JP6087117B2 - 高純度ネオジムの製造方法、高純度ネオジム、高純度ネオジムを用いて製造したスパッタリングターゲット、高純度ネオジムを成分とする永久磁石 - Google Patents
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Description
このような知見に基づき、本発明は、
1)ガス成分を除く純度が4N以下のネオジム原料を溶融塩電解浴に入れ、浴温600〜700℃で溶融塩電解してネオジム結晶を得、次にこのネオジム結晶を脱塩処理した後、誘導溶解及び/又は電子ビーム溶解して、希土類元素及びガス成分を除く純度が5N以上とすることを特徴とする高純度ネオジムの製造方法、
2)溶融塩電解浴として、塩化カリウム(KCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化ネオジム(NdCl3)からなる電解浴を使用することを特徴とする上記1)記載の高純度ネオジムの製造方法、
3)ステンレス(SUS)製のアノードを使用して溶融塩電解を行うことを特徴とする上記1又は2記載の高純度ネオジムの製造方法、
4)タンタル(Ta)製のカソードを使用して溶融塩電解を行うことを特徴とする上記1〜3のいずれか一に記載の高純度ネオジムの製造方法、を提供する。
5)希土類元素及びガス成分を除く純度が5N以上であり、希土類元素及びTaを除く遷移金属元素の含有量がそれぞれ1wtppm以下であることを特徴とする高純度ネオジム、
6)Taの含有量が10wtppm以下、U、Thの含有量がそれぞれ5wtppb以下、炭素の含有量が150wtppm以下であることを特徴とする上記5)記載の高純度ネオジム、
7)上記5)又は6)記載の高純度ネオジムを用いて製造したスパッタリングターゲット、
8)上記5)又は6)記載の高純度ネオジムを用いて製造した永久磁石、
9)上記7)記載のスパッタリングターゲットを用いて製造した永久磁石、を提供する。
特に、ネオジム鉱石には、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)が多く含まれ、これらの不純物は、塩化物、酸化物、フッ化物の電気還元(電解採取)の際に、ネオジムと同時に還元されることがある。また、精製装置の部材からこれらの不純物が混入することもある。一方、銅(Cu)は、ネオジム鉱石にほとんど含まれないが、ネオジム粗金属を塩化物やフッ化物から還元する際に用いる水冷部材などから、銅の汚染を受ける場合がある。
特に、本発明の高純度ネオジムの用途には、高純度ネオジムターゲットをスパッタ成膜して作製する微小な磁石があり、電子材料と同様に、鉄(Fe)の混入は、膜を腐食して破壊したり、Nd−Fe−B系磁石の組成ズレを引き起こしたりする問題がある。また、アルミニウム(Al)や銅(Cu)についても、Nd−Fe−B系磁石の添加材であるジスプロシウム(Dy)に替わる材料として研究が行われており、これらの不純物含有量を正確に制御することが求められている。
本願発明は、上記ネオジムの純度を高め、5N以上の純度を達成するために溶融塩電解を行う。溶融塩電解の装置の一例を、図1に示す。この図1に示すように、装置の下部にステンレス(SUS)製のアノードを配置することができる。
脱塩炉を使用し、真空加熱することでメタルと塩分とを分離し、塩分を揮発除去することができる。通常脱塩の温度は850〜1000℃とすることができる。温度は高いほど塩が分離しやすいが、あまり高すぎるとボート材からの汚染が増加するため好ましくない。これにより、脱塩処理後のネオジム中の塩素(Cl)含有量を低減することができる。
上記に得られたネオジム成型体を用い、水冷Cu坩堝を使用し、真空雰囲気中でスカル溶解し、凝固させてインゴットとした。本実施例では、水冷Cu坩堝を使用したが、溶解装置によっては、カーボン坩堝を使用することもできる。
上記に得られたネオジム成型体の電子ビーム溶解に際しては、低出力の電子ビームを、炉中のネオジム溶解原料に広範囲に照射することにより行う。この電子ビーム溶解は、数回(2〜4回)繰り返すことができる。電子ビーム溶解の回数を増やすことで、Cl、Ca、Mg等の揮発成分の除去がより向上する。
上記誘導溶解(スカル溶解)と電子ビーム溶解については、いずれか一方又は双方を併用することができる。併用する場合には、工程順に特に制限はない。
このような事情から、ある程度、他の希土類の混入は黙認されるが、ネオジム自体の特性を向上させようとする場合は、少ないことが望ましいことは、言うまでもない。
なお、ガス成分であるC、N、O、S、Hの分析は、LECO社製のガス分析装置を使用して測定し、その他の元素分析は、GDMS分析法を用いて行った。
ターゲットの製造は、鍛造・圧延・切削・仕上げ加工(研磨)等の、通常の加工により製造することができる。特に、その製造工程に制限はなく、任意に選択することができる。
処理するネオジムの原料として2N〜3Nの市販品を用いた。このネオジム原料の分析値を表1に示す。
この原料を用いて溶融塩電解を行った。溶融塩電解には、前記図1の装置を使用した。電解浴として、塩化カリウム(KCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化ネオジム(NdCl3)を使用し、Nd原料は50kgとした。
次に、この電解析出物を、脱塩炉を使用し、真空加熱し、蒸気圧差によりメタルと塩とを分離した。脱塩処理後Ndの分析結果を表2に示す。この表2に示すように、溶融塩電解した結果から当然ではあるが、塩素濃度、カリウム濃度が極端に高く、性質が近似している希土類元素、アルカリ土類金属であるMg、Caの低下も十分では無いが、その他の不純物は低くなっていた。
次に、上記に得られたネオジムを電子ビーム溶解した。これによって、図3に示すようなEB溶解インゴットを作成した。電子ビーム溶解後のNdの分析結果を表3に示す。この表3に示すように、EB溶解時に、揮発性の高い物質は揮散除去され、Cl等の揮発成分の除去が可能となった。
処理するネオジムの原料として、純度が2N〜3Nレベルの市販品を用いた。この場合、表1に示す実施例1と同一の純度を持つネオジム原料を使用した。
次に、スカル溶解を用い、インゴットを作製した。スカル溶解時に、揮発性の高い物質は若干揮散除去された。以上によって、ネオジムインゴットを製造することができた。このようにして得たネオジムの分析値を、表4に示す。
実施例に示すように、ガス成分を除く純度が4N以下の粗ネオジムの原料を、溶融塩電解してネオジム結晶を得、次にこのネオジム結晶を、脱塩処理及び又は酸洗浄した後に、誘導溶解及び/又は電子ビーム溶解することにより、希土類元素及びガス成分を除いた純度を5N以上とすることが可能となる。
Claims (7)
- ガス成分を除く純度が4N以下のネオジム原料を、塩化カリウム(KCl)、塩化リチウム(LiCl)及び塩化ネオジム(NdCl 3 )からなる溶融塩電解浴に入れ、浴温600〜700℃で溶融塩電解してネオジム結晶を得、次にこのネオジム結晶を脱塩処理した後、誘導溶解及び/又は電子ビーム溶解して、希土類元素及びガス成分を除く純度が5N以上とすることを特徴とする高純度ネオジムの製造方法。
- ステンレス(SUS)製のアノードを使用して溶融塩電解を行うことを特徴とする請求項1記載の高純度ネオジムの製造方法。
- タンタル(Ta)製のカソードを使用して溶融塩電解を行うことを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の高純度ネオジムの製造方法。
- 希土類元素及びガス成分を除く純度が5N以上であり、希土類元素とTaを除く遷移金属元素の含有量がそれぞれ1wtppm以下であり、Taの含有量が10wtppm以下、U、Thがそれぞれ5wtppb以下、炭素が150wtppm以下であることを特徴とする高純度ネオジム。
- 請求項4記載の高純度ネオジムを用いて製造したスパッタリングターゲット。
- 請求項4記載の高純度ネオジムを用いて製造した永久磁石。
- 請求項5記載のスパッタリングターゲットを用いて製造した永久磁石。
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