JP6088766B2 - コンクリート構造物の防食保護面の金物取付構造及び方法 - Google Patents
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Description
例えば、下水処理施設のマンホールがコンクリート構造物の場合、マンホールが接続される下水道に糞尿、洗剤、工業廃水等が流されており、これらの廃水から発生する硫化水素が微生物作用により硫酸となり、これによりマンホールの内壁面(コンクリート面)が腐食する。
そこで、このようなマンホールのコンクリート面を腐食から保護するために、一般に、コンクリート面を高密度ポリエチレンシート等の合成樹脂材(A)からなる防食シートで被覆することが行われている。かかる防食工法が例えば非特許文献1に示されている。
例えば、マンホールの内壁面には作業員等がマンホール内を昇降するために用いるステップ(足掛金物)が設置される。この場合、ステップはコ字形の金属製の芯材に合成樹脂材(B)からなる防食カバーを被覆したもので、心材の両端の所定の範囲がそれぞれマンホールの内壁面に固定される取付部でこの取付部にねじが切られており、これらの取付部間でコ字形に連続する中間部がマンホールの内壁面上に突出されるステップ本体になり、このステップ本体の外周面に既述の防食カバーが被覆される。このステップをマンホールの内壁面の防食シートで被覆された防食保護面に取り付ける場合、防食保護面の防食シートを貫通して躯体コンクリートに穴を開け、この穴に金物の取付部を薬剤(接着剤)を介して挿入し固着する。そして、防食保護面の防食シートとステップとの隙間をエポキシ樹脂等のパテで埋めて、腐食性物質の浸入を防ぎ躯体コンクリートの腐食を防止する。この種のマンホール用ステップが例えば特許文献1などに開示されている。
この場合、ナットを防食保護面に対して熱溶着又は超音波溶着に適合する前記防食保護面の合成樹脂材と同じ又は異なる合成樹脂材により形成又は被覆し、前記ナットを前記防食保護面に熱溶着又は超音波溶着により融着することが好ましい。
また、ナットを防食保護面に対して所定の接着剤による接着に適合する前記防食保護面の合成樹脂材と同じ又は異なる合成樹脂材により形成又は被覆し、前記ナットを前記防食保護面に前記所定の接着剤を介して接着してもよい。
また、この場合、ナットと金物のねじ部との間にシール材を介在し、前記ナットと前記ねじ部との隙間を水密にシールすることが好ましい。
なお、各実施の形態では、コンクリート構造物として下水処理施設のマンホールを例示し、金物としてステップ(足掛金物)を例示する。この場合、図1に示すように、マンホール2の内壁面(コンクリート面)は合成樹脂材(A)、この場合、高密度ポリエチレンからなる防食シート21で被覆され、コンクリート面を腐食から保護している。また、図3に示すように、ステップ1はコ字形の金属製の芯材に合成樹脂材(B)を被覆したもので、両端の所定の範囲がそれぞれマンホール2の内壁面に固定される取付部11でこの取付部11にねじが切られており、これら取付部11間でコ字形に連続する中間部がマンホール2の内壁面上に突出されるステップ本体12でこのステップ本体12の外周面に合成樹脂材(B)からなる防食カバー13が被覆されている。
まず、図1から図5を用いて第1の実施の形態について説明する。
図1にこのコンクリート構造物の防食保護面の金物取付構造を示している。図1に示すように、この取付構造では、従来と同様に、マンホール2の合成樹脂材(A)からなる防食シート21で防食被覆された防食保護面201に、防食保護面201の合成樹脂材(A)を貫通して躯体コンクリート20にステップ固定用の穴22を穿設され、この穴22にステップ1の取付部11が接着剤23を介して挿入固着されて、ステップ1が取り付けられる。
そして、この取付構造では、特に、ステップ1の取付部11に連続しステップ1の取付状態で防食保護面201から突出する取付部11に近接する位置に当該近接位置を被覆する合成樹脂材(B)からなる防食カバー13にねじを切られて形成されるねじ部131と、このねじ部131に螺合され、防食保護面201とステップ1との間の隙間を遮蔽可能な大きさ及び形状を有する、合成樹脂材(A)からなる又は合成樹脂材(A)を被覆されてなるナット14とを備え、防食保護面201に固定されたステップ1のナット14が防食保護面201に接触され、ナット14及び防食保護面201の接触面間が融着により、水密に接合される。
このステップ1の取付構造により、ステップ1のねじ部131のナット14が防食保護面201に対して十分に密着して接合され、このナット14により、防食保護面201とこれに設置するステップ1との隙間が水密に塞がれる。
図2に示すように、この取付方法では、まず、ステップ1の事前準備を行ってから、このステップ1の取付施工を行う。
図2において、ステップ1の加工では、ステップ1の取付部11に連続しステップ1の取付状態で防食保護面201から突出する取付部11に近接する位置に当該近接位置を被覆する合成樹脂材(B)にねじを切ってねじ部131を形成する。この場合、図3に示すように、ステップ1には金属製の心材の両端の取付部11間のコ字形に連続する中間部でマンホール2の内壁面上に突出されるステップ本体12に合成樹脂材(B)からなる防食カバー13が被覆されているので、この防食カバー13の両端から長さ5cm程度にこの防食カバー13の外形寸法が山になるようにねじを切る。
ナット14の製作では、ステップ1のねじ部131に螺合し、防食保護面201とステップ1との間の隙間を遮蔽可能な大きさ及び形状を有する、合成樹脂材からなる又は合成樹脂材を被覆されてなるナット14を製作する。
この場合、防食保護面201の合成樹脂材(A)からなる防食シート21は熱可塑性樹脂であり、ナット14を防食保護面201に対して熱溶着又は超音波溶着するのに適する防食保護面201の合成樹脂材(A)と同じ合成樹脂材(A)により形成する。また、この場合、図4に示すように、ナット14を略円形とし、その外周面の相互に対向する面を平面状に形成してある。
なお、ここでは、ナット14を合成樹脂材(A)により製作するが、防食保護面201に対して熱溶着又は超音波溶着するのに適合する合成樹脂材であれば、ナット14を防食保護面201の合成樹脂材(A)と異なる合成樹脂材で形成してもよい。また、ナット14を他の材料で形成し、このナット14を合成樹脂材で被覆してもよい。ナット14を合成樹脂材で被覆する場合は、使用する合成樹脂材が防食保護面201に対して熱溶着又は超音波溶着するのに適合する合成樹脂材であれば、防食保護面201の合成樹脂材(A)と同じ又は異なる合成樹脂材のいずれでもよく、合成樹脂材をナットに一体的に被着すればよい。この場合、合成樹脂材をナット14全体に被覆してもよく、また、ナット14の少なくとも防食保護面201に対向する面等一部に被覆してもよい。
このようにしてステップ取付部11の近傍を加工してねじ部131を形成し、このねじ部131に螺合するナット14を防食保護面201の合成樹脂材(A)と同じ材料で製作して、ステップ1のねじ部131にナット14を螺合させて取り付ける。この場合、ステップ1のねじ部131にシールテープを巻き付ける等して、ナット14とステップ1のねじ部131との間にシール材を介在し、ナット14とねじ部131との隙間を水密にシールしておくことが好ましい。
次いで、この穴22にステップ固定用の接着剤23を添加して、この穴23にステップ取付部11を挿入し固着して、ステップ1を防食保護面201に取り付ける。なお、このステップ1の取り付けの際は、ステップ1のねじ部131上でナット14がステップ1の取付部11に対して進退可能になっているので、予め、ナット14をステップ1のねじ部131上でステップ1の取付部11に対して後退させてナット14と防食保護面201との間に隙間を設けておく。
そして、この接着剤23が固化し、ステップ1を防食保護面301に固定した後、ステップ1のねじ部131上でナット14を防食保護面201に向けて締め込み防食保護面201に接触させ、合成樹脂材(A)からなる防食保護面201とこの防食保護面201の合成樹脂材(A)と同じ合成樹脂材(A)からなるナット14の接触面間を融着させて一体化し、水密に接合する。
この場合、ナット14を防食保護面201に対して熱溶着又は超音波溶着により融着する。熱溶着の場合、特に図示していないが、ドライヤーや熱融着機等を用い、ナット14及び防食保護面201の接触面同士を熱融着させて接合する。超音波溶着の場合、図5に示すように、超音波発振器を用い、ナット14及び防食保護面201の接触面間を加振することにより、超音波振動でナット14及び防食保護面201の接触面に摩擦熱を発生させ、ナット14及び防食保護面201の接触面同士を融着させて接合する。
このようにしてステップ1をマンホール2の防食保護面201に取り付ける。
このステップ1の施工方法により、ステップ1のねじ部131のナット14が防食保護面201に対して十分に密着して接合され、このナット14により、防食保護面201とこれに設置するステップ1との隙間が水密に塞がれる。
次に、図1及び図2を参照しながら第2の実施の形態について説明する。
図1に示すように、第1の実施の形態の構造では、防食保護面201に固定されたステップ1のナット14が防食保護面201に接触され、ナット14及び防食保護面201の接触面間が融着により、水密に接合されるところ、第2の実施の形態の構造は、防食保護面201に固定されたステップ1のナット14が防食保護面201に接触され、ナット14及び防食保護面201の接触面間が接着剤を介して水密に接合される。
このようにしても防食保護面201とこれに設置するステップ1との隙間を、防食保護面に対してナット14を十分に密着させた状態で接合して水密に塞ぐことができ、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
ステップ1の事前準備は、ステップ1の一部を加工し、このステップ1に使用するナット14を製作する。この場合の、ステップ1の加工及びナット14の製作は、第1の実施の形態と同様で、既述のとおりである。
ステップ1の取付施工では、マンホール2の内壁面を合成樹脂材(A)からなる防食シート21で被覆した後、このマンホール2の防食シート21で防食被覆された内面に、この内面の防食シート21を貫通して躯体コンクリート20にステップ固定用の穴22を開ける。
次いで、この穴22にステップ固定用の接着剤23を添加して、この穴22にステップ1の取付部11を挿入し固着して、ステップ1を防食保護面201に取り付ける。なお、このステップ1の取り付けの際は、ステップ1のねじ部131上でナット14がステップ1の取付部11に対して進退可能になっているので、予め、ナット14をステップ1のねじ部131上でステップ1の取付部11に対して後退させてナット14と防食保護面201との間に隙間を設けておく。
そして、この接着剤が固化し、ステップ1を防食保護面201に固定した後、ステップ1のねじ部131上でナット14を防食保護面201に向けて締め込み防食保護面201に接触させ、合成樹脂材(A)からなる防食保護面201とこの防食保護面201の合成樹脂材(A)と同じ合成樹脂材(A)からなるナット14の接触面間を接着剤を介して接着して一体化し、水密に接合する。
このようにしても防食保護面201とこれに設置するステップ1との隙間を、防食保護面201に対してナット14を十分に密着させた状態で接合して水密に塞ぐことができ、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、上記の各実施の形態では、コンクリート構造物としてマンホールを例示し、金物としてステップを例示したが、下水処理場では、ステップのみならず、樹脂被覆配管や樹脂被覆手すりなども多く使われており、これらの配管周りや手すり周りからの腐食性物質の浸入が問題になっているので、配管や手すりの端部を合成樹脂で被覆し、本技術で固着させれば、腐食性物質の浸入を防止することができる。さらには、コンクリートからなるタンク、水槽、薬品槽等でも各種の金物が取り付けられており、このようなコンクリート構造物の防食保護面に金物を取り付ける場合でも、本技術を同様に適用でき、同様の作用効果を得ることができる。
11 取付部
12 ステップ本体
13 防食カバー
131 ねじ部
14 ナット
2 マンホール
20 躯体コンクリート
21 合成樹脂材(A)からなる防食シート
201 防食保護面
22 穴
23 接着剤
Claims (5)
- コンクリート構造物の合成樹脂材により防食被覆された防食保護面に、当該防食保護面の合成樹脂材を貫通して躯体コンクリートに穴を穿設され、当該穴に金属製の芯材に合成樹脂材を被覆してなる金物の取付部が挿入固着されて、前記金物が取り付けられるコンクリート構造物の防食保護面の金物取付構造において、
前記金物の前記取付部に連続し前記金物の取付状態で前記防食保護面から突出する前記取付部に近接する近接位置に当該近接位置を被覆する合成樹脂材にねじを切られて形成されるねじ部と、
前記ねじ部に螺合され、前記防食保護面と前記金物との間の隙間を遮蔽可能な大きさ及び形状を有する、合成樹脂材からなる又は合成樹脂材を被覆されてなるナットと、
を備え、
前記防食保護面に固定された前記金物の前記ナットが前記防食保護面に接触され、前記ナット及び前記防食保護面の接触面間が融着により又は接着剤を介して、水密に接合される、
ことを特徴とするコンクリート構造物の防食保護面の金物取付構造。 - コンクリート構造物の合成樹脂材により防食被覆された防食保護面に、当該防食保護面の合成樹脂材を貫通して躯体コンクリートに穴を開け、当該穴に金属製の芯材に合成樹脂材を被覆してなる金物の取付部を挿入し固着して、前記金物を取り付けるコンクリート構造物の防食保護面の金物取付方法において、
前記金物の前記取付部に連続し前記金物の取付状態で前記防食保護面から突出する前記取付部に近接する近接位置に当該近接位置を被覆する合成樹脂材にねじを切ってねじ部を設け、
当該ねじ部に、前記防食保護面と前記金物との間の隙間を遮蔽可能な大きさ及び形状を有する、合成樹脂材からなる又は合成樹脂材を被覆されてなるナットを取り付け、
前記金物を前記防食保護面に固定した後、
前記ナットを前記防食保護面に接触させて、前記ナット及び前記防食保護面の接触面間を融着により又は接着剤を介して、水密に接合する、
ことを特徴とするコンクリート構造物の防食保護面の金物取付方法。 - ナットを防食保護面に対して熱溶着又は超音波溶着に適合する前記防食保護面の合成樹脂材と同じ又は異なる合成樹脂材により形成又は被覆し、前記ナットを前記防食保護面に熱溶着又は超音波溶着により融着する請求項2に記載のコンクリート構造物の防食保護面の金物取付方法。
- ナットを防食保護面に対して所定の接着剤による接着に適合する前記防食保護面の合成樹脂材と同じ又は異なる合成樹脂材により形成又は被覆し、前記ナットを前記防食保護面に前記所定の接着剤を介して接着する請求項2に記載のコンクリート構造物の防食保護面の金物取付方法。
- ナットと金物のねじ部との間にシール材を介在し、前記ナットと前記ねじ部との隙間を水密にシールする請求項2乃至4のいずれかに記載のコンクリート構造物の防食保護面の金物取付方法。
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