本明細書では、複数の実施形態が図面に基づいて説明されている。なお、図面は、各実施形態について、共通する箇所には共通の符号が付されており、本明細書では、重複する説明が省略されている。また、一の実施形態で記述されていることは、適宜、他の実施形態についても適用することができる。さらに、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<第一実施形態>
(回転電機10の概略構成)
図1に示すように、本実施形態の回転電機10は、固定子20と、可動子30とを具備している。固定子20は、固定子鉄心21と、固定子巻線22とを備えている。固定子鉄心21には、複数(本実施形態では、60個)のスロット21cが形成されており、複数(60個)のスロット21cには、固定子巻線22が巻装されている。固定子巻線22は、互いに位相が異なる複数(本実施形態では、3つ)の相コイル22cを備えている。つまり、本実施形態の回転電機10は、三相機である。
可動子30は、固定子20に対して移動可能に支持されており、可動子鉄心31と、可動子鉄心31に設けられている複数(本実施形態では、8極)の可動子磁極32(4組の一対の可動子磁極32a,32b)とを備えている。このように、本実施形態の回転電機10は、8極60スロット構成の回転電機(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機)であり、毎極毎相スロット数は2.5である。つまり、本実施形態の回転電機10は、毎極毎相スロット数が整数でない分数スロット構成の回転電機である。
ここで、毎極毎相スロット数を帯分数で表したときの整数部分を整数部aとする。また、帯分数の真分数部分を既約分数で表したときの分子部分を分子部b、分母部分を分母部cとする。なお、整数部aは、0(ゼロ)または正の整数とし、分子部bおよび分母部cは、いずれも正の整数とする。また、三相の回転電機10では、分母部cは、2以上、かつ、3の倍数でない整数とする。本実施形態では、毎極毎相スロット数が2.5であり、整数部aは2、分子部bは1、分母部cは2である。また、本明細書では、毎極毎相スロット数の分子部bおよび分母部cを用いて、b/c系列の回転電機10と表記する。つまり、本実施形態の回転電機10は、1/2系列の回転電機10である。
さらに、固定子20に対する可動子30の移動方向を第一方向(矢印X方向)とする。また、固定子20と可動子30の対向方向を第二方向(矢印Y方向)とする。さらに、第二方向(矢印Y方向)のうちの固定子20側から可動子30側に向かう方向を第二方向可動子側(矢印Y1方向)とする。また、第二方向(矢印Y方向)のうちの可動子30側から固定子20側に向かう方向を第二方向固定子側(矢印Y2方向)とする。さらに、第一方向(矢印X方向)および第二方向(矢印Y方向)のいずれの方向に対しても直交する方向を第三方向(矢印Z方向)とする。
図1に示すように、本実施形態の回転電機10は、固定子20および可動子30が同軸に配されるラジアル空隙型の円筒状回転電機である。よって、第一方向(矢印X方向)は、回転電機10の周方向に相当し、固定子20に対する可動子30の回転方向に相当する。また、第二方向(矢印Y方向)は、回転電機10の径方向に相当し、スロット21cの深さ方向に相当する。さらに、第三方向(矢印Z方向)は、回転電機10の軸線方向に相当する。
固定子鉄心21は、例えば、電磁鋼板21xが第三方向(矢印Z方向)に複数積層されて形成されている。複数の電磁鋼板21xは、例えば、ケイ素鋼板を用いることができ、複数の電磁鋼板21xの各々は、薄板状に形成されている。固定子鉄心21は、ヨーク部21aと、ヨーク部21aと一体に形成されている複数(本実施形態では、60個)のティース部21bとを備えている。
ヨーク部21aは、第一方向(矢印X方向)に沿って形成されている。複数(60個)のティース部21bは、ヨーク部21aから第二方向可動子側(矢印Y1方向)に突出するように形成されている。また、第一方向(矢印X方向)に隣接するティース部21b,21bによって、スロット21cが形成されており、複数(60個)のスロット21cには、固定子巻線22が挿通されている。さらに、複数(60個)のティース部21bの各々は、ティース先端部21dを備えている。ティース先端部21dは、ティース部21bの第二方向可動子側(矢印Y1方向)の先端部をいい、第一方向(矢印X方向)に幅広に形成されている。
固定子巻線22は、例えば、銅などの導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。固定子巻線22の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせた並列細線を用いることもできる。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて固定子巻線22に発生する渦電流損を低減することができ、回転電機10の効率が向上する。また、巻線成形に要する力を低減することができるので、成形性が向上して製作が容易になる。
固定子巻線22は、分数スロット構成の固定子20に巻装可能であれば良く、固定子巻線22の巻装方式は、限定されない。固定子巻線22は、例えば、二層重巻、同心巻、波巻によって巻装することができる。いずれの場合も、固定子巻線22は、複数のコイルサイド22aと、複数のコイルエンド22bと、を有している。複数のコイルサイド22aは、複数のスロット21cに収容されている部位をいう。複数のコイルエンド22bは、複数のコイルサイド22aの同一側端部をそれぞれ接続している部位をいう。
固定子巻線22の複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数の単位コイル22dを備えている。図2Aに示すように、二層重巻の場合、複数の単位コイル22dの各々は、一対のコイルサイド22a,22aと、一対のコイルエンド22b,22bと、を備えている。二層重巻の場合、複数の単位コイル22dの巻方向および巻ピッチは、いずれも同一であり、例えば、巻ピッチは、7スロットピッチ(7sp)に設定されている。7スロットピッチ(7sp)は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より小さい直近の整数である。同心巻の場合、複数の単位コイル22dは、巻ピッチが異なる複数種類の単位コイル22dを備えている。
図2Bに示すように、波巻の場合、複数の単位コイル22dの各々は、複数のコイルサイド22aと、複数のコイルエンド22bと、を備えている。複数のコイルエンド22bは、複数のコイルサイド22aの第三方向(矢印Z方向)の一端側の端部同士、および、複数のコイルサイド22aの第三方向(矢印Z方向)の他端側の端部同士を波巻構成になるように交互に接続している。
また、波巻の場合、複数の単位コイル22dの各々の巻ピッチは、例えば、7スロットピッチ(7sp)および8スロットピッチ(8sp)が交互に繰り返される。7スロットピッチ(7sp)は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より小さい直近の整数であり、短節巻部2SWが形成される。8スロットピッチ(8sp)は、毎極スロット数(7.5)より大きい直近の整数であり、長節巻部2LWが形成される。つまり、波巻の場合、複数の単位コイル22dの各々は、第一方向(矢印X方向)において、短節巻部2SWと長節巻部2LWとが交互に繰り返されている。固定子巻線22の巻装方式が二層重巻、同心巻および波巻のいずれの場合であっても、固定子巻線22は、後述する基本コイル50を構成することができる。
このように、本実施形態では、固定子巻線22は、分布巻で巻装されている。分布巻では、固定子巻線22の巻ピッチが、1スロットピッチより大きく設定され、複数(8極)の可動子磁極32の複数磁極に亘って巻装される。分布巻では、既述した毎極毎相スロット数の整数部aは、1以上の正の整数(本実施形態では、2)になる。また、本実施形態の固定子巻線22は、複数(3つ)の相コイル22cがY結線で電気的に接続されている。なお、複数(3つ)の相コイル22cは、Δ結線で電気的に接続することもできる。また、相数(相コイル22cの数)は、限定されない。
可動子鉄心31は、例えば、電磁鋼板31xが第三方向(矢印Z方向)に複数積層されて形成されている。複数の電磁鋼板31xは、例えば、ケイ素鋼板を用いることができ、複数の電磁鋼板31xの各々は、薄板状に形成されている。本実施形態の回転電機10は、円筒状回転電機であり、可動子鉄心31は、円柱状に形成されている。また、可動子鉄心31には、第一方向(矢印X方向)に沿って複数の磁石収容部(図示略)が設けられている。
複数の磁石収容部には、所定磁極数分(本実施形態では、8極)の永久磁石(可動子磁極32であり、4組の一対の可動子磁極32a,32b)が埋設されており、永久磁石と固定子20に発生する回転磁界とによって、可動子30が移動可能(回転可能)になっている。本明細書では、一対の可動子磁極32a,32bのうちの一方の極性(例えば、N極)を備える可動子磁極32は、可動子磁極32aで示されている。一対の可動子磁極32a,32bのうちの他方の極性(例えば、S極)を備える可動子磁極32は、可動子磁極32bで示されている。
永久磁石は、例えば、公知のフェライト系磁石や希土類系磁石を用いることができる。また、永久磁石の製法は、限定されない。永久磁石は、例えば、樹脂ボンド磁石や焼結磁石を用いることができる。樹脂ボンド磁石は、例えば、フェライト系の原料磁石粉末と樹脂などを混合して、射出成形などによって可動子鉄心31に鋳込み形成される。焼結磁石は、例えば、希土類系の原料磁石粉末を磁界中で加圧成形して、高温で焼き固めて形成される。なお、可動子30は、表面磁石形にすることもできる。表面磁石形の可動子30は、固定子鉄心21の各ティース先端部21dと対向する可動子鉄心31の表面(外側表面)に永久磁石が設けられる。
本実施形態では、可動子30は、固定子20の内方(回転電機10の軸心側)に設けられており、固定子20に対して移動可能(回転可能)に支持されている。具体的には、可動子鉄心31には、シャフト(図示略)が設けられており、シャフトは、可動子鉄心31の軸心を第三方向(矢印Z方向)に沿って貫通している。シャフトの第三方向(矢印Z方向)の両端部は、軸受部材(図示略)によって、回転可能に支持されている。これにより、可動子30は、固定子20に対して、移動可能(回転可能)になっている。
(固定子巻線22の相配置に起因する回転電機10の騒音および振動)
図3は、参考形態の固定子巻線22の相配置の一例を示している。参考形態の回転電機10は、本実施形態の回転電機10と同様に、8極60スロット構成の回転電機(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機)である。また、参考形態の回転電機10は、本実施形態の回転電機10と同様に三相機であり、固定子巻線22は、複数(3つ)の相コイル22cを備えている。複数(3つ)の相コイル22cを、U相コイル22cu、V相コイル22cv、W相コイル22cwとする。U相コイル22cu、V相コイル22cvおよびW相コイル22cwは、電気角で120°ずつ、位相がずれており、U相コイル22cu、V相コイル22cv、W相コイル22cwの順に位相が遅れているものとする。
同図は、複数(25個)のスロット21cに収容されている複数(一層あたり25個、合計50個)のコイルサイド22aの相(U相、V相またはW相)を示している。なお、コイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、相(U相、V相またはW相)毎のコイルサイド22aの分布を説明するために、便宜上、規定したものであり、実際のコイルサイド22aの数(実際の巻線の数)を示すものではない。また、同図では、コイルサイド22aの通電方向は、アスタリスクの有無で表されている。具体的には、アスタリスクが付されている相(例えば、U*)は、アスタリスクが付されていない相(例えば、U)に対して、コイルサイド22aの通電方向が逆方向に設定されている。本参考形態の回転電機10は、本実施形態の回転電機10と同様に、毎極毎相スロット数が2.5である。そのため、第一方向(矢印X方向)に隣接する同相の数は、第一層L1および第二層L2の各層で、2と3とが交互に繰り返されている。
また、同図に示す位置座標PPは、複数(25個)のスロット21cの第一方向(矢印X方向)の位置を示している。位置座標PPは、説明の便宜上、設定されたものであり、複数(一層あたり25個、合計50個)のコイルサイド22aの第一方向(矢印X方向)の位置が特定可能になっている。さらに、同図では、複数(3つ)の可動子磁極32(可動子磁極32a,32b,32a)が併記されている。
ここで、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に連続して隣り合う複数(本参考形態では、3つ)のスロット21cに収容されている同相の電流方向が同じ複数(本参考形態では、5つ)のコイルサイド22aの集合を一相帯41とする。例えば、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22a(同図では、U*で示す)の集合は、一相帯41である。同図では、U相の一相帯41を構成する複数(5つ)のコイルサイド22aが囲まれて明示されているが、V相およびW相についても、同様に一相帯41が構成されている。
さらに、一相帯41を構成する複数(本参考形態では、5つ)のコイルサイド22aの配置および当該複数(5つ)のコイルサイド22aの可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))における位置の両方を加味して算出される一相帯41の中心を一相帯41のコイルサイド中心CCとする。例えば、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのU*で示す)が収容されている。よって、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41のコイルサイド中心CC11は、例えば、下記数1から算出することができ、コイルサイド中心CC11は、0.8になる。
(数1)
CC11=(0×2+1×2+2×1)/(2+2+1)=0.8
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのUで示す)が収容されている。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。よって、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41のコイルサイド中心CC12は、例えば、下記数2から算出することができ、コイルサイド中心CC12は、8.2になる。
(数2)
CC12=(7×1+8×2+9×2)/(1+2+2)=8.2
位置座標PPが15のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。また、位置座標PPが16のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが17のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのU*で示す)が収容されている。よって、位置座標PPが15、16および17の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41のコイルサイド中心CC13は、例えば、下記数3から算出することができ、コイルサイド中心CC13は、15.8になる。
(数3)
CC13=(15×2+16×2+17×1)/(2+2+1)=15.8
位置座標PPが22のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのUで示す)が収容されている。また、位置座標PPが23のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが24のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。よって、位置座標PPが22、23および24の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41のコイルサイド中心CC14は、例えば、下記数4から算出することができ、コイルサイド中心CC14は、23.2になる。
(数4)
CC14=(22×1+23×2+24×2)/(1+2+2)=23.2
上述した算出結果から、U相の一相帯41のコイルサイド中心CC11とコイルサイド中心CC12との間の距離は、7.4(=8.2−0.8)になる。また、U相の一相帯41のコイルサイド中心CC12とコイルサイド中心CC13との間の距離は、7.6(=15.8−8.2)になる。さらに、U相の一相帯41のコイルサイド中心CC13とコイルサイド中心CC14との間の距離は、7.4(=23.2−15.8)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯41のコイルサイド中心CC間の距離は、7.4および7.6が交互に繰り返される。そのため、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯41のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等にはならず、一磁極対毎に均等になる。
一方、U相の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも5つであり、一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。このように、本明細書では、一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等であるコイルを基本コイル50という。図3に示すように、本参考形態の固定子巻線22は、一つの基本コイル50を備えている。
また、本明細書では、一相帯41を構成する複数(本参考形態では、5つ)のコイルサイド22aの第一方向(矢印X方向)の分布幅をコイルサイド分布幅とする。図3から明らかなように、本参考形態のコイルサイド分布幅は、毎極において3スロット分である。さらに、本明細書では、複数(8極)の可動子磁極32を基準にした実質のコイルサイド分布幅を実効コイルサイド分布幅とする。例えば、位置座標PPが0のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが7.5の位置になる。また、位置座標PPが1のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが8.5の位置になる。さらに、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのU*で示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが9.5の位置になる。つまり、実効コイルサイド分布幅は、位置座標PPが7から9.5までの3.5スロット分である。
逆に、例えば、位置座標PPが7のスロット21cに収容されているU相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのUで示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが−0.5の位置になる。また、位置座標PPが8のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが0.5の位置になる。さらに、位置座標PPが9のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが1.5の位置になる。つまり、実効コイルサイド分布幅は、位置座標PPが−0.5から2までの3.5スロット分である。このように、1/2系列の回転電機10では、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯41は、複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置が、1/2スロット分、ずれている。同図に示すU相の一相帯41の近傍の数字は、U相の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を上述した等価位置で示している。
U相の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等であるので、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。しかしながら、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯41のコイルサイド中心CC間の距離は、7.4および7.6が交互に繰り返されるので、起磁力分布は、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎に隔極で等価になる。つまり、1/2系列の回転電機10は、二種類の起磁力分布を備えている。
二種類の起磁力分布は、固定子鉄心21に対して、可動子30の磁極数(本参考形態では、8極)に依拠する次数(本参考形態では、8次(空間8次))と比べて、低次(本参考形態では、4次(空間4次))の起振力を発生させる。そのため、駆動回転数が広範囲に亘る回転電機10では、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数が、駆動回転数範囲内に生じ易くなる。その結果、固定子20の共振が発生し、回転電機10の騒音および振動が増大する可能性がある。そこで、本実施形態では、起磁力の大きさが均等であっても、起磁力分布が均等でない状態(回転対称性をもたない状態)を改善することによって、固定子巻線22の相配置に起因する回転電機10の騒音および振動を低減する。なお、図3の図示の方法について既述したことは、固定子巻線22の相配置を示す後述する図面についても同様に言える。また、本明細書では、固定子巻線22の相配置がU相を例に説明されているが、V相およびW相についても同様に言える。
(本実施形態の固定子巻線22の構成と起磁力分布)
図4Aに示すように、固定子巻線22は、複数(本実施形態では、2つ)の基本コイル50を備えている。複数(2つ)の基本コイル50の各々は、参考形態で既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、少なくとも一つの第二基本コイル52(本実施形態では、一つの第二基本コイル52)とを備えている。第一基本コイル51は、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))における毎極の一相帯41の配置に関して基準になるコイルをいう。第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))における毎極の一相帯41の配置が異なるコイルをいう。
さらに、少なくとも一つの第二基本コイル52(本実施形態では、一つの第二基本コイル52)は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されていると好適である。また、所定スロットピッチは、移動単位量のn倍(但し、nは1以上の自然数)で表されると好適である。さらに、移動単位量は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)の直近の整数または1スロットピッチであると好適である。また、少なくとも一つの第二基本コイル52(本実施形態では、一つの第二基本コイル)の各々の所定スロットピッチを列挙した数列である第一数列は、移動単位量の1倍からn倍までのすべての自然数倍を含むと好適である。
本実施形態では、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。また、移動単位量は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より小さい直近の整数である7スロットピッチに設定されている。さらに、所定スロットピッチは、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。このように、本実施形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第二基本コイル52では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。また、第一基本コイル51において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第二基本コイル52では、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯41についても同様に言える。
ここで、第一基本コイル51の一の一相帯41を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aと、少なくとも一つの第二基本コイル52の各々(本実施形態では、一つの第二基本コイル52)の一の一相帯41を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aと、が混成されて新しく形成される一相帯41を混成一相帯42とする。例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41と、第二基本コイル52において、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41と、が混成されて、U相の混成一相帯42が新しく形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。
固定子巻線22は、混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが複数(本実施形態では、8極)の可動子磁極32の毎極において均等になるように、複数(本実施形態では、2つ)の基本コイル50が混成されている。具体的には、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ(7スロットピッチ(7sp))分、移動されて、複数(2つ)の基本コイル50が積層されている。これにより、本実施形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第四層L4の四層に形成されている。
また、混成一相帯42を構成する複数(本実施形態では、10個)のコイルサイド22aの配置および当該複数(10個)のコイルサイド22aの可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))における位置の両方を加味して算出される混成一相帯42の中心を混成一相帯42のコイルサイド中心CCとする。例えば、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC21は、例えば、下記数5から算出することができ、コイルサイド中心CC21は、0.5になる。
(数5)
CC21=(−1×1+0×4+1×4+2×1)/(1+4+4+1)=0.5
同様に、第一基本コイル51において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41と、第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41と、が混成されて、U相の混成一相帯42が形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC22は、例えば、下記数6から算出することができ、コイルサイド中心CC22は、8になる。
(数6)
CC22=(7×3+8×4+9×3)/(3+4+3)=8
位置座標PPが14、15、16および17の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC23は、例えば、下記数7から算出することができ、コイルサイド中心CC23は、15.5になる。
(数7)
CC23=(14×1+15×4+16×4+17×1)/(1+4+4+1)
=15.5
また、位置座標PPが22、23および24の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC24は、例えば、下記数8から算出することができ、コイルサイド中心CC24は、23になる。
(数8)
CC24=(22×3+23×4+24×3)/(3+4+3)=23
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC21とコイルサイド中心CC22との間の距離は、7.5(=8−0.5)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC22とコイルサイド中心CC23との間の距離は、7.5(=15.5−8)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC23とコイルサイド中心CC24との間の距離は、7.5(=23−15.5)になる。このように、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、いずれも7.5であり、均等である。そのため、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。
ここで、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離の比を隣接コイルサイド比とする。既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)では、隣接コイルサイド比は、0.973(=7.4/7.6)である。一方、本実施形態(固定子巻線22が複数(2つ)の基本コイル50を備える形態)では、隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。このように、隣接コイルサイド比が1に近づく程、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、均等化されていると言える。
U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも10個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。よって、起磁力分布は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において等価になり、本実施形態の回転電機10は、一種類の起磁力分布を備えている。
このように、本実施形態では、起磁力分布の回転対称性が改善されている。その結果、本実施形態の回転電機10は、可動子30の磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、8次(空間8次))と比べて、低次(本実施形態では、4次(空間4次))の起振力が低減される。よって、本実施形態の回転電機10は、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数を高めて、例えば、駆動回転数範囲外に設定することができる。つまり、本実施形態の回転電機10は、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。
なお、本実施形態の回転電機10によれば、回転電機10の騒音および振動の低減に付随して、トルクリップルも低減することもできる。トルクリップルは、回転電機10の出力トルクに生じる脈動であり、可動子30の移動に伴う固定子20と可動子30との間の磁束変化に起因して発生する。トルクリップルの一例として、コギングトルク、スロットリップル、ポールリップルなどが挙げられる。
また、回転電機10の騒音および振動を低減する方法として、固定子鉄心21の各ティース先端部21d、または、各ティース先端部21dと対向する可動子鉄心31の表面(外側表面)に、切り欠きを設ける手法が挙げられる。しかしながら、この手法は、実質的に空隙の拡大となり、トルク目減りが増大する。本実施形態の回転電機10は、トルク目減りを抑制しつつ、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。
なお、図4Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図4Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図4Bに示す第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図4Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。
また、図4Cに示すように、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aは、当該スロット21c内の配置を変更することもできる。例えば、第二基本コイル52において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第三層L3から第四層L4に移動されている。また、第一基本コイル51において、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第二層L2から第一層L1に移動されている。上述したことは、他の混成一相帯42についても同様に言える。これらにより、相間(U相、V相およびW相のうちの任意の相の間)の境界が単純化(相間の境界の凹凸が最小化)するので、相間の絶縁が容易になる。例えば、相間を絶縁する絶縁紙の形状が単純化され、絶縁紙の配置が容易になる。このように、複数(本実施形態では、2つ)の基本コイル50の混成には、同一のスロット21cに収容される少なくとも一つのコイルサイド22aの当該スロット21c内の配置を変更した形態が含まれる。
例えば、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、3スロット分である。また、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4スロット分である。
このように、本実施形態の実効コイルサイド分布幅(4スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本実施形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。なお、起磁力分布は、コイルサイド分布に基づいて形成されるので、上述したことは、コイルサイド分布からも言える。
図5Aは、参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。コイルサイド分布は、位置座標PP毎の同相(U相)の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示しており、同図では、コイルサイド分布は、棒グラフによって示されている。横軸は、位置座標PPを示しており、縦軸は、U相の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示している。なお、スロットサイズ(スロット21cの深さ)は変わらないので、コイルサイド分布を示す後述する図面(例えば、図5Bなど)を含めて、縦軸の上限は、一定になる必要がある。しかしながら、コイルサイド分布を示す図では、説明の便宜上、縦軸は、コイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示しており、縦軸の上限は、必ずしも一定になっていない。コイルサイド分布を示す図では、棒グラフの相対的な高さの比率と棒グラフの分布が意味をもつ。例えば、図5Aに示す位置座標PPが0、1および2の棒グラフの相対的な高さの比率は、2:2:1であり、図5Bに示す位置座標PPが−1、0、1および2の棒グラフの相対的な高さの比率は、1:4:4:1である。
また、説明の便宜上、棒グラフの横軸方向の幅を1スロット分とし、隣接する棒グラフの間には、ティース部21bの第一方向(矢印X方向)の幅に相当する空白が設けられている。但し、同図は、ティース部21bの第一方向(矢印X方向)の幅を規定するものではない。さらに、同図では、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極対分のコイルサイド分布が図示されている。同図に示すコイルサイド分布は、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極対毎に繰り返される。図5Aの図示の方法について既述したことは、コイルサイド分布を示す後述する図面についても同様に言える。但し、後述する図面では、縦軸は、混成一相帯42を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示している。
図3に示すように、例えば、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図5Aに示すように、位置座標PPが0におけるU相の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。同様に、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相の一相帯41を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。
図5Bは、本実施形態(固定子巻線22が複数(2つ)の基本コイル50を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。図4Aに示すように、例えば、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。そのため、図5Bに示すように、位置座標PPが−1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。同様に、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。
図5Bに示す本実施形態のコイルサイド分布は、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広範化されており、なだらかになっている。本実施形態では、混成一相帯42を構成する複数(10個)のコイルサイド22aは、参考形態の一相帯41を構成する複数(5つ)のコイルサイド22aと比べて、広範囲の隣接する複数のスロット21cに配置されている。その結果、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力分布は、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に分散される。よって、固定子20と可動子30との間の吸引力分布も、なだらかになり、吸引力のピーク値(吸引力分布における基本波成分の振幅)および吸引力の変化量は、参考形態と比べて低減する。また、吸引力のピーク値が最大になる位置の可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))におけるピッチも等ピッチ化される。つまり、本実施形態の回転電機10は、参考形態の回転電機10と比べて、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。また、固定子20と可動子30との間の空隙に発生する磁束波形は、参考形態と比べて、正弦波に近づくので、本実施形態の回転電機10は、参考形態と比べて、起磁力の高調波成分(例えば、五次および七次の成分)を低減することもできる。
なお、一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさは、複数のコイルサイド22aを形成する複数の巻線に流れる電流の電流値と、複数のコイルサイド22aを形成する複数の巻線の巻数(ターン数であり、導体数)とを乗じた値になる。複数のコイルサイド22aを形成する複数の巻線は、直列接続および並列接続のうちの少なくとも一方によって電気的に接続することができる。但し、複数の巻線に並列接続される部位が存在すると、当該部位では、直列接続される場合と比べて、電流値が小さくなるので、起磁力の大きさも小さくなる。よって、複数の巻線の巻数(ターン数であり、導体数)を考える場合、並列接続される部位の導体数を直列接続の導体数に換算した直列換算導体数を用いる必要がある。例えば、複数(2つ)の巻線が直列接続される部位の導体数を1とする。このとき、複数(2つ)の巻線が並列接続(二並列)される部位では、直列換算導体数は、2とする。
ここで、第一基本コイル51の一の一相帯41を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aの直列換算導体数を第一コイルサイド導体数とする。また、第一基本コイル51の一の一相帯41に対して可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ(本実施形態では、7スロットピッチ)分、移動した位置に配置されている少なくとも一つの第二基本コイル52の各々(本実施形態では、一つの第二基本コイル52)の一の一相帯41を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aの直列換算導体数を第二コイルサイド導体数とする。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。一方、第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に7スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。つまり、本実施形態では、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
(二層重巻による固定子巻線22の構成例)
図6に示すように、固定子巻線22は、U相コイル22cu、V相コイル22cvおよびW相コイル22cwを備えている。図6および図7Aに示す二層重巻による固定子巻線22では、U相コイル22cuは、U1相の単位コイル22dと、U2相の単位コイル22dと、U3相の単位コイル22dと、U4相の単位コイル22dと、U5相の単位コイル22dとを備えている。
U1相の単位コイル22d、U2相の単位コイル22dおよびU3相の単位コイル22dは、第一方向(矢印X方向)に1スロットピッチずつ、移動されて配置されている。U4相の単位コイル22dおよびU5相の単位コイル22dは、第一方向(矢印X方向)に1スロットピッチ分、移動されて配置されている。U3相の単位コイル22dと、U4相の単位コイル22dとの間は、第一方向(矢印X方向)に6スロットピッチ分、移動されて配置されている。このように、U1相の単位コイル22d、U2相の単位コイル22d、U3相の単位コイル22d、U4相の単位コイル22dおよびU5相の単位コイル22dは、同相(U相)ではあるが、固定子20上の配置が異なる。
U相コイル22cuは、複数(2つ)の基本コイル50の各々において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対(本実施形態では、4磁極対)分の極対コイル60を備えている。U相コイル22cuを構成する複数(8つ)の極対コイル60は、直列接続および並列接続のうちの少なくとも一方により電気的に接続することができる。例えば、本実施形態のU相コイル22cuは、第一基本コイル51の一つの極対コイル60と、第二基本コイル52の一つの極対コイル60とが電気的に直列接続されており、相単位コイル22uが形成されている。複数(4つ)の相単位コイル22uは、電気的に並列接続されており、U相コイル22cuが構成されている。上述したことは、V相コイル22cvおよびW相コイル22cwについても同様に言える。
図7Aに示すように、複数(8つ)の極対コイル60の各々は、第一極コイル61fと、第二極コイル61sとを備えている。一対の可動子磁極32,32のうちの一方の可動子磁極32(例えば、可動子磁極32a)に対して第一極コイル61fが対向するときに、第二極コイル61sは、当該一対の可動子磁極32,32のうちの他方の可動子磁極32(例えば、可動子磁極32b)に対して対向する。本実施形態では、第一極コイル61fは、U1相の単位コイル22dと、U2相の単位コイル22dと、U3相の単位コイル22dとを備えており、これらは、単位コイル間接続部62によって順に電気的に直列接続されている。第二極コイル61sは、U4相の単位コイル22dと、U5相の単位コイル22dとを備えており、これらは、単位コイル間接続部62によって電気的に直列接続されている。第一極コイル61fと第二極コイル61sとの間は、極コイル間接続部63によって電気的に接続されている。
このように、第一基本コイル51の複数(4つ)の極対コイル60の各々を構成する複数(5つ)の単位コイル22dは、電気的に直列接続されている。また、第二基本コイル52の複数(4つ)の極対コイル60の各々を構成する複数(5つ)の単位コイル22dは、電気的に直列接続されている。
極対コイル60は、例えば、巻線を同一方向に連続して巻進める一方向連続巻によって形成することができる。本実施形態では、巻始め部60sから巻終り部60eまで一方向連続巻によって巻装されて、極対コイル60が形成されている。なお、第一極コイル61fおよび第二極コイル61sの各々において、個別に一方向連続巻によって巻装し、巻装された第一極コイル61fおよび第二極コイル61sを直列接続することによって、極対コイル60を形成することもできる。また、図面では、第二方向可動子側(矢印Y1方向)に配置されている一対のコイルサイド22a,22aは、実線で示され、第二方向固定子側(矢印Y2方向)に配置されている一対のコイルサイド22a,22aは、破線で示されている。上述したことは、一対のコイルエンド22b,22bについても同様に言える。
相単位コイル22uの構成方法は、限定されない。図7Bに示すように、例えば、第一基本コイル51の一つの極対コイル60の巻終り部60eと、第二基本コイル52の一つの極対コイル60の巻終り部60eとが電気的に接続されており、相単位コイル22uが構成されている。この場合、相単位コイル22uを構成する極対コイル60の種類は、一種類であり、極対コイル60の種類数を最小化することができる。よって、複数種類の極対コイル60を製作する煩雑さを解消することができる。
一方、図7Cに示す形態では、第一基本コイル51の一つの極対コイル60は、図7Aに示す極対コイル60と同一構成の極対コイル60を備えている。しかしながら、第二基本コイル52の一つの極対コイル60aは、第一極コイル61faと、第二極コイル61saとを備えており、図7Aに示す極対コイル60と構成が異なっている。第一極コイル61faは、U4相の単位コイル22dと、U5相の単位コイル22dとを備えており、これらは、単位コイル間接続部62によって電気的に直列接続されている。第二極コイル61saは、U1相の単位コイル22dと、U2相の単位コイル22dと、U3相の単位コイル22dとを備えており、これらは、単位コイル間接続部62によって順に電気的に直列接続されている。第一極コイル61faと第二極コイル61saとの間は、極コイル間接続部63によって電気的に接続されている。
図7Cに示す形態では、第一基本コイル51の一つの極対コイル60の巻終り部60eと、第二基本コイル52の一つの極対コイル60aの巻始め部60sとが電気的に接続されており、相単位コイル22uaが構成されている。この形態では、相単位コイル22uaを構成する極対コイル60,60aの種類は、二種類であり、図7Bに示す形態と比べて、極対コイル60,60aの種類が増加している。しかしながら、この形態では、第二基本コイル52の数が増加した場合に、極対コイル60間を接続する配策を均等化し易い。このように、本明細書では、二層重巻を例に固定子巻線22の構成例が示されているが、同心巻および波巻のいずれの場合であっても、固定子巻線22を構成することができる。また、後述するいずれの形態においても、図7Bまたは図7Cに示す形態と同様に、固定子巻線22を構成することができる。
<第二実施形態>
本実施形態は、固定子巻線22が複数(3つ)の基本コイル50を備える点で、第一実施形態と異なる。本実施形態では、第一実施形態と異なる点を中心に説明されている。
図8Aに示すように、固定子巻線22は、複数(3つ)の基本コイル50を備えている。複数(3つ)の基本コイル50の各々は、既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(3つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、複数(2つ)の第二基本コイル52とを備えている。本実施形態においても、複数(2つ)の第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、複数(2つ)の第二基本コイル52の各々は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本実施形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第六層L6の六層に形成されている。
本実施形態においても、移動単位量は、7スロットピッチに設定されている。但し、複数(2つ)の第二基本コイル52のうちの一方の第二基本コイル52(例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。複数(2つ)の第二基本コイル52のうちの他方の第二基本コイル52(例えば、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの2倍(14スロットピッチ(14sp))に設定されている。このように、本実施形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1および2である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から2倍(14スロットピッチ(14sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。また、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
また、本実施形態では、第一基本コイル51のU相の一相帯41と、複数(2つ)の第二基本コイル52の複数(2つ)のU相の一相帯41と、が混成されて、U相の混成一相帯42が形成されている。例えば、第一基本コイル51のU相の一相帯41は、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、15個である。
位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(6つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC31は、例えば、下記数9から算出することができ、コイルサイド中心CC31は、0.27になる。
(数9)
CC31=(−1×3+0×6+1×5+2×1)/(3+6+5+1)=0.27
同様に、例えば、第一基本コイル51のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、15個である。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(6つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC32は、例えば、下記数10から算出することができ、コイルサイド中心CC32は、7.74になる。
(数10)
CC32=(6×1+7×5+8×6+9×3)/(1+5+6+3)=7.74
位置座標PPが14、15、16および17の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、15個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC33は、例えば、下記数11から算出することができ、コイルサイド中心CC33は、15.27になる。
(数11)
CC33=(14×3+15×6+16×5+17×1)/(3+6+5+1)
=15.27
また、位置座標PPが21、22、23および24の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、15個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC34は、例えば、下記数12から算出することができ、コイルサイド中心CC34は、22.73になる。
(数12)
CC34=(21×1+22×5+23×6+24×3)/(1+5+6+3)
=22.73
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC31とコイルサイド中心CC32との間の距離は、7.47(=7.74−0.27)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC32とコイルサイド中心CC33との間の距離は、7.53(=15.27−7.74)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC33とコイルサイド中心CC34との間の距離は、7.47(=22.73−15.27)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.47および7.53が交互に繰り返される。
本実施形態(固定子巻線22が複数(3つ)の基本コイル50を備える形態)では、隣接コイルサイド比は、0.992(=7.47/7.53)であり、参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の隣接コイルサイド比である0.973(=7.4/7.6)と比べて、十分に1に近づいている。よって、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、参考形態と比べて、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等化されていると言える。
本実施形態では、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも15個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善されている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
なお、図8Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図8Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図8Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図8Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、図8Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。なお、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52では、コイルサイド22aの通電方向は、正しいので、コイルサイド22aの通電方向を反転する必要はない。
また、図8Cに示すように、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aは、当該スロット21c内の配置を変更することもできる。例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第三層L3から第四層L4に移動されている。また、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第六層L6から第五層L5に移動されている。さらに、第一基本コイル51において、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第二層L2から第一層L1に移動されている。上述したことは、他の混成一相帯42についても同様に言える。
さらに、例えば、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。また、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。
このように、本実施形態の実効コイルサイド分布幅(4.5スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本実施形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。
また、図9は、本実施形態(固定子巻線22が複数(3つ)の基本コイル50を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。図8Aに示すように、例えば、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図9に示すように、位置座標PPが−1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。同様に、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(6つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、6とする。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、5とする。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが6におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、5とする。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(6つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、6とする。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。
図9に示す本実施形態のコイルサイド分布は、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。また、本実施形態のコイルサイド分布は、参考形態のコイルサイド分布と比べて、正弦波に近づいている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
また、例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。第一実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に7スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。また、第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に14スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、いずれも2.5×t0で表すことができる。つまり、本実施形態においても、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。なお、上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
<第三実施形態>
本実施形態は、固定子巻線22が複数(4つ)の基本コイル50を備える点で、第一実施形態と異なる。本実施形態では、第一実施形態と異なる点を中心に説明されている。
図10Aに示すように、固定子巻線22は、複数(4つ)の基本コイル50を備えている。複数(4つ)の基本コイル50の各々は、既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(4つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、複数(3つ)の第二基本コイル52とを備えている。本実施形態においても、複数(3つ)の第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、複数(3つ)の第二基本コイル52の各々は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本実施形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第八層L8の八層に形成されている。
本実施形態においても、移動単位量は、7スロットピッチに設定されている。但し、複数(3つ)の第二基本コイル52のうちの一の第二基本コイル52(例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。複数(3つ)の第二基本コイル52のうちの他の一の第二基本コイル52(例えば、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの2倍(14スロットピッチ(14sp))に設定されている。複数(3つ)の第二基本コイル52のうちの他の一の第二基本コイル52(例えば、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの3倍(21スロットピッチ(21sp))に設定されている。このように、本実施形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1、2および3である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から3倍(21スロットピッチ(21sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。また、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
さらに、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが21、22および23の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯41についても同様に言える。
また、本実施形態では、第一基本コイル51のU相の一相帯41と、複数(3つ)の第二基本コイル52の複数(3つ)のU相の一相帯41と、が混成されて、U相の混成一相帯42が形成されている。例えば、第一基本コイル51のU相の一相帯41は、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−2、−1および0の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが−2、−1、0、1および2の複数(5つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。
位置座標PPが−2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが−2、−1、0、1および2の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC41は、例えば、下記数13から算出することができ、コイルサイド中心CC41は、0になる。
(数13)
CC41=(−2×1+−1×5+0×8+1×5+2×1)/(1+5+8+5+1)
=0
同様に、例えば、第一基本コイル51のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC42は、例えば、下記数14から算出することができ、コイルサイド中心CC42は、7.5になる。
(数14)
CC42=(6×3+7×7+8×7+9×3)/(3+7+7+3)=7.5
位置座標PPが13、14、15、16および17の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC43は、例えば、下記数15から算出することができ、コイルサイド中心CC43は、15になる。
(数15)
CC43=(13×1+14×5+15×8+16×5+17×1)/(1+5+8+5+1)=15
また、位置座標PPが21、22、23および24の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC44は、例えば、下記数16から算出することができ、コイルサイド中心CC44は、22.5になる。
(数16)
CC44=(21×3+22×7+23×7+24×3)/(3+7+7+3)
=22.5
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC41とコイルサイド中心CC42との間の距離は、7.5(=7.5−0)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC42とコイルサイド中心CC43との間の距離は、7.5(=15−7.5)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC43とコイルサイド中心CC44との間の距離は、7.5(=22.5−15)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.5であり、均等である。なお、本実施形態の隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。つまり、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、均等化されている。
本実施形態では、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも20個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善されている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
なお、図10Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図10Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図10Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図10Aに示す通電方向に対して反転されている。
また、図10Bに示す第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが21、22および23の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図10Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、図10Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。また、同図に示す第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。なお、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52では、コイルサイド22aの通電方向は、正しいので、コイルサイド22aの通電方向を反転する必要はない。
また、図10Cに示すように、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aは、当該スロット21c内の配置を変更することもできる。例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第三層L3から第四層L4に移動されている。第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが−2のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第七層L7から第八層L8に移動されている。
第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第六層L6から第五層L5に移動されている。第一基本コイル51において、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第二層L2から第一層L1に移動されている。上述したことは、他の混成一相帯42についても同様に言える。
さらに、例えば、位置座標PPが−2、−1、0、1および2の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、5スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。また、位置座標PPが−2、−1、0、1および2の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、5スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、5スロット分である。
このように、本実施形態の実効コイルサイド分布幅(5スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本実施形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。
また、図11は、本実施形態(固定子巻線22が複数(4つ)の基本コイル50を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。図10Aに示すように、例えば、位置座標PPが−2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。そのため、図11に示すように、位置座標PPが−2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。同様に、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが−1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、5とする。
位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、8とする。さらに、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(5つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、5とする。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが6におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、7とする。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、7とする。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。
図11に示す本実施形態のコイルサイド分布は、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。また、本実施形態のコイルサイド分布は、参考形態のコイルサイド分布と比べて、正弦波に近づいている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
また、例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。第一実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に7スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。また、第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に14スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。
さらに、第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に21スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが21、22および23の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、いずれも2.5×t0で表すことができる。つまり、本実施形態においても、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。なお、上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
<第四実施形態>
本実施形態は、固定子巻線22が複数(4つ)の基本コイル50を備える点で、第一実施形態と異なる。また、本実施形態は、所定スロットピッチが第三実施形態と異なる。本実施形態では、第一実施形態および第三実施形態と異なる点を中心に説明されている。
図12Aに示すように、固定子巻線22は、複数(4つ)の基本コイル50を備えている。複数(4つ)の基本コイル50の各々は、既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(4つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、複数(3つ)の第二基本コイル52とを備えている。本実施形態においても、複数(3つ)の第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、複数(3つ)の第二基本コイル52の各々は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本実施形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第八層L8の八層に形成されている。
本実施形態においても、移動単位量は、7スロットピッチに設定されている。但し、複数(3つ)の第二基本コイル52のうちの一の第二基本コイル52(例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。複数(3つ)の第二基本コイル52のうちの他の一の第二基本コイル52(例えば、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。複数(3つ)の第二基本コイル52のうちの他の一の第二基本コイル52(例えば、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの2倍(14スロットピッチ(14sp))に設定されている。このように、本実施形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1および2である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から2倍(14スロットピッチ(14sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。また、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
さらに、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52では、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯41についても同様に言える。
また、本実施形態では、第一基本コイル51のU相の一相帯41と、複数(3つ)の第二基本コイル52の複数(3つ)のU相の一相帯41と、が混成されて、U相の混成一相帯42が形成されている。例えば、第一基本コイル51のU相の一相帯41は、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。
位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC51は、例えば、下記数17から算出することができ、コイルサイド中心CC51は、0.25になる。
(数17)
CC51=(−1×4+0×8+1×7+2×1)/(4+8+7+1)=0.25
同様に、例えば、第一基本コイル51のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯42は、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC52は、例えば、下記数18から算出することができ、コイルサイド中心CC52は、7.75になる。
(数18)
CC52=(6×1+7×7+8×8+9×4)/(1+7+8+4)=7.75
位置座標PPが14、15、16および17の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC53は、例えば、下記数19から算出することができ、コイルサイド中心CC53は、15.25になる。
(数19)
CC53=(14×4+15×8+16×7+17×1)/(4+8+7+1)
=15.25
また、位置座標PPが21、22、23および24の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42についても同様に言える。この場合も、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。また、この場合のU相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC54は、例えば、下記数20から算出することができ、コイルサイド中心CC54は、22.75になる。
(数20)
CC54=(21×1+22×7+23×8+24×4)/(1+7+8+4)
=22.75
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC51とコイルサイド中心CC52との間の距離は、7.5(=7.75−0.25)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC52とコイルサイド中心CC53との間の距離は、7.5(=15.25−7.75)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC53とコイルサイド中心CC54との間の距離は、7.5(=22.75−15.25)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.5であり、均等である。なお、本実施形態の隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。つまり、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、均等化されている。
本実施形態では、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも20個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善されている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
なお、図12Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図12Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図12Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図12Aに示す通電方向に対して反転されている。
また、図12Bに示す第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図12Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、図12Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。また、同図に示す第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。なお、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52では、コイルサイド22aの通電方向は、正しいので、コイルサイド22aの通電方向を反転する必要はない。
また、図12Cに示すように、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aは、当該スロット21c内の配置を変更することもできる。例えば、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第五層L5から第六層L6に移動されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第三層L3から第五層L5に移動されている。
第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第八層L8から第七層L7に移動されている。第一基本コイル51において、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、第二層L2から第一層L1に移動されている。上述したことは、他の混成一相帯42についても同様に言える。
さらに、例えば、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。また、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。
このように、本実施形態の実効コイルサイド分布幅(4.5スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本実施形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。
また、図13は、本実施形態(固定子巻線22が複数(4つ)の基本コイル50を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。図12Aに示すように、例えば、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図13に示すように、位置座標PPが−1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。
同様に、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、8とする。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、7とする。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが6におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、7とする。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、8とする。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。
図13に示す本実施形態のコイルサイド分布は、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。また、本実施形態のコイルサイド分布は、参考形態のコイルサイド分布と比べて、正弦波に近づいている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
また、例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。第一実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に7スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、5(=2.5×2)スロット分を占有している。また、第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に14スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。
このように、本実施形態では、複数(2つ)の第二コイルサイド導体数のうちの一方の第二コイルサイド導体数(この場合、2.5×t0で表される)は、第一コイルサイド導体数と均等である。これに対して、複数(2つ)の第二コイルサイド導体数のうちの他方の第二コイルサイド導体数(この場合、5×t0で表される)は、第一コイルサイド導体数と異なり、第一コイルサイド導体数の二倍になっている。上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
ここで、第一コイルサイド導体数と、所定スロットピッチが小さいものから順に所定スロットピッチ毎に列挙された少なくとも一つの第二コイルサイド導体数(本実施形態では、複数(2つ)の第二コイルサイド導体数)と、からなるコイルサイド導体数を列挙した要素数がm個(但し、mは3以上の自然数)の数列を第二数列とする。本実施形態では、mが3であり、第二数列の要素数は3個である。また、第二数列の要素を列挙すると、2.5×t0、5×t0、2.5×t0となり、第二数列の各要素の比は、1:2:1になる。
本実施形態では、第二数列は、k番目(但し、kはm/2以下の自然数)の要素のコイルサイド導体数と、(m−k+1)番目の要素のコイルサイド導体数と、が同一である。具体的には、本実施形態では、mが3であるので、kは、1になる。1番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0である。3(=3−1+1)番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0である。よって、1番目の要素のコイルサイド導体数と、3番目の要素のコイルサイド導体数とは、同一である。また、第二数列は、2番目の要素のコイルサイド導体数(5×t0)が、1番目の要素のコイルサイド導体数および3番目の要素のコイルサイド導体数(2.5×t0)と比べて、二倍に設定されている。
また、本実施形態では、第二数列は、1番目の要素からj番目(但し、jはm/2であり、m/2が自然数でないときには小数点以下を切り上げた自然数)の要素にかけて、コイルサイド導体数が増加しており、j番目の要素からm番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が減少している。具体的には、本実施形態では、mが3であるので、jは、2になる。また、1番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0であり、2番目の要素のコイルサイド導体数は、5×t0である。よって、第二数列は、1番目の要素から2番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が増加している。一方、2番目の要素のコイルサイド導体数は、5×t0であり、3番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0である。よって、第二数列は、2番目の要素から3番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が減少している。
上述したことは、mが4以上の自然数においても同様に言える。例えば、mが6の場合を想定する。第二数列の1番目の要素から6番目の要素を、順に、要素EL1、要素EL2、要素EL3、要素EL4、要素EL5、要素EL6とする。但し、要素EL1と要素EL6は、コイルサイド導体数が同一であり、要素EL2と要素EL5は、コイルサイド導体数が同一であり、要素EL3と要素EL4は、コイルサイド導体数が同一であるものとする。また、1番目の要素EL1から3番目の要素EL3にかけて、コイルサイド導体数が増加しており、4番目の要素EL4から6番目の要素EL6にかけて、コイルサイド導体数が減少しているものとする。
mが6であるので、kは3(=6/2)以下の自然数になる。上記仮定したように、1番目の要素EL1と、6(=6−1+1)番目の要素EL6は、コイルサイド導体数が同一である。2番目の要素EL2と、5(=6−2+1)番目の要素EL5は、コイルサイド導体数が同一である。3番目の要素EL3と、4(=6−3+1)番目の要素EL4は、コイルサイド導体数が同一である。また、mが6であるので、jは、3になる。上記仮定したように、1番目の要素EL1から3番目の要素EL3にかけて、コイルサイド導体数が増加している。一方、4番目の要素EL4から6番目の要素EL6にかけて、コイルサイド導体数が減少している。
このように、第二数列は、k番目(但し、kはm/2以下の自然数)の要素のコイルサイド導体数と、(m−k+1)番目の要素のコイルサイド導体数と、が同一であると好適である。また、第二数列は、1番目の要素からj番目(但し、jはm/2であり、m/2が自然数でないときには小数点以下を切り上げた自然数)の要素にかけて、コイルサイド導体数が増加しており、j番目の要素からm番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が減少していると好適である。さらに、本実施形態では、mは3である。この場合、第二数列は、2番目の要素のコイルサイド導体数が、1番目の要素のコイルサイド導体数および3番目の要素のコイルサイド導体数と比べて、二倍に設定されていると好適である。
本実施形態において、例えば、二層重巻によって相単位コイル22uを構成する場合を想定する。この場合、図14に示すように、相単位コイル22uは、複数(4つ)の極対コイル60が直列接続されている。例えば、相単位コイル22uは、第一基本コイル51の一つの極対コイル60の巻終り部60eと、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の一つの極対コイル60の巻終り部60eと、が電気的に接続されている。また、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の一つの極対コイル60の巻始め部60sと、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52の一つの極対コイル60の巻終り部60eと、が電気的に接続されている。さらに、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52の一つの極対コイル60の巻始め部60sと、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52の一つの極対コイル60の巻始め部60sと、が電気的に接続されている。これらにより、複数(20個)の単位コイル22dが直列接続されている。
第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52と、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52とは、同一の複数のスロット21cに挿通されている。そのため、これらの二つの第二基本コイル52の直列導体数は、例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の直列導体数の二倍と考えることができる。よって、第一基本コイル51の一つの極対コイル60の直列導体数と、複数(本実施形態では、3つ)の第二基本コイル52の各々の一つの極対コイル60の直列導体数と、の比は、1:2:1になる。但し、直列導体数は、第一基本コイル51の所定スロットピッチを0とし、所定スロットピッチが小さいものから順に所定スロットピッチ毎に列挙するものとする。直列導体数の比は、既述した第二数列の各要素の比と一致している。
なお、相単位コイル22uは、図7Cに示す相単位コイル22uaと同様の構成(二種類の極対コイル60,60aを用いる構成)によって形成することもできる。この場合、例えば、第一層L1および第二層L2を形成する第一基本コイル51と、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52とは、極対コイル60を用いて、それぞれ構成することができる。また、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52と、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52とは、図7Cに示す極対コイル60aを用いて、それぞれ構成することができる。
<第五実施形態>
本実施形態は、移動単位量が8スロットピッチである点で第一実施形態と異なる。本実施形態では、第一実施形態と異なる点を中心に説明されている。
図15Aに示すように、固定子巻線22は、複数(2つ)の基本コイル50を備えている。複数(2つ)の基本コイル50の各々は、既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、一つの第二基本コイル52とを備えている。本実施形態においても、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本実施形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第四層L4の四層に形成されている。
本実施形態では、移動単位量は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より大きい直近の整数である8スロットピッチに設定されている。また、所定スロットピッチは、移動単位量である8スロットピッチの1倍(8スロットピッチ(8sp))に設定されている。このように、本実施形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1である。また、第一数列は、移動単位量である8スロットピッチの1倍(8スロットピッチ(8sp))を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、一つの第二基本コイル52では、位置座標PPが8、9および10の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯41についても同様に言える。また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC61は、例えば、下記数21から算出することができ、コイルサイド中心CC61は、1になる。
(数21)
CC61=(0×3+1×4+2×3)/(3+4+3)=1
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが7、8、9および10の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC62は、例えば、下記数22から算出することができ、コイルサイド中心CC62は、8.5になる。
(数22)
CC62=(7×1+8×4+9×4+10×1)/(1+4+4+1)=8.5
また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが15、16および17の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC63は、例えば、下記数23から算出することができ、コイルサイド中心CC63は、16になる。
(数23)
CC63=(15×3+16×4+17×3)/(3+4+3)=16
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが22、23、24および25の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC64は、例えば、下記数24から算出することができ、コイルサイド中心CC64は、23.5になる。
(数24)
CC64=(22×1+23×4+24×4+25×1)/(1+4+4+1)
=23.5
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC61とコイルサイド中心CC62との間の距離は、7.5(=8.5−1)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC62とコイルサイド中心CC63との間の距離は、7.5(=16−8.5)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC63とコイルサイド中心CC64との間の距離は、7.5(=23.5−16)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.5であり、均等である。なお、本実施形態の隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。つまり、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、均等化されている。
本実施形態では、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも10個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善されている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
なお、図15Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図15Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図15Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが8、9および10の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図15Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、図15Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。
さらに、例えば、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、3スロット分である。位置座標PPが7、8、9および10の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。また、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが7、8、9および10の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4スロット分である。
このように、本実施形態の実効コイルサイド分布幅(4スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本実施形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。
図16は、本実施形態のコイルサイド分布の一例を示している。図15Aに示すように、例えば、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図16に示すように、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。同様に、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。また、位置座標PPが10のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが10におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
図16に示す本実施形態のコイルサイド分布は、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。また、本実施形態のコイルサイド分布は、参考形態のコイルサイド分布と比べて、正弦波に近づいている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
また、例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。第一実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に8スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが8、9および10の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。つまり、本実施形態においても、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。なお、上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
図17Aに示すように、比較形態の固定子巻線22は、複数(2つ)の基本コイル50を備えている。複数(2つ)の基本コイル50の各々は、既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、一つの第二基本コイル52とを備えている。本比較形態においても、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本比較形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第四層L4の四層に形成されている。
本比較形態では、移動単位量は、毎極スロット数(本比較形態では、7.5)の直近の整数より大きい整数である9スロットピッチに設定されている。また、所定スロットピッチは、移動単位量である9スロットピッチの1倍(9スロットピッチ(9sp))に設定されている。このように、本比較形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1である。また、第一数列は、移動単位量である9スロットピッチの1倍(9スロットピッチ(9sp))を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、一つの第二基本コイル52では、位置座標PPが9、10および11の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯41についても同様に言える。また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが0、1、2および3の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC71は、例えば、下記数25から算出することができ、コイルサイド中心CC71は、1.5になる。
(数25)
CC71=(0×2+1×3+2×3+3×2)/(2+3+3+2)=1.5
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが7、8、9、10および11の複数(5つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC72は、例えば、下記数26から算出することができ、コイルサイド中心CC72は、9になる。
(数26)
CC72=(7×1+8×2+9×4+10×2+11×1)/(1+2+4+2+1)
=9
また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが15、16、17および18の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC73は、例えば、下記数27から算出することができ、コイルサイド中心CC73は、16.5になる。
(数27)
CC73=(15×2+16×3+17×3+18×2)/(2+3+3+2)
=16.5
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが22、23、24、25および26の複数(5つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC74は、例えば、下記数28から算出することができ、コイルサイド中心CC74は、24になる。
(数28)
CC74=(22×1+23×2+24×4+25×2+26×1)/(1+2+4+2+1)=24
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC71とコイルサイド中心CC72との間の距離は、7.5(=9−1.5)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC72とコイルサイド中心CC73との間の距離は、7.5(=16.5−9)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC73とコイルサイド中心CC74との間の距離は、7.5(=24−16.5)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.5であり、均等である。なお、本比較形態の隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。つまり、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、均等化されている。
本比較形態では、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも10個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善されている。よって、本比較形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
なお、図17Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図17Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図17Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが9、10および11の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図17Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、図17Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。
さらに、例えば、位置座標PPが0、1、2および3の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが7、8、9、10および11の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、5スロット分である。また、位置座標PPが0、1、2および3の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、5スロット分である。位置座標PPが7、8、9、10および11の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、5スロット分である。
このように、本比較形態の実効コイルサイド分布幅(5スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本比較形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。
図18は、本比較形態のコイルサイド分布の一例を示している。図17Aに示すように、例えば、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図18に示すように、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。同様に、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。さらに、位置座標PPが3のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが3におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。また、位置座標PPが10のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが10におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。さらに、位置座標PPが11のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが11におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
図18に示す本比較形態のコイルサイド分布は、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。また、本比較形態のコイルサイド分布は、参考形態のコイルサイド分布と比べて、正弦波に近づいている。よって、本比較形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
このように、実効コイルサイド分布幅が増加し、コイルサイド分布が第一方向(矢印X方向)に広範化されると、回転電機10の出力トルクは、目減りする。本比較形態の実効コイルサイド分布幅(5スロット分)は、第一実施形態の実効コイルサイド分布幅(4スロット分)と比べて、増加している。そのため、本比較形態の回転電機10は、第一実施形態と比べて、出力トルクが目減りする。
なお、例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。第一実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に9スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが9、10および11の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。つまり、本比較形態においても、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。なお、上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
図19Aに示すように、他の比較形態の固定子巻線22は、複数(2つ)の基本コイル50を備えている。複数(2つ)の基本コイル50の各々は、既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、一つの第二基本コイル52とを備えている。本比較形態においても、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本比較形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第四層L4の四層に形成されている。
本比較形態では、移動単位量は、毎極スロット数(本比較形態では、7.5)の直近の整数より小さい整数である6スロットピッチに設定されている。また、所定スロットピッチは、移動単位量である6スロットピッチの1倍(6スロットピッチ(6sp))に設定されている。このように、本比較形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1である。また、第一数列は、移動単位量である6スロットピッチの1倍(6スロットピッチ(6sp))を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、一つの第二基本コイル52では、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯41についても同様に言える。また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが−2、−1、0、1および2の複数(5つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC81は、例えば、下記数29から算出することができ、コイルサイド中心CC81は、0になる。
(数29)
CC81=(−2×1−1×2+0×4+1×2+2×1)/(1+2+4+2+1)
=0
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC82は、例えば、下記数30から算出することができ、コイルサイド中心CC82は、7.5になる。
(数30)
CC82=(6×2+7×3+8×3+9×2)/(2+3+3+2)=7.5
また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが13、14、15、16および17の複数(5つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC83は、例えば、下記数31から算出することができ、コイルサイド中心CC83は、15になる。
(数31)
CC83=(13×1+14×2+15×4+16×2+17×1)/(1+2+4+2+1)=15
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが21、22、23および24の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC84は、例えば、下記数32から算出することができ、コイルサイド中心CC84は、22.5になる。
(数32)
CC84=(21×2+22×3+23×3+24×2)/(2+3+3+2)
=22.5
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC81とコイルサイド中心CC82との間の距離は、7.5(=7.5−0)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC82とコイルサイド中心CC83との間の距離は、7.5(=15−7.5)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC83とコイルサイド中心CC84との間の距離は、7.5(=22.5−15)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.5であり、均等である。なお、本比較形態の隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。つまり、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、均等化されている。
本比較形態では、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも10個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善されている。よって、本比較形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
なお、図19Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図19Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図19Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図19Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、図19Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52の他の一相帯41についても同様に言える。なお、本比較形態は、図4Cに示す形態と同様にして、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aの当該スロット21c内の配置を変更することもできる。
また、例えば、位置座標PPが−2、−1、0、1および2の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、5スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。また、位置座標PPが−2、−1、0、1および2の複数(5つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、5スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、5スロット分である。
このように、本比較形態の実効コイルサイド分布幅(5スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本比較形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。
図20は、本比較形態のコイルサイド分布の一例を示している。図19Aに示すように、例えば、位置座標PPが−2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。そのため、図20に示すように、位置座標PPが−2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。同様に、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが−1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。また、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。さらに、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが6におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。
図20に示す本比較形態のコイルサイド分布は、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。また、本比較形態のコイルサイド分布は、参考形態のコイルサイド分布と比べて、正弦波に近づいている。よって、本比較形態の回転電機10は、第一実施形態で既述した効果と同様の効果を得ることができる。
既述したように、実効コイルサイド分布幅が増加し、コイルサイド分布が第一方向(矢印X方向)に広範化されると、回転電機10の出力トルクは、目減りする。本比較形態の実効コイルサイド分布幅(5スロット分)は、第一実施形態の実効コイルサイド分布幅(4スロット分)と比べて、増加している。そのため、本比較形態の回転電機10は、第一実施形態と比べて、出力トルクが目減りする。
なお、例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。第一実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に6スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。つまり、本比較形態においても、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。なお、上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
上述した二つの比較形態が示すように、移動単位量が毎極スロット数(この場合、7.5)の直近の整数(この場合、7または8)から増減すると、実効コイルサイド分布幅がさらに増加し、コイルサイド分布が第一方向(矢印X方向)にさらに広範化される。その結果、回転電機10の出力トルクは、目減りする。そのため、移動単位量は、毎極スロット数(この場合、7.5)の直近の整数(この場合、7または8)であると好適である。第一実施形態では、移動単位量は、7スロットピッチに設定されている。また、本実施形態では、移動単位量は、8スロットピッチに設定されている。なお、第二実施形態、第三実施形態および第四実施形態のいずれの形態においても、移動単位量は、8スロットピッチに設定することができる。
また、図18および図20に示すように、コイルサイド分布は、相互に電気角で180°位相がずれた関係になっている。これは、通電の基準点を電気角で180°ずらせば、等価な状態が実現することを示している。すなわち、両比較形態は、移動単位量が異なるが、振動および騒音の低減に関しては、同等の効果が得られる。具体的には、図18に示す比較形態の移動単位量は、毎極スロット数(7.5)の直近の整数である8スロットピッチから1スロットピッチ異なる9スロットピッチに設定されている。図20に示す比較形態の移動単位量は、毎極スロット数(7.5)の直近の整数である7スロットピッチから1スロットピッチ異なる6スロットピッチに設定されている。このように、移動単位量の候補として、毎極スロット数(7.5)との差が同じ二つの整数(この場合、9スロットピッチまたは6スロットピッチ)がある場合、移動単位量は、二つの整数のうちのいずれであっても良く、振動および騒音の低減に関しては、同等の効果が得られる。但し、移動単位量と毎極スロット数(7.5)との差が大きくなる程、回転電機10の出力トルクは、目減りする。
<第六実施形態>
本実施形態は、移動単位量が1スロットピッチである点で第一実施形態と異なる。本実施形態では、第一実施形態と異なる点を中心に説明されている。
図21に示すように、固定子巻線22は、複数(2つ)の基本コイル50を備えている。複数(2つ)の基本コイル50の各々は、既述した基本コイル50と同一構成である。また、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、一つの第二基本コイル52とを備えている。本実施形態においても、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本実施形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第四層L4の四層に形成されている。
本実施形態では、移動単位量は、1スロットピッチに設定されている。また、所定スロットピッチは、移動単位量である1スロットピッチの1倍(1スロットピッチ(1sp))に設定されている。このように、本実施形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1である。また、第一数列は、移動単位量である1スロットピッチの1倍(1スロットピッチ(1sp))を含んでいる。
例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、一つの第二基本コイル52では、位置座標PPが1、2および3の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯41についても同様に言える。また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが0、1、2および3の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC91は、例えば、下記数33から算出することができ、コイルサイド中心CC91は、1.3になる。
(数33)
CC91=(0×2+1×4+2×3+3×1)/(2+4+3+1)=1.3
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが7、8、9および10の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC92は、例えば、下記数34から算出することができ、コイルサイド中心CC92は、8.7になる。
(数34)
CC92=(7×1+8×3+9×4+10×2)/(1+3+4+2)=8.7
また、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが15、16、17および18の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC93は、例えば、下記数35から算出することができ、コイルサイド中心CC93は、16.3になる。
(数35)
CC93=(15×2+16×4+17×3+18×1)/(2+4+3+1)
=16.3
さらに、U相の混成一相帯42は、例えば、位置座標PPが22、23、24および25の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。さらに、上記の混成一相帯42のコイルサイド中心CC94は、例えば、下記数36から算出することができ、コイルサイド中心CC94は、23.7になる。
(数36)
CC94=(22×1+23×3+24×4+25×2)/(1+3+4+2)
=23.7
上述した算出結果から、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC91とコイルサイド中心CC92との間の距離は、7.4(=8.7−1.3)になる。また、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC92とコイルサイド中心CC93との間の距離は、7.6(=16.3−8.7)になる。さらに、U相の混成一相帯42のコイルサイド中心CC93とコイルサイド中心CC94との間の距離は、7.4(=23.7−16.3)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.4および7.6が交互に繰り返される。そのため、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等にはならず、一磁極対毎に均等になる。なお、本実施形態の隣接コイルサイド比は、0.97(=7.4/7.6)である。
図22は、本実施形態のコイルサイド分布の一例を示している。図21に示すように、例えば、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図21に示すように、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。同様に、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。さらに、位置座標PPが3のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが3におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。また、位置座標PPが10のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが10におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。
本実施形態では、U相の混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも10個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。しかしながら、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、7.4および7.6が交互に繰り返されるので、起磁力分布は、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎に隔極で等価になる。つまり、参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)と同様に、本実施形態の回転電機10は、二種類の起磁力分布を備えている。そのため、本実施形態の回転電機10は、固定子巻線22の相配置に起因する回転電機10の騒音および振動を低減できないとも思われる。
しかしながら、本実施形態では、例えば、位置座標PPが0、1、2および3の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが7、8、9および10の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。また、位置座標PPが0、1、2および3の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。位置座標PPが7、8、9および10の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯42の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。
このように、本実施形態の実効コイルサイド分布幅(4.5スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル50を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。その結果、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力分布は、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に分散され、本実施形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。よって、固定子20と可動子30との間の吸引力分布も、なだらかになり、吸引力のピーク値(吸引力分布における基本波成分の振幅)および吸引力の変化量は、参考形態と比べて低減する。また、吸引力のピーク値が最大になる位置の可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))におけるピッチも等ピッチ化される。つまり、本実施形態の回転電機10は、参考形態と比べて、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。また、固定子20と可動子30との間の空隙に発生する磁束波形は、参考形態と比べて、正弦波に近づくので、本実施形態の回転電機10は、参考形態と比べて、起磁力の高調波成分(例えば、五次および七次の成分)を低減することもできる。上述したことは、図22に示す本実施形態のコイルサイド分布と、図5Aに示す参考形態のコイルサイド分布とからも言える。また、第二実施形態、第三実施形態および第四実施形態のいずれの形態においても、移動単位量は、1スロットピッチにすることができる。
なお、本実施形態では、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が揃っている。そのため、本実施形態は、既述した形態のように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要はない。また、本実施形態は、相間の境界について単純化(境界の凹凸の最小化)が実現しているので、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aの当該スロット21c内の配置を変更する必要もない。
また、例えば、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41は、2.5スロット分を占有している。第一実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル51の当該一相帯41に対して、第一方向(矢印X方向)に1スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル52のU相の一相帯41は、位置座標PPが1、2および3の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。つまり、本実施形態においても、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。なお、上述したことは、他の一相帯41についても同様に言える。
<各実施形態の関係>
図23Aは、第二基本コイル52の第一方向(矢印X方向)の移動量の関係の一例を示している。同図に示す位置P10は、第一基本コイル51において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。位置P11は、位置P10から、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に7スロットピッチ(7sp)分、移動した位置を示している。位置P12は、位置P10から、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に14スロットピッチ(14sp)分、移動した位置を示している。位置P13は、位置P10から、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に21スロットピッチ(21sp)分、移動した位置を示している。
位置P11〜位置P13は、移動単位量を7スロットピッチとするときの所定スロットピッチを示しているとも言える。位置P11の場合、所定スロットピッチを規定するnは、1である。位置P12の場合、所定スロットピッチを規定するnは、2である。位置P13の場合、所定スロットピッチを規定するnは、3である。
既述したように、第一実施形態では、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、一つの第二基本コイル52とを備えている。構成EB1は、第一実施形態の複数(2つ)の基本コイル50の構成を模式的に示している。この場合、位置P11は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。
第二実施形態では、複数(3つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、複数(2つ)の第二基本コイル52とを備えている。構成EB2は、第二実施形態の複数(3つ)の基本コイル50の構成を模式的に示している。この場合、位置P11は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。また、位置P12は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。
第三実施形態では、複数(4つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、複数(3つ)の第二基本コイル52とを備えている。構成EB3は、第三実施形態の複数(4つ)の基本コイル50の構成を模式的に示している。この場合、位置P11は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。また、位置P12は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。さらに、位置P13は、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが21、22および23の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。
第四実施形態では、複数(4つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、複数(3つ)の第二基本コイル52とを備えている。構成EB4は、第四実施形態の複数(4つ)の基本コイル50の構成を模式的に示している。この場合、2つの位置P11のうちの一方は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。また、2つの位置P11のうちの他方は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。さらに、位置P12は、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。
構成EB1では、少なくとも一つの第二基本コイル52の各々の所定スロットピッチを列挙した数列である第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))を含んでいる。また、構成EB2では、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から2倍(14スロットピッチ(14sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。さらに、構成EB3では、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から3倍(21スロットピッチ(21sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。また、構成EB4では、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から2倍(14スロットピッチ(14sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。
このように、構成EB1〜構成EB4のいずれにおいても、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))からn倍(7×nスロットピッチ(7×nsp))までのすべての自然数倍を含んでいる。よって、構成EB1〜構成EB4は、起磁力の毎極の均等化が容易である。
図23Bは、第二基本コイル52の第一方向(矢印X方向)の移動量の関係の他の一例を示している。位置P10および位置P11、並びに、構成EB1は、既述したとおりである。位置P21は、位置P10から、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に8スロットピッチ(8sp)分、移動した位置を示している。位置P22は、位置P10から、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に1スロットピッチ(1sp)分、移動した位置を示している。位置P23は、位置P10から、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に14スロットピッチ(14sp)分、移動した位置を示している。
既述した実施形態は、1/2系列の回転電機10であり、固定子巻線22の相配置は、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極対毎に繰り返されている。そのため、位置座標PPが0の位置は、位置座標PPが15の位置と等価になる。よって、位置P11は、位置座標PPが15の位置(等価位置)から、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に8スロットピッチ(8sp)分、移動した位置を示しているとも言える。位置P21は、位置座標PPが15の位置(等価位置)から、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に7スロットピッチ(7sp)分、移動した位置を示しているとも言える。位置P22は、位置座標PPが15の位置(等価位置)から、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に14スロットピッチ(14sp)分、移動した位置を示しているとも言える。位置P23は、位置座標PPが15の位置(等価位置)から、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に1スロットピッチ(1sp)分、移動した位置を示しているとも言える。
既述したように、第五実施形態では、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、一つの第二基本コイル52とを備えている。構成EB5は、第五実施形態の複数(2つ)の基本コイル50の構成を模式的に示している。この場合、位置P21は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが8、9および10の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。つまり、位置P21は、移動単位量を8スロットピッチとするときの所定スロットピッチを示しており、所定スロットピッチを規定するnは、1である。
ここで、第一実施形態において、一つの第二基本コイル52を、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に移動した形態を想定する。この場合、位置P21は、移動単位量を7スロットピッチとするときの所定スロットピッチを示しており、所定スロットピッチを規定するnは、1である。
逆に、第五実施形態において、一つの第二基本コイル52を、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に移動した形態を想定する。この場合、位置P11は、移動単位量を8スロットピッチとするときの所定スロットピッチを示しており、所定スロットピッチを規定するnは、1である。このように、構成EB1および構成EB5のうちの一方の構成から、構成EB1および構成EB5のうちの他方の構成を規定することができ、構成EB1および構成EB5は、実質等価である。上述したことは、図5Bに示す第一実施形態のコイルサイド分布と、図16に示す第五実施形態のコイルサイド分布からも分かる。
また、第六実施形態では、複数(2つ)の基本コイル50は、第一基本コイル51と、一つの第二基本コイル52とを備えている。構成EB6は、第六実施形態の複数(2つ)の基本コイル50の構成を模式的に示している。この場合、位置P22は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが1、2および3の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。つまり、位置P22は、移動単位量を1スロットピッチとするときの所定スロットピッチを示しており、所定スロットピッチを規定するnは、1である。
ここで、第一実施形態において、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの2倍(14スロットピッチ(14sp))に設定されている形態を想定する。構成EB7は、想定した上記形態の構成を模式的に示している。この場合、位置P23は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル52において、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯41の第一方向(矢印X方向)の位置を代表している。つまり、位置P23は、移動単位量を7スロットピッチとするときの所定スロットピッチを示しており、所定スロットピッチを規定するnは、2である。
逆に、第六実施形態において、一つの第二基本コイル52を、第一基本コイル51に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に移動した形態を想定する。この場合、位置P23は、移動単位量を1スロットピッチとするときの所定スロットピッチを示しており、所定スロットピッチを規定するnは、1である。このように、構成EB6および構成EB7のうちの一方の構成から、構成EB6および構成EB7のうちの他方の構成を規定することができ、構成EB6および構成EB7は、実質等価である。
なお、1/2系列の回転電機10では、毎極スロット数(既述した形態では、7.5)と、毎極スロット数の直近の整数(既述した形態では、7スロットピッチまたは8スロットピッチ)との差は、0.5である。すなわち、毎極スロット数の直近の整数(7スロットピッチまたは8スロットピッチ)を移動単位量とすると、当該移動単位量は、電磁気的に実質等価な位置(電気角で180°移動した位置)から0.5スロットピッチ分、離れた位置に、第二基本コイル52を移動させる移動単位量に相当する。毎極スロット数の直近の整数の二倍(14スロットピッチまたは16スロットピッチ)を移動単位量とすると、当該移動単位量は、電磁気的に実質等価な位置(電気角で180°移動した位置)から1スロットピッチ分、離れた位置に、第二基本コイル52を移動させる移動単位量に相当する。このことからも、構成EB6および構成EB7が実質等価であることが分かる。
<効果の一例>
様相1に係る回転電機10は、毎極毎相スロット数が整数でない分数スロット構成の回転電機である。可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に連続して隣り合う複数のスロット21cに収容されている同相の電流方向が同じ複数のコイルサイド22aの集合を一相帯41とする。固定子巻線22は、一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが、複数の可動子磁極32の毎極において均等である複数の基本コイル50を備える。また、複数の基本コイル50は、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))における毎極の一相帯41の配置に関して基準になる第一基本コイル51と、第一基本コイル51に対して、可動子の移動方向(第一方向(矢印X方向))における毎極の一相帯41の配置が異なる少なくとも一つの第二基本コイル52と、を備える。さらに、第一基本コイル51の一の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aと、少なくとも一つの第二基本コイル52の各々の一の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aと、が混成されて新しく形成される一相帯41を混成一相帯42とする。固定子巻線22は、混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが複数の可動子磁極32の毎極において均等になるように、複数の基本コイル50が混成されている。
様相1に係る回転電機10によれば、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさ及び起磁力分布の毎極の均等性が増す。その結果、可動子30の磁極数と比べて低次の空間変形モードの起振力が低減される。よって、様相1に係る回転電機10は、固定子20の固有振動数の低下を抑制することができ、固定子巻線22の相配置に起因する騒音および振動を低減することができる。
様相2に係る回転電機10は、様相1に係る回転電機10において、少なくとも一つの第二基本コイル52が、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。
様相2に係る回転電機10によれば、少なくとも一つの第二基本コイル52は、第一基本コイル51に対して、可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されているので、複数の基本コイル50の混成が容易である。
様相3に係る回転電機10は、様相2に係る回転電機10において、毎極スロット数の直近の整数または1スロットピッチを移動単位量とするとき、所定スロットピッチが、移動単位量のn倍(但し、nは1以上の自然数)で表される。
様相3に係る回転電機10によれば、実効コイルサイド分布幅の過大な増加(換言すれば、コイルサイド分布の過大な広範化)を抑制することができる。そのため、様相3に係る回転電機10は、出力トルクの目減りを抑制することができる。特に、毎極スロット数の直近の整数を移動単位量とするとき、上述した効果は、顕著である。
様相4に係る回転電機10は、様相3に係る回転電機10において、少なくとも一つの第二基本コイル52の各々の所定スロットピッチを列挙した数列である第一数列が、移動単位量の1倍からn倍までのすべての自然数倍を含む。
様相4に係る回転電機10によれば、第一数列は、移動単位量の1倍からn倍までのすべての自然数倍を含むので、起磁力の毎極の均等化が容易である。
様相5に係る回転電機10は、様相4に係る回転電機10において、移動単位量が毎極スロット数の直近の整数スロットピッチである。また、混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aの配置および当該複数のコイルサイド22aの可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))における位置の両方を加味して算出される混成一相帯42の中心を混成一相帯42のコイルサイド中心CCとする。可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))において隣接する混成一相帯42のコイルサイド中心CC間の距離は、複数の可動子磁極32の毎極において均等である。
様相5に係る回転電機10によれば、起磁力分布は、複数の可動子磁極32の毎極において等価になる。そのため、様相5に係る回転電機10は、固定子巻線22の相配置に起因する騒音および振動の低減効果が向上する。
様相6に係る回転電機10は、様相2〜様相5のいずれか一つの様相に係る回転電機10において、第一基本コイル51の一の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aの直列換算導体数を第一コイルサイド導体数とする。また、第一基本コイル51の一の一相帯41に対して可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている少なくとも一つの第二基本コイル52の各々の一の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aの直列換算導体数を第二コイルサイド導体数とする。第一コイルサイド導体数、および、少なくとも一つの第二コイルサイド導体数の各々は、いずれも均等である。
様相6に係る回転電機10によれば、混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさを、複数の可動子磁極32の毎極において均等化することが容易である。
様相7に係る回転電機10は、様相2〜様相5のいずれか一つの様相に係る回転電機10において、第一基本コイル51の一の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aの直列換算導体数を第一コイルサイド導体数とする。また、第一基本コイル51の一の一相帯41に対して可動子30の移動方向(第一方向(矢印X方向))に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている少なくとも一つの第二基本コイル52の各々の一の一相帯41を構成する複数のコイルサイド22aの直列換算導体数を第二コイルサイド導体数とする。さらに、第一コイルサイド導体数と、所定スロットピッチが小さいものから順に所定スロットピッチ毎に列挙された少なくとも一つの第二コイルサイド導体数と、からなるコイルサイド導体数を列挙した要素数がm個(但し、mは3以上の自然数)の数列を第二数列とする。第二数列は、k番目(但し、kはm/2以下の自然数)の要素のコイルサイド導体数と、(m−k+1)番目の要素のコイルサイド導体数と、が同一である。
様相7に係る回転電機10によれば、混成一相帯42を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさを、複数の可動子磁極32の毎極において均等化することが容易である。
様相8に係る回転電機10は、様相7に係る回転電機10において、第二数列は、1番目の要素からj番目(但し、jはm/2であり、m/2が自然数でないときには小数点以下を切り上げた自然数)の要素にかけて、コイルサイド導体数が増加しており、j番目の要素からm番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が減少している。
様相8に係る回転電機10によれば、固定子20と可動子30との間の空隙に発生する磁束波形を正弦波に近づけることができ、起磁力の高調波成分を低減することができる。
様相9に係る回転電機10は、様相8に係る回転電機10において、mは3である。また、第二数列は、2番目の要素のコイルサイド導体数が、1番目の要素のコイルサイド導体数および3番目の要素のコイルサイド導体数と比べて、二倍に設定されている。
様相9に係る回転電機10によれば、三つの基本コイル50が、第一基本コイル51と、所定スロットピッチが異なる二つの第二基本コイル52とを備える形態において、固定子20と可動子30との間の空隙に発生する磁束波形を正弦波に近づけることができ、起磁力の高調波成分を低減することができる。
<その他>
本実施形態は、上記した形態および図面に示した形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、固定子巻線22は、5つ以上の基本コイル50を備えることもでき、基本コイル50の数は、限定されない。また、固定子巻線22は、複数の第一基本コイル51を備えることもできる。さらに、固定子20のスロット数および可動子30の磁極数は、限定されない。
なお、既述の実施形態では、可動子30は、固定子20の内方に設けられている(インナーロータ型の回転電機)。しかしながら、可動子30は、固定子20の外方に設けることもできる(アウターロータ型の回転電機)。また、回転電機10は、固定子20および可動子30が同軸に配されるラジアル空隙型またはアキシャル空隙型の回転電機に限定されるものではない。回転電機10は、固定子20および可動子30が直線上に配され、可動子30が固定子20に対して直線上に移動するリニア電動機またはリニア発電機に適用することもできる。さらに、回転電機10は、分数スロット構成の種々の回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用電動機、発電機、産業用または家庭用の電動機、発電機などに用いることができる。