JP6088926B2 - 構造物改築方法 - Google Patents

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本発明は、構造物改築方法に関する。詳しくは、既存構造物を改築する構造物改築方法に関する。
従来より、高層建築では、設備や躯体の老朽化を理由として、建築物を解体し、新たに建築物を構築する建て替えが行われる場合がある。
建築物を解体する方法として、例えば、最上階にハットトラスからなる仮設屋根を設けて、この仮設屋根に囲まれた空間を解体作業スペースとし、この解体作業スペースで解体作業を行うことにより、粉塵や騒音を防止する手法が提案されている。
特許第3218519号公報
しかしながら、従来の手法では、既存の建築物の解体が完了した後、新たに建築物を構築するため、工期が長期化し、コストが高くなる、という問題があった。
また、既存の建築物を完全に解体するため、膨大な解体材が発生し、環境に大きな負荷がかかる、という問題があった。
本発明は、環境にかかる負荷を軽減しつつ、改築にかかるコストを低減できる構造物改築方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の構造物改築方法は、既存構造物(例えば、後述の既存建物1)を改築する構造物改築方法であって、前記既存構造物の外周を覆う仮設壁(例えば、後述の外周足場20)を、前記既存構造物の屋上階床レベルの下側に架設して、当該仮設壁で囲まれた改築作業スペース(例えば、後述の改築作業スペース30)を形成する初期工程(例えば、後述のステップS1)と、当該改築作業スペース内で、少なくとも既存柱(例えば、後述の既存柱11)および既存大梁(例えば、後述の既存大梁12)を再利用構造体(例えば、後述の再利用構造体40)とし、当該再利用構造体を除いて当該既存構造物を解体するとともに、前記再利用構造体を補強しつつ、新設構造物を新たに構築する改築工程(例えば、後述のステップS2〜S4)と、前記仮設壁を下方に移動することで、前記改築作業スペースを下方に形成して、当該改築作業スペース内で前記改築工程を繰り返す繰り返し工程(例えば、後述のステップS5〜S7)と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、以下の手順で、構造物を改築する。
まず、既存構造物の外周を覆う仮設壁を、既存構造物の屋上階床レベルの下側に架設して、この仮設壁で囲まれた改築作業スペースを形成する。
次に、改築作業スペース内で、少なくとも既存柱および既存大梁を再利用構造体とし、この再利用構造体を除いて既存構造物を解体するとともに、再利用構造体を補強しつつ、新設構造物を新たに構築する。
次に、仮設壁を下方に移動し、改築作業スペースを下方に形成して、上述の改築作業を繰り返す。
このように、同一階において、既存構造物を解体すると同時に、この既存構造物の一部を利用して新たな構造物を構築する。このとき、既存構造物を囲んで仮設壁を設けて、この仮設壁を利用して外壁部分の作業を行う。
したがって、仮設壁を設けるだけで改築作業スペースを構築できるので、少量の仮設材で改築作業スペースを構築でき、低コストである。
また、既存構造物を解体しつつ新設構造物を構築するので、従来のように既存構造物の解体が完了した後に新設構造物を構築する場合に比べて、短工期で改築できるうえに、改築にかかるコストを低減できる。
また、改築作業スペースを仮設壁で囲んだので、既存構造物の解体時に、粉塵が周囲に飛散するのを防止できるうえに、騒音を低減でき、さらには、解体材の落下も防止できる。よって、周辺環境に与える負荷を少なくできる。
また、既存構造物の一部を再利用して新設構造物を構築したので、解体材を減量でき、環境にかかる負荷を軽減できる。
また、既存構造物の高層部を解体する場合、タワークレーンやジブクレーンを利用すると、風の影響により作業効率が低下するが、仮設壁により風の影響を受けないので、効率よく既存構造物を解体できる。
請求項に記載の構造物改築方法は、前記改築工程の前に、前記既存構造物の屋上階から所定階までを解体して、当該既存構造物の建物高さを低くする解体工程をさらに備えることを特徴とする。
この発明によれば、改築工程の前に、既存構造物を所定階まで解体するので、新設構造物の建物高さを既存構造物よりも低くできる。
請求項に記載の構造物改築方法は、前記改築工程では、前記再利用構造体を補強する手段として、前記既存構造物の既存柱の周囲に補強柱を増設する、または、前記既存構造物の既存柱に免震装置を組み込む、ことを特徴とする。
この発明によれば、再利用構造体を補強する手段として、既存構造物の既存柱の周囲に補強柱を増設した場合には、既存柱が補強柱で補強されることで、新設構造物の柱の強度を増大できる。また、既存構造物の既存柱に免震装置を組み込んだ場合には、改築後の既存構造物を含む新設構造物を容易に免震化できる。
請求項に記載の構造物改築方法は、前記仮設壁は、前記既存構造物の外周に設けられた仮設床(例えば、後述の仮設床21)と、当該仮設床上に設けられた仮設足場(例えば、後述の仮設足場22)と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、仮設床と仮設足場とを含んで仮設壁を構成したので、現在の仮設床の下方に新たに仮設床を構築して、この新たな仮設床に仮設足場を盛り替えるだけで、仮設壁を容易に下方に移動できる。
本発明によれば、仮設壁を設けるだけで改築作業スペースを構築できるので、少量の仮設材で改築作業スペースを構築でき、低コストである。また、既存構造物を解体しつつ新設構造物を構築するので、従来のように既存構造物の解体が完了した後に新設構造物を構築する場合に比べて、短工期で改築できるうえに、改築にかかるコストを低減できる。また、改築作業スペースを仮設壁で囲んだので、既存構造物の解体時に、粉塵が周囲に飛散するのを防止できるうえに、騒音を低減でき、さらには、解体材の落下も防止できる。よって、周辺環境に与える負荷を少なくできる。また、既存構造物の一部を再利用して新設構造物を構築したので、解体材を減量でき、環境にかかる負荷を軽減できる。また、既存構造物の高層部を解体する場合、タワークレーンやジブクレーンを利用すると、風の影響により作業効率が低下するが、仮設壁により風の影響を受けないので、効率よく既存構造物を解体できる。
本発明の一実施形態に係る構造物改築方法が適用される既存構造物の断面図である。 前記実施形態に係る構造物改築方法により既存構造物を改築する手順のフローチャートである。 前記実施形態に係る構造物改築方法により既存構造物を改築する手順を説明するための図(その1)である。 前記実施形態に係る構造物改築方法により既存構造物を改築する手順を説明するための図(その2)である。 前記実施形態に係る構造物改築方法により既存構造物を改築する手順を説明するための図(その3)である。 前記実施形態に係る構造物改築方法により既存構造物を改築する手順を説明するための図(その4)である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る構造物改築方法が適用される既存構造物としての既存建物1の断面図である。
既存建物1は、m(mは自然数)階建ての高層建物である。この既存建物1は、骨組みつまり構造体として、複数本の既存柱11と、これら既存柱11同士を連結する複数の既存大梁12と、を備える。また、この既存建物1は、非構造体として、既存床スラブ13、既存外壁14、既存間仕切壁15などを備える。つまり、本実施形態では、構造体を、建物の骨組みを構成する柱および大梁とした。
本発明の構造物改築方法は、この既存建物1を改築するものである。具体的には、既存建物1を改築して、新設構造物としての新設建物2を構築するものである。
以下、既存建物1を改築する手順について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、図3に示すように、既存建物1の外周を覆う仮設壁としての外周足場20を、既存建物1の屋上階床レベルから下方に2層分の高さで架設する。具体的には、既存建物1の(m―1)階の床レベルの外周に既存外壁14から外側に突出する仮設床21を設けて、この仮設床21上に2層分の高さの枠組足場からなる仮設足場22を設ける。これにより、この外周足場20で囲まれた空間を改築作業スペース30として形成する。
ステップS2では、図3に示すように、改築作業スペース30内で、既存建物1を一部の構造体を除いて解体する。
具体的には、まず、少なくとも既存建物1を再利用するために必要な構造体、ここでは既存柱11および既存大梁12を、再利用構造体40とする。
そして、この再利用構造体40を除く部分、つまり、m階の既存床スラブ13、既存外壁14、既存間仕切壁15、既存の設備機器などを解体する。
なお、解体作業では、既存建物1の内部または外周部に図示しない搬出口を設け、走行クレーン等を利用して、この搬出口に解体材を移動し、図示しないホイストで下階に搬出する。下階に搬出した解体材は、リサイクル可能な材料と産業廃棄物との仕分けを行って、場外に搬出する。
ステップS3では、図4に示すように、改築作業スペース30内で、再利用構造体40を補強する。具体的には、所定の既存柱11の周囲に補強柱50を増設する。
また、所定の既存柱11の柱脚部あるいは柱頭部に免震装置を介装して、地震時に建物上部に作用する水平荷重を低減させてもよい。また、図示しないが、補強フレームや補強梁を設けてもよい。
ステップS4では、図4に示すように、改築作業スペース30内で、新設建物2の構造体あるいは非構造体を構築する。
具体的には、改築作業スペース30内で、新設外壁51、新設床スラブ52、および新設間仕切壁53を構築したり、図示しない新たな設備機器を設置したりする。
ステップS5では、既存建物1の内部に設けた図示しないクレーンを用いて、図5に示すように、外周足場20を2層分だけ下方に移動することで、改築作業スペース30を2層だけ下方に形成する。すなわち、(m―3)階に新たな仮設床21を設けて、その後、仮設足場22を下方に移動してこの新たな仮設床21上に載置する。
ステップS6では、以上のステップS2〜S4を行う。すなわち、図5に示すように、改築作業スペース30内で、既存建物1の一部の構造体つまり再利用構造体40を除いて解体する。その後、図6に示すように、再利用構造体40を補強するとともに、新設建物2の構造体あるいは非構造体を新設する。
ステップS7では、以上のステップS5、S6を1セットとして繰り返して、上階から下階に向かって改築作業を行う。
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)同一階において、既存建物1を解体すると同時に、この既存建物1の一部を利用して新設建物2を構築する。このとき、既存建物1を囲んで外周足場20を設けて、この外周足場20を利用して外壁部分の作業を行う。
したがって、外周足場20を設けるだけで改築作業スペース30を構築できるので、少量の仮設材で改築作業スペース30を構築でき、低コストである。
また、既存建物1を解体しつつ新設建物2を構築するので、従来のように既存建物の解体が完了した後に新設建物を構築する場合に比べて、短工期で改築できるうえに、改築にかかるコストを低減できる。
また、改築作業スペース30を外周足場20で囲んだので、既存建物1の解体時に、粉塵が周囲に飛散するのを防止できるうえに、騒音を低減でき、さらには、解体材の落下も防止できる。よって、周辺環境に与える負荷を少なくできる。
また、既存建物1の一部を再利用して新設建物2を構築したので、解体材を減量でき、環境にかかる負荷を軽減できる。
また、既存建物1の高層部を解体する場合、タワークレーンやジブクレーンを利用すると、風の影響により作業効率が低下するが、外周足場20により風の影響を受けないので、効率よく既存建物1を解体できる。
(2)再利用構造体40を補強する手段として、既存建物1の既存床スラブ13を撤去したので、既存建物1の建物上部の重量を軽減して、地震時に新設建物2に加わる水平荷重(建物上部の重量に対する慣性力)を小さくできる。
また、既存建物1の既存柱11の周囲に補強柱50を増設したので、既存柱11が補強柱50で補強されることで、新設建物2の柱の強度を増大できる。
また、既存柱11に免震装置を組み込んだ場合には、改築後の既存建物1を含む新設建物2を容易に免震化できる。
(3)仮設床21と仮設足場22とを含んで外周足場20を構成したので、現在の仮設床21の下方に新たに仮設床21を構築して、この新たな仮設床21に仮設足場を盛り替えるだけで、外周足場20を容易に下方に移動できる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、ステップS2の前に、既存建物1の屋上階から所定階までを完全に解体して、この既存建物1の建物高さを低くするステップを設けてもよい。例えば、このステップでは、外周足場20を下方に移動させながら、改築作業スペース30内で、この再利用構造体40を残すことなく既存建物1を所定階まで完全に解体する。このようにすれば、ステップS2の前に既存建物1を所定階まで解体するので、新設建物の建物高さを既存建物1よりも低くできる。
また、既存床スラブ13を撤去して階高を変更する場合、既存床スラブ13の直下階にこの既存床スラブ13を支持するサポート、ジャッキ、受材などの支持手段を設け、その後、既存大梁12と既存床スラブ13との接合部分を切断して、既存床スラブ13を解体してもよい。さらに、既存大梁12も撤去可能な場合、既存大梁12と既存床スラブ13とを同時に解体してもよい。
1…既存建物(既存構造物)
2…新設建物(新設構造物)
11…既存柱
12…既存大梁
13…既存床スラブ
14…既存外壁
15…既存間仕切壁
20…外周足場(仮設壁)
21…仮設床
22…仮設足場
30…改築作業スペース
40…再利用構造体
50…補強柱
51…新設外壁
52…新設床スラブ
53…新設間仕切壁

Claims (3)

  1. 既存構造物を改築する構造物改築方法であって、
    前記既存構造物の外周を覆う仮設壁を、前記既存構造物の屋上階床レベルの下側に架設して、当該仮設壁で囲まれた改築作業スペースを形成する初期工程と、
    前記既存構造物の屋上階から所定階までを解体して、当該既存構造物の建物高さを低くする解体工程と、
    前記改築作業スペース内で、少なくとも既存柱および既存大梁を再利用構造体とし、当該再利用構造体を除いて当該既存構造物を解体するとともに、前記再利用構造体を補強しつつ、新設構造物を新たに構築する改築工程と、
    前記仮設壁を下方に移動することで、前記改築作業スペースを下方に形成して、当該改築作業スペース内で前記改築工程を繰り返す繰り返し工程と、を備えることを特徴とする構造物改築方法。
  2. 前記改築工程では、前記再利用構造体を補強する手段として、前記既存構造物の既存柱の周囲に補強柱を増設する、または、前記既存構造物の既存柱に免震装置を組み込む、ことを特徴とする請求項1に記載の構造物改築方法。
  3. 前記仮設壁は、前記既存構造物の外周に設けられた仮設床と、当該仮設床上に設けられた仮設足場と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の構造物改築方法。
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