JP6088135B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

この発明は、トレッド部踏面に、溝によって区画され踏面形状が五角形以上の多角形である多角形ブロックを密集配置することで氷上性能を向上させた空気入りタイヤにつき、高い氷上性能を維持しつつ耐偏摩耗性能の向上を図ろうとするものに関する。
従来より、空気入りタイヤでは、氷路面等に対する駆動、制動及び旋回性能を高めるための手段として、主溝や横溝を配設することによってトレッド部踏面に複数個のブロックを区画形成するとともに、区画形成された各ブロックにサイプを形成して、エッヂ効果を高めることが広く一般に行われている(例えば、特許文献1)。
この文献に記載の空気入りタイヤでは、ブロックの接地面積の確保のためにブロック一つ一つの大きさを比較的大きく形成してブロック剛性を高めるとともに、氷上性能の向上のため、サイプ本数を増やすことでトレッドパターン内のエッヂ成分を増加させている。しかしながら、ブロック内のサイプ本数を増やし過ぎると、ブロック剛性が低下し、ブロックの曲げ変形により接地面積が減少し、却って氷上性能が低下するという不具合が生じる。
これに鑑み、本出願人は、特許文献2に開示されるように、トレッド部踏面に、溝によって区画され踏面形状が五角形以上の多角形である多数個の多角形ブロックを密集して配置することで、ブロック全体でのエッヂ長の増大を図ると同時に、隣接するブロック同士の支え合い作用によりブロック剛性を確保して、優れたエッヂ効果を発揮させることに成功した。
特開2001−191739号公報 特開2010−70105号公報
本発明者は、このように多角形ブロックを密集配置したタイヤにつき、さらなる研究を進めた結果、以下のような新たな問題を見出した。すなわち、特許文献2に記載の空気入りタイヤでは、各多角形ブロックが互いに近接して配置されていることから、多角形ブロック間の溝の溝幅が狭く、このため、ウエット路面走行時に、タイヤ接地面に侵入した水を溝で効率良く接地面外に排出させることができず、その結果として、ハイドロプレーニングを充分に抑制できないことが分かった。これを防止するために、多角形ブロックの密集度(特許文献2のブロック個数密度)を維持しつつ、多角形ブロックの小型化により多角形ブロック間の溝の溝幅を大きくすることが考えられるが、このようにした場合、多角形ブロックの剛性低下に起因して多角形ブロックが倒れ込み易くなり、多角形ブロックの溝に隣接する部分に偏摩耗が生じるとともに、多角形ブロックの密集度に応じた所期のエッヂ効果すら得られなくなるおそれがある。
それゆえ、この発明は、トレッド部踏面に、溝によって区画され踏面形状が五角形以上の多角形である多角形ブロックを密集配置することで氷上性能を向上させた空気入りタイヤにつき、高い氷上性能を維持しつつ耐偏摩耗性能を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の空気入りタイヤは、トレッド部踏面に、タイヤ周方向に沿って波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝と、該屈曲周溝に交わる複数本の横溝とで区画された、各々五角形以上の多角形の踏面形状を有する複数個の多角形ブロックを備え、前記多角形ブロックを、前記屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロック同士の位置関係がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる空気入りタイヤであって、前記多角形ブロック群を、タイヤ赤道面を中心としたトレッド部踏面幅の70%領域内に配設し、前記多角形ブロックを形成する2本の屈曲周溝のうち一方を第1側方屈曲周溝、他方を第2側方屈曲周溝と呼ぶとき、前記多角形ブロックの第1側方屈曲周溝に面する側壁を、タイヤ法線に対して、該第1側方屈曲周溝の溝底に向かうに連れて前記第1側方屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロックとの距離が小さくなる方向に傾斜させ、かつ該傾斜の角度を鋭角側から測定して〜10度の範囲内とし、前記多角形ブロックの、前記第2側方屈曲周溝に面する側壁はタイヤ法線上にあり、前記第1側方屈曲周溝の溝幅を、前記第2側方屈曲周溝の溝幅よりも大としたことを特徴とするものである。
かかる空気入りタイヤにあっては、トレッド部踏面に、多角形ブロックを密集配置してなる多角形ブロック群を設けたことから、この多角形ブロック群においては、隣り合う多角形ブロックの支え合い効果によりブロック剛性の低下を抑制しつつ、エッヂ長を増大して、良好な氷上性能を得ることができる。このとき、多角形ブロックの、第1側方屈曲周溝に面する側壁を、タイヤ法線に対して、該第1側方屈曲周溝の溝底に向かうに連れて第1側方屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロックとの距離が小さくなる方向に傾斜させたことから、第1側方屈曲周溝の溝幅を、第2側方屈曲周溝の溝幅よりも大としてもなお、第1側方屈曲周溝に面する多角形ブロックの剛性を確保することができる。
したがって、この空気入りタイヤによれば、トレッド部踏面に多角形ブロック群を配設して氷上性能を向上させた空気入りタイヤにつき、高い氷上性能を維持しつつ、第1側方屈曲周溝の溝幅拡大、及び溝幅の拡大した第1側方屈曲周溝に面する、多角形ブロックの側壁の傾斜によりブロック剛性を確保して耐偏摩耗性能を向上させることができる。
なお、この発明の空気入りタイヤにあっては、前記多角形ブロック群の単位実接地面積(mm2)当たりの前記多角形ブロックの個数であるブロック個数密度は、0.003〜0.04(個/mm2)の範囲内であることが好ましく、これによれば、多角形ブロックを密集配置したことによる効果、すなわち、ブロック剛性の確保とブロックエッヂ長の増大を確実に達成することができる。
また、この発明の空気入りタイヤにあっては、第2側方屈曲周溝の溝幅に対して第1側方屈曲周溝の溝幅を1.1倍〜2倍に設定したとき、第1側方屈曲周溝に面する前記側壁の、タイヤ法線に対する傾斜角度を鋭角側から測定して度〜10度の範囲内とすることが好ましく、これによれば、多角形ブロック群内での排水性と耐偏摩耗性能とをより確実に両立させることができる。
さらに、この発明の空気入りタイヤにあっては、ブロック個数密度を0.003〜0.04(個/mm2)の範囲内としたとき、第1側方屈曲周溝に面する前記側壁の、タイヤ法線に対する傾斜角度を鋭角側から測定して度〜10度の範囲内とすることが、耐偏摩耗性向上の面から好ましく、さらに耐偏摩耗性と排水性とを両立させる面から好ましい。これによれば、多角形ブロック群内での排水性と耐偏摩耗性能とをより確実に両立させることができる。
しかも、この発明の空気入りタイヤにあっては、多角形ブロック群を、タイヤ赤道面を中心としたトレッド部踏面幅の70%以内に配設することが好ましく、これによれば、雪上性能およびハイドロプレーニング性能をより効果的に向上させることができる。
この発明によれば、トレッド部踏面に、溝によって区画され踏面形状が五角形以上の多角形である多角形ブロックを密集配置することで氷上性能を向上させた空気入りタイヤにつき、高い氷上性能を維持しつつ耐偏摩耗性能を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
この発明の一実施形態の空気入りタイヤにおけるトレッド部踏面の一部展開図である。 (a)は、図1中のA−A、B−B断面図であり、(b)は、図1中のC−C断面図であり、(c)は、図1中のD−D断面図である。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、図中、符号Xは、タイヤ赤道面を示し、符号Wは、タイヤ幅方向(タイヤ軸方向に平行な方向)を示し、符号Rは、軸方向に直交する方向であるタイヤ径方向を示し、符号Cは、タイヤ周方向を示すものとする。また、符号1は、トレッド部踏面を示し、符号TEは、トレッド部踏面における幅方向端を示す。なお、ここで説明する空気入りタイヤは、慣例に従い一対のビード部と、該ビード部のタイヤ径方向に延びる一対のサイドウォール部と、これらのサイドウォール部間を跨るトレッド部とに区分したとき、タイヤ内部に、これらビード部、サイドウォール部及びトレッド部に亘ってトロイド状に延びるとともに、その端部がそれぞれ各ビード部に埋設したビードコアに係止されたカーカスと、カーカスのタイヤ径方向外側に配置されたベルトとを備えるものであるが、これに限定されない。カーカスはラジアルプライ、バイアスプライのいずれでも良い。
図1に示すように、トレッド部踏面1には、タイヤ周方向にストレートに延びる主溝が3本(図1中、左側から順に第1主溝3、第2主溝5、第3主溝7とする。)形成されて、トレッド部踏面1は、4つの陸部区域(図1中、左側から順に第1陸部区域Z1、第2陸部区域Z2、第3陸部区域Z3、第4陸部区域Z4とする。)に区分されている。第3陸部区域Z3は、タイヤ赤道面Xを中心としたトレッド部踏面幅(左右のTE間の幅方向距離)の70%領域内に配設されている。ここでいう「トレッド部踏面幅」は、空気入りタイヤを、正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、正規荷重を加えて測定したものを指す。そして、正規リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
先ず、第1及び第4陸部区域Z1、Z4は、第1及び第3主溝3、7によって区画された陸部がさらに、タイヤ幅方向に延びるとともにタイヤ周方向に所定ピッチで配置された複数のラグ溝9、10によって区画されて、ショルダーブロック11、12が複数形成されている。各ショルダーブロック11、12の踏面(表面)には、タイヤ幅方向に延びる複数の波状のサイプ11a、12aと、略八角形を形成する環状サイプ11b、12bとがそれぞれ形成されている。このように環状サイプ11b、12bをショルダーブロック11、12に設けることで、ショルダーブロック11、12の剛性を維持しつつ、タイヤ幅方向の入力に対して有効に作用するエッヂを形成することができる。
第2陸部区域Z2は、第1主溝3および第2主溝5によって区画された陸部がさらに、略タイヤ幅方向に延びるとともに延在方向の途中(略中央)に屈曲部を一箇所有して平面視で略V字形状をなす屈曲横溝14によって区画されており、これにより矢羽形状のミドルブロック16がタイヤ周方向に複数形成されている。ミドルブロック16には、タイヤ周方向の略中央位置にて第1主溝3に向けて延びるとともに該第1主溝3にのみ開口する一端閉塞型の傾斜溝17が形成されている。ミドルブロック16の踏面(表面)には、屈曲横溝14に沿って延びミドルブロック16内で終端する一端閉塞型の波状のサイプ16aが複数形成されている。
第3陸部区域Z3は、第2主溝5および第3主溝7によって区画された陸部が、さらにタイヤ周方向に沿って波状又はジグザグ状に延びる3本の屈曲周溝(図1中、左側から第1屈曲周溝19、第2屈曲周溝20、第3屈曲周溝21とする。)と、これらの屈曲周溝19、20、21に交わる複数本の横溝23とで区画され、これにより、各々五角形以上の多角形の踏面形状を有する複数個の多角形ブロック25が形成されている。タイヤ幅方向に隣り合う屈曲周溝(19と20、20と21)は、それぞれの山部と谷部とのタイヤ周方向位置が同一(例えば、第1屈曲周溝19の谷部と第2屈曲周溝20の山部のタイヤ周方向位置が一致)となるよう配置され、横溝23は、タイヤ幅方向に隣り合う屈曲周溝(19と20、20と21)の山部と谷部を連結する。これにより、多角形ブロック25は、踏面形状が略八角形に形成されるとともに、屈曲周溝20を挟んで隣接する多角形ブロック25同士の位置関係がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集して配置されている。このようになる多角形ブロック25の集まりを多角形ブロック群Gと称する。ここでは、多角形ブロック群Gは、2列の多角形ブロック列L1、L2からなるが、屈曲周溝を4本以上設けて、3列以上の多角形ブロック列で多角形ブロック群Gを構成してもよい。なお、図1中、符号25aは、多角形ブロック25の踏面(表面)に形成された波状のサイプを示し、この例では、各多角形ブロック25には、波状サイプ25aがそれぞれ2本設けられている。
そして、多角形ブロック25を形成する2本の屈曲周溝(19と20、20と21)のうち一方を第1側方屈曲周溝(ここでは第2屈曲周溝20を指す。)、他方を第2側方屈曲周溝(ここでは第1屈曲周溝19および第3屈曲周溝21を指す。)と呼ぶとき、多角形ブロック25の第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)に面する側壁25aは、図2に示すように、タイヤ法線(トレッド表面に対して垂直な線)mに対して、該第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)の溝底20aに向かうに連れて第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)を挟んで隣接する多角形ブロック25との距離が小さくなる方向に傾斜(α>0)しており、かつ、第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)の溝幅W20は、第2側方屈曲周溝(第1屈曲周溝19、第3屈曲周溝21)の溝幅W19、W21よりも大である。
また、この実施形態において、多角形ブロック群Gの単位実接地面積(mm2)当たりの多角形ブロック25の個数であるブロック個数密度は、0.003〜0.04(個/mm2)の範囲内としている。ブロック個数密度Sは、図1に示すように、例えば、多角形ブロック群Gの幅をw(mm)、該多角形ブロック群G内の任意の多角形ブロック列(L1またはL2)におけるブロック25の基準ピッチ長さをpl(mm)、幅wと基準ピッチ長さplとで区画される多角形ブロック群G内の仮想的な基準区域K内に存在する多角形ブロック25の個数をa(個)、基準区域K内のネガティブ率をN(%)としたとき、
S=a/[pl×w×(1−N/100)]・・・・・(1)
により求めることができる。
ここで、これらの幅w、基準ピッチ長さpl、個数aおよびネガティブ率Nは、空気入りタイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、非接地状態で測定した値である。また、「多角形ブロック群の幅」とは、多角形ブロック群Gのタイヤ幅方向に沿う長さを指す。また、「ブロックの基準ピッチ長さ」とは、任意の多角形ブロック列(L1またはL2)におけるタイヤ周方向の繰返しパターンの最小単位又は複数単位の長さを指すものとし、例えば1つの多角形ブロック25とこの多角形ブロック25のタイヤ周方向に隣接する横溝23によってタイヤ周方向のパターンの繰り返し模様が規定されている場合は、多角形ブロック25の1個分のタイヤ周方向長さとこの多角形ブロック25に隣接する横溝23の溝幅(タイヤ周方向に沿って計測した長さ)とを加算したものをブロックの基準ピッチ長さとすることができる。なお、横溝23の溝幅は、0.4〜6mm、第1および第3屈曲周溝の幅は0.4〜6mmとし、多角形ブロック25の踏面面積を5〜333mm2とすることが好ましい。
なお、この実施形態では、多角形ブロック群Gの側方には、第2主溝5、第1屈曲周溝19および横溝29によって区画された小側方ブロック31の複数からなる小側方ブロック列L3と、第3屈曲周溝21、第3主溝7および横溝33によって区画され、小側方ブロック31よりも踏面面積の大きい大側方ブロック34の複数からなる大側方ブロック列L4が配設されている。小側方ブロック31および大側方ブロック34の踏面にも複数の波状のサイプ31a、34aが形成されている。これらの側方ブロック31、35で多角形ブロック群Gを挟み込む構成とすることにより、多角形ブロック群Gを補強することができ、トレッド部踏面全体としてみて、良好な剛性バランスを確保することができ、所期の操縦安定性を確保することができる。なお、側方ブロック31、35に代えて、多角形ブロック25を設けて、多角形ブロック列を4列に増やしてもよい。
このようになる空気入りタイヤにあっては、トレッド部踏面1に、多角形ブロック25を密集配置してなる多角形ブロック群Gを設けたことから、この多角形ブロック群Gにおいては、隣り合う多角形ブロック25の支え合い効果によりブロック剛性の低下を抑制しつつ、エッヂ長を増大して、良好な氷上性能を得ることができる。このとき、多角形ブロック25の、第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)に面する側壁25aを、タイヤ法線mに対して、該第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)の溝底20aに向かうに連れて第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)を挟んで隣接する多角形ブロック25との距離が小さくなる方向に傾斜させたことから、第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)の溝幅W20を、第2側方屈曲周溝(第1屈曲周溝19、第3屈曲周溝21)の溝幅W19、W21よりも大としてもなお、第2屈曲周溝20に面する多角形ブロック25の剛性を確保することができる。
したがって、この空気入りタイヤによれば、トレッド部踏面1に多角形ブロック群Gを配設して氷上性能を向上させた空気入りタイヤにつき、高い氷上性能を維持しつつ、第2屈曲周溝20の溝幅拡大により排水性能を向上させるとともに、溝幅の拡大した第2屈曲周溝20に面する、多角形ブロック25の側壁25aの傾斜によりブロック剛性を確保して耐偏摩耗性能を向上させることができる。
また、この実施形態では、多角形ブロック群Gのブロック個数密度Sを0.003〜0.04(個/mm2)としたことから、多角形ブロック25を密集配置したことによる効果、すなわち、ブロック剛性の確保とブロックエッヂ長の増大を確実に達成することができる。ちなみに、多角形ブロック群Gにおけるブロック個数密度Sが0.003(個/mm2)未満の場合は、サイプの形成なしには、ブロックエッヂの増大を図ることは難しく、一方、ブロック個数密度Sが0.04(個/mm2)を超えると多角形ブロック25の大きさが小さくなりすぎて所要のブロック剛性の実現が難しい。そして、このような観点から、多角形ブロック群Gにおけるブロック個数密度Sは、0.0035〜0.03(個/mm2)の範囲とすれば、ブロック剛性の確保とブロックエッヂ増大とをより高い次元で両立させることができる。
なお、第2側方屈曲周溝(第1屈曲周溝19、第3屈曲周溝21)の溝幅W19、W21に対して、第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)の溝幅W20を1.1倍〜2倍に設定したとき、第1側方屈曲周溝に面する多角形ブロック25の側壁25aの、タイヤ法線mに対する傾斜角度αを鋭角側から測定して度〜10度の範囲内とすることが、耐偏摩耗性能向上の面から好ましく、さらに、排水性と両立させる面から好ましい。これによれば、多角形ブロック群内での排水性と耐偏摩耗性能とをより確実に両立させることができる。
また、ブロック個数密度Sを0.003〜0.04(個/mm2)の範囲内としたとき、第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)に面する多角形ブロック25の側壁25aの、タイヤ法線mに対する傾斜角度αを鋭角側から測定して度〜10度の範囲内とすることが、耐偏摩耗性能向上の面から好ましく、さらに、排水性と両立させる面から好ましい。これによれば、多角形ブロック群内での排水性と耐偏摩耗性能とをより確実に両立させることができる。
また、多角形ブロック群Gは、この実施形態のように、タイヤ赤道面を中心としたトレッド部踏面幅の70%領域内に配設することが好ましく、これによれば、雪上性能および排水性能をより効果的に向上させることができる。
さらに、第1側方屈曲周溝(第2屈曲周溝20)の溝幅W2は、2.5mm以上〜6以下とすることで、雪上性能および排水性能をより効果的に向上させることができる。溝幅W2が2.5mm未満の場合には、溝幅が狭すぎて充分な排水性能が得られないおそれがあり、一方6mmを超えると、第1側方屈曲周溝に隣接する多角形ブロック25の実質的な剛性が低下して偏摩耗を充分に抑制できなくなる可能性があるからである。
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、タイヤ法線mに対して側壁25aを傾斜させる多角形ブロック25は、第2屈曲周溝20に面する全ての多角形ブロック25でなくてもよく(上述の実施形態では第2屈曲周溝20に面する全ての多角形ブロック25で側壁25aを傾斜させている。)、一部の多角形ブロック25のみ側壁25aを傾斜させたり、タイヤ周方向にみて、一つおきに多角形ブロック25の側壁25aを傾斜させたりしてもよい。また、多角形ブロック群Gは、トレッド部踏面の全体を占めるものであってもよい。
次に、この発明による効果を示すため、この発明にしたがう実施例1及び2のタイヤと、比較例1〜のタイヤとを試作し、性能評価を行ったので説明する。実施例1及び2のタイヤ、および比較例1〜4のタイヤは、タイヤサイズがいずれも195/60R15である。
実施例1及び2、比較例4のタイヤはいずれも、図1に示すトレッドパターンを有し、多角形ブロック25の、第2屈曲周溝20に面する側壁25aがタイヤ法線mに対して傾斜させ(α>0)、かつ、第2屈曲周溝20の溝幅W20を、第1、3屈曲周溝19、21の溝幅W19、W21よりも大としたものであって、詳細は表1に示すとおりである。また、表1中の「多角形ブロック群の位置」の項目において「IN」とは、多角形ブロック群が、タイヤ赤道面を中心としたトレッド幅の70%の領域内に配置されていることを示し、「OUT」とは、多角形ブロック群が、タイヤ赤道面を中心としたトレッド幅の70%の領域外に配置されていることを示す。
比較例1のタイヤは、図1に示すトレッドパターンと概ね同じパターンを有するものであるが、第1屈曲周溝19、第2屈曲周溝20および第3屈曲周溝21のそれぞれの溝幅が互いに同じであるとともに、多角形ブロック25の、第2屈曲周溝20に面する側壁25aはタイヤ法線に対して傾斜していない(α=0度)。比較例2は、第1屈曲周溝19、第2屈曲周溝20および第3屈曲周溝21のそれぞれの溝幅が互いに同じであり、多角形ブロック25の、第2屈曲周溝20に面する側壁25aをタイヤ法線mに対して4度(α=4度)傾けたものである。比較例3のタイヤは、下記表1に示す諸元を有する。
(性能評価)
上記各供試タイヤについて、サイズ15×6Jのリムに組み付け、内圧240kPa(相対圧)として車両に装着し、以下の試験を行って性能を評価した。
(1)氷上性能試験
氷上性能試験は、氷路面のテストコースを各種走行モードで走行したときのプロのテストドライバーによる制動性、発進性、直進性およびコーナリング性を総合的にフィーリング評価することにより行った。その評価結果を表1に示す。表1中の評価は、比較例1のタイヤの結果を100とし、比較例2〜4および実施例1及び2のタイヤについて指数で表したものであり、数値が100より大きければ比較例1のタイヤより良好であることを示す。
)耐偏摩耗性能試験
耐偏摩耗性能試験は、ドライ状態の一般路を各種走行モードにて走行し、5000km走行時の、第2屈曲周溝に隣接する多角形ブロックの摩耗量を測定し、その測定した摩耗量から評価することにより行った。その評価結果を表1に示す。表1中の評価は、比較例1のタイヤの結果を100とし、比較例2〜4および実施例1及び2のタイヤについて指数で表したものであり、数値が100より大きければ、比較例1のタイヤより良好であることを示す。
Figure 0006088135
表1の結果からも分かるように、第1側方屈曲周溝に面する多角形ブロックの側壁の傾斜角度αを0度超とするとともに、第1側方屈曲周溝の溝幅を他の屈曲周溝の溝幅よりも大としたことで、氷上性能を確保しつつ耐偏摩耗性能を向上させることができる。
かくして、この発明によって、トレッド部踏面に、溝によって区画され踏面形状が五角形以上の多角形である多角形ブロックを密集配置することで氷上性能を向上させた空気入りタイヤにつき、高い氷上性能を維持しつつ耐偏摩耗性能を向上させた空気入りタイヤを提供することが可能となった。
1 トレッド部踏面
3、5、7 主溝
9、10 ラグ溝
11、12 ショルダーブロック
14 屈曲横溝
16 ミドルブロック
17 傾斜溝
19 第1屈曲周溝(第2側方屈曲周溝)
20 第2屈曲周溝(第1側方屈曲周溝)
21 第3屈曲周溝(第2側方屈曲周溝)
23 横溝
25 多角形ブロック
25a 多角形ブロックの、第2屈曲周溝に面する側壁
29、33 横溝
31 小側方ブロック
34 大側方ブロック
G 多角形ブロック群
L1、L2 多角形ブロック列

Claims (2)

  1. トレッド部踏面に、タイヤ周方向に沿って波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝と、該屈曲周溝に交わる複数本の横溝とで区画された、各々五角形以上の多角形の踏面形状を有する複数個の多角形ブロックを備え、前記多角形ブロックを、前記屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロック同士の位置関係がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる空気入りタイヤであって、
    前記多角形ブロック群を、タイヤ赤道面を中心としたトレッド部踏面幅の70%領域内に配設し、
    前記多角形ブロックを形成する2本の屈曲周溝のうち一方を第1側方屈曲周溝、他方を第2側方屈曲周溝と呼ぶとき、前記多角形ブロックの、第1側方屈曲周溝に面する側壁を、タイヤ法線に対して、該第1側方屈曲周溝の溝底に向かうに連れて前記第1側方屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロックとの距離が小さくなる方向に傾斜させ、かつ該傾斜の角度を鋭角側から測定して〜10度の範囲内とし、
    前記多角形ブロックの、前記第2側方屈曲周溝に面する側壁はタイヤ法線上にあり、
    前記第1側方屈曲周溝の溝幅を、前記第2側方屈曲周溝の溝幅よりも大としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記第2側方屈曲周溝の前記溝幅に対して前記第1側方屈曲周溝の前記溝幅を1.1倍〜2倍に設定した、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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