以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態について、共通の箇所には共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。また、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<第1実施形態>
本実施形態の3相回転電機の波巻き巻線は、図7に示すように、ヘリカル巻シート状コイル3がシート厚さ方向に3枚積層されており、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間において、図4に示すように、U相の相コイル6U1〜6U3が直列接続されて相コイル6Uが形成されている。V相およびW相についても同様であり、相コイル6U、6V、6Wは、Y結線されている。まず、ヘリカル巻シート状コイル3の構成について詳説する。
図1は、ヘリカル巻シート状コイル3の1相の単位コイル分を示す模式図である。(b)は、コイル導体が巻芯に巻装された状態を示しており、(c)は、(b)において、巻芯を取り除いた状態を示している。(d)は、紙面奥側(A側)のコイル導体の巻装状態(B側からの透視図)を示しており、(e)は、紙面手前側(B側)のコイル導体の巻装状態を示している。
図1の実線は、巻線ピッチS10の位置から6巻線ピッチ(1磁極ピッチ)毎にコイル導体が巻装された状態を示している。実線で示すコイルユニット1aは、巻線ピッチS10の位置において、紙面手前側(B側)から紙面奥側(A側)の方向に巻装されており、巻線ピッチS10、S16、S22、S28およびS34において、コイルユニット1aは、巻芯の短手方向(巻芯軸に垂直な方向)に直線状に延びるコイル辺部10aが形成されている。図1のB側からA側に向けてコイル導体が巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを往き導体部11aと呼称し、A側からB側に向けて巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを還り導体部12aと呼称する。往き導体部11aおよび還り導体部12aの同一側端部は、コイル辺部10aと一体に形成されるコイル端部20aによって接続されている。コイル端部20aは、巻線ピッチS13、S19、S25、S31およびS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21aがそれぞれ形成されている。
図1に示すように、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、往き導体部11aと、1磁極ピッチ分のコイル端部20aと、還り導体部12aと、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、を有するコイル導体をコイル要素4aと呼称する。コイル要素4aが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1aと呼称する。
図1の破線は、実線で示すコイルユニット1aと同様に、巻線ピッチS10の位置から6巻線ピッチ(1磁極ピッチ)毎にコイル導体が巻装された状態を示している。破線で示すコイルユニット1bは、巻線ピッチS10の位置において、紙面奥側(A側)から紙面手前側(B側)の方向に巻装されている点が実線で示すコイルユニット1aと異なる。破線で示すコイルユニット1bは、実線で示すコイルユニット1aと同様に巻線ピッチS10、S16、S22、S28およびS34においてコイル辺部10bが形成されており、コイル辺部10bは、往き導体部11bおよび還り導体部12bからなる。また、往き導体部11bおよび還り導体部12bの同一側端部は、コイル辺部10bと一体に形成されるコイル端部20bによって接続されている。コイル端部20bは、巻線ピッチS13、S19、S25、S31およびS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21bがそれぞれ形成されている。
コイルユニット1aと同様に、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、往き導体部11bと、1磁極ピッチ分のコイル端部20bと、還り導体部12bと、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、を有するコイル導体をコイル要素4bと呼称する。コイル要素4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1bと呼称する。実線で示すコイルユニット1aと破線で示すコイルユニット1bは、シート厚さ方向に対をなしている。
コイルユニット1aのコイル辺部10aとコイルユニット1bのコイル辺部10bとがシート厚さ方向に隣接して密着するように加圧成形すると、コイル辺部10aおよびコイル辺部10bは、巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に2層に亘って2磁極ピッチずつ離間された状態で整列する。紙面奥側(A側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第1層と呼称し、紙面手前側(B側)に形成されるコイル辺部10aおよびコイル辺部10bを第2層と呼称する。図1(a)および(f)は、第1層および第2層におけるコイル導体の層渡り状態を示している。これらの図では、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に図示している。なお、コイルユニット1a、1bがステータコア71に取り付けられた際には、図1に示す巻芯の長手方向(巻芯軸方向)は、可動子磁極の移動方向に相当する。
図2は、ヘリカル巻シート状コイル3の3相分を示す模式図である。図2は、図1の(a)〜(f)にそれぞれ対応しており、図2に示す巻線ピッチSは、図1に示す巻線ピッチSに対応している。図3は、図2のAA−AA断面図を示している。本実施形態では、同一スロット内で隣接する実線で示すコイル要素4aと破線で示すコイル要素4bを一対として、一対のコイル要素4a、4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されている。例えば、図2および図3に示すように、巻線ピッチS10の第2層と巻線ピッチS16の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、巻線ピッチS10の第1層と巻線ピッチS16の第2層との間で形成されている。同様にして、1巻線ピッチ進んだ巻線ピッチS11の第2層と巻線ピッチS17の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、巻線ピッチS11の第1層と巻線ピッチS17の第2層との間で形成されている。
本実施形態では、図3に示すように、可動子磁極の移動方向に、U相(順方向U1)、U相(順方向U2)、W相(逆方向W1)、W相(逆方向W2)、V相(順方向V1)、V相(順方向V2)、U相(逆方向U1)、U相(逆方向U2)の順に巻線が形成されている。本実施形態では、同相のコイルユニット1a、1bが可動子磁極の移動方向に2本隣接しており、同相コイルの巻線単位は4本からなる。同相のコイルユニット1a、1b、1a、1bは、3相回転電機の駆動時に流れる電流方向が一致するように直列接続されており、12本の巻線単位からなる3相巻線が構成されている。なお、同図に示すように、可動子磁極の移動方向の隣接する各コイル辺部間は、ステータコア71の磁極歯部を収容可能に所定間隔1W離間されている。
図4は、3相回転電機の相構成を示す模式図である。1枚のヘリカル巻シート状コイル3において、シート厚さ方向に対をなすコイルユニット1a、1bがシート端部で直列接続されて、相単位コイル5U1が形成されている。また、相単位コイル5U1を構成するコイルユニット1a、1bに対して、1巻線ピッチ分、可動子磁極の移動方向に離間しているシート厚さ方向に対をなすコイルユニット1a、1bがシート端部で直列接続されて、相単位コイル5U2が形成されている。そして、相単位コイル5U1、5U2がシート端部で直列接続されて、相コイル6U1が形成されている。
他の2枚のヘリカル巻シート状コイル3、3においても、相コイル6U1と同様の相コイル6U2、6U3が形成されており、U相端子5TUを起点にして、3つの相コイル6U1〜6U3が直列接続されて中性点5Nに接続されている。なお、直列接続された3つの相コイル6U1〜6U3を相コイル6Uといい、同図では、3つの相コイル6U1〜6U3をまとめて記載している。また、V相およびW相についても同様であり、相コイル6U、6V、6Wは、Y結線されている。
図5は、1枚のヘリカル巻シート状コイル3内での接続状態を示す模式図である。同図は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示している。(a)〜(c)は、順にU相、V相、W相の1相分の接続状態を示しており、(d)は、3相分の接続状態を示している。同図では、コイルユニット1aを実線で示し、コイルユニット1bを破線で示しているが、コイルユニット1a、1bは、一体に形成されている。また、図中の丸数字は、相始端部から相終端部までの巻線の接続順を示している。以下、同図(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
相単位コイル5U1は、U相始端部US1を起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すコイルユニット1aに相当。丸数字1〜4)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて紙面左方向に巻装されている(破線で示すコイルユニット1bに相当。丸数字5〜8)。相単位コイル5U2は、相単位コイル5U1との接続点5JU1を起点にして紙面右方向に巻装された後(コイルユニット1aに相当。丸数字9〜13)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(コイルユニット1bに相当。丸数字14〜18)、U相終端部UE1に接続されている。U相始端部US1とU相終端部UE1を合わせてU相端部という。
同図に示すように、U1相のコイル辺部とU2相のコイル辺部は、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間している。そのため、U1相のコイルユニット1a、1bを直列接続した相単位コイル5U1に発生する誘起電圧は、U2相のコイルユニット1a、1bを直列接続した相単位コイル5U2に発生する誘起電圧と比べて、同相(U相)ではあるが、正確には位相が異なる。これを本明細書では、「電磁気的に位相が異なる」という。
本実施形態では、全節巻の波巻き構成において、同相の電磁気的に位相の異なる相単位コイル5U1、5U2が1磁極内に位置するコイル辺部の電流方向が一致するように直列接続されている。そのため、短節巻の効果を得ることができ、トルクリプル等を低減することができる。また、コイル端部を短くしてコンパクトにできるので、漏れリアクタンスを減少させることができる。さらに、相単位コイル5U1、5U2は、紙面右方向のシート端部で巻線が引回されており、紙面右方向のシート端部に接続点を有しない。そのため、紙面右方向のシート端部でコイルユニット1a、1bを接続する場合と比べて、コイル端部をコンパクトにすることができる。なお、巻線を引回す代わりに、紙面右方向のシート端部でコイルユニット1a、1bを接続することもできる。この場合は、コイルユニット1a、1bをそれぞれ巻装した後に互いの端部同士を接続することができるので、巻線を引回す場合と比べて、製作が容易である。
図6は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示している。図7は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の積層状態を示す模式図である。(a)は、シート内部の層ずれ方向を説明する説明図であり、(b)は、3相回転電機の回転軸方向視における積層状態を示し、(c)は、コイル辺部方向視における積層状態を示している。図6および図7では、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3をシート1〜シート3で表し、積層されるヘリカル巻シート状コイル3を区別している。なお、図6では、説明の都合上、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、紙面上下方向にずらして記載されている。
シート1は、図5に示す既述のヘリカル巻シート状コイル3である。シート2およびシート3は、シート1と比べて、相端部の引き出し順序および可動子磁極の移動方向における配置が異なる。図6に示すように、シート1の相終端部は、可動子磁極の移動方向に、W相終端部WE1、U相終端部UE1、V相終端部VE1の順に引き出されている。これに対応して、シート2の相始端部は、可動子磁極の移動方向に、W相始端部WS2、U相始端部US2、V相始端部VS2の順に引き出されている。
シート1のW相終端部WE1およびシート2のW相始端部WS2は、W相渡り線WC1で電気的に接続されており、シート1のU相終端部UE1およびシート2のU相始端部US2は、U相渡り線UC1で電気的に接続されている。そして、シート1のV相終端部VE1およびシート2のV相始端部VS2は、V相渡り線VC1で電気的に接続されている。同様に、シート2およびシート3の間は、V相渡り線VC2、W相渡り線WC2、U相渡り線UC2で、それぞれ同相の相端部が電気的に接続されている。なお、シート3のU相終端部UE3、V相終端部VE3、W相終端部WE3は、中性点5Nとしてまとめられている。
図6および図7(b)、(c)に示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置されており、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置されている。各ヘリカル巻シート状コイル3のシート両端部をそれぞれ近接させることにより、積層される3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、同心円筒状になる。ここで、シート内部の層ずれ方向とは、可動子磁極の移動方向であって、相コイル6U、6V、6Wの相端部が引き出されるヘリカル巻シート状コイル3の一端側からヘリカル巻シート状コイル3の他端側に向かう方向をいう。既述のとおり、ヘリカル巻シート状コイル3のコイル辺部10a、10bは、シート厚さ方向に2層に形成されている。図7(a)は、巻線が巻き返される層が、相端部(相始端部および相終端部)が引き出される層に対して、可動子磁極の移動方向にずれている様子を模式的に示したものである。
本実施形態では、シート厚さ方向に隣接するヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置されている。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ直列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策(U相渡り線UC1、UC2、V相渡り線VC1、VC2、W相渡り線WC1、WC2)が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
また、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3がシート厚さ方向に積層されているので、一連のヘリカル巻シート状コイル3を用いる場合と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3の巻装作業を簡素化することができ、巻装作業に使用する治具等の製造設備を小規模化することができる。また、1枚分のヘリカル巻シート状コイル3のシート長さを短くすることができるので、コイル成形やステータコア71への組付け作業が簡便になる。さらに、シート厚さ方向に隣接するヘリカル巻シート状コイル3のコイル導体間に生じる電圧は、一連のヘリカル巻シート状コイル3を用いる場合と比べて小さくなるので、コイル導体の絶縁層を薄くすることができる。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3の巻線(コイル導体ともいう)について説明する。巻線は、導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。巻線の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせた並列細線でも良い。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて巻線に発生する渦電流損を低減させることができ、3相回転電機の効率が向上する。また、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になる。
本実施形態では、コイル辺部10a、10bは、ステータコア71の磁極歯部40の形状に合わせて、周回毎に断面形状が変更されている。図8は、ステータコア71の磁極歯部40およびコイル辺部10a、10bの一部を示す部分断面図である。(a)は、コイル辺部10a、10bの断面形状が長方形の場合を示し、(b)は、コイル辺部10a、10bの断面形状が台形の場合を示している。同図は、平行磁極を形成するスロットにヘリカル巻シート状コイル3、3、3を取り付けた状態を示しており、等断面積のもとに、ステータコア71の磁極歯部40の形状に合わせて、周回毎にコイル辺部10a、10bの断面形状が変更されている。
コイル辺部10a、10bの断面形状は、同図に示す長方形および台形をはじめ、任意の形状とすることができる。また、巻線に並列細線を用いる場合は、磁極歯部40の形状に合わせて、細線の配列を変更することもできる。なお、ヘリカル巻シート状コイル3は、シート厚さ方向に2層(2本のコイル辺部10a、10b)に形成されているが、2本のコイル辺部10a、10bの断面形状は略同一として、ヘリカル巻シート状コイル3の周回毎にコイル辺部10a、10bの断面形状を変更しても良い。
本実施形態では、コイル辺部10a、10bは、ステータコア71の磁極歯部40の形状に合わせて、周回毎に断面形状が変更されている。そのため、占積率を高めることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。また、本実施形態では、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3がシート厚さ方向に積層されているので、周回毎にコイル辺部10a、10bの断面形状を変更することが容易である。
なお、コイル辺部10a、10bの断面形状以外にも、コイル辺部10a、10bのコイル辺ピッチやコイル端部20a、20bの高さを周回毎に変更することもでき、これらを併用することもできる。コイル辺ピッチとは、波巻きされる1相の往き導体部11aおよび還り導体部12a間の距離、または、1相の往き導体部11bおよび還り導体部12b間の距離をいう。コイル端部20a、20bの高さとは、コイル端部20aの巻き曲げ部21aから往き導体部11aおよび還り導体部12aの同一側端部を結ぶ直線までの距離、または、コイル端部20bの巻き曲げ部21bから往き導体部11bおよび還り導体部12bの同一側端部を結ぶ直線までの距離をいう。コイル辺ピッチまたはコイル端部20a、20bの高さを周回の円周に合わせて形成することにより、周回毎にヘリカル巻シート状コイル3のシート長さを適切にすることができる。また、ステータコア71への組付け作業に応じて調整ができるので、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の冷却方法に合わせて、コイル導体の導体断面積を変更することもできる。この場合、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎にコイル導体の導体断面積を変更し、1つのヘリカル巻シート状コイル3内の相単位コイル5U1、5U2、5V1、5V2、5W1、5W2の各コイル導体の導体断面積は、略均等であるものとする。図9は、3相回転電機を軸方向に切断してステータコア71およびロータ72を模式的に示す断面図である。(a)は、冷却媒体をコイル端部20a、20bに流通させて、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3を冷却する場合を示し、(b)は、熱伝導部材75を介して3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3を冷却する場合を示している。同図に示すように、3相回転電機のハウジング70には、ステータコア71がロータ72と対向して配設されている。ロータ72にはシャフト74(回転軸)が貫設されており、ロータ72およびシャフト74は、ベアリング73を介してハウジング70に軸支されている。また、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のうち、ステータコア71のスロット底部側に近接するヘリカル巻シート状コイル3(シート1)を外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)とし、ロータ72側(可動子側)に近接するヘリカル巻シート状コイル3(シート3)を内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)とする。
まず、冷却媒体をコイル端部20a、20bに流通させて、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3を冷却する場合を考える。同図(a)に示すように、冷却媒体(例えば、油や空気、窒素などの冷却剤等)をコイル端部20a、20bに流通させると、3相回転電機の駆動時のヘリカル巻シート状コイル3、3、3からの発熱は、冷却媒体およびステータコア71を介して抜熱される。したがって、冷却媒体に接する面積が大きい外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)および内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)は、冷却媒体に接する面積が小さいヘリカル巻シート状コイル3(シート2)と比べて、冷却効率が高い。
そこで、外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)および内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)は、ヘリカル巻シート状コイル3(シート2)と比べてコイル導体の導体断面積が小さくなっていると好適である。この場合、外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)および内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)は、ヘリカル巻シート状コイル3(シート2)と比べて、3相回転電機の駆動時におけるコイル導体の発熱量が多くなる。そのため、冷却効率が高い外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)および内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)の抜熱量を多くすることができ、3相回転電機の駆動時におけるコイル導体の温度上昇を低減させることができる。また、コイル導体の導体断面積を減じる活用方法として、冷却効率の低いコイル導体の導体断面積を増加させて、コイル導体の発熱量を少なくし、温度分布ピークを低下させることもできる。スロット深さを減じて、ロータ径を増加させることにより、3相回転電機の出力トルクを増大させることもできる。
次に、熱伝導部材75を介して3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3を冷却する場合を考える。同図(b)に示すように、外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)のコイル端部20a、20bと、ハウジング70との間は、熱伝導部材75(例えば、樹脂等)が充填されている。よって、3相回転電機の駆動時のヘリカル巻シート状コイル3、3、3からの発熱は、熱伝導部材75およびステータコア71を介して抜熱される。したがって、熱伝導部材75に当接する外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)は、隣接するヘリカル巻シート状コイル3(シート2)と比べて冷却効率が高く、ヘリカル巻シート状コイル3(シート2)、内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)の順に冷却効率が低下する。
そこで、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3のコイル導体の導体断面積は、内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)から外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)にかけてヘリカル巻シート状コイル3毎に次第に小さくなっていると好適である。この場合、内周側ヘリカル巻シート状コイル32(シート3)から外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)にかけて3相回転電機の駆動時におけるコイル導体の発熱量が増加する。そのため、冷却効率の高い外周側ヘリカル巻シート状コイル31(シート1)の抜熱量を多くすることができ、3相回転電機の駆動時におけるコイル導体の温度上昇を低減させることができる。また、コイル導体の導体断面積を減じる活用方法として、スロット深さを減じて、ロータ径を増加させることにより、3相回転電機の出力トルクを増大させることもできる。ステータコア71の磁極幅を増加させて、磁極の磁気飽和を緩和することにより、3相回転電機の出力トルクを増大させることもできる。なお、本実施形態では、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3がシート厚さ方向に積層されているので、いずれの冷却方法においても、周回毎にコイル導体の導体断面積を変更することが容易である。
次に、ヘリカル巻シート状コイル3の巻装方法および装着方法について説明する。コイルユニット1a、1bは、例えば、巻芯に巻線をヘリカル状に巻装して成形することができる。巻線は、1本毎に巻芯に巻装しても複数本を同時に巻装しても良い。巻線ピッチSを確保するために、巻芯にピンや溝等を設けて、ピンや溝をガイドにして巻装することもできる。そして、図2に示すように、すべての巻線を巻装後に巻芯を巻線から取り除き、一対のコイルユニット1a、1bを形成するコイル辺部10a、10bが紙面垂直方向に隣接して密着するように加圧成形する。加圧成形の際に巻線が損傷する場合を考慮して、加圧成形後に補修用の樹脂コーティング等を施しても良い。
3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、円環状のステータコア71にヘリカル巻シート状コイル3毎に取り付けることができる。また、本実施形態の3相回転電機の波巻き巻線は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3をステータコア71の各スロットに積層した後に、円環状に丸めることができる。そのため、ステータコア71を平面状に展開した展開コアに、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3を装着して、全体を円環状に丸めて円筒状のステータを製作することもできる。また、ステータコア71が周方向に分割された分割コアを用いる場合は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3のみを円環状に丸めて、円環状に丸められた3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の外周側から分割コアを取り付けることもできる。最後に、ワニスの含浸、樹脂モールド等によって巻線をステータコア71に固定する。本実施形態の3相回転電機の波巻き巻線は、ロータおよびステータが径方向に同芯に配置されるラジアル型の円筒状回転電機として用いることができる。
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と比べて、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の可動子磁極の移動方向における配置が異なる。図10は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、紙面上下方向にずらして記載されている。図11は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の積層状態を示す模式図である。(a)は、3相回転電機の回転軸方向視における積層状態を示し、(b)は、コイル辺部方向視における積層状態を示している。
図10および図11に示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置されており、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置されている。つまり、本実施形態では、シート厚さ方向に隣接するヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置されている。この場合においても、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ直列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策(U相渡り線UC1、UC2、V相渡り線VC1、VC2、W相渡り線WC1、WC2)が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
<第3実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と比べて、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の可動子磁極の移動方向における配置が異なる。図12は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、紙面上下方向にずらして記載されている。図13は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の積層状態を示す模式図である。(a)は、3相回転電機の回転軸方向視における積層状態を示し、(b)は、コイル辺部方向視における積層状態を示している。
図12および図13に示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置されており、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置されている。つまり、本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態を組み合わせた実施形態と言える。この場合においても、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ直列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策(U相渡り線UC1、UC2、V相渡り線VC1、VC2、W相渡り線WC1、WC2)が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
<第4実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3の構成が異なる。具体的には、ヘリカル巻シート状コイル3は、第1実施形態と比べて構成の異なる相単位コイル5U1、5U2が並列接続されて、相コイル6U1が形成されている。相コイル6U2、6U3についても同様である。以下、U相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
図5に示すように、U1相のコイル辺部とU2相のコイル辺部は、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間しているので、U1相のコイルユニット1a、1bとU2相のコイルユニット1a、1bは、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間している。仮に、U1相のコイルユニット1a、1bを直列接続して相単位コイル5U1を形成し、U2相のコイルユニット1a、1bを直列接続して相単位コイル5U2を形成し、相単位コイル5U1、5U2を並列接続して、相コイル6U1を形成する場合を想定する。この場合、相単位コイル5U1、5U2は可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間しているので、相単位コイル5U1、5U2に発生する誘起電圧は、同相(U相)ではあるが、正確には位相が異なる。そのため、相単位コイル5U1、5U2に発生する誘起電圧が異なり、相内循環電流が生じて3相回転電機の出力が低下する。
図14は、3相回転電機の相構成を示す模式図である。本実施形態では、U1相のコイルユニット1aと、U2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U1が形成されている。また、U2相のコイルユニット1aと、U1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U2が形成されている。そして、相単位コイル5U1、5U2は並列接続されて、相コイル6U1が形成されている。他の2枚のヘリカル巻シート状コイル3、3においても、相コイル6U1と同様の相コイル6U2、6U3が形成されており、U相端子5TUを起点にして、3つの相コイル6U1〜6U3が直列接続されて中性点5Nに接続されている。なお、直列接続された3つの相コイル6U1〜6U3を相コイル6Uといい、同図では、3つの相コイル6U1〜6U3をまとめて記載している。また、V相およびW相についても同様であり、相コイル6U、6V、6Wは、Y結線されている。
本実施形態において、相単位コイル5U1、5U2に発生する誘起電圧について考える。例えば、所定時刻において、U1相のコイル辺部に発生する誘起電圧がU2相のコイル辺部に発生する誘起電圧と比べて高いと仮定する。本実施形態では、誘起電圧が相対的に高いU1相のコイルユニット1aと、誘起電圧が相対的に低いU2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U1が形成される。また、誘起電圧が相対的に低いU2相のコイルユニット1aと、誘起電圧が相対的に高いU1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U2が形成される。そのため、相単位コイル5U1の巻線端部間に発生する誘起電圧を5E1とし、相単位コイル5U2の巻線端部間に発生する誘起電圧を5E2とすると、誘起電圧5E1、5E2は等しくなり、U相内に循環電流は生じない。そのため、相内循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。このことは、U1相のコイル辺部に発生する誘起電圧がU2相のコイル辺部に発生する誘起電圧と比べて低い場合についても同様であり、V相およびW相についても、同様である。
また、本実施形態では、相単位コイル5U1、5U2、5V1、5V2、5W1、5W2の周方向長(シート長さ)は、ステータの周方向長と同じになっている。そのため、例えば、ロータ72の偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル6U、6V、6Wには、相順に電気角で120°の位相差を有する略均等な誘起電圧が発生する。したがって、相間の内部循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。なお、相単位コイル5U1、5U2、5V1、5V2、5W1、5W2の周方向長(シート長さ)がステータの周方向長の自然数倍になるステータ周倍の波巻き構成にすることもでき、この場合においても同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態では、相単位コイル5U1、5U2が並列接続されているので、直列接続の場合と比べて巻線の素線断面積を半減させることができ、コイル導体部に発生する渦電流損を低減させることができる。また、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になり、ステータコア71への組付け作業等の作業性も向上する。V相およびW相についても同様である。
図15は、1枚のヘリカル巻シート状コイル3内での接続状態を示す模式図である。同図は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示している。(a)〜(c)は、順にU相、V相、W相の1相分の接続状態を示しており、(d)は、3相分の接続状態を示している。同図では、コイルユニット1aを実線で示し、コイルユニット1bを破線で示しているが、コイルユニット1a、1bは、一体に形成されている。また、図中の丸数字は、相始端部から相終端部までの巻線の接続順を示している。相単位コイル5U1、5U2は並列接続されているので、説明の都合上、相単位コイル5U1の巻線の接続順を1番から始まる丸数字で示し、相単位コイル5U2の巻線の接続順を100番から始まる丸数字で示している。以下、同図(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
相単位コイル5U1は、U相始端部US1を起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。丸数字1〜4)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。丸数字5〜9)、U相終端部UE1に接続されている。相単位コイル5U2は、U相始端部US1を起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。丸数字100〜104)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。丸数字105〜109)、U相終端部UE1に接続されている。そして、相単位コイル5U1および相単位コイル5U2は、並列接続されており、相コイル6U1が形成されている。
同図(a)に示すように、ステータコア71のスロット収容部からコイル引回し点5RU1、5RU2までのコイル端部高さを、それぞれ5H1、5H2とすると、コイル端部高さ5H2は、コイル端部高さ5H1と比べて低いので、コイル引回し点5RU1、5RU2近傍の同相の巻線同士がシート厚さ方向にもコイル辺部方向にも交差しない。つまり、コイル辺部をつなぎ替える同相のコイル端部は、シート厚さ方向に積み重ならないので、コイル辺部のつなぎ替えを行うコイル端部をコンパクトにすることができる。さらに、コイル辺部をつなぎ替える同相のコイル端部は、可動子磁極の移動方向に略平行で、コイル辺部方向にずらして配されているので、コイル辺部のつなぎ替えを行うコイル端部のコイル辺部方向高さを他のコイル端部と略同じ高さにすることができる。したがって、コイル端部のコイル辺部方向高さを均一にすることができる。
また、第1実施形態では、図5(d)に示すように、相始端部(U相始端部US1、V相始端部VS1、W相始端部WS1)、相終端部(U相終端部UE1、V相終端部VE1、W相終端部WE1)および接続点5JU1、5JV1、5JW1が近接している。これらが互いに干渉しないように回避するためには、同相内や相間を引回すスペースが必要になる。一方、本実施形態では、図15(d)に示すように、2つの相単位コイル5U1、5U2が並列接続されて相コイル6Uが形成されているので、同相内や相間を引回す引回し線が交差して配線が複雑になることがない。V相およびW相についても同様であり、本実施形態は、第1実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3内の配策を削減することができ、相端部が引き出されるヘリカル巻シート状コイル3のシート端部をコンパクトにすることができる。
図16は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、紙面上下方向にずらして記載されている。同図に示すように、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態および可動子磁極の移動方向における配置は、第1実施形態と同様である。つまり、シート厚さ方向に隣接するヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置されている。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ直列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策(U相渡り線UC1、UC2、V相渡り線VC1、VC2、W相渡り線WC1、WC2)が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
なお、第2実施形態で示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置し、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置することもできる。また、第3実施形態で示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置し、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置することもできる。
<第5実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と比べて、同一種類の3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3を用いて、各ヘリカル巻シート状コイル3間は、同相の相コイル6U、6V、6Wが並列接続されている点で異なる。さらに、本実施形態は、第1実施形態と比べて、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の可動子磁極の移動方向における配置が異なる。図17は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。(a)は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に個別に中性点5Nを設ける場合を示し、(b)は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3の各中性点5Nを統合する場合を示している。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、相端部側の12本のコイル辺部の接続のみを記載している。
本実施形態では、第1実施形態で既述のヘリカル巻シート状コイル3(シート1)を3枚用いる。そして、同図に示すように、シート1〜3のU相始端部US1、US2、US3は、U相渡り線UC3で電気的に接続されており、シート1〜3のV相始端部VS1、VS2、VS3は、V相渡り線VC3で電気的に接続されている。そして、シート1〜3のW相始端部WS1、WS2、WS3は、W相渡り線WC3で電気的に接続されている。なお、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、同一種類であるが、同図では、シート1〜3で表している。
ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に個別に中性点5Nを設ける場合は、同図(a)に示すように、シート1において、U相終端部UE1、V相終端部VE1、W相終端部WE1は、中性点5Nとしてまとめられている。同様に、シート2において、U相終端部UE2、V相終端部VE2、W相終端部WE2は、中性点5Nとしてまとめられており、シート3において、U相終端部UE3、V相終端部VE3、W相終端部WE3は、中性点5Nとしてまとめられている。
一方、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3の各中性点5Nを統合する場合は、同図(b)に示すように、シート1のU相終端部UE1、シート2のU相終端部UE2、シート3のU相終端部UE3は、U相渡り線UC4で電気的に接続されている。同様に、シート1のV相終端部VE1、シート2のV相終端部VE2、シート3のV相終端部VE3は、V相渡り線VC4で電気的に接続されており、シート1のW相終端部WE1、シート2のW相終端部WE2、シート3のW相終端部WE3は、W相渡り線WC4で電気的に接続されている。そして、U相渡り線UC4、V相渡り線VC4、W相渡り線WC4は、電気的に接続されて、中性点5Nとしてまとめられている。
本実施形態では、各ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向にシート端部を揃えて配置されている。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ並列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。なお、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に個別に中性点5Nを設ける場合(同図(a)に示す場合)は、U相渡り線UC3、V相渡り線VC3、W相渡り線WC3であり、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3の各中性点5Nを統合する場合(同図(b)に示す場合)は、U相渡り線UC3、UC4、V相渡り線VC3、VC4、W相渡り線WC3、WC4である。
さらに、本実施形態では、各ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向にシート端部を揃えて配置されており、同相の相コイル6U、6V、6Wが並列接続されているので、同相の相コイル6U、6V、6Wが直列接続されている第1実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策を簡素化することができる。なお、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3の各中性点5Nを統合する場合(同図(b)に示す場合)は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に個別に中性点5Nを設ける場合(同図(a)に示す場合)と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策が増加するが、ヘリカル巻シート状コイル3内の配策を簡素化することができる。
<第6実施形態>
本実施形態は、第5実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3の構成が異なる。具体的には、第4実施形態で既述のヘリカル巻シート状コイル3(シート1)を3枚用いる。図18は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、相端部側の12本のコイル辺部の接続のみを記載している。また、同図は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に個別に中性点5Nが設けられている場合を示し、図17(a)に対応している。したがって、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態は、第5実施形態と同様である。
本実施形態では、第5実施形態と同様に、各ヘリカル巻シート状コイル3が可動子磁極の移動方向にシート端部を揃えて配置されている。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ並列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策(U相渡り線UC3、V相渡り線VC3、W相渡り線WC3)が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、相単位コイル5U1、5U2が並列接続されて相コイル6Uが構成されており、相単位コイル5V1、5V2が並列接続されて相コイル6Vが構成されている。そして、相単位コイル5W1、5W2が並列接続されて相コイル6Wが構成されている。そのため、第4実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。つまり、相内および相間の循環電流の発生を防止することができ、循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。さらに、本実施形態では、第5実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3内の配策を簡素化することができる。なお、第5実施形態と同様に、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3の各中性点5Nを統合することもできる。
<第7実施形態>
本実施形態は、第4実施形態と比べて、相コイル6U、6V、6WがΔ結線されている点で異なる。つまり、本実施形態は、第4実施形態で既述のヘリカル巻シート状コイル3を用いて、相コイル6U、6V、6WがΔ結線されている。図19は、3相回転電機の相構成を示す模式図である。ヘリカル巻シート状コイル3は、U1相のコイルユニット1aと、U2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U1が形成されており、U2相のコイルユニット1aと、U1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U2が形成されている。そして、相単位コイル5U1、5U2は並列接続されて、相コイル6U1が形成されている。他の2枚のヘリカル巻シート状コイル3、3においても、相コイル6U1と同様の相コイル6U2、6U3が形成されており、相端子5T1を起点にして、3つの相コイル6U1〜6U3が直列接続されて相端子5T2に接続されている。なお、直列接続された3つの相コイル6U1〜6U3を相コイル6Uといい、同図では、3つの相コイル6U1〜6U3をまとめて記載している。V相およびW相についても同様であり、相コイル6U、6V、6Wは、Δ結線されている。
図20は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、紙面上下方向にずらして記載されている。
シート1のW相終端部WE1およびシート2のW相始端部WS2は、W相渡り線WC1で電気的に接続されており、シート1のU相終端部UE1およびシート2のU相始端部US2は、U相渡り線UC1で電気的に接続されている。そして、シート1のV相終端部VE1およびシート2のV相始端部VS2は、V相渡り線VC1で電気的に接続されている。同様に、シート2およびシート3の間は、V相渡り線VC2、W相渡り線WC2、U相渡り線UC2で、それぞれ同相の相端部が電気的に接続されている。また、シート3のU相終端部UE3およびシート1のV相始端部VS1は、相間渡り線UV1で電気的に接続されており、シート3のV相終端部VE3およびシート1のW相始端部WS1は、相間渡り線VW1で電気的に接続されている。そして、シート3のW相終端部WE3およびシート1のU相始端部US1は、相間渡り線WU1で電気的に接続されている。
本実施形態では、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置されており、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置されている。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ直列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策(U相渡り線UC1、UC2、V相渡り線VC1、VC2、W相渡り線WC1、WC2、相間渡り線UV1、VW1、WU1)が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、相単位コイル5U1、5U2が並列接続されて相コイル6Uが構成されており、相単位コイル5V1、5V2が並列接続されて相コイル6Vが構成されている。そして、相単位コイル5W1、5W2が並列接続されて相コイル6Wが構成されている。そのため、第4実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。つまり、相内および相間の循環電流の発生を防止することができ、循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。なお、第2実施形態で示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置し、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置することもできる。また、第3実施形態で示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置し、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置することもできる。
<第8実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と比べて、相コイル6U、6V、6WがΔ結線されている点で異なり、第7実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3の構成が異なる。つまり、本実施形態は、第1実施形態で既述のヘリカル巻シート状コイル3を用いて、相コイル6U、6V、6WがΔ結線されている。図21は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3は、紙面上下方向にずらして記載されている。
本実施形態における3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態および可動子磁極の移動方向における配置は、第7実施形態と同様である。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ直列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策(U相渡り線UC1、UC2、V相渡り線VC1、VC2、W相渡り線WC1、WC2、相間渡り線UV1、VW1、WU1)が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。
なお、第2実施形態で示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置し、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置することもできる。また、第3実施形態で示すように、シート2は、シート1に対して、シート内部の層ずれ方向と同じ方向に電気角で240°ずらして配置し、シート3は、シート2に対して、シート内部の層ずれ方向と逆方向に電気角で120°ずらして配置することもできる。
<第9実施形態>
本実施形態は、第5実施形態と比べて、相コイル6U、6V、6WがΔ結線されている点で異なる。図22は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。(a)は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に相間を個別に接続する場合を示し、(b)は、相間の接続線を統合する場合を示している。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、相端部側の12本のコイル辺部の接続のみを記載している。
各ヘリカル巻シート状コイル3間は、同相の相コイル6U、6V、6Wがそれぞれ並列接続されている。具体的には、シート1〜3のU相始端部US1、US2、US3は、U相渡り線UC3で電気的に接続されており、シート1〜3のV相始端部VS1、VS2、VS3は、V相渡り線VC3で電気的に接続されている。そして、シート1〜3のW相始端部WS1、WS2、WS3は、W相渡り線WC3で電気的に接続されている。
ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に相間を個別に接続する場合は、同図(a)に示すように、シート1において、U相終端部UE1とV相始端部VS1を電気的に接続し、V相終端部VE1とW相始端部WS1を電気的に接続する。そして、W相終端部WE1とU相始端部US1を電気的に接続する。シート2およびシート3についても同様である。相間の接続線を統合する場合は、同図(b)に示すように、各シート1〜3で相間の接続を行わないで、1つのヘリカル巻シート状コイル3(同図では、シート1)のみで相間の接続を行い、シート1〜3間は、相間渡り線UV1、VW1、WU1で電気的に接続する。
本実施形態では、各ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向にシート端部を揃えて配置されている。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ並列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。なお、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に相間を個別に接続する場合(同図(a)に示す場合)は、U相渡り線UC3、V相渡り線VC3、W相渡り線WC3であり、相間の接続線を統合する場合(同図(b)に示す場合)は、U相渡り線UC3、V相渡り線VC3、W相渡り線WC3、相間渡り線UV1、VW1、WU1である。
また、本実施形態では、各ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向にシート端部を揃えて配置されており、同相の相コイル6U、6V、6Wが並列接続されているので、同相の相コイル6U、6V、6Wを直列接続する第8実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策を簡素化することができる。なお、相間の接続線を統合する場合(同図(b)に示す場合)は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に相間を個別に接続する場合(同図(a)に示す場合)と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策が増加するが、ヘリカル巻シート状コイル3内の配策を簡素化することができる。
<第10実施形態>
本実施形態は、第6実施形態と比べて、相コイル6U、6V、6WがΔ結線されている点で異なり、第9実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3の構成が異なる。つまり、本実施形態は、第6実施形態で既述のヘリカル巻シート状コイル3を用いて、相コイル6U、6V、6WがΔ結線されている。図23は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態を示す模式図である。(a)は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に相間を個別に接続する場合を示し、(b)は、相間の接続線を統合する場合を示している。同図は、3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3(シート1〜3)のシート厚さ方向視における巻線の接続状態を示しており、説明の都合上、相端部側の12本のコイル辺部の接続のみを記載している。
本実施形態における3枚のヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の接続状態および可動子磁極の移動方向における配置は、第9実施形態と同様である。そのため、各ヘリカル巻シート状コイル3間において同相の相コイル6U1〜6U3、6V1〜6V3、6W1〜6W3をそれぞれ並列接続したときに、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策が交差しない。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策をコンパクトにすることができ、3相回転電機の小型化および低コスト化を図ることができる。なお、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間を接続する配策は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に相間を個別に接続する場合(同図(a)に示す場合)は、U相渡り線UC3、V相渡り線VC3、W相渡り線WC3であり、相間の接続線を統合する場合(同図(b)に示す場合)は、U相渡り線UC3、V相渡り線VC3、W相渡り線WC3、相間渡り線UV1、VW1、WU1である。
また、本実施形態では、各ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向にシート端部を揃えて配置されており、同相の相コイル6U、6V、6Wが並列接続されているので、同相の相コイル6U、6V、6Wを直列接続する第7実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策を簡素化することができる。さらに、本実施形態では、第9実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3内の配策を簡素化することができる。なお、相間の接続線を統合する場合(同図(b)に示す場合)は、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3毎に相間を個別に接続する場合(同図(a)に示す場合)と比べて、ヘリカル巻シート状コイル3、3、3間の配策が増加するが、ヘリカル巻シート状コイル3内の配策を簡素化することができる。
<まとめ>
既述の実施形態では、各ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチずつ離間するU1相およびU2相のコイル辺部を有している。つまり、同相の電磁気的に位相の異なる2種類のコイル辺部を用いて、相コイル6Uが形成されている。V相およびW相についても同様である。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。以下、同相の電磁気的に位相の異なる4種類のコイル辺部を用いて、相コイル6U、6V、6Wが形成されている形態を例に説明する。
図24は、毎極毎相4個のコイル辺種類を有するヘリカル巻シート状コイル3のU相コイルの接続状態の一例を示す模式図である。(a)は、相単位コイル5U1の接続状態を示し、(b)は、相単位コイル5U2の接続状態を示している。以下、同図に基づいてU相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。なお、同図は、相単位コイル5U1、5U2が並列接続されている形態を示しているが、相単位コイル5U1、5U2を直列接続することもできる。
同図(a)に示すように、相単位コイル5U1は、U1相のコイルユニット1a、U2相のコイルユニット1b、U3相のコイルユニット1aおよびU4相のコイルユニット1bが直列接続されている。U1相のコイルユニット1aは、U相始端部US1を起点にして紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U2相のコイルユニット1bと接続されている。U2相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側で巻き返されて、U3相のコイルユニット1aと接続されている。U3相のコイルユニット1aは、紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U4相のコイルユニット1bと接続されている。U4相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側でU相終端部UE1に接続されている。
同図(b)に示すように、相単位コイル5U2は、U4相のコイルユニット1a、U3相のコイルユニット1b、U2相のコイルユニット1aおよびU1相のコイルユニット1bが直列接続されている。U4相のコイルユニット1aは、U相始端部US1を起点にして紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U3相のコイルユニット1bと接続されている。U3相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側で巻き返されて、U2相のコイルユニット1aと接続されている。U2相のコイルユニット1aは、紙面右方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の他端側で巻き返されて、U1相のコイルユニット1bと接続されている。U1相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、ヘリカル巻シート状コイル3の一端側でU相終端部UE1に接続されている。
既述の実施形態では、コイルユニット1a、1bがシート内を1回往復するように直列接続されて、相単位コイル5U1、5U2が形成されている。これに対して、同図に示す形態では、コイルユニット1a、1bがシート内を2回往復するように直列接続されて、相単位コイル5U1、5U2が形成されている。また、毎極毎相のコイル辺種類数をn(nは自然数)とすると、既述の実施形態では、nは2であり、同図に示す形態では、nは4である。
このように、毎極毎相のコイル辺種類数nが偶数の場合は、コイルユニット1a、1bをシート内でn/2回往復するように直列接続して、相単位コイル5U1、5U2を形成することができる。そのため、相単位コイル5U1、5U2のU相始端部US1およびU相終端部UE1を周方向近傍に配することができる。したがって、ヘリカル巻シート状コイル3のシート端部においてコイル辺部のつなぎ替えを行う場合に、相単位コイル5U1、5U2のU相始端部US1およびU相終端部UE1における配策が容易であり、作業性が向上する。
なお、毎極毎相のコイル辺種類数nが奇数の場合は、ヘリカル巻シート状コイル3の可動子磁極の移動方向の途中において、コイル辺部をつなぎ替えても良い。但し、ステータ周倍単位でコイル辺部のつなぎ替えを行うものとする。また、コイル辺部がつなぎ替えられる可動子磁極の移動方向のヘリカル巻シート状コイル3のシート端部を除いて、全節巻の波巻き構成となるように巻装されていると好適である。これにより、全節巻部分のシート厚さ方向のコイル端部高さを均一にすることができる。
次に、同相の電磁気的に位相の異なるn種類(nは自然数)のコイル辺部を有するヘリカル巻シート状コイル3において、相単位コイル5X1、5X2(XはU、V、Wのいずれか。以下同じ。)を並列接続して相コイル6Xを構成する場合について説明する。この場合、3相回転電機の波巻き巻線は、毎極毎相配される同相の電磁気的に位相の異なるn種類(nは自然数)のコイル辺部の中から1つのコイル辺部が毎極選択されて、選択される所要極数分のコイル辺部がコイル端部によって直列接続されて相単位コイル5X1、5X2が形成され、選択されるコイル辺部が相異なる2つの相単位コイル5X1、5X2が並列接続されて相コイル6Xが形成される。そして、相コイル6Xの各相単位コイル5X1、5X2は、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数になるようにコイル辺部が選択される。
また、相コイル6X内のコイル辺部の総数を示す関係式が下記数1で表されると好適である。但し、各相単位コイル5X1、5X2において直列接続されるコイル辺部数を直列コイル辺部数k、磁極数を2pとし、1つのコイル辺種類に属する1磁極当りの直列導体数をqとする。
(数1)
2×k=n×q×2p
相内循環電流の発生を防止するためには、並列接続される各相単位コイル5X1、5X2は、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数でなければならない。つまり、直列コイル辺部数kは、nの自然数倍でなければならないので、直列コイル辺部数kは、自然数gを用いて下記数2で表すことができる。
(数2)
k=g×n
さらに、例えば、ロータ72の偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル6Xに発生する誘起電圧にばらつきが生じないようにする必要がある。界磁磁束にばらつきが生じると、ステータ1周において、相コイル6Xには、誘起電圧が相対的に高いコイル部分と、誘起電圧が相対的に低いコイル部分と、が生じる。そこで、相単位コイル5X1、5X2の周方向長(シート長さ)をステータの周方向長の自然数倍にすることにより、ステータ1周において誘起電圧を均一化する。相単位コイル5X1、5X2の周方向長に含まれる直列コイル辺部数はkであり、ステータの周方向長に含まれる磁極数は2pであるので、これらの関係は、自然数mを用いて下記数3で表すことができる。また、1つのコイル辺種類に属する直列導体数q分を直列接続した相単位コイル5X1、5X2を考えると、直列コイル辺部数kは、自然数zを用いて下記数4で表すことができる。なお、数3で示す関係式は、数4で示す関係式で表されている。
(数3)
k=m×2p
(数4)
k=z×2p×q
1相当りのコイル辺部の総数は、相単位コイル5X1、5X2の並列数である2と、直列コイル辺部数kとの積になるので、1相当りのコイル辺部の総数は、既述の数1で表すことができる。数1に数2を代入すると、数1は下記数5で表すことができる。また、数1に数4を代入すると、数1は下記数6で表すことができる。数5および数6より、q×2pとnの公約数が2である必要がある。
(数5)
2=q×2p/g
(数6)
2=n/z
並列接続される各相単位コイル5X1、5X2は、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数になるようにコイル辺部が選択されているので、並列接続される各相単位コイル5X1、5X2に発生する誘起電圧が等しくなる。そのため、相内循環電流が生じないので、相内循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。さらに、相コイル6X内のコイル辺部の総数を示す関係式が数1で表されると、相単位コイル5X1、5X2の周方向長(含まれる直列コイル辺部数はk)がステータの周方向長(含まれる磁極数は2p)の自然数倍になるステータ周倍の波巻き構成になるので、例えば、ロータ72の偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル6U、6V、6W間に発生する誘起電圧にばらつきが生じにくい。そのため、相間の内部循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。
次に、ステータ周倍の波巻き構成について説明する。本発明の3相回転電機の波巻き巻線は、ステータh周分の長さのヘリカル巻シート状コイル3を複数枚積層して、ステータL周分の長さの波巻き構成にすることができる。ここで、Lは、使用するヘリカル巻シート状コイル3の周方向長(シート長さ)を合計したヘリカル巻シート状コイル3の総周数である(以下、総周数Lという)。また、hは、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lより小さい自然数、または、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lの約数(但し、総周数L自身は除く。)である(以下、単位周回数hという)。ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lより小さい自然数を単位周回数hとした場合の単位周回数hのバリエーションおよび単位周回数hの組み合わせの一例を表1に示す。
例えば、ステータ4周分の長さの波巻き構成を考える。この場合、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lは4であり、単位周回数hは、4より小さい自然数3、2、1のうちのいずれかである。単位周回数hのバリエーションとは、積層されるヘリカル巻シート状コイル3の種類をいい、この場合、ステータ3周分のヘリカル巻シート状コイル3、ステータ2周分のヘリカル巻シート状コイル3およびステータ1周分のヘリカル巻シート状コイル3の3種類が挙げられる。このときの単位周回数hの組み合わせは、同表に示すように、(3、1)、(2、2)、(2、1、1)、(1、1、1、1)である。例えば、(3、1)は、ステータ3周分のヘリカル巻シート状コイル3と、ステータ1周分のヘリカル巻シート状コイル3と、を積層してステータ4周分の長さの波巻き構成にする場合を示している。他の総周数Lおよび単位周回数hについても、同様である。
一方、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lの約数(但し、L自身は除く。)を単位周回数hとした場合の単位周回数hのバリエーションおよび単位周回数hの組み合わせの一例を表2に示す。
同様に、ステータ4周分の長さの波巻き構成を考える。この場合、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lは4であるので、4の約数のうち、4を除いた2、1が単位周回数hとなる。つまり、単位周回数hのバリエーションとして、2、1が挙げられる。このとき、単位周回数hの組み合わせは、(2、2)、(1、1、1、1)とすることができる。単位周回数hの組み合わせが(2、2)の場合は、ステータ2周分のヘリカル巻シート状コイル3を2枚積層して、ステータ4周分の長さの波巻き構成にする。(1、1、1、1)の場合は、ステータ1周分のヘリカル巻シート状コイル3を4枚積層して、ステータ4周分の長さの波巻き構成にする。いずれの場合も、1種類のヘリカル巻シート状コイル3を用いて、ステータ4周分の長さの波巻き構成にすることができるので、ヘリカル巻シート状コイル3の製作が容易である。
積層されるヘリカル巻シート状コイル3は、複数枚のヘリカル巻シート状コイル3間で同相の相コイル6U、6V、6Wがそれぞれ電気的に接続される。各ヘリカル巻シート状コイル3間において、同相の相コイル6U、6V、6Wをそれぞれ直列接続する場合、単位周回数hは、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lより小さい自然数、または、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lの約数(但し、総周数L自身は除く。)のいずれを用いても良い。一方、各ヘリカル巻シート状コイル3間において、同相の相コイル6U、6V、6Wをそれぞれ並列接続する場合は、各ヘリカル巻シート状コイル3は、可動子磁極の移動方向に揃えて配置される。そのため、1種類のヘリカル巻シート状コイル3を複数枚積層して、3相回転電機の波巻き巻線を構成する必要がある。そこで、単位周回数hは、ヘリカル巻シート状コイル3の総周数Lの約数(但し、総周数L自身は除く。)を用いる。
<その他>
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。また、本発明は、波巻き巻装方式の種々の3相回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用モータ、発電機、産業用機器などに用いることができる。