JP6087186B2 - 高純度ネオジムの製造方法、高純度ネオジム、高純度ネオジムからなるスパッタリングターゲット及び高純度ネオジムを成分とする希土類磁石 - Google Patents
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Description
ネオジムの原子番号は60、原子量144.2.9の銀白色の金属であり、常温で六方最密構造を備えている。融点は1020°C、沸点3100°C、密度6.80g/cm3であり、空気中では表面が酸化され、水には徐々にとける。熱水、酸に可溶であり、延性、展性がある。抵抗率は64.0×10−6Ωcmである(理化学辞典参照)。
ところで、次世代希土類磁石として、小型化、高性能化が要求されている。このような場合、ネオジム金属に含まれる不純物がその磁気特性に与える影響は小さくない。一般にネオジム金属は精製時に酸化し易いという問題があるため、高純度化が難しい材料であり、高純度製品は存在していなかった。また、ネオジム金属を空気中に放置した場合には短時間で酸化し変色するので、取り扱いが容易でないという問題があった。
このためターゲット作製後、すぐ真空パックするか又は油脂で覆い酸化防止策を講ずる必要があるが、これは著しく煩雑な作業である。このような問題から、ネオジム元素のターゲット材は、実用化に至っていないのが現状である。
パーティクル発生は、希土類磁石の磁気特性を劣化させる原因となる。ネオジムに含まれる炭素(グラファイト)が固形物であることから、特に問題であり、この炭素(グラファイト)は、導電性を有するため、検知が難しく、低減化が求められている。
また、ガス成分の多少の混入も大きな問題とならない。しかも、ガス成分は、一般に除去が難しいため、純度の表示には、このガス成分を除外するのが一般的である。
一般的に、ある程度の希土類元素の含有は許容される。しかし、ネオジム元素の特性を活かすためには、ネオジム以外の希土類元素の含有量が100wtppm以下、さらには10wtppm以下であることが望ましいと言える。しかし、本願発明では、ガス成分を除いた純度を4N5以上とすることを中心的な課題とするものである。
しかし、多量のガス成分の存在は好ましくないので、後述するように、必要に応じて炭素、酸素、窒素、硫黄、水素等のガス成分の総量を500wtppm以下とする。
希土類磁石として利用する場合には、Nd、Fe、Bを必須成分とし、必要に応じて、Dy、Pr、Tb、Ho、Smなどの希土類元素や、Co、Cu、Cr、Niなどの遷移金属元素、Alなどの典型金属元素など、希土類磁石の成分組成として公知のものを添加することができる。本願発明は、これに適合する材料を提供することができ、本願発明の高純度ネオジムは、ターゲットの作製時において、他の物質との任意の組み合わせを包含するものである。
このようにして製造したインゴットは、さらに所定サイズに裁断し、研磨工程を経てスパッタリングターゲットにすることができる。これによって、ガス成分を除いた純度が4N5以上であり、残留不純物として、Cが100wtppm以下、Oが50wtppm以下、アルミニウム(Al)、及び鉄(Fe)がそれぞれ10wtppm以下であり、銅(Cu)が、1wtppm以下であり、ネオジム以外の希土類元素の合計が100wtppm以下である高純度ネオジムターゲットを製造することができる。
還元の際に使用する溶解るつぼは、タンタル(Ta)製るつぼを使用する。このタンタル製るつぼ内に、粉状のNdF3と塊状Caを混合して投入する。通常、還元材であるCaは、計算量よりも10%程度過剰に添加する。
還元装置内に配置したタンタル製るつぼ内の充填物を、ゆっくりと600°Cまで加熱し、この間還元装置内を真空に引き、充填物の脱ガスを行う。その後、精製したアルゴンガスを送入して0.5気圧とする。
金属Ndの収率は97%程度に達する。主な不純物は、未反応の還元材とスラグである。なお、るつぼ材であるTaが不純物として混入する可能性があるので、還元反応はできるだけ低い温度で実施するのが望ましい。このようにして金属Ndを得る。
ところで、このように得られたネオジム金属は残留するCaの他、ガス成分である酸素含有量が高いという問題がある。酸素は、希土類磁石とした際に、磁気特性を低下させるだけでなく、スパッタリングの際においても、アーキング等のスパッタ異常を引き起こし、均一な膜の形成を阻害する要因となるため、極力低下することが望ましい。
本願発明は、特に、水冷銅ルツボを用いた誘導溶解(スカル溶解)において、これを徐冷するとネオジムの溶湯の中で浮遊する酸素のほとんどが酸化物として、次第に炉の底部に滞留するようになり、ネオジムインゴット内部の酸素濃度を著しく低下できるという点が重要である。
徐冷の時間は、スカル溶解炉の容量によって異なるので一義的に決定することはできないが、実際に溶解した徐冷の時間とネオジムインゴットの酸素濃度を測定することで、その相関関係が分かるので、経験的に決定することができる。上述の通り、本願発明においては、徐冷という概念を導入し、これが酸素濃度の低下につながるという知見が特に重要である。徐冷は例えば出力を30分かけて、段階的に落す方法で行うことができる。
なお、酸化物偏析層は、スカル溶解インゴットを切断し、切断面を目視で観察することで容易に確認することができる。
上記に得られたネオジムの電子ビーム溶解に際しては、電子ビームを炉中のネオジム溶解原料に広範囲に照射することにより行う。この電子ビーム溶解は、数回(2〜4)繰り返すことができる。このように電子ビーム溶解を溶解原料に広範囲に繰り返し行うことにより、Ca、Mg,Mn,Pb等の高蒸気圧成分元素の除去性がより向上する。
このような事情から、ある程度、他の希土類の混入は黙認されるが、ネオジム自体の特性を向上させようとする場合は、少ないことが望ましいことは、言うまでもない。本願発明では、ネオジム以外の希土類元素の合計を100wtppm以下とすることが出来る。これは、本願発明の著しい特徴の一つである。
また、ガス成分を除いた純度を4N5以上とするのは、ガス成分は除去が難しく、これをカウントすると、純度の向上の目安とならないからである。また、一般に他の不純物元素に比べ多少の存在は無害である場合が多いからである。
ターゲットの製造は、鍛造・圧延・切削・仕上げ加工(研磨)等の通常の加工により製造することができる。特に、その製造工程に制限はなく、任意に選択することができる。
ターゲットの製作に際しては、上記高純度ネオジムインゴットを所定サイズに切断し、これを切削及び研磨して作製する。
を基板上に成膜することができる。これによって、ガス成分を除いた純度が4N5以上であり、Cが100wtppm以下、Oが50wtppm以下、アルミニウム(Al)、及び鉄(Fe)がそれぞれ10wtppm以下であり、銅(Cu)が1wtppm以下であり、およびネオジム以外の希土類元素の合計を100wtppm以下である高純度ネオジムを成分とするネオジム薄膜を基板上に形成できる。基板上の膜はターゲットの組成が反映され、高純度のネオジム膜を形成できる。
この場合には、本発明によって製造されたネオジムターゲット材と他の磁石材料ターゲットとの同時スパッタ、又は、本発明のネオジムと他の磁石材料からなるモザイクターゲットを使用してスパッタすることにより達成できる。本願発明はこれらを包含するものである。不純物の含有量は、原材料に含まれる不純物量によって変動するが、上記の方法を採用することにより、それぞれの不純物を上記数値の範囲に調節が可能である。
本願発明は、上記によって得られた高純度ネオジム、高純度ネオジムからなるスパッタリングターゲット及び高純度ネオジムを主成分とする希土類磁石用薄膜を効率的かつ安定して提供できる技術を提供するものである。
処理するネオジムの原料として、純度4Nのフッ化ネオジムの原料を用いた。金属ネオジムは、最近注目されている材料であるが、金属ネオジムの市販品は純度が低く、かつ品位が一定しないという問題がある。
一方、フッ化ネオジムについては、市販品でも高純度の材料を得ることが可能である。しかし、このフッ化ネオジムそのままでは使用できないので、この純度4Nのフッ化ネオジム原料を使用し、効率的にかつ安定して高純度の金属ネオジムを製造することが、必要かつ重要となる。
一方、希土類元素については、Ce:8.6wtppm、Pr:40wtppm、Sm:5.5wtppmなどであり、これらの不純物も比較的少ない。このように希土類元素が比較的低い原料を用いることが、希土類(但しネオジムを除く)を含めて、純度4N5とすることに有効である。
還元の際に使用する溶解るつぼは、タンタル(Ta)製るつぼを使用した。このタンタル製るつぼ内に、粉状のNdF3:14.0kgと塊状Ca:4.6kgを混合して投入した。還元材であるCaは、表1に示す分析値の蒸留Caを使用し、計算量よりも10%程度、過剰に添加した。
還元装置内に配置したタンタル製るつぼ内の充填物をゆっくりと600°Cまで加熱し、この間、還元装置内を真空に引きながら、充填物の脱ガスを行った。その後、精製したアルゴンガスを送入して0.5気圧とした。
Ca還元による結果ではあるが、Caが多く、また酸素(O)含有量も高かった。
スカル溶解には、φ80mmの水冷銅製坩堝を使用した。そして、出力50kWで前述のカルシウム還元したネオジム金属を溶解した。次に、覗き窓からネオジムの全量が溶解したことを確認し、溶解後に30分保持した後、段階的に出力を落とし、最終的に出力をOFFとした。なお、この徐冷については、使用する装置の規模等によって、細かく調整することが可能である。これにより、インゴットの底部に酸化物を偏析させることができ、そして、この酸化物偏析層を機械加工(切断)により除去することにより、インゴットにおける酸素濃度を低減することができる。
次に、上記のスカル溶解した後のインゴット底部の酸化物偏析層を切断除去して得られたネオジムを電子ビーム溶解した。電子ビーム(EB)溶解は、低出力の電子ビームを炉中の該ネオジム原料に広範囲に照射することにより行う。EB溶解時間は、30分である。これによってEB溶解インゴットを作成した。EB溶解時に、揮発性の高い成分元素は揮散除去された。
ネオジムの原料として、前記表5に示す純度が2N5〜3Nレベルの市販品を用いた。比較例1で使用した市販品のネオジムは、50mm角×30mmtの板状物からなる。1枚の重量は、500〜600gであり、これを3枚、合計で1.7kgの原料を使用した。
以上によって、高純度ネオジムインゴット1.7kgを製造することができた。このようにして得た高純度ネオジムの分析値を表6に示す。
以上から明らかなように、Al、Feの低減化はできず、またガス成分の低減化も十分でなかった。全体的に、前記実施例に比べて不純物量は多く、本願発明の目的を達成することができなかった。
Claims (11)
- ガス成分を除く純度が4N以上であるフッ化ネオジムの原料を蒸留カルシウムにより還元して純度4N以上のネオジムを作製し、この還元したネオジムをスカル溶解した後、徐冷してインゴットを作製し、次にこの得られたスカルインゴットを切断してインゴットの底部に存在する酸化物の偏析層を除去し、次にこれを電子ビーム溶解して揮発性物質を除去することを特徴とする、Cが200wtppm以下、Oが50wtppm以下、Al、Feがそれぞれ10wtppm以下、Cuが1wtppm以下、ガス成分を除き4N5以上の純度を有する高純度ネオジムの製造方法。
- 高純度ネオジムの製造方法であって、W、Mo、Taの総量を10wtppm未満とすることを特徴とする請求項1記載の高純度ネオジムの製造方法。
- 高純度ネオジムの製造方法であって、ネオジム以外の希土類元素を、総量で100wtppm以下とすることを特徴とする請求項1又は2記載の高純度ネオジムの製造方法。
- 高純度ネオジムの製造方法であって、ガス成分を、総量で500wtppm以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高純度ネオジムの製造方法。
- 高純度ネオジムであって、ガス成分を除いた純度が4N5以上であり、Cが100wtppm以下、Oが50wtppm以下、Al、Feがそれぞれ10wtppm以下、Cuが1wtppm以下であることを特徴とする高純度ネオジム。
- 高純度ネオジムであって、W、Mo、Taの総量が10wtppm未満であることを特徴とする請求項5記載の高純度ネオジム。
- 高純度ネオジムであって、ネオジム以外の希土類元素を、総量で100wtppm以下とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の高純度ネオジム。
- 高純度ネオジムであって、ガス成分が、総量で500wtppm以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の高純度ネオジム。
- 請求項5〜8のいずれか一項に記載の高純度ネオジムを用いて作製したスパッタリングターゲット。
- 請求項9のスパッタリングターゲットを用いて成膜した希土類磁石薄膜。
- 請求項10記載の希土類磁石薄膜を備えた磁気デバイス。
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