本発明の実施の形態の車載用のディスク装置は、DVD(デジタルバーサタイルディスク)やCD(コンパクトディスク)またはブルーレイディスク(登録商標)などの直径が12cmのディスクDが装填可能である。
図3および図4に示すように、ディスク装置は、金属板から形成された筐体1を有している。車載用のディスク装置の場合、筐体1の大きさは、例えば1DINサイズまたは1/2DINサイズであり、筐体1は自動車の車室内のインストルメントパネルに埋設して設置される。
図3および図4に示すように、筐体1は、Y1側に向く前面板2と、Y2側に向く後面板3と、X1側に向く右側の側面板4とX2側に向く左側の側面板5を有し、さらに天井板と底板を有している。前面板2には、左右方向(X1−X2方向)に向けて細長い挿入口(図示せず)が開口している。筐体1の前面板2の前方に、合成樹脂で形成された化粧ノーズが取り付けられており、この化粧ノーズの前面に各種操作部材や表示装置が設けられている。化粧ノーズにノーズ部挿入口が開口しており、このノーズ部挿入口と前面板2に形成された挿入口を経て、ディスクDが筐体1の内部に向けて供給される。
筐体1の内部に、図1に示す機構ユニット10が収納されている。機構ユニット10は、底部側にドライブベース11を有し、上部側にクランプ支持部材12を有している。ドライブベース11とクランプ支持部材12は共に金属板を折り曲げて形成されている。ドライブベース11には、Y2側においてX1方向とX2方向へ延びる連結軸13が設けられており、クランプ支持部材12のY2側の端部が、連結軸13に回動自在に支持されている。
図1と図2および図3と図4に示すように、筐体1の内部には、ドライブベース11を弾性的に支持する複数のダンパー15a,15b,15cが設けられている。これらダンパー15a,15b,15cは、弾性体の袋の内部にオイルが封入されて構成されている。ダンパー15a,15b,15cは、筐体1の内面に固定されており、ドライブベース11に固定された支持軸がそれぞれのダンパー15a,15b,15cに支持されている。機構ユニット10にディスクDが装填された後は、ドライブベース11が、ダンパー15a,15b,15cに弾性支持された状態で、ディスクDが回転駆動される。
図2に示すように、ドライブベース11のY1側には、回転駆動部20が設けられている。回転駆動部20は、ドライブベース11の上に固定されたスピンドルモータと、スピンドルモータの回転軸に固定された合成樹脂製のターンテーブル23とを有している。
図1に示すように、ドライブベース11には光ヘッド25が搭載されている。光ヘッド25は、ドライブベース11に設けられたガイド機構によって移動自在に支持されているとともに、光ヘッド25を前記ガイド機構に沿って往復移動させるスレッド機構が設けられている。光ヘッド25は、スレッド機構によって、ターンテーブル23にクランプされたディスクDの記録面に沿って、ディスクDの半径方向に向けて移動させられる。
図1に示すように、クランプ支持部材12のY1側の端部には、合成樹脂製のクランパ27が回動自在に支持されているとともに、クランパ27の回転軸を下方(Z2方向)へ押圧する板ばね26が設けられている。
図1と図2に示すように、ドライブベース11のY2側の端部にはX1方向へ突出する突出片12aが一体に形成され、この突出片12aに、トーションコイルばね17が取り付けられている。トーションコイルばね17の一方の腕部はドライブベース11に掛けられ、他方の腕部がクランプ支持部材12に掛けられて、クランプ支持部材12が、連結軸13を支点として、図2において反時計方向へ常に付勢されている。
図1と図2に示すように、クランプ支持部材12のX1側の端部にはY1側へ延び出る持ち上げ片18が一体に形成されている。持ち上げ片18のY1側の先部は、突側が下向きとなるようにV字形状に折り曲げられている。この持ち上げ片18に上方(Z1方向)への力を与えると、クランプ支持部材12がトーションコイルばね17の付勢力に対抗して図2において時計方向へ回動させられ、クランパ27がターンテーブル23から離れる。
図1と図3などに示すように、クランプ支持部材12の左右の側方には、下方に向けて突出する一対のストッパ部材16a,16bが設けられている。ストッパ部材16a,16bは、金属製のピンであり、筐体1の内部に搬入されたディスクDが搬送完了位置に至ると、その外周縁がストッパ部材16a,16aに当たり、ディスクDはその中心がターンテーブル23の中心のほぼ真上に位置するように位置決めされる。
図1と図2に示すように、挿入口と回転駆動部との間に第1の搬送部材40aと第2の搬送部材40bが設けられている。
第1の搬送部材40aは、ローラブラケット44とローラ軸42ならびに搬送ローラ41を有している。第2の搬送部材40bは、固定案内部43を有している。
図2に示すように、第2の搬送部材40bを構成している固定案内部は、搬送ローラ41の上側(Z1側)に対向している。固定案内部43は、摩擦係数の小さい合成樹脂材料で形成されて、筐体1の天井板の下面に動かないように固定されている。固定案内部43は、その下面43aがY1−Y2方向へ水平に延びる案内面となっている。
第1の搬送部材40aを構成する搬送ローラ41は、合成ゴムなどの摩擦係数の大きな材料で円筒状に形成されており、金属製のローラ軸42の外周に装着されている。ローラ軸42の右端部と左端部はローラブラケット44に支持されている。
ローラブラケット44は金属板で形成されている。図1と図2に示すように、ローラブラケット44は、X1側に形成された右側支持部44aおよびこの右側支持部44aのY1側の先部から上方へ延びる右側先部44bと、X2側に形成されている左側支持部44cおよびこの左側支持部44cのY1側の先部から上方へ延びる左側先部44dとを有している。
図5に示すように、ローラブラケット44の右側先部44bに支持軸45が固定されている。同様に、左側先部44dにも支持軸45が固定されている。右側先部44bに固定されている支持軸45と左側先部44dに固定されている支持軸45は、X1−X2軸と平行な軸線上に位置している。図5に示すように、筐体1の右側の側面板4に支持穴45aが形成され、左側の側面板5にも支持穴45aが形成されている。支持軸45,45がそれぞれの支持穴45a,45aに挿入され、ローラブラケット44は、支持軸45,45を回動支点として筐体1に回動自在に支持されている。
図2に示すように、ローラブラケット44の右側支持部44aのY2側の端部に保持穴44gが形成され、左側支持部44cのY2側の端部にも同様に保持穴44gが開口している。ローラ軸42の左右両端部は、それぞれ保持穴44g,44g内に挿入されている。
図3と図4に示すように、ローラ軸42のX2側の端部にピニオン歯車48が固定され、筐体1の左側(X2側)の側面板5の内側には、図1に示すモータMからの回転動力が与えられる駆動歯車49が設けられている。図1と図2に示すようにディスクDの供給を待つ待機モードでは、ローラブラケット44がα方向へ回動しているため、ピニオン歯車48が駆動歯車49と噛み合っている。よって、前記モータMの回転力が駆動歯車49からピニオン歯車48に伝達されて、ローラ軸42を回転することが可能となっている。
図2に示すように、ローラブラケット44には、右側支持部44aの上縁と左側支持部44cの上縁とをつなぐ対向案内部44hが設けられている。対向案内部44hの上面の案内面44iは平坦面である。図2に示す待機モードでは、案内面44iが、後方(Y2方向)に向かうにしたがって上方(Z1方向)へ持ち上がるように傾斜している。
図5に示すように、ローラブラケット44には、対向案内部44hからY1方向に延長されたばね掛け部44jが一体に形成されている。筐体1の底板とばね掛け部44jとの間に引っ張りコイルばねであるばね部材46が掛けられている。このばね部材46の弾性力によって、ローラブラケット44は、支持軸45,45を支点としてα方向へ常に付勢されている。
図1と図2に示すように、第1の搬送部材40aならびに第2の搬送部材40bと、挿入口を有する前面板2との間に、可動部材50が設けられている。可動部材50は、固定案内部43と同じ低摩擦係数の合成樹脂材料で形成されており、その下面は平滑な案内面51である。案内面51は、ローラブラケット44に設けられた対向案内部44hの案内面44iに上方から対向している。
可動部材50の先部(Y1側)には、X1方向とX2方向へ突出する短い支持軸52,52が一体に形成されている。それぞれの支持軸52,52は、筐体の両側面板4,5に設けられた軸受部に回動自在に支持されている。可動部材50はその自重と図示しないばね部材の付勢力によって、支持軸52,52を中心として図2において時計方向へ回動付勢されている。可動部材50の上面には、支持軸52,52よりもY1側にストッパ部53が形成されている。可動部材50は、ストッパ部53が筐体1の天井板の下面に当たったときに、それ以上は図2において時計方向へ回動しない回動限界となる。
図2に示す待機モードでは、可動部材50の下面の案内面51と対向案内部44hの案内面44iとの対向間隔が、挿入口側で広く、搬送ローラ41に向かうにしたがって徐々に狭くなっている。
図1に示すように、固定案内部43の前端(Y1側の端部)には、X1−X2方向のほぼ中心部分に、内部に機械的な開閉接点を有する検知スイッチS1が固定されており、検知スイッチS1のアクチュエータSaがY1方向へ突出している。図1に示すように、可動部材50のY2側の端部にスイッチ押圧部54が一体に形成されている。挿入口から供給されるディスクDによって可動部材50がばね部材の付勢力に対抗して図2において反時計方向へ回動させられると、スイッチ押圧部54によってアクチュエータSaが押され検知スイッチS1の出力が、接点の開状態であるOFF(非検知出力状態)から接点が閉状態となるON(検知出力状態)に切り替えられる。
図1と図3に示すように、筐体1の右側の側面板4の内側に右側切換え部材30aが設けられ、左側の側面板5の内側に左側切換え部材30bが設けられている。右側切換え部材30aと左側切換え部材30bは、上下方向(Z1−Z2方向)の高さ寸法よりも前後方向(Y1−Y2方向)の長さ寸法の方が大きい長尺形状であり、両切換え部材30a,30bは合成樹脂材料で形成されている。
図5と図6(A)ならびに図8(A)に示すように、筐体1の右側の側面板4の下側(Z2側)に下板部6が設けられ、上側(Z1側)に上板部7が設けられている。下板部6と上板部7は、側面板4に対して垂直であり、下板部6と上板部7は上下に平行に対向している。
図5などに示す実施の形態では、下板部6が筐体1の底板の一部である。ただし、下板部6が底板とは別体の金属材料で形成されて筐体1の内部に固定されていてもよい。上板部7は筐体1とは別体の金属板で形成され、側面板4にねじ止めやスポット溶接などの手段で固定されている。ただし、上板部7が筐体1の天井板の一部で形成されていてもよい。
下板部6には上向きの案内片6aが折り曲げられている。案内片6aは、側面板4の内面とX2方向へ間隔を空けて対向している。上板部7には下向きの案内片7a,7bが折り曲げられている。案内片7a,7bは、側面板4の内面とX2方向へ間隔を空けて対向している。
図6(A)と図8(A)に示すように、右側切換え部材30aは、筐体1の側面板4と3つの案内片6a,7a,7bとの間において、下板部6と上板部7との間に挟まれた状態で、前後方向(Y1−Y2方向)へ直線的に往復移動できるように支持されている。左側切換え部材30bも同様にして、筐体1の左側の側面板5の内側において、下板部6と上板部7との間で前後方向(Y1−Y2方向)へ移動自在に支持されている。
右側切換え部材30aと左側切換え部材30bの構造と形状ならびに寸法は、X1−X2方向において面対称であるため、以下では主に右側切換え部材30aの構造について説明する。
右側切換え部材30aの上下方向の高さ寸法は、下板部6と上板部7との内面どうしの上下の対向間隔よりもわずかに短く形成されており、図6(A)に示すように、右側切換え部材30aと、下板部6ならびに上板部7との間に、若干の隙間δが形成される。すなわち、下板部6と上板部7の内面どうしの上下の対向間隔の公差と、右側切換え部材30aの成形公差を加味し、さらに金属製の筐体1と合成樹脂材料製の右側切換え部材30aとの線膨張係数の差を加味した状態で、下板部6と上板部7との間で右側切換え部材30aが前後方向(Y1−Y2方向)へ動けるように設計する必要があり、その結果、必然的に前記隙間δが形成される。
側面板4と3つの案内片6a,7a,7bの内面との対向間隔よりも、右側切換え部材30aの左右方向(X1−X2方向)の厚さ寸法がわずかに小さく形成されており、前記公差や線膨張係数の相違を加味した状態で、側面板4と案内片6a,7a,7bとの間で、右側切換え部材30aが前後方向(Y1−Y2方向)へ移動できるようになっている。
さらに、右側切換え部材30aには下向きに摺動突起37が一体に形成され、下板部6には前後方向(Y1−Y2方向)に延びる案内スリット6bが形成されている。摺動突起37は案内スリット6b内に左右方向(X1−X2方向)の隙間がほとんどない状態で挿入されている。これによっても、右側切換え部材30aが、前後方向へ滑らかに移動できるようになっている。
図5に示すように、右側切換え部材30aに上向きに突出する支持突起38が一体に形成されており、右側切換え部材30aと上板部7は、支持突起38でのみ当接する。図6(A)では、右側切換え部材30aがY2方向に移動した待機位置にある。このとき、支持突起38と上板部7との当接部が第1の支点部39aとなる。図8(A)では、右側切換え部材30aがY1方向へ移動した完了位置にある。このとき、支持突起38と上板部7との当接部が第2の支点部39bとなる。
図1に示すように、ドライブベース11の左後方にモータMが設けられている。このモータMの動力によって、第1の搬送部材40aのローラ軸42が回転させられるとともに、左側切換え部材30bが前後方向へ駆動される。筐体1の底板上には、左側切換え部材30bの移動力を右側切換え部材30aに伝達させるリンク機構が設けられている。左側切換え部材30bがモータMの動力によってY1−Y2方向に移動させられると、その移動力が、リンク機構を介して右側切換え部材30aに伝達され、右側切換え部材30aと左側切換え部材30bとが同期してY1−Y2方向へ移動させられる。
ディスクDの挿入口からの供給を待つ待機モードでは、図6(A)に示すように右側切換え部材30aが後方(Y2方向)へ移動した待機位置にあり、左側切換え部材30bも同様に後方(Y2方向)へ移動した待機位置にある。
図3と図4に示すように、機構ユニット10のY2側に、トリガー部材14が設けられている。トリガー部材14は、ドライブベース11上に回動自在に支持されているアーム14bと、このアーム14bに固定された検知ピン14aとを有している。
ディスクDが挿入口から筐体1の内部に供給されると、モータMによってローラ軸42が回転させられ、ローラ軸42に装着された搬送ローラ41の回転力によって、ディスクDが筐体1の内部に向けて搬送される。ディスクDが図4に示す装填位置まで移動すると、このディスクDの外周縁で検知ピン14aが押されてアーム14bが図4において反時計方向へ回動する。このとき、アーム14bの回動力によって動力切換機構による動力の伝達経路が切換えられ、ローラ軸42へのモータMの動力の伝達が断たれるとともに、モータMの動力が、左側切換え部材30bに伝達され、左側切換え部材30bがY1方向へ向けて移動する。そして、右側切換え部材30aと左側切換え部材30bが同期してY1方向へ移動する。
図5と図6(A)ならびに図8(A)に示すように、右側切換え部材30aのX2側に向く内面のY1側には、ローラ制御カム部34が設けられている。ローラ制御カム部34は、上側に形成された上側案内部34aと、それよりもY2側で且つ下側に形成された下側拘束部34bと、上側案内部34aと下側拘束部34bとに連続する傾斜案内穴34cとを有している。ローラ軸42のX1側の端部は、ローラ制御カム部34に摺動自在に挿入されている。
右側切換え部材30aのY1側の端部には、検知制御部35が形成されている。検知制御部35は、Y1側の持ち上げ案内部35aとY2側に延びる保持案内部35bとを有している。持ち上げ案内部35aは、後方(Y2方向)へ向かうにしたがって徐々に上向きになる傾斜面であり、保持案内部35bは、Y1−Y2方向へ延びる水平な面である。
右側切換え部材30aのX2方向に向く内面のY2側にはクランプ制御部32が設けられている。クランプ制御部32は、保持部32aと、この保持部32aと連続して後方(Y2方向)に向かうにしたがって下方(Z2方向)へ傾斜する傾斜カム部32bとを有している。トーションコイルばね17で図2において反時計方向へ付勢されているクランプ支持部材12に設けられた持ち上げ片18が、前記クランプ制御部32に圧接される。
図1と図6(A)では、右側切換え部材30aが後方(Y2方向)へ移動した待機位置にある。このとき、クランプ制御部32の保持部32aによって持ち上げ片18がZ1方向へ持ち上げられ、クランプ支持部材12が図2において時計方向へ回動させられて、クランパ27がターンテーブル23から上方へ離れた保持解除位置に設定されている。右側切換え部材30aが前方(Y1方向)へ移動すると、持ち上げ片18がクランプ制御部32の傾斜カム部32bを摺動し、クランプ支持部材12がトーションコイルばね17の弾性力によって図2において反時計方向へ回動させられる。そして、クランパ27によってディスクDの中心部がターンテーブル23に押し付けられ、ディスクDがターンテーブル23にクランプされる。
図5と図6(A)ならびに図8(A)に示すように、右側切換え部材30aのX2側に向く内面の2か所にロック凹部33a,33bが形成されている。
図6(A)に示すように、右側切換え部材30aがY2方向へ移動した待機位置にあるとき、ドライブベース11の側部に一体に形成された拘束片19aがロック凹部33aに保持され、拘束片19bがロック凹部33bに保持されて、機構ユニット10が、筐体1の内側において動くことなく拘束される。これにより、Y2方向へ搬入されているディスクDを、ターンテーブル23とクランパ27との間に案内しやすくなる。
図8(A)に示すように、右側切換え部材30aがY1方向へ移動して完了位置に至ると、クランパ27が下降してディスクDの中心部がクランプされるとともに、ロック凹部33a,33bが拘束片19a,19bからそれぞれ外れる。このとき、機構ユニット10は筐体1内で拘束されず、ダンパー15a,15b,15cによって弾性支持される。ターンテーブル23にクランプされたディスクDが回転駆動される間に、外部振動がダンパー15a,15b,15cの振動として吸収されやすくなり、機構ユニット10に直接に影響を及ぼすことが防止される。
図1と図2に示すように、可動部材50の後端部(Y2側の端部)には、X1方向とX2方向へ突出する摺動突部55,55が一体に形成されている。前記可動部材50は図2において時計方向へ付勢されているので、摺動突部55は、検知制御部35のいずれかの箇所に圧接される。図1に示す待機位置にある右側切換え部材30aがY1方向へ移動し始めると、可動部材50に設けられた摺動突起55が、持ち上げ案内部35aから保持案内部35bに案内される。摺動突起55が保持案内部35bで案内されているときは、可動部材50が図2において反時計方向へ回動した姿勢に保持される。
図3に示すように、挿入口と搬送ローラ41との間に光学検知部材71が設けられている。光学検知部材71は、検知光を発する発光素子と、検知光を受光する受光素子とが上下に対向して構成されている。挿入口から挿入されたディスクDが光学検知部材71を横切ると、ディスク検知状態となる。
次に、前記ディスク装置の動作を説明する。
(ディスク挿入待機モード)
図1と図2は、ディスクDが筐体1に供給される前の待機モードを示している。待機モードでは、右側切換え部材30aと左側切換え部材30bの双方がY2方向へ移動して待機位置にある。図1に示すクランプ支持部材12に形成された持ち上げ片18は、右側切換え部材30aに設けられたクランプ制御部32の保持部32aの上に乗っており、クランプ支持部材12が図2において時計方向へ回動させられて、クランパ27がターンテーブル23から上方へ離れている。
図6(A)に示すように、右側切換え部材30aが待機位置にあると、ドライブベース11に一体に形成された拘束片19a,19bが、右側切換え部材30bのロック凹部33a,33bに保持される。左側切換え部材30bのロック凹部によってもドライブベース11が保持され、弾性支持されている機構ユニット10が2つの切換え部材30a,30bに保持された状態となる。
図1と図2に示すように、待機位置にある右側切換え部材30aのY1側の端部に形成された検知制御部35の持ち上げ案内部35aは摺動突部55から離れており、可動部材50が図2に示すように時計方向へ回動して下向きに傾斜して非検知位置に設定されている。
図6(A)に示すように、右側切換え部材30aがY2方向へ移動した待機位置にあるとき、第1の搬送部材40aのローラ軸42の端部は、右側切換え部材30aに形成されたローラ制御カム部34の上側案内部34aに位置している。
図9に示すように、第2の搬送部材40bを構成している固定案内部43の下面43aには、搬送ローラ41の外面に倣う形状の凹部43bが形成されている。ローラ軸42の端部が上側案内部34aに位置しているとき、搬送ローラ41は凹部43bに圧接しておらず、搬送ローラ41の外面と凹部43bとの間に隙間hが形成されている。ローラブラケット44は図5に示すばね部材46の弾性力によってα方向へ付勢されているが、搬送ローラ41が固定案内部43から離れているため、この付勢力は、ローラ軸42から上側案内部34aに作用し、右側切換え部材30aに対して上向きの押圧力F1が作用している。
なお、図9に示す状態で、搬送ローラ41の外面がこの搬送ローラ41を形成しているゴムなどの弾性体の弾性変形の範囲内で凹部43bにわずかに接触していてもよい。この場合でも、ローラ軸42を上側案内部34aの内面に圧接させることができ、右側切換え部材30aのY1側の端部に対して上向きの押圧力F1を作用させることができる。
上側案内部34aが押圧力F1で上に向けて押されるため、右側切換え部材30aの支持突起38が上板部7の下面に当接し、右側切換え部材30aと上板部7との間に第1の支点部39aが形成される。図6(A)に示すように、右側切換え部材30aが待機位置にあるとき、第1の支点部39aは、押圧力F1の作用位置よりも後方(Y2方向)へ離れた位置に設定されている。
図6(B)には、待機位置にある右側切換え部材30aへの力の作用状態が模式的に示されている。上側案内部34aに上向きの押圧力F1が作用するため、右側切換え部材30aには第1の支点部39aを中心とする反時計回りのモーメントM1が作用する。図6(A)では、右側切換え部材30aの後端部30cと下板部6の上面との間に隙間δが形成されているように図示されているが、実際には前記モーメントM1が作用しているため、前記後端部30cは下板部6に当接して第1の後方当接部39cが形成される。
図6(B)に示すように、第1の支点部39aで、右側切換え部材30aが押圧力F1の作用方向と逆側から支えられる。右側切換え部材30aには第1の支点部39aを中心とするモーメントM1が作用し、第1の後方当接部39cにおいて、右側切換え部材30aが下側へ押し付けられる。そのため、右側切換え部材30aのがたつき(振動)が規制される。
同様にして、左側切換え部材30bも筐体1の左側の側面板5の内側で同様のモーメントM1を受けて、がたつきが規制される。
右側切換え部材30aが待機位置にあるとき、ロック凹部33a,33bでドライブベース11が拘束されて、右側切換え部材30aと左側切換え部材30bとで機構ユニット10が保持された状態となる。機構ユニット10は質量が大きいため、車体振動を受けたときに機構ユニット10に上下の慣性力が働き、右側切換え部材30aと左側切換え部材30bに対し上下方向へ大きな力が与えられる。しかし、図6(B)に示すように、第1の支点部39aと第1の後方当接部39cによって右側切換え部材30aが振動しないように規制され、同様にして左側切換え部材30bも規制されているため、ディスクDの供給を待つ待機モードにおいて、車室内に漏れるような大きながたつき音(振動音)が発生するのを規制することができる。
(搬入動作)
図1と図2に示す待機モードで、挿入口からディスクDがY2方向へ供給されると、ディスクDのY2側に向く周縁部が、可動部材50の案内面51と、その下に対向する対向案内部44hの案内面44iとの間に導かれる。ディスクDが、図3の(i)に示す位置まで供給されると、ディスクDの上面によって可動部材50が持ち上げられ、可動部材50のスイッチ押圧部54によってアクチュエータSaが持ち上げられて、検知スイッチS1の出力がOFF(非検知出力状態)からON(検知出力状態)に切り替えられる。このときに、図示しない制御部は、ディスクDが筐体1に供給されたことを認識する。
ディスクDが図3に示す(ii)の位置まで挿入されると、ディスクDで光学検知部材71の検知光が遮られ、光学検知部材71がONになる。前記制御部では、光学検知部材71がOFFからONに切換えられると、モータMが始動し、モータMの回転力が、駆動歯車49から第1の搬送部材40aのピニオン歯車48に伝達され、ローラ軸42がディスク搬入方向へ回転させられる。
ディスクDが搬送ローラ41と固定案内部43との間に導かれると、ディスクDが搬送ローラ41と固定案内部43の下面43aとの間に挟持され、搬送ローラ41の回転力によって筐体1の内方へ向けて搬入される。
図10に示すように、ディスクDが搬送ローラ41と固定案内部43との間に挟まれると、図7にも示すように、ディスクDの厚みによってローラ軸42が下降し、ローラ軸42の端部がローラ制御カム部34の上側案内部34aの上面から離れて、ローラ軸42に作用しているばね部材46の付勢力が切換え部材30aに作用しなくなる。そのため、ディスク搬送中は、右側切換え部材30aに対して押圧力F1とモーメントM1が一時的に作用しなくなり、右側切換え部材30aへの規制が解除される。同様に、左側切換え部材30bの規制も解除される。
この状態では、右側切換え部材30aと左側切換え部材30bが振動しやすくなるが、搬送ローラ41の回転音とディスクDの搬送音が発生しており、しかも短時間であるため、たとえ両切換え部材30a,30bが振動音を発生させたとしても、問題にはならない。
図4に示すように、搬送されるディスクDの中心穴Daがターンテーブル23の中心よりもややY1側の位置まで搬入されると、ディスクDのY2側の外周縁によって、トリガー部材14を構成する検知ピン14aがY2方向に押圧され、アーム14bが反時計方向に回動させられる。同時に、ディスクDの外周縁が、一対のストッパ部材16a,16bに当たり、ディスクDはクランプ可能位置である正常な搬送完了位置に位置決めされる。
トリガー部材14のアーム14bが反時計方向へ回動すると、モータMから駆動歯車49への動力伝達経路が遮断され、ローラ軸42の回転が停止する。モータMの動力は左側切換え部材30bを移動させる経路に切換えられ、左側切換え部材30bがY1方向への移動を開始し、これに同期して右側切換え部材30aが第1の方向であるY1方向への移動を開始する。
右側切換え部材30aがY1方向へ移動すると、右側切換え部材30aのY1側の端部に設けられた検知制御部35の持ち上げ案内部35aによって摺動突部55が持ち上げられ、摺動突起55が保持案内部35bに導かれ、可動部材50は下面の案内面51がほぼ水平に向けられた状態で支持される。
右側切換え部材30aがY1方向へ移動して完了位置に至ると、図1に示す持ち上げ片18がクランプ制御部32の保持部32aから外れ、クランプ支持部材12が図2において反時計方向へ回動させられ、ディスクDの中心穴Daの周辺がターンテーブル23とクランパ27とで挟まれてクランプされる。これとほぼ同時に、ローラ軸42の端部が、右側切換え部材30aに設けられたローラ制御カム部34の上側案内部34aから傾斜案内穴34cへ案内され、さらに下側拘束部34bで拘束される。これにより、ローラブラケット44がα方向と逆側へ回動させられて、ローラ軸42および搬送ローラ41が下降させられて、搬送ローラ41がディスクDから下側へ離れる。
また、図8(A)に示すように、右側切換え部材30aのロック凹部33a,33bが拘束片19a,19bから離れ、ドライブベース11に対する拘束が解除される。これは左側切換え部材30bにおいても同じである。ターンテーブル23にディスクDがクランプされた状態で、機構ユニット10が筐体1内においてダンパー15a,15b,15cで弾性支持された状態となる。そして、ターンテーブル23を回転させて、ターンテーブル23にクランプされたディスクDを回転駆動し、光ヘッドでデータの再生や記録を行うことが可能になる。
図8(A)に示すように、右側切換え部材30aがY1方向へ移動して完了位置に至ると、質量の大きい機構ユニット10と切り離され、機構ユニット10に作用する慣性力が右側切換え部材30aに作用しなくなり、右側切換え部材30aを振動させようとする大きな力は作用しなくなる。
ただし、右側切換え部材30aが完了位置に移動したときであっても、ばね部材46でα方向へ付勢されているローラ軸42から下側拘束部34bの上面に対して上向きの押圧力F2が作用する。また、右側切換え部材30aの移動に伴って支持突起38がY1方向へ移動するが、右側切換え部材30aと上板部7との間の第2の支点部39bは、押圧力F2の作用位置よりも後方(Y2方向)に離れて位置している。
図8(B)には、完了位置にある右側切換え部材30aに対する力の作用状態が模式的に示されている。右側切換え部材30aが完了位置に位置しているときも、右側切換え部材30aに第2の支点部39bを中心とする反時計方向へのモーメントM2が作用し、右側切換え部材30aの前記後端部30cが下板部6に当接して第2の後方当接部39dが形成される。
右側切換え部材30aが完了位置へ移動して機構ユニット10と切り離された状態でも、モーメントM2を受けて第2の支点部39bと第2の後方当接部39dとで上下から支えられるため、この状態でも右側切換え部材30aががたつきを発生しにくくなっている。これは左側切換え部材30bにおいても同じである。
(搬出動作)
再生や記録動作が完了したディスクDを搬出するときは、モータMが逆転し、左側切換え部材30bと右側切換え部材30aがY2方向へ移動させられる。この間、右側切換え部材30aのクランプ制御部32に設けられた傾斜カム部32bによって持ち上げ片18が持ち上げられてクランパ27がディスクDから離れる。また、ローラ制御カム部34によってローラ軸42が持ち上げられて、搬送ローラ41と固定案内部43とでディスクDが挟持される。そして、ロック凹部33a,33bによって再び機構ユニット10が拘束される。
左側切換え部材30bと右側切換え部材30aがY2方向の終端まで移動して待機位置へ戻ったことが図示しないリミットスイッチで検知されると、モータMの動力伝達経路が、駆動歯車49に切換えられ、ピニオン歯車48が回転し、ローラ軸42が回転して、搬送ローラ41の回転力によって、ディスクDが挿入口に向けて搬出される。
なお、前記実施の形態では、右側切換え部材30aに形成された支持突起38と上板部7との当接部に支点部39a,39bが形成されているが、上板部7から下向きに支持突起が形成され、この支持突起と右側切換え部材30aとの当接部に支点部が形成されてもよい。
また、第2の搬送部材が搬送ローラを有し、第1の搬送部材が固定案内部を有し、この固定案内部がばね部材46で搬送ローラに向けて付勢され、その付勢力が右側切換え部材30aに作用してもよい。また、第1の搬送部材と第2の搬送部材の双方がローラを有しているものであってもよい。