を用いて計算される。計算値行列z(V,θ)は式23のように表すことができる。
Figure 0006091397
計算値行列z(V,θ)を全ノードの電圧位相角で偏微分することで第1の偏微分行列Hは式24のように計算できる。ただし、電圧は1.0、電圧位相角は0.0とする。
Figure 0006091397
第2の偏微分行列Hは、計測値行列zqmに対応する電気量の計算値行列z(V,θ)を用いて計算される。計算値行列z(V,θ)は式25のように表すことができる。
Figure 0006091397
計算値行列z(V,θ)を全ノードの電圧で偏微分することで第2の偏微分行列Hは式26のように計算できる。ただし、電圧は1.0、電圧位相角は0.0とする。
Figure 0006091397
作成した第1、第2の偏微分行列H、Hは情報保管部16に保管される。情報保管部16のメモリイメージはそれぞれ表7、表8のようになる。
また、本実施の形態において、重み行列Wと重み行列Wを作成する際に必要なメモリイメージは表16のようになる。重み行列Wと重み行列Wの作成は、実施の形態1における図5のステップS5の初期設定の一部に対応する。
Figure 0006091397
以降の動作、すなわち、状態推定計算部14が繰り返し状態推定計算を行って推定電圧と推定電圧位相角を求める動作および状態推定計算結果を出力する動作(実施の形態1における図6〜図8のステップS6〜S18に対応)は実施の形態1と同様なため、説明を省略する。
<効果>
本実施の形態における状態推定装置1において、擬似計測値は、擬似的な電圧および電圧位相角であることを特徴とする。
従って、位相情報変換部12が、位相計測器22の計測値(電流、電流位相角)を隣接ノードの電圧と電圧位相角に変換することによって、PQ分離法を用いた電力系統2の状態推定に、位相計測器22の計測値を利用することが可能となる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 状態推定装置、2 電力系統、3 電力系統制御装置、11 入力部、12 位相情報変換部、13 モデル作成部、14 状態推定計算部、15 出力部、16 情報保管部、21 計測器、22 位相計測器、41 入力装置、42 外部記憶装置、43 主記憶装置、44 中央処理装置、45 出力装置、51 ノードi、52 ノードj、53 ブランチij、531 線路間アドミタンス、532 対地アドミタンス(From側)、533 対地アドミタンス(To側)。

Claims (5)

  1. 電力系統の各地点に設置された計測器により計測された電圧、有効電力および無効電力並びに位相計測器により計測された電圧、電圧位相角、電流および電流位相角を含む計測値を入力する入力部と、
    前記位相計測器により計測された前記電圧、前記電圧位相角、前記電流および前記電流位相角を用いて、擬似的な有効電力および疑似的な無効電力である擬似計測値に変換する位相情報変換部と、
    前記計測値および前記擬似計測値に基づいて計測値行列を作成し、かつ、前記計測値行列に基づいて、前記有効電力と前記疑似的な有効電力と前記電圧位相角から構成される第1の偏微分行列および前記無効電力と前記疑似的な無効電力と前記電圧から構成される第2の偏微分行列を作成するモデル作成部と、
    前記計測値行列、前記第1の偏微分行列および前記第2の偏微分行列を用いてPQ分離法により状態推定計算を行う状態推定計算部と、
    前記状態推定計算部により計算された結果を出力する出力部と、
    を備えることを特徴とする、
    電力系統の状態推定装置。
  2. 電力系統の各地点に設置された計測器により計測された電圧、有効電力および無効電力並びに位相計測器により計測された電圧、電圧位相角、電流および電流位相角を含む計測値を入力する入力部と、
    前記位相計測器により計測されたノードにおける前記電圧、前記電圧位相角、前記電流および前記電流位相角と、線路定数とを用いて、前記ノードにブランチを介して隣接する隣接ノードの擬似的な電圧および疑似的な電圧位相角である擬似計測値に変換する位相情報変換部と、
    前記計測値および前記擬似計測値に基づいて計測値行列を作成し、かつ、前記計測値行列に基づいて、前記有効電力と前記電圧位相角と前記疑似的な電圧位相角とから構成される第1の偏微分行列および前記無効電力と前記電圧と前記疑似的な電圧とから構成される第2の偏微分行列を作成するモデル作成部と、
    前記計測値行列、前記第1の偏微分行列および前記第2の偏微分行列を用いてPQ分離法により状態推定計算を行う状態推定計算部と、
    前記状態推定計算部により計算された結果を出力する出力部と、
    を備えることを特徴とする、
    力系統の状態推定装置。
  3. 前記状態推定計算部は、前記位相計測器により計測された計測値および前記位相計測器により計測された計測値に基づく前記疑似計測値の重みを、前記計測器により計測された計測値の重みよりも大きく設定して、前記状態推定計算を行う、
    請求項1又は請求項2に記載の電力系統の状態推定装置。
  4. 前記位相計測器により計測されたノードiにおける前記電圧をVi、前記電圧位相角をθ とし、
    前記ノードiと前記ノードiに隣接する隣接ノードjを接続するブランチにおいて前記ノードi側の前記電流をI ij 、前記電流位相角をφ ij とし、
    前記ノードiと前記隣接ノードjを接続するブランチにおいて前記ノードi側の前記疑似的な有効電力P ij,pseudo および前記疑似的な無効電力Q ij,pseudo は、それぞれ数1と数2で表される、
    Figure 0006091397
    Figure 0006091397
    請求項1に記載の電力系統の状態推定装置。
  5. 前記位相計測器により計測されたノードiにおける前記電圧をVi、前記電圧位相角をθ とし、
    前記ノードiと前記隣接ノードjを接続するブランチにおいて前記ノードi側の前記電流をI ij 、前記電流位相角をφ ij とし、
    前記ノードiと前記隣接ノードjを接続するブランチにおいて線路間アドミタンスをg ij +jb ij とし、前記ノードi側の対地アドミタンスをg si +jb si として、
    前記隣接ノードjの前記擬似的な電圧V j,pseudo および前記疑似的な電圧位相角θ j,pseudo は、それぞれ数3と数4で表される、
    Figure 0006091397
    Figure 0006091397
    請求項2に記載の電力系統の状態推定装置。
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